説明

無機微粒子分散ペースト組成物

【課題】基材に塗工した場合のレベリング性に優れるとともに、塗膜の端部に盛り上がりが生じにくく、低温かつ低酸素濃度雰囲気下であっても脱脂処理が可能な無機微粒子分散ペースト組成物を提供する。
【解決手段】水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来するセグメントと水酸基を含有しない(メタ)アクリルモノマーに由来するセグメントとからなる共重合体、無機微粒子、有機溶剤及び熱架橋剤を含有し、かつ、前記熱架橋剤の含有量が0.01〜5.0重量%である無機微粒子分散ペースト組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材に塗工した場合のレベリング性に優れるとともに、塗膜の端部に盛り上がりが生じにくく、低温かつ低酸素濃度雰囲気下であっても脱脂処理が可能な無機微粒子分散ペースト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、導電性粉末、セラミック粉末等の無機微粒子を樹脂バインダーに分散させたペースト組成物が、様々な形状の焼結体を得るために用いられている。特に、微粒子として蛍光体を樹脂バインダーに分散させたペースト組成物は、例えば、有機エレクトロルミネッセンス(EL)等に用いられ、近年需要が高まりつつある。
【0003】
例えば、プラズマディスプレイパネル(PDP)の誘電体膜の形成には、誘電体微粒子としてガラス粉末を樹脂バインダー中に分散させたガラスペースト組成物が用いられている。
このようなガラスペースト組成物は、例えば、スクリーン印刷法、ドクターブレード法等を用いた塗布法、シート状に加工するためのキャスティング法、ダイコート法等の塗工法等により所定の形状に加工した後、脱脂及び焼成することで必要な形状の焼結体とすることができる。
【0004】
ガラスペースト組成物を用いた焼結体の製造の生産性及び作業性を高めるためには、低温分解性を有する樹脂バインダーを用いることが好ましく、このような低温分解性を有する樹脂バインダーとして、一般的にエチルセルロースが用いられている。
ところが、エチルセルロースを樹脂バインダーとして含有するペースト組成物は、ガラス焼結体を製造すると、エチルセルロースが分解時にガラス表面に存在する酸素を取り込んでしまうという性質があったため、使用できるガラスの種類が限られるという問題があった。
【0005】
これに対して、例えば、特許文献1には、熱分解性の良好なアクリル樹脂を用いたペースト組成物が開示されている。このようなアクリル樹脂を含有する無機微粒子分散ペースト組成物は、バインダー樹脂の熱分解性が良好なため、低温、短時間で焼成することができる。しかしながら、アクリル樹脂を含有するガラスペースト組成物を基板に塗工すると、ガラスペースト組成物の表面に凹凸が生じるという、いわゆるレベリング性(表面平滑化特性)に劣るという問題があった。
【0006】
一方、例えば、特許文献2には、所定範囲の酸価を有するバインダー樹脂と塩基性有機溶剤とを含有する絶縁膜形成用塗料が開示されており、このような塗料は、溶媒の分離を防止するとともに、塗料中での分散状態を向上させ、レベリング性の改善を行っている。しかしながら、このような絶縁膜形成用塗料を用いた場合、使用する溶媒の種類によっては、乾燥時に塗膜の末端部が盛り上がり、平滑性が損なわれる。平滑性が損なわれた場合、平滑性を保つために、研磨作業を追加しなければならないという問題があった。
また、乾燥時における塗膜の不具合を防止する方法としては、特許文献3に、熱硬化性を有する誘電体ペーストに熱重合開始剤や架橋剤を添加する方法が開示されている。このような誘電体ペーストでは、塗膜に亀裂が生じたり、塗布膜と基板とが剥離したりするという問題を解決できるとしている。しかしながら、このような誘電体ペーストでは、ペーストの硬化が進行しすぎ、溶媒の乾燥が不充分になるという問題があった。
【特許文献1】特開2004−315719号公報
【特許文献2】特開2003−226844号公報
【特許文献3】特開2001−26477号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記現状に鑑み、基材に塗工した場合のレベリング性に優れるとともに、塗膜の端部に盛り上がりが生じにくく、低温かつ低酸素濃度雰囲気下であっても脱脂処理が可能な無機微粒子分散ペースト組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来するセグメントと水酸基を含有しない(メタ)アクリルモノマーに由来するセグメントとからなる共重合体、無機微粒子、有機溶剤及び熱架橋剤を含有し、かつ、前記熱架橋剤の含有量が0.01〜5.0重量%である無機微粒子分散ペースト組成物である。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明者らは、鋭意検討した結果、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来するセグメントと(メタ)アクリルモノマーに由来するセグメントとからなる共重合体を含有するペースト組成物に、所定量の熱架橋剤を添加することで、驚くべきことに、低温かつ低酸素濃度雰囲気下であっても脱脂処理が可能であるとともに、基材に塗工した場合に塗膜の端部に盛り上がりが生じにくく、レベリング性についても極めて良好になることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明の無機微粒子分散ペースト組成物(以下、単に本発明のペースト組成物ともいう)は、熱架橋剤を含有する。
