説明

無排水化吸着回収装置

【課題】排水処理を必要としない、安価で、ランニングコストの低廉な無排水化吸着塔を提供する。
【解決手段】本発明は、被処理ガス中の有機溶剤の吸着、吸着した有機溶剤の脱離を交互に連続して行う吸着材を備えた複数の吸着塔と、有機溶剤を含む被処理ガスを送風機により吸着塔に送る送風ラインと、キャリアガスを吸着塔に送風するとともに、有機溶剤を吸着材から脱離する脱離手段と、脱離後の有機溶剤を濃縮、分離回収する回収ラインとからなる吸着回収装置において、有機溶剤と共に回収、分離された水相を前記送風ラインに気化するよう戻すリターン手段を設けたことを特徴とする無排水化吸着回収装置の構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性有機化合物(VOC)などの有機溶剤を含む被処理ガスから、有機溶剤を吸着、脱離させ、濃縮・回収する吸着回収装置に関し、さらに詳しくは、被処理ガスに混在し、有機溶剤とともに回収される水相を、排水として別装置により処理することなく、排水中に混入する有機溶剤を吸着塔に戻して除去し、水分は水蒸気として大気に放出する無排水化吸着回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機溶剤を含む被処理ガスから、有機溶剤を吸着回収する従来の吸着回収装置では、吸着材から有機溶剤を脱離させ吸着材を再生するために、吸着材を水蒸気で加熱していた。
【0003】
しかし、水蒸気による吸着材の加熱再生では、吸着した有機溶剤を脱離させる熱エネルギーよりも、有機溶剤を脱離させる温度まで吸着材自体を加熱する熱エネルギーの方が遙かに大きい。一般には、有機溶剤の5〜10倍(体積基準)もの多量の水蒸気が必要となる。また、有機溶剤の凝縮回収時に、多量の凝縮水(水相)が混ざった状態で有機溶剤が回収される。
【0004】
この水相には有機溶剤が少なからず含まれておりそのまま排水できず、別途水相の排水処理装置が必要であった。このため、水蒸気加熱を用いた吸着回収装置及び排水処理装置からなる吸着回収システムは、設備費、維持費ともに大きくなる。
【0005】
この欠点を改善する方法として、吸着材から有機溶剤を離脱するため、吸着材を水蒸気によらず加熱する脱離手段として、加熱した空気など非凝縮性のガスで吸着材を加熱する方法、水蒸気や油などの熱媒体、電気ヒーター、マイクロ波、高周波のエネルギーにより加熱した伝熱体と熱交換器と吸着材を接触させることにより間接的に吸着材を加熱する方法、また吸着材を通電やマイクロ波や高周波のエネルギーにより直接加熱する方法などが知られている。
【0006】
その一例として、図7に、通電加熱により吸着材を直接加熱する従来の吸着回収装置11のフロー図を示す。なお、実線で稼動中のラインを、点線で停止しているラインを表した。即ち、吸着塔2が吸着工程、吸着塔3が脱離工程中である。
【0007】
吸着回収装置11は、複数の吸着塔2、3と、送風ライン4と、脱離手段5と、回収ライン7とからなる。
【0008】
吸着塔2、3は、それぞれ吸着材2a、3aを備え、被処理ガス中の有機溶剤の吸着、吸着した有機溶剤の脱離を交互に連続して行う。吸着材2a、3aは、炭素剤、炭素繊維、セラミックなど従来から使用されている素材で、ここでは通電加熱される炭素繊維を用いている。これにより、連続的に有機溶剤の吸着、脱離、回収を可能にする。
【0009】
被処理ガスは、電子産業、化学工業その他各種工業において、溶剤を使用する洗浄工程、乾燥工程より排出され、揮発性有機化合物(VOC)などの有機溶剤が含まれる排ガスである。有機溶剤としては、例えば、トルエン、ベンゼン、フロン類、ジクロロメタンなど洗浄剤がある。
【0010】
送風ライン4は、有機溶剤を含む被処理ガスをブロア4bなどの送風機により、送り配管4aを通し、吸着工程中の吸着塔に送る。ここでは、吸着塔2である。
【0011】
送風された被処理ガスは、切換弁4cにより送風される吸着塔2、3が選択される。吸着工程中の吸着塔2に送風された被処理ガスは、有機溶剤が吸着材2aに吸着除去され、大気中に浄化ガスとして放出され、脱離工程中の吸着塔3から脱離した有機溶剤は、キャリアガス5aと共に回収ライン7に送られるよう切換弁7aにより制御される。
