説明

点眼補助具

【課題】患者が医師の指示通りに確実に点眼することができるようになると共に、目薬の数や種類の変更に容易に対応可能な点眼補助具を提供する。
【解決手段】本発明に係る点眼補助具10は、点眼時刻を表示可能な点眼時刻表示部13と、目薬の種類を表示可能な目薬表示部14と、点眼時刻表示部13に表示される点眼時刻及び目薬表示部14に表示される目薬の種類に対応して並設される複数の目薬収納凹部12とを備え、目薬収納凹部12の深さは目薬の容器の高さより浅く、目薬収納凹部12には目薬収納凹部12を閉塞可能な閉塞体16が着脱可能となっていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者に医師の指示通りに確実に点眼させるための点眼補助具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、緑内障等の眼科治療において、医師の指示通りに確実に点眼することは極めて重要である。しかしながら、ある臨床データでは、医師の指示通りに確実に点眼することのできる患者は、患者全体の約40%程度に過ぎないと言われている。
【0003】
これは、点眼する目薬の種類が複数に及ぶと共に、目薬の種類によって一日の点眼回数が1〜4回までのバリエーションがあり、さらに、点眼間隔が5分間に設定されている場合もあることから、患者がそれらを正確に記憶することが困難なためである。また、患者の高齢化に伴い認知症などの合併例が増加していることもその原因の一つとなっている。
【0004】
そこで、近年、この種の問題点を克服するため、例えば、複数の目薬入り小容器受け入れ用の列とこの列に平行に設けられた点眼時刻用の複数の列を碁盤目状に配列した目薬収納箇所設定手段を備えた点眼の確認整理具(特許文献1参照)や、透明なトレイに設けたスリットに点眼スケジュールを挿入して表示すると共にトレイ表面に目薬を置くための仕切りを設けた点眼用トレイ(特許文献2参照)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−229227号公報
【特許文献2】特開2008−272415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した特許文献1の点眼の確認整理具では、目薬の種類が表示されていないため、点眼後に目薬入り小容器をどの列に戻すべきかが分からなくなり、誤って異なる目薬を点眼してしまうおそれがあった。
【0007】
さらに、この点眼の確認整理具では、円形の切り抜き手段を切り抜くことにより形成した収納孔に目薬入り小容器を収納するようになっており、一旦切り抜いた切り抜き手段を元に戻すことができないため、点眼時刻の異なる別の種類の目薬に再利用することができないといった問題があった。
【0008】
一方、上記した特許文献2の点眼用トレイでは、目薬が変わる度に点眼スケジュールを作成し、トレイに挿入し直す必要があるため、手間が掛かり、使用勝手がよくないといった問題があった。
【0009】
また、上記した特許文献1の点眼の確認整理具や特許文献2の点眼用トレイではいずれも、目薬入り小容器受け入れ用の列や桝目の数が固定されているため、列や桝目より目薬の種類の数が少ない場合には列や桝目が余る一方、列や桝目より目薬の種類の数が多い場合には収納できないといった問題や、上方が開放されているため、移動する際に、目薬入り小容器が転倒又は脱落するおそれがあるといった問題があった。
【0010】
さらに、同じ時間帯に複数の目薬を点眼する場合、通常、最初の目薬の点眼後、次の目薬の点眼までの間隔を5分以上開ける必要があるため、後の目薬を点眼するのを忘れてしまうといった問題があった。
【0011】
特に、日本における最大の失明原因である緑内障の患者の場合には、緑内障手術の効果が不確実で手術後数週間で無効になってしまうこともあるため、複数の目薬を医師の指示通りに点眼することは極めて重要であった。そのため、この種の問題は深刻であった。
【0012】
実際の緑内障患者の症例として、特別養護老人ホーム入居者である67歳の男性のTさんの場合を例に挙げると、図5に示すように、6種類の目薬を一日に合計で15回点眼を行う必要があった。そして、同じ時間に複数の目薬を点眼する場合には点眼間隔を5分間以上空ける必要があるため、Tさんの場合、例えば朝の点眼時には、5種類の目薬の待ち時間(5分間×4回=20分間)と各目薬の点眼時間(約5分間)とを足して約25分間の点眼時間を必要としていた。しかしながら、この間、低賃金で長時間労働が社会問題化している介護現場において、Tさんに付きっ切りで介護職員に世話をさせることは非現実的であり、このように手間の掛かる点眼スケジュールの管理を介護職員に負わせることは実際には不可能に近かった。そのため、患者が5分間の待ち時間を経過する前に次の目薬を点眼してしまい、その前に点眼した目薬が押し流され、その効き目がほとんどなくなるといった問題が発生するおそれがあった。
