説明

無機質発泡層の塗着形成方法

【課題】 シロキサン及びシラノール塩多分子量溶液を噴散し加熱発泡させ、且その加熱融着性で被着面に融着塗着形成させる無機質発泡層の塗着形成方法を提供する。
【解決手段】 固形分が20乃至35重量%、水分が65乃至80重量%で分子量が4,000乃至8,000のシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液を、300℃以上に加熱且加圧された加熱加圧空気と混合し、所要孔径のオリフィスより噴散させ所要粒径に加熱発泡させ且その加熱融着性により被着面に融着塗着させ無機質発泡層を塗着形成させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐火性や不燃性と且優れた断熱性を保持する無機質発泡層を簡便且安価に融着塗着形成できる無機質発泡層の塗着形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現状における建物や施設等の外壁若しくは内壁、或いは各種装置とりわけ冷熱装置等の外面には、冷熱エネルギーの漏失や逸散を防止し省エネルギー化を図ること、及びこれら壁面や外面に適応して施工しえるよう屈撓性を有し加工が容易で且安価なうえ断熱性に優れる断熱板材や断熱シート材として、ポリスチレンを初めポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン若しくはポリフェノール樹脂等の合成樹脂素材を用いた発泡板材や発泡シート材が主として用いられてきた。
【0003】
然るに今日の如く一方においては環境保護が強く要請され、且他方においては建物や施設の高層化と大型化に加えて高令化に伴う安全性が強く要求される状況下においては、これら合成樹脂素材からなる発泡板材や発泡シート材では、耐用使用後においても廃棄が出来ず且その焼却には分別回収と特別な焼却手段を用いねばならぬため、これに伴う多大な費用が強いられるばかりか建物や施設の断熱板材として使用された場合にも一旦火災が発生した場合には猛烈な火陥とともに煤煙と有害ガスが発生し、毎年多くの人命が失われる結果ともなっている。
【0004】
かかる状況に際して発明者等は、無機質産業廃棄物中の石炭灰や鋳造廃砂或いは自然噴出物としての火山灰等には、その組成中に多量の酸化珪素が含有されていること及び該酸化珪素はアルカリ剤により容易に溶解されて珪酸ナトリウム所謂水ガラスが生成しえることをもとに、該水ガラスのシラノール基の縮合作用によって多分子量を図ることにより、固形分が20乃至35重量%及び水分が65乃至80重量%で且その分子量が4,000乃至8,000程度のシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液が生成できることを確認した。
【0005】
そして該シロキサン及びシラノール塩多分子量溶液においては100℃以上の加熱により水分蒸散に伴う発泡構造を生成しえること、並びに少なくとも300℃以上の高温度では短時に加熱発泡し且加熱融着性が発揮されるため、建物や施設の壁面若しくは冷熱装置外面に吹付けることにより、無機質発泡層が適宜の形状及び厚さで且能率的に塗着形成しえることを究明し本発明に至った。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
その固形分が20乃至35重量%で水分が65乃至80重量%で、その分子量が4,000乃至8,000のシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液を噴散し加熱発泡させ且その加熱融着性を以って被着面に簡便且安価に融着塗着形成しえる、無機質発泡層の塗着形成方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するために本発明が用いた技術的手段は、その固形分が20乃至35重量%で水分が65乃至80重量%のシロキサン及びシラノール塩溶液のシラノール基を縮合作用させて、その分子量が4,000乃至8,000に多分子量化させたシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液を、少なくとも300℃以上に加熱され且加圧された加熱加圧空気中に、所要の孔径を有するオリフィス前面で混合させたうえオリフィスより噴散させて所要の粒径に加熱発泡させるとともに、その加熱融着性を以って建物や施設の壁面或いは冷熱装置外面等の被着面に吹付けながら融着塗着させ且降温により発泡倍率を抑制させて所要の形状及び厚さの無機質発泡層を塗着形成させる方法に存する。
【0008】
