無機/有機多孔質膜を有する電池
Liイオンのような電気化学セルであって、(a)正電極、(b)負電極、(c)正電極と負電極との間に挿入された多孔質の無機/有機複合体層、および(d)リチウム塩と非水系溶媒とを有する。複合体層は、無機ナノ粒子とバインダを含みナノ複合体セパレータ(NCS)を形成する。複合体層に加えて、電気化学セルは多孔質セパレータを含む。
【発明の詳細な説明】
【相互参照】
【0001】
本願は、2007年9月28日に出願された米国仮出願60/995,777についての通常出願である。
【技術分野】
【0002】
本発明は、一般に電気化学セルに関する。特に、本発明は、電気化学電池セルのための電池セルおよびセパレータの構造に関する。
【背景技術】
【0003】
セパレータ膜は電池の重要な構成要素である。それらの膜は電池のアノードとカソードの接触を防止するとともに、そこを電解質が通るようにする。加えて、サイクル寿命や電力のような電池性能特性は、セパレータの選択により大きく影響される。安全性もまたセパレータの特性に関連し、所定のセパレータは、アノードでのLi金属めっきの発生とデンドライトの発生さえも低減するとして知られている。
【0004】
電池セルのセパレータ膜は、幾つかの例では、多孔質のポリマ材料のボディから形成される。他の例では、セパレータ膜は、繊維状または粒子状の材料から形成され、そのような材料は、グラスファイバ、アスベストのようなミネラルファイバ、セラミックス、合成高分子繊維、セルロースのような天然高分子繊維を含む。
【0005】
現在使用されているセパレータ膜には、多くの問題がある。そのような膜材料はしばしば高価であり、一般的な電池システムは比較的多量の膜を含むという事実から、膜のコストは電池全体のコストの重要な構成要素である。
【0006】
低コストの電池セパレータ膜材料は、デンドライトブリッジの防止に効果的でなく、このため、比較的厚く形成しなければならない。しかしながら、この膜厚は、電池の内部抵抗を増加させ、これによりその効率を低下させ、また電池サイズを大きくする。
【0007】
このように、効果的で、低コストで、安全で、かつ使用が容易なセパレータの構成が必要である。近年、リチウムイオンセル用のセパレータは高価で、平均で約$2.00/m2であり、これは高エネルギセルのコストの約11%であり、高出力セルのコストの約23%である。リチウムイオン電池のコストを更に削減するために、安価なセパレータの開発が必要とされる。
【発明の概要】
【0008】
電気化学セルのための、有機/無機複合体膜と多孔質または無孔質(non-porous)のセパレータとの組み合わせについて記載する。この膜は、無機粒子と高分子バインダとの複合体である。複合体材料はコストが安く、高性能のセパレータ膜構造を提供するように機能し、電極に対して良好な接着性を有し、安全性を改良し、高温において高い寸法安定性を有する。電極/膜アセンブリは、層の間で良好な接着性を示し、巻いたり、曲げたり、屈曲させたり、別なやり方で変形させた場合でさえも、その基板(電流コレクタ)から剥離しない。加えて、多孔質のセパレータは、複合体膜に隣接して配置され、セルアセンブリを助ける。
【0009】
1つの形態では、Liイオンのような電気化学セルは、正電極、負電極、正電極と負電極との間に挿入された多孔質の無機/有機複合体層、およびリチウム塩と非水溶媒を含む電解質を有する。複合体層は、無機ナノ粒子とバインダとを含み、ナノ複合体セパレータ(NCS)を形成する。複合体層に加えて、電気化学セルは、2つのNCS被覆電極の間の多孔質または無孔質のセパレータを含む。
【0010】
他の形態では、電極/セパレータアセンブリは、電気化学セル中で使用するために提供される。アセンブリは、電流コレクタ、および電極コレクタに接着された多孔質複合体を含む。電極は、少なくとも電気活性な粒子とバインダとを含む。アセンブリは、また、ポリママトリックス中に実質的に均一に分散してナノ細孔を形成する無機粒子を含む多孔質複合体層を含み、2つの層の界面における溶剤接着により、複合体層は電極層に固定される。この溶接はバインダとポリマとの混合を含む。多孔質または無孔質のセパレータは、NCS被覆電極の間に配置される。
【0011】
一の具体例では、複合体膜は、電気化学的に安定なポリママトリックス中の、電気化学的に安定で1μmより小さい粒子サイズを有する無機粒子と、少なくとも二峰性の孔分布を含み、第1のより小さいサイズの孔は層中に実質的に均一に分布し、1またはそれ以上のより大きいサイズの孔は層中に不規則に分布する。孔の大きさはナノスケールである。
【0012】
一の具体例では、第1のより小さな孔サイズは、約5〜100nmの範囲であり、より大きい孔サイズは、約100〜500nmの範囲である。粒子は実質的に単分散で、約10〜50nmの粒子サイズを有する。複合体層は、25%より大きい孔体積率(pore volume fraction)を有する。
【0013】
一の具体例では、バインダは、無機/有機複合体の組成の5%と60%の間である。複合体層は、無機粒子とポリマバインダとを有し、その重量比は、無機粒子:ポリマが約95:5から約40:60でも良い。
【0014】
一の具体例では、膜の無機材料は、シリカ、アルミナ、酸化チタン、天然および合成のゼオライト、および他の電気化学的に安定な適当な粒子サイズの無機粒子からなる組から選択される。
【0015】
一の具体例では、多孔質セパレータは、直径が50〜100Åより大きい孔を有する細孔ポリオレフィンセパレータであり、ポリプロピレン、ポリエチレン、またはそれらの積層体の少なくとも1つからなる膜を含む。一の具体例では、セパレータはポリエチレン酸化物を含む。
【0016】
一の具体例では、多孔質セパレータは、摩擦、結合、および接着の少なくとも1つで結合させた不織布材料からなる。多孔質セパレータは、約9μmから15μmの範囲の厚さを有し、複合体膜は、約2μmから16μmの範囲の厚さを有する。
【0017】
他の形態では、セパレータ構造は電気化学セルのために提供され、一方または双方の電極の上に配置された複合体層を含む。複合体層は、ポリママトリックス中に、約10nmから約200nmの範囲の粒子サイズを有するセラミック粒子を含む。粒子は、一般には1ミクロン直径より小さく、典型的には15〜30nmである。幾つかの具体例では、層は、少なくとも二峰性の孔分布を有し、第1のより小さい孔は層中に実質的に均一に分布し、1またはそれ以上のより大きなサイズの孔は、層中に不規則に分布し、双方の孔の大きさはナノスケールである。多孔質セパレータは、複合体層と電極との間に配置される。
【0018】
他の形態では、電気化学セルのための電極/セパレータアセンブリを準備する方法が提供される。この方法は、少なくとも電気活性な粒子とバインダとを含む多孔質複合体電極層を提供する工程と、被覆溶剤を提供する工程とを含む。被覆溶剤は、ポリマ、ポリマのための溶剤系(solvent system)、および溶媒中に分散した無機粒子を含み、溶剤系は、電極層のバインダに対して少なくともいくらかの溶解度を有するように選択される。この方法は更に、被覆溶媒の層を用いて、電極層の表面を被覆する工程を含む。被覆溶媒は、電極層の厚さの一部分を突き抜けて、バインダの一部を溶かす。溶媒は被覆溶媒層から除去され、多孔質複合体層を堆積させる。複合体層は、ポリマ中に実質的に均一に分布する無機粒子を含み、少なくとも25%の孔体積率を有する。溶媒接着が、多孔質電極層と多孔質複合体層との間の界面に形成される。多孔質または無孔質のセパレータが、多孔質複合体層に隣接して提供される。
【0019】
この方法の形態は、被覆溶媒中の無機粒子とポリマの重量比が、約65:35から約45:55になるようにする。被覆溶媒は、電極層の膜厚の90%までを突き抜け、スプレーコーティング、ドクターブレーディング(doctor blading)、スロットダイコーティング、グラビアコーティング、インクジェットプリンティング、スピンコーティング、ディップコーティングおよびスクリーンプリンティングからなる組から選択される技術、または他の技術を用いて行われる。更なる発明の形態では、被覆層は、それぞれのスプレーコーティング工程の間に乾燥させても良い。溶媒の除去は、溶媒の蒸発工程、および/またはポリマに対して溶媒でない材料を用いた溶媒に引き出し工程を含んでも良い。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本発明は、以下に示す図を参照して述べられるが、これは表示のみを目的として表され、本発明の限定を意図するものでは無い。
【0021】
【図1】本発明の一またはそれ以上の具体例にかかる多孔質セパレータを含む電気化学セルの模式図である。
【図2A】本発明の一またはそれ以上の具体例にかかる多孔質セパレータを含む電気化学セルの模式図である。
【図2B】本発明の一またはそれ以上の具体例にかかる多孔質セパレータを含む電気化学セルの模式図である。
【図3】本発明の一またはそれ以上の具体例にかかる積層電気化学セルの断面図である。
【図4】セパレータ膜を準備するために、1またはそれ以上の具体例で使用されたスプレーコーティングプロセスのフローダイアグラムである。
【図5】本発明の形態にかかるセパレータ構造の顕微鏡写真を含む。
【図6】本発明の形態にかかるテストセルと比較セルを表す温度チャートである。
【図7】本発明の形態にかかるテストセルと比較セルの、放電容量(mAh)と電力とのプロットである。
【図8】本発明の形態にかかるテストセルと比較セルの、放電(mWh)と電力とのプロットである。
【図9】本発明の形態にかかるテストセルと比較セルの、放電容量(mAh)とサイクルとのプロットである。
【図10】本発明の形態にかかるテストセルと比較セルの、放電容量(mAh)とサイクルとのプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
無機/有機多孔質膜は、電極上に被覆され、Liイオン電池のセパレータとして使用することができる。それらは、大きくセルのコストを低減し、セルの安全性を増加する可能性ゆえに望まれる。無機フィラとポリマバインダの複合体であるナノ複合体セパレータ(NCS)は、それぞれ2007年8月21日と2008年8月21日に、「電気化学セル用のセパレータおよびその製造方法」の名称で出願された米国特許出願60/957,101および12/196,203に記載され、これらは参照することによりここに取り込まれる。NCSは、多孔質膜の置き換えとしての使用が期待され、本質的にクラックの無い膜と被覆されたエッジによるリーク電流の低減の必要とされる。十分な進歩が行われる(こられは分割特許出願の主題である)と共に、一方または双方の電極上で、代わりの溶媒がNCSコーティング技術を置き換え、更に多孔質セパレータも使用する。被覆された電極、および多孔質または無孔質のセパレータは、電気化学セルでの使用を意図する。例示の多孔質セパレータは、マイクロ細孔(microporous)のポリエチレン膜またはポリプロピレン膜を含む。セパレータは、多孔質の代わりに稠密でも良く、例えばポリエチレン酸化物を含んでも良い。NCS被覆は、アノードとカソードの双方で使用できる。
【0023】
