説明

無細胞系における新規に合成されたRNAの検出およびRNA合成阻害剤の同定のための定量的アッセイ

無細胞系において新規に合成されかつ新規に開始されたRNAの集団を検出するための方法が記載される。新規に合成されかつ新規に開始されたRNAの集団についての適切な鋳型は、ウイルスレプリコンRNA、特にIICVウイルスレプリコンRNAである。新規に合成されかつ新規に開始されたRNAは、RNAの検出および/または定量のために適切である標識したヌクレオチドアナログの存在下で形成されてもよい。アッセイは、C型肝炎ウイルスなどのポジティブ鎖RNAウイルスのRNA合成の低分子阻害剤を同定するために利用されてもよい。


【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、その全体が本明細書によって組み入れられる、2003年1月6日に出願された米国仮出願60/555,765からの優先権を主張する。
【0002】
HCVは、米国における慢性肝疾患の最も蔓延している原因の1つであり、急性ウイルス性肝炎の約15%、慢性肝炎の60〜70%、ならびに肝臓疾患の最終段階である硬変、および肝癌の50%までを占める。ほぼ4百万人の米国人、または米国の人口の1.8%がHCVに対する抗体(すなわち、抗HCV抗体)を有しており、このことは、進行中または以前のウイルスによる感染を示す。C型肝炎は、米国において年間8,000〜10,000例の死亡を引き起こすと見積もられている。HCV感染の急性期は、通常、穏やかな徴候が通常付随するのに対して、いくつかの証拠は、感染した人の約15%〜約20%のみがHCVをクリアすることを示唆する。
【0003】
HCVは、フラビウイルス科ファミリーにおける、小さな、エンベロープを有する、一本鎖ポジティブ鎖RNAウイルスである。そのゲノムは、約10,000ヌクレオチドを含み、約3,000アミノ酸の単一のポリタンパク質をコードする。HCVのタンパク質産物のすべてが、ポリタンパク質のタンパク質分解によって産生され、3つのプロテアーゼ:宿主シグナルペプチダーゼ、ウイルス自己切断メタロプロテイナーゼ(NS2)、およびウイルスセリンプロテアーゼ(NS3/4A)の1つによって実行される。これらの酵素の合わせた作用は、構造タンパク質(C、E1およびE2)、ならびにウイルスゲノムRNAの複製およびパッケージングのために必要とされる非構造タンパク質(NS2、NS3、NS4A、NS4B、NS5A、およびNS5B)を産生する。NS5Bは、インプットゲノムRNAの、マイナス鎖コピー(相補的RNA、またはcRNA)への転換の原因である、ウイルスRNA-依存性RNAポリメラーゼ(RDRP)であり;次いで、cRNAは、ポジティブセンスゲノム/メッセンジャーRNAのNS5Bによる転写のための鋳型として働く。HCVレプリカーゼは、ウイルスレプリコンRNAの正確かつ効率的な合成のために必要であるタンパク質の複合体である。
【0004】
現在、HCVに対して唯一の有効な治療はα-インターフェロンであり、これは、感染した患者の少ない割合に対してのみで、肝臓および血液中のウイルスの量(例えば、ウイルス負荷)を減少する。しかし、標準型のインターフェロンは、現在、ペグ化インターフェロン(ペグインターフェロン)、ポリエチレングリコールの大きな不活性分子の付加によって化学的に修飾されたαインターフェロンによって置き換えられつつある。現時点で、インターフェロンを含む最適なレジメンは、24-または48週間のペグ化αインターフェロンおよびヌクレオシドリバビリンの組み合わせの過程であるようであり、これは、広範なウイルスに対して活性を有する経口抗ウイルス剤である。それにも関わらず、組み合わせインターフェロン/リバビリン治療に対する応答速度は、特定のHCV遺伝子型について中程度であり得、すなわち、約50%〜約60%の応答速度であるが、HCVの選択された遺伝子型の応答速度(顕著には、遺伝子型2および3)は代表的にはより高い。現在の治療に対する別の欠点は、しばしば、これらの薬剤の各々に付随する顕著な有害な副作用が存在し、これには、例えば、flu様症候群;骨髄抑制性効果;神経精神医学的効果、例えば、際だった被刺激性、不安、人格変化、抑鬱、および自殺または急性精神疾患までも;ヒスタミン様副作用;および貧血が含まれる。
【0005】
まとめると、先行する事実は、上記に言及した欠点に苦しまないHCV複製の有効な低分子阻害剤についての顕著な必要性を示す。HCVの阻害剤の特に有用なクラス、ならびに他のポジティブ鎖RNAウイルスは、ウイルスRNA合成の阻害剤である。
【0006】
HCV RNA合成阻害剤を同定するための正確かつ有効なアッセイは、有効な低分子HCV治療剤を同定するための有用なツールであり得るが、このような系は開発されてこなかった。組換えNS5Bポリメラーゼを使用するインビトロ複製アッセイが報告されてきた。しかし、この系において、精製型のNS5Bポリメラーゼは鋳型特異性を欠き、種々の長さのRNA産物を生成する。これらの現象は、HCV RNA複製から、インビボで非常に異なっている。細胞中でのHCV RNA複製プロセスをより良好に反映させるために、無細胞HCV複製系は、HCVレプリコンを発現する細胞の全細胞溶解物または膜画分を使用して確立された。この無細胞系において、放射活性P32-UTPまたはP32-CTPが使用されて、新規に合成されたHCV RNAを標識し、次いで、反応生成物が、ゲル電気泳動によって分離され、続いてオートラジオグラフィーが行われた。これらのアッセイは、他のRNA分子から全長HCV RNAを分離するためにゲル電気泳動を必要とし、その結果は、定量することが困難であり、しばしば不正確で、および再現性が乏しい。加えて、RNA伸長がこの無細胞系において起こることは明らかであるようであるが、デノボRNA開始がこの系において起こるという確信的な証拠が存在しない。
【発明の開示】
【0007】
要旨
無細胞系において新規に合成されたウイルスRNAを検出するため、およびC型肝炎ウイルス(HCV)などのポジティブ鎖RNAウイルスを阻害する化合物を同定するためのアッセイが本発明で提供される。
【0008】
本発明で提供されるものは、HCVウイルスなどのポジティブ鎖RNAウイルスから新規に合成されたRNAを検出するためのアッセイであり、これは、以前に報告されたアッセイよりも、より効率的かつ定量的である。このアッセイは、HCV RNA合成の阻害剤を含む、ポジティブ鎖RNAウイルスのRNA合成の阻害剤を同定するために有用である。このアッセイの特定の態様は、RNA伸長阻害剤からRNA合成開始阻害剤を識別するための方法を含む。
【0009】
本発明で提供されるものは、試験化合物がポジティブ鎖RNAウイルスのRNA合成を阻害するか否かを決定するための方法である。この方法は以下の工程を含む:
ポジティブ鎖RNAウイルスについての単離されたレプリカーゼ複合体、ポジティブ鎖RNAウイルスについての単離されたウイルスレプリコン鋳型RNA、標識されたヌクレオチドアナログ、および試験化合物を、インビトロRNA合成のために十分な条件下で接触させて、標識されたヌクレオチドアナログを含む新規に合成されたRNA集団を形成する工程;
上記標識されたヌクレオチドアナログを含む新規に合成されたRNA集団を検出する工程;
上記標識されたヌクレオチドアナログを含む新規に合成されたRNA集団を定量して、試験RNA量を提供する工程;ならびに
試験化合物の非存在下で産生された、標識されたヌクレオチドアナログを含む対照の新規に合成されたRNA集団の対照RNA量と、試験RNA量を比較し、ここで、対照RNA量と比較した試験RNA量の減少は、試験化合物がポジティブ鎖RNAウイルスのRNA合成を阻害することを示す、工程。
【0010】
本発明でさらに提供されるものは、ポジティブ鎖RNAウイルスの新規に開始されたRNAを定量するための方法であり、この方法は以下の工程を含む:
ポジティブ鎖RNAウイルスについての単離されたレプリカーゼ複合体、ポジティブ鎖RNAウイルスについての単離されたウイルスレプリコン鋳型RNA、および標識されたヌクレオチドアナログを、インビトロRNA合成のために十分である条件下で接触させ、標識されたヌクレオチドアナログを含む新規に合成されたRNA集団を形成する工程;
プローブおよび上記標識されたヌクレオチドアナログを含む新規に合成されたRNA集団を、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし、ここで、上記プローブは、新規に合成されたRNA集団の転写開始領域の少なくとも一部に相補的である、工程;
ハイブリダイズしていない一本鎖RNAを、一本鎖特異的リボヌクレアーゼで消化して、標識されたヌクレオチドアナログを含む保護されたRNA集団を形成する工程;
上記標識されたヌクレオチドアナログを含む保護されたRNA集団を検出する工程;ならびに
上記標識されたヌクレオチドアナログを含む保護されたRNA集団を定量する工程。
【0011】
本発明でまた提供されるものは、試験化合物がポジティブ鎖RNAウイルスのRNA合成開始阻害剤であるか否かを決定するための方法であり、この方法は以下の工程を含む:
ポジティブ鎖RNAウイルスについての単離されたレプリカーゼ複合体、ポジティブ鎖RNAウイルスについての単離されたウイルスレプリコン鋳型RNA、標識されたヌクレオチドアナログ、および試験化合物を、インビトロRNA合成のために十分な条件下で接触させて、標識されたヌクレオチドアナログを含む新規に合成されたRNA集団を形成する工程;
プローブおよび上記標識されたヌクレオチドアナログを含む新規に合成されたRNA集団を、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし、ここで、上記プローブは、新規に合成されたRNA集団の開始領域の少なくとも一部に相補的である、工程;
ハイブリダイズしていない一本鎖RNAを、一本鎖特異的リボヌクレアーゼで消化して、保護されたRNA集団を形成する工程;
上記標識されたヌクレオチドアナログを含む保護されたRNA集団を検出する工程;
上記標識されたヌクレオチドアナログを含む保護されたRNA集団を定量して、試験RNA量を提供する工程;ならびに
標識されたヌクレオチドアナログを含むが、試験化合物の非存在下で産生された、保護されたRNAの対照RNA量と、試験RNA量を比較し、ここで、対照RNA量と比較した試験RNA量の減少は、試験化合物がポジティブ鎖RNAウイルスのRNA合成の開始を阻害することを示す、工程。
【0012】
詳細な説明
本発明を詳細に説明する前に、本明細書で使用される特定の用語の定義を提供することが有益であり得る。他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0013】
専門用語および分子の説明
