説明

炭酸エチレン精製方法、精製装置及び結晶精製用搬送装置

【課題】不純物を含有する炭酸エチレンを、オゾン分解等の特別な装置等を用いることなく、再生を効率的に行うことができる簡易な炭酸エチレン精製方法を提供する。
【解決手段】炭酸エチレンを含む少なくとも2種の有機溶剤を含み、炭酸エチレンが許容溶解量又は許容溶解量に近い量溶解している混合溶剤に、不純物を含有する炭酸エチレンを加えて混合溶剤の許容溶解量を超えた炭酸エチレンの粗結晶を析出させる結晶析出工程と、結晶析出工程で析出した炭酸エチレン粗結晶を混合溶剤から分離する固液分離工程と、固液分離工程で分離された炭酸エチレン粗結晶を加温し表面の炭酸エチレン結晶を溶解するとともに表面の不純物を除去する結晶精製工程とを有する炭酸エチレン精製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不純物を含有する炭酸エチレンを用いて、炭酸エチレン結晶を析出及び精製して炭酸エチレンの再利用を可能とする炭酸エチレン精製方法、精製装置及びそれに用いる結晶精製用搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハの製造工程は、半導体ウェハ全面へのレジストの塗布等の様々な塗布工程を経て行われるものである。このとき、レジストの塗布は、スピンコーターによりウェハを回転しながらウェハ中央部に滴下されたレジストを遠心力により振り切って、所定の膜厚のレジスト膜をウェハ表面に形成することにより行われる。
【0003】
スピンコート方式はレジスト塗布に限らず、SOG(Spin On Grass)膜を形成するSOG塗布等にも使用されている。すなわち、回転台に固定されたウェハを回転制御してウェハ中央部に滴下されたSOG液を振り切ることにより、レジスト塗布と同様に所定の膜厚のSOGを形成することができる。
【0004】
このようなスピンコート方式においては、振り切った塗布材は、ドレーン用のカップ(スピンコーターカップ)に落ちて回収、ドレーンから排出され、他の処理槽へと導かれる。
【0005】
しかし、上記いずれの塗布処理においても、これが繰り返されることによって、スピンコーターカップにはドレーンから排出されずに残留したレジストの堆積物が徐々に蓄積されていく。この堆積物が多くなると、ウェハ工程におけるパーティクルの影響が懸念される。そこで、メンテナンス時において、スピンコーターカップを洗浄し、残留した堆積物を除去する必要が生じ、エチレングリコールやシンナー系等の有機溶剤やオゾン水の供給による洗浄が行われている。
【0006】
また、ウェハの洗浄に用いるものとして、同様にレジスト塗膜の剥離、除去を行うことができる、4−メトキシ−1−ブタノール、3−メトキシ−1−ブタノール又は4−メトキシ−1−ブタノールと3−メトキシ−1−ブタノールとの混合物からなる溶剤と、炭酸プロピレンとから構成されるフォトレジスト用剥離液組成物、40〜50容量%の炭酸エチレン等の非プロトン性・環状炭酸エステル、並びにエチレンジアセテート、エチレンジブチレート等のプロトン性極性化合物、さらにN−メチル−2−ピロリドン及びトリエタノールアミンを含む溶剤の超音波撹拌浴中でフォトレジストを除去する方法、オゾンガスを溶解した処理液を用いて有機被膜を除去する方法として、炭酸アルキレンと気体中のオゾンとの分配係数が室温で0.6以上であり、かつ、オゾンによって分解され難い1種又は複数種混合の有機溶剤とを含む溶液を用いる方法等が知られている。
【0007】
一般に、有機溶剤を使用した場合、その使用量が多いため環境負荷の観点から問題があったが、これに対して、環境負荷が比較的小さい炭酸エチレン又は炭酸プロピレンは、その単独の使用でも十分にレジストの剥離、除去を行うことができることがわかってきた。さらに、これを有効活用しようと炭酸アルキレンにより有機被膜を除去した後、溶解した有機被膜をオゾンによって低分子量物質に分解して、炭酸アルキレンを洗浄用の処理液として再生し、循環使用することが検討され始めている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003−330206号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この炭酸アルキレンの再生は、処理液中に移行した有機被膜構成物質をオゾンにより低分子量物質にしているため、処理液の有機被膜除去能を効果的に伸ばすことができるものである。
