説明

炭酸バリウム粒子粉末、その製造方法およびペロブスカイト型チタン酸バリウムの製造方法

【課題】分散性に優れたアスペクト比が小さい棒状の炭酸バリウム粒子粉末及びその製造方法を提供する。
【解決手段】粒子表面に1又は2以上のくびれ部を有する棒状粒子を含み、前記棒状粒子のアスペクト比が1.5〜4.5である棒状炭酸バリウム粒子粉末。前記棒状粒子のBET比表面積が15m/g以上である。前記くびれ部が、棒状粒子の長軸方向に対して直角方向または傾斜方向に設けられている。針状炭酸バリウム粒子粉末を含む水性スラリーを50℃以上で加熱処理する工程を有する棒状炭酸バリウム粒子粉末の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学ガラス、エレクトロセラミック等の製造原料として有用な炭酸バリウム粒子粉末、その製造方法および該炭酸バリウム粒子粉末を用いたペロブスカイト型チタン酸バリウムの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炭酸バリウムは、セラミックコンデンサー用チタン酸バリウムの製造原料、或いは管球・光学ガラス用、顔料等に利用されている。特に、積層コンデンサーは、電子機器の小型化に伴い小型化または薄型化で高性能化であることが益々要求されている。そのため原料である炭酸バリウムにも微粉化の要求が高まっている。炭酸バリウムの製法としては、例えば、下記反応式(1)、(2)及び(3)等の方法が提案されている。
【0003】
【化1】

【0004】
【化2】

【0005】
【化3】

【0006】
上記反応式(1)〜(3)の反応においては、硫化水素や塩化アンモニウムが副生し、炭酸バリウム粒子粉末中に、これらの副生物が残存し易くなる。これら不純物の含有量は、該炭酸バリウムを用いて得られる電子材料用ペロブスカイト型チタン酸バリウムの特性にとって好ましくない不純物となる。
【0007】
また、下記反応式(4)のように水酸化バリウムに二酸化炭素を反応させる方法も知られ、この製造方法により得られる炭酸バリウムは、副生物が水のみであるため、高純度な炭酸バリウムを製造する上で工業的に有利な方法であり、また、得られる炭酸バリウムの粒子形状は、多くの場合、針状である。
【0008】
【化4】

【0009】
例えば、下記特許文献1には、水酸化バリウムと二酸化炭素との反応をカルボン酸の存在下に行う方法が提案されている。また、下記特許文献2には水酸化バリウムと二酸化炭素との反応をポリカルボン酸の存在下に行う方法が提案されている。また、下記特許文献3には、水酸化バリウムと二酸化炭素との反応をアスコルビン酸又はピロリン酸の存在下に行う方法が提案されている。また、下記特許文献4には、水酸化バリウムに二酸化炭素との反応を粒状媒体が高速で流動する状態で反応を行う方法が提案されている。
【0010】
これら特許文献1〜4で得られる炭酸バリウムは、何れもアスペクト比が5.0以上の針状の炭酸バリウムである。
また、下記特許文献5には、水酸化バリウム濃度が特定範囲にある水酸化バリウム水性懸濁液を攪拌しながら、該懸濁液に二酸化炭素ガスを特定流量で、クエン酸の存在下にて導入して製造された、アスペクト比が3〜20の針状の炭酸バリウムが開示されている。さらに、針状の炭酸バリウムをセラミックス製ビーズを用いて粉砕してアスペクト比が2以下の粒状の炭酸バリウムを得る方法が開示されている。その粒状の炭酸バリウムは、針状の炭酸バリウムを小さくした形状を有する粒子である。
【特許文献1】特開平07−25611号公報
【特許文献2】特開2000−103617号公報
【特許文献3】特開2000−185914号公報
【特許文献4】特開2004−59372号公報
【特許文献5】特開2007−176789号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来の針状の炭酸バリウムは、その粒子形状に由来した分散性に問題があり、他のセラミック原料と混合する際に均一な混合物を得にくいという問題があった。その結果、例えば、従来の針状の炭酸バリウムと二酸化チタンとを混合し、該混合物を仮焼して得られるペロブスカイト型チタン酸バリウムは未反応原料の炭酸バリウムと二酸化チタンが残存する問題や、また、均一混合物を得るため、過度の粉砕処理を必要とし、このため混合粉砕処理による不純物が混入し純度の低いものが得られやすい。このため、従来のものより、アスペクト比が小さい分散性に優れた炭酸バリウムの開発が望まれていた。
【0012】
従って、本発明の目的は、分散性に優れたアスペクト比が小さい粒子表面にくびれ部を有する棒状または粒状の炭酸バリウム粒子粉末、その製造方法および該炭酸バリウム粒子粉末を用いたペロブスカイト型チタン酸バリウムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる実情において、本発明者らは、炭酸バリウムの結晶成長条件を詳細に検討した結果、微細でアスペクト比が大きい針状の炭酸バリウム粒子粉末を含む水性スラリーを、特定条件下で加熱処理して得られるものは、セラミック原料等として好適なアスペクト比が小さく、粒子表面にくびれ部を有する固有の棒状粒子形状を持ったものになることを見出した。
【0014】