「レプリコン」は、本明細書で使用されるように、大部分それ自体の制御下で、複製が可能である遺伝子エレメント、例えば、プラスミド、コスミド、バクミド、またはウイルスを含む。「レプリコンRNA」は、レプリコンにの転写によって産生されるRNA、例えば、二本鎖DNAレプリコンを含む。レプリコンは、RNAまたはDNAのいずれかであり得、一本鎖または二本鎖であり得る。適切なレプリコンは、ピコルナウイルス科ファミリー、カリシウイルス科ファミリー、トガウイルス科、コロナウイルス科ファミリー、またはフラビウイルス科ファミリーのウイルスなどの一本鎖ポジティブ鎖RNAウイルスからのレプリコンである。フラビウイルスかファミリーのウイルスには、例えば、C型肝炎ウイルス、西ナイル熱ウイルス、デング熱ウイルス、クンジュイン(Kunjuin)ウイルス、黄熱病ウイルス、ウシウイルス性下痢性ウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス、日本脳炎ウイルス、およびベネズエラウマ脳炎ウイルスが含まれる。1つの態様において、レプリコンはC型肝炎ウイルスレプリコンである。
【0014】
ポジティブ鎖RNAウイルスにおいて、複製は、「レプリカーゼ複合体」と呼ばれるマルチタンパク質RNA複合体によって実行される。本明細書で使用されるように、「レプリカーゼ複合体」は、ウイルスRNA複製のために適切である無細胞条件下で、完全かつ正確なウイルスレプリコンRNA合成が可能であるポジティブおよびRNAの活性複合体である。完全かつ正確なウイルスレプリコンRNA合成によって、複製複合体が、全長ウイルスレプリコンRNAを産生可能であることが意味される。加えて、単離されたレプリカーゼ複合体は、対応するポジティブ鎖RNAウイルスのレプリカーゼRNAの複製のための特異性を示すはずである。1つの態様において、単離されたレプリカーゼ複合体は、ポジティブ鎖RNAウイルスのためのウイルスレプリコン鋳型RNAを含む。「単離されたレプリカーゼ複合体」は、その天然の細胞環境、例えば、ウイルスレプリコンRNAを発現する細胞から取り出されたレプリカーゼ複合体である。「単離されたレプリカーゼ複合体」には、ウイルスレプリカーゼRNAを発現する細胞の膜画分が含まれる。単離されたレプリカーゼ複合体は、例えば、細胞核、染色体DNA、および細胞質物質から分離されてもよい。加えて、単離されたレプリカーゼ複合体は、複合体が、完全かつ正確なウイルス複製RNA合成が可能である限りは、組換え発現系から発現された1つまたは複数のポジティブを含んでもよい。HCVのレプリカーゼ複合体は、例えば、RNA依存性RNAポリメラーゼ活性、および他のタンパク質因子を有するNS5Bタンパク質を含む。
【0015】
「核酸」または「核酸分子」とは、一本鎖または二本鎖のいずれかであり、一本鎖である場合には、直線状または環状のいずれかの、その相補的配列の分子である、DNAまたはRNA分子をいう。特定の核酸分子の配列または構造は、配列を5'から3'の方向で提供する通常の慣例に従って記載することができる。
【0016】
「単離された核酸分子」という用語は、インタクトな細胞環境から分離されている核酸分子を含む。「単離された核酸分子」は、例えば、細胞核、染色体DNA、および膜が結合していない他の細胞物質から分離されている、鋳型RNAであってもよい。さらに、「単離された」核酸分子、例えば、ウイルスレプリコンRNA分子は、組換え技術によって産生されたときには、他の細胞物質もしくは培養培地を実質的に含まないことが可能であり、または化学合成されたときには、化学的前駆体もしくは他の化学物質を実質的に含まないことが可能である。ある態様において、単離されたウイルス鋳型RNAは、ウイルスレプリコンRNAを発現する細胞の膜画分の一部として精製されてもよい。このような膜画分はまた、単離されたレプリカーゼ複合体を含んでもよい。他の細胞物質を実質的に含まないは、例えば、細胞画分、例えば、膜結合画分などである。他の細胞物質を実質的に含まないによって、単離された核酸分子が、望ましくない細胞物質、例えば、膜結合画分以外の細胞画分の成分などの約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約99%以上を含まないことが可能なことが意味される。
【0017】
ある態様において、「単離された」核酸は、核酸がそこに由来する生物のゲノムDNAまたはRNA中の核酸中で、核酸に天然に隣接する配列(すなわち、核酸の5'末端および/または3'末端に位置する配列)を含まなくてもよい。例えば、単離された核酸分子は、核酸がそこに由来する細胞のゲノムDNA中の核酸分子に天然に隣接する、約5kb、約4kb、約3kb、約2kb、約1kb、約0.5kb、または約0.1kb未満の5'および/または3'ヌクレオチド配列を含まなくてもよい。この意味において、単離された酢酸は、例えば、標準的なDNA精製法によって精製されたウイルスレプリコンRNAをコードするDNAベクターであってもよい。
【0018】
核酸の特定の配列の「天然の対立遺伝子改変体」、「変異体」および「誘導体」とは、特定の配列に密接に関連するが、これは天然にまたは設計のいずれかによって、配列または構造の変化を有してもよい、核酸配列をいう。密接に関連するによって、約75%以上、しかししばしば、約90%以上のヌクレオチドの配列が、所定の長さの核酸配列に一致することが意味される。密接に関連する核酸配列間のヌクレオチド配列における変化または違いは、特定の核酸配列の性質における通常の複製または重複の過程の間に生じる配列のヌクレオチドの変化を表し得る。他の変化は、特定の目的のために、例えば、アミノ酸コドンまたた核酸の調節領域における配列を変化させるために、配列に特に設計および導入されてもよい。このような特定の変化は、種々の変異誘発技術を使用してインビトロで作製されるか、または変化を誘導するかもしくは選択するための特定の選択条件下に置かれた宿主生物中で産生されてもよい。具体的に生成されるこのような配列改変体は、もともとの配列の「変異体」または「誘導体」と呼ばれてもよい。
【0019】
例えば、HCVゲノムの、「天然の対立遺伝子改変体」を含む異なる「改変体」は、天然に存在する。これらの改変体は、タンパク質をコードする遺伝子のヌクレオチド配列における変化によって特徴付けられる対立遺伝子であってもよく、または異なるRNAプロセシングもしくは翻訳後修飾を含んでもよい。当業者は、単一のまたは複数のアミノ酸置換、欠失、付加または置き換えを有する改変体を作製することができる。これらの改変体は、とりわけ、以下を含んでもよい:a)1つまたは複数のアミノ酸残基が、保存性または非保存性アミノ酸で置換されている改変体、b)1つまたは複数のアミノ酸が付加されている改変体、およびc)1つまたは複数のアミノ酸が置換基を含む改変体。
【0020】
「作動可能に連結される」とは、そのように記載されている成分が、それらが意図される様式で機能することをそれらに可能にするような関連性にある、並列をいう。コード配列に作動可能に連結される発現制御配列は、コード配列の発現が、発現制御配列と適合可能な条件下で達成されるようにライゲーションされる。本明細書で使用されるように、用語「発現制御配列」とは、それが作動可能に連結されている、核酸配列の発現を調節する核酸配列をいう。発現制御配列は、発現制御配列が、核酸配列の転写、および必要に応じて、翻訳を制御および調節するときに、核酸配列に作動可能に連結される。従って、発現制御配列は、適切なプロモーター、エンハンサー、転写ターミネーター、タンパク質コード遺伝子の前の開始コドン(すなわち、atg)、イントロンのためのスプライシングシグナル(イントロンが存在する場合)、mRNAの適切な翻訳を可能にするためのその遺伝子の正確な読み枠の維持、および終結コドンを含むことができる。「制御配列」という用語の意味は、最小限、その存在が発現に影響を与えることができる成分を含むことが意図され、そしてまた、その存在が有利であるさらなる成分、例えば、リーダー配列および融合パートナー配列を含むことができる。発現制御配列はプロモーターを含むことができる。「プロモーター」によって、転写を方向付けるために十分である最小限の配列が意味される。プロモーター依存性遺伝子発現を、細胞型特異的に、組織特異的に、または外部のシグナルもしくは薬剤によって誘導可能に制御可能にするために十分であるプロモーターエレメントもまた含まれ;このようなエレメントは、遺伝子の5'または3'領域に配置されてもよい。構成的プロモーターと誘導性プロモーターの両方が含まれる。レプリコンは、作動可能に連結された制御配列を含んでもよい。
【0021】
「プローブ」という用語は、精製した制限酵素消化物中に天然に存在するか、または合成的に産生されるかに関わらず、プローブに相補的な配列を有する核酸にアニーリングするか、またはこれに特異的にハイブリダイズすることが可能である、RNAまたはDNAのいずれかを含むオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドをいう。プローブは、例えば、DNA鋳型からインビトロで転写される一本鎖RNAであってもよい。プローブは、一本鎖または二本鎖のいずれかであってもよく、1つの態様においては、一本鎖である。プローブの正確な長さは、温度、プローブの供給源、および用途を含む多くの要因に依存する。プローブは、特定の標的核酸配列の鎖に「実質的に」相補的であるように選択される。このことは、プローブが、所定の条件のセットの下で、それらのそれぞれの標的と、「特異的にハイブリダイズ」またはアニールすることが可能であるように、十分に相補的である。特異的にハイブリダイズするという用語は、プローブが、他の非標的配列よりも、その標的配列にハイブリダイズするより大きな可能性を有することを意味する。
【0022】
それゆえに、プローブ配列は、標的の正確な相補的配列を反映する必要はない。例えば、非相補的ヌクレオチドフラグメントが、プローブの5'末端または3'末端に結合されてもよく、プローブの残りの配列は標的鎖に相補的である。プライマーおよび標的配列中の小さなミスマッチ配列(例えば、約10%未満)もまた、強要される。
【0023】
「オリゴヌクレオチド」という用語は、2つ以上のリボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチド、好ましくは3つより多くを含む、核酸分子として定義される。オリゴヌクレオチドの正確なサイズは、種々の要因ならびにオリゴヌクレオチドの特定の応用および用途に依存する。1つの態様において、オリゴヌクレオチドは、100ヌクレオチド未満、より詳細には約50ヌクレオチド以下、および最も詳細には、約30ヌクレオチド以下を含む。
【0024】
「ポリヌクレオチド」プローブまたはプライマーは、詳細には、約1000ヌクレオチド以下、より詳細には約800ヌクレオチド以下、および最も詳細には約500ヌクレオチド以下を含む。ポリヌクレオチドプライマーはまた、詳細には、約100ヌクレオチド以上、より詳細には、約150ヌクレオチド以上、および最も詳細には約200ヌクレオチド以上を含む。
