説明

無害化装置

【課題】坩堝を密閉状態にして低圧無酸素状態で加熱するもので、処理効率を向上させ、比較的低温で加熱処理し、長時間安定して動作する有害物を無害化する装置を提供するものである。
【解決手段】別々に制御できるシーケンシャルに継がった坩堝を2つ持ち、彼処理物を投入する入口部と排出する排出部に坩堝を密閉にする各々2個の遮蔽弁を設け中間の真空補正室で処理物の受入、排出と坩堝の真空密閉を両立させる構造とし、坩堝から吸引する吸引手段と真空補正室から吸引する2系統の吸引系統を持ち、吸引手段までの間に冷却容器とトラップを備えることで、彼処理物を水分の乾燥と熱分解処理の2つの工程に分けることにより処理効率を高め安定して稼働することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
焼却炉でゴミを燃やした後に残る焼却灰に付着しているダイオキシンを無害化する装置に関するもの。
【背景技術】
【0002】
プラスチックやゴミを焼却炉で低温で燃やした時に少量のダイオキシン等有害物質(以降有害物質と呼ぶ)が生成される。生成された有害物質は高温でも安定し非常に強い毒性の化学物質である。高温で焼却させると燃焼途中で発生した有害物質も高温の燃焼ガスにさらされ分解する。更に温度を高くし焼却灰を溶融させる溶融炉がある。従来の焼却炉は耐熱温度が低く炉を傷めるため高温にすることができず、有害物質を発生しても分解されず焼却灰の中に残留する。有害物質の残留した焼却灰は管理型処分場に埋設される事がほとんどである。焼却灰中の有害物質を無害化する技術や特許が提案されている。従来、低温焼却炉で発生した焼却灰を減圧した坩堝に入れ、再加熱させることで無害化させることが特願2001−319214で提案、実用化が試みられてきた。従来の無害化装置は1つの減圧した坩堝の中へ焼却灰を順送りすることで乾燥から高温による無害化を行っていた。焼却灰は水分を加えペレット状にして坩堝に投入されていた。
【特許文献1】特願2001−319214
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
彼処理物の坩堝への投入量や、水分含有量にバラツキがあると加熱不足、過剰加熱を起こしやすく、加熱不足では有害物質の分解不足をおこし、加熱過剰ではペレットの破砕、灰の坩堝壁への溶着等支障のもととなる現象がおこっていた。本発明は前記問題点を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
彼処理物の投入量や、水分含有量による加熱のバラツキ、彼処理物の破砕を引き起こす問題は水分の蒸発をさせる第一坩堝と彼処理物の加熱をさせる第二坩堝にして加熱量と滞留時間を別に制御することで解決する。以下に詳細について説明する。
【発明の効果】
【0005】
彼処理物の含有水分によって引き起こされる粉末、水分による装置の運転へ支障をきたし効率を下げていた欠点が解消され、温度管理が安定することで無害化が確実に行われ安定な無害化処理が行われる
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の実施形態の全体構成要素と概略動作を始めに説明する。本発明では[図1]のように坩堝を第一坩堝1と第二坩堝2の2つに分けている。坩堝は内部空間が継がり対象物は第一坩堝から第二坩堝へ移動できるようになっている。焼却炉で生成された有害物質の付着した焼却灰は少量の水分を含浸させ高圧で球体あるいは柱状に成形する。以降成形した焼却灰を彼処理物と呼ぶ。又、成形法は既知の技術であり特願2001−319214に記載されているので説明を割愛する。彼処理物は第一坩堝1の受入ホッパー80から入り。第二坩堝の排出タンク86に排出される。内部へは窒素を坩堝の後段と前段より注入し酸素を置換する。坩堝内の気体は第一坩堝1の中央部より吸引手段で吸引する。又、窒素は坩堝内壁の外側から中心に向かって流れるようになっている。内部の圧力が大気圧に近いと坩堝中心で蒸発した蒸気が坩堝内壁で冷却されると結露することがある。