更にはオリフィスより噴散させた後、外気の影響を排して十分に加熱発泡させ且加熱融着性を保持させて強固な塗着と被着面への能率的な融着塗着をなすために、オリフィスより噴散されるシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液を、その噴散角より広角に形成された噴散保護コーン内に噴散させる方法に存する。
【発明の効果】
【0009】
本発明はかかる技術的手段を用いてなるもので、使用素材がシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液からなり、且その組成がシロキサン及びシラノール塩の固形分が20乃至35重量%に水分が55乃至80重量%の比較的低粘度であるから加熱加圧空気に混合されて細孔径のオリフィスより噴散させても、更には噴散のための加熱加圧空気が少なくとも300℃以上の高温度に加熱され且オリフィス直前でシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液と混合され噴散されるため、オリフィス通過後の噴散時に加熱発泡される結果オリフィスが閉塞されることもなく、而も高温度で加熱発泡され噴散される発泡粒は略同一の発泡粒径を有するとともに融着性をも保持するため、建物や施設等の壁面若しくは冷熱装置の外面等の被着体表面に吹付けられることによりその形状に沿って融着塗着され、且吹付時間の調整如何でその厚さも簡便自在に調整されて無機質発泡層の塗着形成ができる。
【0010】
更に噴散させるオリフィスの後方に、噴散角より広角に形成された噴散保護コーンを設けて噴散させることにより外気の影響が排除されるため、加熱発泡された発泡粒が保熱されて十分な発泡がなされるとともに加熱融着性も十分に保持されて被着体に吹付けられるため、強固な融着塗着による無機質発泡層が形成され而も噴散された発泡粒も拡散されぬため被着面へ能率良く且正確に融着塗着がなされる。
【実施例1】
【0011】
以下に本発明実施例を図とともに説明すれば、図1は混合原理の説明図、図2は本発明のレイアウト図であって、本発明に用いる素材としては耐火性や不燃性並びに廃棄性をも具備するとともに、加熱により所要粒径で多数の発泡粒を形成し且その加熱に伴う融着性により被着面に融着塗着させて無機質発泡層を塗着形成させるため、シロキサン及びシラノール塩多分子量溶液1が用いられる。
【0012】
即ちこのシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液1は無機質産業廃棄物である石炭灰や火山灰の如き自然噴出物中に多量に含有されてなる酸化珪素分を一旦アルカリ剤で溶解させて珪酸ナトリウム所謂水ガラスとなしたうえ、この珪酸ナトリウム中の水分蒸散に伴う発泡生成をなすうえから、多分子量化させて粘性や弾性を付与せしめることが望まれる。
【0013】
そこで珪酸ナトリウム中のシラノール基を縮合させることにより、その分子量を4,000乃至8,000程度に多分子量化させてシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液1として用いるもので、当然に該シロキサン及びシラノール塩多分子量溶液1は噴散により加熱発泡させるうえからはあまり高粘度のものでは不適となるため、その組成割合としてはシロキサン及びシラノール塩からなる固形分が20乃至35重量%と水分が65乃至80重量%程度のものが使用される。
【0014】
かくしてなるシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液1は、その組成中の水分蒸散に伴い発泡構造が生成されるものであるために、少なくとも100℃以上の加熱により発泡し且その発泡倍率としては最大略50倍にまで発泡するものである。
反面実用使用に供する無機質発泡層は使用目的によっても異なるが、耐圧縮強度としては少なくとも3kg/cm程度から30kg/cm以上程度のものまで要請されるため、その発泡倍率としてはせいぜい6乃至30倍程度に制限することが望まれる。
【0015】
これがためには高温度で短時に加熱発泡させるとともに、その加熱融着性を以って被着面に融着塗着させて融着塗着に伴う降温により発泡倍率を抑制し所望の耐圧縮強度の無機質発泡層を形成させる技術思想を用いている。
かかるためにはシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液1を少なくとも300℃以上、望ましくは330乃至380℃に加熱させ且オリフィス2の細孔径から多数の霧滴状に噴散しえるよう加圧された加熱加圧空気3と、オリフィス2の直前において混合させたうえオリフィス2より霧滴状に噴散させ且加熱発泡により発泡粒4となすものである。
【0016】
