説明

炭素材料及びその製造方法

【課題】ハロゲンガスを用いて処理した場合に、処理後の不純物の放出が抑制された炭素材料及びその製造方法を提供する。
【解決手段】炭素材料を、1Pa以上10000Pa以下の減圧下におけるHガス雰囲気中において、500℃以上1200℃以下で、アニール処理を行う。アニール処理時間は1分以上20時間以下である。これにより、塩素等のハロゲンの放出される濃度を5ppb以下にすることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素材料およびその製造方法に関するものであり、特に表面改質され、不純物の放出が抑制された炭素材料及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炭素材料は、軽量であるとともに、化学的・熱的安定性に優れ、非金属でありながら熱伝導性及び電気伝導性が良好であるという特性を有している。一方、炭素材料は発塵性を有するという問題があり、表面に被覆層を作って発塵を抑える必要がある。しかしながら、炭素材料に炭素と異なる金属等の材質の層を形成する場合には炭素材料と他の層との間の密着性に問題があった。このようなことを考慮して、例えば、ハロゲン化クロムガスにて炭素基材を処理することによって表面にCr23からなる炭化クロム層を設け、その炭化クロム層に金属を溶射被覆することが提案されている(下記特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
しかしながら、上記従来の方法の如く、ハロゲン系のガスを用いて処理した場合には、処理後の炭素材料に不純物が存在する。このため、上記炭素材料を半導体分野等で用いた場合には、不都合が生じる。例えば、ハロゲン系のガスとして塩素を用いた炭素材料を、アルミニウムが用いられた半導体の製造に用いると、アルミニウムが腐食することがあるといった不都合を生じる。また、半導体用途に限らず、処理環境で性能が左右されるような材料を用いる場合、処理装置等の周辺の部材から発生する不純物によって不具合が生じる可能性があり、特に反応性の高い塩素が放出されない材料が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−143384号
【特許文献2】特開平8−143385号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、ハロゲンガスを用いて処理した場合に、処理後に不純物(ハロゲン)が存在するのを抑制することができる炭素材料の製造方法及びその炭素材料を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明は、炭素材料から発生する塩素の濃度が5ppb以下であることを特徴とする。
放出される塩素の濃度が5ppb以下であれば、アルミニウム等が用いられた半導体の製造に炭素材料を用いた場合であっても、アルミニウムが腐食する等の不都合が生じるのを抑制でき、さらに周囲の環境の汚染を抑制することができる。したがって、本発明の炭素材料を半導体分野等で好適に用いることができる。
なお、上記塩素の濃度の測定には、炭素材料(サンプルの大きさ2mm×3.5mm×50mm)を水(100mL)に所定の時間(24時間)浸漬して放出される塩素の濃度をイオンクロマト法にて測定する方法を用いている。また、炭素材料(サンプルの大きさ2mm×3mm×30mm)にエネルギー線(波長193nmのレーザー光)を照射した際に放出されるガスを純水(160mL)に導入してイオンを抽出し、イオンクロマト法にて塩素の濃度を測定する方法でもよい。
【0007】
表面に遷移金属炭化物の層(炭化金属層)が形成されていることが望ましい。
遷移金属の炭化物の層を形成する際には塩化水素ガスを用いると効率がよいが、このような製法で遷移金属炭化物の層を形成すると、炭素材料に塩素が残留し易く、半導体製造のための材料として使用することが困難である。しかしながら、このような方法で遷移金属炭化物の層を形成した場合であっても、塩素濃度が5ppb以下であれば、炭素材料を半導体製造のための材料として使用することが可能となる。この塩素濃度は、0.5ppb以下であることがさらに好ましい。
【0008】
炭素材料を、還元ガス雰囲気中において、500℃以上1200℃以下でアニール処理することを特徴とする。