【0025】
ハイブリダイゼーションのための「ストリンジェンシー条件」は、第1の核酸の第2の核酸へのハイブリダイゼーションを可能にする、インキュベーションおよび洗浄の条件、例えば、温度および緩衝液濃度の条件をいう、当技術分野の用語である;第1の核酸は、第2の核酸に完全に(すなわち、100%)相補的であってもよく、または第1の核酸および第2の核酸は、完全よりも少ない、ある程度の相補性(例えば、70%、75%、85%、95%、98%)を共有してもよい。例えば、完全に相補的な核酸を、より相補性が低いものから区別する、特定の高ストリンジェンシー条件を使用することが可能である。
【0026】
核酸ハイブリダイゼーションのための「高ストリンジェンシー条件」、「中程度のストリンジェンシー条件」および「低ストリンジェンシー条件」は、Current Protocols in Molecular Biology (Ausubel,F. M. et al., "Current Protocols in Molecular Biology", John Wiley& Sons,(1998))において説明されている。ハイブリダイゼーションにおけるストリンジェンシーを決定する正確な条件は、イオン強度(例えば、0.2×SSC、0.1×SSC)、温度(例えば、室温、42℃、68℃)およびホルムアミドなどの不安定剤またはSDSなどの変性剤のみならず、核酸配列の長さ、塩基組成、ハイブリダイズする配列の間のミスマッチパーセント、および他の同一ではない配列中の配列のサブセットの存在の頻度にもまた依存する。SSC緩衝液は、150mM 塩化ナトリウムおよび15mM クエン酸ナトリウム、pH 7.0である。高、中程度、または低ストリンジェンシー条件は、経験的に決定することができる。
【0027】
ハイブリダイゼーションのためのストリンジェンシー条件を、ハイブリダイゼーションが起こらないストリンジェンシーのレベルから、ハイブリダイゼーションが最初に観察されるレベルまで変化させることによって、所定の配列を試料中の最も類似の配列とハイブリダイズする(例えば、選択的に)ことを可能にする条件を決定することができる。
【0028】
例示的な条件は、Krause, M. H. and S.A. Aaronson, Methods in Enzymology, 200 : 546-556 (1991)において記載される。また、Ausubel, et al., "Current Protocols in Molecular Biology", John Wiley& Sons, (1998)において、中程度または低ストリンジェンシー条件のための洗浄条件の決定が記載されている。洗浄は、条件が通常、ハイブリッドの相補性の最小限のレベルを決定するために設定される工程である。相同的ハイブリダイゼーションのみが起こる最低の温度から開始して、最終洗浄温度がそれによって減少される各℃(SSC濃度は一定に保持する)は、ハイブリダイズする配列間の最大の程度のミスマッチにおいて、約1%ずつの増加を可能にする。一般的に、SSCの濃度を倍加させることは、約17℃のTmの増加を生じる。これらの指針を使用して、追求されるミスマッチのレベルに依存して、高、中程度、または低ストリンジェンシーについて経験的に決定することができる。
【0029】
例えば、低ストリンジェンシー洗浄は、0.2×SSC/0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含む溶液中での、室温で10分間の洗浄を含むことができ;中程度のストリンジェンシー洗浄は、0.2×SSC/0.1% SDSを含む、あらかじめ温めた(42℃)溶液中での、42℃で15分間の洗浄を含むことができ;および高ストリンジェンシー洗浄は、0.1×SSC/0.1% SDSを含むあらかじめ温めた(68℃)溶液中での、68℃で15分間の洗浄を含むことができる。さらに、洗浄は、当技術分野において公知であるような所望の結果を得るために、反復してまたは連続して実行することができる。等価な条件は、当技術分野において公知であるように、標的核酸分子と、使用されるプライマーまたはプローブの間の同様の同一性または類似性の程度を維持しながら、例として与えられたパラメーターの1つまたは複数を変化させることによって決定することができる。
【0030】
「試験化合物」は、本明細書で定義されるように、化学物質、核酸、ポリペプチド、アミノ酸、または試験される他の化合物をいう。試験化合物の例には、薬物候補、例えば、一般的なコンビナトリアルケミストリーを通して生成した低分子のアレイに由来するもの、ならびに潜在的な生物学的活性を有すると考えられている任意の他の化学物質が含まれるがこれらに限定されない。
【0031】
アッセイの説明
本発明で提供されるものは、試験化合物がポジティブ鎖RNAウイルスのRNA合成を阻害するか否かを決定するための方法である。この方法は以下の工程を含む:
ポジティブ鎖RNAウイルスについての単離されたレプリカーゼ複合体、ポジティブ鎖RNAウイルスについての単離されたウイルスレプリコン鋳型RNA、標識されたヌクレオチドアナログ、および試験化合物を、インビトロRNA合成のために十分な条件下で接触させて、標識されたヌクレオチドアナログを含む新規に合成されたRNA集団を形成する工程;
上記標識されたヌクレオチドアナログを含む新規に合成されたRNA集団を検出する工程;
上記標識されたヌクレオチドアナログを含む新規に合成されたRNA集団を定量して、試験RNA量を提供する工程;ならびに
試験化合物の非存在下で産生された、標識されたヌクレオチドアナログを含む対照の新規に合成されたRNA集団の対照RNA量と、試験RNA量を比較し、ここで、対照RNA量と比較した試験RNA量の減少は、試験化合物がポジティブ鎖RNAウイルスのRNA合成を阻害することを示す、工程。
【0032】
本発明でさらに提供されるものは、ポジティブ鎖RNAウイルスの新規に開始されたRNAを定量するための方法であり、この方法は以下の工程を含む:
ポジティブ鎖RNAウイルスについての単離されたレプリカーゼ複合体、ポジティブ鎖RNAウイルスについての単離されたウイルスレプリコン鋳型RNA、および標識されたヌクレオチドアナログを、インビトロRNA合成のために十分である条件下で接触させ、標識されたヌクレオチドアナログを含む新規に合成されたRNA集団を形成する工程;
プローブおよび上記標識されたヌクレオチドアナログを含む新規に合成されたRNA集団を、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし、ここで、上記プローブは、新規に合成されたRNA集団の転写開始領域の少なくとも一部に相補的である、工程;
ハイブリダイズしていない一本鎖RNAを、一本鎖特異的リボヌクレアーゼで消化して、標識されたヌクレオチドアナログを含む保護されたRNA集団を形成する工程;
上記標識されたヌクレオチドアナログを含む保護されたRNA集団を検出する工程;ならびに
上記標識されたヌクレオチドアナログを含む保護されたRNA集団を定量する工程。
【0033】
本発明でまた提供されるものは、試験化合物がポジティブ鎖RNAウイルスのRNA合成開始阻害剤であるか否かを決定するための方法であり、この方法は以下の工程を含む:
ポジティブ鎖RNAウイルスについての単離されたレプリカーゼ複合体、ポジティブ鎖RNAウイルスについての単離されたウイルスレプリコン鋳型RNA、標識されたヌクレオチドアナログ、および試験化合物を、インビトロRNA合成のために十分な条件下で接触させて、標識されたヌクレオチドアナログを含む新規に合成されたRNA集団を形成する工程;
プローブおよび上記標識されたヌクレオチドアナログを含む新規に合成されたRNA集団を、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし、ここで、上記プローブは、新規に合成されたRNA集団の開始領域の少なくとも一部に相補的である、工程;
ハイブリダイズしていない一本鎖RNAを、一本鎖特異的リボヌクレアーゼで消化して、保護されたRNA集団を形成する工程;
上記標識されたヌクレオチドアナログを含む保護されたRNA集団を検出する工程;
上記標識されたヌクレオチドアナログを含む保護されたRNA集団を定量して、試験RNA量を提供する工程;ならびに
標識されたヌクレオチドアナログを含むが、試験化合物の非存在下で産生された、保護されたRNAの対照RNA量と、試験RNA量を比較し、ここで、対照RNA量と比較した試験RNA量の減少は、試験化合物がポジティブ鎖RNAウイルスのRNA合成の開始を阻害することを示す、工程。
【0034】
上記の方法のある態様において、単離されたウイルスレプリカーゼ複合体および単離されたウイルスレプリコン鋳型RNAは、トランスフェクトされた細胞株を提供するためにウイルスレプリコンのための単離されたDNA鋳型または単離されたウイルスRNAで細胞株をトランスフェクトすること、ウイルス複製のために適切である条件下でトランスフェクトされた細胞株をインキュベートする工程、ならびにトランスフェクトされた細胞株の細胞膜画分から、レプリカーゼ複合体およびウイルスレプリコン鋳型RNAを単離することによって提供される。
【0035】
上記の方法の他の態様において、単離されたウイルスレプリカーゼ複合体および単離されたウイルスレプリコン鋳型RNAは、急性に感染されたか、または永続的に感染された一次肝細胞、リンパ球、または他の細胞株によって提供されてもよく、ウイルス複製のために適切である条件下で感染した細胞株をインキュベートし、そして細胞膜画分から、ウイルスレプリコン鋳型RNAを含むレプリカーゼ複合体を単離する。このレプリカーゼ複合体は、感染した初代細胞または細胞株から単離されてもよい。
【0036】
本発明に記載される方法の特定の態様において、ポジティブ鎖RNAウイルスはC型肝炎ウイルスであり、HCVウイルスレプリコンについての適切なDNA鋳型は、例えば、SEQ ID NO: 1であり、これはまた、Genbankアクセッション番号AJ242652として記載することもできる。他の適切なレプリコン鋳型には、例えば、AB114136、AJ242654、AJ242653、およびAJ242651(SEQ ID NO: 2〜5)が含まれる。
【0037】
本発明の方法の特定の態様において、標識されたヌクレオチドアナログは、特定のアナログによって認識可能であるアナログ、高い特異性の結合反応を介して認識可能であるアナログ、またはアナログの物理的特性の結果として直接的に検出可能であるアナログである。ある態様において、標識されたヌクレオチドアナログは、特異的抗体によって認識可能であるアナログ、例えば、5'-ブロモウリジン5'-三リン酸(Br-UTP)である。他の態様において、標識されたヌクレオチドアナログは、放射活性で標識されたアナログである。
