説明

無線タグシステム

【課題】無線タグの消費電力を低減することができる無線タグシステムを提供する。
【解決手段】無線タグ200からの信号を受信した場合、全ての無線タグリーダ100A〜Dは、同じ固定送信期間にコマンドを送信する。一方、無線タグ200は、信号を送信後、無線タグリーダ100が送信するコマンドを受信できる受信期間を受信可能状態とする。この受信期間の受信結果は、次の3種類、(1)いずれの無線タグリーダからもコマンドを受信しない、(2)いずれか一つの無線タグリーダからコマンドを受信し、受信成功となる、(3)複数の無線タグリーダがコマンドを送信したことにより受信エラーとなる、がある。(1)の場合には待機状態とし、(2)の場合には成功したコマンドに基づく処理を行う。(3)の場合には、受信エラーをコマンドとみなし、そのコマンドに基づく処理を行う。従って、いずれの場合にも、追加受信を必要とせずに処理が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線タグと無線タグリーダとからなる無線タグシステムに関し、特に、携帯される無線タグに対して、無線タグを読み取る無線タグリーダが複数設置された無線タグシステムにおいて、無線タグの電力消費を抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
無線タグと無線タグリーダとからなる無線タグシステムにおいては、複数の無線タグリーダの通信エリアが互いに重複する場合も多い。複数の無線タグリーダの通信エリアが重複する場合、複数の無線タグリーダからの信号が衝突してしまうことにより、無線タグと無線タグリーダとの通信ができなくなってしまうことがある。
【0003】
そこで、特許文献1では、各無線タグリーダは、タグからの信号を用いて時刻の同期を図り、信号送信時期が互いに重ならないようにして、無線タグへ信号を送信している。これにより、タグは、複数のタグリーダの通信エリア内であっても、タグリーダを特定して通信を行って、タグリーダからコマンドを受信することができる。また、もちろん、一つのタグリーダのみの通信エリアであっても、そのタグリーダと通信を行って、タグリーダからコマンドを受信することができる。
【0004】
また、特許文献1では、タグリーダから送信する情報に、セキュリティレベルの情報を含ませている。その情報を受信した無線タグは、そのセキュリティレベルに応じて起動周期を変更している。これにより、高いセキュリティレベルのエリアでの迅速な警告を可能としつつ、低いセキュリティレベルのエリアで起動周期を長くするので、電池消耗が抑えられる。
【0005】
一方で携帯される無線タグでは、無線タグリーダが1台も存在しないエリアに滞在する時間が非常に長いという特徴がある。この場合起動周期を長くし過ぎれば、無線タグリーダとの通信圏内に入ったときに、無線タグと無線タグリーダは必要な通信ができないことがあるため、起動時間は適度な周期に設定する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4037421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の技術では、無線タグは、複数の無線タグリーダのうちで信号送信時期が最も遅い無線タグリーダから信号が送信されてくる可能性がある時点までは、受信可能状態を維持する必要がある。例えば4台の無線タグリーダが存在する場合、無線タグは、そのいずれとも通信可能としなければならないので、1回の受信可能状態とする期間は4台のリーダが送信する期間分確保しなければならない。そのため、1回の受信可能状態の期間が長くなってしまい、それに伴い、受信可能状態を維持することによる電力消費量が多くなってしまう。また、無線タグシステムにおいては、受信可能状態を周期的に繰り返すので、1回の受信可能状態の期間が長くなると、無線タグの電池寿命に大きく影響する。
【0008】
本発明は、この事情に基づいて成されたものであり、その目的とするところは、受信可能状態の期間を減らすことで無線タグの消費電力を低減することができる無線タグシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
その目的を達成するための請求項1記載の発明は、無線タグと、その無線タグと通信をする複数の無線タグリーダとを備え、複数の無線タグリーダは、通信圏が互いに重複するように配置された無線タグシステムであって、複数の無線タグリーダは、無線タグからの信号を受信した場合、複数の無線タグリーダに共通の共通送信期間に、前記無線タグに所定のコマンドを送信する。一方、無線タグは、信号を送信後、共通送信期間に無線タグリーダから送信される可能性があるコマンドを受信できる受信期間を受信可能状態とし、その受信期間に無線タグリーダからコマンドを受信しなかったと判断した場合には受信期間が経過したことに基づいて待機状態とし、その受信期間にコマンドの受信に成功した場合、受信したコマンドに基づく処理を行い、その受信期間に受信した電波が受信エラーであった場合に、その受信エラーを、受信エラーであることに基づいて定まるコマンドとみなし、そのコマンドに基づく処理を行う。
【0010】
このように、本発明では、複数の無線タグリーダは、無線タグからの信号を受信した場合、共通送信期間にコマンドを送信している。一方、無線タグは、信号を送信後、無線タグリーダが送信するコマンドを受信できるようにするために、受信期間を受信可能状態としている。この受信期間における受信結果としては、次の3種類、すなわち、(1)いずれの無線タグリーダからもコマンドを受信しない、(2)いずれか一つの無線タグリーダからコマンドを受信し、受信成功となる、(3)複数の無線タグリーダがコマンドを送信したことにより受信エラーとなる、という3種類がある。本発明によれば、(1)の場合には待機状態とし、(2)の場合には成功したコマンドに基づく処理を行う。また、(3)の場合には、受信エラーをコマンドとみなし、そのコマンドに基づく処理を行う。従って、いずれの場合にも、追加受信を必要とせずに処理が可能となる。
【0011】
そして、無線タグリーダがコマンドを送信する期間は、複数の無線タグリーダで共通の共通送信期間であることから、無線タグの受信期間は、複数の無線タグリーダが互いの信号が重ならないように送信する場合の受信期間よりも短い。よって、無線タグの受信期間が短くなるので、消費電力を低減することができる。
【0012】