【0009】
しかしながら、この方法によっても、洗浄操作を行うに従い分解生成物である低分子量物質が処理液中に不純物として蓄積されていくため、処理液の有機被膜除去能が次第に低下していくことは避けられない。
【0010】
そこで、本発明は、炭酸エチレンを洗浄液として用いた場合に、このような有機被膜除去能が低下した炭酸エチレンから不純物である低分子量物質を除去したり、又はオゾン分解を用いない場合でも、炭酸エチレンに溶解している有機被膜構成物質を除去したりすることによって、炭酸エチレンの有機被膜を溶解する能力を再生し、炭酸エチレンを洗浄液として効率的に再生利用することができる簡易な炭酸エチレン精製方法及び炭酸エチレン精製装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は鋭意検討した結果、炭酸エチレンが許容溶解量近辺に溶解している混合溶剤に、レジスト洗浄に使用した炭酸エチレンを加えることで炭酸エチレンが混合溶剤の許容溶解量を超えた状態を作り出し、その超えた炭酸エチレンの結晶を析出させ、さらに析出した炭酸エチレン結晶を加温して精製することにより、炭酸エチレンの洗浄液としての再利用が可能であることを見出し本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明の炭酸エチレン精製方法は、炭酸エチレンを含む少なくとも2種の有機溶剤を含み、炭酸エチレンが許容溶解量又は許容溶解量に近い量溶解している混合溶剤に、不純物を含有する炭酸エチレンを加えて混合溶剤の許容溶解量を超えた炭酸エチレンの粗結晶を析出させる結晶析出工程と、結晶析出工程で析出した炭酸エチレン粗結晶を混合溶剤から分離する固液分離工程と、固液分離工程で分離された炭酸エチレン粗結晶を加温し表面の炭酸エチレン結晶を溶解するとともに表面の不純物を除去する結晶精製工程とを有することを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の炭酸エチレン精製装置は、炭酸エチレンを含む少なくとも2種以上の有機溶剤を含み、炭酸エチレンが許容溶解量又は許容溶解量に近い量溶解している混合溶剤を収容する、炭酸エチレン粗結晶析出用の結晶析出槽と、結晶析出槽に不純物を含有する炭酸エチレンを供給する供給手段と、結晶析出槽で析出した炭酸エチレン粗結晶を分離する固液分離手段と、固液分離手段により得られた炭酸エチレン粗結晶を精製するために加温する加温手段とを有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の炭酸エチレン精製方法によれば、不純物を含有した炭酸エチレンを利用して炭酸エチレンの粗結晶を得て、この粗結晶の精製を行うことにより高純度の炭酸エチレンを回収することができ、また、本発明の炭酸エチレン精製装置によれば、本発明の炭酸エチレン精製方法で行う一連の工程を簡便に行うことができる。これにより得られた炭酸エチレンは、例えばレジストの洗浄液として再利用することができる。
【0015】
さらに、本発明の結晶精製用搬送装置は、炭酸エチレン結晶のろ過と、精製及び搬送を行うことができ、本発明の炭酸エチレン精製装置に適したものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明について、実施の形態を例に図面を参照しながら説明する。
【0017】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態における炭酸エチレン精製装置の概念図である。
図1において、炭酸エチレン精製装置1は、炭酸エチレン粗結晶を析出させる結晶析出槽2、不純物を含有する炭酸エチレンを収容する洗浄液収容槽3、洗浄液収容槽3から不純物を含有する炭酸エチレンを供給する供給手段4、結晶析出槽2で析出した炭酸エチレン粗結晶を混合溶剤と分離する固液分離手段5及び分離した炭酸エチレン粗結晶を加温により精製する加温手段6とから構成されている。
【0018】