該くびれ部を有する棒状炭酸バリウム粒子は、粉砕処理を行うとくびれ部から粒子が容易に切断され、よりアスペクト比が小さい粒状粒子形状を持ったものになることを見出した。
【0015】
更に、これらの炭酸バリウム粒子粉末をバリウム源として用いてペロブスカイト型チタン酸バリウムを製造すると、未反応原料の炭酸バリウムと二酸化チタンが残存することが無く、また混合粉砕処理による不純物の混入を抑制し、高純度なペロブスカイト型チタン酸バリウムが工業的に有利な方法で得られることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0016】
即ち、本発明が提供しようとする第1の発明は、粒子表面に1又は2以上のくびれ部を有する棒状粒子を含み、前記棒状粒子のアスペクト比が1.5〜4.5であることを特徴とする棒状炭酸バリウム粒子粉末である。
【0017】
また、本発明が提供しようとする第2の発明は、粒子表面にくびれ部がない粒状粒子と、粒子表面に1又は2以上のくびれ部を有する粒状粒子を含み、アスペクト比が1.3〜3.0であることを特徴とする粒状炭酸バリウム粒子粉末である。
【0018】
また、本発明が提供しようとする第3の発明は、針状炭酸バリウム粒子粉末を含む水性スラリーを50℃以上で加熱処理する工程を有することを特徴とする前記第1の発明の棒状炭酸バリウム粒子粉末の製造方法である。
【0019】
また、本発明が提供しようとする第4の発明は、針状炭酸バリウム粒子粉末を含む水性スラリーを50℃以上で加熱処理して棒状炭酸バリウム粒子粉末を得る工程、該棒状炭酸バリウム粒子粉末を粉砕処理する工程を有することを特徴とする前記第2の発明の粒状炭酸バリウム粒子粉末の製造方法である。
【0020】
また、本発明が提供しようとする第5の発明は、前記第1の発明又は第2の発明の炭酸バリウム粒子粉末と、二酸化チタンとを混合し、得られた混合物を仮焼することを特徴とするペロブスカイト型チタン酸バリウムの製造方法である。
【0021】
さらに、本発明は、前記第1の発明又は第2の発明の炭酸バリウム粒子粉末からなることを特徴とするペロブスカイト型チタン酸バリウム製造用のバリウム源である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の棒状または粒状の炭酸バリウム粒子粉末は、従来の針状の炭酸バリウム粒子粉末と比べ、アスペクト比が小さく、更に粒子表面にくびれ部を有する新規な粒子形状の粒子を含み、分散性が良好な炭酸バリウム粒子粉末である。
【0023】
更に該炭酸バリウム粒子粉末をバリウム源として用いることにより、固相反応において未反応原料の残存や、混合処理による不純物の混入を抑制し、高純度なペロブスカイト型チタン酸バリウムを製造することが出来る。
【0024】
また、本発明の製造方法によれば、棒状または粒状の炭酸バリウムを工業的に有利に製造することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を好ましい実施形態に基づき説明する。
(第1の発明の棒状炭酸バリウム粒子粉末)
本発明の第1の発明の棒状炭酸バリウム粒子粉末は、粒子表面に1又は2以上のくびれ部を有する棒状粒子を含み、前記棒状粒子のアスペクト比が1.5〜4.5であることを特徴とする。
【0026】
図1は、本発明におけるくびれ部を有する棒状炭酸バリウム粒子の一例を示す説明図である。1は棒状炭酸バリウム粒子、2はくびれ部、3は棒状粒子の長軸、4は棒状粒子の短軸、5は山の部分を表す。
【0027】
くびれ部2は、針状炭酸バリウム粒子粉末を含む水性スラリーを加熱処理することにより形成され、棒状粒子の他のところに比べて細くなっている部分からなる。具体的には、図1において、くびれ部2は、棒状粒子の長軸3の方向に対して直角方向または傾斜方向であり、短軸4の方向と平行若しくは斜め方向に伸びて設けられている。くびれ部2の間には山5の部分が存在し、くびれ部2は粒子表面から棒状粒子の短軸方向に谷状に凹んだ状態に形成されている。
【0028】
本発明において、くびれ部は炭酸バリウム粒子粉末を走査型電子顕微鏡によって10万倍迄の拡大倍率で観察したときに、粒子表面に認められる。くびれ部は、炭酸バリウム粒子の長軸方向の長さ1μm当たりに換算して1個以上、好ましくは5〜25個の範囲で存在する。なお、本発明において、くびれ部の数は、特に断りのない場合は10万倍の走査型電子顕微鏡写真から無作為に200個の粒子を選出し、各粒子の長軸とくびれ個数を計測し、各粒子の長軸とくびれ個数の合計から、長軸の長さ1μm当りのくびれ部の個数に換算した値(単位:個/μm)として示される値である。下記にその計算式を示す。
【0029】
くびれ部の数(個/μm)=くびれ部の個数合計(個)/長軸の長さの合計(μm)
また、本発明において、アスペクト比とは、走査型電子顕微鏡観察から求められる、各粒子について長軸(A)と短軸(B)の長さの比(A/B)を求め、200個の粒子の測定値の平均値を示す。
【0030】
本発明において、棒状炭酸バリウム粒子粉末のアスペクト比は1.5〜4.5、好ましくは1.5〜3であり、該アスペクト比がその範囲であると、特に流動性、分散性が良いため、チタン酸バリウムの原料として使用する際に酸化チタンと均一な混合物が得られやすい点で好ましい。
【0031】