炭素材料を、還元ガス雰囲気中においてアニール処理すると、炭素材料から放出されるハロゲン濃度を低減することができる。加えて、炭素材料の発塵を抑制することができる。また、炭素材料を加工した場合等であっても、炭素材料の変形を抑制し、平坦度を改善することができる。
【0009】
ここで、アニール処理時の温度を500℃以上1200℃以下に規制するのは、当該温度が500℃未満ではハロゲン放出低減効果が発揮されない一方、当該温度が1200℃を超えてもハロゲン放出低減効果をそれ以上高めることができず、また、エネルギーの損失が大きくなって、炭素材料の製造コストが高騰するからである。尚、ハロゲン放出低減効果を十分に発揮させるためには、当該温度は800℃以上であることが好ましい。
【0010】
上記アニール処理は減圧下で行われ、且つ、その圧力が1Pa以上10000Pa以下であることが望ましい。
このように規制するのは、圧力が10000Paを超えたり、1Pa未満では、装置や処理に使用するガス等のコストがかかりすぎるため実用的ではなくなるからである。また、10〜1000Paの圧力であれば装置上の構成が簡単になるとともに、ハロゲン放出低減効果を十分発揮でき、好ましい。
【0011】
上記アニール処理の時間は1分以上20時間以下であることが望ましい。
このように規制するのは、アニール処理の時間が1分未満であれば、ハロゲン放出低減効果と平坦度の改善効果とが十分発揮されないことがある一方、20時間を超えても、ハロゲン放出低減効果と平坦度の改善効果とがそれ以上発揮されないからである。このような観点、及びエネルギーの損失を抑制するという観点を考慮すれば、アニール処理の時間は5時間以上10時間以下であることが特に好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ハロゲンガスを用いて炭素材料を処理した場合であっても、処理後に不純物(ハロゲン)が存在するのを抑制することができると共に、炭素材料の発塵を抑制することができ、しかも、炭素材料の形状に関わらず炭素材料の平坦度を改善することができるといった優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の炭素材料の製造方法に用いられる装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について説明する。
本発明は、炭素材料を、還元ガス雰囲気中において、500℃以上1200℃以下でアニール処理することを特徴とするものであり、また、上述したように、アニール処理は圧力が1Pa以上10000Pa以下の減圧下で行われることが望ましく、加えて、アニール処理の時間は1分以上20時間以下であることが望ましい。以下、アニール処理前の炭素材料について説明する。
【0015】
上記炭素材料(アニール処理前の炭素材)は、例えば、遷移金属を含む金属粒子と熱分解性ハロゲン化水素発生剤等とを含む表面改質剤(粉体状)に埋め込まれた炭素基材を、該炭素基材以外の炭素部材とともに加熱処理することにより作製できる。
上記炭素部材としては、黒鉛坩堝等の炭素からなる容器、炭素粉末などが挙げられる。このように、炭素部材とともに、処理されるべき炭素基材を加熱処理することにより、短時間で炭素基材に炭化金属層を形成することができる。
【0016】
熱処理の時間については、1時間未満の処理にて炭素基材に炭化金属層を色むらなくほぼ均一に形成することができる。この炭化金属層は、30分もあれば十分形成することができる。この処理時間は、炭化金属層を厚くする必要がある場合には、より長時間、たとえば1時間以上であってもよい。また、上記加熱処理は、800℃以上1200℃以下で行うことが好ましい。この温度範囲内で処理することにより、効率的に炭素基材を処理することができる。
【0017】
また、上記加熱処理は、常圧で行うことが好ましい。常圧で処理できることにより、真空ポンプ等の設備が不要であって、減圧にかかる時間が不要となり、処理が簡易となるとともに、処理時間の短縮となる。
【0018】
以下、本発明において使用される各部材について一例を示す。
上記炭素基材としては、特に限定されるものではなく、たとえば等方性黒鉛材、異方性黒鉛材、炭素繊維材等が挙げられる。この炭素基材は、かさ密度が1.0〜2.1g/cm3であることが好ましく、気孔率40%以下であることが好ましい。
【0019】
