説明

無線タグシステム

【課題】無線タグの読みこぼしを低減することができ且つ効果的に低消費電力化を図ることができる無線タグシステムを提供する。
【解決手段】無線タグリーダ10では、キャリアオン直後には第2フラグ(キャリアが第2時間オフすることでリセットするフラグ)を指定して無線タグ50の読み取りを行い、その後、第1フラグ(第2時間よりも短い第1時間オフすることでリセットするフラグ)を指定して無線タグ50を行っている。そして、それら両読取結果に基づいて読取可能エリア内に存在する無線タグ50の固有IDを把握している。更に、第1フラグを指定した無線タグ50の読み取り後に、第1時間よりも長く第2時間よりも短い時間、キャリアの出力を中断させている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線タグシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
無線タグを無線タグリーダで読み取る無線タグシステムでは、同一の無線タグリーダによって重複した読み取りが行われることを排除すべく、無線タグ側において、一度読み取った端末に対して所定条件が成立するまで応答を行わないといった制御を行っている。例えば、無線タグリーダによって読み取られたときに完了フラグが設定されるように無線タグを構成し、完了フラグが設定されているときには無線タグから無線タグリーダへの応答が行われないようにすることで、一旦読み取られた無線タグの再度の読み取りを効果的に防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−263480公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、無線タグでは、一般的に上記のような完了フラグを設定可能な識別フラグ(インベントリフラグ)が複数種類用意されており、無線タグリーダ側ではいずれかの識別フラグを指定して、読取完了の判断をしている。この識別フラグとしては、例えば、無線タグリーダによって無線タグが読み取られたときに非応答状態に切り替えられると共に、この非応答状態に切り替えられた後、キャリアの受信が所定期間中断した後に応答可能状態にリセットするようなフラグ(S2フラグ)などが好適に用いられている。
【0005】
しかしながら、上記のようなフラグ(S2フラグ)を用いる場合、複数の無線タグリーダが使用されうる環境下で、読みこぼしが生じやすいという問題がある。例えば、いずれかの無線タグリーダによって所定の読取可能エリア内の無線タグを読み取ろうとした場合、この読取可能エリア内のいずれかの無線タグが他の無線タグリーダによって既に読み取られている場合がありうる。このような場合、当該他の無線タグリーダのキャリアがオフになったとしても、当該無線タグにおいて上記フラグ(S2フラグ)が一定期間非応答状態に切り替えられてしまうため、上記無線タグリーダ(これから読み取りを行う無線タグリーダ)の読み取り時には依然として非応答状態が維持され、その結果として当該無線タグが読み取られなくなってしまう。また、このような読みこぼしが完全になくなるように、長時間読取処理を続けることも考えられるが、この場合、長時間のキャリア送信などに起因する消費電力の増大が避けられない。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、無線タグの読みこぼしを低減することができ且つ効果的に低消費電力化を図ることができる無線タグシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、固有IDを記録した記録手段とキャリアを受信する受信手段とを備えた無線タグと、前記無線タグに対して前記キャリアを出力するキャリア出力手段を備えた無線タグリーダとを有する無線タグシステムにおいて、
前記無線タグが、第1フラグを応答可能状態と非応答状態とに切替可能に構成され、前記無線タグリーダによって当該無線タグの読み取りが完了したと判断したときに前記第1フラグを非応答状態に切り替えると共に、この非応答状態に切り替えた後、前記受信手段による前記キャリアの受信が所定の第1時間中断した後に前記第1フラグを応答可能状態にリセットする第1フラグ設定手段と、第2フラグを応答可能状態と非応答状態とに切替可能に構成され、前記無線タグリーダによって当該無線タグの読み取りが完了したと判断したときに前記第2フラグを非応答状態に切り替えると共に、この非応答状態に切り替えた後、前記受信手段による前記キャリアの受信が前記第1時間よりも長い第2時間中断した後に前記第2フラグを前記応答可能状態にリセットする第2フラグ設定手段と、前記無線タグリーダからの指定コマンドによって指定された前記第1フラグ又は前記第2フラグの状態に基づき、前記無線タグリーダに対する応答の可否を判断する応答可否判断手段と、前記応答可否判断手段によって応答可能と判断された場合に前記無線タグリーダに対する応答を行う応答手段と、前記応答手段による応答が行われた後、前記無線タグリーダによる当該無線タグの読み取りが完了したか否かを判断する読取完了判断手段と、を備え、
前記無線タグリーダは、前記無線タグに対し前記1フラグ又は前記第2フラグのいずれかを指定した前記指定コマンドを送信するコマンド送信手段と、前記コマンド送信手段からの前記指定コマンドに応じて前記応答手段から応答がなされたときに前記無線タグを読み取る読取手段と、前記読取手段によって前記無線タグが読み取られたときに当該無線タグに読取完了を通知する読取完了通知手段と、前記第1時間よりも長く前記第2時間よりも短い時間で前記キャリアの出力を中断させ、且つその中断後に再び前記キャリアを出力させるように前記キャリア出力手段の制御を行うキャリア制御手段と、を備え、
前記コマンド送信手段が、前記キャリア制御手段によって前記キャリアがオン状態とされたときに前記第2フラグを指定した前記指定コマンドを送信し、その後、前記第1フラグを指定した前記指定コマンドを送信し、前記読取手段が、前記第2フラグの状態に応じた前記応答結果に基づいて前記無線タグを読み取ると共に、前記第1フラグの状態に応じた前記応答結果に基づいて前記無線タグを読み取り、それら両読取結果に基づいて読取可能エリア内に存在する前記無線タグの前記固有IDを把握し、前記キャリア制御手段が、前記読取手段による前記第1フラグの状態に応じた前記無線タグの読み取り後に前記キャリアの出力を中断させることを特徴としている。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の無線タグシステムにおいて、前記読取手段が、前記コマンド指定手段によって前記第2フラグを指定した前記指定コマンドを送信したときの読取可能エリア内での第2フラグ指定時の読取結果と、前記コマンド指定手段によって前記第1フラグを指定した前記指定コマンドを送信したときの読取可能エリア内での第1フラグ指定時の読取結果とに基づき、前記第2フラグ指定時と前記第1フラグ指定時とで重複して読み取られた前記無線タグの前記固有IDの一方を破棄することを特徴としている。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の無線タグシステムにおいて、前記キャリア制御手段が、前記読取手段による前記第1フラグの状態に応じた前記無線タグの読み取り後、所定のキャリアオフ条件が成立している場合に前記キャリアの出力を中断させることを特徴としている。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の無線タグシステムにおいて、前記コマンド送信手段が、前記無線タグに対し前記第2フラグを指定した前記指定コマンドの送信を所定の第1終了条件が成立するまで繰り返し、前記第1終了条件の成立後は、前記無線タグに対し前記第1フラグを指定した前記指定コマンドの送信を所定の第2終了条件が成立するまで繰り返し、前記読取手段が、前記第1終了条件が成立するまで、前記第2フラグを指定した前記指定コマンドの送信に応じた前記無線タグからの応答に基づいて当該無線タグを読み取り、前記第1終了条件が成立後は、前記第2終了条件が成立するまで、前記第1フラグを指定した前記指定コマンドの送信に応じた前記無線タグからの応答に基づいて当該無線タグを読み取ることを特徴としている。
【0011】
請求項5の発明は、請求項4に記載の無線タグシステムにおいて、前記第1終了条件が、読み取り済みの前記無線タグの個数が予め設定した設定個数に達したとき、又は新規に読み取られる前記無線タグの個数が0となったときであり、前記第2終了条件が、新規に読み取られる前記無線タグの個数が0となったときであることを特徴としている。
【0012】
請求項6の発明は、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の無線タグシステムにおいて、更に、タイムアウト時間を設定するタイムアウト時間設定手段が設けられ、前記読取手段が、前記キャリア制御手段によって前記キャリアがオン状態とされてから前記タイムアウト時間が経過した場合に前記無線タグの前記読取処理を中断し、前記キャリア制御手段は、前記読取手段によって前記読取処理が中断される場合に前記キャリアをオフ状態とすることを特徴としている。
【0013】