また、本発明の棒状炭酸バリウム粒子粉末は、走査型電子顕微鏡観察から求められる長軸の長さが0.1〜0.5μm、好ましくは0.1〜0.3μmであることが望ましい。
また、本発明の棒状炭酸バリウム粒子粉末は、短軸の長さが0.03〜0.10μm、好ましくは0.04〜0.06μmであることが望ましい。
【0032】
本発明の棒状炭酸バリウム粒子粉末は、上記特性であることに加えBET比表面積が15m/g以上、好ましくは20m/g以上、特に好ましくは20〜35m/gであることが望ましい。
【0033】
本発明の棒状炭酸バリウム粒子粉末には、棒状炭酸バリウム粒子以外にその他の炭酸バリウム粒子を含有していてもよい。その他の炭酸バリウム粒子としては、後述するくびれ部がない、針状、棒状、米粒状、小判状、球状、或いは不定形の粒子形状のものを、個数基準で100個数%以下、好ましくは50個数%以下、特に好ましくは10個数%以下で含有していてもよい。
【0034】
(第2の発明の粒状炭酸バリウム粒子粉末)
本発明の第2の発明の粒状炭酸バリウム粒子粉末は、粒子表面にくびれ部がない粒状粒子と、粒子表面に1又は2以上のくびれ部を有する粒状粒子を含み、アスペクト比が1.3〜3.0、好ましくは1.3〜2.5であることを特徴とする。基本的に前記第1の発明の棒状炭酸バリウム粒子粉末を粉砕処理することにより得られ、第1の発明の棒状炭酸バリウム粒子粉末と比べ更にアスペクト比が小さい粒状炭酸バリウム粒子粉末である。
【0035】
本発明において、前記くびれ部がない粒状粒子は、前記くびれ部を有する粒状粒子以外の粒子形状のものを示し、例えば針状、棒状、米粒状、小判状、球状、或いは不特定の粒子形状等であるものを示す。
【0036】
また、本発明の粒状炭酸バリウム粒子粉末において、前記くびれ部がない粒状粒子(X)と、くびれ部を有する粒状粒子(Y)との含有割合は、個数基準で、X:Y=1:5〜10:1、好ましくは1:1〜10:1である。なお、本発明において、この各粒子の含有割合は、任意に抽出したサンプル200個について走査型電子顕微鏡観察(SEM)から求めた値である。
【0037】
また、本発明の第2の発明の粒状炭酸バリウム粒子粉末は、長軸の長さは0.05〜0.20μm、好ましくは0.10〜0.15μmである。なお、くびれ部がない粒状粒子(X)の長軸の長さは0.1μm以下、好ましくは0.05〜0.08μmである。
【0038】
くびれ部を有する粒状粒子(Y)の長軸の長さは0.1〜0.3μm、好ましくは0.1〜0.2μmである。また、くびれ部を有する粒状粒子の短軸の長さが0.02〜0.1μm、好ましくは0.02〜0.07μmであることが望ましい。
【0039】
本発明の第2の粒状炭酸バリウム粒子粉末は、上記特性であることに加えBET比表面積は15m/g以上、好ましくは20m/g以上、特に好ましくは20〜50m/gである。
【0040】
(炭酸バリウム粒子粉末の製造方法)
次に、本発明の前記特性を有する炭酸バリウム粒子粉末の製造方法について説明する。
本発明の炭酸バリウム粒子粉末の製造方法において、針状の炭酸バリウム粒子粉末を含む水性スラリーを特定条件下で加熱処理することにより、本発明の第1の発明の棒状炭酸バリウム粒子粉末を得ることができ、更に該第1の発明の棒状炭酸バリウム粒子粉末を粉砕処理することにより第2の発明の粒状炭酸バリウム粒子粉末を得ることができる。
【0041】
本発明の第1の発明の棒状炭酸バリウム粒子粉末は、基本的には針状の炭酸バリウム粒子粉末を含む水性スラリーを50℃以上で加熱処理することにより得ることができる。
本発明で使用する原料の針状の炭酸バリウム粒子粉末は、アスペクト比が4.5以上、好ましくは4.5〜10、さらに好ましくは4.5〜8.0であると加熱処理時間を短く出来る点で好ましい。
【0042】
また、該針状の炭酸バリウム粒子粉末は、走査型電子顕微鏡観察から求められる長軸の長さが、0.1〜1.5μm、好ましくは0.1〜1.0μmであると、微細な炭酸バリウム粒子粉末が得られる点で特に好ましい。
【0043】
また、針状の炭酸バリウム粒子粉末の他の好ましい物性としてはBET比表面積が25m/g以上、好ましくは30m/g以上、特に好ましくは35〜40m/gであると、加熱処理後の比表面積を、15m/g以上、好ましくは20m/g以上、特に好ましくは20〜35m/gに維持できる点で特に好ましい。
【0044】
前記針状の炭酸バリウム粒子粉末は、水酸化バリウムと、二酸化炭素又は可溶性炭酸塩から選ばれた炭酸源を水溶媒中で反応させて生成されたものを使用することが高純度な炭酸バリウム粒子粉末を製造することが出来るため好ましい。
【0045】
この針状の炭酸バリウム粒子粉末の製造方法の好ましい実施形態について、更に詳細に説明する。
水酸化バリウムと、炭酸源との反応は、水酸化バリウムを溶解した水溶液に、炭酸源を添加して行われる。
【0046】
使用できる水酸化バリウムは、工業的に入手できるものであれば、特に制限はなく、また、含水物であっても無水物であってもよい。水酸化バリウムを溶解した水溶液の濃度は、該水酸化バリウムの溶解度以内であればよく、特に制限されるものではないが、生産効率を上げるために好ましくは飽和に近い水溶液を用いるのが良く、たとえば20℃の水溶液では無水物(Ba(OH))として4重量%が飽和溶解量であり、未溶解の水酸化バリウムが無く、後工程の二酸化炭素との反応が均一に進み、均一な粒子が得られやすい点で好ましい。