【0013】
本発明は、上記した課題を解決すべくなされたものであり、患者(特に、緑内障患者)が医師の指示通りに確実に点眼することができるようになると共に、目薬の数や種類の変更に容易に対応可能な点眼補助具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記した目的を達成するため、本発明に係る点眼補助具は、点眼時刻を表示可能な点眼時刻表示部と、目薬の種類を表示可能な目薬表示部と、前記点眼時刻表示部に表示される点眼時刻及び前記目薬表示部に表示される目薬の種類に対応して並設される複数の目薬収納凹部とを備え、該目薬収納凹部の深さは前記目薬の容器の高さより浅く、前記目薬収納凹部には該目薬収納凹部を閉塞可能な閉塞体が着脱可能となっていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る点眼補助具は、点眼時刻を表示可能な点眼時刻表示部と、目薬の種類を表示可能な目薬表示部と、前記点眼時刻表示部に表示される点眼時刻及び前記目薬表示部に表示される目薬の種類に対応して並設される複数の目薬収納凹部とを備え、前記複数の目薬収納凹部と前記目薬表示部とが一列且つ一体に並設されて点眼ユニットが形成され、該各点眼ユニットは前記複数の目薬収納凹部と前記目薬表示部の並設方向に直交する方向に連結可能なように構成されていることを特徴とする。
【0016】
さらに、本発明に係る点眼補助具は、前記点眼時刻表示部と前記目薬収納凹部と前記目薬表示部とを収納する箱本体と、該箱本体の上方開口部を閉塞可能な蓋体とから成る整理箱を備え、該整理箱の内部空間の高さは、前記目薬収納凹部の深さの2倍より低く且つ前記目薬の容器の最大高さより高くなっているのが好ましい。
【0017】
さらにまた、本発明に係る点眼補助具は、所定時間を測定可能なタイマーと、該タイマーが所定時間を測定後に警報音を発するアラームとを備えているのが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、患者が医師の指示通りに確実に点眼することができるようになると共に、目薬の数や種類の変更に容易に対応可能な点眼補助具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態に係る点眼補助具において整理箱の蓋体を開けた状態を示す平面図である。
【図2】図1のZ−Z断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る点眼補助具の変形例を示す平面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る点眼補助具の変形例を示す側面図である。
【図5】緑内障患者であるTさんの点眼スケジュールを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。ここで、図1は本発明の実施の形態に係る点眼補助具において整理箱の蓋体を開けた状態を示す平面図、図2は図1のZ−Z断面図である。
【0021】
本実施の形態に係る点眼補助具10は、仕切り板11によって碁盤目状(図1では4行4列)に並設された複数(図1では16個)の目薬収納凹部12と、目薬収納凹部12の行方向に沿って(図1では上側に)目薬収納凹部12に対応して設けられる点眼時刻表示部13と、目薬収納凹部12の列方向に沿って(図1では左側に)目薬収納凹部12に対応して設けられる目薬表示部14と、目薬収納凹部12と点眼時刻表示部13と目薬表示部14とが収納される整理箱15とを備えている。
【0022】
目薬収納凹部12は、現在発売されているすべての緑内障用目薬(本実施の形態では、A,B,C,D)を収納可能な大きさ且つ該目薬の容器の高さより浅く形成され、例えば、縦22mm、横22mm、深さ33mmの大きさを有している。また、目薬収納凹部12には該目薬収納凹部12を閉塞可能な閉塞体16が着脱可能に設けられており、本実施の形態の場合、閉塞体16は直方体形状のブロック片により構成されている。
【0023】