坩堝内空間でも坩堝中心から離れていて外部と直接接する部分は低温になっていて蒸気が低温部に流れていくと結露をおこす。低温部側から乾燥した気体を流していくと水蒸気は低温部に近づけず結露をおこさない。第一坩堝を通り抜けた彼処理物は最終端で掻揚げ機構で掻き出され第二坩堝の入口へ落下する。第一坩堝で水分を蒸発しきった彼処理物は第二坩堝で有害物質の分解する温度まで昇温させる。第二坩堝から彼処理物を排出する時わずかではあるが外気が入る。長時間運転すると外気と同組成の気体になる。第二坩堝へ窒素を注入すると酸素の混入比率を下げることができる。第二坩堝は第一坩堝とは別にすることで彼処理物量の過多、水分比率に差があっても別個に回転管理をして良く、加熱量の制御ができる。坩堝内に最適条件で長時間滞留させる事で有害物質は完全に分解する。坩堝内真空度を100Pa以下の真空度にし温度を350℃以上にすると有害物質は分解する。本発明は温度を350〜900℃、真空度を10Pa〜100Paにすると経済的に効率よく処理できる。
【0007】
次に各構成要素毎に説明する。無害化装置は彼処理物を無害化する連結された第一坩堝1と第二坩堝2とからなっていて内部は真空で彼処理物を加熱する構造になっている。彼処理物は彼処理物入口部13から入り、彼処理物出口部14からでるようになっている。彼処理物入口部13、彼処理物出口部14は彼処理物の出し入れをするが外部の空気を遮断する役目をしている。
【0008】
彼処理物入口部13、彼処理物出口部14は各々2つの遮蔽弁がありがあり、遮蔽弁の中間に真空補正室がある。更に彼処理物入口部には受入ホッパー80が、彼処理物出口部には排出タンク86があり、各々は連結部材83で継がっている。真空補正室は後述する坩堝中心とは別の吸引手段で吸引されている。遮蔽弁は交互に開閉し同時に閉になることはあるが同時に開にならないように動作する。
【0009】
彼処理物は最初に受入ホッパー80に投入される。受入真空補正室後遮蔽弁84が閉になっている時に受入真空補正室前遮蔽弁81を開にする。彼処理物は真空補正室に入り留まる。次に前の遮蔽弁を閉じる。両方が閉になると第一吸引手段92の吸引で受入真空補正室82の圧力が下っていく。この時窒素の注入も同時に行い酸素を置換する。次に窒素の注入を止め受入真空補正室後遮蔽弁84開にする。受入真空補正室82に入っていた彼処理物は第一坩堝彼処理物挿入部16の中に落下投入する。最後に受入真空補正室後遮蔽弁84を閉じる。彼処理物出口部14の場合は排出真空補正室後遮蔽弁88が開になる。後の遮蔽弁に乗っていた排出真空補正室85の彼処理物は落下し排出タンク86に排出される。彼処理物が全て落下したのちに後の遮蔽弁が閉になる。両方が閉になると吸引手段の吸引で真空補正室の圧力が下がる。この時窒素の注入も同時に行い酸素を置換する。次に排出真空補正室前遮蔽弁87の上には第二坩堝から掻き出された彼処理物が乗っており、開になると排出真空補正室85へ落下する。
【0010】
次に坩堝本体について説明する。坩堝は横置きになった第一坩堝と第二坩堝の2つがあり彼処理物は第一坩堝から第二坩堝を通って排出されるようになっている。第一坩堝、第二坩堝ともに多少の構造の違いはあるがほとんど同じである。ろ本体は坩堝中心の坩堝を中心に第一筒部材と両端の端面部材で基本構成される。このほかに第一筒部材の内側には第二筒部材があり筒部材と端面部材とに囲まれた領域が第一区画で冷却流体100を流す空間になっている。端面部材は円形の板状になっている。
第一坩堝1では第一坩堝第一筒部材20と両端の第一坩堝第一端面部材22と第一坩堝第二端面部材23で構成される。第一坩堝第一筒部材20の内側には第一坩堝第二筒部材21があり、第一坩堝第一筒部材20、第一坩堝第二筒部材21、第一坩堝第一端面部材22及び第一坩堝第二端面部材23とに囲まれた領域が第一坩堝第一区画43になる。第二坩堝2では第二坩堝第一筒部材26と両端の第二坩堝第一端面部材27と第二坩堝第二端面部材27で構成される。第二坩堝第一筒部材24の内側には第二坩堝第二筒部材25があり、第二坩堝第一筒部材24、第二坩堝第二筒部材25、第二坩堝第一端面部材26及び第二坩堝第二端面部材27とに囲まれた領域が第二坩堝第一区画68になる。