【0047】
二酸化炭素は、前記水酸化バリウムを溶解した水溶液にガス状で添加される。また、本発明で用いられる可溶性炭酸塩は、多くの場合、可溶性炭酸塩を水に溶解した水溶液として用いられる。本発明で用いられる可溶性炭酸塩としては、例えば、炭酸水素アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。可溶性炭酸塩を溶解した水溶液の濃度は、可溶性炭酸塩の溶解度以内であればよく、特に制限されるものではない。
【0048】
本発明において、前記炭酸源は二酸化炭素が生成する炭酸バリウムの純度が高くなる点で特に好ましい。
前記炭酸源の水酸化バリウムを溶解した水溶液への添加量は、水酸化バリウム中のBa原子と炭酸源中のCO分子の(Ba/CO)モル比で0.2〜1である。この理由は(Ba/CO)モル比が0.2未満では炭酸塩の添加量が多くなりコスト増を招くので好ましくない。一方、1を超えると未反応の水酸化バリウムが多くなり、バリウムの収量が低下することになるからである。通常、反応効率を上げるためにCO過剰で反応を行い、(Ba/CO)モル比が0.3〜0.8であると反応効率と経済性の点で好ましい。
【0049】
炭酸源の添加は、通常、水酸化バリウムを溶解した水溶液を攪拌した状態で行われ、また、添加速度は、特に制限されるものではないが、一定速度で行うと安定した品質のものが得られる点で特に好ましい。
【0050】
反応温度は、原料の可溶性バリウム塩や可溶性炭酸塩また二酸化炭素によって異なり、特に限定されることはないが、反応温度は低温であればある程、得
られる炭酸バリウムの粒子径は小さくなることが確認されており、可溶性バリウム塩と可溶性炭酸塩および/または二酸化炭素は30℃以下で反応させることが望ましい。
【0051】
反応時間は0.01時間以上、好ましくは0.01〜24時間、特に好ましくは0.01〜10時間である。
本発明において、かかる反応は、粒子成長抑制剤の存在下に行うと、粒子成長を抑制し、さらに高比表面積の針状の炭酸バリウム粒子粉末を製造することが出来、この高比表面積の針状の炭酸バリウム粒子粉末を原料として用いることで、さらに高比表面積の本発明の炭酸バリウム粒子粉末を得ることができる。
【0052】
本発明で用いられる粒子成長抑制剤としては、多価アルコール、ピロリン酸、アスコルビン酸、カルボン酸、カルボン酸塩、ポリカルボン酸又はポリカルボン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種が用いられる。
【0053】
本発明で用いられる多価アルコールとしては、OH基を2個以上有するものが挙げられ、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、アルコールグリセリン、エリスリット、アドニット、マンニット、ソルビット等が挙げられる。
【0054】
本発明で用いられるカルボン酸又はカルボン酸塩としては、カルボン酸又はカルボン酸塩であればよく特に種類を限定されるものでないが、例えば、クエン酸、カルボキシメチルセルロース、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、酒石酸、アジピン酸、アクリル酸、ポリカルボン酸、ポリアクリル酸、及びこれらのナトリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0055】
本発明で用いられるポリカルボン酸又はポリカルボン酸塩としては、ポリカルボン酸又はポリカルボン酸塩であればよく特に種類を限定されるものでないが、例えば、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸ナトリウム、ポリカルボン酸アンモニウム、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸アンモニウム等が挙げられる。
【0056】
本発明において、これらの粒子成長抑制剤は、カルボン酸、カルボン酸塩、ポリカルボン酸又はポリカルボン酸塩が、粒子成長抑制効果が高い点で好ましく用いられる。
かかる粒子成長抑制剤は、上記反応系において、水酸化バリウムと、炭酸源との反応時に常に存在していればよく、その添加時は特に限定されないが、より比表面積の大きな炭酸バリウム粒子粉末を得るためには、水酸化バリウムを含む水溶液に予め添加しておくか、炭酸源の添加終了後、すぐに添加した方がよい。添加の方法は、特に制限されるものではないが、炭酸源の添加終了後に、粒子成長抑制剤を添加する場合は、予め粒子成長抑制剤を0.1〜10重量%程度含む水溶液を調製しておいて、この溶液を反応系に添加すればよい。
【0057】
粒子成長抑制剤の添加量は、生成する炭酸バリウムに対して、0.1〜10重量%、好ましくは1〜5重量%である。この理由は添加量が0.1重量%未満では粒子成長抑制効果が得られ難く、一方、10重量%を超えて添加してもそれ以上の粒子成長抑制効果が得られず不経済になる傾向があるためである。なお、添加した粒子成長抑制剤は炭酸バリウム中に残留するが、針状の炭酸バリウム粒子粉末は粒子成長抑制剤を特に除去せずに、このまま、後述する加熱処理を行うことができる。