請求項7の発明は、請求項6に記載の無線タグシステムにおいて、更に、前記読取手段による前記読取処理の中断要因を判断する中断要因判断手段と、前記中断要因判断手段によって前記中断要因が前記タイムアウト時間の経過による中断と判断される場合に、所定の期間前記タイムアウト時間の延長又は前記タイムアウト時間の設定中止を行うタイムアウト時間変更手段と、が設けられていることを特徴としている。
【0014】
請求項8の発明は、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の無線タグシステムにおいて、更に、前記無線タグリーダにおいて、スロット数を設定するスロット数設定手段と、前記スロット数設定手段によって設定された前記スロット数のスロットを用意すると共に、前記無線通信手段の読取可能範囲内に存在する各無線タグを各スロットに割り当て、前記各無線タグを固有の識別情報と対応付ける衝突防止処理を行う衝突防止手段と、前記衝突防止手段による前記衝突防止処理の処理結果が所定の報知条件を満たす場合に報知を行う報知手段と、が設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明では、無線タグにおいて、第1フラグを応答可能状態と非応答状態とに切替可能に構成され、無線タグリーダによって当該無線タグの読み取りが完了したと判断したときに第1フラグを非応答状態に切り替えると共に、この非応答状態に切り替えた後、受信手段によるキャリアの受信が所定の第1時間中断した後に第1フラグを応答可能状態にリセットする第1フラグ設定手段と、第2フラグを応答可能状態と非応答状態とに切替可能に構成され、無線タグリーダによって当該無線タグの読み取りが完了したと判断したときに第2フラグを非応答状態に切り替えると共に、この非応答状態に切り替えた後、受信手段によるキャリアの受信が第1時間よりも長い第2時間中断した後に第2フラグを応答可能状態にリセットする第2フラグ設定手段と、無線タグリーダからの指定コマンドによって指定された第1フラグ又は第2フラグの状態に基づき、無線タグリーダに対する応答の可否を判断する応答可否判断手段と、応答可否判断手段によって応答可能と判断された場合に無線タグリーダに対する応答を行う応答手段と、応答手段による応答が行われた後、無線タグリーダによる当該無線タグの読み取りが完了したか否かを判断する読取完了判断手段とが設けられている。
一方、無線タグリーダには、第1時間よりも長く第2時間よりも短い時間でキャリアの出力を中断させ、且つその中断後に再びキャリアを出力させるようにキャリア出力手段の制御を行うキャリア制御手段が設けられており、コマンド送信手段は、キャリア制御手段によってキャリアがオン状態とされたときに第2フラグを指定した指定コマンドを送信し、その後、第1フラグを指定した指定コマンドを送信している。そして、読取手段は、第2フラグの状態に応じた応答結果に基づいて無線タグを読み取ると共に、第1フラグの状態に応じた応答結果に基づいて無線タグを読み取り、それら両読取結果に基づいて読取可能エリア内に存在する無線タグの固有IDを把握している。そして、上記キャリア制御手段は、読取手段による第1フラグの状態に応じた無線タグの読み取り後にキャリアの出力を中断させている。
このようにすると、第2フラグを指定した指定コマンドを送信して読取可能エリア内の無線タグを読み取ったときに、当該読取可能エリア内のいずれかの無線タグが既に他の装置によって第2フラグを指定して読み取られていたとしても(即ち、これらの無線タグが読みこぼしとなってしまったとしても)、その後の第1フラグを指定した読み取りによってその読みこぼした無線タグを読み取ることができる。特に、第1フラグは、キャリア制御手段によるキャリアの中断毎にリセットされるため、このような第1フラグを指定した読み取りを行うことで読取可能エリア内の無線タグを読みこぼしなく読み取りやすく、このような第1フラグを指定した読み取りによって第2フラグを指定した読み取りを補えば、より確実に読取可能エリア内の無線タグを読み取ることができる。
更に、キャリア制御手段は、第1時間よりも長く第2時間よりも短い時間でキャリアの出力を中断させ、且つその中断後に再びキャリアを出力させるようにキャリア出力手段の制御を行っており、このような中断制御を第1フラグを指定した読み取りの後に行っている。従って、第1フラグを指定した読取後にキャリア制御手段によってキャリアの出力が中断されたとき、第1フラグはリセットされるが、第2フラグはリセットされないことになるため、第2フラグのリセットを毎回行わずに済み、効率的に無線タグを読み取ることができる。
【0016】
請求項2の発明では、読取手段は、コマンド指定手段によって第2フラグを指定した指定コマンドを送信したときの読取可能エリア内での第2フラグ指定時の読取結果と、コマンド指定手段によって第1フラグを指定した指定コマンドを送信したときの読取可能エリア内での第1フラグ指定時の読取結果とに基づき、第2フラグ指定時と第1フラグ指定時とで重複して読み取られた無線タグの固有IDの一方を破棄している。このようにすると、各フラグを指定したそれぞれの読み取りによって読取可能エリア内の無線タグをより確実に読み取ると共に、重複している場合には不要な一方を破棄することで読取可能エリア内の適切なタグ数及びタグIDを把握できるようになる。
【0017】
請求項3の発明は、キャリア制御手段が、読取手段による第1フラグの状態に応じた無線タグの読み取り後、所定のキャリアオフ条件が成立している場合にキャリアの出力を中断させている。この構成によれば、キャリアをオフすべき特定の場合をキャリアオフ条件とすることでキャリアを適切な場合に中断できるようになる。
【0018】
請求項4の発明では、コマンド送信手段が、無線タグに対し第2フラグを指定した指定コマンドの送信を所定の第1終了条件が成立するまで繰り返し、第1終了条件の成立後は、無線タグに対し第1フラグを指定した指定コマンドの送信を所定の第2終了条件が成立するまで繰り返している。また、読取手段では、第1終了条件が成立するまで、第2フラグを指定した指定コマンドの送信に応じた無線タグからの応答に基づいて当該無線タグを読み取り、第1終了条件が成立後は、第2終了条件が成立するまで、第1フラグを指定した指定コマンドの送信に応じた無線タグからの応答に基づいて当該無線タグを読み取っている。このようにすると、第1フラグを指定した指定コマンドの送信及びそれに基づく読み取りと、第2フラグを指定した指定コマンドの送信及びそれに基づく読み取りとを、それぞれ個別の条件下で実行することができ、各読み取りをそれぞれ適切なタイミングで終わらせることができる。
【0019】
請求項5の発明では、第1終了条件が、「読み取り済みの無線タグの個数が予め設定した設定個数に達したとき」、又は「新規に読み取られる無線タグの個数が0となったとき」とされている。これらの条件が成立した場合には、読取可能範囲内において第1フラグを指定した読み取りで読取可能な無線タグが全て読み取られた可能性が高く、第1フラグを指定した読み取りをこのような条件で終了させることで、当該読み取りをより適切な時期に終了させることができる。また、第2終了条件が、「新規に読み取られる無線タグの個数が0となったとき」とされている。この条件が成立した場合には、第2フラグを指定した読み取りで読取可能な無線タグが全て読み取られた可能性が高く、第2フラグを指定した読み取りをこのような条件で終了させることで、第2フラグを指定した読み取りについてもより適切な時期に終了させることができる。
【0020】
請求項6の発明では、タイムアウト時間を設定するタイムアウト時間設定手段を備え、読取手段は、キャリア制御手段によってキャリアがオン状態とされてからタイムアウト時間が経過した場合に無線タグの読取処理を中断し、キャリア制御手段は、読取手段によって読取処理が中断される場合にキャリアをオフ状態としている。このようにすると、タイムアウト時間を経過した場合に強制的に読取処理が中断され、キャリアがオフ状態とされるため、特に1回の読み取りに時間をかけずに応答速度を重視する場合に有利となる。
【0021】
請求項7の発明では、読取手段による読取処理の中断要因を判断する中断要因判断手段と、中断要因判断手段によって中断要因がタイムアウト時間の経過による中断と判断される場合に、所定の期間タイムアウト時間の延長又はタイムアウト時間の設定中止を行うタイムアウト時間変更手段とが設けられている。このようにすると、タイムアウト時間を設定して応答速度を重視した読み取りを実施可能としつつ、タイムアウト時間の経過による中断がなされるような読み取り環境となったとき(例えば、無線タグ数が多い場合等)には、一時的にタイムアウト時間の延長又は設定中止を行い、読み取りの質を重視するように切り替えることができる。
【0022】
請求項8の発明では、無線タグリーダは、スロット数を設定するスロット数設定手段と、スロット数設定手段によって設定されたスロット数のスロットを用意すると共に、無線通信手段の読取可能範囲内に存在する各無線タグを各スロットに割り当て、各無線タグを固有の識別情報と対応付ける衝突防止処理を行う衝突防止手段と、衝突防止手段による衝突防止処理の処理結果が所定の報知条件を満たす場合に報知を行う報知手段と、を備えている。このようにすると、衝突防止処理の処理結果が所定の報知条件に達したことをユーザが把握できるようになり、ユーザはタグ環境を把握して適切な対応をとりやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係る無線タグシステムを概念的に説明する説明図である。
