無端状ベルトの製造方法
【課題】第1塗膜を形成し乾燥させ、その上に第2塗膜を形成し乾燥させる工程を経て製造される無端状ベルトの製造方法において、無端状ベルトの内層側の表面抵抗率が各部において異なるのを抑制する。
【解決手段】ポリイミド前駆体と導電粒子が含まれる溶液を芯材の周面に塗布して第1塗膜を形成し、次いで第1塗膜を乾燥させ、次いで乾燥させられた第1塗膜の上にポリイミド前駆体と導電粒子が含まれる溶液を塗布して第2塗膜を形成し、次いで第2塗膜を乾燥させ、次いでポリイミド前駆体がイミド化するように第1塗膜および第2塗膜を加熱し、次いで第1塗膜および第2塗膜を芯材から取り外すことで、2層構造の無端状ベルトを製造する。そして、第1塗膜を乾燥させるに際して、第1塗膜の残留溶媒量が各部において10%以上22%以下の範囲内に収まるようにする。
【解決手段】ポリイミド前駆体と導電粒子が含まれる溶液を芯材の周面に塗布して第1塗膜を形成し、次いで第1塗膜を乾燥させ、次いで乾燥させられた第1塗膜の上にポリイミド前駆体と導電粒子が含まれる溶液を塗布して第2塗膜を形成し、次いで第2塗膜を乾燥させ、次いでポリイミド前駆体がイミド化するように第1塗膜および第2塗膜を加熱し、次いで第1塗膜および第2塗膜を芯材から取り外すことで、2層構造の無端状ベルトを製造する。そして、第1塗膜を乾燥させるに際して、第1塗膜の残留溶媒量が各部において10%以上22%以下の範囲内に収まるようにする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無端状ベルトの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、無端状ベルト、特に2層ポリイミド樹脂無端状ベルトとして、外層(121)及び内層(122)の積層体からなる管状体であって、内層(122)には、厚み方向において、他の領域(導電点偏在領域(124A)以外の内層(122)領域、及び外層(121)領域)よりも導電性が高い領域を有する管状体が記載されている。
【0003】
特許文献2には、無端状ベルトの製造方法として、皮膜形成樹脂溶液を塗布することにより塗膜がその表面に形成された芯体を、乾燥炉(100)内に配置して加熱し前記塗膜を乾燥させて樹脂皮膜を形成する乾燥工程と、前記樹脂皮膜が形成された芯体を、加熱炉(200)内に配置して加熱し前記樹脂皮膜を焼成する加熱工程とを含み、前記加熱工程において、前記加熱炉から排気された排気ガス(210)を前記乾燥炉に供給することが記載されている。
【0004】
特許文献3には、ポリイミド製フィルムの電気抵抗率調節方法として、ポリアミド酸溶液を円筒状金型に塗布又はシート状金属表面に流延してポリアミド酸塗膜を形成し、該ポリアミド酸塗膜を加熱乾燥した後、イミド転化反応をさせてポリイミド樹脂皮膜を形成してポリイミド製フィルムを製造する際に、前記加熱乾燥の温度、該加熱乾燥後の前記ポリアミド酸塗膜の固形分率、前記イミド転化反応における最高到達温度及び250℃以上の温度に保持されている時間、前記ポリイミド樹脂皮膜の厚さ、を予め一定の値に設定し、前記ポリアミド酸溶液中のカーボンブラックの含有量を変化させることにより、前記ポリイミド製フィルムの電気抵抗率を調節することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−241123号公報
【特許文献2】特開2007−216510号公報
【特許文献3】特開2005−66838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、第1塗膜を形成し乾燥させ、その上に第2塗膜を形成し乾燥させる工程を経て製造される無端状ベルトの製造方法において、無端状ベルトの内層側の表面抵抗率が各部においてバラ付くのを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1の無端状ベルトの製造方法は、ポリイミド前駆体と導電性粒子とが含まれる溶液を芯材の周面に塗布して第1塗膜を形成する第1塗膜形成工程と、前記第1塗膜の残留溶媒量が各部において10%以上22%以下の範囲内に収まるように、前記第1塗膜を乾燥させる第1乾燥工程と、前記第1乾燥工程において乾燥させられた第1塗膜の上にポリイミド前駆体と導電性粒子とが含まれる溶液を塗布して第2塗膜を形成する第2塗膜形成工程と、前記第2塗膜を乾燥させる第2乾燥工程と、前記ポリイミド前駆体がイミド化するように、前記第1乾燥工程において乾燥させられた第1塗膜および第2乾燥工程において乾燥させられた第2塗膜を加熱する加熱工程と、前記加熱工程で加熱された第1塗膜および第2塗膜を前記芯材から取り外す取外工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の請求項1に記載の無端状ベルトの製造方法によれば、第1乾燥工程において第1塗膜を乾燥させるに際して第1塗膜の残留溶媒量を各部において10%以上22%以下の範囲内に収めない場合に比べて、無端状ベルトの内層側の表面抵抗率が各部においてバラ付くのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の2層ポリイミド樹脂無端状ベルトの製造方法に係る工程順を示す図である。
【図2】図1の第1塗膜形成工程(および第2塗膜形成工程)に用いられる塗膜形成装置の構成を示す図である。
【図3】図1の第1塗膜乾燥工程(および第2塗膜乾燥工程)に用いられる乾燥装置の構成を示す正面図である。
【図4】図1の第1塗膜乾燥工程(および第2塗膜乾燥工程)に用いられる乾燥装置の構成を示す側面図である。
【図5】図3および図4の乾燥装置における芯体の軸方向位置に対する温度分布を示すグラフである。
【図6】図3および図4の乾燥装置による第1塗膜の乾燥時間と残留溶媒量との関係を示すグラフである。
【図7】図1の工程順によって製造された2層ポリイミド樹脂無端状ベルトの断面図である。
【図8】図1の第1塗膜乾燥工程での第1塗膜の残留溶媒量と裏面抵抗率との関係を示すグラフである。
【図9】図1の工程順によって製造された2層ポリイミド樹脂無端状ベルトの軸方向位置に対する裏面抵抗率を示すグラフである。
【図10】表面抵抗率を測定するための円形電極を示す平面図(A)および断面図(B)である。
【図11】体積抵抗率を測定するための円形電極を示す平面図(A)および断面図(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る無端状ベルトの製造方法、具体的には2層ポリイミド樹脂無端状ベルトの製造方法の実施形態の一例について、添付の図面を用いて説明する。
【0011】
先に2層ポリイミド樹脂無端状ベルトについて概説する。
【0012】
本発明に係る2層ポリイミド樹脂無端状ベルトは、例えば画像形成装置の転写ベルトに使用される。転写ベルトでは、転写するトナーに濃度ムラが生じないように、ベルト表面の表面抵抗率(以下、単に「表面抵抗率」という)、ベルト裏面の表面抵抗率(以下、単に「裏面抵抗率」という)および体積抵抗率をそれぞれ規定の範囲に収めることが望まれている。しかし、ベルトの電気特性であるこれら各抵抗率は互いに関連しており、単層のベルトでこれら各抵抗率を規定値に収めることは難しい。このため、転写ベルトには、導電性粒子の分散濃度を相違させた外層および内層の2層構造を有する2層ポリイミド樹脂無端状ベルトを採用している。
