説明

無線タグシステム

【課題】道路地下に埋設したマンホールなどの保守監視対象物に設置したタグと、保守監視対象物上の道路を走行する車両に設置したリーダとの間で、タグにおける最大応答時間を延ばし、保守監視対象物の測定データを効率よくかつ確実に収集する。
【解決手段】リーダは、起動信号を送信するリーダ送信部11を移動体1の移動方向前方に設置し、応答信号を受信するリーダ受信部12を移動体1の移動方向後方に設置する構成であり、タグは、移動体1の移動方向手前に起動信号を受信するタグ受信部21を設置し、移動体の移動方向先に応答信号を送信するタグ送信部22を設置し、タグ送信部22はタグ受信部21から起動信号の受信通知に応じて応答信号を送信する構成であり、さらにタグは、保守監視対象物5の状態を測定した測定データの解析データを記憶しておき、起動信号の受信通知に応じて当該解析データを読み出して応答信号として送信する制御手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一方が移動するリーダとタグとの間で無線信号により情報交換を行う無線タグシステムに関する。
【0002】
例えば、マンホール内の保守監視情報を収集するタグと、マンホールのある道路上を通過する車両に搭載したリーダとにより構成され、マンホールの近傍を通過する車両のリーダに対して、タグが収集したマンホールの保守監視情報を送信する無線タグシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
図13は、従来の無線タグシステムの第1の構成例を示す(特許文献1)。
図13において、例えば橋梁などの保守監視対象物5の状態を測定するセンサ62を備えたタグ6は、車両4に搭載したリーダ41から送信された起動信号をタグ受信機61で受信し、当該起動信号をトリガとしてセンサ62で測定した測定データを応答信号としてタグ送信機64から送信し、車両4のリーダ41が当該応答信号を受信する構成である。ここで、タグ受信機61およびタグ送信機64は、車両4の進行方向に沿って保守監視対象物5の両端に離れて設置されており、車両4がそれぞれの通信圏を通過するタイミングは保守監視対象物5の長さに応じたタイムラグがある。
【0004】
タグ6は、タグ受信機61、センサ62、測定結果記憶装置63、タグ送信機64およびタイマ65を備える。タグ受信機61が起動信号を受信すると、起動制御信号をセンサ62、測定結果記憶装置63、タグ送信機64およびタイマ65に通知する。センサ62は、起動制御信号に応じて保守監視対象物5の状態を測定し、当該測定データを測定データ記憶装置63およびタグ送信機64に出力する。測定データ記憶装置63は、起動制御信号に応じてセンサ62から出力された測定データを記憶する。タイマ65は、起動制御信号の入力から前記タイムラグに応じた送信タイミングをタグ送信機64に通知し、タグ送信機64は通知された送信タイミングで測定データ記憶装置63に記憶した測定データを読み出し、応答信号として送信する。これにより、車両4が保守監視対象物5を通過している間にセンサ62が保守監視対象物5の状態を測定し、車両4がタグ送信機64の通信圏を通過するタイミングでその測定データを受け取ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−295051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、図13に示す保守監視対象物5は橋梁などのように比較的長いものであり、その保守監視対象物5をリーダ41を搭載した車両4が通過する時間も比較的長い。そのため、タグ6による保守監視対象物5の状態の測定時間、さらにタグ6からリーダ41に測定データを応答信号として送信するまでの時間を十分に確保することができる。
【0007】
しかし、図14に示すように、保守監視対象物5がマンホールなどの場合、車両4がマンホールのある一般道を走行し、マンホール内に設置したタグのセンサ62で測定した測定データを収集する無線タグシステムでは、次のような課題がある。
【0008】
図14の保守監視対象物5内には、図13に示すタグ6と同様の構成が備えられるが、ここでは模式的にタグ受信機61、タグ送信機64、センサ62のみを示す。一般にマンホール内に設置されるタグ受信機61とタグ送信機64の間隔は数m程度であり、さらにリーダ41が送信する起動信号およびタグ送信機64が送信する応答信号の到達距離(電波が届く距離)もそれぞれ数m程度である。そのため、車両4のリーダ41が送信する起動信号がタグ受信機61に受信され、タグ送信機64が送信する応答信号がリーダ41で受信できる通信可能距離(車両4の走行距離)は十数m程度である。すなわち、その間に、センサ62は保守監視対象物5の状態を測定し、測定データを処理してタグ送信機64から応答信号として送信する必要がある。
