説明

無機変性されたポリエステル結合剤調剤、その製造法および該調剤の使用

本発明は、少なくとも1つの特殊なオリゴマーのシロキサン成分および少なくとも1つのポリマー成分を含有する調剤、その製造法ならびに該調剤の調製物中、殊に金属被覆調製物中での使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの特殊なオリゴマーのシロキサン成分および少なくとも1つのポリマー成分を含有する調剤、その製造法ならびに該調剤の調製物中、殊に金属被覆調製物中での使用に関する。
【0002】
ベルト被覆は、鋼またはアルミニウムからなる冷間圧延され、多くの場合に亜鉛メッキされたベルトの連続的な被覆である。一定の再生可能な条件下でラッカー塗布された金属ベルトが生じ、この金属ベルトは、当該産業界において既に被覆された表面を有する材料として使用されることができる。この金属ベルトは、例えば次の業界内で使用される:
土木建築(ファッサード用部材、防音壁、ブラインド、屋根瓦)、
運輸(移動用住宅、コンテナ、街路名表示板、トラックの車体)、
家庭用器具(洗濯機、冷蔵庫、レンジ)、
金属包装品(ノズル、チューブ)。
【0003】
この種の被覆にとって重要な性質は、耐候性、耐加水分解性、耐化学薬品性および耐引掻性、高い光沢、耐蝕性、硬さおよび可撓性、ならびに高い基質付着力である。最後の2つの性質は、金属被覆にとって必ず備わっている程に重要である。それというのも、金属支持体は、被覆後に多数の構造部材にとって必要不可欠であるような1つ以上の変形工程に晒されるからである。
【0004】
金属被覆工業においては、好ましくは、ポリエステルを基礎とする有機結合剤が使用されており(ECCA Statistics 2004)、この有機結合剤は、完全にアルキル化されたか、部分的にアルキル化されたか、またはアルキル化されていないメラミン化合物およびその誘導体、ベンゾグアナミンまたは尿素により架橋されており、僅かに有利には、封鎖されたポリイソシアネートによって架橋されている。この一般によく知られた被覆は、なかんずく良好な可撓性を示す。この被覆は、なかんずく基質付着力、耐化学薬品性および耐引掻性の点で欠点を有している。
【0005】
更に、加水分解可能なシラン基を水または脱水剤と反応させることによって製造された、シロキサンを基礎とする純粋な無機被覆系が高い耐引掻性および耐化学薬品性を示すことは、公知である。
【0006】
このような純粋な無機被覆を形成させる一般的な公知方法は、C.J. BrinkerおよびG.W. SchererによってSol-Gel-Science:The Physics and Chemistry of Sol-Gel Processing, Academic Press, New York (1990)に詳細に記載されているようなゾルゲル法である。
【0007】
このような主に無機のゾルゲル被覆は、多くの金属被覆に対して脆すぎ、薄板の立体変形の際に応力亀裂を生じる傾向にある。それに関連した美的感覚の欠如と共に、この種の亀裂によって湿分は、被覆の下方へ侵入する可能性があり、さらにこの湿分は、薄板上で腐蝕過程を進行させる。
【0008】
無機結合剤と有機結合剤との組合せ、所謂ハイブリッド塗料は、公知技術水準である。例えば、欧州特許第1006131号明細書には、例えば脂肪族ポリイソシアネートおよびアミノシランのアダクトを基礎とする自動車分野で要求の多い被覆のための調剤が記載されている。
【0009】
欧州特許第1310534号明細書には、モノマーシランを使用しての調剤が記載されており、このモノマーシランは、添加剤としても燐酸のエポキシドアダクトと一緒にラッカー調製物中に添加される。
【0010】
本発明の課題は、相応する調製物中、殊に金属被覆中での使用の際に改善された基質付着力を有しかつ同時に可撓性である調剤を提供することであった。
【0011】
ところで、意外なことに、本発明による調剤は、高い硬さと基質付着力と可撓性との改善されたバランスを提供し、可撓性に関しては、むしろ純粋な有機ポリエステル金属被覆よりも良好であることが見出された。
【0012】
それに応じて、本発明の対象は、少なくとも1つのオリゴマーのシロキサン成分および少なくとも1つのポリマー成分を含む調剤であり、この調剤は、オリゴマーのシロキサン成分が硼酸の存在下で、一般式I
1−SiR'm(OR)3-m (I)
[式中、R1は、
【化1】

