説明

炭素析出が低減した燃料油を水蒸気改質器内に導入するための方法およびシステム

炭素析出が低減した、改質物を生成するためのシステムおよび方法を開示する。本システムは、水蒸気源、過熱器、燃料噴射装置、予備改質器、および触媒ライニングを有する改質器で構成される。本システムは、噴射して水蒸気と混合させる前は燃料を低温に保ちつつ、水蒸気を過熱するように機能する。噴射および混合の後、水蒸気および燃料の混合物は、次いで予備改質器に通され、そこで触媒が燃料および水蒸気の混合物の一部を処理する。これらの部分が触媒で処理された後、混合物は改質器にまで通され、そこで触媒による材料のさらなる処理が行われる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、全体として、燃料電池に使用するための水素に富んだ改質物(hydrogen rich reformate)を生成するために炭化水素燃料を水蒸気改質するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
背景情報
電力を供給するより清浄でより効率的な方法を試みかつ見出すための全体的な方策の一部として、新たな燃料およびシステムが開発され続けなければならない。これらの技術および装置の中にいわゆる燃料電池、特に固体高分子形燃料電池(polymer electrolyte fuel cell:PEFC)がある。これらの装置は、一般に動作するのに水素燃料を必要とし、これらの材料が供給されると清浄で信頼性のあるエネルギー源を供給する。しかし、水素を安全かつ効率的に貯蔵および分配するのは困難であるので、通常はそのような装置の実用化は限定される。
【0003】
この問題に対応しようとするために、水蒸気改質反応を使用する燃料処理装置が、炭化水素燃料から水素を遊離させて燃料電池の使用場所に水素を供給するように使用され得る。水素を生成させるために改質され得る潜在的炭化水素源の中に、沸点範囲の高い低揮発性燃料、例えば家庭用暖房油、ディーゼル燃料、JP-8、および他の類似の炭化水素燃料がある。
【0004】
改質プロセスは通常は、炭化水素から、メタン残留量とともに二酸化炭素、一酸化炭素および水素の混合物への転換を含む。燃料を改質反応器(reforming reactor)に導入する前に、燃料は気相にされて水蒸気と混合されなければならない。しかし、これらの炭化水素の沸点範囲は、炭化水素の分解が起こり始めることができる温度に近く、このことは改質システム内の炭素析出物の形成の可能性を増大させる。炭素析出物の形成は、触媒活性を低下させるかまたは流路をふさぐことにより、改質器の性能に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0005】
析出物形成の傾向は、温度が上昇するにつれて高まる。通常の改質プロセスは、これらの材料を気化させ、予熱し、次いで反応させるために高温を必要とするので、炭素析出物の形成は頻繁に起こる問題である。さらに、これらの汚染物生成プロセスおよび炭素析出プロセスが一旦始まると、これらのプロセスを逆行させるのは非常に困難であり、システムの、これらの材料によるさらなる影響の受けやすさは増大する。
【発明の概要】
【0006】
概要
本発明は、改質燃料システム(reformate fuel systems)における炭素析出物を低減させ、したがってこの改質物システムの効率を高めるとともに、メタンなどの望ましくない副生成物の産生を低減させるための方法およびシステムである。この方法は、過熱水蒸気を利用して、比較的少量の冷却した燃料を気化させて高温混合物にするのに十分なエネルギーを供給する段階;水蒸気および燃料の均質な混合を迅速に達成する段階;この混合物を改質器に通す前に、この混合物を予備改質器(prereformer)に通して混合物を部分的に処理する段階;ならびにこの材料をヘッダ内に触媒を有する改質器に通す段階、を含む新規の様々な段階のうちの任意の段階を含むことができる。
【0007】
そのような段階を実行するためのシステムは、種々の任意の方法で構成され得るが、以下の品目のうちの少なくとも一つを有するシステムを通常は特徴とする:水蒸気の安定した源を産出するように構成された水蒸気源;水蒸気を過熱するための過熱器;水蒸気源と予備改質器の間に延在する混合管であって、該混合管を通る水蒸気の流れ(stream of steam)の中に予め選択された量の予め選択された燃料を受け入れるように構成された入口を有し、その予め選択された量の予め選択された燃料を水蒸気の流れの中に混合させることによって均一な混合物を形成することができるように十分な大きさになっている混合管;混合物を予備改質器内で受け入れかつ混合物の一部を少なくとも一つの触媒で処理するように、混合管に機能的に連結された予備改質器;および予備改質器に機能的に連結された改質器。