【図2】図2は、図1の無線タグシステムに用いられる無線タグリーダを概略的に例示するブロック図である。
【図3】図3は、図1の無線タグシステムに用いられる無線タグを概略的に例示するブロック図である。
【図4】図4は、各インベントリフラグ(識別フラグ)の応答方式を説明する説明図である。
【図5】図5は、無線タグ側でのインベントリフラグの指定の切り替えを概念的に説明する説明図である。
【図6】図6は、無線タグリーダで行われる読取処理の流れを例示するフローチャートである。
【図7】図7は、図6の読取処理で行われるモード判定処理の流れを例示するフローチャートである。
【図8】図8は、図6の読取処理で行われるキャリアオフ判定処理の流れを例示するフローチャートである。
【図9】図9はアンチコリジョン処理について概念的に説明する説明図である。
【図10】図10は、図1の無線タグシステムにおける無線タグリーダでの読み取りの様子を説明する説明図である。
【図11】図11は、図10の読み取りにおける各無線タグの読取結果を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[第1実施形態]
以下、本発明の無線タグシステムを具現化した第1実施形態について、図面を参照して説明する。
(無線タグシステムの全体構成)
図1は、本発明の第1実施形態に係る無線タグシステムを概念的に説明する説明図である。図2は、図1の無線タグシステムに用いられる無線タグリーダを概略的に例示するブロック図である。図3は、図1の無線タグシステムに用いられる無線タグを概略的に例示するブロック図である。
【0025】
本実施形態に係る無線タグシステム1は、図1に示すように無線タグリーダ10と、無線タグ50とを備え、無線タグリーダ10によって無線タグ50を読み取るシステムとして構成されている。まず、無線タグリーダ10及び無線タグ50のハードウェア構成について説明する。
【0026】
1.無線タグリーダの構成
無線タグリーダ10は、図2に示すように、制御部11、送信回路12、受信回路13、アンテナ14、サーキュレータ16などによって構成されている。
【0027】
制御部11は、無線タグリーダ10の全体的制御を司るものであり、主として、CPU41、メモリ42、タイマ回路43などによって構成されている。CPU41は、送信回路12に対するデータ送信や、受信回路13からのデータ受信を行うと共に、メモリ42に記憶されたプログラムに基づいて各種制御を行う構成をなしている。また、メモリ42は、ROM、RAM、不揮発性メモリなどの半導体メモリ等によって構成されており、各種情報を記憶する構成をなしている。タイマ回路43は、時間計測を行う公知のタイマ回路によって構成されている。
【0028】
送信回路12は、キャリア発振器21、符号化部22、変調部23、送信部フィルタ24、増幅器25などが設けられている。
符号化部22は、制御部11から送信データを受ける構成をなしており、当該制御部11より出力される送信データを符号化して変調部23に出力する構成をなしている。変調部23は、キャリア発振器21より出力される所定周波数のキャリア(搬送波)に対し、通信対象へのコマンド送信時に符号化部22より出力される符号化された送信符号(変調信号)によってASK(Amplitude Shift Keying)変調された被変調信号を生成し、送信部フィルタ24に出力する。なお、キャリア発振器21の発振動作の動作/停止は、例えばCPU41によって制御されるようになっている。
【0029】
送信部フィルタ24は、フィルタリングした送信信号を増幅器25に出力し、増幅器25は、入力信号(送信部フィルタ24でフィルタリングされた送信信号)を所定のゲインで増幅する構成をなしており、その増幅信号は、サーキュレータ16を介してアンテナ14に出力される。このようにしてアンテナ14に送信信号が出力されると、その送信信号が電磁波として当該アンテナ14より外部に放射される。
なお、本実施形態では、制御部11及び送信回路12がキャリア出力手段の一例に相当し、無線タグ50に対してキャリアを出力するように機能する。
【0030】
また、受信回路13には、受信部フィルタ31、増幅器32、復調部33、二値化処理部34、復号化部35が設けられている。
アンテナ14にて受信された信号は、サーキュレータ16を介して受信部フィルタ31に入力され、この受信部フィルタ31によってフィルタリングされた後、増幅器32によって増幅され、復調部33に与えられて復調される。その復調された信号波形は二値化処理部34において二値化され、その後、復号化部35において復号化される。そして、復号化された受信データは制御部11に出力される。
【0031】
2.無線タグの全体構成
無線タグ50は、「無線通信媒体」の一例に相当するものであり、ハードウェア的には例えば公知のRFIDタグとして構成され、図3に示すように、制御回路51、アンテナ54、送信回路52、受信回路53、メモリ55、電源回路56などを備えている。なお、図3では、代表例として無線タグ50がいわゆるパッシブタグとして構成された例について説明するが、アクティブタグとして構成されていてもよい。
【0032】
制御回路51は、CPUを備えた構成をなし、無線タグ50内の各種制御(後述する応答処理等)や演算処理を行う構成をなしている。また、メモリ55は、ROM,EEPROMなどの半導体メモリ等によって構成されており、無線タグ50を識別するためのタグ識別情報(固有ID)や後述する応答処理で扱われる情報(フラグ状態情報)などの各種情報が記憶されるようになっている。なお、本実施形態では、メモリ55が「記録手段」の一例に相当する。
【0033】
また、受信回路53は、復調部、復号部などを備えている。この受信回路53では、アンテナ54で受信された信号を復調部にて復調し、その復調信号を復号部で復号化することにより、受信信号に重畳されているデータを制御回路51に出力している。なお、本実施形態では、制御回路51及び受信回路53が「受信手段」の一例に相当する。
【0034】
送信回路52は、主として、符号部、変調部、増幅部によって構成されている。この送信回路52は、制御回路51から出力されたデータを送信データとして符号部にて符号化した後、変調部によって変調している。そして、その変調信号を増幅部にて増幅してアンテナ54に出力している。このようにアンテナ54に出力された送信データは、アンテナ54から電波信号として放射されるようになっている。
【0035】
(識別フラグ)
次に、無線タグ50で行われる識別フラグの切り替えについて説明する。図4は、各インベントリフラグ(識別フラグ)の応答方式を説明する説明図である。図5は、無線タグ側でのインベントリフラグの指定の切り替えを概念的に説明する説明図である。
【0036】
無線タグ50では、応答可能状態と非応答状態とに切替可能な識別フラグを複数種類用いており、各識別フラグの状態を、各種類毎に規定された応答方式に従って設定している。具体的には、識別フラグとして4種類のインベントリフラグ(完了フラグ)が用いられており、以下では、各種類のフラグをそれぞれ、S0インベントリフラグ、S1インベントリフラグ、S2インベントリフラグ、S3インベントリフラグと称している。図4には、各インベントリフラグの切替制御方法について概略的に例示しており、各インベントリフラグの状態は固有の切替制御方法に従ってそれぞれが独立して設定されるようになっている。なお、各インベントリフラグが応答可能状態であるか或いは非応答状態であるかを示す値は、例えばメモリ55などに記憶されている。
【0037】
まず、S0インベントリフラグについて説明する。S0インベントリフラグ(以下、S0フラグともいう)は、当該S0インベントリフラグが「非応答状態」に設定されているときに無線タグ50にてキャリアが検知されている場合(キャリアON時)、そのキャリアが検知されなくなるまではその「非応答状態」が維持されるように制御される。また、S0インベントリフラグが「非応答状態」であるときに無線タグ50にてキャリアが検知されない状態(キャリア停止状態)となったときには、即座に「応答可能状態」に設定変更される(即ち、キャリアOFF時には非応答状態が維持されないようになっている)。
【0038】
次に、S1インベントリフラグについて説明する。S1インベントリフラグは、無線タグ50でのキャリアの検知に関係なく、当該S1インベントリフラグが非応答状態に設定されてから一定時間T1を経過した場合に、非応答状態から応答可能状態に切り替えられるようになっている。
【0039】
次に、S2インベントリフラグについて説明する。S2インベントリフラグ(以下、S2フラグともいう)は、当該S2インベントリフラグが「非応答状態」に設定されているときに無線タグ50にてキャリアが検知されている場合(キャリアON時)、そのキャリアが検知されなくなるまではその「非応答状態」が維持されるように制御される。また、無線タグ50にてキャリアが検知されない状態(キャリア停止状態)となったときには、そのキャリア停止状態が一定時間T2継続するまで「非応答状態」を維持し、キャリア停止状態が一定時間T2経過した後に、「応答可能状態」に切り替える。なお、本実施形態では上記一定時間T2を2sより大きい時間(例えば10s)としている。