または
【化2】

で示される基を表わし、基R、R'およびR''は、同一かまたは異なり、それぞれ水素(H)または1〜6個のC原子を有する直鎖状、分枝鎖状または環式の場合によっては置換されたアルキル基、特にH、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチルを表わし、基AおよびA'は、同一かまたは異なり、それぞれ1〜10個のC原子を有する2価のアルキル基を表わし、特に−(CH22−、−(CH22−、−(CH23−、−(CH2)(CH)(CH3)(CH2)−は、A'を表わし、ならびにー(CH2)−は、Aを表わし、mは、0または1に等しい]で示される少なくとも1つのエポキシ官能性シランを制御して加水分解しかつ縮合させることによって得られることによって特徴付けられる。
【0013】
通常、ゾルゲル系の製造の際には、水は、多くの場合に過剰量で使用される。この場合、目的は、できるだけ完全な加水分解を達成させることである。多数のシランは、前記条件下では残念ながら完全には加水分解しない。例えば、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランの加水分解の場合には、酸触媒、例えばHClまたは酢酸の高い濃度でも数時間後もおよび加水分解後も高められた温度で約90%のモノマー含量が残留する(単位面積当たりの百分率GC WLD)。
【0014】
このために、同時係属出願においては、エポキシ官能性シラン、殊に3−グリシジルオキシプロピルアルコキシシランそれ自体または相応する3−グリシジルオキシプロピルアルコキシシランを含有する、オルガノアルコキシシランを、化学量論的不足量の水で確実にできるだけ完全に硼酸の使用下で加水分解し、少なくとも割り当て分を縮合することを可能にする新規方法が提供された。
【0015】
使用されるシロキサン−オリゴマーは、被覆の熱的硬化の際に例えば有機ポリエステル−ポリオールと共架橋し、さらなる官能基によってよりいっそう良好な基質の付着に貢献することができる。シロキサン−オリゴマーは、硼酸の存在下で、一般式I
1−SiR'm(OR)3-m (I)
[式中、R1は、
【化3】