【0008】
以下に記述する本発明の好ましい態様では、特許請求の範囲で定義されているように、上述した要素の好ましい組合せが、本発明を実施するために発明者に公知の最良の形態である態様に適合する形で構成される。前述の要約の目的は、米国特許商標局および公衆、一般には特に特許または法律の用語または術語に精通していない、当技術分野における科学者、技術者および熟練者が、一瞥して、本出願の技術開示の性質および本質を迅速に決定できるようにすることである。要約は、特許請求の範囲で判断される本出願の発明を定義するためのものでもないし、本発明の範囲について決して限定するためのものでもない。
【0009】
本発明の様々な利点および新規な特徴が、本明細書において記載されており、以下の詳細な説明から当業者にはさらに容易に明らかになる。前述説明および下記説明では、本発明を実施するために企図された最良の形態を例示するために、本発明の好ましい態様だけを示し記述している。理解されるように、記載されている態様は、特許請求の範囲で定義されている本発明から逸脱することなく様々な点で改変することができる。したがって、後述する好ましい態様の図面および説明は、本来例示的なものとして見なされるべきであり、限定的なものとして見なされるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のシステムの第1の好ましい態様の概略図である。
【図2】図1に示されている態様の混合管部分の一部の詳細断面図である。
【図3】本発明の好ましい態様の燃料送出部分および混合管部分の集合図である。
【図4】図3に示されている本発明の好ましい態様の各部分の組立図である。
【図5】本発明の予備改質器の斜視図である。
【図6】本発明の好ましい態様の詳細内部断面図である。
【図7】所定の位置に触媒ストリップを有する本発明の好ましい態様のヘッダ部分の詳細断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明の詳細な説明
以下の説明は、本発明の一態様の好ましい最良の形態を含む。本発明はこれらの例示の態様に限定されないが、本発明は他の様々な態様およびそれらに対する改変も含むことが、好ましい態様についての本説明から明らかになる。したがって、本説明は、単なる例示的なものとして見なされるべきであり、いかなる様式においても限定的なものとして見なされるべきではない。本発明は様々な改変および代替構造が可能であるが、本発明を開示される特定の形態に限定するためのものではなく、それどころか、本発明は、特許請求の範囲に定義されている本発明の精神および範囲内にあるすべての改変、代替構造、および同等物を対象とすることが理解されるべきである。
【0012】
本発明の一つの好ましい態様では、本発明は、No.2燃料油、JP-8またはディーゼルなどの一般に市販されている燃料が、燃料電池の動作における触媒作用のための炭化水素源として利用され得るようにするシステムおよび方法である。本発明のこの好ましい態様の方法および構成は、システム内または触媒上での炭素析出物の蓄積なしに、水蒸気改質反応器におけるこれらのより重質タイプの燃料および炭化水素の利用を可能にする。多くの軍用車両はJP-8燃料で動作し、また多くの商用トラックは通常はディーゼルを使用しているので、これらの燃料の改質は、本来車載用または携帯用である燃料電池ベースの電力システムにとって非常に望ましい。
【0013】
これらのタイプの燃料の多くで存在する問題の一つは、気化温度が、通常は炭素析出物形成の増大の原因にもなる高温で通常は存在しなければならないことである。したがって、燃料の直接気化は、気化器内での析出物形成および燃料の変化につながる可能性があり、そのことは、改質システム内でのコークス析出物の形成につながって、目詰まり、触媒の非活性化または他の問題につながる可能性がある。本発明の好ましい態様では、システム内で燃料を加熱、混合、および処理するシステムおよび方法は、これらの通常付随する問題なしに重質燃料を使用できるようにする。
【0014】