特に、無線タグは携帯されるものであることから、複数の無線タグリーダのいずれとも通信ができない位置に存在する場合が非常に長い。よって、受信期間における受信結果としては、いずれの無線タグリーダからもコマンドを受信しない、という結果が非常に多い。それにも関わらず、毎回の受信期間を、無線タグリーダの台数分に対応した長さとする場合には、何もコマンドを受信しないのに、受信可能状態としている無駄な期間が長いことになってしまう。これに対して、本発明によれば、1回の受信期間を短くできるので、いずれの無線タグリーダの通信圏にも存在しないときの無線タグの消費電力を大きく低減できる。
【0013】
請求項2記載の発明では、無線タグリーダは共通送信期間として、複数の共通送信期間を設定可能に構成している。そして、第1コマンドを指示するときは、最初の共通送信期間で第1コマンドを送信し、他のコマンドを指示するときは、それ以降の共通送信期間でコマンドを送信する。一方、無線タグは、信号を送信後、受信期間を、複数の共通送信期間のそれぞれを受信可能とするための複数スロット分として、受信を行う。そして、最初のスロットで受信した電波が受信エラーであった場合には、その受信エラーを第1コマンドとみなし、第1コマンドに基づく処理を行う。
【0014】
複数の無線タグリーダが同時にコマンドを送信して信号が衝突してしまうことにより、無線タグでは受信エラーとなることもある。しかし、本発明では、無線タグは、最初のスロットで受信した電波が受信エラーである場合には、その受信エラーを第1コマンドとみなす。この受信エラーを第1コマンドとみなすことができる理由は、無線タグリーダは、最初の共通送信期間で第1コマンドを送信することになっており、無線タグリーダの最初の共通送信期間における送信を、無線タグは最初のスロットで受信する構成としているからである。すなわち、最初のスロットでの受信エラーは、第1コマンドによるものに一義的に定まるからである。受信エラーを第1コマンドとみなすことにより、受信エラーであっても、再受信をすることなく、第1コマンドを受信した場合と同じ処理を行うことができる。また、無線タグは、複数スロット分の受信期間があるので、他方のスロットにより、他のコマンドを受信することもできる。
【0015】
請求項3記載の発明では、無線タグリーダは、第1コマンドとは別の第2コマンドを指示するときは、2回目の共通送信期間で第2コマンドを送信し、第1コマンド、第2コマンド以外のコマンドを指示するときは、それ以降の共通送信期間でコマンドを送信する。無線タグは、前記第2コマンドに対応する2番目のスロットで受信した電波が受信エラーであった場合には、その受信エラーを第2コマンドとみなし、第2コマンドに基づく処理を行う。
【0016】
このようにすれば、無線タグは、最初のスロットで受信した電波が受信エラーであった場合、および、2番目のスロットで受信した電波が受信エラーであった場合のいずれの場合にも、再受信をすることなく、第1コマンドあるいは第2コマンドを受信した場合と同じ処理を行うことができる。
【0017】
請求項4記載の発明では、無線タグは、最初のスロットで受信した電波に基づいてコマンドの受信に成功した場合、2番目以降のスロット以降を受信することなく、受信可能状態を終了する。
【0018】
このようにすれば、最初のスロットで受信に成功した場合には、最初のスロットのみで受信可能状態を終了することになるので、一層、受信期間を短くすることができる。なお、この場合、無線タグリーダは、優先順位の高いコマンドほど先の共通送信期間で送信することが好ましい。なお、複数のコマンドのうちどのコマンドの優先順位が最も高いかは、それら複数のコマンドを無線タグが同じ受信期間内に受信したときに、無線タグがどれを優先させる設定となっているかで決定する。
【0019】
請求項5記載の発明では、無線タグリーダは、共通送信期間として、2つの共通送信期間を設定可能に構成し、第1コマンドとは別の第2コマンドを指示するときは、2回目の共通送信期間で第2コマンドを送信する。無線タグは、信号を送信後、受信期間を2スロット分として、受信を行い、2番目のスロットで受信した電波が受信エラーであった場合には、前記無線タグリーダに、コマンドの再送信を要求する信号を送信する。無線タグリーダは、コマンドの再送信を要求する信号を受信した場合、無線タグリーダ毎に異なる予め設定されたスロットで前記他のコマンドを再送する。そして、無線タグは、複数の無線タグリーダの全てからコマンドが受信できる期間だけ受信可能状態とする。
【0020】
このようにすれば、他のコマンドについては、コマンの再送信を要求する信号した後の受信により、確実に受信することができる。加えて、複数の無線タグリーダの全てからコマンドが受信できる期間だけ受信可能状態とするのは、2番目のスロットで受信した電波が受信エラーであった場合に限られる。よって、毎回、複数の無線タグリーダの全てからコマンドが受信できる期間だけ受信可能状態とする場合よりも、消費電力を低減することもできる。
【0021】
請求項6記載の発明では、無線タグリーダは、共通送信期間として、2つの共通送信期間を設定可能に構成し、当該無線タグリーダとの間で無線タグが通信可能な範囲であって、その範囲に含まれる警戒圏内を除いた範囲を通信圏内とし、無線タグが警戒圏内に位置しているか否かを判断するタグ位置判断手段を備える。このタグ位置判断手段により無線タグが警戒圏内にいると判断した場合であって、無線タグからの信号を受信した場合には、最初のスロットにて、無線タグに警戒圏内であることを示す警戒圏内コマンドを送信する。無線タグは、通信圏内または警戒圏内であると判断している状態では、信号を送信後、前記受信期間を2スロット分として受信を行う。そして、通信圏内であると判断している状態において、警戒圏内コマンドを受信した場合、または、最初のスロットで受信した電波が受信エラーであった場合には、警戒圏内へ移動したと判断し、信号送信間隔を、通信圏内のときよりも短くすること、および、信号の1回の送信時間を通信圏内のときの送信時間よりも長くすることのいずれか少なくとも一方を行う。
【0022】
この発明では、無線タグは、最初のスロットでの受信エラーを、最初のスロットで受信するコマンドである警戒圏内コマンドとみなしている。このようにすれば、1回の受信期間を2スロット分のみとして、通信圏内から警戒圏内へ移動したか否かを判断することができる。よって、1回の受信期間を短くできる。また、警戒圏内と判断しているときは、通信圏内と判断しているときよりも信号送信間隔を短くすること、および、信号の1回の送信時間を通信圏内のときの送信時間よりも長くすることのいずれか少なくとも一方を行う。換言すれば、通信圏内と判断しているときは、警戒圏内と判断している場合よりも信号送信間隔を長くすること、および、信号の1回の送信時間を長くすることのいずれか少なくとも一方を行うことになる。信号送信間隔が長くなれば、複数回の信号送信を含むある期間内の合計の通信時間が短くなり、また、1回の送信時間が短くなっても、その合計の通信時間が短くなる。