【0012】
脱離手段5は、有機溶剤を吸着材2a、3aから脱離するため加熱装置である。なお、吸着塔2、3を減圧し、有機溶剤を脱離することも行われている。加熱装置は、ここでは吸着材2a、3aを直接加熱する通電加熱装置である。
【0013】
なお、脱離手段5による脱離工程中、脱離した有機溶剤を次の回収ライン7に送るための加熱された窒素ガス、水蒸気などのキャリアガス5aが、窒素ガスボンベ、ボイラなどのキャリアガス源5bから、脱離工程中の吸着塔2、3に送られる。これにより、吸着工程後の脱離工程にて吸着材2a、3aが加熱再生される。
【0014】
回収ライン7は、脱離後の有機溶剤を濃縮、分離回収するラインであり、浄化ガスの放出、及び脱離回収される有機溶剤を回収ライン7に流す切換弁7aと、脱離した有機溶剤を吸着塔2、3からキャリアガス5aと共に回収ライン7に引き抜く真空ポンプ7bと、回収した有機溶剤を凝集させる凝縮器7cと、凝縮した有機溶剤7eと水分及び水に可溶な溶液(水相7f)とに分離する分離器7dと、キャリアガス5aを送風ライン4の送り配管4aに戻す循環配管7gとからなる。
【0015】
凝縮器7cは、有機溶剤を冷却し液化する装置である。分離器7dには、有機溶剤と水の比重差を利用したものや、膜を利用したものがある。
【0016】
水相7fには、空気中の水分、アルコールなど水に可溶な溶液が含まれる。また、この水相7fには、僅かに有機溶剤7eも含まれる。従って、従来は吸着回収装置1とは別に排水処理を行い、水相7fから有機溶剤を除去した水相を排水していた。一方、キャリアガス5aは、循環配管7gを経由し、送り配管4aから吸着塔2、3に戻され、浄化ガスとして大気中に放出される。
【0017】
これら水蒸気により吸着材を加熱しない上記方法でも、窒素ガスなどをキャリアガスとして有機溶剤を脱離させ凝縮回収すると、有機溶剤を吸着処理する時に、被処理ガス中に含まれる水蒸気も同時に吸着してしまう。そのため、回収した有機溶剤の量に対して5〜50重量%の水も混在して回収され、水相7fを処理するという問題が残る。
【0018】
なお、吸着材の加熱に水蒸気を使わない上記加熱方法に、キャリアガスとして水蒸気を用いた場合は、吸着材の加熱にも水蒸気を用いた場合よりも、水蒸気量を大幅に削減できる。ただし、それでも有機溶剤の回収量と同等量(〜100重量%)の水が混在して回収される。
【0019】
他方、排水がでることがない吸着回収装置として、特許文献1のヒーター加熱による有機溶剤回収装置が公開されている。
【0020】
特許文献1の有機溶剤回収装置は、被処理ガス中の溶剤蒸気を吸着する活性炭を内蔵した第1及び第2の吸着塔と、該吸着塔から吸着された溶剤蒸気を、加熱するかまたは高温非凝縮性気体を介して脱着させる手段を備えた有機溶剤回収装置において、第1または第2の吸着塔から脱着した溶剤蒸気を有機蒸気分離膜に導き、膜を透過した溶剤蒸気を液化回収し、回収できなかった溶剤蒸気を該分離膜の供給側に戻し、該分離膜の非透過成分を被処理ガスに混合して第2または第1の吸着塔に導く手段かまたは該非透過成分を大気に直接排出する手段を備えたことを特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開平7−39717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
特許文献1の無排水化には、膜により、有機溶剤を選択的に分離し、分離されない有機蒸気分離膜の非透過ガスをブロウー2の前段に戻している。従って水を透過させない膜を使用しているため、別装置によって排水処理をする必要はない。
【0023】
しかし、膜は高価な上、目詰まり、劣化等により定期的に、洗浄、交換をする必要があり、ランニングコスト、交換作業の煩雑などの問題がある。
【0024】