または
【化4】

で示される基を表わし、基R、R'およびR''は、同一かまたは異なり、それぞれ水素(H)または1〜6個のC原子を有する直鎖状、分枝鎖状または環式の場合によっては置換されたアルキル基、特にH、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチルを表わし、基AおよびA'は、同一かまたは異なり、それぞれ1〜10個のC原子を有する2価のアルキル基を表わし、特に−(CH22−、−(CH22−、−(CH23−、−(CH2)(CH)(CH3)(CH2)−は、A'を表わし、ならびに−(CH2)−は、Aを表わし、mは、0または1に等しい]で示される少なくとも1つのエポキシ官能性シランを制御して加水分解しかつ縮合させることによって製造される。
【0016】
加水分解および縮合の場合、付加的に、一般式II
2−SiR'n(OR)3-n (II)
[式中、R2は、例えばN−、O−、S−、ハロゲンを有する基、例えばフルオロアルキル、アミノアルキル、メルカプトアルキル、メタクリルアルキルまたはOR、即ちOHまたはアルコキシ、殊にメトキシまたはエトキシで置換された、1〜20個のC原子を有する直鎖状、分枝鎖状または環式の、場合によっては置換されたアルキル基を表わし、R'がメチルを表わし、基Rが無関係に水素または1〜6個のC原子を有する直鎖状、分枝鎖状または環式アルキル基を表わし、およびnが0または1に等しい]で示される少なくとも1つのさらなる有機官能性シランが存在していてよい。式IIによれば、本発明による方法の場合、好ましくは、殊に一連のメトキシ、エトキシ、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、n−オクチル、イソオクチル、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルからの官能基R2、但し、若干数の例だけ挙げた、を有するメトキシシランまたはエトキシシラン、例えば、しかし、これに限るものではないが、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランを使用することができる。
【0017】
シロキサン成分を製造する場合、使用されるシランのアルコキシ官能基1モル当たり水0.001〜5モル以下が使用され、硼酸と共に加水分解反応触媒および縮合成分としてさらなる加水分解反応触媒または縮合触媒は使用されず、反応の際に形成される縮合物は、Si−O−B結合および/またはSi−O−Si結合に基づくものである。
【0018】
好ましくは、本発明による反応の場合には、式Iおよび/またはIIに記載の使用されたアルコキシ官能基1モル当たり0.05〜5モル、特に有利に0.1〜2モル、殊に有利に0.15〜1モル、殊に0.15モルと1モルとの間の全ての数字的中間値、例えば、しかし、これに限るものではないが、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9モルの水が使用される。
【0019】
更に、好ましくは本発明による方法の場合、使用されたシラン1モル当たり、0.001〜1モルの硼素、特に有利に0.01〜0.5モル、殊に0.07〜0.76モルの硼素が使用され、この硼素は、好ましくは硼酸[H3BO3またはB(OH)3]の形で使用される。
【0020】
また、本発明による方法の場合、反応は、好ましくは0〜200℃の範囲内の温度、有利に40〜150℃、特に有利に50〜100℃、殊に有利に60〜80℃で実施される。
【0021】
即ち、本発明による反応は、殊に良好な混合下で0.1〜100時間、有利に0.5〜20時間、特に有利に1〜10時間、殊に有利に2〜6時間で実施される。
【0022】
同様に、記載された方法の場合、好ましくは、こうして得られた生成物混合物から、その中に存在するアルコールおよび/または硼酸エステルを常法の蒸留で減圧下で少なくとも割り当て分だけ除去することができる。しかし、このような成分は、短路蒸発器または薄膜蒸発器を用いて生成物から除去することもできる。
【0023】
更に、こうして得られた生成物は、必要な場合には、濾過または遠心分離することができ、浮遊粒子が分離される。そのために、例えばフィルターまたは遠心分離器が使用されてよい。
【0024】
殊に好ましいのは、一般式Iのグリシジルプロピルアルコキシシラン、グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランまたはグリシジルオキシプロピルトリエトキシシランである。
【0025】
例えば、好ましくは、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(GLYMO)の実際に完全な加水分解を、使用されたアルコキシ官能基1モル当たり0.05〜5モル、有利に0.1〜2モル、殊に0.15〜1モルの水の水量で硼酸の使用下または存在下で実施する。殊に、7時間だけで硼酸触媒反応により、完全なGLYMOがオリゴマーの生成物に変換されるように良好に変換が行われる。実際に完全な加水分解は、これに関連して、元来使用されたモノマーのシラン20質量%未満または単位面積当たり20%未満(GC−WLb%)が加水分解の実施後に反応空間内に加水分解されずに残留することを意味する。こうして得られたオリゴマーは、少なくとも3ヶ月間貯蔵安定性であり、例えば好ましくは、ポリエステルポリオールを用いての結合剤の製造に使用されることができる。
【0026】
反応の制御(反応混合物中のモノマーシランの濃度の測定)は、有利に標準ガスクロマトグラフィー(HP 5890 Series II, 熱伝導率検出器)により行なわれる。温度測定は、通常、熱電素子により行なうことができる。圧力測定は、例えばピエゾ圧力ゲージ(Piezodruckaufnehmer)(例えば、Vacubrand DVR 2)により行なわれる。生成物中の残留モノマー含量は、付加的に29Si NMR分光分析法により検査され、好ましくは、5〜17モル%の範囲内にある。生成物の架橋度は、M,D,T構造単位を測定することによって、29Si NMR分光分析法により算出される。本発明によるシラン縮合物において、M構造単位の含量は、有利に14〜35モル%の範囲内にあり、D構造の含量は、36〜42モル%の範囲内にあり、およびT構造の含量は、15〜34%の範囲内にある。エポキシ基のハイドロメタノリシスは、13NMR分光分析法により測定されることができる。本発明による生成物組成物は、有利に元来使用されたエポキシ基含量に対して開環されたエポキシ3〜7モル%の含量だけを含有する。
【0027】
ポリマー成分は、殊にヒドロキシル基含有ポリマー、特に有利にポリエステル、ポリカーボネートポリオールまたはポリエーテルポリオールを含む群からのポリマーである。殊に、好ましいのは、ヒドロキシル基含有ポリエステルである。
【0028】
本発明により好ましいポリエステルは、公知方法(Sita Technologyに公開された、Dr. P. Oldring, Resin for Surface Coatings, Volume III, 203 Gardiness House, Bromhill Road, London SW 184jq, England 1987)により縮合によって製造される。
【0029】
特に、ポリエステルは、0〜10mg KOH/g、特に0.1〜5mg KOH/g、特に有利に0.1〜3mg KOH/gの酸価、3〜200mg KOH/g、特に10〜80mg KOH/g、特に有利に15〜40mg KOH/gのヒドロキシル価、−50℃〜110℃、特に−20℃〜+70℃、特に有利に−10℃〜+60℃のガラス転移温度(Tg)、直鎖状または分枝鎖状の構造、特に直鎖状または少ない分枝鎖状、特に有利に直鎖状の構造および800g/mol〜25000g/mol、有利に1300g/mol〜11000g/mol、特に有利に2000g/mol〜7500g/molの分子量(Mn)を有する。
【0030】
酸価は、DIN EN ISO 2114により規定されている。
【0031】
酸価(SZ)は、1グラムの物質中に含有されている酸を中和するのに必要とされる、mgでの水酸化カリウムの量である。検査すべき試料は、ジクロロメタン中に溶解され、フェノールフタレインに対してメタノール系苛性カリ液で滴定される。
【0032】
ヒドロキシル数は、DIN 53240−2により規定されている。
【0033】
前記方法の場合、試料は、無水酢酸と触媒としての4−ジメチルアミノピリジンの存在下で反応され、この場合ヒドロキシル基は、アセチル化される。この場合、ヒドロキシル1個当たり酢酸分子1個を生成し、一方で、引続き過剰の無水酢酸の加水分解は、酢酸分子2個を供給する。酢酸の消費量は、滴定により主要値と同時に実施すべき空試験値との差から算出される。
【0034】
ガラス転移温度Tgは、DIN EN ISO 11357−1によりDSC(Differential Scanning Calorimetry示差走査熱分析)を用いて測定される。記載された値は、第2の加熱サイクルから確認される。
【0035】