【0023】
請求項7記載の発明では、無線タグリーダは、タグ位置判断手段により無線タグが警戒圏内にいないと判断した場合であって、無線タグからの信号を受信した場合には、2番目のスロットにて、無線タグに通信圏内であることを示す通信圏内コマンドを送信する。無線タグは、警戒圏内であると判断している状態において、警戒圏内コマンドを受信せず、且つ、最初のスロットで受信した電波が受信エラーでなく、さらに、通信圏内コマンドを受信した場合、または、2番目のスロットで受信した電波が受信エラーであった場合には、通信圏内へ移動したと判断し、信号送信間隔を、警戒圏内のときよりも長くすること、および、信号の1回の送信時間を警戒圏内のときの送信時間よりも短くすることのいずれか少なくとも一方を行う。
【0024】
この発明では、無線タグは、2番目のスロットでの受信エラーを、2番目のスロットで受信するコマンドである通信圏内コマンドとみなしている。このようにすれば、1回の受信期間を2スロット分のみとして、警戒圏内から通信圏内へ移動したか否かを判断することができる。よって、1回の受信期間を短くできる。また、通信圏内と判断しているときは、警戒圏内と判断している場合よりも信号送信間隔を長くすること、および、信号の1回の送信時間を警戒圏内のときの送信時間よりも短くすることのいずれか少なくとも一方を行う。これによっても、複数回の信号送信を含むある期間内の合計の通信時間が短くなる。
【0025】
請求項8記載の発明では、無線タグは、複数の無線タグリーダのいずれとも通信を行うことができないことに基づいて通信圏外と判断し、通信圏外であると判断している状態では、通信圏外であると判断している場合に送信する通信圏外時信号を送信後、前記受信期間を1スロット分として受信を行う。無線タグリーダは、無線タグから通信圏外時信号を受信した場合には、無線タグに、通信圏内に入ったことを通知するために、通信圏内であることを示す通信圏内コマンドを最初の共通送信期間に送信する。そして、無線タグは、通信圏外であると判断している状態において、通信圏内コマンドを受信した場合、または、受信した電波が受信エラーであった場合には、通信圏内へ移動したと判断し、信号送信間隔を、通信圏外のときよりも短くすること、および、信号の1回の送信時間を通信圏外のときよりも長くすることのいずれか少なくとも一方を行う。
【0026】
この発明では、無線タグは、受信エラーを、受信成功した場合と同じ通信圏内コマンドとみなしている。このようにすれば、通信圏外と判断しているときは、無線タグは、1回の受信期間を1スロット分のみとして、通信圏内へ入ったか否かを判断することができる。よって、通信圏外と判断しているときは1回の受信期間を特に短くでき、既に述べたように、無線タグは通信圏外に存在する場合が非常に長い。よって、この構成により、無線タグの消費電力を大きく低減できる。また、通信圏内と判断しているときは、通信圏外と判断しているときよりも信号送信間隔を短くすること、および、信号の1回の送信時間を通信圏外のときよりも長くすることのいずれか少なくとも一方を行う。換言すれば、通信圏外と判断しているときは、通信圏内と判断している場合よりも信号送信間隔を長くすること、および、信号の1回の送信時間を短くすることのいずれか少なくとも一方を行うことになる。これによっても複数回の信号送信を含むある期間内の合計の通信時間が短くなる。
【0027】
請求項9記載の発明では、無線タグは、通信圏内であると判断しているときであって、最初のスロット、2番目のスロットともに、無線タグリーダからの信号を受信しなかったと判断した場合には、通信圏外へ移動したと判断し、信号送信間隔を、通信圏内のときよりも長くする。
【0028】
このように、通信圏外と判断しているときは、通信圏内と判断している場合よりも信号送信間隔を長くするので、複数回の信号送信を含むある期間内の合計の通信時間を短くできる。
【0029】
タグ位置判断手段は、請求項10のように、無線タグからの電波の受信強度に基づいて、無線タグが前記警戒圏内に位置しているか否かを判断することができる。また、請求項11のように、通信圏内から警戒圏内へ、および、警戒圏内から通信圏内への物体の移動を検知する物体検知手段を備え、タグ位置判断手段は、物体検知手段の検知結果に基づいて、無線タグが警戒圏内に位置しているか否かを判断するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】無線タグシステム1のシステム構成の一例を示す図である。
【図2】無線タグリーダ100の配置と、各無線タグリーダ100の通信圏101、警戒102を例示する図である。
【図3】無線タグリーダ100の構成を示す図である。
【図4】無線タグリーダ200が送信するコマンドと、受信信号との関係を示す図である。
【図5】無線タグ200の構成を示す図である。
【図6】無線タグ200の状態遷移図であり、無線タグの状態(タグ位置のエリア)と状態遷移条件を示す図である。
【図7】無線タグ200の位置するエリアと、受信結果とに基づいて判断する移動後エリアを示す図である。
【図8】無線タグ200と、無線タグリーダ100A〜Dの通信シーケンスを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の無線タグシステム1のシステム構成の一例である。図に示すように、無線タグシステム1は、複数台(ここでは4台)の無線タグリーダ100A、100B、100C、100Dと、無線タグ200とを備えている。なお、図1には1つの無線タグ200を示しているが、無線タグ200も複数であってもよい。また、無線タグシステム1は、複数台の無線タグリーダ100を制御するコントローラ300(図3参照)も備えている。
【0032】
図2は、無線タグリーダ100の配置と、各無線タグリーダ100の通信圏101、警戒圏102を例示する図である。無線タグシステム1は、人に無線タグ200を携帯させ、無線タグ200を検出することにより、ある監視領域(たとえば、家の敷地およびその周辺)における人の存在を検出するシステムである。そのため、複数の無線タグリーダ100A〜Dの通信圏101A〜Dにより形成される全体の通信圏は、その監視領域を漏れなくカバーする必要がある。しかも、監視領域の中心となる敷地は、矩形等、多角形が多いのに対して、各無線タグリーダ100A〜Dの通信圏101A〜Dは各無線タグリーダを中心にした形状である。これらのことから、各無線タグリーダ100A〜Dの通信圏101A〜Dが他の無線タグリーダ100A〜Dの通信圏101A〜Dと部分的に重複するように、各無線タグリーダ100A〜Dは配置されている。