【0040】
次に、S3インベントリフラグについて説明する。S3インベントリフラグは、応答方式は基本的にS2インベントリフラグと同様であり、S2インベントリフラグの応答方式とは維持時間が異なっている。S3インベントリフラグは、当該S3インベントリフラグが「非応答状態」に設定されているときに無線タグ50にてキャリアが検知されている場合(キャリアON時)、そのキャリアが検知されなくなるまではその「非応答状態」が維持されるように制御される。また、無線タグ50にてキャリアが検知されない状態(キャリア停止状態)となったときには、そのキャリア停止状態が一定時間T3継続するまで「非応答状態」を維持し、キャリア停止状態が一定時間T3経過した後に、「応答可能状態」に切り替える。
【0041】
上記のように、無線タグ50では制御回路51によって各インベントリフラグの切替制御がそれぞれ独立して行われる。一方、無線タグリーダ10では、読み取りの際にいずれかのインベントリフラグを指定したコマンドを送信しており、無線タグ50は、そのコマンドを受信したときに、コマンドで指定されるインベントリフラグの状態に応じて応答可否を判断する。例えば、図5のように、無線タグリーダ10がS2インベントリフラグを指定したコマンドを送信している場合、このコマンドを受信した無線タグ50側では自己のS2インベントリフラグの状態が応答可能状態であれば応答を返し、図5のようにS2インベントリフラグの状態が非応答状態であれば応答を返さないように制御がなされる。
【0042】
(無線タグの読取処理)
次に、無線タグリーダ10で行われる読取処理について図6を参照して説明する。
図6は、無線タグリーダで行われる読取処理の流れを例示するフローチャートである。図7は、図6の読取処理で行われるモード判定処理の流れを例示するフローチャートである。図8は、図6の読取処理で行われるキャリアオフ判定処理の流れを例示するフローチャートである。図9はアンチコリジョン処理について概念的に説明する説明図である。図10は、図1の無線タグシステムにおける無線タグリーダでの読み取りの様子を説明する説明図である。図11は、図10の読み取りにおける各無線タグの読取結果を説明する説明図である。
【0043】
図6の読取処理は所定の開始条件成立(例えば、所定操作や電源投入など)によって開始され、まず、キャリアがオン状態に制御され(S1)、その後、処理モードの判定処理が行われる(S2)。
【0044】
S2の処理モード判定処理は例えば、図7のような流れで行われる処理である。
ここで、初期設定について説明する。本実施形態では、初期設定において、図6の読取処理で実施するモードを任意に指定できるようになっている。具体的には、予め初期設定において、「質重視モード指定(第1設定)」と応答速度重視モード指定(第2設定)」と自動切り替え指定(第3設定)」のいずれかに指定できるようになっている。なお、設定内容は例えば無線タグリーダ10のメモリ42に記憶されている。
【0045】
図7の処理では、上記のような初期設定の内容を参照し、初期設定で質重視モードが指定されている場合(第1設定の場合)には、S31で「質重視モード指定」と判断されて、読取モードが質重視モードに設定される(S34)。一方、初期設定で応答速度重視モードが指定されている場合(第2設定の場合)にはS31で「応答速度重視モード指定」と判断され、S35において処理モードが応答速度重視モードと判定される。
【0046】
また、初期設定で自動切り替えが指定されている場合(第3設定の場合)には、S31で「自動切り替えモード指定」と判断され、この場合には、まず最初の読み取りか否かが判断される(S32)。図6の読取処理が開始された後に最初に行われた読み取りの場合(即ち、読取処理開始後において未だS4以降又はS11以降の処理がなされていない場合)には、S32でYesと判断されて、質重視モードと判定される(S34)。
【0047】
一方、最初の読み取りではない場合にはS32でNoと判断されて前回の処理の終了要因が判断される(S33)。前回の終了要因が後述するタイムアウトによる終了の場合(即ち、図6のS15Yesの場合)、S33では、「タイムアウトで終了」と判断されて質重視ノードと判定される(S34)。一方、タイムアウト以外で終了している場合にはS33で「タイムアウト以外で終了」と判断されて応答速度重視モードと判定される(S35)。
【0048】
上記のように処理モードの判定処理(S6)が行われた後には、その判定された処理モードがいずれであるか判断され、質重視モードである場合には、S4に進む。一方、応答重視モードである場合にはS11に進む。なお、このフローチャートでも示されるように、本実施形態では、S4〜S10の読み取りが質重視モードでの読み取りに相当し、S11〜S20までの読み取りが応答速度重視モードでの読み取りに相当している。
【0049】
S3で質重視モードと判断される場合には、まず、上述のS2インベントリフラグ(第2フラグ)を指定した読み取りを行う(S4)。この読み取りでは、まずアンチコリジョン処理が行われる。アンチコリジョン方式として、例えば、スロッテッドアロハ方式などの公知の方式が採用されている。このスロッテッドアロハ方式では、無線タグリーダ10が予め設定されたQ値に応じた数(スロット数)のタイムスロットを設けており、各タイムスロットにスロット番号を割り当てている。なお、本実施形態では、2のQ乗(即ち、2)がスロット数となっており、図9では、その一例として、Q=4、即ち、スロット数が16の場合を概念的に例示している。
【0050】
無線タグリーダ10は、アンチコリジョン処理を行う場合、まず読取可能範囲にある無線タグ50に対してリクエストコマンドを送信している。更に読取可能範囲内の無線タグ50に対しては、S2インベントリフラグ(以下、S2フラグともいう)を指定した指定コマンドも送信されるようになっている。なお、図10では、時間t1のときに、無線タグリーダ10(RW2)からS2フラグを指定して出力されるときの通信可能エリアを破線AR1で概念的に示している。
【0051】
このとき、当該無線タグリーダ10の通信可能エリア内に存在する各無線タグ50は、S2フラグを指定したコマンドを受信すると、自己のS2フラグの状態に基づいて応答可否を判断する。そして、自己のS2フラグの状態が応答可能状態に設定されている無線タグ50のみが無線タグリーダ10に対して応答を返し、S2のフラグの状態が非応答状態と設定されている無線タグ50は、無線タグリーダ10に対して応答を返さないことになる。
【0052】
なお、図10では、時期t1のときの通信可能エリアAR1に配される無線タグ50のうち、tag2〜5はS2フラグが応答可能状態となっており、tag1のみが既にS2を指定して他の装置(RW1)によって読み取られ、S2のフラグが非応答状態となっている例を示している。この場合、S2フラグが応答可能状態となっている無線タグ(tag2〜5)から応答が返され、tag1からは応答が返されないことになる。
【0053】
この応答可とされる各無線タグ50(図10の時期t1ではtag2〜5)は、無線タグリーダ10から送信されるリクエストコマンドを受信すると、無線タグリーダ10で設定されたスロット数の範囲で乱数を発生させてランダムに数値を取得している。そして、図9の例のように、無線タグリーダ10が、設定された数(図5では16個)のタイムスロットを順番に進め、各無線タグ50は、その進行する複数のタイムスロットの内、自己が選択した数値のタイムスロットのときに自己の固有識別情報と共に応答を返している。例えば、図9の例では、無線タグAが数値「1」を取得して、タイムスロット1(TS1)のときに応答しており、同様に、無線タグBが数値「5」を取得して、タイムスロット5(TS5)のときに応答している。無線タグリーダ10は、タイムスロット1、5のように、いずれかの無線タグからの応答があり他のタグからの応答がないタイムスロットについては、その応答した無線タグを当該無線タグ固有に付された固有識別情報で管理する。なお、この固有識別情報は、例えば無線タグ50からタイムスロットに対する応答と共に無線タグリーダ10に返されるものであり、このように固有識別情報で管理される無線タグ50は、既に選択済み(認識済み)の無線タグとして扱われる。
【0054】
一方、いずれかのタイムスロットにおいて、複数の無線タグからの応答があったとき(いずれかのスロットで衝突(コリジョン)が生じたとき)には、当該タイムスロットではいずれの無線タグも選択せずに保留し、次のタイムスロットに進む。図9の例では、タイムスロット3(TS3)において、無線タグD、Fが応答しており、無線タグの衝突により判別ができないため、このタイムスロット3ではいずれの無線タグも選択しないことになる。この場合、設定された数のタイムスロットを一通り終えた後、衝突のあった無線タグD,Fに対して再びリクエストコマンドを送信し、これら無線タグD、Fに対して上記と同様のタイムスロット割当処理を行う。
【0055】