点眼時刻表示部13は、目薬収納凹部12に収納される目薬の点眼時刻を表示しており、本実施の形態では、点眼時刻が、朝、昼、夕、夜と表示されているが、時刻が表示されていてもよい。
【0024】
目薬表示部14の上部には、目薬収納凹部12に収納される目薬の種類を表示する表示シート17が装着可能となっており、本実施の形態では、目薬表示部14の上面18が透明なアクリル板から成り、その下に水平なスリット孔19が形成され、スリット孔19に目薬収納凹部12側から表示シート17が挿入可能となっている。なお、表示シート17には、例えば、目薬の名称、用法、薬効、副作用等の他、目薬の容器の正面写真等が表示されている。
【0025】
整理箱15は、上方に開口部を有する箱本体20と、箱本体20の上方開口部を閉塞する蓋体21とから構成されており、整理箱15の内部空間の高さHは、目薬収納凹部12の深さDの2倍より低く且つ目薬の容器の最大高さhより高くなっている。
【0026】
次に、上記した本発明の実施の形態に係る点眼補助具10の使用方法について説明する。なお、以下の説明では、患者が一日に点眼すべき目薬が4種類A,B,C,Dあり、目薬Aは朝、昼、夕、夜の一日4回、目薬Bは朝、夕の一日2回、目薬Cは朝、昼、夕の一日3回、目薬Dは夜のみの一日1回、それぞれ点眼するよう医師から指示されているものとする。
【0027】
先ず、図1に示されているように、目薬A,B,Cが朝の列の目薬収納凹部12に収納され、目薬Dが夜の列の目薬収納凹部12に収納されている状態において、朝の点眼時刻になると、患者は整理箱15の蓋体21を開放し、朝の列の目薬収納凹部12に収容されている目薬A,B,Cを所定の間隔(通常、5分以上)を空けて順番に点眼する。その後、患者は点眼を終了した各目薬A,B,Cをそれぞれ次の点眼時刻に対応する目薬収納凹部12に移動させ、蓋体21を閉める。これにより、目薬Aと目薬Cは昼の列の目薬収納凹部12に収納され、目薬Bは、昼の列の目薬収納凹部12が閉塞体16によって閉塞されているため、夕の列の目薬収納凹部12に収納される。
【0028】
このように同じ時間帯に複数の目薬A,B,Cを所定の間隔を空けて点眼することが要求される場合であっても、点眼をしていない目薬はその時間帯の列に残っているため、後の目薬を点眼するのを忘れてしまうおそれはない。特に、緑内障の重症患者が失明を回避するためには、複数の目薬を医師が指示した時間帯に正しく点眼することが非常に有効な手段であるため、後の目薬の点眼し忘れ防止は極めて重要である。
【0029】
次に、昼の点眼時刻になると、患者は整理箱15の蓋体21を開放し、昼の列の目薬収納凹部12に収容されている目薬A,Cを順番に点眼する。その後、患者は点眼を終了した各目薬A,Cをそれぞれ次の点眼時刻に対応する目薬収納凹部12に移動させ、蓋体21を閉める。これにより、目薬Aと目薬Cは夕の列の目薬収納凹部12に収納される。
【0030】
次に、夕方の点眼時刻になると、患者は整理箱15の蓋体21を開放し、夕の列の目薬収納凹部12に収容されている目薬A,B,Cを順番に点眼する。その後、患者は点眼を終了した各目薬A,B,Cをそれぞれ次の点眼時刻に対応する目薬収納凹部12に移動させ、蓋体21を閉める。これにより、目薬Aは夜の列の目薬収納凹部12に収納され、目薬Bと目薬Cは、夜の列の目薬収納凹部12が閉塞体16によって閉塞されているため、朝の列の目薬収納凹部12に収納される。
【0031】
次に、夜の点眼時刻になると、患者は整理箱15の蓋体21を開放し、昼の列の目薬収納凹部12に収容されている目薬A,Cを順番に点眼する。その後、患者は点眼を終了した各目薬A,Cをそれぞれ次の点眼時刻に対応する目薬収納凹部12に移動させ、蓋体21を閉める。これにより、目薬Aは朝の列の目薬収容凹部12に収容され、目薬Dは、朝、昼、夕の列の目薬収納凹部12がいずれも閉塞体16によって閉塞されているため、夜の列の目薬収納凹部12に収納される。
【0032】
以降、患者は、上記したように点眼を繰り返す。
【0033】
このように上記した点眼補助具10を使用した患者は、医師の指示通りに確実に点眼することができるようになる。また、目薬表示部14に目薬の種類が表示されており、点眼後に目薬の容器をどの目薬収容凹部12に戻すべきかが容易且つ直ぐに分かるため、誤って異なる目薬を点眼してしまうことを防ぐことができる。
【0034】
さらに、目薬の種類が変更された場合には、目薬表示部14に装着させる表示シート17を交換し、閉塞体16の位置を変更するだけで簡単に対応することができるため、使用勝手の向上を図ることができる。