【0033】
さらに、各通信圏101A〜Dの内側には警戒圏102A〜Dが設定されている。本実施形態の警戒圏102A〜Dは、各無線タグリーダ100A〜Dの警戒圏102A〜Dをまとめた全体の警戒圏により、家の敷地がほぼカバーできる大きさの円となっている。
【0034】
また、本無線タグシステム1は、システム全体の通信圏内と警戒圏内との境界付近の物体の移動を検知する侵入検知センサ(図示せず)を備えている。この侵入検知センサは、監視カメラ、赤外線センサ等を用いた周知の侵入検知センサである。侵入検知センサは後述のコントローラ300に接続されており、このコントローラ300を介して、侵入検知センサによる検知結果(通信圏内から警戒圏内へ物体が移動したこと、あるいは、逆に、警戒圏内から通信圏内へ物体が移動したこと)は、無線タグリーダ200に通知される。なお、侵入検知センサは、特許請求の範囲の物体検知手段に相当する。
【0035】
図3は、無線タグリーダ100の構成を示す図である。図3に示すように、無線タグリーダ100は、制御部110、送信部120、受信部130、アンテナ140を備えている。制御部110は、外部へ無線送信させる情報を送信部120へ送るとともに、アンテナ140によって受信され受信部130によって復調・復号された情報をその受信部130から取得する。また、制御部110は、内部にメモリ111とタイマ112とを備えている。メモリ111には、この無線タグリーダ100のIDなどが記憶されている。
【0036】
送信部120は、符号部121、変調部122、増幅部123を備えている。符号部121は、制御部110から供給されたリーダデータを符号化する。このリーダデータは、通信圏内コマンドあるいは警戒圏内コマンドを含んでいる。符号部121は、符号化したリーダデータを変調部122へ出力する。なお、通信圏内コマンド、警戒圏内コマンドは、それぞれ、特許請求の範囲の第2コマンド、第1コマンドに相当する。
【0037】
変調部122は、符号部121にて符号化されたリーダデータを電気的デジタル信号に変換した後に、予め設定されている通信チャンネルを用いて位相偏移変調や周波数偏移変調等の所定の変調方式により変調する。増幅部123は、変調部122で変調されたリーダデータを増幅する。増幅されたリーダデータは、アンテナ140から電波として送信される。
【0038】
また、アンテナ140は、無線タグ200から送信された電波を受信する。受信した電波は復調部131において復調される。復調された信号は復号部132において符号化され、符号化された信号が制御部110に送られる。
【0039】
前述の制御部110は、特許請求の範囲のタグ位置判断手段としても機能し、無線タグ200からの電波を受信したときは、無線タグ200からの電波の受信強度、および、侵入検知センサの検知結果を用いて、自身の警戒圏内に無線タグ200が位置しているか否かを判断する。
【0040】
詳しくは、侵入検知センサから、物体が、システム全体の通信圏内から警戒圏内へ移動したことを示す信号を取得するまでは、無線タグ200からの電波を受信すれば、無線タグ200は自身の受信圏内に位置していると判断する。一方、侵入検知センサから、物体が、システム全体の通信圏内から警戒圏内へ移動したことを示す信号を取得した以降は次の判断を行う。すなわち、無線タグ200からの電波の受信強度が所定の強度以上であるか否かを判断し、所定の強度以上であれば、無線タグ200は、自身の警戒圏内に位置していると判断する。この判断は、侵入検知センサから、物体がシステム全体の警戒圏を出たとの検知結果を取得するまで逐次行う。その後は、無線タグ200からの電波を受信すれば、無線タグ200は自身の受信圏内に位置していると判断する。
【0041】
制御部110は、さらに、上記のようにして判断した無線タグ200の位置と、無線タグ200から受信した信号に応じて定まるコマンドを、固定送信期間に無線タグ200へ送信する。なお、固定送信期間は、全ての無線タグリーダ100に共通であり、図4に示すように、第1スロット(最初の固定送信期間)、第2スロット(2回目の固定送信期間)の2つの期間からなる。また、固定送信期間は、無線タグ200から信号を受信した時点を基準として定まる期間である。この固定送信期間は特許請求の範囲の共通送信期間に相当する。なお、スロットとは、時分割通信方式における分割単位時間である。
【0042】
コントローラ300は、各無線タグリーダ100が無線タグ200から受信した位置通知信号の受信強度や、どの無線タグリーダ100が位置通知信号を送信したかなどに基づいて、無線タグ200の位置を特定する。
【0043】
図4は、無線タグリーダ200が送信するコマンドと、そのコマンドの送信条件である受信信号およびタグ位置との関係を示す図である。無線タグリーダ100は、無線タグ200からの信号を受信していないときは、何も信号を送信しない。トリガ信号を受信したときは、第1スロットを使用して通信圏内コマンドを送信する。応答すべきID信号(登録済みのIDを示す信号)を受信したときであって、タグ位置が通信圏内であると判断したときは、第2スロットを使用して、通信圏内コマンドを送信する。応答すべきID信号を受信したときであって、タグ位置が警戒圏内であると判断したときは、第1スロットを使用して、警戒圏内コマンドを送信する。位置通知信号を受信したときであって、タグ位置が通信圏内であると判断したときは、第2スロットを使用して、通信圏内コマンドを送信する。位置通知信号を受信したときであって、タグ位置が警戒圏内であると判断したときは、第1スロットを使用して、警戒圏内コマンドを送信する。
【0044】
図5は、無線タグ200の構成を示す図である。無線タグ200は、アクティブ方式の無線タグであり、内蔵電源210を備えている。この内蔵電源210の他に、無線タグ200は、送信部220、受信部230、アンテナ240、振動センサ250、制御部260を備えており、内蔵電源210は、これらに電源を供給する。
【0045】
送信部220は、符号部221、変調部222、増幅部223を備えている。符号部221は制御部260から送信される情報を符号化して変調部222に送る。変調部222は、符号部221からの符号を、たとえば、振幅変位変調などの変調方式により変調する。増幅部223は、変調部222が変調した信号を増幅して、アンテナ240から送信させる。
【0046】
受信部230は、アンテナ240が受信した電波を復調する復調部231と、復調部231が復調した信号を復号する復号部232とを備えている。復号部232は、復号した信号を制御部260へ供給する。
【0047】