【0013】
以下、2層ポリイミド樹脂無端状ベルトの製造方法について説明する。
【0014】
図1は、2層ポリイミド樹脂無端状ベルトの製造方法の工程順を示している。図1に示すように、2層ポリイミド樹脂無端状ベルトは、第1塗膜形成工程、第1塗膜乾燥工程、第2塗膜形成工程、第2塗膜乾燥工程、加熱工程および取外工程を経て製造される。以下、各工程に関して具体的に説明する。
【0015】
(第1塗膜形成工程)
図2は、塗膜形成装置10の構成を示している。この塗膜形成装置10においては、円筒状の芯体12をその軸方向を水平にして軸周り(図中の矢印Bで示す)に回転させながら、皮膜形成樹脂溶液14を流下装置16から吐出して芯体12周面に付着させる。皮膜形成樹脂溶液14は、皮膜形成樹脂溶液14を貯留するタンク18からポンプ20により供給管22を通じて流下装置16に供給される。芯体12の周面に付着した皮膜形成樹脂溶液14は、へら24によって平滑化される。芯体12は、回転装置26により軸方向を水平にした状態で軸周りに矢印B方向に回転する。
【0016】
流下装置16とへら24とは、芯体12の軸方向に移動可能に支持されており、芯体12を予め設定された回転速度で回転させた状態で、流下装置16とへら24とが芯体12の軸方向(矢印C方向)に移動しつつ皮膜形成樹脂溶液14を吐出することで、芯体12の表面に螺旋状に皮膜形成樹脂溶液14が塗布され、へら24で平滑化させて螺旋状の筋を消滅させ、継ぎ目のない塗膜28が形成される。この第1塗膜形成工程で形成される塗膜28を第1塗膜と呼ぶ。また、後述するように、第2塗膜形成工程で形成される塗膜28を第2塗膜と呼ぶ。第1塗膜の膜厚は200μm(できあがり膜厚33μm)に設定される。
【0017】
皮膜形成樹脂溶液14には、ポリイミド樹脂(PI)前駆体および導電性粒子が含まれている。正確には、PI前駆体溶液に導電性粒子が分散され、皮膜形成樹脂溶液14とされている。
【0018】
PI前駆体溶液は、テトラカルボン酸二無水物とジアミン成分を、溶剤中で反応させることによって得られる。各成分の種類は特に制限されないが、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン成分とを反応させて得られるものが、皮膜強度の点から好ましい。
【0019】
芳香族テトラカルボン酸としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、あるいはこれらのテトラカルボン酸エステル、又は上記各テトラカルボン酸類の混合物等が挙げられる。
【0020】
芳香族ジアミン成分としては、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノフェニルメタン、ベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン等が挙げられる。
【0021】
PI前駆体溶液の溶剤としては、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトアミド等の非プロトン系極性溶剤が用いられる。溶液の濃度・粘度等に限定はないが、望ましい溶液の固形分濃度は10質量%以上40質量%以下、粘度は1Pa・s以上100Pa・s以下である。
【0022】
PI前駆体溶液に分散させる導電性粒子としては、例えば、カーボンブラック、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、グラファイト等の炭素系物質、銅、銀、アルミニウム等の金属又は合金、酸化錫、酸化インジウム、酸化アンチモン等の導電性金属酸化物、チタン酸カリウム等のウィスカー、等が挙げられる。中でも、液中の分散安定性、半導電性の発現性、価格等の観点で、カーボンブラックは特に好ましい。
【0023】
導電性粒子の分散方法としては、ボールミル、サンドミル(ビーズミル)、ジェットミル(対抗衝突型分散機)等、公知の方法をとることができる。分散助剤として、界面活性剤やレベリング剤等を添加してもよい。導電性粒子の分散濃度は、樹脂成分100部(質量部、以下同様)に対して、10部以上40部以下、特には15部以上35部以下が好ましい。
【0024】
この実施形態では、具体的に、PI前駆体溶液(商品名:Uワニス、宇部興産製、固形分濃度18%、溶剤はN−メチルピロリドン)100質量部に、カーボンブラック(商品名:スペシャルブラック4、デグザヒュルス社製)を固形分質量比で22.4%混合し、次いで対向衝突型分散機(株式会社ジーナス製、GeanusPY)により分散させたものを皮膜形成樹脂溶液14とした。
【0025】
なお、芯体12の材質は、加工性や耐久性の面でステンレスが特に好ましい。芯体12の幅(軸方向の長さ)は、目的とするベルト幅以上が必要であるが、端部に生じる無効領域に対する余裕領域を確保するため、目的とするベルト幅より、10%乃至40%程度長いことが望ましい。芯体12の長さ(周長)は、目的とするベルト長と同等か、わずかに大きくする。
【0026】
(第1塗膜乾燥工程)
図3および図4は、乾燥装置30の構成を示している。乾燥装置30は、乾燥炉32内において上方から熱風(加熱された空気)を送り出す熱風機34と、芯体12を回転可能に支持する支持台36を備えている。第1塗膜形成工程において第1塗膜が形成された芯体12は、支持台36に載せられ図示しない駆動装置によって回転される。そして、熱風機34から送り出される熱風を芯体12の全長に渡って吹き付け、第1塗膜を乾燥させる。熱風機34が送り出す熱風の温度は100℃〜200℃の範囲とされる。
【0027】
図5は、この乾燥装置30における芯体12の軸方向位置に対する温度分布を示している。具体的に、芯体12を10rpmで回転させつつ150℃に設定された熱風を10分間送り出した場合の芯体12の軸方向位置に対する温度分布である。図示の如く、芯体12の軸方向位置に対する温度は一定ではなく、両端部は中央部に比べて高くなっている。これは、図3に示すように、乾燥装置30では熱風は芯体の中央部から両端部へと広がるためと考えられる。
【0028】
図6は、この乾燥装置30による第1塗膜の乾燥時間と残留溶媒量との関係を示している。なお、芯体は10rpmで回転させ、熱風は150℃に設定した。図中の黒丸プロットで示される曲線は、第1塗膜の軸方向端部における残留溶媒量を示している。図中の黒三角プロットで示される曲線は、第1塗膜の軸方向中央部における残留溶媒量を示している。図示の如く、第1塗膜の軸方向中央部および軸方向端部の残留溶媒量はいずれも乾燥時間が長くなるにつれて減少するが、同乾燥時間で比べた場合には軸方向端部の残留溶媒量の方が軸方向中央部の残留溶媒量よりも小さくなっている。これは、図5で示したように芯体12の軸方向位置に対する温度が一定ではなく、第1塗膜の軸方向中央部の乾燥速度よりも軸方向端部の乾燥速度の方が高いためである。
【0029】