【0011】
坩堝本体は基台に取り付けられた4ヶの車輪の上にのせられ、坩堝本体が車輪の駆動力で回転するようになっている。車輪のうち少なくとも1つがモーターによって駆動され坩堝本体が回転する。発明の実施例では中心線を同一とする車輪が回転軸に結合されモーターによって回転される。第一坩堝では第一坩堝1が基台30に取り付けられたベアリング33に支持される第一坩堝回転軸32につけられた第一坩堝車輪34の上に乗り、第一坩堝回転軸32に結合された第一坩堝モーター31によって回転される。第二坩堝では第二坩堝2が基台30に取り付けられたベアリング58に支持される第二坩堝回転軸57につけられた第二坩堝車輪59の上に乗り、第二坩堝回転軸57に結合された第二坩堝モーター56によって回転される。
【0012】
次に坩堝本体の中心部について説明する。坩堝本体の中心部にはセラミックの坩堝があり坩堝中心を形成している。坩堝中心は端面部材と第二筒部材に支持されていて外側を加熱手段によって包囲されている。坩堝中心と第二筒部材との間には断熱材が充填されている。坩堝には内側に螺旋溝が形成されていて坩堝中心内に入れられた彼処理物は坩堝本体の回転に伴い螺旋溝にそって移送される。坩堝中心の長手方向の中心近くには温度を計測するセンサーが坩堝に埋め込まれており彼処理物の温度が計測できるようになっている。第一坩堝では第一坩堝本体10の中心に第一坩堝炉心40があり、炉心を形成している。炉心は第一坩堝第一端面部材22と第一坩堝第二端面部材23及び第一坩堝第二筒部材21に支持され、第一坩堝炉心40は第一坩堝加熱手段42で包囲されている。第一坩堝炉心40の内側に第一坩堝螺旋溝41が形成されている。第一坩堝炉心40の長手方向中心部に第一坩堝温度計測センサー46が埋め込まれている。第二坩堝では第二坩堝本体11の中心に第二坩堝炉心65があり、炉心を形成している。炉心は第二坩堝第一端面部材26と第二坩堝第二端面部材27及び第二坩堝第二筒部材25に支持され、第二坩堝炉心65は第二坩堝加熱手段67で包囲されている。第二坩堝炉心65の内側に第二坩堝螺旋溝66が形成されている。第二坩堝炉心65の長手方向中心部に第二坩堝温度計測センサー71が埋め込まれている。
【0013】
次に彼処理物挿入部と彼処理物排出部について説明する。挿入部と排出部は各々固定部と坩堝本体の両端の延長部に当たる回転部第一部材と固定部の外側にあって後述の押込スクリュー、排出スクリューと一体となって回転する回転部第二部材の主要構成要素から成り立っている。各々の部材は摺動部、軸受、組立の利便性から部材が分割されている。[図1]には機能的に一体となった形を[図4]には分割した部材として記載している。各固定部と回転部には軸受107が付けられ各部材の荷重を支えるとともに摺動抵抗をさげてスムーズに回転するようにしている。
【0014】
回転部第一部材は坩堝本体の延長を形成し固定部と嵌め合う関係になっていて炉心と外気を遮断するシールが付けられている。シールとシールの間は環状溝が掘られ固定側と回転側との間で冷却流体と窒素の受け渡しをする。環状溝どうしの間にも同様シールで分離される。
【0015】
第一坩堝の押込側では第一坩堝押込側回転部第一部材118が第一坩堝本体の延長を形成し、第一坩堝押込側固定部第二部材112と嵌め合いになっている。この嵌め合い部には2本の第一坩堝第一環状溝116が掘られ3本のシール部材106によって仕切られ冷却流体と窒素の受け渡しをする。冷却流体は第一坩堝押込側固定部第二部材112と第一坩堝押込側固定部第一部材111の貫通穴に接続している冷却流体注入配管153を通り注入される。第一坩堝の排出側では第一坩堝排出側回転部第一部材128が第一坩堝本体の延長を形成し、第一坩堝排出側固定部第二部材122と嵌め合いになっている。この嵌め合い部には2本の第一坩堝第二環状溝1176が掘られ3本のシール部材106によって仕切られ冷却流体100と窒素の受け渡しをする。冷却流体は第一坩堝排出側固定部第二部材122と第一坩堝排出側固定部第一部材121の貫通穴に接続している冷却流体排出配管154を通り排出される。