振動センサ250は、導通状態が機械的に変化するセンサであり、振動のない状態ではオンとなり、振動がある状態ではオフとなる。この振動センサ250のオンオフの状態は制御部260に入力される。
【0048】
制御部260は、送信部220および受信部230を制御する。また、制御部260は、タイマ261、メモリ262を備えている。タイマ261は、クロック発振器(図示せず)のクロックを計数することで計時を行う。この制御部260は、振動センサ250からのオン信号が入力されることによりスリープ状態から起動状態へ移行し、その信号が入力されてから一定時間は起動状態を維持する。起動状態では、次に説明する送信頻度で、次に説明する信号を送信する。また、信号を送信後、内蔵電源210から受信部230に電源を供給させて受信可能状態とする。受信可能状態とする期間(以下、受信期間)、は、前述の固定送信期間に無線タグリーダ100から送信される可能性がある伝送データを受信できる期間である。従って、受信期間の開始時点は、自身の信号送信時点を基準として定まり、また、受信期間の長さは1スロット分あるいは2スロット分である。1スロット分であるか2スロット分であるかは、無線タグ200の位置するエリアにより定まる。受信期間が終了した場合には、即座に、受信部230への電源の供給を終了する。
【0049】
図6は、無線タグ200の送信頻度、送信データ、受信スロット数と、無線タグの位置するエリアとの関係、および、エリアが移動したと無線タグ200が判断する判断条件とを示す図である。
【0050】
無線タグ200は、通信圏外に位置していると判断している状態では、送信頻度を2秒に1回としてトリガ信号を送信する。このトリガ信号は、特許請求の範囲の通信圏外時信号に相当する。なお、このトリガ信号にはIDも含めず、データ長がID信号よりも短い信号とする。これにより、通信圏外に位置しているときの通信時間を短くすることができる。また、受信スロット数を1スロット分として受信を行う。通信圏外に位置していると判断している状態で、通信圏内コマンドを受信した場合、あるいは、受信エラーと判断した場合には、通信圏内に移動したと判断する。一方、いずれの無線タグリーダ100からの信号も受信しなかった場合、および規定のコマンド以外を受信した場合には、通信圏外であるとの判断を継続する。なお、受信エラーとは、復号部232から供給される信号から、最初のコマンドなど一部のコマンドや、一部のコードは認識できたが、全部を認識することはできなかった場合である。
【0051】
通信圏内に位置していると判断している状態では、送信頻度を0.5秒に1回とする。また、送信する信号はID信号とする。また、受信スロット数を2スロット分として受信を行う。ただし、1スロット目でコマンドを受信できた場合には、2スロット目の受信は不要であることから、2スロット目の受信は行わない。通信圏内に位置していると判断している状態で、警戒圏内コマンドを受信した場合、あるいは、第1スロットで受信エラーが起きたと判断した場合には、警戒圏内に移動したと判断する。また、第1スロット、第2スロットともに受信がなかった場合には、通信圏外に移動したと判断する。
【0052】
警戒圏内に位置していると判断している状態では、送信頻度を0.2秒に1回とする。また、送信する信号は位置通知信号とする。位置通知信号は、信号送信位置を特定しやすくするために、データ長をID信号よりもさらに長くした信号である。また、警戒圏内に位置していると判断しているときも、受信スロット数を2スロット分として受信を行う。ただし、1スロット目でコマンドを受信できた場合には、2スロット目の受信は行わない。
【0053】
警戒圏内に位置していると判断している状態で、警戒圏内への移動を判断したときと同じ条件が成立した場合には、警戒圏内に位置しているとの判断を継続する。一方、通信圏内コマンドを受信した場合、あるいは、第2スロットで受信エラーが起きたと判断した場合には、通信圏内に移動したと判断する。なお、通信圏内に位置していると判断している状態においても、警戒圏内から通信圏内への移動を判断したときと同じ条件が成立した場合には、通信圏内に位置しているとの判断を継続する。
【0054】
図7は、無線タグ200の位置するエリアと、受信結果とに基づいて判断する移動後エリアを示す図である。受信が成功し、無線タグリーダ100から通信圏内コマンドを受信できた場合、無線タグ200は、通信圏内に位置していると判断する。よって、それまでは通信圏外に位置していると判断している場合、矢印Aの移動があったと判断し、それまでは警戒圏内に位置していていると判断している場合、矢印Bの移動があったと判断する。
【0055】
また、受信が成功し、無線タグリーダ100から警戒圏内コマンドを受信できた場合、無線タグ200は、警戒圏内に位置していると判断する。よって、それまでは通信圏内に位置していると判断している場合、矢印Cの移動があったと判断する。なお、通信圏外に位置していると判断している場合に警戒圏内コマンドを受信することはないので、図7では斜線としている。
【0056】
一方、第1スロットが受信エラーとなった場合であって、それまでは通信圏外に位置していると判断している場合には、その受信エラーを通信圏内コマンドとみなし、矢印Dの移動があったと判断する。なお、通信圏外に位置している場合、前述のように、第1スロットのみで受信を行い、第2スロットでは受信を行わない。
【0057】
また、第1スロットが受信エラーとなった場合であって、それまでは通信圏内に位置していると判断している場合には、その受信エラーを警戒圏内コマンドとみなし、矢印Eの移動があったと判断する。また、第2スロットが受信エラーとなった場合であって、それまでは警戒圏内に位置していると判断している場合には、その受信エラーを通信圏内コマンドとみなし、矢印Fの移動があったと判断する。
【0058】
図8は、無線タグ200と、無線タグリーダ100A〜Dの通信シーケンスを例示する図である。この図8に基づいて、無線タグ200、無線タグリーダ100の送受信を説明する。なお、この図8において、タグは無線タグ200を意味し、リーダA〜Dはそれぞれ無線タグリーダ100A〜Dを意味する。
【0059】
無線タグ200は通信圏外に位置していると判断しているときは、2秒に1回の送信頻度でトリガ信号を送信する(t1時点)。無線タグ200が、どの無線タグリーダ100の通信圏101にも入っていないときは、トリガ信号を送信しても、無線タグリーダ200からの信号の送信はない(t2時点)。次の送信時点(t3時点)では、無線タグ200は無線タグリーダ100Aの通信圏101Aであって、他の無線タグリーダ100B〜Dの通信圏C〜Dではない範囲に位置しているとする。この場合、トリガ信号は無線タグリーダ100Aのみに受信される。無線タグリーダ100Aは、トリガ信号を受信したことにより、そのトリガ信号の受信時点に基づいて定まる送信時点に通信圏内コマンドを無線タグ200に送信し、この通信圏内コマンドが無線タグ200に受信される(t4時点)。通信圏内コマンドを受信したことにより、無線タグ200は通信圏内に入ったと判断し、送信頻度を0.5秒に1回に変更する。