上記熱分解性ハロゲン化水素発生剤とは、常温・常圧では固体状態を保ち、加熱により分解して、塩化水素、フッ化水素、臭化水素等のハロゲン化水素を発生するものである。この熱分解性ハロゲン化水素発生剤の熱分解温度としては、200℃以上の温度であることが、加熱する前の取り扱いが容易であり好ましい。この熱分解性ハロゲン化水素発生剤から発生したハロゲン化水素は、加熱処理中に遷移金属と反応してハロゲン化金属ガスを発生する。このハロゲン化金属ガスにより炭素基材を処理することにより炭素基材の表面に炭化金属層を形成することができる。このように炭素基材の処理がガスによるものであるため、炭素基材に穴、溝等を形成したような複雑な形状である場合においても、炭素基材にほぼ均一に炭化金属層を形成することができる。この熱分解性ハロゲン化水素発生剤としては、入手のしやすさから塩化アンモニウムが好ましい。
【0020】
上記遷移金属を含む金属粒子としては、遷移金属を含んでいればよく、たとえば遷移金属とその他の金属との混合粉あるいは合金粉が挙げられる。上記遷移金属としては、Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Zr,Nb,Mo,Ta等が挙げられるが、上記ハロゲン化水素と反応してハロゲン化金属ガスを発生するものであれば特に限定されるものではない。そして発生したハロゲン化金属ガスが炭素基材表面の炭素と反応し、金属炭化物を生成する。これらの遷移金属としては、反応性の高さからCrを含むことが好ましい。金属粒子としてはCrを含む合金粉末が好ましく、たとえばステンレス等が挙げられる。
特にCr、NiおよびFeを含む合金であるステンレスからなる金属粒子を用いた場合には、炭素基材の表面に炭化クロムおよびNi,Feを含む層を1回の加熱処理にて形成することができる。
【0021】
上記炭素部材としては、たとえば黒鉛坩堝等の炭素からなる容器、炭素粉末などが挙げられる。
炭素部材を用いることにより、炭素基材の処理時間を短縮することができるとともに、水素ガスの供給を不要にすることができ、より簡易に炭素基材を表面改質することができる。これにより、後に表面に形成される金属等の層との密着性を向上させるとともに、炭素基材よりも強度を向上させることができる。また、減圧を必要とせず、常圧(大気圧中)にて加熱処理することができ、処理を簡易にすることができる。
【0022】
上記炭素部材としては、黒鉛坩堝を用いることが好ましい。処理する際に黒鉛坩堝を用いることにより、埋め込まれた炭素基材の周囲における気体の流れを抑制することができ、炭素基材の表面に色むらなくより均一に炭化金属層を形成することができる。また、粉体から発生したガスを黒鉛坩堝内にある程度留めておけるため、発生したガスを有効利用することができる。この黒鉛坩堝には蓋をしておくことが好ましく、この蓋により炭素基材の周囲における気体の流れをより抑制することができる。この蓋としては、黒鉛製のもの、黒鉛からなるシート等が挙げられる。また、容器内で発生する気体を逃がすために、容器または蓋に通気孔を設けておくことが好ましい。なお、黒鉛からなるシートを使用する場合には、単に覆っているだけであるため、特に通気孔は必要ではない。
【0023】
炭素部材として、炭素粉末を使用する場合には、遷移金属を含む金属粒子、熱分解性ハロゲン化水素発生剤および炭素粉末を含む粉体を容器に充填し、この容器に充填した粉体に炭素基材を埋め込み加熱処理すればよい。なお、この炭素部材として炭素粉末を使用する場合には、容器は特に限定されることはない。そして、処理する際に、蓋をする、あるいは黒鉛からなるシートを被せる等して、容器内の気体の流れを抑制してもよい。また、容器として上記の黒鉛坩堝を用いてもよい。
【0024】
上記説明したように、炭素基材を埋め込んだ容器には、直接導入ガスを吹き込まないようにしている。逆に、水素ガスを導入しつつ処理しようとしても、黒鉛坩堝等の容器が水素ガスの妨げとなり、効率よく水素ガスを用いた処理を行うことは困難である。
【0025】
次に、炭素材料(アニール処理前の炭素材料)の製造及び、アニール処理において用いられる装置の一例について、図1を用いて説明する。ここで、炭素材料(アニール処理前の炭素材料)の製造では、炭素部材として黒鉛坩堝を使用した場合について説明する。
【0026】
(1)炭素材料(アニール処理前の炭素材料)の製造に用いる場合