【0009】
ここで、図14に示すように、リーダ41が送信する起動信号の最大到達距離をL1(m)、タグ送信機64が送信する応答信号の最大到達距離をL2(m)、タグ受信機61とタグ送信機64の間隔をLm(m)、車両4の速度をV(m/秒)とする。このとき、タグ受信機61が起動信号を受信してからタグ送信機64が応答信号を送信するまでに許容される最大応答時間は、
(L1+Lm+L2)/V(秒)
となる。
【0010】
例えば、L1=2m、L2=7m、Lm=5m、V=16.7m/秒(=60km/時)とすると、タグの最大応答時間は、(2+5+7)/16.7=0.84秒となり、タグ送信機64はこの最大応答時間以内に応答信号を送信すればよい。なお、起動信号の送信周期を例えば2ミリ秒(走行距離で 3.3cm)としたときにリーダ41とタグ受信機61との距離がL1以下になる分や、起動信号および応答信号の伝搬時間は無視している。
【0011】
また、タグ受信機61とタグ送信機64が一体型であるタグの場合には、タグ受信機61とタグ送信機64の間隔Lmは0mとなるため、起動信号を受信してから応答信号を送信するまでに確保できる最大応答時間はさらに短くなり、(2+7)/16.7=0.54秒となる。
【0012】
しかし、このように起動信号を受信してから最大応答時間の0.84秒や0.54秒以内に保守監視対象物5の状態を測定し、測定データを処理して応答信号として送信するには、相当な高速処理が要求され、保守監視対象物5がマンホールのような場合には応答信号の送信が間に合わないことがある。あるいは、車両4の走行速度を大幅に遅くする必要があり、マンホールがある一般道で運用するには制約が大きい。
【0013】
本発明は、道路地下に埋設したマンホールなどの保守監視対象物に設置したタグと、保守監視対象物上の道路を走行する車両に設置したリーダとの間で、タグにおける最大応答時間を延ばし、保守監視対象物の測定データを効率よくかつ確実に収集することができる無線タグシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、保守監視対象物に設置されるタグと、保守監視対象物の近傍を通過する移動体に設置されるリーダとにより構成され、リーダから所定の周期で起動信号を送信し、当該起動信号を受信したタグから応答信号を送信し、当該応答信号をリーダが受信する無線タグシステムにおいて、リーダは、起動信号を送信するリーダ送信部を移動体の移動方向前方に設置し、応答信号を受信するリーダ受信部を移動体の移動方向後方に設置する構成であり、タグは、移動体の移動方向手前に起動信号を受信するタグ受信部を設置し、移動体の移動方向先に応答信号を送信するタグ送信部を設置し、タグ送信部はタグ受信部から起動信号の受信通知に応じて応答信号を送信する構成であり、さらにタグは、保守監視対象物の状態を測定した測定データを解析し、その解析データを記憶しておき、起動信号の受信通知に応じて当該解析データを読み出して応答信号として送信する制御手段を備える。
【0015】
本発明の無線タグシステムにおいて、保守監視対象物が移動体の移動経路に少なくとも2つあり、移動体の移動方向手前の第1の保守監視対象物にタグ受信部を設置し、移動体の移動方向先の第2の保守監視対象物にタグ送信部を設置し、タグ受信部からタグ送信部にケーブルを介して起動信号の受信通知を行う構成であり、タグの制御手段は、第1の保守監視対象物および第2の保守監視対象物の少なくとも一方の状態に対応する解析データを応答信号として送信する構成である。
【0016】
本発明の無線タグシステムにおいて、タグのタグ受信部を保守監視対象物から離れて移動体の移動方向手前に設置し、タグ受信部からタグ送信部にケーブルを介して起動信号の受信通知を行う構成である。
【0017】
本発明の無線タグシステムにおいて、移動体は、所定の間隔をおいて移動する少なくとも2台で構成され、前方の第1の移動体にリーダ送信部を設置し、後方の第2の移動体にリーダ受信部を設置する構成である。
【0018】
本発明の無線タグシステムにおいて、タグ送信部は、起動信号の受信通知を受けてからタグ送信部とリーダ受信部が通信可能な位置関係になるタイミングを判断し、当該タイミングで応答信号の送信を開始する送信タイミング制御手段を備える。
【0019】
本発明の無線タグシステムにおいて、移動体は、所定の間隔をおいて移動する少なくとも2台で構成され、前方の第1の移動体にリーダ送信部を設置し、後方の第2の移動体にリーダ受信部を設置する構成であり、タグ送信部は、第1の移動体と第2の移動体の時間差により、起動信号の受信通知を受けてからタグ送信部とリーダ受信部が通信可能な位置関係になるタイミングを判断し、当該タイミングで応答信号の送信を開始する送信タイミング制御手段を備える。