このように、熱風機34によって熱風を吹き付ける型の乾燥装置30では、軸方向に渡ってムラ無く第1塗膜を乾燥させ難く、残留溶媒量で言えば数%の乾燥ムラが生じることとなる。それでも、乾燥時間および熱風温度の両者あるいはいずれか一方を調整することにより、第1塗膜の残留溶媒量の各部での差異を10%以内に収めることは十分に可能である。そこで、本実施形態における第1塗膜乾燥工程では、第1塗膜の残留溶媒量が各部において10%以上22%以下の範囲内に収まるように、第1塗膜を乾燥させている。その理由については後述する。
【0030】
(第2塗膜形成工程)
第2塗膜形成工程では、塗膜形成装置10を再度用い、第1塗膜乾燥工程で乾燥させられた第1塗膜の上に第2塗膜を形成する。第2塗膜の形成に用いられる皮膜形成樹脂溶液15(図2参照)は、第1塗膜の形成に用いられる皮膜形成樹脂溶液14に対して導電性粒子の含有量が相違させられている。
【0031】
この実施形態では、具体的に、PI前駆体溶液(商品名:Uワニス、宇部興産製、固形分濃度18%、溶剤はN−メチルピロリドン)100質量部に、カーボンブラック(商品名:スペシャルブラック4、デグザヒュルス社製)を固形分質量比で20.4%混合し、次いで対向衝突型分散機(株式会社ジーナス製、GeanusPY)により分散させたものを皮膜形成樹脂溶液15とした。なお、第2塗膜の膜厚は400μm(できあがり膜厚67μm)に設定される。
【0032】
(第2塗膜乾燥工程)
第2塗膜形成工程では、乾燥装置を再度用い、第2塗膜形成工程で形成された第2塗膜を乾燥させる。第2塗膜の乾燥ムラは後述する高濃度導電性粒子層44の厚さに影響を与えないので、第2塗膜はその残留溶媒量が20%以上50%以下の範囲内に収まるように乾燥させればよい。なお、残留溶媒量が50%を超えると第2塗膜に皺が生じたり、第2塗膜が白色化したりすることがあり、残留溶媒量が20%未満であると第2塗膜にひび割れが生じることがある。
【0033】
(加熱工程)
加熱工程では、第1塗膜と第2塗膜とが形成された芯体12を適宜な加熱炉に入れ、好ましくは250〜450℃、より好ましくは300〜350℃程度で、20〜60分間、加熱処理する。それにより、第1塗膜および第2塗膜のPI前駆体のイミド化反応が起こり、2層構造のPI樹脂皮膜が形成される。
【0034】
なお、この加熱工程においては、加熱の最終温度に達する前に温度を段階的または一定速度で徐々に上昇させるとよい。
【0035】
(取外工程)
加熱工程での加熱処理後、芯体12から2層構造のPI樹脂皮膜を取り外す。これにより、第1塗膜から形成されるPI樹脂皮膜を内層40(図7参照)、第2塗膜から形成されるPI樹脂皮膜を外層42(図7参照)とする2層ポリイミド樹脂無端状ベルトが得られる。
【0036】
なお、2層ポリイミド樹脂無端状ベルトの端部は、厚みムラがある場合があるため、必要に応じて切り落とす。また、この2層ポリイミド樹脂無端状ベルトを画像形成装置の転写ベルトなどの各種のベルト部材とする場合には、必要に応じて穴あけ加工やリブ付け加工などを施す。
【0037】
(第1塗膜の残留溶媒量について)
次に、第1塗膜乾燥工程における第1塗膜の残留溶媒量を各部において10%以上22%以下の範囲内に収める技術的意義を説明する。
【0038】
図7は、上記の各工程を経て製造された2層ポリイミド樹脂無端状ベルトの断面図を示している。図示の如く、2層ポリイミド樹脂無端状ベルトの内層40と外層42との間には、内層40よりに位置する高濃度導電性粒子層44と外層42よりに位置する低濃度導電性粒子層46とが形成されている。これら高濃度導電性粒子層44および低濃度導電性粒子層46の形成は、第2塗膜形成工程において乾燥された第1塗膜の上に第2塗膜を塗布したとき、第1塗膜と第2塗膜との境界面でPI前駆体および導電性粒子のうちPI前駆体が第2塗膜の側へと染み出し、導電性粒子が第1塗膜の側に残されることに起因する。なお、2層ポリイミド樹脂無端状ベルトは正確には内層40、高濃度導電性粒子層44、低濃度導電性粒子層46および外層42の4層構造とも言えるが、高濃度導電性粒子層44および低濃度導電性粒子層46は内層40と外層42に比べて薄いため、2層構造と称している。
【0039】
高濃度導電性粒子層44の導電性粒子の濃度は内層40の導電性粒子の濃度よりも高く、低濃度導電性粒子層46の導電性粒子の濃度は内層40の導電性粒子の濃度よりも低い。このため、2層ポリイミド樹脂無端状ベルトの内層40側の表面電流は、図中の矢印Xで示すように、高濃度導電性粒子層44を流れる。即ち、2層ポリイミド樹脂無端状ベルトの内層40側の表面抵抗率(裏面抵抗率)は、高濃度導電性粒子層44の厚さに依存し、高濃度導電性粒子層44の層厚が厚いほど裏面抵抗率は小さくなり、高濃度導電性粒子層44の層厚が薄いほど裏面抵抗率は大きくなる。
【0040】
図8は、第1塗膜乾燥工程での第1塗膜の残留溶媒量と裏面抵抗率との関係を示している。図示の如く、残留溶媒量が10%以上22%以下の範囲内においては裏面抵抗率が低くほぼ一定であるが、残留溶媒量が10%未満あるいは22%超えとなると裏面抵抗率は高くなる。これは、残留溶媒量が10%以上22%以下の範囲内においては高濃度導電性粒子層44が比較的厚く形成され、残留溶媒量が10%未満あるいは22%超えとなると高濃度導電性粒子層44が比較的薄く形成されるためと考えられる。
【0041】
また、高濃度導電性粒子層44の全体的な厚さが比較的厚い場合には、たとえ高濃度導電性粒子層44に厚さムラがあるとしても、全体的な厚さが厚いが故に厚さムラによる裏面抵抗率ムラはそれほど顕著にはならないと考えられる。逆に、高濃度導電性粒子層44の全体的な厚さが比較的薄い場合には、高濃度導電性粒子層44に厚さムラがあると、全体的な厚さが薄いが故に厚さムラによる裏面抵抗率ムラは顕著になると考えられる。
【0042】
図9は、2層ポリイミド樹脂無端状ベルトの軸方向位置に対する裏面抵抗率を示している。
【0043】
図中の実施例(黒丸プロット)は、第1塗膜乾燥工程において熱風温度を150℃、乾燥時間を20分間に設定し、第1塗膜の残留溶媒量を各部において概ね10%以上22%以下の範囲内に収めるように乾燥させた場合(図6参照)の2層ポリイミド樹脂無端状ベルトの軸方向位置に対する裏面抵抗率を示している。
【0044】
図中の比較例1(黒四角プロット)は、第1塗膜乾燥工程において熱風温度を150℃、乾燥時間を10分間に設定し、第1塗膜の残留溶媒量を各部において概ね22%以上34%以下の範囲内に収めるように乾燥させた場合(図6参照)の2層ポリイミド樹脂無端状ベルトの軸方向位置に対する裏面抵抗率を示している。
【0045】
図中の比較例2(黒三角プロット)は、実施例および比較例1に比べて第1塗膜の形成に用いられる皮膜形成樹脂溶液14の導電性粒子の分散濃度を増加させた場合であって、比較例1と同様に第1塗膜乾燥工程において熱風温度を150℃、乾燥時間を10分間に設定し、第1塗膜の残留溶媒量を各部において概ね22%以上34%以下の範囲内に収めるように乾燥させた場合(図6参照)の2層ポリイミド樹脂無端状ベルトの軸方向位置に対する裏面抵抗率を示している。
【0046】
実施例と比較例1とを対比すると、全体的に裏面抵抗率は実施例の方が比較例1よりも低く、また軸方向位置に対する裏面抵抗率の最大値と最小値の差(裏面抵抗率ムラ)は実施例の方が比較例1よりも小さい。これは、2層ポリイミド樹脂無端状ベルトにおける高濃度導電性粒子層44の厚さが実施例の方が比較例1よりも厚いためと考えられる。