図1を参照すると、図1はカソード活性層11、カソード基板または電流コレクタ12、アノード活性層13、およびアノード基板または電流コレクタ14を含む例示の電気化学セルを示す。カソードおよび/またはアノードの活性層は、一般には、電極活性材料、導電性添加剤、およびポリマバインダを含む多孔質の微粒子複合体を含む。NCS層15と多孔質セパレータ17は、電極層を分離する。NCS層は、図1に示すように、1つの電極のみの上に形成されても良く、これはアノードまたはカソードのいずれでも良い。代わりに、NCS層15および15’が、図2Aに示すように、双方の電極に形成されても良い。液体電解質は、NCS層15および15’および多孔質セパレータ17に浸透する。電流コレクタは、それぞれの電極層に接触し、電気化学セルの充電および放電サイクル中に電流を流す。セルは、積層され、または互いに巻かれて、角柱または螺旋に巻かれた電池を形成する。そのような例では、電極は、電気活性層により両側が被覆されても良い。図2Bは、カソード11のみの上のNCS層15’を示す。
【0024】
NCSのポリマバインダは、特定の電池システムの化学的性質と互換性のあるポリマから選択される。ポリマは、電気的に絶縁され、電解質溶媒中で低い溶解度を有し、セル中で化学的および電気化学的に安定であるべきである。他の電池システムと同様に、リチウムおよびリチウムイオン電池システム中で有用性を有するポリマの1つの組は、フッ化ポリマや、スチレンブタジエンや他のスチレン系ポリマのようなラテックスポリマを含む。ポリフッ化ビニリデンポリマ成分は、所定の有用性を有するポリマの1つの組である。公知で技術的に入手可能な多くのそのような材料があり、そのような材料は、混合物や共重合体と同様に、本質的に均質なPVDFを含む、一の特定の材料は、商標クレハ7208(Kureha 7208)で販売されているPVDF材料である。他の均等および類似の材料も、同様に、用いることができる。
【0025】
NCSの無機成分は、膜がその中に組み込まれる特定の電池システムや化学特性と互換性のある多くの天然および人工の材料から選択しても良い。2またはそれ以上の好適な無機成分の混合物も予定される。無機成分は、セラミック材料でも良い。セラミック材料の1つの特定の組はシリカを含み、シリカの特定の形態であるヒュームドシリカ(fumed silica)を用いても良い。ヒュームドシリカは、高い表面積で、一般に高純度のシリカ材料である。ヒュームドシリカは一般に親水性であり、殆どの電解質溶媒や多くのイオン化したポリマにより容易に濡れる。一またはそれ以上の具体例で使用される材料は、約200m2/gの表面積を有する。粒子は非常に小さく、一般には直径が200nmより小さく、より典型的には約10〜20nmであり、例えば14nmである。一またはそれ以上の具体例では、セラミック材料は、狭い粒子サイズ分布と実質的に球形状を有するヒュームドシリカである。ヒュームドシリカは、注意深く制御されたシリコンテトラクロライド(SiCl4)の反応で準備され、高度に制御され狭い粒子サイズ分布となる。一の具体例では、粒子サイズが約14nmのヒュームドシリカが用いられる。
【0026】
例えばかご型シルセスキオキサン(POSS)のような他のシリコン化合物が、膜のセラミック成分として用いられても良く、この説明中では、これはセラミック材料と考えられる。他のセラミック材料は、天然および人工のゼオライト、アルミナ等を含む。セラミック材料は、均一または混ざった大きさおよび形状を有する、単体または組み合わせで使用しても良い。
【0027】
ポリマおよびセラミックの比率は、比較的広い範囲で変化するが、しかしながら、幾つかの具体例では、セラミック材料は、結果のセパレータの主要な成分である。幾つかの例では、セラミックのポリマに対する比は、重量ベースで、95:5〜40:60である。一の特定の例では、膜は、重量ベースで、約65%のヒュームドシリカと35%のPVDFを含む。セラミック材料とポリマは、溶媒系のなかで組み合わされ、溶解したポリマ/溶媒系中に均一に分布したセラミック粒子を形成する。被覆溶媒中に高度に均一に分布したポリマとセラミックは、結果の膜中で高度に均一に分布したポリマとセラミック材料を提供する。
【0028】
NCS層15は、無機ナノ粒子とバインダを含む。NCS層は、電気化学的に安定なポリママトリックス中に、1μmより小さい粒子サイズを有し、二峰性の孔分布を有する、電気化学的に安定な無機粒子を含み、第1のより小さいサイズの孔は層中で実質的に均一に分布し、一またはそれ以上のより大きいサイズの孔は層中に不規則に分布しても良い。孔の大きさはナノスケールである。一の具体例では、第1のより小さい孔サイズは、約5〜100nmの範囲であり、より大きい孔サイズは約100〜500nmの範囲である。ある具体例では、粒子は実質的に単分散であり、約10〜50nmの範囲の粒子サイズを有する。複合体層は、25%より大きい孔体積率を有しても良い。NCS層のバインダは、一の具体例では、無機/有機複合体の組成の5%と60%の間である。複合体層は、無機粒子とポリマバインダを、重量比で、約95:5から約40:60の無機粒子:ポリマで有する。
【0029】
一の具体例では、ヒュームドシリカは、ポリマバインダと共に、2つの溶媒の混合中に分散する。使用されたヒュームドシリカは、一般に表面積が約200m2/gの親水性シリカである。一般に、バインダは、クレハ7208のようなポリフッ化ビニリデン(PVdF)である。セパレータ中の、シリカのバインダに対する正確な比率は、約50:50から95:5の範囲である。溶媒系はNMPとの二成分の混合である。共溶媒と固体の導入の選択は、使用される被覆技術のタイプに依存して変わる。例示の方法では、コンマおよびダイスロットコーティングでは、プロピルアセテートと5〜10%の固溶体が用いら、HVLPまたは超音波スプレーコーティングでは、アセトンと約2〜4%の固溶体が用いられる。
【0030】
多孔質のセパレータ17は、成形の、織物の、不織布の、マイクロ細孔の、接着された、紙、または積層として一般に分類されるセパレータのファミリーのいずれかから形成される。本発明にかかるセパレータ17として働くそれらの材料は、電解質に対して濡れやすいことに加え、電気化学的に絶縁であり、最小限のイオン抵抗性を有するべきである。セパレータ17は、物理的および機械的特性において均一であり、セル環境中で化学的および電気化学的に安定であることに加え、機械的および寸法の安定性を提供すべきである。
【0031】
例示的なセパレータは、ポリプロピレン、ポリエチレン、またはポリプロピレンとポリエチレンとの積層の膜中に提供された直径が50〜100Åより大きい孔を有する細孔ポリオレフィンセパレータである。不織布セパレータは、例えば、シートやマット中に配置された繊維からなり、摩擦、結合、および接着の少なくとも1つで接合された織物製品を含む。
【0032】
例示の具体例では、マイクロ細孔または不織布膜セパレータ17は、9〜15μmの範囲の膜厚を有する。サイズに対する容量を最大にするため、この膜厚は有利である。9〜15μmの範囲の膜厚のマイクロ細孔または不織布膜セパレータ17の使用は、伝統的には、Liイオン電池で必要とされる機械的な強度特性を有するとは考えられなかった。しかしながら、本発明の形態は、以前はLiイオン電池に応用できると信じられなかったような膜厚を有する薄い多孔質セパレータ17を用いる。NCS15と、記載されたセパレータ17との組み合わせは、完全にクラックの無いNCSを提供する必要性を減らし、これはNCSが使用された場合、そうでなくてもそれ自身により望まれる。
【0033】
他の例示的な具体例では、ナノ細孔膜セパレータ17は、9〜15μmの範囲の膜厚を有する。ナノ細孔のポリエチレン酸化物、ポリフッ化ビニリデン、置換ポリフォスファゼン、または同様のイオンを含む導電性ポリマ膜の使用もまた、伝統的に、Liイオン電池で必要とされる機械的強度特性を有するとは考えられなかった。しかしながら、本発明の形態は、NCS層を有する薄いナノ細孔セパレータが使用される。NCS15と、記載されたセパレータ17との組み合わせは、完全にクラックの無いNCSを提供する必要性を減らし、これはNCSが使用された場合、そうでなくてもそれ自身により望まれる。
【0034】
図1、2Aおよび2Bに示すように、NCS層は、アノード、カソードのいずれか、または双方の上形成される。本発明の形態では、電気化学セルまたは電池の大きさの不都合な増加無しに、機械的強度特性を提供する。これは、所定の膜厚範囲のNCS層15と多孔質または無孔質のセパレータ17とを組み合わせることで達成できる。NCS層の膜厚範囲は、約2から16μmである、同様に、もし追加のNCS層15’が形成された場合は、組み合わされた全てのNCS層は、約2から16μmである。多孔質または無孔質のセパレータ17は、約9から15μmの範囲の膜厚を有する。
【0035】
上述のように、NCS層15は、多孔質セパレータ17と共に、カソードとアノードの一方だけに形成されても良い。もし、この構成が適用された場合は、NCS層15と多孔質セパレータ17との組み合わされた膜厚は、約11〜25μmの範囲であり、約25μmより薄くなるべきではない。代わりに、NCS層15および15’の双方を用いても良い。図2Aに示すように、一方はカソード上で、他方は対向するアノード上で、その間に多孔質セパレータ17を有する。この構成では、NCS層15および15’の組み合わされた膜厚は、多孔質または無孔質のセパレータ17に加えて11から25μmの範囲である。
【0036】
本発明の具体例は、NCS15と、生産性と経済的利益を提供する特に選択された多孔質セパレータ17との相乗的な組み合わせを提供する。セラミックを有するセパレータの従来の使用は、クラックに対して保護し、適切なシールを提供するために高レベルの注意が必要とされた。これは、高価な材料と、厳格な品質制御手続の使用を必要とし、スクラップを増加させ、収量を低下させた。本発明は、従来のセパレータ構成の厳格な品質制御の要求無しに、約25μmまでの膜厚で形成できる、安価なセパレータ17とNCS層15の使用を可能とする。本発明は、また、NCS15と多孔質セパレータ17とを組み合わすことで、デンドライトの刺し傷と短絡に対する、増加した保護を提供する。
【0037】
NCS15をセパレータ17と組み合わせることにより、単にNCSセパレータのみを有するセルに比較して、完全なクラック無しの膜に対する負担/要求が低減される。膜厚の増加とともにクラックの無い被覆の困難性になるため、セパレータ17の使用により要求される膜厚が低減されることで、コーティング技術の実行がより簡単になる。アノード/カソード界面での短絡も低減する。
【0038】
積層された電気化学セルを準備するために、電極で被覆された電流コレクタとセパレータ膜とが次に積層され、図3に示すような積層アセンブリ90を形成する。図3中、同一要素は同じように番号をつける。このように、両側にアノード層13を有する電流コレクタ14は、ここに記載されたように、その一方の上に配置されたNCS層15を有しても良い。その両側に上にカソード層11を有する電流コレクタ12は、また、ここで記載されたように配置された(セパレータアセンブリを形成する)NCS層15および15’と多孔質または無孔質のセパレータ17とを有しても良い。積層されたアセンブリは、多くの成分を用いて再度組み立てられても良い。積層体は、カソード/アノードアセンブリを含んでも良く、このアセンブリは、続いてアノード層と積層され、積層アセンブリを形成する。他の具体例では、アノード/セパレータアセンブリがカソード層と組み合わされ、積層アセンブリを形成する。更に他の具体例では、カソード/セパレータアセンブリとアノード/セパレータアセンブリとが用いられる。この場合、セパレータ膜厚は、アノードアセンブリとカソードアセンブリの双方からセパレータアセンブリを収容するように調整する。多くのカソードとアノードの層が、スタックに含まれても良い。