【0038】
本明細書に記載される方法において、新規に合成されたRNA集団の検出は、標識されたヌクレオチドアナログに特異的な抗体と、新規に合成されたRNA集団を接触させること、および標識されたヌクレオチドアナログを含む新規に合成されたRNA集団を免疫沈殿させて、免疫沈殿されたRNA集団を形成することによって達成されてもよい。ある態様において、ヌクレオチドアナログはBr-UTPであり、特異的抗体は抗BrdU抗体である。本明細書に記載される方法には、免疫沈殿したRNA集団に対してリアルタイムPCRを実行することによる新規に合成されたRNA集団を定量することが含まれる。他の態様において、新規に合成されたRNA集団の検出は、例えば、非変性ゲル電気泳動によって放射活性標識されたヌクレオチドを検出すること、その後のオートラジオグラフィーによって達成されてもよい。
【0039】
ある態様において、2'-O-メチル化ヌクレオチドは、新規に合成されたRNAの収量を増加させるために、複製反応の間に利用されてもよい。
【0040】
新規に合成されたRNA集団を形成するために、単離されたレプリカーゼ複合体および単離されたウイルスレプリカーゼRNA鋳型が利用される。単離されたウイルスレプリコン鋳型RNAは、転写開始領域を含む。この鋳型RNAは、例えば、レプリカーゼ複合体の成分として単離されてもよい。ある態様において、単離されたウイルス鋳型RNAは、レプリカーゼ複合体に加えられてもよい。
【0041】
ウイルスレプリコンRNAまたはウイルスレプリコンRNAをコードするDNAベクターは、ウイルスレプリコンRNAの発現のために適切である細胞株中にトランスフェクトされてもよい。適切な細胞株には、例えば、ベロ細胞、HeLa細胞、CHO細胞、COS細胞、WI38細胞、N1H-3T3細胞(および他の線維芽細胞、例えば、MRC-5細胞)MDCK細胞、KB細胞、SW-13細胞、MCF7細胞、BHK細胞、HEK-293細胞、HepG2細胞、Bowesミエローマ細胞細胞株;およびニワトリ胚線維芽細胞(CEF)細胞株などの哺乳動物細胞株が含まれる。1つの態様において、細胞株はヒト細胞株、例えば、Huh-7などのヒトヘパトソーマ細胞株などである。トランスフェクションの適切な手段には、例えば、リン酸カルシウム共沈殿、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、リポソーム中に入れたプラスミドの挿入などの機械的手順、ならびに当技術分野において公知である他の技術が含まれる。
【0042】
HCVレプリコンRNAの産生のための適切なDNAベクターは、例えば、5'-3'HCV-IRES、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(neo)遺伝子、HCV配列NS3のNS5Bへの翻訳を方向付ける脳心筋炎ウイルスのIRES、および3'-NTRを含む。HCVレプリコンRNAの産生のために適切なDNAベクターの配列は、GenBankに寄託されている(アクセッション番号AJ242652)(SEQ ID NO: 1)。HCVレプリコンDNAベクターは、エレクトロポレーションによってHuh-7細胞にトランスフェクトされてもよい。HCVレプリコンRNAは、例えば、プロモーターの下流のレプリコンRNAをコードするcDNAを有する、適切なプロモーターを含むプラスミドDNAから、SP6 RNAポリメラーゼまたはT7 RNAポリメラーゼのいずれかを使用して、インビボで転写されてもよい。ウイルスレプリカーゼRNAの産生のためのDNA鋳型は、ウイルスレプリコンをコードするDNA鋳型、およびそのうち一方がSP6またはT7 RNAポリメラーゼプロモーターを含む特異的プライマーを使用するPCR増幅によって産生されてもよい。代替的には、ウイルスレプリカーゼRNAの産生のためのDNA鋳型は、そのうち一方がSP6またはT7 RNAポリメラーゼプロモーターを含むプライマーを使用するウイルスレプリカーゼRNAの逆転写によって産生されてもよい。
【0043】
一旦、ウイルスレプリコンRNAまたはウイルスレプリコンRNAをコードするDNAベクターが細胞にトランスフェクトされると、細胞培養がコンフルエントまで増殖されてもよい。培養中の細胞は、レプリコン鋳型RNAを含むレプリカーゼ複合体を産生し、これは、次いで、細胞から単離することができる。ウイルスレプリコンRNAは、マイナス細胞ウイルスレプリコン鋳型RNA、および任意にポジティブ鎖RNAを含む。
【0044】
代替として、感染細胞、例えば、急性感染されたまたは永続的に感染された初代肝細胞、リンパ球、または他の細胞株が、単離されたウイルスレプリコンRNAに利用されてもよい。感染された初代細胞または細胞株が利用されてもよい。感染細胞株は、ウイルス複製のために適切である条件下でインキュベートされ、ウイルスレプリコンRNAを含むレプリカーゼ複合体は、細胞膜画分から単離される。
【0045】
複製複合体およびウイルスレプリコン鋳型RNAを単離するために、細胞(すなわち、ウイルスレプリコンでトランスフェクトまたは感染される)は、溶解され、細胞細片を除去するために、低速(例えば、約900×〜約1000×g)で遠心分離されてもよい。次いで、上清を高速(例えば、約15000×)で遠心分離して膜画分を得てもよい。これは、単離されたウイルスレプリコン複合体を含み、および任意にウイルスレプリコン鋳型RNAを含む。HCV RNAの複製は、膜結合複製複合体中に存在することが示された。従って、HCVレプリコン複合体およびレプリコン鋳型RNAは、HCVレプリコンRNAを発現する細胞の膜画分を単離することによって単離することができる。
【0046】
レプリカーゼ複合体を含む単離された膜画分(例えば、ウイルスRNAレプリコンを発現する細胞株の膜画分のアリコート)および単離されたレプリコン鋳型RNAは、無細胞系中でインビトロでRNA複製を実行するために使用される。単離されたレプリカーゼ複合体および単離されたウイルスレプリコン鋳型RNAは、インビトロRNA合成を促進するために十分な条件下で、標識されたヌクレオチドアナログと接触される。インビトロRNA合成を促進するために十分な条件には、適切な緩衝液、ヌクレオシド三リン酸(すなわち、ATP、UTP、CTP、およびGTP)が含まれる。標識されたヌクレオチドアナログは、新規に合成されたRNA集団に取り込まれ、これは、鋳型RNAではなく、新規に合成されたRNAのみを検出をするための手段を提供する。1つの態様において、複製のための適切な条件には、例えば、50mM HEPES (pH 7.5)、10mM KC1、10 mM MgCl2、50単位 RNasin、10μg/ml アクチノマイシン D、2.5 mM ATP、0.5mM 各CTP、GTP、標識UTPおよびウイルスレプリコンRNAを発現する細胞株の膜画分のアリコート、例えば、単離されたレプリカーゼ複合体および単離されたウイルスレプリコン鋳型RNAが含まれる。別の態様において、適切な複製条件は、50mM HEPES (pH 7.3);10mM KC1;10mM MgCl2;0.3mM MnCl2;20単位のRNAse阻害剤;1mLあたり10μgのアクチノマイシンD;0.5mM ATP、GTP、およびUTP;10μCiの[α-P32]CTP;ならびにウイルスレプリコンRNAを発現する細胞株の6μlの膜画分を、総量60μlに含む。複製反応は、新規に合成されたRNAの所望の量を産生するために十分な時間継続させる。
【0047】
ある態様において、複製条件は、複製混合液に、例えば、2'-O-メチル-5-メチルウリジン-5'-三リン酸などの2'-O-メチル化ヌクレオチドを含んでもよい。2'-O-メチル-5-メチルウリジン-5'-三リン酸などの2'-O-メチル化ヌクレオチドを含ませることは、複製複合体の効率を増加させる可能性があり、これは、2'-O-メチル-5-メチルウリジン-5'-三リン酸の非存在下で得られる標識された生成物の量の増加を生じる。特定の理論に拘束されるものではないが、2'-O-メチル化ヌクレオチド、特に2'-O-メチル-5-メチルウリジン-5'-三リン酸は、例えば、放射標識されたヌクレオチド、例えば、P32-CTPなどが低濃度で反応に加えられるときに、レプリカーゼ複合体の効率を増加すると考えられている。
【0048】
適切な標識されたヌクレオチドアナログには、例えば、特異的抗体によって認識可能であるアナログ(例えば、Br-UTP)、高特異的結合反応(すなわち、ビオチン/アビジンまたはビオチン/ストレプトアビジン結合)を介して認識され得るビオチン標識ヌクレオチドなどのアナログ(例えば、ビオチン-CTP)、および放射能(例えば、P32-標識ヌクレオチド)、蛍光、発光などのようなアナログの物理的特性の結果として直接的に検出可能であるアナログ、例えば、フルオレセイン-ヌクレオチド(例えば、フルオレセイン-UTP)が含まれる。1つの態様において、標識されたヌクレオチドアナログは、5'-ブロモウリジン5'-三リン酸(Br-UTP)である。Br-UTPを含むRNAは、抗BrdU抗体を用いる免疫沈殿および/または検出によって単離されてもよい。抗BrdU抗体は、任意に、例えば、フルオレセイン、またはMolecular Probesから利用可能であるもののような他の色素などの、抗体の直接的検出のために適切なタグで標識してもよい。他の場合において、抗体は、例えば、アルカリホスファターゼまたは西洋ワサビペルオキシダーゼで標識したウサギまたはマウスIgGなどの標識された二次抗体への結合を介して検出されてもよい。
【0049】
標識されたヌクレオチドアナログは、この標識されたヌクレオチドアナログが、対応する未標識のヌクレオチドの少なくとも一部の代わりに、新規に合成されたRNA(例えば、新規に合成されたウイルスレプリコンRNA)に取り込まれるように加えられる。例えば、Br-UTPは、UTPの少なくとも一部の代わりに使用されてもよい。特定の場合において、すべての対応するヌクレオチドが、標識されたアナログで置き換えられてもよい。複製後、2つのRNAの集団(例えば、ウイルスレプリコンRNA):標識されていないRNA集団(すなわち、複製前に存在するRNA集団)および標識されたRNA集団(例えば、新規に合成されたRNA集団)が存在する。標識されたヌクレオチドアナログを含む、新規に合成されたRNA集団は、複製段階の前に存在していたRNA集団から区別できる。なぜなら、複製前に存在したRNA集団は、標識されたヌクレオチドアナログを含まないからである。新規に合成されたRNAが、複製前に存在するRNAから区別できるので、新規に合成されたRNAの量(例えば、ウイルス複製RNA)は、RNA検出および/または定量の手段を利用することによって、検出および/または定量することができる。RNA検出および定量のための手段は、同じかまたは異なってもよい。