そこで、本発明は、排水処理を必要としない、安価で、ランニングコストの低廉な無排水化吸着塔を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明は、上記の課題を解決するために、
(1)
被処理ガス中の有機溶剤の吸着、吸着した有機溶剤の脱離を交互に連続して行う吸着材を備えた複数の吸着塔と、有機溶剤を含む被処理ガスを送風機により吸着塔に送る送風ラインと、キャリアガスを吸着塔に送風するとともに有機溶剤を吸着材から脱離する脱離手段と、脱離後の有機溶剤を濃縮、分離回収する回収ラインとからなる吸着回収装置において、
さらに、前記回収ラインと前記送風ラインの送り配管とを連結するリターン配管と、前記リターン配管中に挿入され一端が前記水相に接し他端が前記送風ライン内に位置する繊維材とからなるリターン手段を備え、
有機溶剤と共に回収、分離された水相を前記繊維材の毛細管現象を介して前記送風ラインに移送し、前記の送風ライン中の風で気化することを特徴とする無排水化吸着回収装置の構成とした。
(2)
前記分離回収が、水相と有機溶剤の比重差を用いて分離する分離器であることを特徴とする(1)に記載の無排水化吸着回収装置の構成とした。
(3)
前記水相の比重が、有機溶剤の比重より軽い場合において、前記繊維材の前記分離器中の先端部にフロートを固定したことを特徴とする(2)に記載の無排水化吸着回収装置の構成とした。
(4)
前記水相の比重が、有機溶剤の比重より重い場合において、前記分離器に底部を残し仕切りを設け、有機溶媒から隔離した水相を前記送風ラインに送ることを特徴とする(2)に記載の無排水化吸着回収装置の構成とした。
(5)
前記回収ラインで回収された水相の一部を、加熱し、水蒸気として、前記脱離手段のキャリアガスとして使用することを特徴とする(1)〜(4)の何れかに記載の無排水化吸着回収装置の構成とした。
(6)
有機溶剤を吸着、脱離、凝集回収する吸着回収装置において、有機溶剤と共に回収、分離された水相を、被処理ガスを吸着塔に送る送風ラインに繊維材の毛細管現象を介して移送させ、前記の送風ラインの風で気化させることを特徴とする吸着回収装置の無排水化方法の構成とした。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、以上の構成であるから、有機溶剤のみを回収することができるとともに、排水処理を必要とする水相は発生せず、吸着回収装置を安価に完全に無排水化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明である無排水化吸着回収装置の一例である実施例1のフロー図である。
【図2】本発明である無排水化吸着回収装置の一例である実施例2のフロー図である。
【図3】実施例2のリターン手段の水相が多量に存在するときの断面模式図である。
【図4】実施例2のリターン手段の水相が減少したときの断面模式図である。
【図5】実施例2のリターン手段の他の断面模式図である。
【図6】本発明である無排水化吸着回収装置の一例である実施例3のフロー図である。
【図7】従来の吸着回収装置のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、従来の吸着回収装置において、まず回収した有機溶剤7eと水相7fを分離器7dにより分離する。分離した水相7fは、被処理ガスに戻し、吸着材2a、3aに再度吸着させる。吸着材2a、3aへの水と有機溶剤との吸着の選択性により、分離した水相7fに含まれていた僅かな有機溶剤は吸着材2a、3aに吸着され回収されるが、水はほとんど吸着されずに安全な水蒸気として浄化ガスと共に大気中に放出される。
【0029】
1回の吸着工程の被処理ガスに含まれる水を1、吸着材の水の回収率をp(<1)とすると、1回目に凝縮回収される水の量はpこの水の全量を2回目の吸着工程に戻すと2回目に凝縮回収される水の量は(1+p)pとなる。
【0030】
従って、n回目は(1−p)p/(1−p)となり、無限回繰り返しても、p/(1−p)となる。被処理ガスに含まれる水蒸気の量、吸着材の水の回収率などにより装置設計することにより、有機溶剤のみを回収することができるとともに、排水処理を必要とする水は発生しない。