【0060】
そして、前回の送信時点から0.5秒経過した時点で、送信信号をトリガ信号からID信号に変更して送信を行う(t5時点)。t5時点で送信したID信号は、2台の無線タグリーダ100A、100Bに受信されるとする。ID信号を受信した2台の無線タグリーダ100A、100Bは、無線タグ200が自身の警戒圏内に位置しているか否かを判断する。詳しくは、侵入検知センサから、システム全体の警戒圏内に物体が侵入したとの検知結果を取得していなければ、無線タグ200は、通信圏内に位置していると判断する。判断の結果、どちらの無線タグリーダ100A、100Bも、無線タグ200は、通信圏内であると判断したとする。この場合、両無線タグリーダ100A、100Bは、ともに、第1スロットには何も送信せず、第2スロットで通信圏内コマンドを送信する(t6時点)。その結果、無線タグ200は、第2スロットで受信エラーが生じる(t6時点)。
【0061】
無線タグ200は、通信圏内に位置していると判断している状態で、第2スロットで受信エラーが生じると、その受信エラーを通信圏内コマンドとみなす。よって、無線タグ200は、通信圏内に位置しているとの判断を継続し、前回の信号送信時点から0.5秒後に、再び、ID信号を送信する(t7時点)。t7時点で送信したID信号は、3台の無線タグリーダ100A、100B、100Cに受信されるとする。この場合、これら3台の無線タグリーダ100A、100B、100Cは、侵入検知センサからの検知結果と、ID信号の受信強度により、無線タグ200が自身の警戒圏内に位置しているか否かを判断する。判断の結果、無線タグリーダ100Aは、無線タグ200は自身の警戒圏内であると判断し、他の無線タグリーダ100B、100Cは、無線タグ200は通信圏内であると判断したとする。その結果、無線タグリーダ100Aは、第1スロットにて警戒圏内コマンドを送信し、無線タグ200は、第1スロットでその警戒圏内コマンドを受信する(t8時点)。また、無線タグリーダ100B、100Cは、第2スロットにて通信圏内コマンドを送信するが(t9時点)、無線タグ200は、第1スロットが受信成功となることにより、第2スロットの受信は行わない。
【0062】
警戒圏内コマンドを受信したことにより、無線タグ200は警戒圏内に移動したと判断し、送信頻度を0.2秒に1回に変更する。そして、前回の送信時点から0.2秒経過した時点で、送信信号をID信号から位置通知信号に変更して送信を行う(t10時点)。
【0063】
t10時点で送信した位置通知信号は、全ての無線タグリーダ100〜Dに受信されるとする。この場合、各無線タグリーダ100A〜Dは、位置通知信号の受信強度により、無線タグ200が自身の警戒圏内に位置しているか否かを判断する。判断の結果、この例では、無線タグリーダ100A、100Bは、無線タグ200が自身の警戒圏内に位置していると判断し、残りの無線タグリーダ100C、100Dは、無線タグ200が通信圏内に位置していると判断する。よって、無線タグリーダ100A、100Bは、第1スロットで警戒圏内コマンドを送信し、その結果、無線タグ200は、第1スロットで受信エラーが生じる(t11時点)。
【0064】
無線タグ200は、警戒圏内に位置していると判断している状態で、第1スロットで受信エラーが生じると、その受信エラーを警戒圏内コマンドとみなす。よって、無線タグ200は、警戒圏内に位置しているとの判断を継続する。なお、無線タグリーダ100C、100Dは、第2スロットにて通信圏内コマンドを送信するが(t12時点)、無線タグ200は、第1スロットが受信エラーとなった場合、第2スロットの受信は行わない。
【0065】
無線タグ200は、再度、前回の信号送信時点から0.2秒後に、位置通知信号を送信する(t13時点)。t10時点で送信した位置通知信号も、全ての無線タグリーダ100〜Dに受信されるとする。この場合、各無線タグリーダ100A〜Dは、位置通知信号の受信強度により、無線タグ200が自身の警戒圏内に位置しているか否かを再度判断する。判断の結果、今度は、全ての無線タグリーダ100A〜Dが、無線タグ200は通信圏内に位置していると判断したとする。その場合、全ての無線タグリーダ100A〜Dが、第2スロットで通信圏内コマンドを送信し、その結果、無線タグ200は、第1スロットでは受信がなく、第2スロットで受信エラーが生じる(t14時点)。
【0066】
警戒圏内に位置していると判断している状態で、第2スロットで受信エラーが生じたことから、無線タグ200は、通信圏内に移動したと判断して、通信頻度を0.5秒に1回に変更する。
【0067】
以上、説明した本実施形態によれば、全ての無線タグリーダ100A〜100Dは、無線タグ200から信号を受信した場合、同じ固定送信期間(第1スロット、第2スロットのいずれか)にコマンドを送信している。一方、無線タグ200は、信号(トリガ信号、ID信号、位置通知信号)を送信後、無線タグリーダ100が送信するコマンドを受信できる受信期間を受信可能状態としている。この受信期間における受信結果としては、次の3種類、すなわち、(1)いずれの無線タグリーダ100からもコマンドを受信しない、(2)いずれか一つの無線タグリーダ100からコマンドを受信し、受信成功となる、(3)複数の無線タグリーダ100がコマンドを送信したことにより受信エラーとなる、という3種類がある。本実施形態によれば、(1)の場合には待機状態とし、(2)の場合には成功したコマンドに基づく処理を行う。また、(3)の場合には、受信エラーをコマンドとみなし、そのコマンドに基づく処理を行う。従って、いずれの場合にも、追加受信を必要とせずに処理が可能となる。
【0068】
そして、無線タグリーダ100がコマンドを送信する期間は、全ての無線タグリーダ100に共通の2スロットあるいは1スロット分の期間であることから、無線タグ200の受信期間も2スロットあるいは1スロット分とすることができる。2スロットあるいは1スロット分であることから、4台の無線タグリーダ100が互いの信号が重ならないように送信する場合の受信期間よりも短い。よって、無線タグ200の受信期間を短くできるので、消費電力を低減することができる。
【0069】