【0050】
複製後、複製混合物中のRNAは、任意に、例えば、市販のRNA精製キットを使用して精製されてもよい。次いで、新規に合成されたRNAは、RNAを検出するための手段を使用して検出される。検出は、好ましくは、定量的検出を含む。RNAを検出するための方法は、利用される標識されたヌクレオチドアナログに基づいて選択される。例えば、特異的抗体によって認識可能であるアナログの場合においては、特異的抗体は、標識されたRNAを免疫沈殿するために利用されてもよい。免疫沈殿されたRNAは、例えば、抗体上に存在する蛍光タグを直接的に検出することによって検出されてもよい。代替として、免疫沈殿されたRNAは、標識された二次抗体で検出されてもよい。別の代替において、免疫沈殿された標識されたRNAは、リアルタイムPCRを使用して増幅および検出することができる。
【0051】
例えば、標識されたヌクレオチドアナログとしてBr-UTPを含む新規に合成されたRNA集団は、抗BrdUモノクローナル抗体を使用して免疫沈殿されてもよい。標識されていない、鋳型RNAは沈殿しないのに対して、新規に合成されたBr-UTP標識されたRNAは特異的に沈殿する。次いで、この免疫沈殿した、標識されたRNAは、リアルタイムPCRを使用して定量されてもよい。従って、例えば、抗BrdU抗体で沈殿されたBr-UTP標識されたウイルスレプリコンRNAの場合において、検出のための方法は、抗BrdU抗体とウイルスレプリコンRNAの集団を接触させる工程、ウイルスレプリコンRNAを沈殿させる工程、ならびに、例えば、リアルタイムPCRなどの適切な方法を使用して、標識したウイルスレプリコンRNAを検出および定量する工程を含む。
【0052】
リアルタイムPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)は、定量的逆転写PCR反応(RT-PCR)である。RT-PCRの初期においては、試薬は過剰であり、鋳型および産物は、十分に低濃度であって、産物の再生はプライマー結合とは競合せず、そして増幅は実質的に一定の、指数関数的な速度で進行する。反応の間のある変動する点において、反応速度は、指数関数的であることを止めて、増幅の直線相に入る。増幅サイクルの後期には、産物はほとんど作られない。リアルタイムPCRは、増幅の指数関数相の間のデータの収集を可能にし、従って、増幅産物の量の正確な定量を可能にする。PCR反応において産生された二本鎖DNAの検出および定量は、蛍光レポーターを使用して行われ、そのシグナルは、反応における二本鎖DNA PCR産物の量に直接的に比例して増加する。FAM(6-カルボキシ-フルオレセイン)などの蛍光色素で標識されたTaqman(商標)プローブが使用されてもよい。別の適切なレポーターは、二本鎖DNA特異的色素SYBR(商標)Green(Molecular Probes)である。SYBR(商標)Greenは二本鎖DNAに結合し、励起の際に光を放出する。従って、PCR産物が蓄積するに従って、蛍光が増大する。他の代替的なレポーターには、検出のために蛍光エネルギー移動(FRET)を使用するハイブリダイゼーションプローブが含まれる。
【0053】
標識されたヌクレオチドアナログがP32-CTPなどの放射性ヌクレオチドである場合、標識されたRNAは、非変性ゲル電気泳動、その後のオートラジオグラフィー、ホスホルイメージングのような直接的な検出などによって検出されてもよい。
【0054】
高特異性結合反応を介して認識することが可能な標識されたヌクレオチドアナログの場合、標識されたRNAは、高特異性結合反応を利用することによって単離されてもよい。例えば、ビオチン標識されたヌクレオチドは、アビジンまたはストレプトアビジンによって認識され得る。一旦、標識されたRNAが単離されたら、標識されたRNAは、リアルタイムPCRを使用して増幅および検出することができる。直接的に検出可能なヌクレオチドアナログの場合、標識されたヌクレオチドアナログは、蛍光、発光などを使用して直接的に検出することができる。
【0055】
新規に合成されたRNA集団の定量のための適切な対照が以下に続く。DNAベクターまたはウイルスRNAでトランスフェクトされていない細胞から単離され、複製に供された鋳型RNAは、検出可能な量の新規に合成されたRNAを有さない。鋳型DNAベクターまたはウイルスRNAでトランスフェクトされた細胞から単離され、しかし標識されたヌクレオチドアナログなしで複製された鋳型RNAは、バックグラウンドレベルのみの新規に合成されたRNAを有する。鋳型DNAベクターまたはウイルスRNAでトランスフェクトされた細胞からであり、検出のための手段で検出されない標識されたヌクレオチドアナログの存在下で複製された鋳型RNAは、バックグラウンドレベルのみの新規に合成されたRNAを有する。しかし、鋳型DNAベクターまたはウイルスRNAでトランスフェクトされた細胞からであり、標識されたヌクレオチドアナログの存在下で複製され、かつ検出のための手段で検出された鋳型RNAは、このアッセイにおいて、非常に強い新規に合成されたRNAのシグナルを示すはずである。
【0056】
アッセイは、新規に開始されたRNA集団を定量するために利用されてもよい。HCVの例においては、例えば、大部分(例えば、約90%)の新規に合成されたウイルスRNAは、事前に開始された(すなわち、開始された)鋳型RNAの伸長産物である。開始された鋳型RNAにおいて、新規に合成されたRNAの一部は、マイナス鎖鋳型を使用して事前に作製される。適切な因子(例えば、緩衝液およびヌクレオシド三リン酸)の付加に際して、開始されたRNAの伸長は、全長RNAを形成するように進行することができる。新規に合成されたRNAの小さな部分(例えば、約10%未満)のみが、開始されていない鋳型RNAから形成された新規に開始された産物を表す(すなわち、プレイニシエーション)。事前に開始されたRNAと新規に開始されたRNAの両方は、RNAの伸長領域中で標識されたヌクレオチドアナログを含む。しかし、新規に開始されたRNAのみが、転写開始領域中に標識されたヌクレオチドアナログを含む。新規に開始されたRNAを選択および定量するための方法は、事前に開始されたRNA集団ならびに新規に開始されたRNAを含む可能性のある、新規に合成されたRNA集団に対して、RNA保護を利用する工程を含む。
【0057】
RNAse保護アッセイにおいて、核酸プローブは、事前に開始されたRNAならびに新規に開始されたRNAを含む可能性のある、新規に合成されたウイルスレプリコンRNA集団に加えられる。この核酸プローブは、ウイルスレプリコンRNA(例えば、新規に合成されたRNA集団)の転写開始領域の少なくとも一部に相補的である領域を含む。プローブが新規に合成されたウイルスレプリコンRNAの集団にハイブリダイズされるとき、転写開始領域の一部は二本鎖になり、残りのRNAは一本鎖である。次いで、一本鎖RNAは、例えば、一本鎖RNAに特異的な一本鎖特異的リボヌクレアーゼを用いる消化によって取り除かれてもよい。適切な一本鎖特異的リボヌクレアーゼには、例えば、リボヌクレアーゼT1、リボヌクレアーゼA、ヌクレアーゼS1、および前述の一本鎖特異的リボヌクレアーゼの1つまたは複数を含む組み合わせが含まれる。消化後、このようにして、残りのRNAは、二本鎖RNA(すなわち、保護された)集団となり、ここで、事前に開始されたRNAは、標識されていないヌクレオチドアナログを含み、および新規に開始されたRNAは、標識されたヌクレオチドアナログを含む。次いで、保護された新規に開始されたRNAは、上記のように検出および/または定量され得る。
【0058】
プローブのハイブリダイゼーションは、ウイルスレプリカーゼRNAへの核酸プローブの特異的ハイブリダイゼーションを可能にするために十分な条件下で実行されてもよい。特異的ハイブリダイゼーションは、例えば、高ストリンジェンシー条件下または中程度のストリンジェンシー条件下で、実行され得る。
【0059】
特に好ましい態様において、特異的ハイブリダイゼーションのためのハイブリダイゼーション条件は、高ストリンジェンシーである。
【0060】
本明細書に記載されるアッセイは、ウイルスレプリコンRNA合成の阻害について試験化合物をスクリーニングするために利用されてもよい。このような化合物には、レプリカーゼ複合体活性阻害剤、ならびにRNA合成開始および延長阻害剤が含まれる。伸長阻害剤から開始阻害剤を区別するための方法が利用されてもよい。ウイルスレプリコンRNA合成阻害剤が複製混液に加えられる場合、より少ないウイルスレプリコンRNAが合成されるはずであり、検出される標識されたウイルスレプリコンRNAの量(例えば、試験RNAの量)は、阻害剤が加えられていない対照試料中でのウイルスレプリコンRNAの量(例えば、対照RNAの量)と比較して、減少する。検出された、標識されたウイルスレプリコンRNAの量は、例えば、ウイルスレプリコンRNA合成阻害剤がウイルスレプリコンRNA伸長阻害剤である場合に、減少する。ウイルスレプリコンRNA伸長阻害剤は、新規に開始されたレプリコンRNA伸長産物の合成を、およびまた、事前に開始されたウイルスレプリコンRNA伸長産物をブロックする。しかし、ウイルスレプリコンRNA合成阻害剤が開始阻害剤であるならば、シグナル強度は、穏やかに影響されるのみである。大部分(例えば、約90%)の新規に合成されたHCVのウイルスRNAは、事前に開示されたウイルスレプリコンRNAの伸長産物である。従って、新規に合成されたレプリコンRNAの小さな部分(例えば、約10%未満)のみが開始阻害剤によって影響される。図1は、開始阻害剤および伸長阻害剤によるHCV RNA合成の阻害の模式図を提供する。
【0061】
RNAse保護アッセイは、本明細書に記載されるように、開始阻害剤を同定するために、新規に合成されたRNA集団の形成後に加えることができる。このアッセイにおいて、新規に合成されたウイルスレプリコンの開始領域の少なくとも一部に相補的である核酸プローブが利用される。このプローブは、このプローブに相補的であるウイルスレプリコンRNAの領域が二本鎖であり(すなわち、複製されている)、ウイルスレプリコンRNAの残りが一本鎖であるように、ウイルスレプリコンRNAにハイブリダイズされる。ハイブリダイゼーションは、好ましくは、ストリンジェント条件下で実行される。次いで、ウイルスレプリコンRNAの一本鎖部分が、一本鎖RNAに特異的なリボヌクレアーゼ、例えば、リボヌクレアーゼA、リボヌクレアーゼT1、ヌクレアーゼS1、または前述のリボヌクレアーゼの1つまたは複数を含む組み合わせなどを用いて消化される。次いで、二本鎖レプリコンRNAの残りの集団は、2つの画分:標識されたヌクレオチドアナログを含まない、事前に開始されたウイルスレプリコンRNAの画分、および標識されたヌクレオチドアナログを含む、標識されたヌクレオチドアナログの付加後に開始されたウイルスレプリコンRNAの画分を含む。次いで、標識されたヌクレオチドアナログを含む保護されたウイルスレプリコンRNAが、上記のように、特異的に検出および/または定量され得る。