本発明の好ましい態様についての説明は、これらの特定タイプの炭化水素を利用して示されるが、本発明は、使用者に所望されかつ当業者には明らかなように、それらに限定されることなく、様々な他の任意のタイプの材料での使用を含むように様々に具体化され得ることが、明確に理解されるべきである。本好ましい態様で記述されるような燃料電池用途での改質物の使用に加えて、本発明は、合成ガスの生成、および触媒作用における様々な他のタイプの燃料の直接使用を含む様々な他の分野でも利用され得る。したがって、本発明の以下の説明は、本来例示するためのものであり、限定するためのものではない。
【0015】
図1〜7は、本発明の一つの好ましい態様の様々な図を示す。この好ましい態様の図が示されているが、本発明はそれらに限定されることなく、後述する特許請求の範囲に記載されている装置と調和して様々に具体化され得ることが、明確に理解されるべきである。図1は、本発明の好ましい態様のシステムの様々な部分の概略図である。この概略図についての以下の説明は、本発明の本好ましい態様が利用する要素構成および方法を概略的に記述する。話を簡単にするために、本明細書において記述されている燃料のクリーニングおよび前処理(これらの燃料の硫黄含有量の低減など)に関する事項については論じず、これらの例示的な実施例に記述されている燃料は、予め指定された低硫黄含有量を既に有する。しかし、本発明の方法およびシステムはまた、記載されているシステムにおいて使用する前に燃料から硫黄および他の材料などの所望でない材料を除去する様々な他のタイプの構成および段階を含めるように改変され得ることが、明確に理解されるべきである。そのような改変は、予想され、本発明の範囲内に含まれる。
【0016】
ここで図1を参照すると、図1は、本発明の好ましい本態様の単純な概略図を示しており、気化器などの水蒸気源12が水蒸気の流れを産み出し、この水蒸気の流れは過熱器14に運ばれ、そこで次いで過熱される。次いで、過熱された水蒸気は、過熱器14から出て混合管16に入り、そこで予め選択された量の予め選択された液体燃料がこの水蒸気に加えられそれと乱流混合されて、この水蒸気は燃料および水蒸気が所望の割合で十分に混合された混合物を形成し、燃料成分のすべてが気相状態になる。後でより詳細に論じるように、本発明の好ましい態様において、安定した水蒸気の流れの中に予め選択された量の燃料を霧化し、水蒸気および燃料を、予め指定されかつ予め選択された組成を有する均一な混合が達成されるまで乱流混合することによって、この混合は実現される。この燃料を水蒸気の流れに噴射する前の燃料の望ましくない加熱を防止するために、燃料送出ライン30は、水蒸気源に供給されている周囲温度の水と熱的に接触することによって冷却される。本発明の本態様では、これは、水送出ライン32を燃料送出ライン30と接触した状態で配置することによって行われる。
【0017】
燃料および水蒸気の適切な混合が達成された後、次いでこの混合物は、予備改質器18に供給され、そこでこの混合物はパネルを通されて触媒の上に通され、それによって混合物の初期処理を行うことができる。この混合物をこの予備改質器18に通した後、次いでこの部分的に処理された材料は、改質器22へ通され、高温の改質物が生成される。
【0018】
次いで水素および他のガスを含む、改質反応器内で生成された高温改質物の全量が、予備改質器18を通って、入ってくる水蒸気および燃料が予備改質器18内の触媒の上を通ったときに起こる予備改質反応に熱を供給し、次いで水蒸気過熱器14を通り、そこで熱が改質物から伝達されて、入ってくる水蒸気を過熱する。これらの領域を通った後、次いで改質物は、装置の他の部分へ出される。
【0019】
改質物生成物の熱含量を利用して予備改質器18および水蒸気過熱器14を加熱すると、効率が改善され、水蒸気の完全な気化および燃料との混合、ならびに炭素析出物などの望ましくない副産物の形成を低減させる、制御された温度での燃料予備改質が支援される。続いて、このプロセスおよびこのプロセスが実行されるシステムについてより詳細に説明する。
【0020】