【0058】
なお、かかる針状の炭酸バリウム粒子粉末の製造は、バッチ式又は連続式で反応を行ってもよい。
反応終了後、常法により固液分離し、必要により洗浄、乾燥、更に解砕、分級等を行って、本発明で使用する針状の炭酸バリウム粒子粉末とするが、反応終了後の針状の炭酸バリウムを含む反応液をそのまま、後述する針状の炭酸バリウム粒子粉末を含む水性スラリーとしてそのまま用いることも出来る。
【0059】
かくして得られる針状の炭酸バリウム粒子粉末は、アスペクト比が4.5以上、好ましくは4.5〜10、さらに好ましくは4.5〜8.0で、長軸の長さが、0.1〜1.5μm、好ましくは0.1〜1.0μmであり、短軸の長さが、0.02〜0.08μm、好ましくは0.02〜0.05μmである。更にBET比表面積が25m/g以上、好ましくは30m/g以上、特に好ましくは35〜40m/gである。
【0060】
本発明の棒状炭酸バリウム粒子粉末の製造方法は、前記針状の炭酸バリウム粒子粉末を含む水性スラリーを50℃以上で加熱処理する。
針状の炭酸バリウム粒子粉末を含む水性スラリーの濃度は、特に制限されるものではないが、4〜95重量%、好ましくは4〜20重量%であるとスラリーの粘性が低いので取り扱いが容易となる点で特に好ましい。
【0061】
次いで、本発明では、前記針状の炭酸バリウム粒子粉末を含む水性スラリーを50℃以上で加熱処理を行う。
この加熱処理により、前記針状の炭酸バリウム粒子粉末のアスペクト比が4.5以下に低減することができると共に、粒子表面にくびれ部を生成させることができる。なお、加熱処理温度が50℃未満では、いくら時間をかけても本発明の炭酸バリウム粒子粉末を得ることが出来ない。加熱処理温度は、好ましくは80℃以上で、高ければ高いほど短時間でアスペクト比が低減し、更にくびれ部も生成されるが、100℃以上で加熱処理を行う場合はオートクレープ等を用いることが好ましい。本発明において、加熱処理温度は50〜180℃、好ましくは110℃〜150℃であるとアスペクト比の制御が容易であることと、熟成時間が短くて済む点で特に好ましい。
【0062】
また、前記温度範囲で、加熱処理時間を長くするほど、アスペクト比が小さくなり、くびれ部も明確になる。本発明において、加熱処理時間は加熱温度により変わってくるが多くの場合0.5時間以上であり、加熱処理時間は昇温中の時間も含めて0.5〜48時間であるとアスペクト比が低減するのと同時にくびれの数が増加する点で特に好ましい。
【0063】
加熱処理終了後、常法により固液分離し、必要により洗浄、乾燥、更に解砕を行い、本発明の第1の発明の棒状炭酸バリウム粒子粉末を得ることが出来る。
かくして得られる棒状炭酸バリウム粒子粉末の好ましい物性は、粒子表面のくびれ部の数が1以上、好ましくは5〜25で、アスペクト比が1.5〜4.5、好ましくは1.5〜3.0である。更に長軸が0.1〜0.5μm、好ましくは0.1〜0.3μm、BET比表面積が15m/g以上、好ましくは20m/g、特に好ましくは20〜35m/gであることが特に好ましい。
【0064】
本発明の第1の発明の棒状炭酸バリウム粒子粉末は、粒子表面に1又は2以上のくびれ部を有し、後述する粉砕工程を行うことにより、該くびれ部より容易に粒子が切断されるため、更にアスペクト比が小さい炭酸バリウム粒子粉末を得ることが出来る。
【0065】
本発明の第2の炭酸バリウム粒子粉末は、前記第1の発明の炭酸バリウム粒子粉末の製造方法において、更に粉砕工程を設けることにより得ることができる。
粉砕方法は、強力なせん断力が作用する機械的手段により行われ、湿式法又は乾式法で行うことができる。湿式法としては、ビーズミル、ボールミルにより行うことができ、また、乾式法としては、ジェットミル、ビーズミルにより行うことができる。なお、粉砕条件等は使用する粉砕装置により最適条件を適宜選択して行えばよい。
【0066】
上記の粉砕処理を行うと、粒子表面にくびれ部がない粒状粒子と、粒子表面に1又は2以上のくびれ部を有する粒状粒子を含む粒状炭酸バリウム粒子粉末が得られる。粒状炭酸バリウム粒子粉末は、好ましい物性は、アスペクト比は1.3〜3.0、好ましくは1.3〜2.5であり、BET比表面積が15m/g以上、好ましくは20m/g、特に好ましくは20〜50m/gであることが特に好ましい。
【0067】
本発明に係る棒状または粒状炭酸バリウム粒子粉末は、陶磁器や光学ガラスの原料、超伝導材等の電子材料用原料、特に、ペロブスカイト型チタン酸バリウムの原料のバリウム源として好適に用いることができる。なお、本発明において、ペロブスカイト型チタン酸バリウムは、チタン酸バリウム以外にチタン原子がジルコニウム原子で一部置換されたもの、バリウム原子がカルシウム原子、ストロンチウム原子、鉛原子の1種又は2種以上で一部置換されたもの、或いは後述する副成分元素を含有するものも含む。
【0068】
次に、本発明に係るペロブスカイト型チタン酸バリウムの製造方法について説明する。該方法は、上記本発明の棒状または粒状炭酸バリウム粒子粉末と、二酸化チタンとを混合して仮焼するものである。本発明で二酸化チタンとを混合する炭酸バリウム粒子としては、乾燥品または乾燥・粉砕処理前のスラリーが用いられる。
【0069】