【0047】
比較例2では、導電性粒子の分散濃度を実施例および比較例1よりも高くしたため、裏面抵抗率は比較例1に対して全体的に減少し、平均値で比較すれば実施例と同程度となっている。しかし、比較例2では、比較例1と同様、軸方向位置に対する裏面抵抗率の最大値と最小値の差(裏面抵抗率ムラ)は大きい。これは、2層ポリイミド樹脂無端状ベルトにおける高濃度導電性粒子層44の厚さが比較例1と同様、比較的薄いためと考えられる。
【0048】
即ち、第1塗膜乾燥工程における第1塗膜の残留溶媒量を各部において10%以上22%の範囲内に収めることにより、高濃度導電性粒子層44が比較的厚く形成され、2層ポリイミド樹脂無端状ベルトの裏面抵抗率ムラが抑制することが可能であると考えられる。
【0049】
以上のように、本実施形態に係る2層ポリイミド樹脂無端状ベルトの製造方法においては、PI前駆体と導電性粒子が含まれる皮膜形成樹脂溶液14(導電性粒子の分散濃度22.4%)を芯体12の周面に塗布して第1塗膜を形成し(第1塗膜形成工程)、次いで第1塗膜を乾燥させ(第1塗膜乾燥工程)、次いで乾燥させられた第1塗膜の上にPI前駆体と導電性粒子が含まれる皮膜形成樹脂溶液15(導電性粒子の分散濃度20.4%)を塗布して第2塗膜を形成し(第2塗膜形成工程)、次いで第2塗膜を乾燥させ(第2塗膜乾燥工程)、次いでポリイミド前駆体がイミド化するように第1塗膜および第2塗膜を加熱し(加熱工程)、次いで第1塗膜および第2塗膜を芯材から取り外す(取外工程)ことで、2層ポリイミド樹脂無端状ベルトを製造する。
【0050】
そして、第1塗膜を乾燥させるに際して、第1塗膜の残留溶媒量が各部において10%以上22%の範囲内に収まるようにする。それにより、高濃度導電性粒子層44が比較的厚く形成される。従って、裏面抵抗率が各部においてバラ付くのが抑制された2層ポリイミド樹脂無端状ベルトが製造される。
【0051】
なお、2層ポリイミド樹脂無端状ベルトを画像形成装置の転写ベルトに採用する場合、上述したように、2層ポリイミド樹脂無端状ベルトの表面および裏面の表面抵抗率並びに体積抵抗率は重要な電気特性とされる。以下、表面抵抗率の測定および体積抵抗率の測定について説明する。
【0052】
(表面抵抗率の測定)
表面抵抗率は、試験片の表面に沿って流れる電流と平行方向の電位傾度を、表面の単位幅当たりの電流で除した数値であり、各辺1cmの正方形の相対する辺を電極とする二つの電極間の表面抵抗に等しい。表面抵抗率の単位は、正式にはΩだが、単なる抵抗と区別するためΩ/□と記載される。
【0053】
表面抵抗率は、図10に示すような円形電極100を用いて測定される。図10(A)は円形電極100の平面を示し、図10(B)は図10(A)中のB−B線における断面を示している。円形電極100は、第一電圧印加電極102と板状絶縁体104とを備える。第一電圧印加電極102は、円柱状電極部106と、該円柱状電極部106の外径よりも大きい内径を有し、且つ円柱状電極部106を一定の間隔で囲む円筒状のリング状電極部108とを備える。第一電圧印加電極102における円柱状電極部106及びリング状電極部108と板状絶縁体104との間に被測定物Tを挟持し、第一電圧印加電極102における円柱状電極部106とリング状電極部108との間に電圧V(V)を印可したときに流れる電流I(A)を測定する。そして、下記式(1)により、被測定物Tの表面抵抗率ρs(Ω/□)を算出する。ここで、下記式(1)中、d(mm)は円柱状電極部106の外径を示す。D(mm)はリング状電極部108の内径を示す。
式(1) ρs=π×(D+d)/(D−d)×(V/I)
【0054】
(体積抵抗率の測定)
体積抵抗率は、試験片の表裏を流れる電流を試験片の厚さで除した数値であり、各辺1cmの立方体の相対する二つの電極間の体積抵抗に等しい。体積抵抗率の単位は、Ωcmである。
【0055】
体積抵抗率は、図11に示すような円形電極200を用いて測定される。図11(A)は円形電極200の平面を示し、図11(B)は図11(A)中のB−B線における断面を示している。円形電極200は、第一電圧印加電極202と第二電圧印加電極204とを備える。第一電圧印加電極202は、円柱状電極部206と、該円柱状電極部206の外径よりも大きい内径を有し、且つ円柱状電極部206を一定の間隔で囲む円筒状のリング状電極部208とを備える。第一電圧印加電極202における円柱状電極部206及びリング状電極部208と第二電圧印加電極204との間に被測定物Tを挟持し、第一電圧印加電極202における円柱状電極部206と第二電圧印加電極204との間に電圧V(V)を印可したときに流れる電流I(A)を測定する。そして、下記式(2)により、被測定物Tの体積抵抗率ρv(Ωcm)を算出する。ここで、下記式(2)中、D(mm)はリング状電極部208の内径を示し、tは被測定物Tの厚さを示す。
式(2) ρv=π×(D/2)2/t×(V/I)
【0056】
円形電極200によって体積抵抗率を測定する際、第二電圧印加電極204と被測定物Tとの間に空気が入り込むと測定精度が低下する。これを抑制するため、この円形電極200には、第二電圧印加電極204にその厚さ方向に沿って貫通形成される空気抜き孔210と、空気抜き孔210に負圧を発生させる負圧発生機212とを設けている。
【0057】
空気抜き孔210は、第二電圧印加電極204の中央部に1個、その周りに60度間隔で6個、計7個設けられている。負圧発生機212は、例えば真空エジェクタあるいは真空ポンプのエア継手214が第二電圧印加電極204の被測定物Tが接触する面204aとは反対側の面204bに接続されて構成される。なお、図11(B)のように、計7個の空気抜き孔210に共通のエア継手214を1個設けてもよいし、7個の空気抜き孔210それぞれにエア継手214を設けてもよい。
【0058】
負圧発生機212によって空気抜き孔210に負圧を発生させつつ第二電圧印加電極204を被測定物Tに接触させることで、第二電圧印加電極204と被測定物Tとの間に空気が入り込むのが抑制される。それにより、被測定物Tの体積抵抗率を精度良く測定することが可能となる。
【0059】
なお、体積抵抗率の測定終了後、空気抜き孔210に正圧を生じさせ被測定物Tに向けて空気を噴き出させてもよい。それにより、被測定物Tと第二電圧印加電極204との剥離が容易となる。
【符号の説明】
【0060】
14 皮膜形成樹脂溶液
15 皮膜形成樹脂溶液
40 内層
42 外層
44 高濃度導電性粒子層
46 低濃度導電性粒子層
【技術分野】
【0001】
本発明は、無端状ベルトの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、無端状ベルト、特に2層ポリイミド樹脂無端状ベルトとして、外層(121)及び内層(122)の積層体からなる管状体であって、内層(122)には、厚み方向において、他の領域(導電点偏在領域(124A)以外の内層(122)領域、及び外層(121)領域)よりも導電性が高い領域を有する管状体が記載されている。
【0003】