【0039】
NCS層に適用する被覆方法が、図4を参照しながら説明される。工程200では、溶媒、溶媒に溶けやすいまたは溶媒に混ざりやすいポリマ、および無機粒子を含む被覆溶媒が準備される。一またはそれ以上の具体例では、ポリマ、液体溶媒、および無機材料が、低い剪断の下で、材料が完全に濡れるおよび/または溶けるまで、最初の時間混合される。ポリマと無機物は、N−メチルピロリジノン(NMP)中で最初に混合され、高レベルの分散を達成しても良い。次に、第2の溶質が加えられ、この混合物は、続いて所望のレオロジが得られるまで高い剪断混合が行われる。所望のスラリは大きな凝集体を含まず、静止状態でポリマと無機材料の領域に直ぐには相分離せず、よく分散した状態のままである。特定のモードや動作理論により縛られることなく、溶媒レオロジは、全体の粒子の濃度とともに、粒子サイズの分布と凝集体の挙動の兆候を示す。更に複雑で非対称な形状と、より多くの数の粒子は、溶媒の粘度を増加させる傾向にある。そのようなスラリは、層の最終構造において役割を果たすだろう。
【0040】
被覆溶媒は、工程220に示すように、続いて電極材料の少なくとも1つの表面に被覆される。電極上を覆う層の膜厚は、塗布溶媒の組成と、電気化学セルで求められる最終膜厚に依存する。他の被覆技術は、混合されたセラミックと粒子に成分を含む組成を堆積するのが可能である限り、本発明の一またはそれ以上の具体例により用いられる。例示的な技術は、ドクターブレーディング、ロールコーティング、インクジェットプリンティング、スピンコーティング、グラビアコーティングおよびスクリーンプリンティング、ディップコーティング、または他のコーティング方法を含む。被覆工程は、一般には、複合体セパレータ層と隣接する電極層との間で溶剤接着が起きる条件下で行われる。
【0041】
一またはそれ以上の具体例では、被覆工程は、1またはそれ以上の塗布器の塗布溶剤を、その上に噴霧することで完成される。例示の方法では、セパレータ層は、約3から5の被覆工程が適用され、それぞれの被覆工程は、全セパレータ層の膜厚の1/3から1/5を提供する。上述のように、マルチパスの堆積は、電極の多孔質層への溶媒の突き抜けを減らし、剥離を減らすことができる。驚くべきことに、マルチパスでのセパレータ層の適用は、最終層中に形成される欠陥数を大きく低減する。欠陥は、1ミクロンより大きな直径を有する大きな孔として、または膜中のクラックとして定義される。堆積工程は、同様の膜厚に適用する必要は無い。このように、第1の被覆工程は、第1膜厚の層を堆積させ、第2工程は、第2の、膜厚の異なる層の堆積に使用することができる。しかしながら、記載されたNCS層15と多孔質または無孔質のセパレータ17との組み合わせは、そのような欠陥を補償することができる相互依存的な力学的特性を提供し、これにより、全ての起こりうる欠陥に、通常は対処するために必要な追加の工程が不要となり、より効果的な製造プロセスが可能となる。
【0042】
被覆工程に続いて、工程230は、被覆混合物から溶媒が除去され、電極上のポリマ/セラミック粒子の固体の多孔質ボディを残すことを示す。溶媒は、蒸発により除去され、この蒸発は、加熱および/または低圧の条件を使用して行われても良い。幾つかの例では、溶媒は、ポリマに対して非溶媒である引き出し溶媒を用いて引き出しても良い。一またはそれ以上の具体例では、それぞれのスプレーコーティング工程の後に溶媒が選択的に除去され、複数のスプレーコーティング工程が用いられた場合には、複数の溶媒除去工程が行われても良い。
【0043】
一またはそれ以上の具体例では、NCSのポリマは、熱可塑性で、ガラス遷移温度(Tg)を有し、融点(Tm)を有しても有さなくても良い。一またはそれ以上の具体例では、サポート上に層を被覆した後に、層を回復(cure)させることにより、層に対して、層中の応力を減らすために選択された処理が施される。ポリマは、ガラス遷移温度または溶融温度より上の処理で回復させ、その物理的特性を変化または拡大しても良い(工程240)。回復工程は、技術的に知られているように、加熱により行われても良い。乾燥工程および回復工程は、連続した工程して行っても、行わなくても良い。PVDFのような熱可塑性ポリマの場合、ホストポリマTmを越えて複合体を加熱し、続いて冷却することにより、回復工程が行われる。他の具体例では、層は、ポリマバインダのガラス遷移温度以上に加熱される。
【0044】
複数工程の被覆アプローチは、セパレータ膜中で大きなクラックを減らすと信じられる。特定のモードや動作理論に縛られることなく、第2の被覆工程は、最初の被覆中に形成された割れ目を埋めて、クラックの欠陥を治癒させる。多孔質または無孔質のセパレータ17は、NCS層15に隣接して配置される(工程242)。良く確立された巻き取り技術を用いて、多孔質セパレータは、被覆された電極と共に積層に巻かれる。多孔質のセパレータを有するセルに対しても、巻き上げに対する変更は必要とされない。セパレータ膜として無孔質セパレータが使用された場合、通常の巻き上げ手続が使用できる。
【0045】
そうでなくとも、NCS層15と多孔質または無孔質のセパレータ17との記載された組み合わせは、クラックに対してより大きな許容値を有し、一方で機械的および物理的に強固なセパレータアセンブリを提供できる。例えば、そうでなければNCS層15について許容できない所定のクラックが、記載された多孔質または無孔質のセパレータ17を含む組み合わせにより許容でき、これにより、従来技術の欠点が効果的に解決できる。
【0046】
例1.HVLPスプレーを用いた被覆
30:70のNMP:アセトン溶剤に3重量%の固体を入れた混合物が、最初にPVdF(クレハ)をヒュームドシリカと混合させ、続いてアセトンを加えて、通常のミキサを用いて更に混ぜて準備される。セパレータ前駆体スラリは、スプレー銃を用いた連続した経路で、アノードまたはカソードのいずれかに適用される。約20μmの膜厚が、3〜5回の被覆工程で達成される。例えば、セパレータとNCSの双方を使用するような、デュアルセパレータのアプローチでは、2つの経路を用いて、約10μmが必要とされる。一旦、所望の膜厚が達成されたら、電極は、80℃で1時間、真空乾燥され、続いて、大気圧で15分間、200℃で回復される。
【0047】
例2.コンマコーティングを用いた被覆
前駆体スラリは、5%〜10%の固体で、共溶媒の添加に先立って、PVdFとヒュームドシリカの同様の予備混合で準備され、続いて、膜は、下方からの輻射熱で、100℃で乾燥させ、付加的な対流は発生しない。
【0048】
被覆された電極は、リチウムイオンセルで試験され、良好に機能する。NCSセパレータ(20μm)のみが組み込まれた350mAhの角柱セルは、制限されたサイクル寿命と速度性能の双方の試験において、膜分離セルと同等に機能する。NCS分離セルは、手で被覆したシステム(hand-coated system)に対して、延長されたサイクル寿命、高い電力キャパシティ、および優れた再現性を示す。
【0049】
例示的なポーチセル(pouch cell)として設計されたデュアルセパレータセルは、
5μNCS被覆されたグラファイトアノード/セルガード2320/M1カソード、
5μNCS被覆されたM1カソード/セルガード2320/グラファイトアノード、
2μNCS被覆されたアノードとセルガード2320を有する3μNCS、
セルガードM824(12μ膜厚)を有する10μNCS被覆されたアノード、
セルガードM825(16μ膜厚)を有する9μNCS被覆されたカソード、
被覆されないグラファイトアノード/セルガード2320/被覆されないM1カソード(ベースライン)、
を含む。
【0050】
NCS15とセパレータ17との組み合わせは、互いに他方の物理的挙動を補完するNCS15とセパレータ17により、安全レベルが増加する。図5は、100%充電状態(SOC)に充電し、続いて鈍いツメ(blunt nail)で貫通し、大量の内部の短絡を起こさせたセル構造を示す。全体のセルは溶融し、巨大な塊に変わっている。示された試料は、セルから引き出された外部の電極の巻きから取られた。左手の写真は、ツメで貫通され、180℃を越える温度に晒された、本発明にかかる角柱NCSマイクロ構造の走査電子顕微鏡(SEM)の像を示す。示されたマイクロ構造の流れ/変化の欠如は、NCS被覆と多孔質セパレータ構造によりもたらされる増加した安全性を示す。NCS中でのセラミックの使用は、そのような保護無しでは溶けるポリオレフィン多孔質セパレータまたは無孔質ポリエチレン酸化物または他の導電性ポリマセパレータを保護するための追加の層を形成する。
【0051】
図6は、ベースライン構造に対して異なるセル構造をプロットしたグラフである。「アノードセミ」構造は、アノード上に配置されたNCS層15を含み、一方多孔質セパレータ17はNCS15に隣接して追加的に使用される。この構造の例示的な具体例は、図1に示される。「カソードセミ」構造は、図2Bに示すように、カソード11の上に配置されたNCS層15’を含み、多孔質セパレータ17はNCS層15’に隣接する。「ボスセミ」構造は、図2Aに示すように、多孔質セパレータ17の両側の上で、NCS層15および15’を用いる。「ベースライン」構造は、NCS層を使用せず、代わりにアノードとカソードとの間に標準的な多孔質セパレータのみを提供する。
【0052】
例えば、アノードセミ、カソードセミ、ボスセミ、およびベースラインのようなそれぞれの異なる構造において、5つのセル1〜5に対して、100%SOCにおいて鈍いツメの突き抜け試験が行われ、セルの最高表面温度が記録された。それぞれのグループにおいて、セル1は左端のデータの柱であり、セル5は右端の柱である。「アノードセミ」、「カソードセミ」および「ボスセミ」の構造は、標準の「ベースライン」セルと比較した場合、より低い平均最高表面温度を示し、これにより、本発明のNCSと多孔質セパレータとにより安全性が向上することが示される。
【0053】
図7は、「アノードセミ」、「カソードセミ」および「ボスセミ」の構造を、ベースライン1およびベースライン2のセルに対してプロットしたグラフである。左側のグラフは、20μmの多孔質セパレータとNCS被覆を用いた場合に、セルの全体の電力が低下することを示す。右側の図は、活性面積で標準化した場合に、電力は、ベースラインとセミNCSのセルの双方において同じであることを示す。このデータは、更に、非常に薄いセパレータ(例えば、20μmより薄いポリオレフィン)が用いられた場合に、NCS層を用いることによる肯定的で有益な形態は、エネルギ密度に関して更に改良されることを示す。
【0054】
図8は、高パルス電力特性試験(HPPC)の結果を示し、これは自動車産業で使用される電力試験であり、20μ多孔質セパレータを有する400mAhの角柱10μNCSセルが用いられる。NCSデータは、グラフの上側の線で表される。NCSセルは、ベースラインのポリオレフィンセパレータセルより、高い電力放電においてより多くのエネルギを保持し、これは、10μNCS層により形成された、全セパレータ膜厚の追加の10μmは、電力キャパシティを減少させないことを示す。もし、より薄い多孔質セパレータが使用された場合、エネルギ/体積は、この例より高くなるであろう。この試験では、NCSはカソード上に配置され、10μmのセパレータ膜厚を有し、上述の65:35の設計が用いられた。