なお、本実施形態では、上記のようなアンチコリジョン処理を行う制御部11が「スロット数設定手段」の一例に相当し、スロット数を設定するように機能すると共に、「衝突防止手段」の一例に相当し、スロット数設定手段によって設定されたスロット数のスロットを用意すると共に、無線通信手段の読取可能範囲内に存在する各無線タグ50を各スロットに割り当て、各無線タグ50を固有の識別情報と対応付ける衝突防止処理を行うように機能する。
【0056】
S4では、以上のようなアンチコリジョン処理によって各無線タグ50の固有識別番号を取得した後、それら固有識別番号が付された無線タグ50との間で無線通信を行い、各無線タグ50(S2フラグが応答可能状態とされている無線タグ50)のデータの読み取りや、各無線タグ50に対するデータの書き込みなどを行うこととなる。そして、各無線タグ50の読取完了後には、各無線タグ50を指定して当該無線タグ50に対して読取完了を通知する。この読取完了の通知は、例えば、読み取りが完了した無線タグ50の固有IDを含んだ送信データ(読取完了通知コマンド)を送信することで行われる。
【0057】
そして、無線タグ50は、無線タグリーダ10から自己宛の読取完了通知を受けると、自己のS2フラグの状態を非応答状態に切り替える。そして、この非応答状態は、キャリアオフが所定の第2時間(上述の維持時間T2:図4)経過するまで続けられる。本実施形態では、このような処理を行う制御回路51が「読取完了判断手段」の一例に相当し、後述の応答手段による応答が行われた後、無線タグリーダ10による当該無線タグ50の読み取りが完了したか否かを判断するように機能する。
【0058】
また、本実施形態では、無線タグリーダ10の制御部11が「コマンド送信手段」の一例に相当し、無線タグ50に対し上記S2フラグ(第2フラグ)又は後述するS0フラグ(1フラグ)のいずれかを指定した指定コマンドを送信するように機能し、具体的には、キャリア制御手段によってキャリアがオン状態とされたとき(即ち、S1でキャリアオンとなったとき)に第2フラグを指定した指定コマンドを送信し、その後、後述するS8以降において、S0フラグ(第1フラグ)を指定した指定コマンドを送信するように機能する。更に詳しく述べると、コマンド送信手段は、無線タグ50に対し第2フラグを指定した指定コマンドの送信を所定の第1終了条件が成立するまで(即ち、S7でYesとなるまで)繰り返し、第1終了条件の成立後は、無線タグ50に対し第1フラグを指定した指定コマンドの送信を所定の第2終了条件が成立するまで(即ち、S10でYesとなるまで)繰り返している。
【0059】
また、制御部11は、「読取手段」の一例に相当し、上記「コマンド送信手段」からの指定コマンドに応じて後述の応答手段から応答がなされたときに無線タグ50を読み取るように機能する。また、制御部11は、「読取完了通知手段」の一例に相当し、読取手段によって無線タグ50が読み取られたときに当該無線タグ50に読取完了を通知するように機能する。
【0060】
また、本実施形態では、無線タグ50の制御回路51が「第2フラグ設定手段」の一例に相当し、S2インベントリフラグ(第2フラグ)を応答可能状態と非応答状態とに切替可能に構成され、無線タグリーダ10によって当該無線タグ50の読み取りが完了したと判断したときにS2インベントリフラグ(第2フラグ)を非応答状態に切り替えると共に、この非応答状態に切り替えた後、受信手段によるキャリアの受信が所定の維持時間T2(第2時間)中断した後に第2フラグを応答可能状態にリセットするように機能する。なお、キャリアオフとなった後の上記維持時間T2(第2時間)は、後述するS0インベントリフラグの場合のキャリアオフ後の維持時間T0(第1時間)よりも大きくなっており、本実施形態では、維持時間T0はほぼ0、或いはT2と比較して十分小さい微少時間となっている。
【0061】
また、無線タグ50の制御回路51は、「応答可否判断手段」の一例にも相当し、無線タグリーダ10からの指定コマンドによって指定された第1フラグ又は第2フラグの状態に基づき、無線タグリーダ10に対する応答の可否を判断するように機能する。更に、制御回路51は、「応答手段」の一例に相当し、応答可否判断手段によって応答可能と判断された場合に無線タグリーダ10に対する応答を行うように機能する。
【0062】
S4の読み取り処理の後には、S4で行われたアンチコリジョン処理で衝突が生じたスロットの数(衝突数)が上記アンチコリジョン処理で用いられたスロット数の1/2以上であるか否か(即ち、衝突数を2倍とした値がスロット数以上であるか否か)が判断される(S5)。そして、衝突が生じたスロットの数(衝突数)が上記アンチコリジョン処理で用いられたスロット数の1/2以上である場合には、S5でYesとなり、ユーザに対して所定の通知が行われる(S6)。S6の通知は、例えばタグ数が多い旨の説明情報を表示部17(図1)に表示するといった方法などが挙げられる。一方、衝突が生じたスロットの数(衝突数)が上記アンチコリジョン処理で用いられたスロット数の1/2未満である場合には、S5でNoとなり、上記通知(S6)は省略される。
なお、本実施形態では、S6の処理を行う制御部11が「報知手段」の一例に相当し、衝突防止手段による衝突防止処理の処理結果が所定の報知条件を満たす場合に報知を行うように機能する。
【0063】
S5でNoの場合、又はS6の後には、S2フラグを指定した読み取りを終了させるための所定の第1終了条件が成立したか否かを判断される(S7)。この第1終了条件は、S2フラグを指定した読み取りの終了判断条件であり、本実施形態では、「S2フラグを指定した読み取りの開始からの総読取枚数が予め設定された所定枚数に達した場合」又は、「S4で読み取られる読み取り枚数が0枚となった場合」をこの第1終了条件として定めている。なお、上記第1終了条件で用いられる「所定枚数」は、例えばユーザが設定した値を予めメモリ42に記憶しておくことができる。「S4で読み取られる読み取り枚数が0枚となった場合」とは、即ち、新規に読み取られる無線タグ50の個数が0となったときであり、S4で読取処理を行った後にS7でNoと判断されて再びS4で読み取りを行ったときに読み取り枚数が0となるときがこれに該当する。
【0064】
そして、S2フラグを指定した読み取りを開始してからの総読取枚数が予め設定された所定枚数に達した場合、又は、S4で読み取られる読み取り枚数が0枚となった場合には、S7でYesと判断され、S0インベントリフラグを指定した読取処理が行われる(S8)。S8の処理は、指定コマンドとしてS2インベントリフラグに代えてS0インベントリフラグを用いた点のみがS4と異なるが、それ以外の読み取り方法はS4と同様である。
【0065】
S8でアンチコリジョン処理を行う場合、無線タグリーダ10からは、S0インベントリフラグ(S2フラグ)を指定した指定コマンドも送信されることになる。一方、無線タグリーダ10の通信可能エリア内に存在する無線タグ50側では、S2フラグを指定したコマンドを受信すると、自己のS0フラグの状態に基づいて応答可否を判断する。そして、自己のS0フラグの状態が応答可能状態に設定されている無線タグ50のみが無線タグリーダ10に対して応答を返し、S0のフラグの状態が非応答状態と設定されている無線タグ50は、無線タグリーダ10に対して応答を返さないことになる。なお、本実施形態では、後述するように、S23、S24においてキャリアが一旦オフされるため、S1でのキャリアオン後に他の装置によってS0フラグを指定した読み取りが行われていなければ、通信可能エリア内の各無線タグを読み取りことができる。
【0066】
なお、図10では、時間t2のときに、無線タグ10(RW2)からS0フラグを指定して出力されるときの通信可能エリアを破線AR2で概念的に示している。この、図10では、時期t1のときのS2フラグを指定した読み取りでは、tag2〜5からのみ応答が返され、tag1については読み取りができなかったが、時間t2のときのS0フラグを指定した読み取りでは、この無線タグ50(tag1)からも応答が返されることになる。これにより、図11のように、時間t1で取得できなかったtag1についても、時間t2におけるS0フラグを使用した読み取りによって取得できるようになり、S2フラグの読み取りと併せて通信可能エリア内の無線タグ50(Tag1〜6)が全て読み取られることとなる。
【0067】
なお、この場合も、無線タグリーダ10は、S0フラグを指定した各無線タグ50の読取完了後に、各無線タグ50を指定して当該無線タグ50に対して読取完了を通知する。この読取完了の通知は、例えば、読み取りが完了した無線タグ50の固有IDを含んだ送信データ(読取完了通知コマンド)を送信することで行われる。そして、無線タグ50は、無線タグリーダ10から読取完了通知を受けると、自己のS0フラグの状態を非応答状態に切り替える。そして、この非応答状態は、自己に対するキャリアがオフされるまで続けられる。
【0068】
本実施形態では、無線タグ50の制御回路51が「第1フラグ設置手段」の一例に相当し、S0インベントリフラグ(第1フラグ)を応答可能状態と非応答状態とに切替可能に構成され、無線タグリーダ10によって当該無線タグ50の読み取りが完了したと判断したときにS0インベントリフラグ(第1フラグ)を非応答状態に切り替えると共に、この非応答状態に切り替えた後、受信手段によるキャリアの受信が所定の第1時間(T2よりも十分小さい微少時間、若しくはほぼ0に近い時間)中断した後に第1フラグを応答可能状態にリセットするように機能する。