特許文献2には、無端状ベルトの製造方法として、皮膜形成樹脂溶液を塗布することにより塗膜がその表面に形成された芯体を、乾燥炉(100)内に配置して加熱し前記塗膜を乾燥させて樹脂皮膜を形成する乾燥工程と、前記樹脂皮膜が形成された芯体を、加熱炉(200)内に配置して加熱し前記樹脂皮膜を焼成する加熱工程とを含み、前記加熱工程において、前記加熱炉から排気された排気ガス(210)を前記乾燥炉に供給することが記載されている。
【0004】
特許文献3には、ポリイミド製フィルムの電気抵抗率調節方法として、ポリアミド酸溶液を円筒状金型に塗布又はシート状金属表面に流延してポリアミド酸塗膜を形成し、該ポリアミド酸塗膜を加熱乾燥した後、イミド転化反応をさせてポリイミド樹脂皮膜を形成してポリイミド製フィルムを製造する際に、前記加熱乾燥の温度、該加熱乾燥後の前記ポリアミド酸塗膜の固形分率、前記イミド転化反応における最高到達温度及び250℃以上の温度に保持されている時間、前記ポリイミド樹脂皮膜の厚さ、を予め一定の値に設定し、前記ポリアミド酸溶液中のカーボンブラックの含有量を変化させることにより、前記ポリイミド製フィルムの電気抵抗率を調節することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−241123号公報
【特許文献2】特開2007−216510号公報
【特許文献3】特開2005−66838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、第1塗膜を形成し乾燥させ、その上に第2塗膜を形成し乾燥させる工程を経て製造される無端状ベルトの製造方法において、無端状ベルトの内層側の表面抵抗率が各部においてバラ付くのを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1の無端状ベルトの製造方法は、ポリイミド前駆体と導電性粒子とが含まれる溶液を芯材の周面に塗布して第1塗膜を形成する第1塗膜形成工程と、前記第1塗膜の残留溶媒量が各部において10%以上22%以下の範囲内に収まるように、前記第1塗膜を乾燥させる第1乾燥工程と、前記第1乾燥工程において乾燥させられた第1塗膜の上にポリイミド前駆体と導電性粒子とが含まれる溶液を塗布して第2塗膜を形成する第2塗膜形成工程と、前記第2塗膜を乾燥させる第2乾燥工程と、前記ポリイミド前駆体がイミド化するように、前記第1乾燥工程において乾燥させられた第1塗膜および第2乾燥工程において乾燥させられた第2塗膜を加熱する加熱工程と、前記加熱工程で加熱された第1塗膜および第2塗膜を前記芯材から取り外す取外工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の請求項1に記載の無端状ベルトの製造方法によれば、第1乾燥工程において第1塗膜を乾燥させるに際して第1塗膜の残留溶媒量を各部において10%以上22%以下の範囲内に収めない場合に比べて、無端状ベルトの内層側の表面抵抗率が各部においてバラ付くのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の2層ポリイミド樹脂無端状ベルトの製造方法に係る工程順を示す図である。
【図2】図1の第1塗膜形成工程(および第2塗膜形成工程)に用いられる塗膜形成装置の構成を示す図である。
【図3】図1の第1塗膜乾燥工程(および第2塗膜乾燥工程)に用いられる乾燥装置の構成を示す正面図である。
【図4】図1の第1塗膜乾燥工程(および第2塗膜乾燥工程)に用いられる乾燥装置の構成を示す側面図である。
【図5】図3および図4の乾燥装置における芯体の軸方向位置に対する温度分布を示すグラフである。
【図6】図3および図4の乾燥装置による第1塗膜の乾燥時間と残留溶媒量との関係を示すグラフである。
【図7】図1の工程順によって製造された2層ポリイミド樹脂無端状ベルトの断面図である。
【図8】図1の第1塗膜乾燥工程での第1塗膜の残留溶媒量と裏面抵抗率との関係を示すグラフである。
【図9】図1の工程順によって製造された2層ポリイミド樹脂無端状ベルトの軸方向位置に対する裏面抵抗率を示すグラフである。
【図10】表面抵抗率を測定するための円形電極を示す平面図(A)および断面図(B)である。
【図11】体積抵抗率を測定するための円形電極を示す平面図(A)および断面図(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る無端状ベルトの製造方法、具体的には2層ポリイミド樹脂無端状ベルトの製造方法の実施形態の一例について、添付の図面を用いて説明する。
【0011】
先に2層ポリイミド樹脂無端状ベルトについて概説する。
【0012】
本発明に係る2層ポリイミド樹脂無端状ベルトは、例えば画像形成装置の転写ベルトに使用される。転写ベルトでは、転写するトナーに濃度ムラが生じないように、ベルト表面の表面抵抗率(以下、単に「表面抵抗率」という)、ベルト裏面の表面抵抗率(以下、単に「裏面抵抗率」という)および体積抵抗率をそれぞれ規定の範囲に収めることが望まれている。しかし、ベルトの電気特性であるこれら各抵抗率は互いに関連しており、単層のベルトでこれら各抵抗率を規定値に収めることは難しい。このため、転写ベルトには、導電性粒子の分散濃度を相違させた外層および内層の2層構造を有する2層ポリイミド樹脂無端状ベルトを採用している。
【0013】
以下、2層ポリイミド樹脂無端状ベルトの製造方法について説明する。
【0014】
図1は、2層ポリイミド樹脂無端状ベルトの製造方法の工程順を示している。図1に示すように、2層ポリイミド樹脂無端状ベルトは、第1塗膜形成工程、第1塗膜乾燥工程、第2塗膜形成工程、第2塗膜乾燥工程、加熱工程および取外工程を経て製造される。以下、各工程に関して具体的に説明する。
【0015】
(第1塗膜形成工程)
図2は、塗膜形成装置10の構成を示している。この塗膜形成装置10においては、円筒状の芯体12をその軸方向を水平にして軸周り(図中の矢印Bで示す)に回転させながら、皮膜形成樹脂溶液14を流下装置16から吐出して芯体12周面に付着させる。皮膜形成樹脂溶液14は、皮膜形成樹脂溶液14を貯留するタンク18からポンプ20により供給管22を通じて流下装置16に供給される。芯体12の周面に付着した皮膜形成樹脂溶液14は、へら24によって平滑化される。芯体12は、回転装置26により軸方向を水平にした状態で軸周りに矢印B方向に回転する。
【0016】
流下装置16とへら24とは、芯体12の軸方向に移動可能に支持されており、芯体12を予め設定された回転速度で回転させた状態で、流下装置16とへら24とが芯体12の軸方向(矢印C方向)に移動しつつ皮膜形成樹脂溶液14を吐出することで、芯体12の表面に螺旋状に皮膜形成樹脂溶液14が塗布され、へら24で平滑化させて螺旋状の筋を消滅させ、継ぎ目のない塗膜28が形成される。この第1塗膜形成工程で形成される塗膜28を第1塗膜と呼ぶ。また、後述するように、第2塗膜形成工程で形成される塗膜28を第2塗膜と呼ぶ。第1塗膜の膜厚は200μm(できあがり膜厚33μm)に設定される。
【0017】
皮膜形成樹脂溶液14には、ポリイミド樹脂(PI)前駆体および導電性粒子が含まれている。正確には、PI前駆体溶液に導電性粒子が分散され、皮膜形成樹脂溶液14とされている。
【0018】