【0031】
分離器7dは、有機溶剤と水の比重差を利用したものや、膜を利用したものでもが利用でき、その手法は限定されない。分離された水相7fを気化させる場所へ移動させるリターン手段を設ける。
【0032】
分離した水相7fを送風ライン4に戻すリターン手段は、ポンプ8bあるいは毛細管現象を利用するなど、その手法は限定されない。また、水相7fを気化させる手段は、水相7fを被処理ガスのブロア4bのインペラー6bに滴下し分散・気化させる方法、水を被処理ガスの送風ライン4中に置いた膜などに含ませ被処理ガスによって気化させる方法、霧状に送風ライン4中に噴霧するなどが挙げられ、それらに限定されない。
【実施例1】
【0033】
以下、添付図面に基づき、本発明である無排水化吸着回収装置について詳細に説明する。図1は、本発明である無排水化吸着回収装置の一例である実施例1のフロー図である。
【0034】
無排水化吸着回収装置1は、従来の被処理ガス中の有機溶剤の吸着、吸着した有機溶剤の脱離を交互に連続して行う吸着材2a、3aを備えた複数の吸着塔2、3と、有機溶剤を含む被処理ガスをブロア4bなどの送風機により吸着塔2、3に送る送風ライン4と、キャリアガス5aを吸着塔2、3に送風するとともに、有機溶剤を吸着材2a、3aから脱離する脱離手段5と、脱離後の有機溶剤を濃縮、分離回収する回収ライン7とからなる吸着回収装置において、有機溶剤7eと共に回収、分離された水相7fを前記送風ライン4に気化するよう戻すリターン手段8を設けてなる。
【0035】
吸着塔2、3、送風ライン4、脱離手段5、回収ライン7は、上述の従来の吸着回収装置11と同様であり、その説明はここでは省略する。本発明は、有機溶剤7eと共に回収、分離された水相7fを気化させながら前記送風ライン4に戻すリターン手段8を設けたことを特徴とする。
【0036】
リターン手段8は、回収された水相7fと送風ライン4の送り配管4aとを連結するリターン配管8aと、前記水相7fをリターン配管8aを通し送り配管4aに移送するポンプ8bとからなり、水相7fを送風ライン4に戻す。水相7fを被処理ガスに戻すことにより、ブロア4bにより送風された被処理ガスによって、水相7fは気化し、吸着塔2、3に送られる。
【0037】
リターン手段8は、回収ライン7での分離回収が、水相7fと有機溶剤7eを比重差を用いて分離する分離器7dである場合に特に有効である。また、水相7fと、有機溶剤7eとは、有機溶剤の種類、即ち比重により、相が上下逆転するが、リターン配管8aの分離器7d側末端を、下相に位置する水相7fに挿入すれば同様に、水相7fのみを送風ライン4に戻すことができる。
【0038】
ポンプ8bは、水相7fの高さを感知するレベル計により駆動をオンオフ制御してもよし、水相7fの蓄積量は、稼働する無水化吸着回収装置に異なるため、分離器7dの水相7fの蓄積データーをもとに、一定時間、一定量を移送するようタイマー制御などして、駆動させてもよい。これにより水相7fのみを送風ライン4に移送することができる。
【0039】
このようにして、送風ライン4に戻された水相7fは、気化しながら、吸着塔2、3に送られ、それに混入する有機溶剤は、吸着塔2、3の吸着材2a、3aに吸着除去され、浄化ガスとともに、大気中に放出される。従って、水相7fに僅かに混在する有機溶剤を除去するため水相7fを別装置で排水処理する必要がなくなり、吸着回収装置の無排水化が可能となる。
【実施例2】
【0040】
図2は、本発明である無排水化吸着回収装置の一例である実施例2のフロー図である。図3は、実施例2のリターン手段の水相が多量に存在するときの断面模式図である。図4は、実施例2のリターン手段の水相が減少したときの断面模式図である。
【0041】
無排水化吸着回収装置1aは、実施例1の無排水化吸着回収装置1とリターン手段のみが異なる。即ち、実施例1のリターン手段8をリターン手段9に変更したものである。
【0042】