【0062】
HCVの場合において、例示的なプローブは、HCVレプリコンRNA(SEQ ID NO: 6)のヌクレオチド15〜433に相補的なRNAであり、これは、開始コドンの近傍で、新規に合成されたウイルスレプリカーゼRNAとハイブリダイズする。このプローブにハイブリダイズしないRNAは、一本鎖リボヌクレアーゼを用いて消化し、レプリコンRNAのヌクレオチド15〜433のみを遊離させる。消化されたRNAは、2つの二本鎖RNA集団:標識されたヌクレオチドアナログを含まない、事前に開始されたレプリコンRNAの集団、および標識されたヌクレオチドアナログを含む、新規に開始されたレプリコンRNAの集団を有する。従って、事前に開始されたHCV RNA伸長産物は検出されないのに対して、新規に合成されたRNAは検出される。RNA保護を含むこのアッセイにおいて、開始阻害剤が複製混液に加えられるときに、減少量の標識されたヌクレオチドアナログが開始部位に加えられ、検出のための手段によって測定されるシグナルが減少する。
【0063】
ポジティブ鎖RNAウイルスにおいて、レプリカーゼ複合体は、マルチタンパク質複合体であり、これは、ウイルスレプリコン鋳型RNAから、ウイルスレプリコンRNAを複製する。複製タンパク質に加えて、ウイルスレプリコン鋳型RNAを含むレプリカーゼ複合体は、ウイルスレプリコンRNAを発現する細胞から膜結合画分として単離することができる。この単離されたレプリカーゼ複合体は、事前に開始されたウイルスレプリコン鋳型RNA、および開始されていないウイルスレプリコン鋳型RNAの両方を含んでもよい。ヌクレオチド三リン酸およびRNA合成のために十分である他の成分の付加の際に、事前に開始された鋳型RNAの伸長が、全長ウイルスレプリカーゼRNAを産生するように進行する。しかし、開始されていないウイルスレプリコン鋳型RNAのデノボ開始が、単離されたレプリカーゼ複合体において起こることは実証されなかった。ウイルスレプリコンRNA合成開始の、開始の阻害剤を使用することによって、ウイルスレプリカーゼRNA合成のデノボ開始が単離されたレプリカーゼ複合体において起こることが示され得る。RNA合成のデノボ開始は単離されたレプリカーゼ複合体において起こるので、新規に開始されたRNAを定量するため、およびまた、RNA合成開始の阻害剤を同定するための方法が使用されてもよい。
【0064】
従って、記載される方法は、ポジティブ鎖RNAウイルスのRNA合成の阻害剤、例えば、RNA開始阻害剤および伸長阻害剤を検出するために適している。
【0065】
本発明でまた提供されるものは、ポジティブ鎖RNAウイルスのRNA合成の阻害について試験化合物をスクリーニングするためのキットである。このキットは、ポジティブ鎖RNAウイルスについての単離されたレプリカーゼ複合体、およびポジティブ鎖RNAウイルスについての単離されたウイルスレプリコン鋳型RNA、キットの使用のための説明書、ならびにウイルスレプリコンRNAの合成のために十分である緩衝液およびヌクレオシド三リン酸を含む。説明書は、例えば、新規に合成されたRNA集団を定量するための説明書、化合物がRNA合成阻害剤であるか否かを決定するための説明書などを含んでもよい。これらの説明書は、書かれた説明書であってもよいが、方法の要素の使用に関する説明書を含む電子保存媒体(例えば、磁気ディスクまたは光ディスク)もまた受け入れ可能である。キットとともに含まれる説明書は、方法を実施するために(例えば、キットに含まれるか否かに関わらず)必要である試薬、キットを使用するための方法に関する説明書、および/または適切な反応条件に関する情報を含んでもよい。
【0066】
適切な緩衝液には、単離された複製複合体を用いて複製を実行するために適切であるような、以前に記載されたものが含まれる。
【0067】
キットは、任意に、例えば、標識されたヌクレオチドアナログ、プライマー、一本鎖特異的リボヌクレアーゼ、およびRNAse保護アッセイを実行するための説明書をさらに含んでもよい。
【0068】
キットの構成要素は、便利な、適切なパッケージングでパッケージされてもよい。これらの構成要素は、別々に、または1つもしくは複数の組み合わせでパッケージされてもよい。
【0069】
本発明はさらに、以下の非限定的な実施例によってさらに例証される。
【0070】
実施例
実施例1. HCVレプリコン含有細胞の増殖および維持
HCVレプリコン(例えば、ウイルスレプリコンRNA)をコードするRNA分子を、エレクトロポレーションを使用して、Huh-7細胞にトランスフェクトする。
【0071】
細胞の維持のための装置および物質には以下が含まれるがこれらに限定されない:Huh-7 HCVレプリコン含有細胞、維持培地(10% FBS(ウシ胎仔血清)、L-グルタミン、非必須アミノ酸、ペニシリン(100単位/ml)、ストレプトマイシン(100μg/ml)、および500μg/mlのジェネティシン(G418)を補充したDMEM(ダルベッコ改変イーグル培地))、スクリーニング培地(10% FBS(ウシ胎仔血清)、L-グルタミン、および非必須アミノ酸、ペニシリン(100単位/ml)、およびストレプトマイシン(100μg/ml)を補充したDMEM)、96ウェル組織培養プレート(平底)、96ウェルプレート(薬物希釈のためのU底)、陽性対照のためのインターフェロンα、固定試薬(例えば、メタノール:アセトン)、一次抗体(ウサギ抗NPTII)、二次抗体:Eu-N1 1、および増強液。
【0072】
HCVレプリコンを含む細胞は、それらの密度が適切であるときに、高レベルのウイルスRNA複製を支持する。コンフルエンシーを超えると、ウイルスRNA複製の減少を引き起こす可能性がある。それゆえに、細胞は、500μg/mlのG418の存在下で対数期で増殖させるべきである。一般的に、細胞は、週に2回、1:4〜6希釈で継代するべきである。細胞の維持は以下のように行う:
【0073】
HCVレプリコンDNAベクターを含む細胞を、細胞が増殖していることを確認するために、顕微鏡下で調べる。細胞をリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で1回すすぎ、2mlのトリプシンを加える。細胞/トリプシン混合物を、CO2インキュベーター中で、37℃で3〜5分間インキュベートする。インキュベート後、10mlの完全培地を加えて、トリプシン処理反応を停止させる。細胞を穏やかにブローし、15mlチューブに置き、および1200rpmで4分間遠心分離する。トリプシン/培地溶液を除去し、ペレット化した細胞を回収する。
【0074】
実施例2. 無細胞系における新規に合成されたHCV RNAの検出のための定量的アッセイ
Hardy et al. (J. Virol. (2003) 77:2029-2037)によって与えられた手順に従って、膜画分を、HCVレプリコンRNAでトランスフェクトされたHuh-7細胞から抽出する。手短に述べると、HCVレプリコン含有細胞を、1×PBSで洗浄し、冷低張性緩衝液(10mM Tri-HCl, pH 7.8、10mM NaCl)中に再懸濁し、および氷上に20分間置く。膨潤した細胞を、ダウンスホモジナイザーを使用して破壊する。この混合物を、900×gで5分間、4℃で遠心分離する。上清を新鮮なチューブに移し、15000×gで25分間、4℃で遠心分離する。膜画分を含むペレットを、保存緩衝液(15%グリセロールを含む低等張緩衝液)に再懸濁し、-80℃で保存し得る。
【0075】
インビトロRNA複製を、Lai (J. Virol. (2003)77 : 2295-2300)の手順に従って、いくつかの修飾を伴って実行する。試験化合物(0.5μl DMSO中1μM〜100μM)を、膜画分(単離されたレプリカーゼ複合体および単離されたウイルスレプリコン鋳型RNA)(10μl)とともに、30℃で10分間プレインキュベートし、その後、複製混合物を加える。複製混合物(50μl総量)は、50mM HERPES (pH 7.5)、10mM KCl、10mM MgCl2、50U RNAsin、10μg/ ml アクチノマイシンD、2.5 mM ATP、0.5mM 各CTP、GTP、Br-UTP、およびプレインキュベートした膜画分(すなわち、レプリカーゼ複合体およびウイルスレプリコン鋳型RNA)を含む。複製混合物を30℃で2時間インキュベートし、続いてTRIZOL(Invitrogen, Carlsbad,CA)またはRNA EASY(Qiagen, Valencia,CA)を製造業者の説明書に従って使用して精製を行う。次いで、RNA試料を、1×PBS、0.05% NP40、0.1μg/μl tRNA、5U/μl RNasin、および0.3M ウリジンを含む200μl〜400μlの沈殿緩衝液中の抗BrdUモノクローナル抗体(Molecular Probes, Eugene, OR)およびプロテインAアガロース(Invitrogen)を使用して免疫沈殿させた。
【0076】
開始部位の近傍の新規に合成されたセグメントが関心対象である場合、RNA保護アッセイを、Br-UTP標識およびRNA精製の後で使用する。15〜433nt(SEQ ID NO: 6)のセグメントについてのRNAプローブを、インビトロ転写キット(MAXIscript, Ambion)を使用して合成する。インビトロ転写のためのDNA鋳型は、フォワードプライマー

(15〜37)(SEQ ID NO: 7)およびリバースプライマー

(413〜433、プラスSP6コア配列)(SEQ ID NO: 8)を使用する、レプリコンHCV RNAについてのDNAベクター、または逆転写によってレプリコンHCV RNAから作製したcDNAに対するPCRによって作製する。RNAは、RNA保護アッセイキット(例えば、RPA III, Ambion, Austin, TX)を使用して保護する。手短に述べると、RNA保護アッセイにおいて、新規に合成されたレプリコンRNAをRNAプローブにハイブリダイズさせる。次いで、ハイブリダイズしたRNAは、一本鎖RNAを消化するために、リボヌクレアーゼAおよびリボヌクレアーゼT1で処理する。次いで、残りの二本鎖RNAを、検出の前に沈殿させてもよい。
【0077】
無細胞系において産生された新規に合成されたHCV RNAは、リアルタイムPCRを使用して定量的に検出する。表1は、いくつかの対照実験についてのデータを示す。蛍光色素FAMで標識したTaqman(商標)プローブを使用した。
【0078】
【表1】

【0079】