PI前駆体溶液は、テトラカルボン酸二無水物とジアミン成分を、溶剤中で反応させることによって得られる。各成分の種類は特に制限されないが、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン成分とを反応させて得られるものが、皮膜強度の点から好ましい。
【0019】
芳香族テトラカルボン酸としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、あるいはこれらのテトラカルボン酸エステル、又は上記各テトラカルボン酸類の混合物等が挙げられる。
【0020】
芳香族ジアミン成分としては、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノフェニルメタン、ベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン等が挙げられる。
【0021】
PI前駆体溶液の溶剤としては、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトアミド等の非プロトン系極性溶剤が用いられる。溶液の濃度・粘度等に限定はないが、望ましい溶液の固形分濃度は10質量%以上40質量%以下、粘度は1Pa・s以上100Pa・s以下である。
【0022】
PI前駆体溶液に分散させる導電性粒子としては、例えば、カーボンブラック、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、グラファイト等の炭素系物質、銅、銀、アルミニウム等の金属又は合金、酸化錫、酸化インジウム、酸化アンチモン等の導電性金属酸化物、チタン酸カリウム等のウィスカー、等が挙げられる。中でも、液中の分散安定性、半導電性の発現性、価格等の観点で、カーボンブラックは特に好ましい。
【0023】
導電性粒子の分散方法としては、ボールミル、サンドミル(ビーズミル)、ジェットミル(対抗衝突型分散機)等、公知の方法をとることができる。分散助剤として、界面活性剤やレベリング剤等を添加してもよい。導電性粒子の分散濃度は、樹脂成分100部(質量部、以下同様)に対して、10部以上40部以下、特には15部以上35部以下が好ましい。
【0024】
この実施形態では、具体的に、PI前駆体溶液(商品名:Uワニス、宇部興産製、固形分濃度18%、溶剤はN−メチルピロリドン)100質量部に、カーボンブラック(商品名:スペシャルブラック4、デグザヒュルス社製)を固形分質量比で22.4%混合し、次いで対向衝突型分散機(株式会社ジーナス製、GeanusPY)により分散させたものを皮膜形成樹脂溶液14とした。
【0025】
なお、芯体12の材質は、加工性や耐久性の面でステンレスが特に好ましい。芯体12の幅(軸方向の長さ)は、目的とするベルト幅以上が必要であるが、端部に生じる無効領域に対する余裕領域を確保するため、目的とするベルト幅より、10%乃至40%程度長いことが望ましい。芯体12の長さ(周長)は、目的とするベルト長と同等か、わずかに大きくする。
【0026】
(第1塗膜乾燥工程)
図3および図4は、乾燥装置30の構成を示している。乾燥装置30は、乾燥炉32内において上方から熱風(加熱された空気)を送り出す熱風機34と、芯体12を回転可能に支持する支持台36を備えている。第1塗膜形成工程において第1塗膜が形成された芯体12は、支持台36に載せられ図示しない駆動装置によって回転される。そして、熱風機34から送り出される熱風を芯体12の全長に渡って吹き付け、第1塗膜を乾燥させる。熱風機34が送り出す熱風の温度は100℃〜200℃の範囲とされる。
【0027】
図5は、この乾燥装置30における芯体12の軸方向位置に対する温度分布を示している。具体的に、芯体12を10rpmで回転させつつ150℃に設定された熱風を10分間送り出した場合の芯体12の軸方向位置に対する温度分布である。図示の如く、芯体12の軸方向位置に対する温度は一定ではなく、両端部は中央部に比べて高くなっている。これは、図3に示すように、乾燥装置30では熱風は芯体の中央部から両端部へと広がるためと考えられる。
【0028】
図6は、この乾燥装置30による第1塗膜の乾燥時間と残留溶媒量との関係を示している。なお、芯体は10rpmで回転させ、熱風は150℃に設定した。図中の黒丸プロットで示される曲線は、第1塗膜の軸方向端部における残留溶媒量を示している。図中の黒三角プロットで示される曲線は、第1塗膜の軸方向中央部における残留溶媒量を示している。図示の如く、第1塗膜の軸方向中央部および軸方向端部の残留溶媒量はいずれも乾燥時間が長くなるにつれて減少するが、同乾燥時間で比べた場合には軸方向端部の残留溶媒量の方が軸方向中央部の残留溶媒量よりも小さくなっている。これは、図5で示したように芯体12の軸方向位置に対する温度が一定ではなく、第1塗膜の軸方向中央部の乾燥速度よりも軸方向端部の乾燥速度の方が高いためである。
【0029】
このように、熱風機34によって熱風を吹き付ける型の乾燥装置30では、軸方向に渡ってムラ無く第1塗膜を乾燥させ難く、残留溶媒量で言えば数%の乾燥ムラが生じることとなる。それでも、乾燥時間および熱風温度の両者あるいはいずれか一方を調整することにより、第1塗膜の残留溶媒量の各部での差異を10%以内に収めることは十分に可能である。そこで、本実施形態における第1塗膜乾燥工程では、第1塗膜の残留溶媒量が各部において10%以上22%以下の範囲内に収まるように、第1塗膜を乾燥させている。その理由については後述する。
【0030】
(第2塗膜形成工程)
第2塗膜形成工程では、塗膜形成装置10を再度用い、第1塗膜乾燥工程で乾燥させられた第1塗膜の上に第2塗膜を形成する。第2塗膜の形成に用いられる皮膜形成樹脂溶液15(図2参照)は、第1塗膜の形成に用いられる皮膜形成樹脂溶液14に対して導電性粒子の含有量が相違させられている。
【0031】
この実施形態では、具体的に、PI前駆体溶液(商品名:Uワニス、宇部興産製、固形分濃度18%、溶剤はN−メチルピロリドン)100質量部に、カーボンブラック(商品名:スペシャルブラック4、デグザヒュルス社製)を固形分質量比で20.4%混合し、次いで対向衝突型分散機(株式会社ジーナス製、GeanusPY)により分散させたものを皮膜形成樹脂溶液15とした。なお、第2塗膜の膜厚は400μm(できあがり膜厚67μm)に設定される。
【0032】
(第2塗膜乾燥工程)
第2塗膜形成工程では、乾燥装置を再度用い、第2塗膜形成工程で形成された第2塗膜を乾燥させる。第2塗膜の乾燥ムラは後述する高濃度導電性粒子層44の厚さに影響を与えないので、第2塗膜はその残留溶媒量が20%以上50%以下の範囲内に収まるように乾燥させればよい。なお、残留溶媒量が50%を超えると第2塗膜に皺が生じたり、第2塗膜が白色化したりすることがあり、残留溶媒量が20%未満であると第2塗膜にひび割れが生じることがある。
【0033】
(加熱工程)
加熱工程では、第1塗膜と第2塗膜とが形成された芯体12を適宜な加熱炉に入れ、好ましくは250〜450℃、より好ましくは300〜350℃程度で、20〜60分間、加熱処理する。それにより、第1塗膜および第2塗膜のPI前駆体のイミド化反応が起こり、2層構造のPI樹脂皮膜が形成される。