【0069】
S8の後には、S7でYesとなるまでのS4〜S7の読取結果(S2フラグを指定した読み取りでの読取結果)とS10でYesとなるまでのS8〜S10の読取結果とが対比される。そして、両読取結果において重複しているデータについては破棄される。例えば、S7でYesとなるまでのS4〜S7で読み取られたタグIDとS10でYesとなるまでのS8〜S10で読み取られたタグIDとで重複しているものについては、いずれか一方が廃棄される。
【0070】
S9の後には、S0フラグを指定した読み取りを終了させるための所定の第2終了条件が成立したか否かが判断される(S10)。この第2終了条件は、S0フラグを指定した読み取りの終了判断条件であり、本実施形態では、「S8で読み取られる読み取り枚数が0枚となった場合」をこの第2終了条件として定めている。「S8で読み取られる読み取り枚数が0枚となった場合」とは、即ち、新規に読み取られる無線タグ50の個数が0となったときであり、S8で読取処理を行った後にS10でNoと判断されて再びS8で読み取りを行ったときに読み取り枚数が0となるときがこれに該当する。
【0071】
本実施形態では、「読取手段」に相当する制御部11が更に以下の機能を有する。
「読取手段」に相当する制御部11は、S2インベントリフラグ(第2フラグ)の状態に応じた応答結果に基づいて無線タグ50を読み取ると共に、S0インベントリフラグ(第1フラグ)の状態に応じた応答結果に基づいて無線タグ50を読み取り、それら両読取結果に基づいて読取可能エリア内に存在する無線タグ50の固有IDを把握している。
更に、「読取手段」に相当する制御部11では、コマンド指定手段によってS2インベントリフラグ(第2フラグ)を指定した指定コマンドを送信したときの読取可能エリア内での第2フラグ指定時の読取結果(即ち、S4〜S7での読取結果)と、コマンド指定手段によってS0インベントリフラグ(第1フラグ)を指定した指定コマンドを送信したときの読取可能エリア内での第1フラグ指定時の読取結果(即ち、S8〜S10での読取結果)とに基づき、第2フラグ指定時と第1フラグ指定時とで重複して読み取られた無線タグ50の固有IDの一方を破棄している。
また、「読取手段」に相当する制御部11では、S7のように第1終了条件が成立するまで、S2インベントリフラグ(第2フラグ)を指定した指定コマンドの送信に応じた無線タグ50からの応答に基づいて当該無線タグ50を読み取り、第1終了条件が成立後は、S10のように第2終了条件が成立するまで、S0インベントリフラグ(第1フラグ)を指定した指定コマンドの送信に応じた無線タグ50からの応答に基づいて当該無線タグ50を読み取っている。
【0072】
次に、応答速度重視モードでの処理について説明する。
S3で応答速度重視モードと判断される場合には、まずタイマをスタートさせる処理(計時開始処理)が行われる(S11)。この処理では、例えば、図2のタイマ回路43による時間計測が開始される。
【0073】
そして、その計時開始処理(S11)の後には、S2インベントリフラグ(第2フラグ)を指定した読み取り処理が行われると共に(S12)、アンチコリジョン処理での衝突数が判断され(S13)、衝突数がスロット数の1/2以上であれば所定の通知処理が行われる。なお、S12、S13、S14の処理は、S4、S5、S6と同様であるので、重複説明は省略する。
【0074】
S14の後、又はS13でNoとなる場合には、S11で開始された計測時間が所定のタイムアウト時間に達しているか否かが判断される。タイムアウト時間は、例えば予め初期設定などでユーザによって指定されており、制御部11のメモリ42に設定値(タイムアウト時間)が記憶されている。なお、制御部11は、「タイムアウト時間設定手段」の一例に相当する。
【0075】
S15において、タイムアウト時間に達していないと判断される場合には、S15でNoとなり、S7と同様の判断処理が行われる(S16)。即ち、タイムアウト時間に達しない限りS4〜S7と同様の処理がS11〜S16で行われることになる。一方、S15でタイムアウト時間に達していると判断される場合には、S15でYesとなり、この場合、S23でキャリアがオフされる。
【0076】
また、S16でYesと判断される場合には、S8、S9と同様の読み取り処理(S17)、重複チェック(S18)が行われた後、S11で開始された計測時間が所定のタイムアウト時間に達しているか否かを判断する処理が行われる(S19)。タイムアウト時間に達していない場合には、S19でNoと判断され、S10と同様の判断処理が行われる(S16)。即ち、タイムアウト時間に達しない限りS8〜S10と同様の処理がS17〜S20で行われることになる。一方、タイムアウト時間に達した場合には、S19でYesとなり、この場合もS23でキャリアがオフされる。
【0077】
このように、本実施形態では、「読取手段」「キャリア制御手段」に相当する制御部11は、キャリアがオン状態とされてからタイムアウト時間が経過した場合に無線タグ50の読取処理を中断しており(即ち、S15Yes又はS19Yes), このように読取処理が中断される場合にキャリアをオフ状態に切り替えている(S23)。
【0078】
以上のように、質重視モードでの読取処理又は応答速度重視モードでの読取処理が行われ、S10でYes又はS20でYesとなった後には、キャリアオフ判定処理が行われる(S21)この処理は、例えば、図8のような流れで行われ、まず、前回の読み取り(即ち、S21の直前に行われたS4〜S10又はS11〜S20)で取得タグ数が0枚であったか否かが判断される(S41)。前回に行われた読み取りで取得タグ数が0枚でない場合、S41でNoと判断され、この場合、キャリアをオフしない判定となる(S44)。
【0079】
一方、前回に行われた読み取りで取得タグ数が0枚である場合、S41でYesと判断され、更に、前回の読み取りで行われたアンチコリジョン処理においてスロットの衝突が生じたか(アンチコリジョン処理中に複数の無線タグ50が同一スロットで競合したか)否かが判断される(S42)。前回の読み取りで行われたアンチコリジョン処理においてスロットの衝突(コリジョン)が生じていない場合には、S42でYesと判断され、この場合、キャリアオフと判定される(S43)。一方、、前回の読み取りで行われたアンチコリジョン処理においてスロットの衝突(コリジョン)が生じている場合には、S42でNoと判断され、この場合キャリアをオフしない判定となる(S44)
【0080】
このように、本実施形態では、前回の読み取り(即ち、S3でモードが設定されてから、S10又はS20でYesとなるまでの読み取り期間)において、無線タグ50が1つでも読み取られていたか、又はアンチコリジョン処理においてスロットの衝突が生じていた場合には、キャリアオンと判定されることになる。この場合には、S22で「OFFしない」と判断されて、キャリアをオフせずにS2以降の処理が再び繰り返される。
【0081】
一方、S21でキャリアオフと判定された場合には、S22で「OFFする」と判断されて、キャリアの出力が中断される(S23)。そして、S23でキャリアオフされた後は、このキャリアオフが一定期間停止される(S24)。この停止期間は、上述のS1フラグの非応答状態維持時間(「第1時間」であり、例えばほぼ0)よりも大きく、S2フラグの上記非応答状態維持時間T2よりも短い時間となっており、この停止時間が経過した後に、再びキャリアをオン状態に切り替え(S1)、S2以降の処理を行っている。このようにキャリアの制御がなされるため、通信可能エリア内に維持される無線タグ50では、キャリアが中断されてもS2フラグがリセットされず、S0フラグのみがリセットされることとなる。
【0082】
本実施形態では、S23、S24の処理を実行する制御部11は、「キャリア制御手段」の一例に相当し、上記「第1時間」よりも長く上記「第2時間」よりも短い時間でキャリアの出力を中断させ、且つその中断後に再びキャリアを出力させるようにキャリア出力手段の制御を行っている。より具体的には、読取手段によるS0インベントリフラグ(第1フラグ)の状態に応じた無線タグ50の読み取り後(即ち、S8〜S10の後)、所定のキャリアオフ条件が成立している場合にキャリアの出力を中断させるように機能している。
【0083】
また、上述のモード判定処理(図7)では、自動切り替えモードに指定されている場合であって最初の読み取りでない場合、前回の終了要因が「タイムアウトによる終了」「
タイムアウト以外による終了」のいずれに該当するか否かを判断し、タイムアウトで終了している場合には、質重視モードと判定しており、このように質重視モードと判定されて、S4以降の処理が行われる場合には、一時的にタイムアウト時間の設定が中止されることになる。
本実施形態では、制御部11が「中断要因判断手段」の一例に相当し、読取手段による読取処理の中断要因を判断するように機能する。また、制御部11は「タイムアウト時間変更手段」の一例に相当し、中断要因判断手段によって中断要因がタイムアウト時間の経過による中断と判断される場合に、所定の期間タイムアウト時間の延長又はタイムアウト時間の設定中止を行うように機能する。
【0084】
