説明

無塵服

【課題】作業者がクリーンルーム内で長時間着用したときの疲労感を和らげ、また、無塵服内部の空気が循環し、作業者の体温で熱気を帯びた空気で無塵服内部が蒸れることがなくなり、作業時に不快感を生じさせない着心地の良さも重視した画期的な無塵服を提供することを目的としている。
【解決手段】無塵服1の内側に作業者の両肩部に当接する肩パッド部2及びこの左右両肩部の肩パッド部2の中間位置で且つ首部の下方に当接する肩背中央パッド部3の少なくとも三つのパッド部を設けた無塵服。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、半導体・フラットパネルディスプレイ関連、医療・医薬品関連或いは食品関連などの製造工場内や開発研究所内に設けられたクリーンルーム内で着用する無塵服において、無塵服内部の空気が流動することで無塵服内部の熱気を帯びた空気の滞留を防ぎ、無塵服を着用した作業者に熱気による発汗作用などの不快感を生じさせないエアーサイクルシステムを備えた無塵服に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、半導体・フラットパネルディスプレイ関連、医療・医薬品関連或いは食品関連などの製造工場や開発研究所などにおいては、その製品を製造或いは開発する際に塵埃等のパーティクル汚染を懸念する場合においては、このパーティクル汚染を防止するためクリーンルームと呼ばれる高清浄度の室内で作業が行われており、このクリーンルーム内では、作業者は作業者自身からの発塵抑制とその飛散防止の目的で無塵服を着用し作業を行っている。
【0003】
従来、この無塵服は作業者の着心地よりも、まずは、作業者からの発塵を如何に低減するかということに重点が置かれ開発されてきた。
【0004】
従って、従来の無塵服は、作業者の体から発せられる皮膚片や汗などの汚染物をクリーンルーム内に放出させないために通気性が非常に悪く、また、無塵服内部の空気の循環も殆ど無く、作業者の体温で熱気を帯びた空気が無塵服内に滞留してしまうので無塵服内部が蒸れ易くなっているため、クリーンルーム内における製造装置などの保守作業や重量物の運搬で直ぐに汗をかいたり、また、長時間の着用により作業者が疲労感を覚えたりするなど、決して作業者の着心地や作業性を重視した無塵服ではなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、発塵性が少ないことは勿論のこと、作業者がクリーンルーム内で長時間着用したときの疲労感を和らげ、また、無塵服内部の空気が循環し、体温で熱気を帯びた空気で無塵服内が蒸れ難くなり、作業時に不快感を生じさせない着心地の良さも重視した画期的な無塵服を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0007】
無塵服1の内側に作業者の両肩部に当接する肩パッド部2及びこの左右両肩部の肩パッド部2の中間位置で且つ首部の下方に当接する肩背中央パッド部3の少なくとも三つのパッド部を設けたことを特徴とする無塵服に係るものである。
【0008】
また、前記肩パッド部2及び前記肩背中央パッド部3は、前記作業者が前記無塵服1を着用した際に、この無塵服1が前記作業者の体と密着せず、前記無塵服1内に空気が流動し得る空気循環路4を形成する厚みに設定したことを特徴とする請求項1記載の無塵服に係るものである。
【0009】
また、前記作業者が前記無塵服1を着用した際に、前記無塵服1内の空気が前記作業者の背中部と胸部とを循環流動する前記空気循環路4を形成するように前記肩パッド部2と前記肩背中央パッド部3を前記無塵服内に配置したことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の無塵服に係るものである。
【0010】
また、前記肩パッド部2及び前記肩背中央パッド部3の一部が前記無塵服1と縫着してない無縫着部5を設け、この無縫着部5は前記作業者が動作したときに前記無塵服1から離れて、前記作業者と前記無塵服1との空間部を広げ、空気が流動し易くなる構成としたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の無塵服に係るものである。