また、本実施形態によれば、無線タグリーダ100は、無線タグ200が通信圏内、警戒圏内に位置していると判断しているときであって、警戒圏内コマンドを送信するときは第1スロットを用い、通信圏内コマンドを送信するときは第2スロットを用いる。一方、無線タグ200は、通信圏内または警戒圏内に位置していると判断しているときは受信期間を2スロット分としており、第1スロットで受信した電波が受信エラーである場合には、その受信エラーを、第1スロットで送信されるはずの警戒圏内コマンドであるとみなす。また、第2スロットで受信した電波が受信エラーである場合には、その受信エラーを、第2スロットで送信されるはずの通信圏内コマンドであるとみなす。よって、受信エラーであっても、再受信をすることなく、警戒圏内コマンド、通信圏内コマンドに基づく処理を行うことができる。
【0070】
また、本実施形態によれば、無線タグ200は、通信圏外に位置していると判断しているときは、受信期間を1スロット分としており、受信した電波が受信エラーである場合には、その受信エラーを通信圏内コマンドであるとみなす。よって、受信エラーであっても、再受信をすることなく、通信圏内コマンドに基づく処理を行うことができる。しかも、受信期間を1スロット分としていることから、通信圏外に位置しているときは、1回の受信期間が特に短い。しかも、無線タグ200は、人に携帯されるものであることから、通信圏外に位置する場合が非常に長い。よって、通信圏外に位置しているときの1回の受信期間を特に短くできることにより、無線タグ200の消費電力を大きく低減することができる。
【0071】
また、本実施形態では、無線タグ200は、通信圏内と判断しているときは、警戒圏内と判断している場合よりも信号送信間隔を長くしており、通信圏外と判断しているときは、通信圏内と判断しているときよりもさらに信号送信間隔を長くしている。このように、短い送信間隔で送信する必要がない場合には信号送信間隔を長くしているので、通信時間を短くできる。
【0072】
また、本実施形態では、無線タグ200は、通信圏内と判断しているときに送信するID信号は、警戒圏内と判断しているときに送信する位置通知信号よりも1回の送信時間が短く、通信圏外と判断しているときに送信するトリガ信号は、通信圏内と判断しているときに送信するID信号よりもさらに1回の送信時間が短い。これによっても、無線タグ200の存在する位置によらず、同じ長さの送信時間を必要とする信号を送信してしまう場合に比較して、通信時間を短くすることができる。
【0073】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、次の実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0074】
たとえば、前述の実施形態では、侵入検知センサから、物体が、システム全体の通信圏内から警戒圏内へ入ったことを示す信号を取得したことにより、無線タグリーダ100は、受信強度に基づいて、無線タグ200が自身の警戒圏内に位置しているか否かの判断を行っていた。しかし、受信強度に基づく判断を、無線タグ200が通信圏内または警戒圏内に位置していると判断している間、継続して行ってもよい。また、前述の侵入検知センサに代えて、各無線タグリーダ100の警戒圏102の境界(あるいはその付近)を物体が越えたことを検知するセンサを設けることにしてもよい。このようにすれば、受信強度に基づく判断は不要になる。
【0075】
また、前述の実施形態では、無線タグ200は、第1スロットが受信エラーとなった場合だけでなく、第2スロットが受信エラーとなった場合にも、その受信エラーをコマンドとみなしていた。しかし、これに代えて、第2スロットが受信エラーとなった場合、コマンの再送信を要求する信号を無線タグリーダ100に送信してもよい。この信号を受信した無線タグリーダは、今度は、無線タグリーダ100毎に異なる予め設定されたスロットでコマンドを再送信する。また、無線タグ200は、無線タグリーダ100の数分のスロット数の受信を行う。このようにすれば、無線タグ200は、コマンの再送信を要求する信号した後の受信により、確実に、コマンドを受信することができる。加えて、無線タグリーダ100の数分のスロット数の受信を行うのは、第2スロットが受信エラーであった場合に限られる。よって、毎回、無線タグリーダ100の数分のスロット数の受信を行う場合よりも、消費電力を低減することもできる。
【0076】
また、前述の実施形態では、無線タグリーダ100は4台設置されていたが、無線タグリーダ100の複数であればよい。また、それら複数の無線タグリーダ100が送信に用いるスロット数は、無線タグリーダ100の設置数よりも少ないスロット数であればよい。また、スロット数が3つ以上である場合には、第1コマンド、第2コマンド以外のコマンドを3つ目以降のスロットで送信するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1:無線タグシステム、 100:無線タグリーダ、 101:通信圏、 102:警戒圏、 110:制御部、 111:メモリ、 112:タイマ、 120:送信部、 121:符号部、 122:変調部、 123:増幅部、 130:受信部、 131:復調部、 132:復号部、 140:アンテナ、 200:無線タグ、 210:内蔵電源、 220:送信部、 221:符号部、 222:変調部、 223:増幅部、 230:受信部、 231:復調部、 232:復号部、 240:アンテナ、 250:振動センサ、 260:制御部、 261:タイマ、 262:メモリ、 300:コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線タグと、その無線タグと通信をする複数の無線タグリーダとを備え、前記複数の無線タグリーダは、通信圏が互いに重複するように配置された無線タグシステムであって、
前記複数の無線タグリーダは、無線タグからの信号を受信した場合、複数の無線タグリーダに共通の共通送信期間に、前記無線タグにコマンドを送信し、
前記無線タグは、信号を送信後、前記共通送信期間に前記無線タグリーダから送信される可能性があるコマンドを受信できる受信期間を受信可能状態とし、
その受信期間に無線タグリーダからコマンドを受信しなかったと判断した場合には受信期間が経過したことに基づいて待機状態とし、
その受信期間に前記コマンドの受信に成功した場合、受信したコマンドに基づく処理を行い、
その受信期間に受信した電波が受信エラーであった場合に、その受信エラーを、受信エラーであることに基づいて定まるコマンドとみなし、そのコマンドに基づく処理を行うことを特徴とする無線タグシステム。
【請求項2】
請求項1において、
前記無線タグリーダは、