また、上記のように再びキャリアオン(S1)となった場合には、上述と同様にS2インベントリフラグを指定した読み取りが行われ、その後、S0インベントリフラグを指定した読み取りが行われることとなる。例えば、図10では、上述したように時間t1、t2での読み取りが行われた後、更に、時間t3において、S2インベントリフラグを指定した読み取りが行われ(時間t3の破線部分参照)、その後の時間t4においてS0インベントリフラグを指定した読み取りが行われている例を示している(時間t4の一点鎖線部分参照)。この場合、時間t3のとき(S2フラグを指定した読み取り)では、通信可能エリアにある無線タグ50において先の読み取りで取得された無線タグ50(tag4、5)は、S2フラグについては非応答状態が維持されるため、応答が取得されないことになる。また、他の装置RW3によってS2フラグを指定して読み取りが行われている無線タグ50(tag7)については、RW3の読み取りが先である場合には応答が返されないことになる。一方、このような場合に、時期t4においてS0フラグを指定した読み取りが行われると、通信可能エリア内の無線タグ50(tag5、7、8)の情報が取得される。この場合、一部の無線タグ50(tag5)については既に取得済みなので重複チェックにより破棄される。また、無線タグ50(tag7)が未取得であればこれを取得することができる。また、新規にエリアに入ってきた無線タグ50(tag8)も読み取られることとなる。
【0085】
(第1実施形態の主な効果)
第1実施形態に係る無線タグシステム1では、無線タグ50において、第1フラグを応答可能状態と非応答状態とに切替可能に構成され、無線タグリーダ10によって当該無線タグ50の読み取りが完了したと判断したときに第1フラグを非応答状態に切り替えると共に、この非応答状態に切り替えた後、受信手段によるキャリアの受信が所定の第1時間中断した後に第1フラグを応答可能状態にリセットする第1フラグ設定手段と、第2フラグを応答可能状態と非応答状態とに切替可能に構成され、無線タグリーダ10によって当該無線タグ50の読み取りが完了したと判断したときに第2フラグを非応答状態に切り替えると共に、この非応答状態に切り替えた後、受信手段によるキャリアの受信が第1時間よりも長い第2時間中断した後に第2フラグを応答可能状態にリセットする第2フラグ設定手段と、無線タグリーダ10からの指定コマンドによって指定された第1フラグ又は第2フラグの状態に基づき、無線タグリーダ10に対する応答の可否を判断する応答可否判断手段と、応答可否判断手段によって応答可能と判断された場合に無線タグリーダ10に対する応答を行う応答手段と、応答手段による応答が行われた後、無線タグリーダ10による当該無線タグ50の読み取りが完了したか否かを判断する読取完了判断手段とが設けられている。
一方、無線タグリーダ10には、第1時間よりも長く第2時間よりも短い時間でキャリアの出力を中断させ、且つその中断後に再びキャリアを出力させるようにキャリア出力手段の制御を行うキャリア制御手段が設けられており、コマンド送信手段は、キャリア制御手段によってキャリアがオン状態とされたときに第2フラグを指定した指定コマンドを送信し、その後、第1フラグを指定した指定コマンドを送信している。そして、読取手段は、第2フラグの状態に応じた応答結果に基づいて無線タグ50を読み取ると共に、第1フラグの状態に応じた応答結果に基づいて無線タグ50を読み取り、それら両読取結果に基づいて読取可能エリア内に存在する無線タグ50の固有IDを把握している。そして、上記キャリア制御手段は、読取手段による第1フラグの状態に応じた無線タグ50の読み取り後にキャリアの出力を中断させている。
このようにすると、第2フラグを指定した指定コマンドを送信して読取可能エリア内の無線タグ50を読み取ったときに、当該読取可能エリア内のいずれかの無線タグ50が既に他の装置によって第2フラグを指定して読み取られていたとしても(即ち、これらの無線タグ50が読みこぼしとなってしまったとしても)、その後の第1フラグを指定した読み取りによってその読みこぼした無線タグ50を読み取ることができる。特に、第1フラグは、キャリア制御手段によるキャリアの中断毎にリセットされるため、このような第1フラグを指定した読み取りを行うことで読取可能エリア内の無線タグ50を読みこぼしなく読み取りやすく、このような第1フラグを指定した読み取りによって第2フラグを指定した読み取りを補えば、より確実に読取可能エリア内の無線タグ50を読み取ることができる。
更に、キャリア制御手段は、第1時間よりも長く第2時間よりも短い時間でキャリアの出力を中断させ、且つその中断後に再びキャリアを出力させるようにキャリア出力手段の制御を行っており、このような中断制御を第1フラグを指定した読み取りの後に行っている。従って、第1フラグを指定した読取後にキャリア制御手段によってキャリアの出力が中断されたとき、第1フラグはリセットされるが、第2フラグはリセットされないことになるため、第2フラグのリセットを毎回行わずに済み、効率的に無線タグ50を読み取ることができる。
【0086】
また、読取手段は、コマンド指定手段によって第2フラグを指定した指定コマンドを送信したときの読取可能エリア内での第2フラグ指定時の読取結果と、コマンド指定手段によって第1フラグを指定した指定コマンドを送信したときの読取可能エリア内での第1フラグ指定時の読取結果とに基づき、第2フラグ指定時と第1フラグ指定時とで重複して読み取られた無線タグ50の固有IDの一方を破棄している。このようにすると、各フラグを指定したそれぞれの読み取りによって読取可能エリア内の無線タグ50をより確実に読み取ると共に、重複している場合には不要な一方を破棄することで読取可能エリア内の適切なタグ数及びタグIDを把握できるようになる。
【0087】
また、本実施形態では、キャリア制御手段が、読取手段による第1フラグの状態に応じた無線タグ50の読み取り後、所定のキャリアオフ条件が成立している場合にキャリアの出力を中断させている。この構成によれば、キャリアをオフすべき特定の場合をキャリアオフ条件とすることでキャリアを適切な場合に中断できるようになる。
【0088】
また、本実施形態では、コマンド送信手段が、無線タグ50に対し第2フラグを指定した指定コマンドの送信を所定の第1終了条件が成立するまで繰り返し、第1終了条件の成立後は、無線タグ50に対し第1フラグを指定した指定コマンドの送信を所定の第2終了条件が成立するまで繰り返している。また、読取手段では、第1終了条件が成立するまで、第2フラグを指定した指定コマンドの送信に応じた無線タグ50からの応答に基づいて当該無線タグ50を読み取り、第1終了条件が成立後は、第2終了条件が成立するまで、第1フラグを指定した指定コマンドの送信に応じた無線タグ50からの応答に基づいて当該無線タグ50を読み取っている。このようにすると、第1フラグを指定した指定コマンドの送信及びそれに基づく読み取りと、第2フラグを指定した指定コマンドの送信及びそれに基づく読み取りとを、それぞれ個別の条件下で実行することができ、各読み取りをそれぞれ適切なタイミングで終わらせることができる。
【0089】
また、本実施形態では、第1終了条件が、「読み取り済みの無線タグ50の個数が予め設定した設定個数に達したとき」、又は「新規に読み取られる無線タグ50の個数が0となったとき」とされている。これらの条件が成立した場合には、読取可能範囲内において第1フラグを指定した読み取りで読取可能な無線タグ50が全て読み取られた可能性が高く、第1フラグを指定した読み取りをこのような条件で終了させることで、当該読み取りをより適切な時期に終了させることができる。また、第2終了条件が、「新規に読み取られる無線タグ50の個数が0となったとき」とされている。この条件が成立した場合には、第2フラグを指定した読み取りで読取可能な無線タグ50が全て読み取られた可能性が高く、第2フラグを指定した読み取りをこのような条件で終了させることで、第2フラグを指定した読み取りについてもより適切な時期に終了させることができる。
【0090】
また、本実施形態では、タイムアウト時間を設定するタイムアウト時間設定手段を備え、読取手段は、キャリア制御手段によってキャリアがオン状態とされてからタイムアウト時間が経過した場合に無線タグ50の読取処理を中断し、キャリア制御手段は、読取手段によって読取処理が中断される場合にキャリアをオフ状態としている。このようにすると、タイムアウト時間を経過した場合に強制的に読取処理が中断され、キャリアがオフ状態とされるため、特に1回の読み取りに時間をかけずに応答速度を重視する場合に有利となる。
【0091】
また、本実施形態では、読取手段による読取処理の中断要因を判断する中断要因判断手段と、中断要因判断手段によって中断要因がタイムアウト時間の経過による中断と判断される場合に、所定の期間タイムアウト時間の延長又はタイムアウト時間の設定中止を行うタイムアウト時間変更手段とが設けられている。このようにすると、タイムアウト時間を設定して応答速度を重視した読み取りを実施可能としつつ、タイムアウト時間の経過による中断がなされるような読み取り環境となったとき(例えば、無線タグ50数が多い場合等)には、一時的にタイムアウト時間の延長又は設定中止を行い、読み取りの質を重視するように切り替えることができる。