ここで、結晶析出槽2は、炭酸エチレンを含む少なくとも2種の有機溶剤を含み、炭酸エチレンが許容溶解量又は許容溶解量に近い量溶解している混合溶剤を収容する容器である。ここに収容された混合溶剤に、レジスト等の洗浄に使用した洗浄液を収容する洗浄液収容槽3から供給手段4を通じて不純物を含有する炭酸エチレンを加えることができ、この操作により結晶析出槽2は、炭酸エチレン粗結晶を析出する場となるものである。
【0019】
この結晶析出槽2が収容する混合溶剤の炭酸エチレン以外の有機溶剤としては、炭酸エチレンの許容溶解量が有限であって、さらに供給手段4から供給される不純物を含有する炭酸エチレンの不純物を溶解する性質を有するものであればよく、例えば、炭酸プロピレン、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、安息香酸等の芳香族カルボン酸等の炭酸エチレンとの融点差が大きい有機溶剤が挙げられる。この有機溶剤としては、炭酸エチレン及び不純物の溶解性の観点から炭酸プロピレンであることが好ましい。
【0020】
なお、結晶析出槽2は、炭酸エチレンの溶解、炭酸エチレンの許容溶解量(炭酸エチレン結晶の析出)、不純物の溶解度等の観点から、収容される混合溶剤の温度を40〜60℃に加温したり、15〜30℃に冷却したりする温度調節装置が設けられていることが好ましい。
【0021】
このとき、不純物を含有する炭酸エチレンを結晶析出槽2へ混合する前よりも混合後の温度を低く設定すると、炭酸エチレン結晶の析出量を増やすことができるが、この場合には、不純物の溶解度も下がるため、不純物が析出しないような温度設定とすることが好ましい。
【0022】
本発明の固液分離手段5は、結晶析出槽2で析出した炭酸エチレン粗結晶を、不純物を含有する炭酸エチレンを混合して炭酸エチレンを許容溶解量まで溶解している混合溶剤と分離する機能を有するものである。
【0023】
この固液分離手段5としては、例えば、ろ過装置、圧搾分離装置、遠心分離装置、沈降分離装置等の公知の固液分離手段が挙げられ、これら装置により炭酸エチレン結晶を混合溶剤と分離することで、炭酸エチレン粗結晶を得ることができる。この中でも、真空ろ過装置であることが好ましく、真空ろ過装置としては、連続式として回転円筒型、回転円板型、水平型、プリコート型、回分式として真空ヌッチェ型や真空葉状型等が挙げられる。
【0024】
次いで、得られた炭酸エチレン粗結晶を本発明の結晶精製手段6により処理するが、この結晶精製手段6としては、ヒーター、温風を送出する送風装置等の加温装置、洗浄装置、再結晶装置等が挙げられる。ここでは、粗結晶として得られた炭酸エチレンは、その結晶に含まれる混合溶剤が純度低下の大きな原因であるため、炭酸エチレン結晶の純度を高めて洗浄液としての再利用を図る程度の純度にすることができるものであればよい。
【0025】
この結晶精製手段6としては、特に加温装置であることが好ましく、加温装置で精製操作を行った場合には、不純物を含む結晶は融点が低下しており、純粋な結晶よりも早く溶解し、これによって特に外表面の炭酸エチレン結晶が溶解して混合溶液を一緒に洗い流すことで純度を高めることができる。
【0026】
ここで、加温装置を用いた場合、条件によっては結晶内部に存在する不純物も発汗現象により結晶表面に出てくることがあり、より純度の高い炭酸エチレン結晶を得ることができる。
【0027】
発汗現象は、結晶内部に取り込まれた母液を除去する方法として知られており、不純物を含む結晶の温度を融点近くに保ち、新たな固液平衡関係のもとで液の量を増し、これによって内部から不純物を含む液がにじみでてくる現象である。ある温度で結晶化した結晶はそのときの固液平衡の関係から母液をある一定の組成で含む粗結晶で得られ、この粗結晶を結晶化よりも高い温度に保つと、新たな平衡関係のもとで液の量と結晶の量の比が変わり、液相の量が増す。つまり、結晶の内部で液量が増し、結晶内部の欠陥や粒界部分を中心とする溶解(溶融)しやすい箇所を通じて液相が結晶表面へにじみ出てくるようになる。この場合には、不純物の除去が母液の除去により行われ、結晶は次第に多孔質状になり効果的に精製することができる。
【0028】
なお、表1及び図2は、炭酸エチレン結晶を20g、19g、18g、17g、16gを溶解して炭酸エチレン溶液とした中に、不純物としてポジレジストを部屋の中に一日放置したものを0g、1g、2g、3g、4g添加して、レジスト濃度がそれぞれ0%、5%、10%、15%、20%となるように調整した溶液から得られた結晶の融点を測定したものである。これにより、不純物の増加により融点がどの程度下がるか確認できた。