前記共通送信期間として、複数の共通送信期間を設定可能に構成し、
第1コマンドを指示するときは、最初の共通送信期間で第1コマンドを送信し、他のコマンドを指示するときは、それ以降の共通送信期間でコマンドを送信し、
前記無線タグは、
前記信号を送信後、前記受信期間を、前記複数の共通送信期間のそれぞれを受信可能とするための複数スロット分として、受信を行い、
最初のスロットで受信した電波が受信エラーであった場合には、その受信エラーを第1コマンドとみなし、第1コマンドに基づく処理を行うことを特徴とする無線タグシステム。
【請求項3】
請求項2において、
前記無線タグリーダは、第1コマンドとは別の第2コマンドを指示するときは、2回目の共通送信期間で第2コマンドを送信し、第1コマンド、第2コマンド以外のコマンドを指示するときは、それ以降の共通送信期間でコマンドを送信し、
前記無線タグは、前記第2コマンドに対応する2番目のスロットで受信した電波が受信エラーであった場合には、その受信エラーを第2コマンドとみなし、第2コマンドに基づく処理を行うことを特徴とする無線タグシステム。
【請求項4】
請求項3において、
前記無線タグは、前記最初のスロットで受信した電波に基づいてコマンドの受信に成功した場合、2番目以降のスロット以降を受信することなく、受信可能状態を終了することを特徴とする無線タグシステム。
【請求項5】
請求項2において、
前記無線タグリーダは、
前記共通送信期間として、2つの共通送信期間を設定可能に構成し、
前記第1コマンドとは別の第2コマンドを指示するときは、2回目の共通送信期間で第2コマンドを送信し、
前記無線タグは、
前記信号を送信後、前記受信期間を、前記2つの共通送信期間のそれぞれを受信可能とするための2スロット分として、受信を行い、
2番目のスロットで受信した電波が受信エラーであった場合には、前記無線タグリーダに、コマンドの再送信を要求する信号を送信し、
前記無線タグリーダは、コマンドの再送信を要求する信号を受信した場合、無線タグリーダ毎に異なる予め設定されたスロットで前記他のコマンドを再送し、
前記無線タグは、複数の無線タグリーダの全てからコマンドが受信できる期間だけ受信可能状態とすることを特徴とする無線タグシステム。
【請求項6】
請求項3または4において、
前記無線タグリーダは、
前記共通送信期間として、2つの共通送信期間を設定可能に構成し、
当該無線タグリーダとの間で前記無線タグが通信可能な範囲であって、その範囲に含まれる警戒圏内を除いた範囲を通信圏内とし、
前記無線タグが前記警戒圏内に位置しているか否かを判断するタグ位置判断手段を備え、
そのタグ位置判断手段により前記無線タグが警戒圏内にいると判断した場合であって、無線タグからの信号を受信した場合には、最初の共通送信期間にて、無線タグに警戒圏内であることを示す警戒圏内コマンドを送信し、
前記無線タグは、
前記通信圏内または前記警戒圏内であると判断している状態では、前記信号を送信後、前記受信期間を2スロット分として受信を行い、
通信圏内であると判断している状態において、前記警戒圏内コマンドを受信した場合、または、最初のスロットで受信した電波が受信エラーであった場合には、警戒圏内へ移動したと判断し、信号送信間隔を、通信圏内のときよりも短くすること、および、信号の1回の送信時間を通信圏内のときの送信時間よりも長くすることのいずれか少なくとも一方を行うことを特徴とする無線タグシステム。
【請求項7】
請求項6において、
前記無線タグリーダは、前記タグ位置判断手段により無線タグが警戒圏内にいないと判断した場合であって、無線タグからの信号を受信した場合には、2番目のスロットにて、無線タグに通信圏内であることを示す通信圏内コマンドを送信し、
無線タグは、
警戒圏内であると判断している状態において、前記警戒圏内コマンドを受信せず、且つ、最初のスロットで受信した電波が受信エラーでなく、さらに、
前記通信圏内コマンドを受信した場合、または、2番目のスロットで受信した電波が受信エラーであった場合には、通信圏内へ移動したと判断し、信号送信間隔を、警戒圏内のときよりも長くすること、および、信号の1回の送信時間を警戒圏内のときの送信時間よりも短くすることのいずれか少なくとも一方を行うことを特徴とする無線タグシステム。
【請求項8】
請求項2において、
前記無線タグは、複数の無線タグリーダのいずれとも通信を行うことができないことに基づいて通信圏外と判断し、通信圏外であると判断している状態では、通信圏外であると判断している場合に送信する通信圏外時信号を送信後、前記受信期間を1スロット分として受信を行い、
前記無線タグリーダは、前記無線タグから通信圏外時信号を受信した場合には、無線タグに、通信圏内に入ったことを通知するために、通信圏内であることを示す通信圏内コマンドを最初の共通送信期間に送信し、
無線タグは、通信圏外であると判断している状態において、前記通信圏内コマンドを受信した場合、または、受信した電波が受信エラーであった場合には、通信圏内へ移動したと判断し、信号送信間隔を、通信圏外のときよりも短くすること、および、信号の1回の送信時間を通信圏外のときよりも長くすることのいずれか少なくとも一方を行うことを特徴とする無線タグシステム。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか1項において、
前記無線タグは、通信圏内であると判断しているときであって、最初のスロット、2番目のスロットともに、前記無線タグリーダからの信号を受信しなかったと判断した場合には、通信圏外へ移動したと判断し、信号送信間隔を、通信圏内のときよりも長くすることを特徴とする無線タグシステム。
【請求項10】
請求項6または7か1項において、
前記タグ位置判断手段は、前記無線タグからの電波の受信強度に基づいて、無線タグが前記警戒圏内に位置しているか否かを判断することを特徴とする無線タグシステム。
【請求項11】
請求項6、7、10のいずれか1項において、
前記通信圏内から警戒圏内へ、および、警戒圏内から通信圏内への物体の移動を検知する物体検知手段を備え、
前記タグ位置判断手段は、前記物体検知手段の検知結果に基づいて、無線タグが前記警戒圏内に位置しているか否かを判断することを特徴とする無線タグシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−209884(P2012−209884A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75798(P2011−75798)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】