【0035】
さらにまた、本実施の形態に係る点眼補助具10は整理箱15を有しており、整理箱15の内部空間の高さHが目薬収納凹部12の深さDの2倍より低く且つ目薬の容器の最大高さhより高く、さらに目薬収納凹部12の深さが目薬の容器の高さより浅く設定されているため、点眼終了後は蓋体21を閉めれば、点眼補助具10を移動させる際でも目薬収納凹部12に収納された目薬の容器が転倒したり、脱落したりするおそれがなく、可搬性を高めることができる。
【0036】
なお、上記した実施の形態では、碁盤目状の目薬収納凹部12が一体に形成されているが、本発明はこの形態に限定されるものではなく、例えば、図3及び図4に示されているように、複数の目薬収納凹部12と目薬表示部14とを一列且つ一体に並設して点眼ユニット30を形成してもよい。この場合、各点眼ユニット30の長手方向の両側面にそれぞれ係合部31,32を形成し、一方の点眼ユニット30を他方の点眼ユニット30に対して長手方向にスライドさせ、係合部31,32同士を係合させることにより、隣接する点眼ユニット30,30が複数の目薬収納凹部12と目薬表示部14の並設方向に直交する方向に連結可能となる。また、この場合、点眼ユニット30毎に目薬収納凹部12を閉鎖する閉鎖体33の位置を変えて一体に成形してもよい。
【0037】
このような点眼ユニット30によれば、上記した各種効果に加えて、目薬の数が変更された場合でも、その目薬の数に合わせて点眼ユニット30を連結したり、その連結を外したりするだけで簡単に対応することができるため、使用勝手をさらに高めることができる。
【0038】
さらに、特に図示しないが、点眼補助具10には、5分間を測定可能なタイマーと、該タイマーが5分間を測定後に所定時間警報音を発するアラームとを設けてもよく、最初の目薬を点眼して5分後に別の目薬を点眼する必要がある場合には、最初の目薬を点眼後、前記タイマーをセットすることにより、後の目薬を点眼し忘れるのを防止することができる。このことは、緑内障の重症患者のように複数の目薬を医師が指示した時間帯に正しく点眼することが特に要求される患者にとって、極めて有効である。
【0039】
さらにまた、この時、整理箱15の蓋体21を箱本体20に蝶番等を介して接続した上で、蓋体21の開閉状態を検知する開閉検知スイッチを取り付け、前記アラームが警報音を発した後、所定時間(例えば、30秒間)、蓋体21が開放されない場合には、再度、前記アラームが警報音を発するように構成してもよい。これにより、後の目薬の点眼し忘れ防止効果をさらに高めることができる。
【符号の説明】
【0040】
10 点眼補助具
12 目薬収納凹部
13 点眼時刻表示部
14 目薬表示部
15 整理箱
16 閉塞体
20 箱本体
21 蓋体
30 点眼ユニット
A,B,C,D 目薬

【特許請求の範囲】
【請求項1】
点眼時刻を表示可能な点眼時刻表示部と、
目薬の種類を表示可能な目薬表示部と、
前記点眼時刻表示部に表示される点眼時刻及び前記目薬表示部に表示される目薬の種類に対応して並設される複数の目薬収納凹部と、
を備え、該目薬収納凹部の深さは前記目薬の容器の高さより浅く、前記目薬収納凹部には該目薬収納凹部を閉塞可能な閉塞体が着脱可能となっていることを特徴とする点眼補助具。
【請求項2】
点眼時刻を表示可能な点眼時刻表示部と、
目薬の種類を表示可能な目薬表示部と、
前記点眼時刻表示部に表示される点眼時刻及び前記目薬表示部に表示される目薬の種類に対応して並設される複数の目薬収納凹部と、
を備え、前記複数の目薬収納凹部と前記目薬表示部とが一列且つ一体に並設されて点眼ユニットが形成され、該各点眼ユニットは前記複数の目薬収納凹部と前記目薬表示部の並設方向に直交する方向に連結可能なように構成されていることを特徴とする点眼補助具。
【請求項3】
前記点眼時刻表示部と前記目薬収納凹部と前記目薬表示部とを収納する箱本体と、該箱本体の上方開口部を閉塞可能な蓋体とから成る整理箱を備え、該整理箱の内部空間の高さは、前記目薬収納凹部の深さの2倍より低く且つ前記目薬の容器の最大高さより高い請求項1又は2に記載の点眼補助具。
【請求項4】
所定時間を測定可能なタイマーと、該タイマーが所定時間を測定後に警報音を発するアラームとを備えている請求項1〜3のいずれか1の請求項に記載の点眼補助具。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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