【0055】
図9は、室温高電力サイクル試験(1.5C/−10C)のデータをプロットしたグラフであり、20μm膜厚のセパレータを有する65:35設計のセミNCSまたは「カソードセミ」構造を用い、NCS層は有さないが20μ膜厚のセパレータは有するベースライン構造と比較した。データは、セミNCSとベースラインの双方について2つのセルの平均を表す。セミNCSデータは、グラフ上の低い方の線により表される。セルは、+1.5C/−10Cのサイクルが行なわれた。平均では、セミNCSセルは、例えば劣化する幾つかのスロープのように、ベースラインセルより速くは、最初のキャパシティの80%より低く下がらなかった。同様に、DC抵抗は、双方のセルで同等であることが見出された。これは、サイクル中に高い特性を維持する本発明の能力を示すとともに、安全性を向上させることを示す。
【0056】
図10は、室温低電力サイクル試験(1.5C/−2.5C)のデータをプロットしたグラフであり、10μの65:35のNCS設計と、20μの多孔質セパレータを有するセミNCS構造を用い、NCS層を有さないベースライン構造と比較した。データは、セミNCSとベースラインの双方について2つのセルの平均を表す。セミNCSデータは、グラフ上のわずかに低い方の線により表される。セルは、+1.5C/−2.5Cのサイクルが行なわれた。平均では、セミNCSセルは、ベースラインセルより速く減衰したが、500サイクル後において、双方のセルは最初のキャパシティの80%より上であった。
【0057】
上記記載では、本発明の例示的な具体例について示す。本発明の他の変形や変化は、ここで表される示唆から当業者にとって容易に明らかになるであろう。上記記載は、本発明の実施について、例示を意図し限定するものではない。本発明の範囲を限定するのは、全ての均等を含む、以下の請求の範囲である。
【相互参照】
【0001】
本願は、2007年9月28日に出願された米国仮出願60/995,777についての通常出願である。
【技術分野】
【0002】
本発明は、一般に電気化学セルに関する。特に、本発明は、電気化学電池セルのための電池セルおよびセパレータの構造に関する。
【背景技術】
【0003】
セパレータ膜は電池の重要な構成要素である。それらの膜は電池のアノードとカソードの接触を防止するとともに、そこを電解質が通るようにする。加えて、サイクル寿命や電力のような電池性能特性は、セパレータの選択により大きく影響される。安全性もまたセパレータの特性に関連し、所定のセパレータは、アノードでのLi金属めっきの発生とデンドライトの発生さえも低減するとして知られている。
【0004】
電池セルのセパレータ膜は、幾つかの例では、多孔質のポリマ材料のボディから形成される。他の例では、セパレータ膜は、繊維状または粒子状の材料から形成され、そのような材料は、グラスファイバ、アスベストのようなミネラルファイバ、セラミックス、合成高分子繊維、セルロースのような天然高分子繊維を含む。
【0005】
現在使用されているセパレータ膜には、多くの問題がある。そのような膜材料はしばしば高価であり、一般的な電池システムは比較的多量の膜を含むという事実から、膜のコストは電池全体のコストの重要な構成要素である。
【0006】
低コストの電池セパレータ膜材料は、デンドライトブリッジの防止に効果的でなく、このため、比較的厚く形成しなければならない。しかしながら、この膜厚は、電池の内部抵抗を増加させ、これによりその効率を低下させ、また電池サイズを大きくする。
【0007】
このように、効果的で、低コストで、安全で、かつ使用が容易なセパレータの構成が必要である。近年、リチウムイオンセル用のセパレータは高価で、平均で約$2.00/m2であり、これは高エネルギセルのコストの約11%であり、高出力セルのコストの約23%である。リチウムイオン電池のコストを更に削減するために、安価なセパレータの開発が必要とされる。
【発明の概要】
【0008】
電気化学セルのための、有機/無機複合体膜と多孔質または無孔質(non-porous)のセパレータとの組み合わせについて記載する。この膜は、無機粒子と高分子バインダとの複合体である。複合体材料はコストが安く、高性能のセパレータ膜構造を提供するように機能し、電極に対して良好な接着性を有し、安全性を改良し、高温において高い寸法安定性を有する。電極/膜アセンブリは、層の間で良好な接着性を示し、巻いたり、曲げたり、屈曲させたり、別なやり方で変形させた場合でさえも、その基板(電流コレクタ)から剥離しない。加えて、多孔質のセパレータは、複合体膜に隣接して配置され、セルアセンブリを助ける。
【0009】
1つの形態では、Liイオンのような電気化学セルは、正電極、負電極、正電極と負電極との間に挿入された多孔質の無機/有機複合体層、およびリチウム塩と非水溶媒を含む電解質を有する。複合体層は、無機ナノ粒子とバインダとを含み、ナノ複合体セパレータ(NCS)を形成する。複合体層に加えて、電気化学セルは、2つのNCS被覆電極の間の多孔質または無孔質のセパレータを含む。
【0010】
他の形態では、電極/セパレータアセンブリは、電気化学セル中で使用するために提供される。アセンブリは、電流コレクタ、および電極コレクタに接着された多孔質複合体を含む。電極は、少なくとも電気活性な粒子とバインダとを含む。アセンブリは、また、ポリママトリックス中に実質的に均一に分散してナノ細孔を形成する無機粒子を含む多孔質複合体層を含み、2つの層の界面における溶剤接着により、複合体層は電極層に固定される。この溶接はバインダとポリマとの混合を含む。多孔質または無孔質のセパレータは、NCS被覆電極の間に配置される。
【0011】
一の具体例では、複合体膜は、電気化学的に安定なポリママトリックス中の、電気化学的に安定で1μmより小さい粒子サイズを有する無機粒子と、少なくとも二峰性の孔分布を含み、第1のより小さいサイズの孔は層中に実質的に均一に分布し、1またはそれ以上のより大きいサイズの孔は層中に不規則に分布する。孔の大きさはナノスケールである。
【0012】
一の具体例では、第1のより小さな孔サイズは、約5〜100nmの範囲であり、より大きい孔サイズは、約100〜500nmの範囲である。粒子は実質的に単分散で、約10〜50nmの粒子サイズを有する。複合体層は、25%より大きい孔体積率(pore volume fraction)を有する。
【0013】
一の具体例では、バインダは、無機/有機複合体の組成の5%と60%の間である。複合体層は、無機粒子とポリマバインダとを有し、その重量比は、無機粒子:ポリマが約95:5から約40:60でも良い。
【0014】
一の具体例では、膜の無機材料は、シリカ、アルミナ、酸化チタン、天然および合成のゼオライト、および他の電気化学的に安定な適当な粒子サイズの無機粒子からなる組から選択される。
【0015】
一の具体例では、多孔質セパレータは、直径が50〜100Åより大きい孔を有する細孔ポリオレフィンセパレータであり、ポリプロピレン、ポリエチレン、またはそれらの積層体の少なくとも1つからなる膜を含む。一の具体例では、セパレータはポリエチレン酸化物を含む。
【0016】
一の具体例では、多孔質セパレータは、摩擦、結合、および接着の少なくとも1つで結合させた不織布材料からなる。多孔質セパレータは、約9μmから15μmの範囲の厚さを有し、複合体膜は、約2μmから16μmの範囲の厚さを有する。
【0017】
他の形態では、セパレータ構造は電気化学セルのために提供され、一方または双方の電極の上に配置された複合体層を含む。複合体層は、ポリママトリックス中に、約10nmから約200nmの範囲の粒子サイズを有するセラミック粒子を含む。粒子は、一般には1ミクロン直径より小さく、典型的には15〜30nmである。幾つかの具体例では、層は、少なくとも二峰性の孔分布を有し、第1のより小さい孔は層中に実質的に均一に分布し、1またはそれ以上のより大きなサイズの孔は、層中に不規則に分布し、双方の孔の大きさはナノスケールである。多孔質セパレータは、複合体層と電極との間に配置される。
【0018】
他の形態では、電気化学セルのための電極/セパレータアセンブリを準備する方法が提供される。この方法は、少なくとも電気活性な粒子とバインダとを含む多孔質複合体電極層を提供する工程と、被覆溶剤を提供する工程とを含む。被覆溶剤は、ポリマ、ポリマのための溶剤系(solvent system)、および溶媒中に分散した無機粒子を含み、溶剤系は、電極層のバインダに対して少なくともいくらかの溶解度を有するように選択される。この方法は更に、被覆溶媒の層を用いて、電極層の表面を被覆する工程を含む。被覆溶媒は、電極層の厚さの一部分を突き抜けて、バインダの一部を溶かす。溶媒は被覆溶媒層から除去され、多孔質複合体層を堆積させる。複合体層は、ポリマ中に実質的に均一に分布する無機粒子を含み、少なくとも25%の孔体積率を有する。溶媒接着が、多孔質電極層と多孔質複合体層との間の界面に形成される。多孔質または無孔質のセパレータが、多孔質複合体層に隣接して提供される。
【0019】
この方法の形態は、被覆溶媒中の無機粒子とポリマの重量比が、約65:35から約45:55になるようにする。被覆溶媒は、電極層の膜厚の90%までを突き抜け、スプレーコーティング、ドクターブレーディング(doctor blading)、スロットダイコーティング、グラビアコーティング、インクジェットプリンティング、スピンコーティング、ディップコーティングおよびスクリーンプリンティングからなる組から選択される技術、または他の技術を用いて行われる。更なる発明の形態では、被覆層は、それぞれのスプレーコーティング工程の間に乾燥させても良い。溶媒の除去は、溶媒の蒸発工程、および/またはポリマに対して溶媒でない材料を用いた溶媒に引き出し工程を含んでも良い。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本発明は、以下に示す図を参照して述べられるが、これは表示のみを目的として表され、本発明の限定を意図するものでは無い。
【0021】
【図1】本発明の一またはそれ以上の具体例にかかる多孔質セパレータを含む電気化学セルの模式図である。
【図2A】本発明の一またはそれ以上の具体例にかかる多孔質セパレータを含む電気化学セルの模式図である。
【図2B】本発明の一またはそれ以上の具体例にかかる多孔質セパレータを含む電気化学セルの模式図である。
【図3】本発明の一またはそれ以上の具体例にかかる積層電気化学セルの断面図である。
【図4】セパレータ膜を準備するために、1またはそれ以上の具体例で使用されたスプレーコーティングプロセスのフローダイアグラムである。
【図5】本発明の形態にかかるセパレータ構造の顕微鏡写真を含む。
【図6】本発明の形態にかかるテストセルと比較セルを表す温度チャートである。
【図7】本発明の形態にかかるテストセルと比較セルの、放電容量(mAh)と電力とのプロットである。
【図8】本発明の形態にかかるテストセルと比較セルの、放電(mWh)と電力とのプロットである。
【図9】本発明の形態にかかるテストセルと比較セルの、放電容量(mAh)とサイクルとのプロットである。
【図10】本発明の形態にかかるテストセルと比較セルの、放電容量(mAh)とサイクルとのプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