分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定される。試料は、溶離液としてのテトラヒドロフラン中でDIN 55672−1により特性決定される。
n(UV)=数平均分子量(GPC、UV検出)、g/molでの記載。
w(UV)=質量平均分子量(GPC、UV検出)、g/molでの記載。
【0036】
使用されるポリエステル成分は、有利には殊にジカルボン酸混合物および/または(ポリ)カルボン酸混合物とジアルコール混合物または(ポリ)アルコール混合物とからなるコポリエステルを含む。
【0037】
調剤中のポリエステル成分の含量は、調剤に対して20〜95質量%、殊に55〜75質量%である。
【0038】
詳細には、通常のカルボン酸およびそのエステル化可能な誘導体、即ち例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、琥珀酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、メチルテトラフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、ピロメリット酸、二量体脂肪酸、および/またはトリメリット酸、これらの酸無水物および/または低級アルキルエステル、例えばメチルエステル、ならびにこれらの混合物を含むコポリエステルの酸成分を使用することができる。好ましくは、イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、トリメリット酸、これらの酸無水物および/またはエステル可能な誘導体が使用される。
【0039】
コポリエステルのアルコール成分として、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオールおよび/または1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、2,2’−ブチルエチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、1,6−ヘキサンジオール、2,2’−ジメチル−1,3−プロパンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,4−ベンジルジメタノールおよび1,4−ベンジルジエタノール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ジシドール(Dicidol)ならびにこれらの混合物が使用される。好ましくは、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2’−ジメチル−1,3−プロパンジオール、エチレングリコールおよびトリメチロールプロパンが使用される。
【0040】
同様に、本発明の対象は、本発明による調剤の製造法である。最も簡単な実施態様において、本発明による製造法は、少なくとも1つのオリゴマーのシロキサン成分と少なくとも1つのポリマー成分、有利にポリエステル成分との混合を含む。この場合、前記成分の混合は、0〜150℃の温度、特に20〜100℃の温度で行なうことができる。もう1つの実施態様において、前記混合は、溶剤の存在下で行なうことができる。この場合、溶剤は、ブチルグリコール、ブチルグリコールアセテート、メトキシプロパノール、メトキシプロピルアセテート、メチルジプロピレングリコール、二塩基性エステル、キシレン、ソルベントナフサ100−200を含む液状の芳香族炭化水素、アルコール、エステル、グリコール、グリコールエーテルおよび/またはグリコールエステルの群から選択されてよい。
【0041】
この場合、溶剤は、別々に個々の成分として添加されるか、または本発明による成分、殊にポリエステル成分との組合せで添加される。最も簡単な場合には、ポリエステル成分は、溶剤中に溶解されて存在し、上記のオリゴマーのシロキサン成分と混合される。
【0042】
シロキサン成分とポリエステル成分とは、通常、0.3〜10時間に亘って混合される。
【0043】
こうして得られたシロキサン−オリゴマー−ポリエステル混合物は、少なくとも3ヶ月間貯蔵安定性であることができる。
【0044】
同様に、本発明の対象は、調製物中の結合剤としての本発明による調剤の使用である。特に、調製物は、例えば缶コーティングおよびコイルコーティングの際の金属被覆のための調製物である。
【0045】
この調製物は、本発明による調剤と共に、殊に選択的に別の活性水素原子を含有する官能基も有する他の(潜伏性)ヒドロキシル官能性結合剤、例えばポリエステル、ポリエーテル、ポリアクリレート、エポキシ樹脂および/または架橋剤、例えば封鎖された(ポリ)イソシアネート、アミノプラスト樹脂、エポキシ樹脂および/または水および/または有機溶剤および/または架橋触媒、顔料、充填剤、艶消剤、構造化剤、分散助剤、流展助剤、光保護剤、抑制剤、蛍光増白剤(Farbaufhellern)、光増感剤、チキソトロピー剤、皮膜防止剤(Hautverhinderungsmitteln)、消泡剤、静電防止剤、ファットニング剤(Eindickungsmitteln)、熱可塑性添加剤、染料、防火剤(Brandschutzausruestungen)、内部分離剤、充填剤および/または発泡剤から選択された助剤および添加剤を含有していてもよい。
【0046】
本発明による調剤を含有する調製物、殊に金属被覆物は、同様に本発明の対象である。
【0047】
本発明による調剤は、記載された調製物中に通常の全ての助剤および添加剤と組み合わせることができる。前記調剤は、0〜70質量%が調製物中に含有されていてよい。
【0048】
記載された調製物中で、珪素含量は、調製物に対して0.1〜10質量%である。
【0049】
また、当業者であれば、さらに実施することなく、上記の記載を最も広い範囲で利用しうることから出発する。それ故に、好ましい実施態様および実施例は、単に記載された開示内容として解釈すべきであり、決して何らかの形で開示内容を制限して解釈すべきではない。次に、本発明は、実施例につき詳説される。本発明の選択可能な実施態様は、同様にして得られる。
【実施例】
【0050】
実施例1:無機シロキサンオリゴマーの製造:
Dynasylan GLYMO 10g(Degussa GmbH社のグリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン)に水1.14g(1.5モル/Si モル)および硼酸0.2g(Aldrich)を添加し、70℃で2時間攪拌する。引続き、生じた加水分解アルコールを1ミリバールおよび70℃で真空中で除去する。無色のオリゴマーが得られ、これは、少なくとも3ヶ月間貯蔵安定性である。
【0051】
実施例2:ヒドロキシル官能性ポリエステルの製造
イソフタル酸(400g、2.4モル)、テレフタル酸(328g、2.0モル)、1,2−ジヒドロキシエタン(105g、1.7モル)、2,2’−ジメチル−1,3−ジヒドロキシプロパン(177g、1.7モル)および1,6−ヘキサンジオール(172g、1.5モル)を、蒸留取付け物を備えた、2 lのフラスコ中で窒素流で溶融する。160℃の温度の達成時に水の留去を開始する。1時間で温度を連続的に240℃に上昇させる。この温度でさらに数時間後、水の分離は、緩徐になる。チタンテトラブトキシド50mgを攪拌混入し、真空中でさらに作業し、反応の経過中に依然として留出物が生じるように適合させる。望ましいヒドロキシル価範囲および酸価範囲の達成後に停止させる。ヒドロキシル価および酸価は、KOH 20mg/gまたはKOH 1.1mg/gに達する。引続き、ポリエステルをソルベントナフサ150(DHC Solevent Chemie GmbH)/ブチルグリコール(3:1)中で50%溶解させる。
【0052】
分析データ
n=5800(GPC)。
g=33℃(DSC)。
【0053】
実施例3:ヒドロキシル官能性ポリエステルの製造
イソフタル酸(400g、2.4モル)、テレフタル酸(328g、2.0モル)、1,2−ジヒドロキシエタン(160g、2.4モル)および2,2’−ジメチル−1,3−ジヒドロキシプロパン(252g、2.4モル)から、実施例2と同様にKOH 20mg/gのヒドロキシル価およびKOH 1mg/gの酸価を有するポリエステルを得る。引続き、このポリエステルをソルベントナフサ150(DHC Solevent Chemie GmbH)/メトキシプロピルアセテート/メトキシプロパノール(2:5:3)中で50%溶解させる。
【0054】
分析データ
n=5100(GPC)。
g=54℃(DSC)。
【0055】
実施例4:本発明による調剤の製造
実施例1からのシロキサンオリゴマー51gを実施例2からのポリエステル溶液300g中に攪拌混入する。得られた結合剤溶液は、澄明であり、少なくとも3ヶ月間貯蔵安定性である。
【0056】
実施例5:本発明による調剤の製造
実施例1からのシロキサンオリゴマー42gを実施例3からのポリエステル溶液300g中に攪拌混入する。得られた結合剤溶液は、澄明であり、少なくとも3ヶ月間貯蔵安定性である。
【0057】
【表1】