【表1】

【0029】
さらに、使用済み炭酸エチレン洗浄液を一旦オゾン処理した場合には、処理液に含まれるレジストは前記実験レジストより低分子化されるため不純物濃度が高くなり、融点はさらに低下する。
【0030】
この結晶精製手段6は、炭酸エチレンの融点が36.4℃であるため、混合溶液で汚染された結晶を融解して表面を洗い流す程度に溶解させて、結晶の純化を行うのに適した温度となるようにするため、結晶精製手段としては加温装置を用いて、38〜50℃の温風を送出するものであることが好ましく、この温風は38〜40℃であることが特に好ましい。
【0031】
また、この好ましい温度雰囲気下に、1〜20分間炭酸エチレン粗結晶を置くことによって炭酸エチレン結晶の表面を洗い流す程度に溶解させて、結晶の純化を行うのに適したものである。
【0032】
更に、洗い流した液体を速やかに吸引させるための真空度(減圧)も重要であり、粗結晶の大きさにより最適な範囲は変動するが、使用する真空ポンプは300〜600mmHg程度の真空度を可能とするものが好ましい。
【0033】
次に、この炭酸エチレン精製装置1を用いて炭酸エチレン精製の操作を行った場合の各工程について説明する。
【0034】
まず、炭酸エチレンを含む少なくとも2種の有機溶剤を含み、炭酸エチレンが許容溶解量又は許容溶解量に近い量溶解している混合溶剤が収容された結晶析出槽2に、許容溶解量を超えた炭酸エチレンが存在するように容器3から不純物を含有する炭酸エチレンを加える。混合溶剤において、炭酸エチレンの許容溶解量を超えると、その超えた分の炭酸エチレンは結晶として析出し、加えられた不純物は混合溶剤に溶解した状態へと移行していく。ここで析出する炭酸エチレン結晶は、粒径0.5〜3mmの粒状結晶として得ることが好ましく、粒度分布が均一な結晶を得るために結晶の析出条件としては、36℃以上の混合溶剤を15〜30℃で、混合溶剤をゆっくりと冷却することが好ましい。このときの冷却時間は、2〜3時間であることが好ましい。
【0035】
ここで得られた炭酸エチレン粗結晶は、混合溶剤と共に次に説明する固液分離工程へ付されるが、これは、炭酸エチレン粗結晶が析出した結晶析出槽2を傾斜させて炭酸エチレン結晶及び混合溶剤を固液分離手段5に移送しても良いし、結晶析出槽2に配管を設けておき、ポンプにより配管を通して固液分離手段5に移送しても良い。
【0036】
移送された炭酸エチレン結晶は、この固液分離工程で液体である混合溶剤と分離し、目的とする炭酸エチレン結晶を得ることができる。
【0037】
この固液分離工程は、例えば、ろ過、圧搾分離、遠心分離等の一般に公知の固液分離工程により行うことができる。しかし、ここで得られる炭酸エチレン結晶は、粗結晶であり、結晶の析出時に内部に取り込まれた混合溶剤や不純物、固液分離工程によっても取りきれない表面に存在する混合溶剤や不純物を含んでいるものである。
【0038】
したがって、再利用するためには、次に、固液分離工程により得られた炭酸エチレン粗結晶の純度を向上させる結晶精製工程を行う必要があり、この結晶精製工程としては、洗浄、加温、再結晶等の公知の精製方法を挙げることができる。この中でも、炭酸エチレン結晶を加温して精製することが、混合溶剤、不純物を含んでいる炭酸エチレン結晶の表面を溶解して洗い流すため効率良く、操作も簡便で、炭酸エチレン結晶の後処理も必要ないという点で好ましい。
【0039】
処理温度が50℃を超えると、炭酸エチレン結晶が必要以上に溶解してしまい、純度は非常に高くなるが、回収することができる結晶の量が少なくなり再利用の効率が著しく低下してしまう。
【0040】
また、処理温度が38℃未満であると、炭酸エチレン結晶がほとんど溶解せず、純度を向上させるのに不十分となってしまう。
【0041】
このようにして精製された炭酸エチレン結晶は、その純度が98%以上と高純度のものとして得ることができる。
【0042】
(第2の実施形態)
図3は、本発明の第2の実施形態における炭酸エチレン精製装置の概念図である。