本発明で用いられる二酸化チタンとしては、種類及び製造履歴において特に制限されるものではないが、BET比表面積が5m/g以上、好ましくは10〜100m/g、レーザー回折法により求められる平均粒子径が1μm以下、好ましくは0.1〜0.5μmの範囲のものが好適である。また、かかる二酸化チタンは、高純度のペロブスカイト型チタン酸バリウムを得るために高純度のものを用いることが好ましい。
【0070】
二酸化チタンの混合量は、炭酸バリウム粒子粉末のBaに対して、Ti/Baのモル比で、通常0.95〜1.05、好ましくは0.99〜1.01である。
炭酸バリウム粒子粉末と二酸化チタンとの混合方法は、乾式又は湿式のいずれの方法でもよいが、均一混合が容易な点でビーズミル、ボールミル等の常法による湿式混合装置で行うことが好ましい。
【0071】
棒状または粒状炭酸バリウム粒子粉末と二酸化チタンとの混合により得られた混合物は、所望により粉砕し、仮焼を行う。なお、混合物が湿式混合等のために水分を含む場合は、混合物は、乾燥して水分を除去した後、所望により粉砕を行う。乾燥条件は、特に限定されるものでなく、例えば、放置して自然乾燥させる方法、50〜200℃で乾燥処理する方法が挙げられる。
【0072】
次いで、前記で得られる混合物を仮焼する。仮焼温度は、通常700〜1200℃、好ましくは800〜1000℃である。この理由は仮焼温度が700℃未満では反応に時間がかかるために生産性が悪く、実用的でない。一方、1200℃を超えると生成したチタン酸バリウムの結晶粒子が不均一化しやすい傾向があるためである。
【0073】
また、本発明では、混合物を通常700〜1200℃、好ましくは800〜1000℃で仮焼した後、該仮焼物を粉砕し、所望により造粒した後、さらに通常700〜1200℃、好ましくは800〜1000℃で仮焼を行ってもよいし、また、この仮焼は、粉体特性を均質とするため、一度仮焼したものを粉砕し、再仮焼を行ってもよい。仮焼雰囲気は、特に制限されるものではなく、大気中、酸素雰囲気中、不活性ガス雰囲気中であってもよいが、仮焼中は発生する炭酸ガスを随時除去しながら反応を行うと、結晶性の高いペロブスカイト型チタン酸バリウムを得ることができる。
【0074】
仮焼後のペロブスカイト型チタン酸バリウムは、例えば、必要により酸溶液で洗浄し、水洗い、乾燥することにより製品とすることができる。乾燥方法は常法を用いればよく特に限定されるものでないが、例えば、噴霧乾燥機を用いる方法が挙げられる。
【0075】
本発明で得られるペロブスカイト型チタン酸バリウムは、電子顕微鏡観察により求められる平均粒子径が0.05〜2μmであり、極めて高純度で、且つ電子部品用として好適なペロブスカイト型チタン酸バリウムである。
【0076】
なお、必要により、仮焼の前、すなわち、二酸化チタンとの混合時又は仮焼後に、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等の希土類元素、Ba、Li、Bi、Zn、Mn、Al、Si、Ca、Sr、Co、V、Nb、Ni、Cr、Fe及びMgから選ばれる少なくとも1種の元素を含有する副成分元素含有化合物を混合し、この後に仮焼を行うと、副成分元素の酸化物を含むチタン系ぺロブスカイト型セラミック原料粉末を得ることができる。これらの副成分元素含有化合物の組み合わせや添加量は、生成するセラミック原料粉末に必要な誘電特性に合わせて任意に設定することができる。具体的な副成分元素含有化合物の添加量は、チタン酸バリウム100重量部に対して、副成分元素含有化合物中の元素として、通常0.1〜5重量部である。
【0077】
本発明で得られるぺロブスカイト型チタン酸バリウムは、積層コンデンサの製造原料として使用することができる。例えば、まず、上記ぺロブスカイト型チタン酸バリウムと、添加剤、有機系バインダ、可塑剤、分散剤等の従来公知の配合剤とを混合し分散させてスラリー化し、該スラリー中の固形物を成形してセラミックシートを得る。次にこのセラミックシートの一面に内部電極形成用導電ペーストを印刷し、乾燥後、複数枚のセラミックシートを積層し、次に厚み方向に圧着することにより積層体を形成する。さらに、この積層体を加熱処理して脱バインダ処理を行い、仮焼して仮焼体を得る。その後、この燒結体にIn―Gaペースト、Niペースト、Agペースト、ニッケル合金ペースト、銅ペースト、銅合金ペースト等を塗布して焼き付けることにより積層コンデンサを得ることができる。
【0078】
また、本発明で得られるペロブスカイト型チタン酸バリウムは、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂に配合し、樹脂シート、樹脂フィルム、接着剤等としてプリント配線板や多層プリント配線板等の材料に好適に用いることができる。また、前記ペロブスカイト型チタン酸バリウムは、EL素子の誘電体材料、内部電極と誘電体層との収縮差を抑制するための共材、電極セラミックス回路基板やガラスセラミックス回路基板の基材及び回路周辺材料の原料、排ガス除去や化学合成等の反応時に使用される触媒、帯電防止効果やクリーニング効果を付与する印刷トナーの表面改質材等として好適に用いることができる。
【実施例】
【0079】
以下、本発明の実施形態を実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1〜5