【0034】
なお、この加熱工程においては、加熱の最終温度に達する前に温度を段階的または一定速度で徐々に上昇させるとよい。
【0035】
(取外工程)
加熱工程での加熱処理後、芯体12から2層構造のPI樹脂皮膜を取り外す。これにより、第1塗膜から形成されるPI樹脂皮膜を内層40(図7参照)、第2塗膜から形成されるPI樹脂皮膜を外層42(図7参照)とする2層ポリイミド樹脂無端状ベルトが得られる。
【0036】
なお、2層ポリイミド樹脂無端状ベルトの端部は、厚みムラがある場合があるため、必要に応じて切り落とす。また、この2層ポリイミド樹脂無端状ベルトを画像形成装置の転写ベルトなどの各種のベルト部材とする場合には、必要に応じて穴あけ加工やリブ付け加工などを施す。
【0037】
(第1塗膜の残留溶媒量について)
次に、第1塗膜乾燥工程における第1塗膜の残留溶媒量を各部において10%以上22%以下の範囲内に収める技術的意義を説明する。
【0038】
図7は、上記の各工程を経て製造された2層ポリイミド樹脂無端状ベルトの断面図を示している。図示の如く、2層ポリイミド樹脂無端状ベルトの内層40と外層42との間には、内層40よりに位置する高濃度導電性粒子層44と外層42よりに位置する低濃度導電性粒子層46とが形成されている。これら高濃度導電性粒子層44および低濃度導電性粒子層46の形成は、第2塗膜形成工程において乾燥された第1塗膜の上に第2塗膜を塗布したとき、第1塗膜と第2塗膜との境界面でPI前駆体および導電性粒子のうちPI前駆体が第2塗膜の側へと染み出し、導電性粒子が第1塗膜の側に残されることに起因する。なお、2層ポリイミド樹脂無端状ベルトは正確には内層40、高濃度導電性粒子層44、低濃度導電性粒子層46および外層42の4層構造とも言えるが、高濃度導電性粒子層44および低濃度導電性粒子層46は内層40と外層42に比べて薄いため、2層構造と称している。
【0039】
高濃度導電性粒子層44の導電性粒子の濃度は内層40の導電性粒子の濃度よりも高く、低濃度導電性粒子層46の導電性粒子の濃度は内層40の導電性粒子の濃度よりも低い。このため、2層ポリイミド樹脂無端状ベルトの内層40側の表面電流は、図中の矢印Xで示すように、高濃度導電性粒子層44を流れる。即ち、2層ポリイミド樹脂無端状ベルトの内層40側の表面抵抗率(裏面抵抗率)は、高濃度導電性粒子層44の厚さに依存し、高濃度導電性粒子層44の層厚が厚いほど裏面抵抗率は小さくなり、高濃度導電性粒子層44の層厚が薄いほど裏面抵抗率は大きくなる。
【0040】
図8は、第1塗膜乾燥工程での第1塗膜の残留溶媒量と裏面抵抗率との関係を示している。図示の如く、残留溶媒量が10%以上22%以下の範囲内においては裏面抵抗率が低くほぼ一定であるが、残留溶媒量が10%未満あるいは22%超えとなると裏面抵抗率は高くなる。これは、残留溶媒量が10%以上22%以下の範囲内においては高濃度導電性粒子層44が比較的厚く形成され、残留溶媒量が10%未満あるいは22%超えとなると高濃度導電性粒子層44が比較的薄く形成されるためと考えられる。
【0041】
また、高濃度導電性粒子層44の全体的な厚さが比較的厚い場合には、たとえ高濃度導電性粒子層44に厚さムラがあるとしても、全体的な厚さが厚いが故に厚さムラによる裏面抵抗率ムラはそれほど顕著にはならないと考えられる。逆に、高濃度導電性粒子層44の全体的な厚さが比較的薄い場合には、高濃度導電性粒子層44に厚さムラがあると、全体的な厚さが薄いが故に厚さムラによる裏面抵抗率ムラは顕著になると考えられる。
【0042】
図9は、2層ポリイミド樹脂無端状ベルトの軸方向位置に対する裏面抵抗率を示している。
【0043】
図中の実施例(黒丸プロット)は、第1塗膜乾燥工程において熱風温度を150℃、乾燥時間を20分間に設定し、第1塗膜の残留溶媒量を各部において概ね10%以上22%以下の範囲内に収めるように乾燥させた場合(図6参照)の2層ポリイミド樹脂無端状ベルトの軸方向位置に対する裏面抵抗率を示している。
【0044】
図中の比較例1(黒四角プロット)は、第1塗膜乾燥工程において熱風温度を150℃、乾燥時間を10分間に設定し、第1塗膜の残留溶媒量を各部において概ね22%以上34%以下の範囲内に収めるように乾燥させた場合(図6参照)の2層ポリイミド樹脂無端状ベルトの軸方向位置に対する裏面抵抗率を示している。
【0045】
図中の比較例2(黒三角プロット)は、実施例および比較例1に比べて第1塗膜の形成に用いられる皮膜形成樹脂溶液14の導電性粒子の分散濃度を増加させた場合であって、比較例1と同様に第1塗膜乾燥工程において熱風温度を150℃、乾燥時間を10分間に設定し、第1塗膜の残留溶媒量を各部において概ね22%以上34%以下の範囲内に収めるように乾燥させた場合(図6参照)の2層ポリイミド樹脂無端状ベルトの軸方向位置に対する裏面抵抗率を示している。
【0046】
実施例と比較例1とを対比すると、全体的に裏面抵抗率は実施例の方が比較例1よりも低く、また軸方向位置に対する裏面抵抗率の最大値と最小値の差(裏面抵抗率ムラ)は実施例の方が比較例1よりも小さい。これは、2層ポリイミド樹脂無端状ベルトにおける高濃度導電性粒子層44の厚さが実施例の方が比較例1よりも厚いためと考えられる。
【0047】
比較例2では、導電性粒子の分散濃度を実施例および比較例1よりも高くしたため、裏面抵抗率は比較例1に対して全体的に減少し、平均値で比較すれば実施例と同程度となっている。しかし、比較例2では、比較例1と同様、軸方向位置に対する裏面抵抗率の最大値と最小値の差(裏面抵抗率ムラ)は大きい。これは、2層ポリイミド樹脂無端状ベルトにおける高濃度導電性粒子層44の厚さが比較例1と同様、比較的薄いためと考えられる。
【0048】
即ち、第1塗膜乾燥工程における第1塗膜の残留溶媒量を各部において10%以上22%の範囲内に収めることにより、高濃度導電性粒子層44が比較的厚く形成され、2層ポリイミド樹脂無端状ベルトの裏面抵抗率ムラが抑制することが可能であると考えられる。
【0049】
以上のように、本実施形態に係る2層ポリイミド樹脂無端状ベルトの製造方法においては、PI前駆体と導電性粒子が含まれる皮膜形成樹脂溶液14(導電性粒子の分散濃度22.4%)を芯体12の周面に塗布して第1塗膜を形成し(第1塗膜形成工程)、次いで第1塗膜を乾燥させ(第1塗膜乾燥工程)、次いで乾燥させられた第1塗膜の上にPI前駆体と導電性粒子が含まれる皮膜形成樹脂溶液15(導電性粒子の分散濃度20.4%)を塗布して第2塗膜を形成し(第2塗膜形成工程)、次いで第2塗膜を乾燥させ(第2塗膜乾燥工程)、次いでポリイミド前駆体がイミド化するように第1塗膜および第2塗膜を加熱し(加熱工程)、次いで第1塗膜および第2塗膜を芯材から取り外す(取外工程)ことで、2層ポリイミド樹脂無端状ベルトを製造する。
【0050】
そして、第1塗膜を乾燥させるに際して、第1塗膜の残留溶媒量が各部において10%以上22%の範囲内に収まるようにする。それにより、高濃度導電性粒子層44が比較的厚く形成される。従って、裏面抵抗率が各部においてバラ付くのが抑制された2層ポリイミド樹脂無端状ベルトが製造される。
【0051】