【0016】
第二坩堝の押込側では第二坩堝押込側回転部第一部材138が第二坩堝本体の延長を形成し、第二坩堝押込側固定部第二部材132と嵌め合いになっている。この嵌め合い部には2本の第二坩堝第一環状溝136が掘られ3本のシール部材106によって仕切られ冷却流体100と窒素の受け渡しをする。冷却流体は第二坩堝押込側固定部第二部材132と第二坩堝排出側固定部第一部材131の貫通穴に接続している冷却流体排出配管154を通り排出される。第二坩堝の排出側では第二坩堝排出側回転部第一部材148が第二坩堝本体の延長を形成し、第二坩堝排出側固定部第二部材142と嵌め合いになっている。この嵌め合い部には2本の第二坩堝第二環状溝137が掘られ3本のシール部材106によって仕切られ冷却流体と窒素の受け渡しをする。冷却流体は第二坩堝排出側固定部第二部材142と第二坩堝排出側固定部第一部材141の貫通穴に接続している冷却流体注入配管153を通り注入される。冷却流体の詳細は図示していないがそのまま排出されても良く、熱交換器により冷却し再循環しても良い。
【0017】
回転部第二部材と固定部は嵌め合う関係になっていて坩堝と外気を遮断するシールが付けられている。第一坩堝の押込側では第一坩堝押込側回転部第二部材119が第一坩堝押込側固定部第四部材114と嵌め合いになっている。第一坩堝の排出側では第一坩堝排出側回転部第二部材129が第一坩堝排出側固定部第四部材124と嵌め合いになっている。第二坩堝の押込側では第二坩堝押込側回転部第二部材139が第二坩堝押込側固定部第四部材134と嵌め合いになっている。第二坩堝の排出側では第二坩堝排出側回転部第二部材149が第二坩堝排出側固定部第四部材144と嵌め合いになっている。
【0018】
次にスクリューについて説明する。入口側は回転部第二部材の最外部から内側に向かってスクリューがついていて押込側では彼処理物入口部から入った彼処理物を炉心へ押し込むようになっている。第一坩堝では第一坩堝押込側回転部第二部材119の最外部に第一坩堝押込スクリュー47がついている。第二坩堝では第二坩堝押込側回転部第二部材139の最外部に第二坩堝押込スクリュー72がついている。出口側は炉心を移送されてきた彼処理物を炉心最終端で掻揚板が掻き揚げて排出側回転部第二部材の最外部から内側に向かって排出スクリューに絡ませて回転し坩堝外へ排出し坩堝連絡部へ落とし込むようになっている。第一坩堝の出口側は炉心を移送されてきた彼処理物を炉心最終端で掻揚板51が掻き揚げて第一坩堝排出側回転部第二部材129の最外部から内側に向かって第一坩堝排出スクリュー49に絡ませて回転し炉心外の第一坩堝彼処理物排出部17へ排出し坩堝連絡部15へ落とし込む。
【0019】
坩堝連絡部15は第一坩堝彼処理物排出側固定部120と第二坩堝彼処理物押込側固定部130を連結する筒で彼処理物は重力で第二坩堝彼処理物挿入部18へ落下する。第二坩堝の出口側は炉心を移送されてきた彼処理物を炉心最終端で掻揚板76が掻き揚げて第二坩堝排出側回転部第二部材149の最外部から内側に向かって第二坩堝排出スクリュー74に絡ませて回転し炉心外の第二坩堝彼処理物排出部19へ排出し彼処理物出口部14へ落とし込む。スクリューの回転は回転部第二部材についている歯車をモーターが駆動する。第一坩堝、第二坩堝の挿入、排出は各々独立して回転する。第一坩堝の押込側では第一坩堝押込側回転部第二部材119を第一坩堝押込スクリューモーター48が駆動する。第一坩堝の排出側では第一坩堝排出側回転部第二部材129を第一坩堝排出スクリューモーター50が駆動する。第二坩堝の押込側では第二坩堝押込側回転部第二部材139を第二坩堝押込スクリューモーター73が駆動する。第二坩堝の排出側では第二坩堝排出側回転部第二部材149を第二坩堝排出スクリューモーター75が駆動する。