かかる場合に加熱加圧空気3の圧力は、シロキサン及びシラノール塩多分子量溶液1の粘性やオリフィス2の孔径及び噴散量においても異なるが、少なくともオリフィス2で噴散し加熱発泡させた発泡粒4を能率的且正確に融着塗着させるうえからは、略0.5乃至1.0m程度の距離から被着面5Aに吹付けて融着塗着させて所望の無機質発泡層5を形成させる必要上、その空気圧としては少なくとも1.5kg/cm以上、望ましくは3.0乃至5.0kg/cmの圧力が要請されるもので、当然に該加熱加圧空気3は調節弁32Cにより適宜に調節される。
【0017】
シロキサン及びシラノール塩多分子量溶液1を加熱加圧空気3と混合させるには、該加熱加圧空気3をその加熱送風管3A先端よりオリフィス2内を高速で流通させることにより発生する吸引力により所謂エゼクタの原理により供給混合させるもので、これがためには所要容量のホッパー1Aに貯留させたシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液1を吸引力の働くオリフィス2の直前に供給管32Fで誘導供給させてやれば良い。
かかる場合に留意すべきは、シロキサン及びシラノール塩多分子量溶液1を誘導供給する場合において、加熱加圧空気3に吸引混合されるまでは加熱加圧空気3の温度で、シロキサン及びシラノール塩多分子量溶液1が最大でも100℃以上に加熱されぬよう加熱送風管3Aに適宜断熱手段を講ずることにある。
【0018】
加熱加圧空気3と混合されオリフィス2より噴散されながら加熱発泡される発泡粒4の発泡粒径は、オリフィス2の孔径並びに噴散圧力及び加熱発泡に要する加熱温度及び時間により具体的に決定されるもので、耐圧縮強度の強い無機質発泡層5を形成させるうえからは、発泡倍率が低く且発泡粒径の小さな発泡粒4を高い融着性を以って融着塗着形成されることであり、反面安価で且高い断熱性を発揮せしめる無機質発泡層5の形成には高発泡倍率で発泡粒径の大きな発泡粒4を融着塗着させることにある。
【0019】
かかる場合に耐圧縮強度の強い無機質発泡層5の形成のための発泡粒4の粒径としては、一般的使用目的の場合では略0.5乃至2.0mm程度で、更に安価で高断熱性を望む場合には略3.0乃至8.0mm程度のものが好都合である。
してみると低発泡倍率では略6乃至15倍発泡程度で、且高発泡倍率では略15乃至30倍程度の加熱発泡させれば良い。従って低発泡倍率で且発泡粒径が0.5乃至2.0mm程度の発泡粒4を6倍の加熱発泡倍率で発泡形成する場合には、シロキサン及びシラノール塩多分子量溶液1の噴散に係る霧滴の滴径としては略0.14乃至0.55mm程度、更に発泡粒径が3.0乃至8.0mm程度で発泡粒4を15倍の加熱発泡倍率で発泡形成する場合には略0.6乃至1.7mm程度で噴散させれば良い。
【0020】
ところでシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液1は、100℃以上の加熱により発泡し且十分な加熱条件下では略50倍程度にまで発泡するものの、その熱示差曲線のうえからは安定した加熱発泡には、少なくとも200℃以上とりわけ短時に加熱発泡させ且加熱融着性を保持せしめるには300乃至550℃が適性温度域と考えられている。
しかしながら本発明における無機質発泡層5はオリフィス2により噴散され加熱発泡されて融着塗着される場合に、その発泡倍率は耐圧縮強度の強い無機質発泡層5の場合には略6乃至15倍程度、高断熱性が要請される高発泡倍率でも略15乃至30倍である。従って加熱発泡された発泡粒4は直ちに被着面5Aに融着塗着させて降温化させ過剰な発泡を抑制させることが望まれ、且あまり高温度では作業時における危険性と被着面5Aの素材如何では熱劣化や熱損傷を惹起させる危険もあることから、好ましくは330乃至380℃程度の温度が使用されるべきである。
【0021】
かくして加熱加圧空気3と混合されオリフィス2より噴散され且所要の発泡倍率に加熱発泡され而も加熱融着性が創出された発泡粒4は、所要の被着面5Aにその噴散圧力により吹付られその加熱融着性により被着面5Aに融着され塗着がなされるとともに、この融着塗着に伴い発泡粒4の温度が急速に降温し発泡倍率の抑制と且固着して、無機質発泡層5の形成がなされる。
かかる場合に被着面5Aの融着塗着に際して建物や施設等の壁面或いは冷熱装置の外面等は広大な面積を有するものから比較的小面積で且融着塗着厚も多様に亘るため、これらに対処しえる融着塗着のための施工手段が要請される。
【0022】