無機/有機多孔質膜は、電極上に被覆され、Liイオン電池のセパレータとして使用することができる。それらは、大きくセルのコストを低減し、セルの安全性を増加する可能性ゆえに望まれる。無機フィラとポリマバインダの複合体であるナノ複合体セパレータ(NCS)は、それぞれ2007年8月21日と2008年8月21日に、「電気化学セル用のセパレータおよびその製造方法」の名称で出願された米国特許出願60/957,101および12/196,203に記載され、これらは参照することによりここに取り込まれる。NCSは、多孔質膜の置き換えとしての使用が期待され、本質的にクラックの無い膜と被覆されたエッジによるリーク電流の低減の必要とされる。十分な進歩が行われる(こられは分割特許出願の主題である)と共に、一方または双方の電極上で、代わりの溶媒がNCSコーティング技術を置き換え、更に多孔質セパレータも使用する。被覆された電極、および多孔質または無孔質のセパレータは、電気化学セルでの使用を意図する。例示の多孔質セパレータは、マイクロ細孔(microporous)のポリエチレン膜またはポリプロピレン膜を含む。セパレータは、多孔質の代わりに稠密でも良く、例えばポリエチレン酸化物を含んでも良い。NCS被覆は、アノードとカソードの双方で使用できる。
【0023】
図1を参照すると、図1はカソード活性層11、カソード基板または電流コレクタ12、アノード活性層13、およびアノード基板または電流コレクタ14を含む例示の電気化学セルを示す。カソードおよび/またはアノードの活性層は、一般には、電極活性材料、導電性添加剤、およびポリマバインダを含む多孔質の微粒子複合体を含む。NCS層15と多孔質セパレータ17は、電極層を分離する。NCS層は、図1に示すように、1つの電極のみの上に形成されても良く、これはアノードまたはカソードのいずれでも良い。代わりに、NCS層15および15’が、図2Aに示すように、双方の電極に形成されても良い。液体電解質は、NCS層15および15’および多孔質セパレータ17に浸透する。電流コレクタは、それぞれの電極層に接触し、電気化学セルの充電および放電サイクル中に電流を流す。セルは、積層され、または互いに巻かれて、角柱または螺旋に巻かれた電池を形成する。そのような例では、電極は、電気活性層により両側が被覆されても良い。図2Bは、カソード11のみの上のNCS層15’を示す。
【0024】
NCSのポリマバインダは、特定の電池システムの化学的性質と互換性のあるポリマから選択される。ポリマは、電気的に絶縁され、電解質溶媒中で低い溶解度を有し、セル中で化学的および電気化学的に安定であるべきである。他の電池システムと同様に、リチウムおよびリチウムイオン電池システム中で有用性を有するポリマの1つの組は、フッ化ポリマや、スチレンブタジエンや他のスチレン系ポリマのようなラテックスポリマを含む。ポリフッ化ビニリデンポリマ成分は、所定の有用性を有するポリマの1つの組である。公知で技術的に入手可能な多くのそのような材料があり、そのような材料は、混合物や共重合体と同様に、本質的に均質なPVDFを含む、一の特定の材料は、商標クレハ7208(Kureha 7208)で販売されているPVDF材料である。他の均等および類似の材料も、同様に、用いることができる。
【0025】
NCSの無機成分は、膜がその中に組み込まれる特定の電池システムや化学特性と互換性のある多くの天然および人工の材料から選択しても良い。2またはそれ以上の好適な無機成分の混合物も予定される。無機成分は、セラミック材料でも良い。セラミック材料の1つの特定の組はシリカを含み、シリカの特定の形態であるヒュームドシリカ(fumed silica)を用いても良い。ヒュームドシリカは、高い表面積で、一般に高純度のシリカ材料である。ヒュームドシリカは一般に親水性であり、殆どの電解質溶媒や多くのイオン化したポリマにより容易に濡れる。一またはそれ以上の具体例で使用される材料は、約200m2/gの表面積を有する。粒子は非常に小さく、一般には直径が200nmより小さく、より典型的には約10〜20nmであり、例えば14nmである。一またはそれ以上の具体例では、セラミック材料は、狭い粒子サイズ分布と実質的に球形状を有するヒュームドシリカである。ヒュームドシリカは、注意深く制御されたシリコンテトラクロライド(SiCl4)の反応で準備され、高度に制御され狭い粒子サイズ分布となる。一の具体例では、粒子サイズが約14nmのヒュームドシリカが用いられる。
【0026】
例えばかご型シルセスキオキサン(POSS)のような他のシリコン化合物が、膜のセラミック成分として用いられても良く、この説明中では、これはセラミック材料と考えられる。他のセラミック材料は、天然および人工のゼオライト、アルミナ等を含む。セラミック材料は、均一または混ざった大きさおよび形状を有する、単体または組み合わせで使用しても良い。
【0027】
ポリマおよびセラミックの比率は、比較的広い範囲で変化するが、しかしながら、幾つかの具体例では、セラミック材料は、結果のセパレータの主要な成分である。幾つかの例では、セラミックのポリマに対する比は、重量ベースで、95:5〜40:60である。一の特定の例では、膜は、重量ベースで、約65%のヒュームドシリカと35%のPVDFを含む。セラミック材料とポリマは、溶媒系のなかで組み合わされ、溶解したポリマ/溶媒系中に均一に分布したセラミック粒子を形成する。被覆溶媒中に高度に均一に分布したポリマとセラミックは、結果の膜中で高度に均一に分布したポリマとセラミック材料を提供する。
【0028】
NCS層15は、無機ナノ粒子とバインダを含む。NCS層は、電気化学的に安定なポリママトリックス中に、1μmより小さい粒子サイズを有し、二峰性の孔分布を有する、電気化学的に安定な無機粒子を含み、第1のより小さいサイズの孔は層中で実質的に均一に分布し、一またはそれ以上のより大きいサイズの孔は層中に不規則に分布しても良い。孔の大きさはナノスケールである。一の具体例では、第1のより小さい孔サイズは、約5〜100nmの範囲であり、より大きい孔サイズは約100〜500nmの範囲である。ある具体例では、粒子は実質的に単分散であり、約10〜50nmの範囲の粒子サイズを有する。複合体層は、25%より大きい孔体積率を有しても良い。NCS層のバインダは、一の具体例では、無機/有機複合体の組成の5%と60%の間である。複合体層は、無機粒子とポリマバインダを、重量比で、約95:5から約40:60の無機粒子:ポリマで有する。
【0029】
一の具体例では、ヒュームドシリカは、ポリマバインダと共に、2つの溶媒の混合中に分散する。使用されたヒュームドシリカは、一般に表面積が約200m2/gの親水性シリカである。一般に、バインダは、クレハ7208のようなポリフッ化ビニリデン(PVdF)である。セパレータ中の、シリカのバインダに対する正確な比率は、約50:50から95:5の範囲である。溶媒系はNMPとの二成分の混合である。共溶媒と固体の導入の選択は、使用される被覆技術のタイプに依存して変わる。例示の方法では、コンマおよびダイスロットコーティングでは、プロピルアセテートと5〜10%の固溶体が用いら、HVLPまたは超音波スプレーコーティングでは、アセトンと約2〜4%の固溶体が用いられる。
【0030】
多孔質のセパレータ17は、成形の、織物の、不織布の、マイクロ細孔の、接着された、紙、または積層として一般に分類されるセパレータのファミリーのいずれかから形成される。本発明にかかるセパレータ17として働くそれらの材料は、電解質に対して濡れやすいことに加え、電気化学的に絶縁であり、最小限のイオン抵抗性を有するべきである。セパレータ17は、物理的および機械的特性において均一であり、セル環境中で化学的および電気化学的に安定であることに加え、機械的および寸法の安定性を提供すべきである。
【0031】
例示的なセパレータは、ポリプロピレン、ポリエチレン、またはポリプロピレンとポリエチレンとの積層の膜中に提供された直径が50〜100Åより大きい孔を有する細孔ポリオレフィンセパレータである。不織布セパレータは、例えば、シートやマット中に配置された繊維からなり、摩擦、結合、および接着の少なくとも1つで接合された織物製品を含む。
【0032】
例示の具体例では、マイクロ細孔または不織布膜セパレータ17は、9〜15μmの範囲の膜厚を有する。サイズに対する容量を最大にするため、この膜厚は有利である。9〜15μmの範囲の膜厚のマイクロ細孔または不織布膜セパレータ17の使用は、伝統的には、Liイオン電池で必要とされる機械的な強度特性を有するとは考えられなかった。しかしながら、本発明の形態は、以前はLiイオン電池に応用できると信じられなかったような膜厚を有する薄い多孔質セパレータ17を用いる。NCS15と、記載されたセパレータ17との組み合わせは、完全にクラックの無いNCSを提供する必要性を減らし、これはNCSが使用された場合、そうでなくてもそれ自身により望まれる。
【0033】
他の例示的な具体例では、ナノ細孔膜セパレータ17は、9〜15μmの範囲の膜厚を有する。ナノ細孔のポリエチレン酸化物、ポリフッ化ビニリデン、置換ポリフォスファゼン、または同様のイオンを含む導電性ポリマ膜の使用もまた、伝統的に、Liイオン電池で必要とされる機械的強度特性を有するとは考えられなかった。しかしながら、本発明の形態は、NCS層を有する薄いナノ細孔セパレータが使用される。NCS15と、記載されたセパレータ17との組み合わせは、完全にクラックの無いNCSを提供する必要性を減らし、これはNCSが使用された場合、そうでなくてもそれ自身により望まれる。
【0034】
図1、2Aおよび2Bに示すように、NCS層は、アノード、カソードのいずれか、または双方の上形成される。本発明の形態では、電気化学セルまたは電池の大きさの不都合な増加無しに、機械的強度特性を提供する。これは、所定の膜厚範囲のNCS層15と多孔質または無孔質のセパレータ17とを組み合わせることで達成できる。NCS層の膜厚範囲は、約2から16μmである、同様に、もし追加のNCS層15’が形成された場合は、組み合わされた全てのNCS層は、約2から16μmである。多孔質または無孔質のセパレータ17は、約9から15μmの範囲の膜厚を有する。
【0035】
上述のように、NCS層15は、多孔質セパレータ17と共に、カソードとアノードの一方だけに形成されても良い。もし、この構成が適用された場合は、NCS層15と多孔質セパレータ17との組み合わされた膜厚は、約11〜25μmの範囲であり、約25μmより薄くなるべきではない。代わりに、NCS層15および15’の双方を用いても良い。図2Aに示すように、一方はカソード上で、他方は対向するアノード上で、その間に多孔質セパレータ17を有する。この構成では、NCS層15および15’の組み合わされた膜厚は、多孔質または無孔質のセパレータ17に加えて11から25μmの範囲である。
【0036】
本発明の具体例は、NCS15と、生産性と経済的利益を提供する特に選択された多孔質セパレータ17との相乗的な組み合わせを提供する。セラミックを有するセパレータの従来の使用は、クラックに対して保護し、適切なシールを提供するために高レベルの注意が必要とされた。これは、高価な材料と、厳格な品質制御手続の使用を必要とし、スクラップを増加させ、収量を低下させた。本発明は、従来のセパレータ構成の厳格な品質制御の要求無しに、約25μmまでの膜厚で形成できる、安価なセパレータ17とNCS層15の使用を可能とする。本発明は、また、NCS15と多孔質セパレータ17とを組み合わすことで、デンドライトの刺し傷と短絡に対する、増加した保護を提供する。