【0020】
固定部は軸受の取付及びシールの取付を容易にするため数個の部材に分割している。本発明の実施例、[図4]では5つの部材に分けている。回転部第一部材と固定部第二部材の環状溝が掘られた固定側は外部へ貫通穴、配管で継がっている、回転側は貫通穴、配管で坩堝内部空間に継がっている。環状溝は冷却流体では片側が流入、他方が流出になっている。窒素は全個所とも流入用になっていて、各所の流入量を個別に調整できるようにしている。回転部第一部材には集電リングが取り付けられていて加熱手段に電力を供給している。本発明の実施例では第一坩堝集電リング126は彼処理物排出部の第一坩堝排出側回転部第一部材121に、第二坩堝集電リング146は彼処理物挿入部の第二坩堝排出側回転部第一部材141についている。第一坩堝の第一坩堝押込側固定部第五部材115には真空吸引パイプ105がついていて炉心から加熱により蒸発する水蒸気、置換用に注入される窒素を吸引し真空度を維持している。
【0021】
彼処理物入口部、彼処理物出口部、坩堝連絡部の構成要素をなす各連結部材83は彼処理物挿入部及び彼処理物排出部の固定部に貫入している。固定部がシールの取付を容易にするため数個の部材に分割しているため第一坩堝処理物挿入部16では第一坩堝押込側固定部第一部材111と第一坩堝押込側固定部第三部材113を貫入する形で彼処理物入口部の連結部材83がついている。第一坩堝処理物排出部17では第一坩堝排出側固定部第一部材121と第一坩堝排出側固定部第三部材123を貫入する形で坩堝連絡部の連結部材83がついている。第二坩堝処理物挿入部18では第二坩堝押込側固定部第一部材131と第二坩堝押込側固定部第三部材133を貫入する形で坩堝連絡部の連結部材83がついている。第二坩堝処理物排出部19では第二坩堝排出側固定部第一部材141と第二坩堝排出側固定部第三部材143を貫入する形で彼処理物出口部の連結部材83がついている。
【0022】
窒素源45から窒素供給配管150によって供給される窒素は各々の坩堝とも坩堝第二区画の両端面から注入する、更に彼処理物挿入部、及び彼処理物排出部の固定部第五部材に継がっている配管から内部に向かって注入する。これら4方向からの注入によって蒸気が結露するのを防ぐ。第一坩堝では第一坩堝第一端面部材22、第一坩堝第二端面部材23、第一坩堝押込側固定部第五部材115及び第一坩堝排出側固定部第五部材125から第一坩堝第二区画44に注入される。第二坩堝では第二坩堝第一端面部材26、第二坩堝第二端面部材27、第二坩堝押込側固定部第五部材135及び第二坩堝排出側固定部第五部材145から第二坩堝第二区画69に注入される。窒素源45は純窒素が望ましいが酸素や二酸化探査等の不純物が混ざっていても差し支えない。酸素を大気中の1%に下げられた窒素では真空度を更に1/100に下げたと同じ効果になる。
【0023】
窒素の注入量と注入タイミングは真空補正室と坩堝で異なり、真空補正室では最終真空圧の時の真空補正室容積の等量程度の注入量を理想的には最終真空圧の時に置換する。低コストの窒素が供給できる窒素源なら彼処理物の受入・排出の過程で最終真空圧で真空補正室容積の等量が入れ替わる量を常時注入しても良い。坩堝では彼処理物から蒸発する気体の量、封密部からの漏洩量、真空補正室との圧力差により注入する量等で異なるが、内部圧力を下げる上で影響を及ぼさない量を注入する。
【0024】
無害化装置から吸引手段で吸引する真空系は2系統になっていて、1系統は真空補正室を減圧する経路になっている。他の系統は坩堝を減圧する経路になっている。各々の経路は最初が冷却、次がストラップ、最後に吸引手段に接続している。彼処理物の粉末、塩素、塩化物を補足する。第一の真空系は受入真空補正室82、排出真空補正室85から第一真空吸引配管151を接続し、第一冷却容器90、第一トラップ91、最後に第一吸引手段92に接続している。第二の真空系は第一坩堝の第一坩堝押込側固定部第五部材115の真空吸引パイプ105から接続し、第二冷却容器95、第二トラップ96、最後に第二吸引手段97に第二真空吸引配管152に接続している。