図3の炭酸エチレン精製装置は、結晶精製手段6において精製された炭酸エチレン結晶を最終的に回収する結晶回収手段7と、固液分離手段5で分離された炭酸エチレン粗結晶を結晶回収手段7まで搬送する搬送手段8が設けられており、結晶精製手段6が加温装置16であり、この加温装置16は搬送手段8の搬送路中に設けられていること以外は、第1の実施形態における炭酸エチレン精製装置と同様の構成を有する。
【0043】
本実施形態では、結晶を析出し、固液分離して炭酸エチレン粗結晶を得るまでは、第1の実施形態と同一であるため、以下、それ以後の手段及び工程について説明する。
【0044】
本実施形態の炭酸エチレン精製装置11における結晶回収手段7は、精製された炭酸エチレン結晶を回収する容器であって、搬送手段8の先端に設けられているものである。この結晶回収手段は、精製された炭酸エチレンが回収されるものであり、得られた精製炭酸エチレン結晶は、結晶のまま保存しても良いし、加温して液体として保存しても良い。
【0045】
液体とする場合には、結晶回収手段7を加温する加温手段を設ければよく、この加温手段は、炭酸エチレン結晶を容易に溶解させることができるように、結晶回収手段を39℃以上に加温することができるものであればよい。
【0046】
また、搬送手段8は、固液分離手段5により分離された炭酸エチレンの粗結晶を結晶回収槽7まで搬送するものであり、具体的には、2つの駆動ローラーで回転するベルトにより搬送するベルトコンベアが挙げられる。
【0047】
後で説明するように、コンベア上で炭酸エチレン結晶は、表面が溶解して一部液状の炭酸エチレンとなるため、コンベアベルトを搬送方向に向かって上昇するように傾斜を設けたり、ネットコンベアで構成することが好ましい。
【0048】
搬送手段8を傾斜させた場合の傾斜角度は、水平面に対して20〜30°であることが好ましく、この場合、搬送手段8の下部末端には液状となった、混合溶剤、不純物を含む炭酸エチレンを回収する受け皿が設けられている。
【0049】
また、搬送手段8をネットコンベアとした場合には、加温装置16により加温され溶解した炭酸エチレンが、混合溶剤、不純物と共にベルトを通り下部へ落ちるため、コンベア内部に不純物を含む炭酸エチレンを受けて回収することができるように受け皿が設けられている。
【0050】
この受け皿で回収した不純物を含む炭酸エチレンは、結晶析出槽2へと循環させることができ、このようにすれば混合溶剤を効率的に利用することができる。
【0051】
ここで用いるネットコンベアのネットコンベアベルトの材質は、特に限定されず、例えば、金属製、樹脂製等のものを用いることができる。また、ネットコンベアベルトは、固液分離工程で分離され、精製工程まで搬送される炭酸エチレン結晶が落下することなく、液状の炭酸エチレンのベルトの通過を効果的に行うことができる10〜100メッシュであることが好ましい。
【0052】
また、ネットコンベアを用いる場合には、これを固液分離にも利用することができ、固液分離にも用いる場合には、固液分離手段5と搬送手段8を一体にしたものとして搬送手段を構成し、例えば、2つのローターの間を回転するように設けられたネットコンベアベルトの内部に固液分離手段を設ければよい。このとき、ネットコンベアベルトは固液分離のフィルターの役目も同時に果たすこととなる。
【0053】
また、固液分離手段をネットコンベアベルトの搬送路側の内側面に接するように設けて、吸引ろ過を行うことができる構成とすれば、炭酸エチレン粗結晶の固液分離をより効率的に行うことができる点で好ましい。
【0054】
さらに、この搬送手段8の搬送路がトンネル状に形成されていてもよく、搬送手段の搬送路はそのまま確保しながらカバーで屋根のように搬送路を覆ってトンネルを作ることができる。搬送路がトンネル状である場合には、加温装置は温風を送風することができる送風装置であることが好ましく、この送風装置でトンネル状の搬送路に温風を吹き付けるように配置する。このような構成とすると、トンネル内部を一定の温度雰囲気に調節することが容易になり、炭酸エチレン結晶の加温を安定して行うことができる。
【0055】
次に、この炭酸エチレン精製装置11を用いて炭酸エチレン精製の操作を行った場合の工程について説明する。
【0056】
炭酸エチレンの粗結晶を固液分離する工程までは第1の実施形態と同一の工程により行えばよい。
【0057】
次に、分離された炭酸エチレン結晶を搬送手段8により搬送する。このとき、搬送手段の途中に加温装置16が設けられており、搬送中の炭酸エチレン結晶は、ここで加温されその表面が溶解し、表面の混合溶剤、不純物と共に液状となってコンベア上を流れ落ちるか、コンベアベルトを通過して受け皿で回収される。