1 200m2/gの比表面積を有する熱分解法珪酸、例えばDegussa GmbH社の製品、
2 メラミン樹脂(ヘキサメトキシメチルメラミン(HMMM));Cyrec Industries社の製品、
3 ドデシルベンジルスルホン酸/イソピロパノール(封鎖された酸触媒)、例えばKing Industries Inc.社の製品、
4 スルホン酸を基礎とする共有結合を有する封鎖された触媒、例えばDegussa GmbH社の製品、
5 液状の芳香族化合物混合物ナフタリン不含、例えばExxonMobil Chemical o.e.社の製品、
6 琥珀酸、ペンタン二酸およびアジピン酸のジメチルエステルを基礎とする溶剤混合物、例えばInvista社の製品。
【0058】
被覆の評価
塗料L1、V1、L2およびV2を約5〜7g/m2(乾燥皮膜質量)で白色薄板上に塗布し、205℃(PMT=Peak Metal Temperatureピーク金属温度)で5分間(炉滞留時間)焼き付ける。架橋は、メチルエチルケトン(MEK)を用いて完全に試験され、専門家にも"MEK二段行程(Doppelhuebe)"の概念でよく知られている(ECCA Test Method T11)。可撓性をDIN EN 13523−7:2001により測定する(T曲げ試験)。鉛筆硬さをDIN EN 13523−4:2001により測定する。
【0059】
さらなる試験として、被覆された薄板をポンチで変形し、4つの縁部を有する缶に変える。この缶を水中で129℃で30分間滅菌処理する。滅菌処理後、被覆を付着力および表面性状に関連して4つの異なる角部で評価する。
【0060】
【表2】