上記熱架橋剤を含有することで、本発明のペースト組成物はレベリング性を保持しつつ、塗膜の端部に盛り上がり部分が生じることを防止することが可能となる。
これは、上記熱架橋剤の添加によって、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来するセグメントと(メタ)アクリルモノマーに由来するセグメントとからなる共重合体同士が架橋してペースト組成物全体の粘度が増加することによって、塗膜の端部において濡れ広がろうとする力やはじこうとする力に対する変形が生じにくくなるためであると考えられる。
【0011】
図1は、従来の無機微粒子分散ペースト組成物(特許文献2)を用いて塗膜を形成した場合の端部の状態を示す断面図である。図1に示すように、従来の無機微粒子分散ペースト組成物を基材1上に塗工した場合、形成された塗膜2の端部において、盛り上がり部分2aが形成される。これは、濡れ広がろうとする力Aと、はじこうとする力Bとが作用することによって、塗膜2の端部において弾性的な対応が起こるためであると考えられる。
これに対して、図2は、本発明の無機微粒子分散ペースト組成物を用いて塗膜を形成した場合の端部の状態を示す断面図である。本発明の無機微粒子分散ペースト組成物では、熱架橋剤の添加によって粘度が増し、塗膜の変形が起こりにくくなるため、濡れ広がろうとする力Aと、はじこうとする力Bが生じても、塗膜2の端部において盛り上がりが起こることなく、端部は平坦なままとなる。また、塗膜のレベリング性(表面平滑化性)は阻害されず、レベリング性と、端部盛り上がりの抑制とを両立することが可能となる。
【0012】
本発明のペースト組成物において、上記熱架橋剤としては特に限定されないが、水酸基と反応する化合物が好ましい。なお、本明細書において、熱架橋剤とは、加熱によって反応して架橋構造を形成し得る化合物のことをいう。
【0013】
上記水酸基と架橋反応する化合物としては特に限定されず、例えば、エポキシ化合物、オキセタン化合物、ポリイソシアネート化合物、ポリイソシアネート化合物にブロック剤を反応させて得られる化合物、メラミン誘導体等が挙げられる。
【0014】
また、上記熱架橋剤は、イソシアネート基、酸無水物基、カルボン酸基、アルデヒド基又はケチミン基を有する化合物であることが好ましい。
具体的には例えば、トリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、これらのオリゴマーからなる多官能イソシアネートを活性メチレン系、オキシム系、ラクタム系、アルコ−ル系等のブロック剤化合物によりブロック化することにより得られるもの等が挙げられる。
【0015】
上記熱架橋剤の含有量の下限は0.01重量%、上限は5.0重量%である。0.01重量%未満であると、架橋反応が不充分となることで、塗膜の端部に盛り上がり部分が生じ、5.0重量%を超えると、架橋反応が進行し過ぎることによって、掘削性が低下する。掘削性が低下した場合、サンドブラスト等による成形が困難になり、生産性に著しい影響を与える場合がある。好ましい下限は0.1重量%、好ましい上限は3重量%である。
【0016】
本発明のペースト組成物は、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来するセグメントと水酸基を含有しない(メタ)アクリルモノマーに由来するセグメントとからなる共重合体(以下、本発明に係る共重合体ともいう)を含有する。
上記本発明に係る共重合体は、本発明のペースト組成物においてバインダー樹脂として働くものである。ここで、本発明のペースト組成物では、上記本発明に係る共重合体と、(メタ)アクリルモノマーの単独重合体とを混合したものであってもよい。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0017】
上記水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては特に限定されず、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、n−メチロールアクリルアミドや、ポリメチレングリコール、ポリアセタール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリブチレングリコールの(メタ)アクリル酸モノエステル等が挙げられる。なかでも、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ポリテトラメチレングリコールの(メタ)アクリル酸エステルが好適に用いられ、更に、ポリプロピレングリコールモノメタクリレートは、より低温で分解するため、特に好適に用いられる。
【0018】
上記水酸基を含有しない(メタ)アクリルモノマーとしては特に限定されず、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられ、なかでも、炭素数が10以下の(メタ)アクリルモノマーを1種又は2種以上用いることが好ましい。
【0019】