これがためには図3に示すように、所要の加熱温度に加熱し且所要の送風圧力を以って加熱加圧空気3を加熱送風しえる加熱送風機30を予め用意し、この加熱送風機30からの加熱加圧空気3を、適宜施工作業位置まで移送しえる加熱移送管31を設けるとともに、他方において該加熱移送管31と連結できる連結部32Aを有した把持部32Bには、加熱加圧空気3の噴散量を調節するための調節弁32Cと連動するノブ32Dが設けられ、且把持部32Bの上部には適宜容量を以ってシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液1を貯留しえるホッパー32Eが設けられたうえ供給管32Fを介して、把持部32Bの他端に設けられたオリフィス2の直前で加熱加圧空気3の吸引力により混合されるよう構成された噴散具32を用いて、被着体5Aに吹付け融着塗着させることが提案される。
【0023】
更に図4は噴散コーン6の説明図であって、本発明により無機質発泡層5を融着塗着させる建物や施設の壁面或いは冷熱装置の外面等屋外における被着面5Aへの施工においては、融着塗着に際して噴散され加熱発泡された発泡粒4が、外気温の影響を受けて加熱融着性が損われ被着面5Aへの強固な融着塗着が出来ぬ危険や、発泡粒4が風の影響を受け易く、これにより被着面5Aへの能率的且正確な吹付けが阻害されて融着塗着が良好になされぬ問題も発生する。
【0024】
そこでオリフィス2より噴散されるシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液1を、該オリフィス2からの噴散角より広角に形成された噴散コーン6内に噴散させることにより、加熱発泡された発泡粒4が外気に直接晒されぬため加熱融着性を保持したまま被着面5Aへの吹付けがなされ融着塗着がなされるとともに、該噴散保持コーン6により発泡粒4が風の影響を受けることなく被着面5Aに正確に吹付けがなされ、能率良く融着塗着がなされ無機質発泡層5が形成される。
【0025】
以下に本発明における無機質発泡層5の融着塗着施工例を述べれば、加熱送風機30により350℃に加熱され且送風圧力3kg/cmに加熱加圧された加熱加圧空気3を、気温20℃無風状態の建物内においてそのオリフィス2の孔径が1.0mmの噴散具32を用い、シロキサン及びシラノール塩多分子量溶液1を2.4ml/秒の割合で加熱加圧空気3と混合のうえ噴散させ、発泡倍率が略30倍、発泡粒径6.0mmに加熱発泡させたうえオリフィス2より1.5mの距離からベニヤ板よりなる被着体5Aの表面に吹付け、厚さ20mmの無機質発泡層5を融着塗着させた場合の融着塗着施工性は、1m当り略4分程度で融着塗着形成ができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】 混合原理の説明図である。
【図2】 本発明のレイアウト図である。
【図3】 噴散具の説明図である。
【図4】 噴散コーンの説明図である。
【符号の説明】
【0027】
1 シロキサン及びシラノール塩多分子量溶液
2 オリフィス
3 加熱加圧空気
3A 加熱送風管
30 加熱送風機
31 加熱移送管
32 噴散具
32A 連結部
32B 把持部
32C 調節弁
32D ノブ
32E ホッパー
32F 供給管
4 発泡粒
5 無機質発泡層
5A 被着体
6 噴散保持コーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シロキサン及びシラノール塩からなり、固形分が20乃至35重量%、水分が65乃至80重量%で分子量が4,000乃至8,000のシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液を、少なくとも300℃以上に加熱され且加圧された加熱加圧空気と混合したうえ所要孔径のオリフィスより噴散させて所要粒径に加熱発泡させ、且その加熱融着性により被着面に融着塗着させ、以って所要の厚さに無機質発泡層を形成させることを特徴とする無機質発泡層の塗着形成方法。
【請求項2】
オリフィスより噴散されるシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液を、その噴散角より広角に形成された噴散保護コーン内に噴散させ、十分な加熱発泡と加熱融着性を保持せしめて強固な融着塗着と且高い施工性で融着塗着をなす、請求項1記載の無機質発泡層の塗着形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−231311(P2006−231311A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−87048(P2005−87048)
【出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(504384516)
【出願人】(505019585)株式会社安藤商店 (5)
【Fターム(参考)】