なお、2層ポリイミド樹脂無端状ベルトを画像形成装置の転写ベルトに採用する場合、上述したように、2層ポリイミド樹脂無端状ベルトの表面および裏面の表面抵抗率並びに体積抵抗率は重要な電気特性とされる。以下、表面抵抗率の測定および体積抵抗率の測定について説明する。
【0052】
(表面抵抗率の測定)
表面抵抗率は、試験片の表面に沿って流れる電流と平行方向の電位傾度を、表面の単位幅当たりの電流で除した数値であり、各辺1cmの正方形の相対する辺を電極とする二つの電極間の表面抵抗に等しい。表面抵抗率の単位は、正式にはΩだが、単なる抵抗と区別するためΩ/□と記載される。
【0053】
表面抵抗率は、図10に示すような円形電極100を用いて測定される。図10(A)は円形電極100の平面を示し、図10(B)は図10(A)中のB−B線における断面を示している。円形電極100は、第一電圧印加電極102と板状絶縁体104とを備える。第一電圧印加電極102は、円柱状電極部106と、該円柱状電極部106の外径よりも大きい内径を有し、且つ円柱状電極部106を一定の間隔で囲む円筒状のリング状電極部108とを備える。第一電圧印加電極102における円柱状電極部106及びリング状電極部108と板状絶縁体104との間に被測定物Tを挟持し、第一電圧印加電極102における円柱状電極部106とリング状電極部108との間に電圧V(V)を印可したときに流れる電流I(A)を測定する。そして、下記式(1)により、被測定物Tの表面抵抗率ρs(Ω/□)を算出する。ここで、下記式(1)中、d(mm)は円柱状電極部106の外径を示す。D(mm)はリング状電極部108の内径を示す。
式(1) ρs=π×(D+d)/(D−d)×(V/I)
【0054】
(体積抵抗率の測定)
体積抵抗率は、試験片の表裏を流れる電流を試験片の厚さで除した数値であり、各辺1cmの立方体の相対する二つの電極間の体積抵抗に等しい。体積抵抗率の単位は、Ωcmである。
【0055】
体積抵抗率は、図11に示すような円形電極200を用いて測定される。図11(A)は円形電極200の平面を示し、図11(B)は図11(A)中のB−B線における断面を示している。円形電極200は、第一電圧印加電極202と第二電圧印加電極204とを備える。第一電圧印加電極202は、円柱状電極部206と、該円柱状電極部206の外径よりも大きい内径を有し、且つ円柱状電極部206を一定の間隔で囲む円筒状のリング状電極部208とを備える。第一電圧印加電極202における円柱状電極部206及びリング状電極部208と第二電圧印加電極204との間に被測定物Tを挟持し、第一電圧印加電極202における円柱状電極部206と第二電圧印加電極204との間に電圧V(V)を印可したときに流れる電流I(A)を測定する。そして、下記式(2)により、被測定物Tの体積抵抗率ρv(Ωcm)を算出する。ここで、下記式(2)中、D(mm)はリング状電極部208の内径を示し、tは被測定物Tの厚さを示す。
式(2) ρv=π×(D/2)2/t×(V/I)
【0056】
円形電極200によって体積抵抗率を測定する際、第二電圧印加電極204と被測定物Tとの間に空気が入り込むと測定精度が低下する。これを抑制するため、この円形電極200には、第二電圧印加電極204にその厚さ方向に沿って貫通形成される空気抜き孔210と、空気抜き孔210に負圧を発生させる負圧発生機212とを設けている。
【0057】
空気抜き孔210は、第二電圧印加電極204の中央部に1個、その周りに60度間隔で6個、計7個設けられている。負圧発生機212は、例えば真空エジェクタあるいは真空ポンプのエア継手214が第二電圧印加電極204の被測定物Tが接触する面204aとは反対側の面204bに接続されて構成される。なお、図11(B)のように、計7個の空気抜き孔210に共通のエア継手214を1個設けてもよいし、7個の空気抜き孔210それぞれにエア継手214を設けてもよい。
【0058】
負圧発生機212によって空気抜き孔210に負圧を発生させつつ第二電圧印加電極204を被測定物Tに接触させることで、第二電圧印加電極204と被測定物Tとの間に空気が入り込むのが抑制される。それにより、被測定物Tの体積抵抗率を精度良く測定することが可能となる。
【0059】
なお、体積抵抗率の測定終了後、空気抜き孔210に正圧を生じさせ被測定物Tに向けて空気を噴き出させてもよい。それにより、被測定物Tと第二電圧印加電極204との剥離が容易となる。
【符号の説明】
【0060】
14 皮膜形成樹脂溶液
15 皮膜形成樹脂溶液
40 内層
42 外層
44 高濃度導電性粒子層
46 低濃度導電性粒子層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド前駆体と導電性粒子とが含まれる溶液を芯材の周面に塗布して第1塗膜を形成する第1塗膜形成工程と、
前記第1塗膜の残留溶媒量が各部において10%以上22%以下の範囲内に収まるように、前記第1塗膜を乾燥させる第1乾燥工程と、
前記第1乾燥工程において乾燥させられた第1塗膜の上にポリイミド前駆体と導電性粒子とが含まれる溶液を塗布して第2塗膜を形成する第2塗膜形成工程と、
前記第2塗膜を乾燥させる第2乾燥工程と、
前記ポリイミド前駆体がイミド化するように、前記第1乾燥工程において乾燥させられた第1塗膜および第2乾燥工程において乾燥させられた第2塗膜を加熱する加熱工程と、
前記加熱工程で加熱された第1塗膜および第2塗膜を前記芯材から取り外す取外工程と、
を有する無端状ベルトの製造方法。
【請求項1】
ポリイミド前駆体と導電性粒子とが含まれる溶液を芯材の周面に塗布して第1塗膜を形成する第1塗膜形成工程と、
前記第1塗膜の残留溶媒量が各部において10%以上22%以下の範囲内に収まるように、前記第1塗膜を乾燥させる第1乾燥工程と、
前記第1乾燥工程において乾燥させられた第1塗膜の上にポリイミド前駆体と導電性粒子とが含まれる溶液を塗布して第2塗膜を形成する第2塗膜形成工程と、
前記第2塗膜を乾燥させる第2乾燥工程と、
前記ポリイミド前駆体がイミド化するように、前記第1乾燥工程において乾燥させられた第1塗膜および第2乾燥工程において乾燥させられた第2塗膜を加熱する加熱工程と、
前記加熱工程で加熱された第1塗膜および第2塗膜を前記芯材から取り外す取外工程と、
を有する無端状ベルトの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−39729(P2013−39729A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178053(P2011−178053)
【出願日】平成23年8月16日(2011.8.16)
【特許番号】特許第4844700号(P4844700)
【特許公報発行日】平成23年12月28日(2011.12.28)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月16日(2011.8.16)
【特許番号】特許第4844700号(P4844700)
【特許公報発行日】平成23年12月28日(2011.12.28)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
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