【0025】
補足物には分解が不完全で補足される有害物質が残る場合もあるが、補足物の無害化は別方式によるものとする。
【0026】
彼処理物を減圧すると水が蒸発し、気化熱により温度は低下していく。水分が低く水分が蒸発しきると温度低下は止まる。含水率の高い場合で真空度を611Pa以下にすると水は氷になる。彼処理物の含水率にバラツキがあると彼処理物の温度のバラツキも大きくなる。大気中で熱の伝わり方には伝導、輻射、と気体の対流の3通りの方法があるが、真空中の加熱では伝導と輻射のみによって行われるので彼処理物の内部への熱は伝わりにくい。本発明では坩堝が回転し螺旋溝を移送する時彼処理物は螺旋溝で傾斜面をつくり攪拌が起こって彼処理物全体が均等に加熱される。
真空圧を100Paまで下げると100aを飽和蒸気圧とする水の温度はおよそ−20℃になる。水はこの温度では氷になり、加熱すると昇華により気体に変わる。含水した彼処理物が真空圧を飽和蒸気圧とする温度以上になれば乾燥状態になる。加熱力を強くし、送り速度を早くした場合、すなわち滞留時間を短くすると均一に加熱できず、温度計測に誤差がおきる。本発明では加熱力を比較的弱くし滞留時間を長くし、彼処理物の温度を均等にし炉心温度と彼処理物の温度が接近するよう制御する。
【0027】
第一坩堝の中央部付近で100℃まで上昇させるよう回転速度と加熱力を制御することで彼処理物の粉砕を防ぎ乾燥を完全にする。第二坩堝は気化によるロスが無くなり加熱エネルギーを有効に温度上昇に向けられる。温度350〜900℃で滞留時間を長くすることで確実に熱分解させる。滞留時間を長くすることは回転速度を遅くするで実現でき、温度を上げるには回転速度を遅くすることと、加熱電力を大きくする2通りの方法がある。有害物質の分解速度は温度の高い場合には速く、温度の低い場合には遅い。温度が低い場合は彼処理物の温度が不均一で処理可能な下限温度以下になっている場所もあり、温度を均一にする為に坩堝内の滞留時間を長くする。
【0028】
第二坩堝の中央部付近で350℃まで上昇させるよう回転速度と加熱力を制御することで坩堝の後半の加熱と滞留時間で確実な熱分解ができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】全体の構成を示す図
【図2】第一坩堝の構成を示す図
【図3】第二坩堝の構成を示す図
【図4】坩堝の入口部、出口部の詳細を説明する図で第一坩堝の入口部の実施例を示す図
【図5】坩堝の入口部、出口部の詳細を説明する図で第一坩堝の出口部の実施例を示す図
【図6】坩堝の入口部、出口部の詳細を説明する図で第二坩堝の入口部の実施例を示す図
【図7】坩堝の入口部、出口部の詳細を説明する図で第二坩堝の出口部の実施例を示す図
【符号の説明】
【0030】
1・・第一坩堝、2・・第二坩堝、10・・第一坩堝本体、11・・第二坩堝本体、13・・彼処理物入口部、14・・彼処理物出口部、15・・坩堝連絡部 16・・第一坩堝彼処理物挿入部、17・・第一坩堝彼処理物排出部、18・・第二坩堝彼処理物挿入部、19・・第二坩堝彼処理物排出部、20・・第一坩堝第一筒部材、21・・第一坩堝第二筒部材、22・・第一坩堝第一端面部材、23・・第一坩堝第二端面部材、24・・第二坩堝第一筒部材、25・・第二坩堝第二筒部材、26・・第二坩堝第一端面部材、27・・第二坩堝第二端面部材 30・・基台、31・・第一坩堝モーター、32・・第一坩堝回転軸、33・・ベアリング、34・・第一坩堝車輪、40・・第一坩堝炉心、41・・第一坩堝螺旋溝、42・・第一坩堝加熱手段、43・・第一坩堝第一区画、44・・第一坩堝第二区画、45・・窒素源、46・・第一坩堝温度計測センサー、47・・第一坩堝押込スクリュー、48・・第一坩堝押込スクリューモーター、49・・第一坩堝排出スクリュー、50・・第一坩堝排出スクリューモーター、51・・掻揚板 