* R:亀裂形成、H:付着力の損失;0=亀裂形成/付着力の損失なし、4=多くの亀裂形成/付着力の損失、
** 1=極めて良好な付着力、4=極めて劣悪な付着力、0=完全に付着力なし。
【0061】
塗料L3、V3、L4およびV4を約5μm(乾燥層厚)で前処理されていない亜鉛メッキ処理した鋼(熱浸漬亜鉛メッキした)上に塗布し、224℃(PMT=Peak Metal Temperatureピーク金属温度)で45秒間(炉滞留時間)焼き付けする。引続き、上塗り塗料(調製、第3表参照)を20μm(乾燥層厚)で塗布し、232℃(PMT)で46秒間(炉滞留時間)焼き付けする。架橋は、メチルエチルケトン(MEK)を用いて完全に試験され、専門家にも"MEK二段行程(Doppelhuebe)"の概念でよく知られている(ECCA Test Method T11)。可撓性をDIN EN 13523−7:2001により測定する(T曲げ試験)。鉛筆硬さをDIN EN 13523−4:2001により測定する。被覆の耐蝕性をDIN EN ISO4628 1−10により測定する。
【0062】
【表3】

1 直鎖状または分枝鎖状のポリエステル結合剤またはコポリエステル結合剤の商業的に入手可能な溶液、例えばDegussa GmbH社の製品、これは、この種の上塗り塗料に適した別の結合剤であってもよい。
2 白色顔料、
3 メラミン樹脂(ヘキサメトキシメチルメラミン(HMMM));Cyrec Industries社の製品、
4 p−トルエンスルホン酸/イソプロパノール、例えばKing Industries Inc.社またはWorlee Chemie GmbH社の製品、
5 艶消剤、例えばDegussa GmbH社の製品、
6 琥珀酸、ペンタン二酸およびアジピン酸のジメチルエステルを基礎とする溶剤混合物、例えばInvista社の製品、
7 流展助剤、例えばBYK Chemie社の製品、
8 液状の芳香族化合物混合物ナフタリン不含、例えばExxonMobil Chemical o.e.社の製品。
【0063】
【表4】