【0011】
また、前記肩パッド部2及び前記肩背中央パッド部3は、ダブルラッセル構造で形成していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の無塵服に係るものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明は上述のように構成したから、両肩部に設けた肩パッド部が無塵服と作業者の体との密着性を緩和し、肩部への負荷を軽減するので、作業者は長時間無塵服を着用していても疲労感を覚えることが殆どなく、また、両肩部の肩パッド部と首部の下方の肩背中央パッド部とによって作業者の体と無塵服とが密着しない空間部が形成され、この空間部によって作業者の体温で熱気を帯びた空気がそこに滞留せずに無塵服内部を流動することができ、従って、無塵服内部が蒸れ難くなり、作業者が感じる暑さを和らげることができるので、作業者が発汗せずに、不快感を感じることなく快適に作業を行うことができる画期的な無塵服となる。
【0013】
また、請求項2,3記載の発明においては、肩パッド部及び肩背中央パッド部を設けた周辺が浮き上がり作業者の体と無塵服の間に空間部が形成され、更に、請求項3では、この空間部が作業者の背中部と胸部とを空気が流動することができる空気循環路となり、一番蒸れ易いとされる背中部から胸部にかかる部分をこの空気循環路によって空気が流動することで、作業者の体温で熱気を帯びた無塵服内の空気が一箇所に滞留しないので、無塵服内部が蒸れ難くなり、作業者が快適に作業することができる機能性に優れた無塵服となる。
【0014】
また、請求項4記載の発明においては、作業者が動作したときに無塵服内面から夫々のパッド部に設けた無縫着部が浮き離れた状態となり、より無塵服内の熱気を帯びた空気が流動し易くなり、無塵服内部が蒸れ難くなる優れた無塵服となる。
【0015】
また、請求項5記載の発明においては、肩パッド部がより高いクッション性を有することとなり、作業者の肩部に掛かる負荷を吸収し、無塵服を長時間着用しても疲労感を和らげるより実用性の高い優れた無塵服となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施例を示す説明正面図である。
【図2】本実施例を示す説明背面図である。
【図3】本実施例の肩パッド部を示す説明図である。
【図4】本実施例の肩背中央パッド部を示す説明図である。
【図5】別実施例の通気孔部を示す説明背面図である。
【図6】別実施例の通気孔部を示す説明側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
好適と考える本発明の実施形態(発明をどのように実施するか)を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0018】
作業者が本発明の無塵服1を着用した際に、作業者の両肩部に左右の肩パッド部2が当接し、また、この左右肩部の中間で首部の下方にも肩背中央パッド部3が当接することで、このパッド部の周囲が浮き、作業者の体と無塵服1が密着しない空間部が生じる。
【0019】
この空間部は、この左右の肩パッド部2によって首部と肩部の間に首肩間空間部6が形成され、また、左右の肩パッド部2と肩背中央パッド部3とによって左右の肩甲骨の上方に背中空間部7が形成され、作業者が無塵服1を着用した際に、これら空間部によって無塵服1内の作業者の背中部略全面と胸部とを空気が流動する空気循環路4が形成されることとなる。
【0020】
この空気循環路4によって、作業者が無塵服1を着用した際に一番蒸れ易い背中部から胸部において、作業者の体温で熱気を帯びた空気がそこに滞留することなく無塵服1内を流動するので、無塵服1内部が蒸れ難くなり、作業者は発汗するなどの不快な思いをしなくても済むこととなる。
【0021】
しかも、左右の肩パッド部2がクッション性を有し、無塵服1を着た際の肩部に掛かる負荷を軽減し、作業者が長時間無塵服1を着用しても疲労感を和らげることができ、作業者の着心地も重視し、快適に作業を行うことができる画期的な無塵服となる。
【実施例】
【0022】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0023】