【0020】
また、第1の移動体と第2の移動体は、所定の時間差で移動する1台の移動体で実現する構成としてもよい。
【0021】
本発明の無線タグシステムにおいて、リーダ受信部は、応答信号を受信する2つの受信手段およびその受信信号をダイバーシチ合成する手段を備えた構成である。
【0022】
本発明の無線タグシステムにおいて、タグ送信部は、応答信号を所定の送信周期で繰り返し送信する構成である。
【発明の効果】
【0023】
本発明の無線タグシステムは、リーダ送信部とリーダ受信部を移動体の前後に分離して設置したことにより、その間隔分だけタグ送信部が応答信号を送信するまでの最大応答時間を延ばすことができる。
【0024】
また、タグの制御手段は、保守監視対象物の状態を示す測定データをコンパクトな解析データとして記憶しておき、応答信号として送信することにより、起動信号の受信から応答信号の送信までの応答処理に要する応答時間を大幅に短縮することができる。これにより、例えばマンホールなどの保守監視用の解析データを車両を走行させながら確実に取得することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例1の無線タグシステムの構成例を示す図である。
【図2】実施例1の無線タグシステムにおけるリーダの構成例を示す図である。
【図3】実施例1の無線タグシステムにおけるタグの構成例を示す図である。
【図4】実施例1の無線タグシステムの動作シーケンスの例を示す図である。
【図5】本発明の実施例2の無線タグシステムの構成例を示す図である。
【図6】本発明の実施例3の無線タグシステムの構成例を示す図である。
【図7】本発明の実施例4の無線タグシステムの構成例1を示す図である。
【図8】本発明の実施例4の無線タグシステムの構成例2を示す図である。
【図9】本発明の無線タグシステムにおけるタグの他の構成例を示す図である。
【図10】本発明の実施例6の無線タグシステムの構成例を示す図である。
【図11】本発明の実施例7の無線タグシステムの構成例を示す図である。
【図12】本発明の実施例7の無線タグシステムのビームチルトアンテナ効果を説明する図である。
【図13】従来の無線タグシステムの第1の構成例を示す図である。
【図14】従来の無線タグシステムの第2の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0026】
図1は、本発明の実施例1の無線タグシステムの構成例を示す。
図1において、車両1に搭載されるリーダは、タグに対して所定の周期で起動信号を送信するリーダ送信部(T)11と、タグからの応答信号を受信するリーダ受信部(R)12とを分離し、リーダ送信部(T)11を車両前方に設置し、リーダ受信部(R)12を車両後方に設置する構成である。例えばマンホールなどの保守監視対象物5に設置されるタグは、起動信号を受信するタグ受信部21と、応答信号を送信するタグ送信部22と、保守監視対象物5の状態を測定するセンサ23を備える。タグ受信部21とタグ送信部22は、車両1の進行方向に合せて分離して配置される。あるいは、タグ受信部21とタグ送信部22の配置順に車両1の進行方向を決める。
【0027】
本発明の第1の特徴は、リーダ送信部(T)11を車両前方に、リーダ受信部(R)12を車両後方に分離して設置したところにある。本発明の第2の特徴は、タグにおいて、リーダからの起動信号と非同期で動作するセンサ23と、その測定データを解析した解析データを記憶しておき、リーダからの起動信号に応じて解析データを応答信号として送信するタグ送信部22を備えたところにある。リーダおよびタグの詳細な構成については別途説明する。
【0028】
車両前部のリーダ送信部(T)11から送信された起動信号はタグ受信部21に受信され、起動制御信号としてタグ送信部22に通知される。一方、タグ送信部22は、センサ23から測定データを逐次入力し、測定データを解析して解析データとして記憶しており、起動制御信号に応じて記憶されている解析データを応答信号として送信する。タグ送信部22から送信された応答信号は、車両後部のリーダ受信部(R)12に受信される。
【0029】
ここで、図1に示すように、リーダ送信部(T)11が送信する起動信号の最大到達距離をL1(m)、タグ送信部22が送信する応答信号の最大到達距離をL2(m)、タグ受信部21とタグ送信部22の間隔(マンホールの長さ)をLm(m)、車両1のリーダ受信部(R)12と送信部(T)11の間隔(車両1の長さ)をLc(m)、車両1の速度をV(m/秒)とする。このとき、タグ受信部21が起動信号を受信してからタグ送信部22が応答信号を送信するまでに許容される最大応答時間は、