本発明のこの好ましい態様では、水蒸気源12は、マイクロチャネル気化器、例えば米国特許第6,994,829号に示されているマイクロチャネル気化器である。この装置が選択されるのは、それが、入口供給量の変化に素早く追従する非常に安定した非パルス状の完全気化水蒸気の流れを生成して、正確で安定した水蒸気と炭素の比を確保することができるからである。次いで水蒸気源12からの水蒸気は、管を経由して過熱器14へ通される。好ましくは、この水蒸気過熱器14は、複数の動作速度の範囲にわたって比較的一定の効果を有するように設計され得るマイクロチャネル熱交換器であり、かつ、システムからの熱損失を低減させる極めて小型である。水蒸気過熱器14は、水蒸気を約220℃〜270℃の温度から約460℃〜510℃の温度に過熱する。これが一旦行われると、水蒸気は、過熱器14から出て燃料混合管16に入る。
【0021】
本発明に水蒸気過熱器14が含まれることにより、本発明の様々な利点が供給される。水蒸気が最初に生成されると、比較的少量の過熱が水蒸気中に存在する。この水蒸気を過熱器14に通すと、水蒸気はさらに加熱され、それによって水蒸気の温度が上昇し、その結果、この水蒸気が予め指定された量の燃料(好ましくは周囲温度の液体燃料)と混合されたときに、得られる混合物は、少なくとも、予め選択された動作圧力で完全に気相になる。水蒸気の過熱部分は、水蒸気過熱器から出て来る水蒸気の流れに噴射された燃料を気化させるために利用される熱を譲り渡す。
【0022】
水蒸気が十分には高温でない場合、より高い沸点を有する燃料の成分が、その気相点(vapor phase point)まで引き上げられることはなく、水蒸気流(steam stream)中に液体として存在し続ける。その結果、燃料と水蒸気の混合物は均一にはならず、凝縮成分が高温領域内にとどまる時間は増大する。これは、炭素析出形成の可能性の増大を導き得る。供給混合物を改質温度にするために必要な追加の熱を水蒸気だけに供給することにより、非混合燃料が高温である時間、および水蒸気と混合する前に燃料が受ける最高温度とが最小限に抑えられて、炭素形成の可能性が低減される。
【0023】
水蒸気がないときに燃料をその気化温度まで加熱しないようにすることが望ましい。また、気化温度まで一旦加熱されると、燃料が水蒸気と混合され改質が開始するまでの時間も最小限に抑えられるべきである。これを達成するために、本発明のシステムはいくつかの特徴を含む。第1に、燃料供給ライン30は断熱される。第2に、水蒸気源に水を供給する水ライン32は、燃料供給ラインと熱的に緊密に接触するように連結される。これにより、燃料はこの水の通過によって冷却される。第3に、いくつかの例では、燃料の水蒸気の流れへの送出は、装置内における材料の適切な気化および混合を増進するように送出装置により監視され得る。
【0024】
本発明のこの好ましい態様内に存在する燃料混合管の態様の詳細図が、図2、3および4に示されている。本発明における燃料と水蒸気の流れとの適切な混合は、これらの図に示されている構成によって達成される。最初に図2を参照すると、燃料ラインは、燃料源から断熱されかつ冷却された導管に沿って、各端部に既定のサイズの開口部を有する中空の皮下注射型ニードル(hollow hypodermic type needle)34を保持するように適合された末端部まで延在する。燃料が送出される皮下注射ニードル(hypodermic needle)34の先端部を横切って水蒸気が素早く噴射されることにより、燃料は水蒸気の流れの中に送出される。このニードル34の端部を横切る流速の増大は、水蒸気が流れる、より大きな口径を有する管材料部分の間の管材料の口径を狭めることによって達成される。図3および4は、組み立て前の本発明の燃料-水蒸気混合器部分の組み立てられた図および組み立られていない図を示す。本発明のこの好ましい態様では、皮下注射ニードル34は、燃料供給ラインの中にろう付けされ、次いで、ニードルを有する燃料供給ラインは皮下注射入口ポートの中にろう付けされ、それによってニードル先端部が水蒸気ラインにおける拡大部のすぐ下流に位置づけられる。
【0025】
制御された量の燃料が流れるニードル34の端部を横切って過熱水蒸気の組合せ体が移動することにより、燃料は霧化され、次いで過熱水蒸気の顕熱を使用して蒸発することができる。燃料が皮下注射ニードルから出たときに、この燃料をモル濃度がより大きい水蒸気流(通常は水蒸気と炭素原子の最小比は3である)の中に気化させることにより、燃料の完全気化を達成するために必要な温度は低下する。したがって、C12H26で表される標準的な燃料の場合、供給物は、(モル基準で)36/37=97.3%の水蒸気および1/37=2.7%の燃料からなる。この高速の過熱水蒸気は、送出ニードルの先端部の上を流れ、液体炭化水素を霧化し、液体燃料をほとんどすぐに蒸発させ、水蒸気中に混合させる。高モル分率の水蒸気はまた、改質開始前の高温での燃料の滞留時間が、燃料を別個に気化させるシステムに比べて短くなることを確実にする。
