説明

無機添加剤を含有するプラスチック材料の容器の使用方法

本発明は、容器と、その中に収容される油、脂肪および/または蝋含有配合物との間の物理的/化学的相互作用を減少させるための、無機添加剤を含有するプラスチック材料から製造された容器の使用方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機添加剤を含有するプラスチック材料の容器の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック容器は、製薬の調製のためにたやすく使用されている。しかしながら、それらの性質のために、いくつか制限があることが知られている。それゆえ、ある化学物質に対する、ポリエチレンまたはポリプロピレンおよびそれらのコポリマー/ブレンドから製造された容器の反応性を抑制するために、いくつかの方法が用いられている:鎖状分子の移動度を増加させるであろう可塑剤を避ける;高密度のポリマーまたはポリオレフィンのブレンド(例えば、ポリプロピレン/ポリアクリレート)を使用する;壁厚を増加させる;または容器をラッピング(例えば、アルミホイル)または封止(例えば、フッ素化、シリコーン)する。
【0003】
特許文献1(Finberg、1978年)には、特定量の結晶化度および特定のエチレン含有量を有する非晶質エチレン−プロピレンコポリマーを含有する低密度ポリエチレンを含むブレンドによりLDPEの靭性を増加させられることが開示されている。
【0004】
特許文献2(Hsu等、1985年)には、ナイロンまたはエチレンビニルアルコールからの油バリア層を含む、油含有製品のための多層パッケージが開示されている。
【0005】
特許文献3(Takei等、1996年)には、特定のガラス転移温度を有するブレンドされた樹脂組成物を含む耐油性容器が開示されている。
【0006】
特許文献4(Su等、2004年)には、油吸収多孔質粒子(炭酸カルシウム、二酸化ケイ素、非晶質シリカ、アルミノケイ酸ナトリウム、活性炭)の表皮層および金属層を有するポリオレフィン多層フイルムを用いた食品油分の存在下で歪まないフイルムが開示されている。
【0007】
特許文献5(Takashima等、2004年)には、プロピレン樹脂、不飽和基含有アクリルゴムおよびゴム組成物に関する無機充填剤、好ましくはシリカを有してなる耐油性熱可塑性エラストマー組成物が開示されている。
【0008】
プラスチックの性質を改善するために、他の添加剤も使用される。顔料および紫外線安定剤(有機および無機顔料、染料、ベンゾフェノン、ヒンダードアミンなど)も非常に有用である。これらは、熱安定性、光堅牢度および耐光性などの広い範囲の要件を網羅し、ここで、二酸化炭素(TiO2)が製薬において最も一般的である。TiO2は、幅広い範囲の紫外線吸収および非移行性(薬物配合物中への移動)で知られている不活性物質である。
【特許文献1】米国特許第4123417号明細書
【特許文献2】米国特許第4546882号明細書
【特許文献3】米国特許第5500261号明細書
【特許文献4】米国特許第6800363号明細書
【特許文献5】米国特許第6815506号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、油、脂肪および/または蝋含有配合物を収容する、添加剤を含有するプラスチック材料から製造された容器の代わりの使用方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、容器と、その中に収容される油、脂肪および/または蝋含有配合物との間の物理的/化学的相互作用を減少させるために、無機添加剤を含有するプラスチック材料から製造された容器を使用する方法により達成される。
【0011】
前記物理的/化学的相互作用は、配合物のプラスチック材料への吸着であることが好ましい。
【0012】
無機添加剤が少なくとも一種類の顔料であることがより好ましい。
【0013】
少なくとも一種類の顔料が、二酸化チタン(TiO2)、表面処理された二酸化チタン、またはそれらの混合物であることが最も好ましい。
【0014】
ある実施の形態において、添加剤は、プラスチック材料の質量に基づいて、0.1と10質量%の間の量、より好ましくは0.1と5質量%の間の量、最も好ましくは約2質量%の量でプラスチック材料中に含まれる。
【0015】
プラスチック材料はポリオレフィンを含んでよい。
【0016】
ポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンとプロピレンのコポリマー、またはそれらの混合物からなる群より選択されることが好ましい。