表1から見られるように、複製混合物中にBr-UTPを有する、HCVレプリコンを発現するHuh-7細胞から単離された鋳型RNAについては、高コピー数のレプリコンRNAが、抗BrdUTP抗体を用いる沈殿がある場合とない場合の両方で観察される。抗BrdUTP抗体を使用しない場合、沈殿なしの試料は、高コピー数のHCVレプリコンRNAを有するのに対して、沈殿した集団はバックグラウンド量のみを有する。Huh-7細胞がHCVレプリコンでトランスフェクトされない場合(すなわち、鋳型RNAなし)、バックグラウンド量のレプリコンRNAが、抗BrdUTP抗体を用いる沈殿がある場合またはない場合で観察される。複製混合物中にBr-UTPが存在せず、HCVレプリコンを発現するHuh-7細胞から単離された鋳型RNAを伴う場合、沈殿なしの試料は高コピー数のHCVレプリコンRNAを有するのに対して、沈殿した集団はバックグラウンド量のみを有する。従って、対照実験は、予測された結果を与える。
【0080】
表2に示されるように、定量的PCRによって測定されたHCV RNAのコピー数は、複製混合物に加えられた鋳型RNAの量に依存する。表2において、HCVは、HCVレプリコンを発現するHuh-7細胞から単離された鋳型RNAとの複製混合物である。HVC(1/2)およびHCV(1/8)は、それぞれ、鋳型RNAの量の1/2および1/8を含む複製混合物である。Huh-7(HCVなし)は、上記のように、HCV鋳型対照である。Br-UTPなしは、HCVレプリコンを発現するHuh-7細胞から単離された鋳型RNAであるが、複製混合物にBr-UTPが加えられていない対照である。
【0081】
【表2】

【0082】
表2に示されるように、アッセイにおいて測定されたHCVレプリコンのコピー数は、抗BrdUTP抗体を用いる沈殿がある場合とない場合の両方で、反応混合物に加えられた鋳型レプリコンRNAの量に直接的に比例する。
【0083】
表3は、10μMの濃度において開示されたアッセイを使用して試験される、既知のHCV RNA阻害剤についてのデータを示す。試験化合物は公開されている化合物である(Dhanak et al., J. Biol.Chem. (2002) 41): 38322-7)。試験化合物の構造を以下に示す。

【0084】
【表3】

【0085】
表3において、試験化合物を用いる処理は、RNAse保護を伴わない全体のウイルスRNA合成において半分未満の減少を生じるが、これは、RNAse保護を実行した後では新規に開始されたウイルスRNA合成の量において10倍に近い減少を引き起こす。従って、試験化合物は、開始段階においてHCV RNA合成を阻害する。
【0086】
本実施例において報告される結果は、化合物のスクリーニングおよびプロファイリングのためにこのアッセイを確証する。このアッセイは、新規に合成されたHCV RNAを定量的に検出する利点を有するが、本発明者らの選択の特定のセグメントもまた許容する。
【0087】
実施例3. 単離された複製複合体における複製のデノボ開始を実証するためのRNA開始阻害剤の使用
膜画分から単離された複製複合体が酵素的に活性であるか否かを決定するためにRNA複製アッセイを使用した。試験化合物(開始阻害剤)を、単離された複製複合体が新規に合成されたRNAのデノボ開始が可能であるか否かを決定するために利用した。標準的な複製混合物は以下を含んだ:60μlの総量中、50mM HEPES (pH 7.3);10mM KCl;10mM MgCl2;0.3mM MnCl2;20単位のRNAse阻害剤;1mLあたり10μgのアクチノマイシンD;0.5mM ATP, GTP, およびUTP;10μCiの[α-P32] CTP;および6μlの膜画分。反応混合物を30℃で2時間インキュベートした。RNA産物をフェノール/クロロホルムで抽出し、エタノール沈殿し、および非変性1%アガロースゲル上で分離した。電気泳動後、ゲルを10%氷酢酸、次いでエタノール中で固定し、オートラジオグラフィーの前に乾燥させた。
【0088】
図2は、実験結果のオートラジオグラムを示す。レーン4は、阻害剤を加えていない対照レーンである。レーン1〜3は、それぞれ、100、20、および4μMの開始阻害剤濃度を用いる結果を示す。オートラジオグラムかあ明白に示されるように、開始阻害剤の付加は、複製複合体によって産生される一本鎖RNAの量を減少する。このアッセイにおいて、二本鎖RNAは、事前に開始されたRNAの伸長から大部分産生されるのに対して、一本鎖RNAは、新規に開始されたRNAから産生される。対照レーン4における一本鎖RNAバンドの存在は、新規に開始されたRNAが、複製の間に形成されることを示す。試験化合物、既知のRNA合成開始阻害剤が、複製の間に加えられるとき、一本鎖RNAバンドは消失するのに対して、二本鎖RNAバンドは残っている。従って、RNA合成開始阻害剤を利用することによって、デノボRNA合成開始が単離されたレプリカーゼ複合体において起こることが確認される。
【0089】
新規に合成されたRNAの集団の検出および/または定量を使用して、ウイルスレプリコンRNA合成の阻害剤を同定するための方法が記載されてきた。試験化合物を有さない対照と比較して、試験化合物の存在下で作製された新規に合成されたRNAの量の減少は、試験化合物が、ウイルスレプリコンRNA合成阻害剤であることを示す。この方法は、RNA伸長阻害剤を同定するために特に有用である。加えて、RNAse保護アッセイは、RNA阻害剤を同定するために、新規に合成されたRNAに対して利用されてもよい。単離された複製複合体が、事前に開始されたRNAの伸長に加えて、デノボ開始が可能であることが明確に実証された。この方法の利点は、開始阻害剤が伸長阻害剤から区別され得ることである。別の利点は、ウイルスレプリコンRNA合成阻害剤を同定するために、新規に合成されたRNA集団の定量が利用されることである。別の利点は、2'-O-メチル化ヌクレオチドが、複製の間に産生された新規に合成されたRNAの収量を増加させるために使用することができることである。
【0090】
前述より、本発明の特定の態様が例示の目的のために本明細書で記載されてきたが、種々の改変が、本発明の精神および範囲から逸脱することなくなされ得ることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】転写開始および伸長阻害剤によってHCVレプリコン複製の阻害の模式図を示す。
【図2】単離された複製複合体におけるRNA合成のデノボ開始を実証するためのRNA合成阻害剤の使用を図示するオートラジオグラフを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、試験化合物がポジティブ鎖RNAウイルスのRNA合成を阻害するか否かを決定するための方法:
ポジティブ鎖RNAウイルスについての単離されたレプリカーゼ複合体、ポジティブ鎖RNAウイルスについての単離されたウイルスレプリコン鋳型RNA、標識されたヌクレオチドアナログ、および試験化合物を、インビトロRNA合成のために十分な条件下で接触させて、標識されたヌクレオチドアナログを含む新規に合成されたRNA集団を形成する工程;
該標識されたヌクレオチドアナログを含む新規に合成されたRNA集団を検出する工程;
該標識されたヌクレオチドアナログを含む新規に合成されたRNA集団を定量して、試験RNA量を提供する工程;ならびに
試験化合物の非存在下で産生された、標識されたヌクレオチドアナログを含む対照の新規に合成されたRNA集団の対照RNA量と、試験RNA量を比較し、ここで、対照RNA量と比較した試験RNA量の減少は、試験化合物がポジティブ鎖RNAウイルスのRNA合成を阻害することを示す、工程。
【請求項2】
接触させる工程が、2'-O-メチル-5-メチルウリジン-5'-三リン酸と接触させる工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
以下によって、単離されたレプリカーゼ複合体および単離されたウイルスレプリコン鋳型RNAを提供する工程をさらに含む、請求項1記載の方法:
細胞株に、ウイルスレプリコンRNAまたはウイルスレプリコンについてのDNA鋳型をトランスフェクトして、トランスフェクトされた細胞株を提供する工程、
ウイルスレプリカーゼ複合体の産生のために適切な条件下で、該トランスフェクトされた細胞株をインキュベートする工程、ならびに
該トランスフェクトされた細胞の細胞膜画分から、レプリカーゼ複合体およびウイルスレプリコン鋳型RNAを単離する工程。
【請求項4】
ポジティブ鎖RNAウイルスがC型肝炎ウイルスであり、ウイルスレプリコンについてのDNA鋳型がSEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 2、SEQ ID NO: 3、SEQ ID NO: 4、またはSEQ ID NO: 5である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
以下によって、ウイルスレプリコン鋳型RNAを含む単離されたレプリカーゼ複合体を提供する工程をさらに含む、請求項1記載の方法:
ウイルスレプリカーゼ複合体の産生のために適切である条件下で、ポジティブ鎖RNAウイルスに感染した初代細胞または細胞株をインキュベートする工程、ならびに
該感染した細胞の細胞膜画分から、ウイルスレプリコン鋳型RNAを含むレプリカーゼ複合体を単離する工程。
【請求項6】
ポジティブ鎖RNAウイルスがC型肝炎ウイルスである、請求項1記載の方法。
【請求項7】
標識されたヌクレオチドアナログが特異的抗体によって認識可能なアナログであり、アナログは高い特異的結合反応を介して認識されることができ、またはアナログは該アナログの物理的特性の結果として直接検出可能である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
標識されたヌクレオチドアナログが、特異的抗体によって認識可能なアナログである、請求項7記載の方法。
【請求項9】
標識されたヌクレオチドアナログがBr-UTPである、請求項8記載の方法。
【請求項10】
検出する工程が、新規に合成されたRNAを、標識されたヌクレオチドアナログに特異的な抗体と接触させる工程、および標識されたヌクレオチドアナログを含む新規に合成されたRNAを免疫沈殿して、免疫沈殿RNAを形成する工程を含む、請求項8記載の方法。
【請求項11】
標識されたヌクレオチドアナログがBr-UTPであり、特異的抗体が抗BrdU抗体である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
新規に合成されたRNAを定量する工程が、免疫沈殿したRNAに対してリアルタイムPCRを実行する工程を含む、請求項10記載の方法。
【請求項13】
試験化合物がRNA伸長阻害剤である、請求項1記載の方法。
【請求項14】
試験化合物が、RNA合成開始阻害剤である、請求項1記載の方法。
【請求項15】
試験化合物が、レプリカーゼ複合体活性阻害剤である、請求項1記載の方法。
【請求項16】