本発明のペースト組成物において、上記本発明に係る共重合体は、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来するセグメントと、炭素数10以下の水酸基を含有しない(メタ)アクリルモノマーに由来するセグメントとからなる共重合体であることが好ましい。このような組成の共重合体は、分解温度が低いため本発明のペースト組成物が低温焼成可能となるからである。なお、本明細書において、低温焼成とは、本発明に係る共重合体、有機溶剤、及び、熱架橋剤の初期重量の99.5%が失われる焼成温度が低温であることを意味し、窒素置換等をしない通常の空気雰囲気下で、焼成温度が250〜400℃である場合をいう。
【0020】
上記本発明に係る共重合体における水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来するセグメントと、水酸基を含有しない(メタ)アクリルモノマーに由来するセグメントとの組成比としては特に限定されないが、原料となる水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーと、水酸基を含有しない(メタ)アクリルモノマーとを(水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー):(水酸基を含有しない(メタ)アクリルモノマー)=5重量%:95重量%〜80重量%:20重量%の組成比で共重合させることが好ましい。水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーの組成比が5重量%未満であると、架橋が進行せず、粘度が変化しないことがあり、80重量%を超えると、架橋が進行しすぎて掘削性に影響を与えることがある。
【0021】
上記本発明に係る共重合体におけるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算数平均分子量の範囲は、用いる本発明に係る共重合体のガラス転移温度に依存するが、好ましくは下限が2000、好ましい上限が10万である。ガラス転移温度が室温よりも高い本発明に係る共重合体においては、上限が5万であることが好ましく、さらに好ましい上限は15000である。ポリスチレン換算数平均分子量が上記範囲を外れると、本発明のペースト組成物のレベリング性が不充分となることがある。
また、GPCによりポリスチレン換算数平均分子量を測定する際のカラムとしてはSHOKO社製カラムLF−804等が挙げられる。
【0022】
また、本発明のペースト組成物において、上記本発明に係る共重合体の含有量は、印刷可能な限り少量であることが好ましいが、好ましい下限は1重量%、好ましい上限は15重量%である。1重量%未満であると、本発明のペースト組成物の成形性が劣ることがあり、15重量%を超えると、焼成後の残炭量が増加することで焼成後の品質に影響が出たり、焼成により厳しい環境が必要となったりして好ましくない。
【0023】
上記本発明に係る共重合体の重合方法としては特に限定されず、通常の(メタ)アクリルモノマーの重合に用いられる方法が挙げられ、例えば、フリーラジカル重合法、リビングラジカル重合法、イニファーター重合法、アニオン重合法、リビングアニオン重合法等が挙げられる。
【0024】
本発明のペースト組成物は、無機微粒子を含有する。
上記無機微粒子としては、本発明のペースト組成物を用いて製造する焼結体に合わせて適宜決定され、特に限定されないが、例えば、金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、チタン酸バリウム、窒化アルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ケイ酸塩ガラス、鉛ガラス、CaO・Al・SiO系無機ガラス、MgO・Al・SiO系無機ガラス、LiO・Al・SiO系無機ガラスの低融点ガラス、種々のカーボンブラック、カーボンナノチューブ、酸化チタン、酸化ジルコニウム等の金属酸化物、金属錯体、YS:Eu、(SrCaBaMg)(POCl:Eu、LaPO:Ce,Tb、Y:Eu、Ca10(POFCl:Sb,Mn、BaMgAl1017:Eu、ZnSiO:Mn、(Y,Gd)BO:Eu、CaWO、GdS:Tb、(Y,Sr)TaO:Nb等の蛍光体等からなる群より選択される少なくとも1種を原料とするものが好適に用いられる。
上記ガラス粉末としては特に限定されず、例えば、ケイ酸塩ガラス、鉛ガラス、CaO・Al・SiO系無機ガラス、MgO・Al・SiO系無機ガラス、LiO・Al・SiO系無機ガラス等の低融点ガラス等が挙げられる。
【0025】
上記無機微粒子の添加量としては特に限定されないが、本発明のペースト組成物のうち本発明に係る共重合体、有機溶剤及び熱架橋剤等の無機微粒子以外の成分からなるバインダー樹脂組成物100重量部に対して好ましい下限が10重量部、好ましい上限が300重量部である。10重量部未満であると、充分なチキソ性が得られないことがあり、300重量部を超えると、無機微粒子を分散させることが困難となることがある。より好ましい下限は50重量部、より好ましい上限は250重量部である。
また、上記無機微粒子がガラス粉末である場合、該ガラス粉末の本発明のペースト組成物における含有量の好ましい下限は40重量%、好ましい上限は95重量%であり、より好ましい下限は30重量%、より好ましい上限は85重量%未満である。
【0026】
本発明のペースト組成物に含有される有機溶剤は、1気圧下での沸点の好ましい下限が150℃、好ましい上限が350℃である。上記有機溶剤がこの範囲を満たすことで印刷プロセス時の有機溶剤の揮発が抑制されることで粘度が安定し、最終的に印刷性が向上する。