【0037】
NCS15をセパレータ17と組み合わせることにより、単にNCSセパレータのみを有するセルに比較して、完全なクラック無しの膜に対する負担/要求が低減される。膜厚の増加とともにクラックの無い被覆の困難性になるため、セパレータ17の使用により要求される膜厚が低減されることで、コーティング技術の実行がより簡単になる。アノード/カソード界面での短絡も低減する。
【0038】
積層された電気化学セルを準備するために、電極で被覆された電流コレクタとセパレータ膜とが次に積層され、図3に示すような積層アセンブリ90を形成する。図3中、同一要素は同じように番号をつける。このように、両側にアノード層13を有する電流コレクタ14は、ここに記載されたように、その一方の上に配置されたNCS層15を有しても良い。その両側に上にカソード層11を有する電流コレクタ12は、また、ここで記載されたように配置された(セパレータアセンブリを形成する)NCS層15および15’と多孔質または無孔質のセパレータ17とを有しても良い。積層されたアセンブリは、多くの成分を用いて再度組み立てられても良い。積層体は、カソード/アノードアセンブリを含んでも良く、このアセンブリは、続いてアノード層と積層され、積層アセンブリを形成する。他の具体例では、アノード/セパレータアセンブリがカソード層と組み合わされ、積層アセンブリを形成する。更に他の具体例では、カソード/セパレータアセンブリとアノード/セパレータアセンブリとが用いられる。この場合、セパレータ膜厚は、アノードアセンブリとカソードアセンブリの双方からセパレータアセンブリを収容するように調整する。多くのカソードとアノードの層が、スタックに含まれても良い。
【0039】
NCS層に適用する被覆方法が、図4を参照しながら説明される。工程200では、溶媒、溶媒に溶けやすいまたは溶媒に混ざりやすいポリマ、および無機粒子を含む被覆溶媒が準備される。一またはそれ以上の具体例では、ポリマ、液体溶媒、および無機材料が、低い剪断の下で、材料が完全に濡れるおよび/または溶けるまで、最初の時間混合される。ポリマと無機物は、N−メチルピロリジノン(NMP)中で最初に混合され、高レベルの分散を達成しても良い。次に、第2の溶質が加えられ、この混合物は、続いて所望のレオロジが得られるまで高い剪断混合が行われる。所望のスラリは大きな凝集体を含まず、静止状態でポリマと無機材料の領域に直ぐには相分離せず、よく分散した状態のままである。特定のモードや動作理論により縛られることなく、溶媒レオロジは、全体の粒子の濃度とともに、粒子サイズの分布と凝集体の挙動の兆候を示す。更に複雑で非対称な形状と、より多くの数の粒子は、溶媒の粘度を増加させる傾向にある。そのようなスラリは、層の最終構造において役割を果たすだろう。
【0040】
被覆溶媒は、工程220に示すように、続いて電極材料の少なくとも1つの表面に被覆される。電極上を覆う層の膜厚は、塗布溶媒の組成と、電気化学セルで求められる最終膜厚に依存する。他の被覆技術は、混合されたセラミックと粒子に成分を含む組成を堆積するのが可能である限り、本発明の一またはそれ以上の具体例により用いられる。例示的な技術は、ドクターブレーディング、ロールコーティング、インクジェットプリンティング、スピンコーティング、グラビアコーティングおよびスクリーンプリンティング、ディップコーティング、または他のコーティング方法を含む。被覆工程は、一般には、複合体セパレータ層と隣接する電極層との間で溶剤接着が起きる条件下で行われる。
【0041】
一またはそれ以上の具体例では、被覆工程は、1またはそれ以上の塗布器の塗布溶剤を、その上に噴霧することで完成される。例示の方法では、セパレータ層は、約3から5の被覆工程が適用され、それぞれの被覆工程は、全セパレータ層の膜厚の1/3から1/5を提供する。上述のように、マルチパスの堆積は、電極の多孔質層への溶媒の突き抜けを減らし、剥離を減らすことができる。驚くべきことに、マルチパスでのセパレータ層の適用は、最終層中に形成される欠陥数を大きく低減する。欠陥は、1ミクロンより大きな直径を有する大きな孔として、または膜中のクラックとして定義される。堆積工程は、同様の膜厚に適用する必要は無い。このように、第1の被覆工程は、第1膜厚の層を堆積させ、第2工程は、第2の、膜厚の異なる層の堆積に使用することができる。しかしながら、記載されたNCS層15と多孔質または無孔質のセパレータ17との組み合わせは、そのような欠陥を補償することができる相互依存的な力学的特性を提供し、これにより、全ての起こりうる欠陥に、通常は対処するために必要な追加の工程が不要となり、より効果的な製造プロセスが可能となる。
【0042】
被覆工程に続いて、工程230は、被覆混合物から溶媒が除去され、電極上のポリマ/セラミック粒子の固体の多孔質ボディを残すことを示す。溶媒は、蒸発により除去され、この蒸発は、加熱および/または低圧の条件を使用して行われても良い。幾つかの例では、溶媒は、ポリマに対して非溶媒である引き出し溶媒を用いて引き出しても良い。一またはそれ以上の具体例では、それぞれのスプレーコーティング工程の後に溶媒が選択的に除去され、複数のスプレーコーティング工程が用いられた場合には、複数の溶媒除去工程が行われても良い。
【0043】
一またはそれ以上の具体例では、NCSのポリマは、熱可塑性で、ガラス遷移温度(Tg)を有し、融点(Tm)を有しても有さなくても良い。一またはそれ以上の具体例では、サポート上に層を被覆した後に、層を回復(cure)させることにより、層に対して、層中の応力を減らすために選択された処理が施される。ポリマは、ガラス遷移温度または溶融温度より上の処理で回復させ、その物理的特性を変化または拡大しても良い(工程240)。回復工程は、技術的に知られているように、加熱により行われても良い。乾燥工程および回復工程は、連続した工程して行っても、行わなくても良い。PVDFのような熱可塑性ポリマの場合、ホストポリマTmを越えて複合体を加熱し、続いて冷却することにより、回復工程が行われる。他の具体例では、層は、ポリマバインダのガラス遷移温度以上に加熱される。
【0044】
複数工程の被覆アプローチは、セパレータ膜中で大きなクラックを減らすと信じられる。特定のモードや動作理論に縛られることなく、第2の被覆工程は、最初の被覆中に形成された割れ目を埋めて、クラックの欠陥を治癒させる。多孔質または無孔質のセパレータ17は、NCS層15に隣接して配置される(工程242)。良く確立された巻き取り技術を用いて、多孔質セパレータは、被覆された電極と共に積層に巻かれる。多孔質のセパレータを有するセルに対しても、巻き上げに対する変更は必要とされない。セパレータ膜として無孔質セパレータが使用された場合、通常の巻き上げ手続が使用できる。
【0045】
そうでなくとも、NCS層15と多孔質または無孔質のセパレータ17との記載された組み合わせは、クラックに対してより大きな許容値を有し、一方で機械的および物理的に強固なセパレータアセンブリを提供できる。例えば、そうでなければNCS層15について許容できない所定のクラックが、記載された多孔質または無孔質のセパレータ17を含む組み合わせにより許容でき、これにより、従来技術の欠点が効果的に解決できる。
【0046】
例1.HVLPスプレーを用いた被覆
30:70のNMP:アセトン溶剤に3重量%の固体を入れた混合物が、最初にPVdF(クレハ)をヒュームドシリカと混合させ、続いてアセトンを加えて、通常のミキサを用いて更に混ぜて準備される。セパレータ前駆体スラリは、スプレー銃を用いた連続した経路で、アノードまたはカソードのいずれかに適用される。約20μmの膜厚が、3〜5回の被覆工程で達成される。例えば、セパレータとNCSの双方を使用するような、デュアルセパレータのアプローチでは、2つの経路を用いて、約10μmが必要とされる。一旦、所望の膜厚が達成されたら、電極は、80℃で1時間、真空乾燥され、続いて、大気圧で15分間、200℃で回復される。
【0047】
例2.コンマコーティングを用いた被覆
前駆体スラリは、5%〜10%の固体で、共溶媒の添加に先立って、PVdFとヒュームドシリカの同様の予備混合で準備され、続いて、膜は、下方からの輻射熱で、100℃で乾燥させ、付加的な対流は発生しない。
【0048】
被覆された電極は、リチウムイオンセルで試験され、良好に機能する。NCSセパレータ(20μm)のみが組み込まれた350mAhの角柱セルは、制限されたサイクル寿命と速度性能の双方の試験において、膜分離セルと同等に機能する。NCS分離セルは、手で被覆したシステム(hand-coated system)に対して、延長されたサイクル寿命、高い電力キャパシティ、および優れた再現性を示す。
【0049】
例示的なポーチセル(pouch cell)として設計されたデュアルセパレータセルは、
5μNCS被覆されたグラファイトアノード/セルガード2320/M1カソード、
5μNCS被覆されたM1カソード/セルガード2320/グラファイトアノード、
2μNCS被覆されたアノードとセルガード2320を有する3μNCS、
セルガードM824(12μ膜厚)を有する10μNCS被覆されたアノード、
セルガードM825(16μ膜厚)を有する9μNCS被覆されたカソード、
被覆されないグラファイトアノード/セルガード2320/被覆されないM1カソード(ベースライン)、
を含む。
【0050】
NCS15とセパレータ17との組み合わせは、互いに他方の物理的挙動を補完するNCS15とセパレータ17により、安全レベルが増加する。図5は、100%充電状態(SOC)に充電し、続いて鈍いツメ(blunt nail)で貫通し、大量の内部の短絡を起こさせたセル構造を示す。全体のセルは溶融し、巨大な塊に変わっている。示された試料は、セルから引き出された外部の電極の巻きから取られた。左手の写真は、ツメで貫通され、180℃を越える温度に晒された、本発明にかかる角柱NCSマイクロ構造の走査電子顕微鏡(SEM)の像を示す。示されたマイクロ構造の流れ/変化の欠如は、NCS被覆と多孔質セパレータ構造によりもたらされる増加した安全性を示す。NCS中でのセラミックの使用は、そのような保護無しでは溶けるポリオレフィン多孔質セパレータまたは無孔質ポリエチレン酸化物または他の導電性ポリマセパレータを保護するための追加の層を形成する。
【0051】
図6は、ベースライン構造に対して異なるセル構造をプロットしたグラフである。「アノードセミ」構造は、アノード上に配置されたNCS層15を含み、一方多孔質セパレータ17はNCS15に隣接して追加的に使用される。この構造の例示的な具体例は、図1に示される。「カソードセミ」構造は、図2Bに示すように、カソード11の上に配置されたNCS層15’を含み、多孔質セパレータ17はNCS層15’に隣接する。「ボスセミ」構造は、図2Aに示すように、多孔質セパレータ17の両側の上で、NCS層15および15’を用いる。「ベースライン」構造は、NCS層を使用せず、代わりにアノードとカソードとの間に標準的な多孔質セパレータのみを提供する。
【0052】
例えば、アノードセミ、カソードセミ、ボスセミ、およびベースラインのようなそれぞれの異なる構造において、5つのセル1〜5に対して、100%SOCにおいて鈍いツメの突き抜け試験が行われ、セルの最高表面温度が記録された。それぞれのグループにおいて、セル1は左端のデータの柱であり、セル5は右端の柱である。「アノードセミ」、「カソードセミ」および「ボスセミ」の構造は、標準の「ベースライン」セルと比較した場合、より低い平均最高表面温度を示し、これにより、本発明のNCSと多孔質セパレータとにより安全性が向上することが示される。