上記装置は、加熱ヒーターを有する加熱炉1を備え、この加熱炉1内に載置された処理物を加熱処理するようになっている。この加熱炉1には、吸気口4および排気口5が設けられている。上記吸気口4からは、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスが導入できるようになっている一方、上記排気口5からは上記不活性ガス等が自然に排気されるようになっている。
【0027】
また、本装置には、加熱炉1内に黒鉛坩堝6が配置されるようになっている。この黒鉛坩堝6には、粉体(表面改質剤)3が充填され、この充填された粉体3に処理される炭素基材2が埋め込まれるようになっている。上記粉体3には、熱分解性ハロゲン化水素発生剤、及び、遷移金属を含む金属粉(金属粒子)が含まれている。尚、上記黒鉛坩堝6は蓋体7で蓋がされるようになっており、この蓋体7には通気孔が設けられている。
【0028】
上記図1の装置で炭素材料(アニール処理前の炭素材料)を製造する場合には、炭素部材としての黒鉛坩堝6に粉体3を充填し、この充填した粉体3に炭素基材2を埋設して、蓋体7をする。そして、この黒鉛坩堝6を装置に配置し、加熱する。これにより、炭素材料の製造方法を実施することができる。
【0029】
(2)アニール処理に用いる場合
炭素材料(アニール処理前の炭素材料)の製造に用いる場合と異なる点についてのみ説明する。
アニール処理を行う際には、上記吸気口4からはHガス等の還元ガスが導入できるようになっている一方、上記排気口5は図示しない真空ポンプと連結されており、加熱炉1内を減圧できるようになっている。炭素材料(アニール処理前の炭素材料)は黒鉛坩堝6との間に配置された図示しない炭素材料からなる支持板に配置されるようになっている。
【0030】
上記図1の装置でアニール処理を行なう場合には、炭素材料を直接装置内に配置した後、真空ポンプを用いて、装置内の圧力が1Pa以上10000Pa以下となるまで減圧する。次に、吸気口4からはHガス等の還元ガスを導入しつつ、装置内の温度を500℃以上1200℃以下まで上昇させる。このような状態を、1分以上20時間以下保持することによって、アニール処理が実施される。
【0031】
(その他の事項)
(1)上記形態では、炭素材料(熱処理前の炭素材料)として、遷移金属を含む金属粒子と熱分解性ハロゲン化水素発生剤等とを含む表面改質剤に埋め込まれた炭素基材を、該炭素基材以外の炭素部材とともに加熱処理することにより作製したものを用いたが、これに限定するものではなく、上記特許文献1や上記特許文献2で示したもの等、如何なる製法で作製した炭素材料にも本発明を適用しうることは勿論である。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
<実施例>
図1に示す装置を用い、黒鉛坩堝(東洋炭素株式会社製、型番IG−11)にステンレス粉(SUS314粉末)、塩化アンモニウム(NH4Cl)、アルミナ粉(Al23)からなる混合粉体を充填し、この充填された混合粉体に、炭素基材(冷間等方圧加圧成形を経た緻密質等方性黒鉛;かさ密度1.8g/cm3、平均気孔半径5μm、気孔率20%)を埋め込み、蓋をして加熱炉に配置して加熱処理した。加熱時、吸気口から窒素を導入し、排気口から自然排気させた。これにより、炭素材料が作製される。尚、上記加熱処理における温度は1000℃で、処理時間は30分である。
【0033】
次に、同一の装置を用い、上記のようにして作製した炭素材料を直接装置内に配置した後、真空ポンプを用いて、装置内の圧力が150Paとなるまで減圧する。次に、吸気口4からはHガスを導入しつつ、装置内の温度を1200℃まで上昇させ、このような状態を20時間保持することによって、アニール処理を行った。
このようにして作製した炭素材料を、以下、本発明材料Aと称する。
【0034】
<比較例>
アニール処理を施さなかった他は、上記実施例と同様である。
このようにして作製した炭素材料を、以下、比較材料Zと称する。
【0035】
<実験1>
上記本発明材料Aと比較材料Zにおいて放出されるClイオン濃度を測定したので、その結果を表1に示す。尚、実験は、各サンプル(大きさは2mm×3.5mm×50mm)を、純度18MΩcmの超純水100mL(水温は60℃)に24時間浸漬し、得られた抽出液をイオンクロマト法で分析した。
【0036】
【表1】

【0037】
上記表1から明らかなように、本発明材料Aは比較材料Zと比較して、残留塩素濃度が飛躍的に低減することが認められる。