水酸化バリウム・8水塩50.0gと市販のクエン酸0.156g(純度100%換算)、水1500gを反応容器に仕込み、水酸化バリウム及びクエン酸を溶解させる。次いで該反応溶液を10000rpmで攪拌しながら、炭酸ガス0.0056gを流速0.0112g/分の速度で吹き込んで反応を行って針状の炭酸バリウムを析出させた。この時の反応温度は、20℃で、反応時間30秒で行った。
【0080】
続いて反応終了後の4重量%スラリーを密閉容器(オートクレーブ)に仕込み、攪拌下に加熱処理した。加熱処理温度と時間は表1に記載のとおりである。
加熱処理後、スラリーを常法により固液分離し、120℃で6時間乾燥し、解砕を行って炭酸バリウムを得、これを棒状炭酸バリウム粒子粉末試料とした。
【0081】
実施例6〜7
反応容器を密閉容器(オートクレーブ)から開放容器(フラスコ)にし、表1に記載の温度と時間で加熱処理を行った以外は実施例1〜5と同じ条件で棒状炭酸バリウム粒子粉末試料を得た。
【0082】
実施例8
実施例1と同様にして針状の炭酸バリウムを析出させた後、加熱処理を行う工程においてスラリーを濃縮して12重量%として加熱処理を行った以外は実施例1と同様にして棒状炭酸バリウム粒子粉末試料を得た。
【0083】
実施例9
棒状炭酸バリウム粒子粉末を粉砕処理を行った実施例を示す。
実施例1と同様にして棒状炭酸バリウム粒子粉末を得た後、その後、ビーズミル装置1を用いて、0.4mm径のジルコニアビーズを充填率が85%になるようにビーズミル装置に投入し、ジルコニアビーズを周速度10m/sで攪拌し、湿式粉砕処理を行った。
【0084】
次に湿式粉砕処理後のスラリーを120℃で6時間乾燥して粒状炭酸バリウム粒子粉末試料を得た。得られた粒状炭酸バリウム粒子粉末を走査型電子顕微鏡写真(SEM)から200個の粒子を選出し、くびれ部がない粒状粒子(X)と、くびれ部を有する粒状粒子(Y)との含有割合は、個数基準で、X:Y=3:1であった。
【0085】
比較例1
加熱処理を行わない以外は実施例1と同様にして、針状の炭酸バリウム粒子粉末試料を得た。
【0086】
比較例2
加熱温度を40℃で7日間とした以外は実施例7と同様にして炭酸バリウム粒子粉末試料を得た。
【0087】
【表1】

【0088】
<炭酸バリウム粒子粉末の物性の評価>
実施例1〜9及び比較例1〜2で得られた炭酸バリウム粒子粉末試料について、BET比表面積、アスペクト比、長軸の長さ及びくびれ部を測定した。その結果を表2に示した。
【0089】
また、図2〜図5に、実施例1(図2)、実施例3(図3)、実施例8(図4)及び比較例1(図5)で得られた炭酸バリウム粒子粉末の走査型電子顕微鏡写真(SEM写真、10万倍)を示す。
【0090】
SEM写真において、図2〜図4の実施例1、実施例3、実施例8の炭酸バリウム粒子粉末には、くびれ部が棒状粒子の長軸の方向に対して直角方向または傾斜方向に伸びて、山の間に谷状に凹んだ状態に形成されているのが観察される。また、図5の比較例1の炭酸バリウム粒子粉末は針状粒子であり、針状粒子の表面には小さな粒状の粒子が付着した状態の凸部が認められるが、本発明のくびれ部を有する棒状粒子とは異なるものである。
【0091】
なお、アスペクト比は走査型電子顕微鏡写真から無作為に200個の粒子を選出し、それぞれの長軸と短軸の長さを測定し、この測定した長軸(A)と短軸(B)の比(A/B)を粒子ごとに求め、その平均値から算出した。また、長軸は、アスペクト比の測定と同時に求めた200個の粒子の平均値で示した。
【0092】
また、くびれ部の数は10万倍の走査型電子顕微鏡写真から無作為に200個の粒子を選出し、長軸の長さとくびれ個数を計測し、下記の式に示す様に、長軸の長さ1μm当りのくびれ個数に換算し、くびれの数(単位:個/μm)として示した。
【0093】
くびれ部の数(個/μm)=くびれ部の個数の合計(個)/長軸の長さの合計(μm)
【0094】
【表2】

【0095】
(注)実施例9は、粒子表面にくびれ部がない粒子と、くびれ部を有する粒子の全体の平均値を示す。
なお、下記の表3に実施例9の粒子表面にくびれ部がない粒子と、くびれ部を有する粒子の各々のアスペクト比、長軸の長さ及びくびれ部を示す。
【0096】
【表3】

【0097】
なお、表3中のくびれ部がない粒子とくびれ部を有する粒子の物性値は、走査型電子顕微鏡写真からくびれ部がない粒子とくびれ部を有する粒子とを視覚的に無作為に選別し、それぞれの粒子200個について求めた平均値である。
【0098】
実施例10〜11及び比較例3
実施例3、実施例9及び比較例1で得られた炭酸バリウム粒子粉末と、高純度二酸化チタン(チタン工業株式会社製、品名;クロルス酸化チタンKA−10C、BET比表面積;9.2m/g、平均粒径0.37μm)とをTi/Baのモル比で1.006となるように湿式混合機としてボールミル(ビーズ径0.5mmのジルコニアビーズ)を用い、十分混合した後、130℃で2時間乾燥後、粉砕した。次いで、粉砕物を900℃で2時間、大気中で仮焼し、冷却後、粉砕を行ってチタン酸バリウムを得た。
【0099】