【0017】
プラスチック材料が低密度ポリエチレン(LDPE)を含むことがより好ましい。
【0018】
プラスチック材料は、押出ブロー成形に適しているであろう。
【0019】
配合物は、油、脂肪および/または蝋中に溶解した、または懸濁された少なくとも一種類のステロイドホルモンを含むことが好ましい。
【0020】
このステロイドホルモンは、性ホルモン薬物、好ましくはテストステロンであり、配合物はさらに、少なくとも一種類の脂肪親和性またはある程度脂肪親和性のキャリヤ、および配合物と水が接触した際にエマルジョンをその場で生成するのに効果的な量の、表面張力減少活性を有する化合物または化合物の混合物を含むことがより好ましい。
【0021】
最後に、配合物は、好ましくは哺乳類への、鼻塗布であることが好ましい。
【0022】
好ましい低密度ポリエチレンの例は、Lupolen(登録商標)1840 Hである。さらに、好ましい配合物は、欧州特許出願第03025769.5号明細書に開示されているものであってよい。
【0023】
意外なことに、無機添加剤を含有するプラスチック材料の容器が、油、脂肪および/または蝋含有配合物、例えば、ステロイドホルモンの油性配合物を保持するのに、そのような容器の使用によって、容器と配合物との間の物理的−化学的相互作用、特に配合物のプラスチック材料への吸着が減少するという点で、都合よく用いられるであろうことが分かった。
【0024】
意外なことに、本出願の発明者等は、これまで使用されることが意図されていなかった目的にTiO2を使用できることも発見した。TiO2をプラスチック包装材料に加えることによって、その使用を制限していた、ある油性配合物の容器との物理的−化学的相互作用を防ぐことができる。
【0025】
油−プラスチック相互作用に対処するのに実際に行われたきた手法では、無機添加助剤は用いられておらず、またプラスチックへの吸着から、対応するステロイドホルモンを含有する配合物を保護するための可能性も記載されていなかった。
【0026】
鼻塗布形態において、投与のための装置の適性が非常に重要である。これは、都合の良い投与により患者の承諾を改善することに当てはまる。しかし、このことは、放出される投与量の均一性および配合物の一次包装材料に関する適合性などの薬剤的な必要性にも当てはまる。製薬用途において、一次包装材料に不活性材料を使用することが必須であり、生薬配合物、活性成分および賦形剤は、どのような相互作用によっても悪影響を受けるべきではない。
【0027】
原則として、鼻用配合物の包装のためには2種類の材料と2つの包装タイプがある。ガラスとプラスチック、および複数回投与容器と単位投与容器である。プラスチック材料の主な利点は、幅広い設計を可能にする柔軟性、軽量、耐破損性、および容易な取扱いである。サイズが小さいために、プラスチックから製造された単位投与容器が特に鼻塗布に適している。何故ならば、ポンプ機構が必要なく、また生成配合物への防腐剤の添加も必要ないからである。
【0028】
そのようなプラスチック容器の出発材料として、ポリエチレンまたはポリプロピレンおよびそれらのコポリマーが用いられる。それらの使用に関する潜在的な欠点は、酸素透過性、不十分な紫外線抵抗性、並びに非極性特徴、結晶化度およびモル質量による、ある化学物質に対する不十分な抵抗性である。
【0029】
それゆえ、ポリエチレンおよびポリプロピレンは、一般に、脂肪族および芳香族炭化水素とそれらのハロゲン誘導体、並びに脂肪、油および蝋などの低揮発性物質に対して抵抗性がない。予測される相容れない性質は、プラスチックへの化学物質の吸着、化学物質による拡散および膨潤、または化学物質中への溶解である。
【0030】
他方で、ステロイドホルモンなどの炭化水素誘導体は、溶解度および作用時間を増加させるためにキャリヤとして油を使用して容易に配合される。一次包装により生じる安定性の問題を避けるために、これらの油性配合物(ほとんどは注射可能な)は通常、ガラス装置に充填される。しかしながら、この種類の包装は、全ての塗布形態に適している訳ではない、例えば、鼻塗布のための油性配合物には適していない。複数回投与装置に関して、その理由は、ボトルはガラスから形成されるかもしれないが、プラスチック材料から形成される、ポンプなどの装置部品が常にあるからである。単位投与装置に関して、その理由は、これらは、少なくとも搾り出されるべき粘性配合物の場合には、ガラスからは製造できず、ほとんどがブロー・フィル・シール(blow-fill-seal)技術により、プラスチックから成形される。
【実施例】
【0031】
上述した検討事項に関する例として、異なる材料の容器内における、ステロイドホルモンであるテストステロンを含有する配合物の安定性を調査した試験結果が表1に示されている。