また、上記本発明材料A(サンプルの大きさ2mm×3mm×30mm)について、波長193nmのレーザー光を20mJ/cmのエネルギー量で照射した際に放出されたガスを捕集し、超純水160mL中に導入し、溶出したイオン濃度をDionex社製イオンクロマトグラフィーシステム ICS―3000で測定した。その結果は、塩素濃度が0.23ppt、硫黄酸化物SO2−が0.10ppt、NHが3.5pptであった。また参考として、放出されたガスをCarbotorap349で吸着し、加熱脱着したガス中の炭素量をGC/MS測定にて測定することにより、有機物濃度を求めた。その結果、有機物濃度は0.67pptであった。これにより、本発明材料Aからは、塩素がほとんど放出されず、その他の不純物もほぼ放出されないことが示された。
【0038】
<実験2>
上記本発明材料Aと比較材料Zとにおける発塵性について、材料表面から発生するパーティクルの有無を調べたので、それらの結果を表2に示す。尚、パーティクルの有無については、各サンプルを無塵紙で擦り、無塵紙が黒く変色するか否かを目視で判断する方法と、各サンプルを金属基板上に落下させた後、当該金属基板を斜光観察する方法とにより調べた。
【0039】
【表2】

【0040】
上記表2から明らかなように、本発明材料Aでは無塵紙が黒く変色していないことから、発塵が抑制されていることが認められる。これに対して、比較材料Zでは無塵紙が黒く変色していることから、発塵が十分に抑制されていないことが認められる。
【0041】
<実験3>
上記本発明材料Aと比較材料Zとにおける反り量について調べたので、その結果を表3に示す。尚、実験方法は、発明材料Aのサンプル(L1=150mm、L2=122mmであって、厚さは3.5mm)を、三次元形状測定器〔(株)ミツトヨ製Quick Vision QVT202−PRO 6F〕を用いて測定した。具体的には、定盤に各サンプルを載置し、サンプルの垂直位置を約2.5mmごとに測定した後、得られた垂直位置を最小二乗近似により求めた仮想平面を基準に取った値に変換する。そして、変換した垂直位置の全測定点における最大値と最小値との差異fを反り量と定義した。尚、サンプルは各5つとした。
【0042】
【表3】

【0043】
上記表3から明らかなように、本発明材料Aは比較材料Zに比べて、反り量が大幅に低減していることが認められる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の炭素材料及びその製造方法は、半導体分野等で用いることができる。
【符号の説明】
【0045】
1 加熱炉
2 炭素基材
3 粉末
4 吸気口
5 排気口
6 黒鉛坩堝
7 蓋体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放出される塩素の濃度が5ppb以下であることを特徴とする炭素材料。
【請求項2】
表面に遷移金属炭化物の層が形成されている、請求項1に記載の炭素材料。
【請求項3】
前記塩素の濃度は、炭素材料(サンプルの大きさ2mm×3.5mm×50mm)を水(100mL)に所定の時間(24時間)浸漬して放出された塩素の濃度をイオンクロマト法で測定した値、又は、
炭素材料(サンプルの大きさ2mm×3mm×30mm)にエネルギー線(波長193nmのレーザー光)を照射した際に放出されるガスを純水(160mL)に導入してイオンを抽出し、塩素の濃度をイオンクロマト法で測定した値である、請求項1又は2に記載の炭素材料。
【請求項4】
炭素基材を、還元ガス雰囲気中において、500℃以上1200℃以下でアニール処理することを特徴とする炭素材料の製造方法。
【請求項5】
上記アニール処理は減圧下で行われ、且つ、その圧力が1Pa以上10000Pa以下である、請求項4に記載の炭素材料の製造方法。
【請求項6】
上記アニール処理の時間が1分以上20時間以下である、請求項4又は5に記載の炭素材料の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−111338(P2011−111338A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−266985(P2009−266985)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000222842)東洋炭素株式会社 (198)
【Fターム(参考)】