【0053】
図7は、「アノードセミ」、「カソードセミ」および「ボスセミ」の構造を、ベースライン1およびベースライン2のセルに対してプロットしたグラフである。左側のグラフは、20μmの多孔質セパレータとNCS被覆を用いた場合に、セルの全体の電力が低下することを示す。右側の図は、活性面積で標準化した場合に、電力は、ベースラインとセミNCSのセルの双方において同じであることを示す。このデータは、更に、非常に薄いセパレータ(例えば、20μmより薄いポリオレフィン)が用いられた場合に、NCS層を用いることによる肯定的で有益な形態は、エネルギ密度に関して更に改良されることを示す。
【0054】
図8は、高パルス電力特性試験(HPPC)の結果を示し、これは自動車産業で使用される電力試験であり、20μ多孔質セパレータを有する400mAhの角柱10μNCSセルが用いられる。NCSデータは、グラフの上側の線で表される。NCSセルは、ベースラインのポリオレフィンセパレータセルより、高い電力放電においてより多くのエネルギを保持し、これは、10μNCS層により形成された、全セパレータ膜厚の追加の10μmは、電力キャパシティを減少させないことを示す。もし、より薄い多孔質セパレータが使用された場合、エネルギ/体積は、この例より高くなるであろう。この試験では、NCSはカソード上に配置され、10μmのセパレータ膜厚を有し、上述の65:35の設計が用いられた。
【0055】
図9は、室温高電力サイクル試験(1.5C/−10C)のデータをプロットしたグラフであり、20μm膜厚のセパレータを有する65:35設計のセミNCSまたは「カソードセミ」構造を用い、NCS層は有さないが20μ膜厚のセパレータは有するベースライン構造と比較した。データは、セミNCSとベースラインの双方について2つのセルの平均を表す。セミNCSデータは、グラフ上の低い方の線により表される。セルは、+1.5C/−10Cのサイクルが行なわれた。平均では、セミNCSセルは、例えば劣化する幾つかのスロープのように、ベースラインセルより速くは、最初のキャパシティの80%より低く下がらなかった。同様に、DC抵抗は、双方のセルで同等であることが見出された。これは、サイクル中に高い特性を維持する本発明の能力を示すとともに、安全性を向上させることを示す。
【0056】
図10は、室温低電力サイクル試験(1.5C/−2.5C)のデータをプロットしたグラフであり、10μの65:35のNCS設計と、20μの多孔質セパレータを有するセミNCS構造を用い、NCS層を有さないベースライン構造と比較した。データは、セミNCSとベースラインの双方について2つのセルの平均を表す。セミNCSデータは、グラフ上のわずかに低い方の線により表される。セルは、+1.5C/−2.5Cのサイクルが行なわれた。平均では、セミNCSセルは、ベースラインセルより速く減衰したが、500サイクル後において、双方のセルは最初のキャパシティの80%より上であった。
【0057】
上記記載では、本発明の例示的な具体例について示す。本発明の他の変形や変化は、ここで表される示唆から当業者にとって容易に明らかになるであろう。上記記載は、本発明の実施について、例示を意図し限定するものではない。本発明の範囲を限定するのは、全ての均等を含む、以下の請求の範囲である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)正電極、(b)負電極、(c)正電極と負電極との間に挿入された多孔質の無機および有機の複合体膜、および(d)リチウム塩と非水溶媒とを含む電解質とを含むLiイオン電気化学セルであって、
複合体膜は、無機ナノ粒子とバインダとを含み、
更に、Liイオン電気化学セルは、(3)複合体膜に隣接する多孔質または無孔質のセパレータを含み、
複合体膜と多孔質または無孔質のセパレータとを合わせた膜厚は25μmより大きく無いLiイオン電気化学セル。
【請求項2】
複合体膜は、電気化学的に安定なポリママトリックス中に1μmより小さい粒子サイズを有する電気化学的に安定な無機粒子を含む複合体層であり、更に複合体膜は、少なくとも二峰性の孔の分布を有し、
第1の、より小さいサイズの孔は、層の中に実質的に均一に分布し、1またはそれ以上のより大きいサイズの孔は、層の中に不規則に分布し、孔の大きさはナノスケールである請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項3】
バインダは、無機および有機の複合体膜の5%と60%の間である請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項4】
多孔質セパレータは、直径が50〜100Åより大きい孔を含むマイクロ細孔のポリオレフィンセパレータであり、ポリプロピレンとポリエチレンの少なくとも1つの膜を含む請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項5】
多孔質または無孔質のセパレータは、繊維からなる不織布材料である請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項6】
繊維は、摩擦、結合、および接着の少なくとも1つで結合させた請求項5に記載の電気化学セル。
【請求項7】
多孔質または無孔質のセパレータは、約9μmから15μmの範囲の膜厚を有する請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項8】
複合体膜は、約2μmから16μmの範囲の膜厚を有する請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項9】
第1のより小さい孔のサイズは、約5〜100nmの範囲である請求項2に記載の電気化学セル。
【請求項10】
より大きい孔のサイズは、約100〜500nmの範囲である請求項2に記載の電気化学セル。
【請求項11】
粒子は、実質的に単分散であり、約10〜50nmの範囲の粒子サイズを有する請求項2に記載の電気化学セル。
【請求項12】
複合体層は、25%より大きい孔体積率を有する請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項13】
複合体層は、約95:5から約40:60の無機粒子:ポリマの重量比で、無機粒子とポリマバインダとを含む請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項14】
膜の無機部分は、シリカ、アルミナ、酸化チタン、天然および合成のゼオライト、および他の電気化学的に安定な適当な粒子サイズの無機粒子からなる組から選択される請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項15】
電気化学セルで使用する電極/セパレータアセンブリであって、
電流コレクタと、
電極コレクタに接着された電極層であって、少なくとも電気活性な粒子とバインダとを含む電極層と、
ポリママトリックス中に実質的に均一に分散してナノ細孔を形成する無機粒子を含む多孔質複合体層と、を含み、複合体層は、2つの層の間の界面において溶剤接着により電極層に固定され、接着はバインダとポリマとの混合を含み、
更に、複合体層に隣接して配置された多孔質または無孔質のセパレータを含み、複合体膜と多孔質セパレータとを合わせた膜厚は、25μmより大きくならない電極/セパレータアセンブリ。
【請求項16】
セパレータは、ポリエチレン酸化物の層を含む請求項15に記載の電極/セパレータアセンブリ。
【請求項17】
粒子は、ポリママトリックス中で1μmより小さい粒子サイズを有し、層は、少なくとも二峰性の孔分布を含み、第1のより小さいサイズの孔は層中に実質的に均一に分布し、1またはそれ以上のより大きいサイズの孔は層中に不規則に分布し、孔の大きさはナノスケールである請求項15に記載の電極/セパレータアセンブリ。
【請求項18】
バインダは、無機/有機の複合体の組成の5%と60%の間である請求項15に記載の電極/セパレータアセンブリ。
【請求項19】
多孔質のセパレータは、直径が50〜100Åより大きい孔を含むマイクロ細孔のポリオレフィンセパレータであり、ポリプロピレンおよびポリエチレンの少なくとも1つの膜を含む請求項15に記載の電極/セパレータアセンブリ。
【請求項20】
多孔質のセパレータは、繊維からなる不織布材料である請求項15に記載の電極/セパレータアセンブリ。
【請求項21】
繊維は、摩擦、結合、および接着の少なくとも1つで結合させた請求項20に記載の電極/セパレータアセンブリ。
【請求項22】
多孔質のセパレータは、約9μmから15μmの範囲の膜厚を有する請求項15に記載の電極/セパレータアセンブリ。
【請求項23】
複合体層は、約2μmから16μmの範囲の膜厚を有する請求項15に記載の電極/セパレータアセンブリ。
【請求項24】
第1のより小さい孔のサイズは、約5〜100nmの範囲である請求項17に記載の電極/セパレータアセンブリ。
【請求項25】
より大きい孔のサイズは、約100〜500nmの範囲である請求項17に記載の電極/セパレータアセンブリ。
【請求項26】
粒子は、実質的に単分散であり、約10〜50nmの範囲の粒子サイズを有する請求項15に記載の電極/セパレータアセンブリ。
【請求項27】
複合体層は、25%より大きい孔体積率を有する請求項15に記載の電極/セパレータアセンブリ。
【請求項28】
複合体層は、約95:5から約40:60の無機粒子:ポリマの重量比で、無機粒子とポリマバインダとを含む請求項15に記載の電極/セパレータアセンブリ。
【請求項29】
膜の無機部分は、シリカ、アルミナ、酸化チタン、天然および合成のゼオライト、および他の電気化学的に安定な適当な粒子サイズの無機粒子からなる組から選択される請求項15に記載の電極/セパレータアセンブリ。
【請求項30】
電気化学セル用の電極/セパレータアセンブリを準備する方法であって、
少なくとも電気活性な粒子とバインダとを含む電極層を準備する工程と、
被覆溶媒を提供する工程であって、被覆溶媒は、ポリマ、ポリマのための溶媒、および溶媒中に分散する無機粒子を含み、溶媒系は電極層のバインダに対して少なくともいくらかの溶解度を有するように選択される工程と、
電極層の表面を、被覆溶媒の層を用いて被覆する工程であって、被覆溶媒は、電極層の膜厚の一部を突き抜けてバインダの一部を溶かす工程と、
被覆溶媒層から溶媒を除去して、ポリマ中に実質的に均一に分布した無機粒子を含む多孔質の複合体層を堆積させ、多孔質電極層と多孔質セパレータ層との間の界面に溶媒接着を形成する工程と、
多孔質の複合体層に隣接するように多孔質または無孔質のセパレータを形成する工程であって、複合体膜と多孔質セパレータは、それらを合わせた膜厚が25μmより大きくならず、そして被覆溶媒中の無機粒子とポリマとの重量比が約95:5から40:60になるように形成される工程と、を含む方法。
【請求項31】
多孔質の複合体層は、少なくとも25%の孔体積率を有する請求項30に記載の方法。
【請求項32】
被覆溶媒中の無機粒子とポリマとの重量比は、約65:35から約45:55である請求項30に記載の方法。
【請求項33】
被覆溶媒は、電極層の膜厚の90%までの範囲で突き抜ける請求項30に記載の方法。
【請求項34】