【0092】
また、本実施形態では、無線タグリーダ10は、スロット数を設定するスロット数設定手段と、スロット数設定手段によって設定されたスロット数のスロットを用意すると共に、無線通信手段の読取可能範囲内に存在する各無線タグ50を各スロットに割り当て、各無線タグ50を固有の識別情報と対応付ける衝突防止処理を行う衝突防止手段と、衝突防止手段による衝突防止処理の処理結果が所定の報知条件を満たす場合に報知を行う報知手段と、を備えている。このようにすると、衝突防止処理の処理結果が所定の報知条件に達したことをユーザが把握できるようになり、ユーザはタグ環境を把握して適切な対応をとりやすくなる。
【0093】
[他の実施形態]
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0094】
上記実施形態では、S0インベントリフラグを第1フラグとし、S2インベントリフラグを第2フラグとしたが、この場合、S3インベントリフラグを第2フラグとして用いてもよい。
【0095】
上記実施形態では、S0インベントリフラグを第1フラグとし、S2インベントリフラグを第2フラグとしたが、この場合、維持時間T1を維持時間T2よりも十分小さく設定してS1インベントリフラグを第1フラグとして用いてもよい。
【0096】
上記実施形態において、質重視モードの読み取り(S4〜S10)を、応答重視モードの読み取り(S11〜S20)と同様に変更し(即ち、質重視モードにおいてもタイムアウト時間を設ける構成とし)、質重視モードの場合のタイムアウト時間を応答重視モードの場合のタイムアウト時間よりも長くしてもよい。
【符号の説明】
【0097】
1…無線タグシステム
10…無線タグリーダ
11…制御部(キャリア出力手段、コマンド送信手段、読取手段、読取完了通知手段、キャリア制御手段、キャリア出力手段、タイムアウト時間設定手段、中断要因判断手段、タイムアウト時間変更手段、スロット数設定手段、衝突防止手段、報知手段)
12…送信回路(キャリア出力手段)
17…表示部(報知手段)
50…無線タグ
51…制御回路(受信手段、応答可否判断手段、応答手段、第1フラグ設定手段、第2フラグ設定手段、読取完了判断手段)
53…受信回路(受信手段)
55…メモリ(記録手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固有IDを記録した記録手段とキャリアを受信する受信手段とを備えた無線タグと、前記無線タグに対して前記キャリアを出力するキャリア出力手段を備えた無線タグリーダとを有する無線タグシステムにおいて、
前記無線タグは、
第1フラグを応答可能状態と非応答状態とに切替可能に構成され、前記無線タグリーダによって当該無線タグの読み取りが完了したと判断したときに前記第1フラグを非応答状態に切り替えると共に、この非応答状態に切り替えた後、前記受信手段による前記キャリアの受信が所定の第1時間中断した後に前記第1フラグを応答可能状態にリセットする第1フラグ設定手段と、
第2フラグを応答可能状態と非応答状態とに切替可能に構成され、前記無線タグリーダによって当該無線タグの読み取りが完了したと判断したときに前記第2フラグを非応答状態に切り替えると共に、この非応答状態に切り替えた後、前記受信手段による前記キャリアの受信が前記第1時間よりも長い第2時間中断した後に前記第2フラグを前記応答可能状態にリセットする第2フラグ設定手段と、
前記無線タグリーダからの指定コマンドによって指定された前記第1フラグ又は前記第2フラグの状態に基づき、前記無線タグリーダに対する応答の可否を判断する応答可否判断手段と、
前記応答可否判断手段によって応答可能と判断された場合に前記無線タグリーダに対する応答を行う応答手段と、
前記応答手段による応答が行われた後、前記無線タグリーダによる当該無線タグの読み取りが完了したか否かを判断する読取完了判断手段と、
を備え、
前記無線タグリーダは、
前記無線タグに対し前記1フラグ又は前記第2フラグのいずれかを指定した前記指定コマンドを送信するコマンド送信手段と、
前記コマンド送信手段からの前記指定コマンドに応じて前記応答手段から応答がなされたときに前記無線タグを読み取る読取手段と、
前記読取手段によって前記無線タグが読み取られたときに当該無線タグに読取完了を通知する読取完了通知手段と、
前記第1時間よりも長く前記第2時間よりも短い時間で前記キャリアの出力を中断させ、且つその中断後に再び前記キャリアを出力させるように前記キャリア出力手段の制御を行うキャリア制御手段と、
を備え、
前記コマンド送信手段は、前記キャリア制御手段によって前記キャリアがオン状態とされたときに前記第2フラグを指定した前記指定コマンドを送信し、その後、前記第1フラグを指定した前記指定コマンドを送信し、
前記読取手段は、前記第2フラグの状態に応じた前記応答結果に基づいて前記無線タグを読み取ると共に、前記第1フラグの状態に応じた前記応答結果に基づいて前記無線タグを読み取り、それら両読取結果に基づいて読取可能エリア内に存在する前記無線タグの前記固有IDを把握し、
前記キャリア制御手段は、前記読取手段による前記第1フラグの状態に応じた前記無線タグの読み取り後に前記キャリアの出力を中断させることを特徴とする無線タグシステム。
【請求項2】
前記読取手段は、前記コマンド指定手段によって前記第2フラグを指定した前記指定コマンドを送信したときの読取可能エリア内での第2フラグ指定時の読取結果と、前記コマンド指定手段によって前記第1フラグを指定した前記指定コマンドを送信したときの読取可能エリア内での第1フラグ指定時の読取結果とに基づき、前記第2フラグ指定時と前記第1フラグ指定時とで重複して読み取られた前記無線タグの前記固有IDの一方を破棄することを特徴とする請求項1に記載の無線タグシステム。
【請求項3】
前記キャリア制御手段は、前記読取手段による前記第1フラグの状態に応じた前記無線タグの読み取り後、所定のキャリアオフ条件が成立している場合に前記キャリアの出力を中断させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の無線タグシステム。
【請求項4】
前記コマンド送信手段は、前記無線タグに対し前記第2フラグを指定した前記指定コマンドの送信を所定の第1終了条件が成立するまで繰り返し、前記第1終了条件の成立後は、前記無線タグに対し前記第1フラグを指定した前記指定コマンドの送信を所定の第2終了条件が成立するまで繰り返し、
前記読取手段は、前記第1終了条件が成立するまで、前記第2フラグを指定した前記指定コマンドの送信に応じた前記無線タグからの応答に基づいて当該無線タグを読み取り、前記第1終了条件が成立後は、前記第2終了条件が成立するまで、前記第1フラグを指定した前記指定コマンドの送信に応じた前記無線タグからの応答に基づいて当該無線タグを読み取ることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の無線タグシステム。
【請求項5】
前記第1終了条件は、読み取り済みの前記無線タグの個数が予め設定した設定個数に達したとき、又は新規に読み取られる前記無線タグの個数が0となったときであり、
前記第2終了条件は、新規に読み取られる前記無線タグの個数が0となったときであることを特徴とする請求項4に記載の無線タグシステム。
【請求項6】
タイムアウト時間を設定するタイムアウト時間設定手段を備え、
前記読取手段は、前記キャリア制御手段によって前記キャリアがオン状態とされてから前記タイムアウト時間が経過した場合に前記無線タグの前記読取処理を中断し、
前記キャリア制御手段は、前記読取手段によって前記読取処理が中断される場合に前記キャリアをオフ状態とすることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の無線タグシステム。
【請求項7】
前記読取手段による前記読取処理の中断要因を判断する中断要因判断手段と、
前記中断要因判断手段によって前記中断要因が前記タイムアウト時間の経過による中断と判断される場合に、所定の期間前記タイムアウト時間の延長又は前記タイムアウト時間の設定中止を行うタイムアウト時間変更手段と、
を備えたことを特徴とする請求項6に記載の無線タグシステム。
【請求項8】
前記無線タグリーダは、
スロット数を設定するスロット数設定手段と、
前記スロット数設定手段によって設定された前記スロット数のスロットを用意すると共に、前記無線通信手段の読取可能範囲内に存在する各無線タグを各スロットに割り当て、前記各無線タグを固有の識別情報と対応付ける衝突防止処理を行う衝突防止手段と、
前記衝突防止手段による前記衝突防止処理の処理結果が所定の報知条件を満たす場合に報知を行う報知手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の無線タグシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−203819(P2011−203819A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68249(P2010−68249)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】