【0058】
このように表面が溶解して精製された炭酸エチレン結晶は、搬送装置8の先端に設けられた結晶回収槽7まで搬送され、結晶回収槽7へ回収される。
【0059】
本実施形態においては、このように炭酸エチレン結晶を搬送しながら精製工程を行うものであり、精製工程において溶解した液状の炭酸エチレンが自然に分離していき、精製された結晶だけがコンベアにより搬送される。
【0060】
この搬送は、第1の実施形態と同じく、38〜50℃の加温状態を1〜20分間置いて処理することが好ましいため、搬送手段により加温装置16で加温される区間をその時間となるように設計すればよい。
【実施例】
【0061】
次に、実施例により本発明を説明する。
【0062】
(実施例1)
図4は、本実施例で用いた炭酸エチレン精製装置の構成を示した図である。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。
【0063】
図4の炭酸エチレン精製装置21は、結晶析出槽22と、洗浄液収容槽23と、ポンプ24と、ろ過装置25と、送風装置26と、結晶回収槽27と、ネットコンベア28とから構成されるものである。
【0064】
結晶析出槽22は、槽の外周に冷却用ジャケットを有し、攪拌用プロペラを内蔵した、SUS−316材で形成された円筒形(直径220mm×高さ700mm)の容器で構成される。この結晶析出槽22に、炭酸プロピレン2Lとレジスト洗浄後の5%レジスト混入炭酸エチレン洗浄液18Lの混合溶液を準備し、この混合液を加温して40℃に調整した。次いで、冷却用ジャケットに冷水を供給して、結晶析出槽22内の液温をゆっくりと撹拌しながら冷却して、25℃で3時間、炭酸エチレン結晶を析出させた。得られた炭酸エチレン結晶を次のろ過工程へ移送した。
【0065】
ろ過装置25は、ネットコンベア28a(幅120mm×長さ650mm)と駆動ローラー28bより構成され、下段の駆動ローラー28bには駆動モーター(0.1kW)が設けられおり、ネットコンベアを移動させている。ネットコンベア28aの移動速度は60mm/分に調整した。結晶析出槽22内の溶液のネットコンベアベルト上への注入量は130g/分で注入した。
【0066】
ろ過して分離された炭酸エチレン結晶は、ネットコンベアの搬送路をカバーで覆ってトンネル状とした搬送路へと入るが、このトンネル内部は送風装置26により温風を送気し、この内部で炭酸エチレン結晶は表面が溶解し、不純物が液体となってろ過装置へ吸引される。なお、送風装置26から送出される温風は、トンネル31の入口で42℃、550mm先のトンネル内部で38℃になるように設定した。
【0067】
トンネル31を通過して精製された炭酸エチレン結晶は、ネットコンベア28の先端で結晶回収ガイド32によりSUS304材からなる円筒型の結晶回収槽27(直径220mm×高さ500mm)に回収された。
【0068】
本実施例により得られた炭酸エチレン結晶の純度は98%以上であった。
【0069】
なお、ろ過装置25は、二塔の気液分離塔33(円錐形:直径220mm×高さ400mm)と減圧するための真空ポンプ30と分離液を結晶析出槽22へ返送するためのろ過液返送ポンプ34により構成されており、ろ過装置25の気液分離塔33に溜まった液は自動制御でろ過液返送ポンプ34で結晶析出槽22へ返送される。本槽内での不純物であるレジストは炭酸プロピレン溶液側に移行するので、レジスト濃度が20%近くになると、混合溶剤は炭酸エチレンの他の再生装置、例えば蒸発精製を利用した再生装置への移送管を通して全量移送して再生するように構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】第1の実施形態における炭酸エチレン精製装置の概念図である。
【図2】レジスト含有炭酸エチレンのレジスト濃度と融点の関係を示した図である。
【図3】第2の実施形態における炭酸エチレン精製装置の概念図である。
【図4】実施例で用いた炭酸エチレン精製装置の縦断面概念図である。
【符号の説明】
【0071】