56・・第二坩堝モーター、57・・第二坩堝回転軸、58・・ベアリング、59・・第二坩堝車輪、65・・第二坩堝炉心、66・・第二坩堝螺旋溝、67・・第二坩堝加熱手段、68・・第二坩堝第一区画、69・・第二坩堝第二区画、71・・第二坩堝温度計測センサー、72・・第二坩堝押込スクリュー、73・・第二坩堝押込スクリューモーター、74・・第二坩堝排出スクリュー、75・・第二坩堝排出スクリューモーター、76・・掻揚板 80・・受入ホッパー、81・・受入真空補正室前遮蔽弁、82・・受入真空補正室、83・・連結部材、84・・受入真空補正室後遮蔽弁、85・・排出真空補正室、86・・排出タンク、87・・排出真空補正室前遮蔽弁、88・・排出真空補正室後遮蔽弁、90・・第一冷却容器、91・・第一トラップ、92・・第一吸引手段、95・・第二冷却容器、96・・第二トラップ、97・・第二吸引手段、100・・冷却流体、105・・真空吸引パイプ、106・・シール部材、107・・軸受 111・・第一坩堝押込側固定部第一部材、112・・第一坩堝押込側固定部第二部材、113・・第一坩堝押込側固定部第三部材、114・・第一坩堝押込側固定部第四部材、115・・第一坩堝押込側固定部第五部材、116・・第一坩堝第一環状溝、117・・第一坩堝第二環状溝、118・・第一坩堝押込側回転部部第一部材、119・・第一坩堝押込側回転部部第二部材 121・・第一坩堝排出側固定部第一部材、122・・第一坩堝排出側固定部第二部材、123・・第一坩堝排出側固定部第三部材、124・・第一坩堝排出側固定部第四部材、125・・第一坩堝排出側固定部第五部材、126・・第一坩堝集電リング、128・・第一坩堝排出側回転部部第一部材、129・・第一坩堝排出側回転部部第二部材 131・・第二坩堝押込側固定部第一部材、132・・第二坩堝押込側固定部第二部材、133・・第二坩堝押込側固定部第三部材、134・・第二坩堝押込側固定部第四部材、135・・第二坩堝押込側固定部第五部材、136・・第二坩堝第一環状溝、137・・第二坩堝第二環状溝、138・・第二坩堝押込側回転部部第一部材、139・・第二坩堝押込側回転部部第二部材 141・・第二坩堝排出側固定部第一部材、142・・第二坩堝排出側固定部第二部材、143・・第二坩堝排出側固定部第三部材、144・・第二坩堝排出側固定部第四部材、145・・第二坩堝排出側固定部第五部材、146・・第二坩堝集電リング、148・・第二坩堝排出側回転部部第一部材、149・・第二坩堝排出側回転部部第二部材 150・・窒素供給配管、151・・第一真空吸引配管、152・・第二真空吸引配管、153・・冷却流体注入配管、154・・冷却流体排出配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有害物質を含む彼処理物を入れる坩堝を乾燥と加熱の2つの工程を目的とする2つの坩堝に分け、加熱手段で有害物質を分解・気化させ、気化した分解物質を吸引手段で坩堝から外部へ吸引、排出することを特徴とする無害化装置。
【請求項2】
有害物質を含む彼処理物を坩堝に入れる入口部と坩堝から排出する排出部に少なくとも2個以上の遮蔽手段によって仕切られた真空補正室を持ち、遮蔽手段を交互に開閉することで投入及び排出する真空補正室で彼処理物とともに入った外気を吸引手段で吸引・排出することで坩堝に外気の流入が阻止できることを特徴とする無害化装置。
【請求項3】
坩堝と真空補正室に窒素を流入し坩堝内の酸素濃度をより低くすることを特徴とする無害化装置。
【請求項4】
前記坩堝を吸引する吸引手段と前記真空補正室を吸引する吸引する吸引手段を別とすることを特徴とする無害化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−125741(P2009−125741A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−325256(P2007−325256)
【出願日】平成19年11月20日(2007.11.20)
【出願人】(594012221)三水テクノ株式会社 (2)
【Fターム(参考)】