【0026】
燃料は、水蒸気の流れに噴射されてから、混合管16内で乱流によって混合される。管が、それが入っている導管の内径のおおよそ20倍の長さを有することにより、JP-8またはディーゼル燃料が利用されるときに適正レベルの混合が可能になることが見出されている。管の長さおよびこの装置の構成は使用者の要望および必要性に応じて適切に改変され得ることが、明らかでありかつ理解されるべきである。この要素は、流れが乱流である限り管の口径の影響を受けない。したがって、必要とされる混合管の長さは、より小さい口径の管が使用される場合に、より短くなる。管材料の口径は、システムについて予想される水蒸気流量全域にわたって乱流が達成され、かつ最大流量での圧力降下がシステムに必要とされる全供給圧力をあまり変化させないように選択される。
【0027】
この混合プロセスの間、ニードル34内で沸騰しないようにすることが重要であるが、これは、燃料のスラッギング(slugging)およびニードル34の下流側での不均一な混合物の形成を導き得るからである。低圧力での動作中、燃料は燃料ライン内でバブルポイント温度(bubble point temperature)未満に維持されることが重要である。バブルポイント温度を上回った場合、ニードルを通る燃料のスラッギングが起こり、燃料に富む部分(fuel rich)と燃料に乏しい部分(fuel lean)が交互になった水蒸気燃料混合物のスラグが形成される可能性がある。これの防止に役立つように、送出管30のサイズは、ケースの前面に近接する断熱材と燃料が噴射ニードルに入る場所との間に燃料が存在する滞留時間を最短にするように選択される。さらに、小口径の燃料ライン30は、それが水蒸気ライン内に噴射されるように分離する直前まで、水供給ライン32にろう付けされる。これは、供給水が冷却液として機能できるようし、かつ燃料の早期加熱を防止する。
【0028】
動作中、膜(通常はパラジウム合金製)への水素の浸透が、改質器22内で上昇した圧力によって可能となる。システムの圧力が一旦上昇すると、この圧力は通常は、燃料の臨界圧力よりも高くなる。その結果、燃料ライン30またはニードル34内における気化による燃料のスラッギングの可能性はなくなる。
【0029】
混合物は、図2の詳細断面図に示されているこの長さの混合管16を通ってから適切に混合され、図5〜6に示されているような予備改質器装置18を通り抜け、次いで、様々な水蒸気改質パネルで構成された改質器22に至る。これらの特徴および装置の詳細図が図7に示されている。
【0030】
ここで図5を参照すると、本発明の好ましい態様の予備改質器18の斜視図が示されている。図6は、この同じ予備改質器装置18の内部特徴を示す。本発明の本態様において、予備改質器装置18は、高温の混合された水蒸気および燃料の混合物を受け入れる管に機能的に連結される。予備改質器18は、高温混合物が、予備改質器18に入るときに装置の上部から入り、一定断面積を有するように構成されたヘッダ28を横断するように構成される。この断面積の物理的構造は、入ってくる反応物の速度をヘッダ28の上部で制御し、かつ良好な流量分布が得られることを確実にするように設計される。この材料がヘッダ28の下方へ流れるにつれて、モル流量は、流量がヘッダの下部でパネルの下部チャネルを通って流れる量と同じになるまで、だんだん少なくなる。これにより、ヘッダ28内での滞留時間が長くなり、触媒24のない部分では、ヘッダ28の下部を通って流れる反応物の改質の開始が遅延することになる。
【0031】
さらに、改質パネル22は、燃焼ガスによって加熱され、したがって、入ってくる反応物を含有する予備改質器18を去り改質器パネルに向う部分的に改質された高温混合物の温度よりも高温になる。その結果、入ってくる反応物は混合物がヘッダの下方へ進むにつれて熱くなり、最も高い最高温度がヘッダの下部で生じる。炭素析出にとって最も重要な位置のうちの一つであるのは、最初の改質器パネル上のこのヘッダの下部である。しかし、本発明の好ましい態様に示されているように、触媒ストリップ24がヘッダ28内に配置され、したがってヘッダ28内で改質が始まる。ヘッダ28内で起こる改質の程度は、通常はヘッダ28の上部では無視することができるが、ヘッダ28の下部に向かって増大する。
【0032】