【表1】

【0032】
「貯蔵後に残留する薬物」という用語は、22時間に亘り貯蔵した後の配合物中に残留したテストステロンの量を称する。残留した薬物は、HPLC技法により測定した。
【0033】
薬物の油性配合物との複合的な相互作用および油性配合物の一次包装材料との複合的な相互作用があるのが明らかである。しかしながら、臨床的−製薬的な理由に関して、油性配合物および包装のための単位投与装置が好ましい。それゆえ、出願人は、この問題を解決するための複雑な手法を用いて、ある努力を行った。しかしながら、意外なことに、プラスチック材料に二酸化チタンを加えた後、この単純な工程によって、薬剤配合物の貯蔵寿命を増加させることが可能であった。
【0034】
先の説明および特許請求の範囲に開示された特徴は、別々と、その任意の組合せの両方で、本発明をその様々な形態で実現するための素材となるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機添加剤を含有するプラスチック材料から製造された容器を、該容器と、その中に収容される油、脂肪および/または蝋含有配合物との間の物理的/化学的相互作用を減少させるために使用する方法。
【請求項2】
前記物理的/化学的相互作用が前記配合物の前記プラスチック材料への吸着であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記無機添加剤が少なくとも1種類の顔料であることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1種類の顔料が、二酸化チタン、表面処理された二酸化チタン、またはそれらの混合物であることを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記添加剤が、前記プラスチック材料の質量に基づいて、0.1と10質量%の間、より好ましくは0.1と5質量%の間、最も好ましくは約2質量%の量で該プラスチック材料中に含まれることを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記プラスチック材料がポリオレフィンを含むことを特徴とする請求項1から5いずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記ポリオレフィンが、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンとプロピレンのコポリマー、およびそれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記プラスチック材料が低密度ポリエチレンを含むことを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記プラスチック材料が押出ブロー成形に適していることを特徴とする請求項1から8いずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記配合物が、油、脂肪および/または蝋中に溶解したまたは懸濁された少なくとも1種類のステロイドホルモンを含むことを特徴とする請求項1から9いずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記ステロイドホルモンが性ホルモン薬物、好ましくはテストステロンであり、前記配合物が、少なくとも1種類の脂肪親和性またはある程度脂肪親和性のキャリヤ、および該配合物の水との接触の際にエマルジョンをその場で生成するのに効果的な量の、表面張力減少活性を有する化合物または化合物の混合物をさらに含むことを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記配合物が、好ましくは哺乳類への、鼻塗布用であることを特徴とする請求項1から11いずれか1項記載の方法。

【公表番号】特表2008−523931(P2008−523931A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547202(P2007−547202)
【出願日】平成17年10月4日(2005.10.4)
【国際出願番号】PCT/EP2005/010656
【国際公開番号】WO2006/066645
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(307009492)エム アンド ペー パテント アクツィエンゲゼルシャフト (2)
【Fターム(参考)】