【0027】
上記沸点の下限が150℃、上限が350℃である有機溶剤としては特に限定されず、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールドデシルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールドデシルエーテルアセテート、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノnブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノオレエート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノnブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノオレエートアセテート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノラウレート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールジアセタート、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノステアレート、トリエチレングリコールモノベンジルエーテル、プロピレングリコール、フェニルプロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 、プロピレングリコールジアセタート、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコール 、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル 、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートテトラエチレングリコール、テトラエチレングリコールドデシルエーテル、テトラエチレングリコールモノオクチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、ペンタエチレングリコールドデシルエーテル、ヘプタエチレングリコールドデシルエーテル、ヘキサエチレングリコールドデシルエーテル、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテルブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、テルピネオール、ターピネアセテート、ジヒドロターピネオール、テキサノール、ベンジルアセテート、イソホロン、乳酸ブチル、ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、ベンジルアルコール、クレゾール等が挙げられる。これらの有機溶剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0028】
本発明のペースト組成物は、20℃においてB型粘度計を用いプローブ回転数を5rpmに設定して測定した時の粘度が10Pa・s以上、かつ、1000Pa・s未満であることが好ましい。10Pa・s未満であると、ダイコート法等により成膜した後に静置して乾燥させる際に自然流延してしまうことがある。より好ましいのは25Pa・s以上、かつ、1000Pa・s未満の範囲である。
【0029】
本発明のペースト組成物の製造方法としては特に限定されず、上述した本発明に係る共重合体、無機微粒子、有機溶剤及び熱架橋剤等を従来公知の攪拌方法、具体的には例えば、3本ロール等で攪拌を行えばよい。
【発明の効果】
【0030】
本発明によると、基材に塗工した場合のレベリング性に優れるとともに、塗膜の端部に盛り上がりが生じにくく、低温かつ低酸素濃度雰囲気下であっても脱脂処理が可能な無機微粒子分散ペースト組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0032】
(合成例1)
攪拌機、冷却器、温度計、湯浴及び、窒素ガス導入口を備えた2Lセパラブルフラスコに、メチルメタクリレート(MMA)80重量部、水素結合性官能基を有し、かつ、ポリオキシアルキレン側鎖を含有する(メタ)アクリレートとして、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(日本油脂社製、ブレンマーPP−1000)20重量部、連鎖移動剤(DDM)0.5重量部、有機溶剤としてターピネオール50重量部を混合し、モノマー混合液を得た。
得られたモノマー混合液を、窒素ガスを用いて20分間バブリングすることにより溶存酸素を除去した後、セパラブルフラスコ系内を窒素ガスで置換し攪拌しながらモノマー混合溶液温が95℃に達するまでに昇温した。モノマー混合溶液温が95℃に達した後、重合開始剤を酢酸エチルで希釈した溶液を加えた。また、重合中に重合開始剤を含む酢酸エチル溶液を数回添加した。
重合開始から7時間後、室温まで冷却し重合を終了させた。これにより、(メタ)アクリル樹脂のターピネオール溶液を得た。得られた(メタ)アクリル樹脂について、カラムとしてSHOKO社製カラムLF−804を用い、GPCによる分析を行ったところ、ポリスチレン換算による数平均分子量は5000であった。
【0033】
(実施例1)