リターン手段9は、図3、図4に示すように、回収され、分離器7dで分離された水相7fに浮かべたフロート9b、分離器7dと送風ライン4のインペラー6bによるブロア4bとを連結するリターン配管9a、及びリターン配管9aに挿入れ、一端がフロート9bに固定され、他端が送風ライン4内に位置する繊維材9eとからなる。
【0043】
フロート9bは、水相7fと同等、或いはやや軽い比重に調整し、水相に浮かべる。繊維材9eは、フロート9b上部内部に挿入され、固定する。フロート9bには、繊維材9eに、水相7fが触れるように、横方向に貫通する孔9cを設ける。
【0044】
繊維材9eの素材は特に制限されるものではないが、有機溶剤が水相7f中に僅かに混在することから、有機溶剤耐性がある素材が好ましい。なお、送風ライン4が被処理ガスの流れで陰圧になる場合は、リターン配管9a中にシール9dをして分離器7dから送風ライン4への有機溶剤7eの引き込みを防ぐことが望ましい。
【0045】
これにより、図3に示すように、分離器7dに水相7fが多量にある場合は、繊維材9eが送風ライン4に水相7fを毛細管現象で移送する。
【0046】
送風ライン4中の繊維材9eは、常に風に当たり、繊維材9eに含まれる水相7fは気化し、常に毛細管現象により、分離器7d中の水相7fを送風ライン4に移送する。
【0047】
他方、図4に示すように、分離器7dの水相7fが減少した場合は、フロート9bは、有機溶剤7eより、比重が軽いため、有機溶剤7e相には殆ど浸漬されることがなく、水相7fから離れ、水相7fすら孔9cに侵入することがない。水相7も繊維材9eに触れなく、自動的に水相7fの送風ライン4への移送が中断される。従って、繊維材9eは、水相7fが減少しても有機溶剤7eを送風ライン4に移送することがない。
【0048】
また、水相7fと有機溶剤7eの上下が逆の場合、フロート9bは、水相7fと有機溶剤7eとの界面に滞留するよう設計すれば、有機溶剤7eの下層に位置する水相7fのみを移送することができる。ただし、分離器7d内の繊維材9eは、有機溶剤に触れないよう被覆する必要がある。
【0049】
これにより、水相7fのみを、送風ライン4中の被処理ガスに戻すことができ、さらにインペラー6bにより、効率的に水相7fを気化させることができる。特に、水相7fの蓄積速度が遅い場合有効な手段である。
【0050】
図5は、実施例2のリターン手段の他の断面模式図である。図5に示すよう、実施例2において、リターン手段9をリターン手段9fに置換したものである。なお、当該他のリターン手段9fは、水相7fの比重が、有機溶剤7eより重い場合に適用される。
【0051】
リターン手段9fは、分離器7dと送風ライン4のインペラー6bによるブロア4bとを連結するリターン配管9aと、リターン配管9a中に挿入され、一端が前記水相7fに接し、他端が送風ライン4内に位置する繊維材9eとからなり、毛細管現象を利用した水相7fの移送方法を採用した例である。
【0052】
なお、送風ライン4が被処理ガスの流れで陰圧になる場合は、リターン配管9a中にシール9dをして分離器7dから送風ライン4への有機溶剤7eの引き込みを防ぐことが望ましい。
【0053】
図5に示すように、有機溶剤7eが、水相7fより軽く、水相7fの上層に位置した場合であっても、分離器7dにその底部を残し仕切り7hを設け、有機溶剤7eを水相7fから隔離することができる。これにより、分離、隔離した水相7fのみを送風ライン4に送ることができる。
【0054】
これにより、水相7fは、送風ライン4中の先端部で、送風ライン4中を流れる被処理ガスの風により、気化する。その位置の繊維材9eは、有機溶剤7eに触れることなく、水相7fのみを送風ライン4中の繊維材9eの先端部に分離器7dから移動することができる。
【実施例3】
【0055】
図6は、本発明である無排水化吸着回収装置の一例である実施例3のフロー図である。無排水化吸着回収装置1bは、実施例1の無排水化吸着回収装置1において、キャリアガス源としてボイラ5d、キャリアガスとして水蒸気5cを採用し、さらに回収ライン7で回収された水相7fの一部を加熱し、水蒸気5cとして、前記脱離手段のキャリアガスとして使用する再利用ライン10を追加した実施形態である。