アナログの物理的特性の結果として直接的に検出可能であるアナログが放射活性ヌクレオチドである、請求項7記載の方法。
【請求項17】
検出する工程がゲル電気泳動を含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
以下の工程を含む、ポジティブ鎖RNAウイルスの新規に開始されたRNAを定量するための方法:
ポジティブ鎖RNAウイルスについての単離されたレプリカーゼ複合体、ポジティブ鎖RNAウイルスについての単離されたウイルスレプリコン鋳型RNA、および標識されたヌクレオチドアナログを、インビトロRNA合成のために十分である条件下で接触させ、標識されたヌクレオチドアナログを含む新規に合成されたRNA集団を形成する工程;
プローブおよび該標識されたヌクレオチドアナログを含む新規に合成されたRNA集団を、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし、ここで、該プローブは、新規に合成されたRNA集団の転写開始領域の少なくとも一部に相補的である、工程;
ハイブリダイズしていない一本鎖RNAを、一本鎖特異的リボヌクレアーゼで消化して、標識されたヌクレオチドアナログを含む保護されたRNA集団を形成する工程;
該標識されたヌクレオチドアナログを含む保護されたRNA集団を検出する工程;ならびに
該標識されたヌクレオチドアナログを含む保護されたRNA集団を定量する工程。
【請求項19】
接触させる工程が、2'-O-メチル-5-メチルウリジン-5'-三リン酸と接触させる工程をさらに含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
以下によって、単離されたレプリカーゼ複合体および単離されたウイルスレプリコン鋳型RNAを提供する工程をさらに含む、請求項18記載の方法:
ヒトヘパトソーマ細胞株に、ウイルスレプリコンRNAまたはウイルスレプリコンについてのDNA鋳型をトランスフェクトして、トランスフェクトされた細胞株を提供する工程、
ウイルスレプリカーゼ複合体の産生のために適切な条件下で、該トランスフェクトされた細胞株をインキュベートする工程、ならびに
該トランスフェクトされた細胞の細胞膜画分から、ウイルスレプリコン鋳型RNAを含むレプリカーゼ複合体を単離する工程。
【請求項21】
ウイルスレプリコンについてのDNA鋳型がSEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 2、SEQ ID NO: 3、SEQ ID NO: 4、またはSEQ ID NO: 5である、請求項20記載の方法。
【請求項22】
以下によって、ウイルスレプリコン鋳型RNAを含む単離されたレプリカーゼ複合体を提供する工程をさらに含む、請求項18記載の方法:
ウイルスレプリカーゼ複合体の産生のために適切である条件下で、ポジティブ鎖RNAウイルス感染した初代細胞または細胞株をインキュベートする工程、ならびに
該感染した細胞の細胞膜画分から、ウイルスレプリコン鋳型RNAを含むレプリカーゼ複合体を単離する工程。
【請求項23】
標識されたヌクレオチドアナログが特異的抗体によって認識可能なアナログであり、アナログは高い特異的結合反応を介して認識されることができ、またはアナログは該アナログの物理的特性の結果として直接検出可能である、請求項18記載の方法。
【請求項24】
標識されたヌクレオチドアナログが、特異的抗体によって認識可能なアナログである、請求項23記載の方法。
【請求項25】
標識されたヌクレオチドアナログがBr-UTPである、請求項24記載の方法。
【請求項26】
検出する工程が、新規に合成されたRNAを、標識されたヌクレオチドアナログに特異的な抗体と接触させる工程、および標識されたヌクレオチドアナログを含む新規に合成されたRNAを免疫沈殿して、免疫沈殿RNAを形成する工程を含む、請求項24記載の方法。
【請求項27】
標識されたヌクレオチドアナログがBr-UTPであり、特異的抗体が抗BrdU抗体である、請求項26記載の方法。
【請求項28】
新規に合成されたRNAを定量する工程が、免疫沈殿したRNAに対してリアルタイムPCRを実行する工程を含む、請求項27記載の方法。
【請求項29】
アナログの物理的特性の結果として直接的に検出可能であるアナログが放射活性ヌクレオチドである、請求項23記載の方法。
【請求項30】
検出する工程がゲル電気泳動を含む、請求項29記載の方法。
【請求項31】
以下の工程を含む、試験化合物がポジティブ鎖RNAウイルスのRNA合成開始阻害剤であるか否かを決定するための方法:
ポジティブ鎖RNAウイルスについての単離されたレプリカーゼ複合体、ポジティブ鎖RNAウイルスについての単離されたウイルスレプリコン鋳型RNA、標識されたヌクレオチドアナログ、および試験化合物を、インビトロRNA合成のために十分な条件下で接触させて、標識されたヌクレオチドアナログを含む新規に合成されたRNA集団を形成する工程;
プローブおよび該標識されたヌクレオチドアナログを含む新規に合成されたRNA集団を、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし、ここで、該プローブは、新規に合成されたRNA集団の開始領域の少なくとも一部に相補的である、工程;
ハイブリダイズしていない一本鎖RNAを、一本鎖特異的リボヌクレアーゼで消化して、標識されたヌクレオチドアナログを含む保護されたRNA集団を形成する工程;
該標識されたヌクレオチドアナログを含む保護されたRNA集団を検出する工程;
該標識されたヌクレオチドアナログを含む保護されたRNA集団を定量して、試験RNA量を提供する工程;ならびに
標識されたヌクレオチドアナログを含むが、試験化合物の非存在下で産生された、保護されたRNAの対照RNA量と、試験RNA量を比較し、ここで、対照RNA量と比較した試験RNA量の減少は、試験化合物がポジティブ鎖RNAウイルスのRNA合成の開始を阻害することを示す、工程。
【請求項32】
接触させる工程が、2'-O-メチル-5-メチルウリジン-5'-三リン酸と接触させる工程をさらに含む、請求項31記載の方法。
【請求項33】
以下によって、単離されたレプリカーゼ複合体および単離されたウイルスレプリコン鋳型RNAを提供する工程をさらに含む、請求項31記載の方法:
ヒトヘパトソーマ細胞株に、ウイルスレプリコンRNAまたはウイルスレプリコンについてのDNA鋳型をトランスフェクトして、トランスフェクトされた細胞株を提供する工程、
ウイルスレプリカーゼ複合体の産生のために適切な条件下で、該トランスフェクトされた細胞株をインキュベートする工程、ならびに
該トランスフェクトされた細胞の細胞膜画分から、ウイルスレプリコン鋳型RNAを含むレプリカーゼ複合体を単離する工程。
【請求項34】
ウイルスレプリコンについてのDNA鋳型がSEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 2、SEQ ID NO: 3、SEQ ID NO: 4、またはSEQ ID NO: 5である、請求項33記載の方法。
【請求項35】
以下によって、ウイルスレプリコン鋳型RNAを含む単離されたレプリカーゼ複合体を提供する工程をさらに含む、請求項31記載の方法:
ウイルスレプリカーゼ複合体の産生のために適切である条件下で、ポジティブ鎖RNAウイルス感染した初代細胞または細胞株をインキュベートする工程、および
該感染した細胞の細胞膜画分から、ウイルスレプリコン鋳型RNAを含むレプリカーゼ複合体を単離する工程。
【請求項36】
ポジティブ鎖RNAウイルスがC型肝炎ウイルスである、請求項31記載の方法。
【請求項37】
標識されたヌクレオチドアナログが特異的抗体によって認識可能なアナログであり、アナログは高い特異的結合反応を介して認識されることができ、またはアナログは該アナログの物理的特性の結果として直接検出可能である、請求項31記載の方法。
【請求項38】
標識されたヌクレオチドアナログが、特異的抗体によって認識可能なアナログである、請求項37記載の方法。
【請求項39】
標識されたヌクレオチドアナログがBr-UTPである、請求項37記載の方法。
【請求項40】
検出する工程が、新規に合成されたRNAを、標識されたヌクレオチドアナログに特異的な抗体と接触させる工程、および標識されたヌクレオチドアナログを含む新規に合成されたRNAを免疫沈殿して、免疫沈殿RNAを形成する工程を含む、請求項37記載の方法。
【請求項41】
標識されたヌクレオチドアナログがBr-UTPであり、特異的抗体が抗BrdU抗体である、請求項40記載の方法。
【請求項42】
新規に合成されたRNAを定量する工程が、免疫沈殿したRNAに対してリアルタイムPCRを実行する工程を含む、請求項41記載の方法。
【請求項43】
アナログの物理的特性の結果として直接的に検出可能であるアナログが放射活性ヌクレオチドである、請求項37記載の方法。
【請求項44】
検出する工程がゲル電気泳動を含む、請求項43記載の方法。
【請求項45】
以下を含む、ポジティブ鎖RNAウイルスのRNA合成の阻害について試験化合物をスクリーニングするためのキット:
ポジティブRNAウイルスについての単離されたレプリカーゼ複合体;
ポジティブ鎖RNAウイルスについての単離されたウイルスレプリコン鋳型RNA;
使用のための説明書;および
新規に合成されたウイルスレプリコンRNAの産生のために十分である緩衝液およびヌクレオシド三リン酸。
【請求項46】
標識されたヌクレオチドアナログをさらに含む、請求項45記載のキット。
【請求項47】
標識されたヌクレオチドアナログを検出するための手段をさらに含む、請求項46記載のキット。
【請求項48】
標識されたヌクレオチドアナログを定量するための手段をさらに含む、請求項45記載のキット。
【請求項49】
プライマー、一本鎖特異的リボヌクレアーゼ、およびリボヌクレアーゼ保護アッセイを実行するための説明書をさらに含む、請求項45記載のキット。
【請求項50】
ヌクレオシド三リン酸が2'-O-メチル-5-メチルウリジン-5'-三リン酸を含む、請求項45記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−530049(P2007−530049A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−505210(P2007−505210)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【国際出願番号】PCT/US2005/009959
【国際公開番号】WO2005/095655
【国際公開日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(504378685)アキリオン ファーマシューティカルズ,インコーポレーテッド (22)
【Fターム(参考)】