* R:亀裂形成、H:付着力の損失;0=亀裂形成/付着力の損失なし、4=多くの亀裂形成/付着力の損失。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのオリゴマーのシロキサン成分および少なくとも1つのポリマー成分を少なくとも含む調剤において、
オリゴマーのシロキサン成分が硼酸の存在下で、一般式I
1−SiR'm(OR)3-m (I)
[式中、R1は、
【化1】

または
【化2】

で示される基を表わし、基R、R'およびR''は、同一かまたは異なり、それぞれ水素(H)または1〜6個のC原子を有する直鎖状、分枝鎖状または環式の場合によっては置換されたアルキル基を表わし、基AおよびA'は、同一かまたは異なり、それぞれ1〜10個のC原子を有する2価のアルキル基を表わし、mは、0または1に等しい]で示される少なくとも1つのエポキシ官能性シランを制御して加水分解しかつ縮合させることによって得られることを特徴とする、少なくとも1つのオリゴマーのシロキサン成分および少なくとも1つのポリマー成分を少なくとも含む調剤。
【請求項2】
加水分解および縮合の場合、付加的に、一般式II
2−SiR'n(OR)3-n (II)
[式中、R2は、1〜20個のC原子を有する直鎖状、分枝鎖状または環式の、場合によっては置換されたアルキル基を表わし、R'は、メチルを表わし、基Rは、無関係に水素または1〜6個のC原子を有する直鎖状、分枝鎖状または環式アルキル基を表わし、およびnは、0または1に等しい]で示される少なくとも1つのさらなる有機官能性シランが存在する、請求項1記載の調剤。
【請求項3】
使用されるシランのアルコキシ官能基1モル当たり水0.001〜5モル以下が使用され、硼酸と共に加水分解反応触媒および縮合成分としてさらなる加水分解反応触媒または縮合触媒は使用されず、反応の際に形成される縮合物は、Si−O−B結合および/またはSi−O−Si結合に基づくものである、請求項1または2記載の調剤。
【請求項4】
反応の際に使用されるシランのアルコキシ官能基1モル当たり水0.1〜2モルが使用されている、請求項1から3までのいずれか1項に記載の調剤。
【請求項5】
使用されるシラン1モル当たり硼素0.001〜1モルが使用されている、請求項1から4までのいずれか1項に記載の調剤。
【請求項6】
反応が0〜200℃の範囲内の温度で実施されている、請求項1から5までのいずれか1項に記載の調剤。
【請求項7】
ポリマー成分がヒドロキシル基含有ポリマーである、請求項1から6までのいずれか1項に記載の調剤。
【請求項8】
ヒドロキシル基含有ポリマーがポリエステル、ポリカーボネートポリオールまたはポリエーテルポリオールを含む群から選択されたものである、請求項7記載の調剤。
【請求項9】
ポリエステルが、0〜10mg KOH/gの酸価、3〜200mg KOH/gのヒドロキシル価、−50℃〜+110℃のガラス転移温度(Tg)、直鎖状または分枝鎖状の構造および800〜25000の分子量(Mn)を有する、請求項8記載の調剤。
【請求項10】
調剤中のポリマー成分の含量が調剤に対して20〜95質量%である、請求項1から9までのいずれか1項に記載の調剤。
【請求項11】
一般式Iのエポキシ官能性シランがグリシジルオキシプロピルトリメトキシシランまたはグリシジルオキシプロピルトリエトキシシランである、請求項1から10までのいずれか1項に記載の調剤。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか1項に記載の調剤を製造する方法において、少なくとも1つのオリゴマーのシロキサン成分と少なくとも1つのポリマー成分とを混合することを含むことを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載の調剤を製造する方法。
【請求項13】
混合を0〜150℃の温度で行なう、請求項12記載の方法。
【請求項14】
混合を溶剤の存在下で行なう、請求項12または13記載の方法。
【請求項15】
調製物中の結合剤としての請求項1から11までのいずれか1項に記載の調剤の使用。
【請求項16】
調製物が金属被覆物である、請求項15記載の使用。
【請求項17】
請求項1から11までのいずれか1項に記載の調剤を含有する調製物。

【公表番号】特表2010−535916(P2010−535916A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520513(P2010−520513)
【出願日】平成20年7月8日(2008.7.8)
【国際出願番号】PCT/EP2008/058823
【国際公開番号】WO2009/021779
【国際公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】