1,11,21…炭酸エチレン精製装置、2,12,22…結晶析出槽、3,13,23…洗浄液収容槽、4,14,24…洗浄液供給ポンプ、5,15…固液分離手段、6…結晶精製手段、16…加温装置、17…結晶回収手段、18…搬送手段、25…ろ過装置、26…送風装置、27…結晶回収槽、28…ネットコンベア、29…オーバーフロー流路、30…真空ポンプ、31…トンネル、32…結晶回収ガイド、33…気液分離塔、34…ろ過液返送ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸エチレンを含む少なくとも2種の有機溶剤を含み、前記炭酸エチレンが許容溶解量又は許容溶解量に近い量溶解している混合溶剤に、不純物を含有する炭酸エチレンを加えて前記混合溶剤の許容溶解量を超えた炭酸エチレンの粗結晶を析出させる結晶析出工程と、
前記結晶析出工程で析出した炭酸エチレン粗結晶を前記混合溶剤から分離する固液分離工程と、
前記固液分離工程で分離された炭酸エチレン粗結晶を加温し不純物混入による融点低下を利用して炭酸エチレン結晶の不純物混入部を溶解させて不純物を除去する結晶精製工程とを有することを特徴とする炭酸エチレン精製方法。
【請求項2】
前記結晶精製工程が、炭酸エチレン結晶を38〜50℃の温風で加温することを特徴とする請求項1記載の炭酸エチレン精製方法。
【請求項3】
前記固液分離工程が、ろ過により炭酸エチレン粗結晶を分離することを特徴とする請求項1又は2記載の炭酸エチレン精製方法。
【請求項4】
前記固液分離工程により分離された炭酸エチレン粗結晶を、精製した炭酸エチレン結晶を回収する結晶回収槽まで搬送する結晶搬送工程を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の炭酸エチレン精製方法。
【請求項5】
前記搬送工程が、ネットコンベアで固液分離工程を行うと同時に炭酸エチレン結晶を搬送することを特徴とする請求項4記載の炭酸エチレン精製方法。
【請求項6】
炭酸エチレンを含む少なくとも2種以上の有機溶剤を含み、前記炭酸エチレンが許容溶解量又は許容溶解量に近い量溶解している混合溶剤を収容する、炭酸エチレン粗結晶析出用の結晶析出槽と、
前記結晶析出槽に不純物を含有する炭酸エチレンを供給する供給手段と、
前記結晶析出槽で析出した炭酸エチレン粗結晶を分離する固液分離手段と、
前記固液分離手段により得られた炭酸エチレン粗結晶を精製するために加温する加温手段とを有することを特徴とする炭酸エチレン精製装置。
【請求項7】
さらに、前記加温手段により精製された炭酸エチレン結晶を回収する結晶回収槽を有し、前記固液分離手段により得られた炭酸エチレン粗結晶を前記結晶回収槽まで搬送する搬送手段を有することを特徴とする請求項6記載の炭酸エチレン精製装置。
【請求項8】
前記固液分離手段が、ろ過装置であることを特徴とする請求項6又は7記載の炭酸エチレン精製装置。
【請求項9】
前記加温手段が、38〜50℃の温風を送出する送風装置であることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項記載の炭酸エチレン精製装置。
【請求項10】
前記搬送手段がネットコンベアであることを特徴とする請求項6乃至9のいずれか1項記載の炭酸エチレン精製装置。
【請求項11】
2つのローラーにより回転し、結晶を搬送する搬送路を有するネットコンベアベルトからなるネットコンベアと、
前記ネットコンベア内部に、搬送路側のネットコンベアベルト内表面に接して配設されたろ過装置と、
前記搬送路に温風を送出することができる送風装置とを有することを特徴とする結晶精製用搬送装置。
【請求項12】
前記ネットコンベアの搬送路が、トンネル状に形成されていることを特徴とする請求項11記載の結晶精製用搬送装置。
【請求項13】
前記加温手段が、前記搬送路に温風を送出することができる送風装置であることを特徴とする請求項11又は12記載の結晶精製用搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−56783(P2006−56783A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−236934(P2004−236934)
【出願日】平成16年8月17日(2004.8.17)
【出願人】(000245531)野村マイクロ・サイエンス株式会社 (116)
【Fターム(参考)】