この改質反応が含まれていると、入口ヘッダを冷却するのに役立ち、かつより多くの水素をヘッダ内の材料の流れに導入し、結果としてガス量を増大させて、送出装置内での燃料の滞留時間を短縮し、かつ水素分圧を増大させる。これは、結果として炭素形成を抑制するのにも役立つ。これらの特徴の詳細図が図7に示されている。
【0033】
本発明の本好ましい態様では、改質器システムは、燃料が1/16インチ管によって0.028インチ外径(OD)(約0.013インチ内径(ID))の皮下注射ニードルの中に送出される7.5kWe規模の改質器システムである。好ましくは、ニードルは、ニードルの先端部が、1/8インチ管から1/4インチ管に拡大している水蒸気流チャンバの中心に位置するよう配置される。本発明の好ましい設計についてのこれらの特徴および説明を上述したが、本発明はそれらに限定されることなく、使用者の要望および必要性に応じて様々な他の方法で具体化され得ることが、明確に理解されるべきである。
【0034】
システムの効率を高めるためには、炭素形成をそれ自体で促進しない改質触媒を選択することが好ましい。特定の触媒の選択は、この課題を使用者が明確に念頭に置いてなされるべきである。そのような選択は、当業者によってなされ得る適切な決定であるが、任意の特定の触媒を含めたり除外したりするのは、本発明の範囲を限定する要素ではない。
【0035】
炭素析出の削減は、炭素析出物の形成をもたらさない材料を利用することによってさらに増進することができる。本発明の本好ましい態様では、改質されていない燃料が曝露され得る表面のすべてが、ステンレス鋼で製作されている噴射ニードルを除いて、インコネル625で製作され得る。優れた高温特性に加え、インコネル625は、微量成分添加物のニオブ+タンタル(3.15〜4.15%)およびモリブデン(8〜10%)を含有する。これらの材料は、炭素析出物の形成に対する本発明の抵抗性を促進するとも考えられている。本発明の本好ましい態様について、これらの材料を利用しおよびこれらから製作されるものとして記述しているが、本発明はそれに限定されることなく、様々な他のタイプの材料もまた使用者の要望および必要性に応じて利用され得ることが、明確に理解されるべきである。
【0036】
先行技術のある燃料改質システムでは、改質器からの改質物生成物を使用して入ってくる反応物を予熱する回収熱交換器が、効率を上げようとする試みに利用されている。しかし、そのような状況で存在する一つの問題は、このような再熱装置が反応のための適切な温度(約650〜800℃)を維持する間、改質を開始せずに高すぎる温度に加熱すると、炭素析出物の形成を導き得ることである。この現象は、特に改質物の温度が800℃に近付いたときに観察されている。これらの炭素析出物は、特に燃料電池改質器の入口、および特定の態様において回収熱交換器が利用される場合には回収熱交換器の出口に近接する様々な領域上に蓄積する。
【0037】
本態様では、この問題は、改質触媒を回収熱交換器内に配置して予備改質器18を形成することによって大幅に軽減されている。これらの触媒は、高温の改質器から抽出された熱を使用して、主改質器よりも低い温度で改質反応を開始する。これらの触媒の存在は、回収熱交換器に対する冷却を行い、それによって水蒸気および燃料が改質器パネルに入る前に達する最高温度をおおよそ570℃〜600℃の範囲に低下させること;炭化水素供給の5〜10%を改質して、供給流の中に約3.4〜8%の水素を生成することを含むいくつかの機能をもたらす。この範囲は、炭素析出物形成を低減させると考えられ、他の方法およびシステムとは実質的に異なる。このプロセスはまた、入口改質器パネルのヘッダ内での燃料の滞留時間を短縮させるモル流量の増大により、システム内におけるガスの速度を、多くの他のシステムと比べて増加させる。
【0038】
本発明の好ましい態様の一つの付加的な特徴は、これらの温度で改質する場合の通常の平衡メタン含有量はかなり高い一方で、メタン(この例では望ましくない副生成物)の濃度が非常に低かったことである(<0.28%)。これに対する理由としては、反応プロセスの初期における燃料転換レベルが低く、それによって水蒸気濃度がCOおよびH2に比べて高く、そのことが、反応CO+3H2→CH4+H2Oの平衡をメタンの形成から遠ざけていることが考えられる。これは、本好ましい態様の効率が先行技術に存在する他のシステムおよび装置よりも高いことを実証しているもう一つの特徴である。
【0039】