本実施例は、例えば、半導体・フラットパネルディスプレイ関連、医療・医薬品関連或いは食品関連などの製造工場内や開発研究所内に設けられた高清浄度の維持が必要なクリーンルームで着用する無塵服1であって、この無塵服1の内面にパッド部を設けることで作業者の着用時の着心地を向上し、また、長時間着用することによる疲労感の低減を図った画期的な無塵服である。
【0024】
無塵服1は、個人の体型にもよるが、一般的には、着用したときには体全体に密着状態となるのではなく適度な余裕があり、上半身においては、主に両肩部から首元部にかけての部分と首部の下方(頚椎の湾曲した突出部付近)に無塵服1が当接し、他の部分、例えば、胸部や背中部の脊柱と肩甲骨の間などは比較的空間部ができ易い形状となっている。
【0025】
しかし、この空間部の空気が作業者の体温で熱気を帯び、空間部に滞留することで無塵服1内部が蒸れ易くなる要因となっている。
【0026】
従って、作業者の体と無塵服1が当接するところにパッド部を配置することで無塵服1内部を空気が流動する通路ができ、無塵服1内部の空気が循環するようになり、これまで熱気を帯びた空気が滞留していた空間部にも空気の流動が生じ熱気の滞留もなくなるので、作業者は熱気による不快感を感じずに快適に作業を行うことができる。
【0027】
従って、無塵服1内部に多数のパッド部を設け、空気が流動するための空間部を多く生じさせるほうが、より快適な着心地を得る無塵服1となるが、パッド部を多く設けることで無塵服1自体のコストを上げ、また、量産性を低下させてしまうので、無塵服1に設けるパッド部は、適正な位置に必要最小限の数だけ設けることが望ましい。
【0028】
そこで、本実施例では、図1,図2に示すように、頭部を覆うフード部8と上着部9とズボン部10とを一体形成した無塵服1において、作業者がこの無塵服1を着用したときに、この無塵服1の内面に作業者の両肩部及びこの両肩部の中間位置で且つ首部の下方が当接する3箇所に夫々肩パッド部2と肩背中央パッド部3とを設けた構成としている。
【0029】
また、夫々のパッド部は5mm程度の厚さを有するダブルラッセル構造に形成し、パッド部自体の空気の通気性を向上させると共にクッション性も持たせている。
【0030】
上述のように両肩部及び首部の下方の三箇所にパッド部を配置して、この通気性を有するパッド部自体が空気循環路4となり、更に、このパッド部の厚みによってパッド部の周囲を浮かせることで、肩パッド部2と肩背中央パッド部3との間にも空気循環路4が形成され、首部から左右両肩部にかけての略全ての領域が空気循環路4となる。
【0031】
このように首部から両肩部にかけて形成された空気循環路4によって、もともと空間部があり、これまで作業者の体温で熱気を帯びた空気が滞留することで蒸れ易かった背中部と胸部とが空気循環路4を介して連通することとなる。
【0032】
従って、作業者が無塵服1を着たときに、熱気の滞留により一番蒸れ易い背中部から胸部にかけて空気が流動し循環するようになり、作業者の体温で熱気を帯びた空気が背中や胸部に滞留することが無くなったので、無塵服1内部が蒸れ難くなり、作業者は快適に作業を行うことができることとなる。
【0033】
しかも、ダブルラッセル構造によるクッション機能を有することで、両肩部への接触面積が広がり、肩部に掛かる負荷を軽減し、作業者の疲労感を和らげているので、クリーンルーム内の長時間作業においても疲れ難く、着心地が良いので快適に作業を行うことができることとなる。
【0034】
また、パッド部について詳しく説明すると、図3に示すように、肩パッド部2は略正三角形で各頂部を丸みを帯びた形状に形成し、この肩パッド部2を無塵服1に縫着する際に、肩パッド部2の全周を縫着しないで、この正三角形状の二辺のみを縫着し、上腕部側(下方側)の一辺は無塵服1と縫着しない無縫着部5を設けている。
【0035】
また、図4に示すように、肩背中央パッド部3は、底辺よりも高さが短い二等辺三角形に形成し、この二等辺三角形の頂点を下方に向けて無塵服1に縫着し、この縫着の際に、肩背中央パッド部3の全周を縫着しないで、頂点と底辺を結ぶ2つの辺の略中間点にそれぞれ無塵服1と縫着しない無縫着部5を設けている。