このチタン酸バリウムについてCu−Kα線を線源としてX線回折を行ったところ、何れのチタン酸バリウムにも未反応原料の炭酸バリウムと二酸化チタンのピークは確認できなかった。更に、使用したジルコニアビーズによる不純物の影響を見るため、チタン酸バリウム中のZr原子の含有量をICPで測定した。また、BET比表面積と走査型電子顕微鏡観察により求めた平均粒径を表4に併記した。
【0100】
【表4】

【0101】
表4の結果より、本発明の炭酸バリウム粒子粉末を用いたものは、生成されるチタン酸バリウムに未反応原料の残存がない条件まで二酸化チタンと混合処理を行った場合でも、二酸化チタンに対する分散性がよいため、過度の混合粉砕処理を行わないで済むので混合粉砕処理による不純物の混合が抑制されることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の棒状または粒状の炭酸バリウム粒子粉末は、アスペクト比が小さく、更に粒子表面にくびれ部を有する新規な粒子形状の粒子を含み、分散性が良好なので、固相反応において未反応原料の残存や、混合処理による不純物の混入を抑制した、高純度なペロブスカイト型チタン酸バリウムの製造原料に利用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明におけるくびれ部を有する棒状炭酸バリウム粒子の一例を示す説明図である。
【図2】実施例1で得られた炭酸バリウム粒子粉末試料のSEM写真(10万倍)である。
【図3】実施例3で得られた炭酸バリウム粒子粉末試料のSEM写真(10万倍)である。
【図4】実施例9で得られた炭酸バリウム粒子粉末試料のSEM写真(10万倍)である。
【図5】比較例1で得られた炭酸バリウム粒子粉末試料のSEM写真(10万倍)である。
【符号の説明】
【0104】
1 棒状炭酸バリウム粒子
2 くびれ部
3 棒状粒子の長軸
4 棒状粒子の短軸
5 山

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子表面に1又は2以上のくびれ部を有する棒状粒子を含み、前記棒状粒子のアスペクト比が1.5〜4.5であることを特徴とする棒状炭酸バリウム粒子粉末。
【請求項2】
前記棒状粒子の長軸長さが0.1〜0.5μmである請求項1記載の棒状炭酸バリウム粒子粉末。
【請求項3】
前記棒状粒子のBET比表面積が15m/g以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の棒状炭酸バリウム粒子粉末。
【請求項4】
前記くびれ部が、棒状粒子の長軸方向に対して直角方向または傾斜方向に設けられている請求項1乃至3のいずれかの項に記載の棒状炭酸バリウム粒子粉末。
【請求項5】
粒子表面にくびれ部がない粒状粒子と、粒子表面に1又は2以上のくびれ部を有する粒状粒子を含み、アスペクト比が1.3〜3.0であることを特徴とする粒状炭酸バリウム粒子粉末。
【請求項6】
BET比表面積が15m/g以上であることを特徴とする請求項5記載の粒状炭酸バリウム粒子粉末。
【請求項7】
針状炭酸バリウム粒子粉末を含む水性スラリーを50℃以上で加熱処理する工程を有することを特徴とする請求項1記載の棒状炭酸バリウム粒子粉末の製造方法。
【請求項8】
前記針状炭酸バリウム粒子粉末のアスペクト比は4.5以上であることを特徴とする請求項7記載の棒状炭酸バリウム粒子粉末の製造方法。
【請求項9】
前記針状炭酸バリウム粒子粉末は、水酸化バリウムと、二酸化炭素又は可溶性炭酸塩から選ばれる炭酸源を水溶媒中で反応させて生成されたものを使用することを特徴とする請求項7または8記載の棒状炭酸バリウム粒子粉末の製造方法。
【請求項10】
前記水酸化バリウムと、炭酸源との反応は、多価アルコール、ピロリン酸、アスコルビン酸、カルボン酸、カルボン酸塩、ポリカルボン酸又はポリカルボン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の粒子成長抑制剤の存在下に行うことを特徴とする請求項9記載の棒状炭酸バリウム粒子粉末の製造方法。
【請求項11】
前記炭酸源が二酸化炭素であることを特徴とする請求項9又は10記載の棒状炭酸バリウム粒子粉末の製造方法。
【請求項12】
針状炭酸バリウム粒子粉末を含む水性スラリーを50℃以上で加熱処理して棒状炭酸バリウム粒子粉末を得る工程、該棒状炭酸バリウム粒子粉末を粉砕処理する工程を有することを特徴とする請求項5記載の粒状炭酸バリウム粒子粉末の製造方法。
【請求項13】
請求項1乃至6のいずれかの項に記載の炭酸バリウム粒子粉末と、二酸化チタンとを混合し、得られた混合物を仮焼することを特徴とするペロブスカイト型チタン酸バリウムの製造方法。
【請求項14】
請求項1乃至6のいずれかの項に記載の炭酸バリウム粒子粉末からなることを特徴とするペロブスカイト型チタン酸バリウム製造用のバリウム源。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−114015(P2009−114015A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−287872(P2007−287872)
【出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【出願人】(000230593)日本化学工業株式会社 (296)
【Fターム(参考)】