合成例1で得られた(メタ)アクリル樹脂、ターピネオール、熱架橋剤としてトリレンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業社製、コロネートT−80)、シリカ粉末(S.C.R.SIBELCO社製、シベライトM6000)を表1に示す組成で配合し、高速撹拌装置を用いて充分混練し、3本ロールミルにてなめらかになるまで処理を行い、無機微粒子分散ペースト組成物を作製した。
全体の粘度は、良好な印刷性を与えるよう250Pa・sとなるように決定した。なお、粘度はB型粘度計(BROOK FILED社製、DVII+Pro)を利用して、回転数5rpmについて20℃における値として求めた。
【0034】
(実施例2〜4)
熱架橋剤及びターピネオールの添加量を表1に示す量に変更した以外は、実施例1と同様にして無機微粒子分散ペースト組成物を作製した。組成等を表1に示した。
【0035】
(比較例1)
エチルセルロース、ターピネオール、シリカ粉末(S.C.R.SIBELCO社製、シベライトM6000)を表1に示す組成で配合した以外は、実施例1と同様にして無機微粒子分散ペースト組成物を作製した。
【0036】
(比較例2)
熱架橋剤を添加せず、ターピネオールを表1に示す添加量としたこと以外は、実施例1と同様にして無機微粒子分散ペースト組成物を作製した。
【0037】
(比較例3)
合成例1で得られた(メタ)アクリル樹脂、熱架橋剤、ターピネオールを表1に示す添加量としたこと以外は、実施例1と同様にして無機微粒子分散ペースト組成物を作製した。
【0038】
(評価)
実施例1〜4、比較例1〜3で得られた無機微粒子分散ペースト組成物について以下の評価を行った。結果を表2に示した。
【0039】
(1)レベリング性(表面平滑化特性)評価
容器に充填したガラスペースト組成物の表面から10mmの深さまで、先端が鋭利な直径2.6mmのステンレスピックを突き刺し、ステンレスピックを垂直に引き上げた。ステンレスピックとともに5mmの高さまで引き上げられたガラスペースト組成物が、容器内のガラスペースト組成物の表面にまで落ち平滑な状態に戻るまでの時間を測定した。以下の基準でレベリング性を評価した。
○:表面が平滑な状態に戻るまでの時間が3秒未満
×:表面が平滑な状態に戻るまでの時間が3秒以上
【0040】
(2)端部盛り上がり確認
ダイコート法によってガラス基板上に得られた無機微粒子分散ペースト組成物を塗工し、厚みが50μmの無機微粒子分散ペースト組成物からなる塗膜を形成した。
得られた塗膜について、表面粗さ計を用い、塗膜の中央部と任意の端部の高低差を測定し、以下の基準で評価した。
○:高低差が5μm未満
×:高低差が5μm以上
【0041】
(3)掘削性確認
ダイコート法によってガラス基板上に得られた無機微粒子分散ペースト組成物を塗工し、厚みが50μmの無機微粒子分散ペースト組成物からなる塗膜を形成した。
得られた塗膜を先端が鋭利な直径1.0mmの竹串で引っかき、掘削が可能か否かを評価した。幅2.5cm引っかく間に深さ50μm掘削できたもの(ガラス基盤に達したもの)を掘削可能と判断した。
○:掘削が可能であった
×:掘削ができなかった
【0042】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明によれば、基材に塗工した場合のレベリング性に優れるとともに、塗膜の端部に盛り上がりが生じにくく、低温かつ低酸素濃度雰囲気下であっても脱脂処理が可能な無機微粒子分散ペースト組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】従来の無機微粒子分散ペースト組成物を用いて塗膜を形成した場合の端部の状態を示す断面図である。
【図2】本発明の無機微粒子分散ペースト組成物を用いて塗膜を形成した場合の端部の状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 基材
2 塗膜
2a 盛り上がり部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来するセグメントと水酸基を含有しない(メタ)アクリルモノマーに由来するセグメントとからなる共重合体、無機微粒子、有機溶剤及び熱架橋剤を含有し、かつ、前記熱架橋剤の含有量が0.01〜5.0重量%であることを特徴とする無機微粒子分散ペースト組成物。
【請求項2】
熱架橋剤は、水酸基と反応する化合物であることを特徴とする請求項1記載の無機微粒子分散ペースト組成物。
【請求項3】
熱架橋剤は、イソシアネート基、酸無水物基、カルボン酸基、アルデヒド基又はケチミン基を有する化合物であることを特徴とする請求項2記載の無機微粒子分散ペースト組成物。
【請求項4】
無機微粒子は、ガラス粉末であり、前記ガラス粉末の含有量が40〜95重量%であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の無機微粒子分散ペースト組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−67821(P2009−67821A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−234482(P2007−234482)
【出願日】平成19年9月10日(2007.9.10)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】