【0036】
このように、夫々のパッド部に無塵服1と縫着しない無縫着部5を形成したことで、作業者が動作する度にこの無縫着部5が無塵服1から浮き離れる状態となることで、無塵服1内部の空気をより流動し易い状態にしている。
【0037】
また、例えば、図5,図6に示すように、無塵服1の背面側のフード部8と上着部9との境界、具体的には、肩背中央パッド部3の上方に位置する首元や、フード部8の上部、具体的には、頭頂部にメッシュ状の通気孔部11を設けても良い。
【0038】
この通気孔部11から放出された空気は、作業者の背面側より放出され、放出と同時にクリーンルームのダウンフローにより床下へ流れていくので、作業者が作業を行っている前面側に位置する製品や装置へのパーティクルの付着や、クリーンルーム内に拡散しパーティクル汚染となる心配をすることが無く、無塵服1内、特に頭部を覆うフード部8内は、作業者の体温で熱気を帯びた空気が外部に常に放出されることとなるので、より一層蒸れ難くなり、作業者は快適に作業を行うことができることとなる。
【0039】
本実施例を上述のように構成したので、作業者がクリーンルームで作業を行う際に本実施例の無塵服1を着用することで、例えば、保守作業時や重量物運搬などの作業においても、従来の無塵服を着用した場合に比べて発汗作用が少なく、不快感を感じることが殆どなく、快適に作業することができ、また、長時間無塵服1を着用していても、無塵服1の密着による肩部への負荷がダブルラッセル構造のパッド部によって軽減されることで疲労感が和らぐので、作業者は長時間の労働にも対応することが出来ることとなり、従来の無塵服は発塵性を抑えることに重点を置いたことに対して、本発明は、発塵性を抑えることは勿論のこと、作業者の着心地、作業時の機能性の向上を重視した、より実用性の高い画期的な無塵服となる。
【0040】
尚、本実施例では、パッド部は肩パッド部2と肩背中央パッド部3の三箇所しか設けていない構成としているが、例えば、胸部にもパッド部を設けることで、胸部側にも空気循環路4が形成され、より無塵服1内の空気の流動が向上するので、更に蒸れ難い無塵服1となる。
【0041】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0042】
1 無塵服
2 肩パッド部
3 肩背中央パッド部
4 空気循環路
5 無縫着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無塵服の内側に作業者の両肩部に当接する肩パッド部及びこの左右両肩部の肩パッド部の中間位置で且つ首部の下方に当接する肩背中央パッド部の少なくとも三つのパッド部を設けたことを特徴とする無塵服。
【請求項2】
前記肩パッド部及び前記肩背中央パッド部は、前記作業者が前記無塵服を着用した際に、この無塵服が前記作業者の体と密着せず、前記無塵服内に空気が流動し得る空気循環路を形成する厚みに設定したことを特徴とする請求項1記載の無塵服。
【請求項3】
前記作業者が前記無塵服を着用した際に、前記無塵服内の空気が前記作業者の背中部と胸部とを循環流動する前記空気循環路を形成するように前記肩パッド部と前記肩背中央パッド部を前記無塵服内に配置したことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の無塵服。
【請求項4】
前記肩パッド部及び前記肩背中央パッド部の一部が前記無塵服と縫着してない無縫着部を設け、この無縫着部は前記作業者が動作したときに前記無塵服から離れて、前記作業者と前記無塵服との空間部を広げ、空気が流動し易くなる構成としたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の無塵服。
【請求項5】
前記肩パッド部及び前記肩背中央パッド部は、ダブルラッセル構造で形成していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の無塵服。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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