被覆工程は、スプレーコーティング、ドクターブレーディング、スロットダイコーティング、グラビアコーティング、インクジェットプリンティング、スピンコーティング、ディップコーティングおよびスクリーンプリンティングからなる組から選択される技術で行われる請求項30に記載の方法。
【請求項35】
電極の表面のスプレーコーティングは、電極の表面に、複数の層の被覆溶媒をスプレーコーティングする工程を含む請求項34に記載の方法。
【請求項36】
更に、それぞれのスプレーコーティング工程の間に、塗布された層を乾燥させる工程を含む請求項35に記載の方法。
【請求項37】
溶媒を除去する工程は、溶媒を蒸発させる工程を含む請求項30に記載の方法。
【請求項38】
溶媒を除去する工程は、ポリマに対して非溶媒となる材料を用いて溶媒を引き出す工程を含む請求項30に記載の方法。
【請求項39】
セパレータは、ポリエチレン酸化物の層を含む請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項1】
(a)正電極、(b)負電極、(c)正電極と負電極との間に挿入された多孔質の無機および有機の複合体膜、および(d)リチウム塩と非水溶媒とを含む電解質とを含むLiイオン電気化学セルであって、
複合体膜は、無機ナノ粒子とバインダとを含み、
更に、Liイオン電気化学セルは、(3)複合体膜に隣接する多孔質または無孔質のセパレータを含み、
複合体膜と多孔質または無孔質のセパレータとを合わせた膜厚は25μmより大きく無いLiイオン電気化学セル。
【請求項2】
複合体膜は、電気化学的に安定なポリママトリックス中に1μmより小さい粒子サイズを有する電気化学的に安定な無機粒子を含む複合体層であり、更に複合体膜は、少なくとも二峰性の孔の分布を有し、
第1の、より小さいサイズの孔は、層の中に実質的に均一に分布し、1またはそれ以上のより大きいサイズの孔は、層の中に不規則に分布し、孔の大きさはナノスケールである請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項3】
バインダは、無機および有機の複合体膜の5%と60%の間である請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項4】
多孔質セパレータは、直径が50〜100Åより大きい孔を含むマイクロ細孔のポリオレフィンセパレータであり、ポリプロピレンとポリエチレンの少なくとも1つの膜を含む請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項5】
多孔質または無孔質のセパレータは、繊維からなる不織布材料である請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項6】
繊維は、摩擦、結合、および接着の少なくとも1つで結合させた請求項5に記載の電気化学セル。
【請求項7】
多孔質または無孔質のセパレータは、約9μmから15μmの範囲の膜厚を有する請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項8】
複合体膜は、約2μmから16μmの範囲の膜厚を有する請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項9】
第1のより小さい孔のサイズは、約5〜100nmの範囲である請求項2に記載の電気化学セル。
【請求項10】
より大きい孔のサイズは、約100〜500nmの範囲である請求項2に記載の電気化学セル。
【請求項11】
粒子は、実質的に単分散であり、約10〜50nmの範囲の粒子サイズを有する請求項2に記載の電気化学セル。
【請求項12】
複合体層は、25%より大きい孔体積率を有する請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項13】
複合体層は、約95:5から約40:60の無機粒子:ポリマの重量比で、無機粒子とポリマバインダとを含む請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項14】
膜の無機部分は、シリカ、アルミナ、酸化チタン、天然および合成のゼオライト、および他の電気化学的に安定な適当な粒子サイズの無機粒子からなる組から選択される請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項15】
電気化学セルで使用する電極/セパレータアセンブリであって、
電流コレクタと、
電極コレクタに接着された電極層であって、少なくとも電気活性な粒子とバインダとを含む電極層と、
ポリママトリックス中に実質的に均一に分散してナノ細孔を形成する無機粒子を含む多孔質複合体層と、を含み、複合体層は、2つの層の間の界面において溶剤接着により電極層に固定され、接着はバインダとポリマとの混合を含み、
更に、複合体層に隣接して配置された多孔質または無孔質のセパレータを含み、複合体膜と多孔質セパレータとを合わせた膜厚は、25μmより大きくならない電極/セパレータアセンブリ。
【請求項16】
セパレータは、ポリエチレン酸化物の層を含む請求項15に記載の電極/セパレータアセンブリ。
【請求項17】
粒子は、ポリママトリックス中で1μmより小さい粒子サイズを有し、層は、少なくとも二峰性の孔分布を含み、第1のより小さいサイズの孔は層中に実質的に均一に分布し、1またはそれ以上のより大きいサイズの孔は層中に不規則に分布し、孔の大きさはナノスケールである請求項15に記載の電極/セパレータアセンブリ。
【請求項18】
バインダは、無機/有機の複合体の組成の5%と60%の間である請求項15に記載の電極/セパレータアセンブリ。
【請求項19】
多孔質のセパレータは、直径が50〜100Åより大きい孔を含むマイクロ細孔のポリオレフィンセパレータであり、ポリプロピレンおよびポリエチレンの少なくとも1つの膜を含む請求項15に記載の電極/セパレータアセンブリ。
【請求項20】
多孔質のセパレータは、繊維からなる不織布材料である請求項15に記載の電極/セパレータアセンブリ。
【請求項21】
繊維は、摩擦、結合、および接着の少なくとも1つで結合させた請求項20に記載の電極/セパレータアセンブリ。
【請求項22】
多孔質のセパレータは、約9μmから15μmの範囲の膜厚を有する請求項15に記載の電極/セパレータアセンブリ。
【請求項23】
複合体層は、約2μmから16μmの範囲の膜厚を有する請求項15に記載の電極/セパレータアセンブリ。
【請求項24】
第1のより小さい孔のサイズは、約5〜100nmの範囲である請求項17に記載の電極/セパレータアセンブリ。
【請求項25】
より大きい孔のサイズは、約100〜500nmの範囲である請求項17に記載の電極/セパレータアセンブリ。
【請求項26】
粒子は、実質的に単分散であり、約10〜50nmの範囲の粒子サイズを有する請求項15に記載の電極/セパレータアセンブリ。
【請求項27】
複合体層は、25%より大きい孔体積率を有する請求項15に記載の電極/セパレータアセンブリ。
【請求項28】
複合体層は、約95:5から約40:60の無機粒子:ポリマの重量比で、無機粒子とポリマバインダとを含む請求項15に記載の電極/セパレータアセンブリ。
【請求項29】
膜の無機部分は、シリカ、アルミナ、酸化チタン、天然および合成のゼオライト、および他の電気化学的に安定な適当な粒子サイズの無機粒子からなる組から選択される請求項15に記載の電極/セパレータアセンブリ。
【請求項30】
電気化学セル用の電極/セパレータアセンブリを準備する方法であって、
少なくとも電気活性な粒子とバインダとを含む電極層を準備する工程と、
被覆溶媒を提供する工程であって、被覆溶媒は、ポリマ、ポリマのための溶媒、および溶媒中に分散する無機粒子を含み、溶媒系は電極層のバインダに対して少なくともいくらかの溶解度を有するように選択される工程と、
電極層の表面を、被覆溶媒の層を用いて被覆する工程であって、被覆溶媒は、電極層の膜厚の一部を突き抜けてバインダの一部を溶かす工程と、
被覆溶媒層から溶媒を除去して、ポリマ中に実質的に均一に分布した無機粒子を含む多孔質の複合体層を堆積させ、多孔質電極層と多孔質セパレータ層との間の界面に溶媒接着を形成する工程と、
多孔質の複合体層に隣接するように多孔質または無孔質のセパレータを形成する工程であって、複合体膜と多孔質セパレータは、それらを合わせた膜厚が25μmより大きくならず、そして被覆溶媒中の無機粒子とポリマとの重量比が約95:5から40:60になるように形成される工程と、を含む方法。
【請求項31】
多孔質の複合体層は、少なくとも25%の孔体積率を有する請求項30に記載の方法。
【請求項32】
被覆溶媒中の無機粒子とポリマとの重量比は、約65:35から約45:55である請求項30に記載の方法。
【請求項33】
被覆溶媒は、電極層の膜厚の90%までの範囲で突き抜ける請求項30に記載の方法。
【請求項34】
被覆工程は、スプレーコーティング、ドクターブレーディング、スロットダイコーティング、グラビアコーティング、インクジェットプリンティング、スピンコーティング、ディップコーティングおよびスクリーンプリンティングからなる組から選択される技術で行われる請求項30に記載の方法。
【請求項35】
電極の表面のスプレーコーティングは、電極の表面に、複数の層の被覆溶媒をスプレーコーティングする工程を含む請求項34に記載の方法。
【請求項36】
更に、それぞれのスプレーコーティング工程の間に、塗布された層を乾燥させる工程を含む請求項35に記載の方法。
【請求項37】
溶媒を除去する工程は、溶媒を蒸発させる工程を含む請求項30に記載の方法。
【請求項38】
溶媒を除去する工程は、ポリマに対して非溶媒となる材料を用いて溶媒を引き出す工程を含む請求項30に記載の方法。
【請求項39】
セパレータは、ポリエチレン酸化物の層を含む請求項1に記載の電気化学セル。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図9】
【図10】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図9】
【図10】
【図6】
【図7】
【図8】
【公表番号】特表2011−518404(P2011−518404A)
【公表日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527240(P2010−527240)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【国際出願番号】PCT/US2008/078133
【国際公開番号】WO2009/043011
【国際公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(505239219)エイ 123 システムズ,インク. (24)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【国際出願番号】PCT/US2008/078133
【国際公開番号】WO2009/043011
【国際公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(505239219)エイ 123 システムズ,インク. (24)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]