【0056】
再利用ライン10は、回収ライン7で回収、分離された水相7fとボイラ5dにボイラ水を送る給水管5eを連結する配管10aと、水相7fを前記配管10aを通し前記給水管5eに移送するポンプ10bとからなる。ポンプ10bは、実施例1で説明したポンプ8bと同様の駆動制御をすればよい。
【0057】
これにより、キャリアガスとして水蒸気5cを採用したとしても、有機溶剤を含む排水を別装置で排水処理する必要のない無排水化吸着回収装置1bを提供することがでる。特に、水相7fが大量に回収される場合に有効である。
【符号の説明】
【0058】
1 無排水化吸着回収装置
1a 無排水化吸着回収装置
1b 無排水化吸着回収装置
2 吸着塔
2a 吸着材
3 吸着塔
3a 吸着材
4 送風ライン
4a 送り配管
4b ブロア
4c 切換弁
5 脱離手段
5a キャリアガス
5b キャリアガス源
5c 水蒸気
5d ボイラ
5e 給水管
7 回収ライン
7a 切換弁
7b 真空ポンプ
7c 凝縮器
7d 分離器
7e 有機溶剤
7f 水相
7g 循環配管
7h 仕切り
8 リターン手段
8a リターン配管
8b ポンプ
9 リターン手段
9a リターン配管
9b フロート
9c 孔
9d シール
9e 繊維材
10 再利用ライン
10a 配管
10b ポンプ
11 吸着回収装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理ガス中の有機溶剤の吸着、吸着した有機溶剤の脱離を交互に連続して行う吸着材を備えた複数の吸着塔と、有機溶剤を含む被処理ガスを送風機により吸着塔に送る送風ラインと、キャリアガスを吸着塔に送風するとともに有機溶剤を吸着材から脱離する脱離手段と、脱離後の有機溶剤を濃縮、分離回収する回収ラインとからなる吸着回収装置において、
さらに、前記回収ラインと前記送風ラインの送り配管とを連結するリターン配管と、前記リターン配管中に挿入され一端が前記水相に接し他端が前記送風ライン内に位置する繊維材とからなるリターン手段を備え、
有機溶剤と共に回収、分離された水相を前記繊維材の毛細管現象を介して前記送風ラインに移送し、前記の送風ライン中の風で気化することを特徴とする無排水化吸着回収装置。
【請求項2】
前記分離回収が、水相と有機溶剤の比重差を用いて分離する分離器であることを特徴とする請求項1に記載の無排水化吸着回収装置。
【請求項3】
前記水相の比重が、有機溶剤の比重より軽い場合において、前記繊維材の前記分離器中の先端部にフロートを固定したことを特徴とする請求項2に記載の無排水化吸着回収装置。
【請求項4】
前記水相の比重が、有機溶剤の比重より重い場合において、前記分離器に底部を残し仕切りを設け、有機溶媒から隔離した水相を前記送風ラインに送ることを特徴とする請求項2に記載の無排水化吸着回収装置。
【請求項5】
前記回収ラインで回収された水相の一部を、加熱し、水蒸気として、前記脱離手段のキャリアガスとして使用することを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の無排水化吸着回収装置。
【請求項6】
有機溶剤を吸着、脱離、凝集回収する吸着回収装置において、有機溶剤と共に回収、分離された水相を、被処理ガスを吸着塔に送る送風ラインに繊維材の毛細管現象を介して移送させ、前記の送風ラインの風で気化させることを特徴とする吸着回収装置の無排水化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−11390(P2012−11390A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228039(P2011−228039)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【分割の表示】特願2008−91993(P2008−91993)の分割
【原出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】