本発明の様々な好ましい態様を示し記述してきたが、本発明はそれらに限定されることなく、下記の特許請求の範囲の範囲内で実施するように様々に具体化され得ることが、明確に理解されるべきである。先の説明から、これらの特許請求の範囲によって定義されているような本発明の精神および範囲から逸脱することなく本出願に対する様々な変更がなされ得ることが、明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
安定した水蒸気の流れ(a steady flow of steam)を発生させるように構成された水蒸気源と、
該水蒸気源と予備改質器(prereformer)の間に延在する混合管であって、該混合管を通る水蒸気の流れの中に燃料を受け入れるように構成された開口部を有し、該燃料を該水蒸気の流れの中に完全に混合させることによって均一な混合物を形成するのに十分な大きさになっている混合管と、
該混合物を該予備改質器内に受け入れて、該混合物の一部を少なくとも一つの触媒で処理するように、該混合管に機能的に連結された該予備改質器と、
該予備改質器に機能的に連結された改質器と
を含む、炭化水素燃料用の水蒸気改質アセンブリ内での炭素析出を低減させるためのシステム。
【請求項2】
水蒸気源と混合管との間に機能的に連結された過熱器をさらに含み、それによって該水蒸気源からの水蒸気が該過熱器へ移送され、該過熱器が該水蒸気源からの水蒸気を過熱する、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
改質器が、該改質器の入口部分内に位置する少なくとも一つの触媒を有する、請求項1記載のシステム。
【請求項4】
入口がヘッダを有し、該ヘッダの少なくとも一部が予め選択された触媒でライニングされている、請求項3記載のシステム。
【請求項5】
燃料が、冷却された送出ラインを通って混合管に送出される、請求項1記載のシステム。
【請求項6】
燃料が、予め選択された量の燃料を中空ニードルに通して霧化することによって水蒸気の流れの中に導入される、請求項1記載のシステム。
【請求項7】
燃料が、水蒸気中に、燃料に含有される炭素1モル当たり水蒸気約3モルまたはそれ以上のモル濃度比で混合される、請求項1記載のシステム。
【請求項8】
予め選択された過熱量を有する水蒸気の流れを提供する段階と、
予め選択された量の燃料を該水蒸気の流れの中に加える段階と、
該燃料および該水蒸気の流れを混合し、それによって該水蒸気の流れの中への該燃料の均一な混合を得る段階と
を含む、改質燃料電池(reformate fuel cell)用途における炭素析出を低減させるための方法。
【請求項9】
燃料が、水蒸気の流れの中に挿入された中空ニードルを通って該水蒸気の流れの中に加えられる、請求項8記載の方法。
【請求項10】
燃料が、水蒸気の流れに加えられる直前まで予め指定された温度未満に維持される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
水蒸気の流れが、燃料が該水蒸気の流れに噴射される前に過熱装置によって過熱されている、請求項9記載の方法。
【請求項12】
水蒸気の流れおよび燃料を改質器の中に通す前に、該水蒸気の流れおよび該燃料を少なくとも一つの触媒を含有する予備改質器に通す段階をさらに含む、請求項9記載の方法。
【請求項13】
予熱された水蒸気および燃料の混合物を、入口ヘッダを有する改質器装置に通す段階をさらに含み、該入口ヘッダがその中に含まれる触媒を有する、請求項9記載の方法。
【請求項14】
水蒸気炭化水素混合物を改質器に通す前に、該水蒸気炭化水素混合物を、該水蒸気炭化水素混合物を部分的に処理するための触媒を含む改質器に通す段階を含む、水蒸気改質物システムにおける炭素析出物を低減させるための方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−523463(P2010−523463A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−503140(P2010−503140)
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【国際出願番号】PCT/US2008/059610
【国際公開番号】WO2008/127911
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(506283798)バッテル メモリアル インスティチュート (19)
【Fターム(参考)】