(Lc+L1+Lm+L2)/V(秒)
となる。例えば、L1=2m、L2=7m、Lm=5m、Lc=4m、V=16.7m/秒(=60km/時)とすると、タグの最大応答時間は1.08秒となり、タグ送信部22は起動制御信号を入力してからこの最大応答時間以内に応答信号を送信すればよい。最大応答時間は、従来の0.84秒から29%延びることになる。なお、リーダ送信部(T)11が起動信号を送信する位置が送信周期に応じてL1内に入る場合(送信周期が2ミリ秒で最大で 3.3cm)や、起動信号および応答信号の伝搬時間は無視している。
【0030】
なお、図1に示す各区間Lc,L1,Lm,L2は模式的に示しており、上記の数値例の大小とは必ずしも一致しない。以下に示す実施例においても同様である。
【0031】
このように、リーダ送信部(T)11とリーダ受信部(R)12を車両1の前後に分離して設置したことにより、その間隔Lc分だけ最大応答時間が延びることになる。また、タグ送信部22にタイマを接続し、起動制御信号の入力時刻から最大応答時間+α(αは任意のマージン)まで、応答信号を所定の送信周期で繰り返し送信することにより、リーダ受信部(R)12に確実に応答信号を受信させることができるとともに、その後に応答信号の送信を停止することにより消費電力を抑えることができる。
【0032】
図2は、実施例1の無線タグシステムにおけるリーダの構成例を示す。
図2において、リーダ送信部(T)11は、起動信号の送信周期等を制御する制御回路111と、起動信号を送信する送信回路/送信アンテナ112により構成される。リーダ受信部(R)12は、タグから送信された応答信号(解析データ)を受信する2つの受信アンテナ/受信回路121,122と、各受信回路の出力をダイバーシチ合成して復調する合成/復調回路123と、復調された解析データを記憶するデータ記憶回路124により構成される。なお、2つの受信回路を用いてダイバーシチ合成する構成では、受信特性の向上によりタグ送信部22が送信する応答信号の最大到達距離L2を延ばすことができるが、必ずしもダイバーシチ合成する構成に限定されるものではない。
【0033】
図3は、実施例1の無線タグシステムにおけるタグの構成例を示す。
図3において、タグは、タグ受信部21、タグ送信部22およびセンサ23により構成される。タグ受信部21は、受信アンテナ/受信回路211でリーダ送信部(T)11から送信された起動信号を受信し、起動制御信号を生成してタグ送信部22に出力する。タグ送信部22は、起動制御信号をトリガとして動作する送信回路/送信アンテナ221およびデータ解析記憶回路222と、センサ23から測定データを入力する測定データ収集回路223と、測定データ収集回路223およびデータ解析記憶回路222に動作タイミングを与える測定データ収集/解析用タイマ224とにより構成される。
【0034】
センサ23は、例えばマンホール内の浸水を検知するための水圧センサ、マンホール構造に影響のある振動や歪みを検知する加速度センサやゲージセンサ、マンホール内の温度を検知する温度センサなど、マンホール内の設備点検に用いる各種保守監視の測定データを出力する。測定データ収集回路223は、測定データ収集/解析用タイマ224が設定する時間間隔で、センサ23から測定データを収集してデータ解析記憶回路222に出力する。データ解析記憶回路222は、この測定データを解析して得られる解析データを記憶するとともに、タグ受信部21から入力する起動制御信号に応じて記憶している解析データを送信回路/送信アンテナ221に出力する。例えばデータ解析記憶回路222では、マンホールの浸水の継続時間(期間)を解析したり、加速度センサで検出されるマンホールの揺れが所定の閾値を超える回数を解析したり、温度センサで検出される温度が所定の閾値を超える回数を解析し、解析データとして記憶する。送信回路/送信アンテナ221は、タグ受信部21から入力する起動制御信号に応じて、解析データを応答信号としてリーダ受信部(R)12に向けて送信する。なお、送信回路/送信アンテナ221は、上記のように、起動制御信号の入力時刻から最大応答時間+αまで、応答信号を所定の送信周期で繰り返し送信するようにしてもよい。
【0035】
図4は、実施例1の無線タグシステムの動作シーケンスの例を示す。
図4において、横方向には図2に示すリーダおよび図3に示すタグの各部を配列し、縦方向は時間を示す。無線タグシステムの動作シーケンスは、マンホールなどの保守監視対象物5内でタグが測定データの収集から解析データの記憶までを行う動作シーケンス1と、リーダからの起動信号に応じてタグに記憶されている解析データをリーダに送信する動作シーケンス2に大別される。
【0036】
動作シーケンス1では、定期的にセンサ23が動作して測定データを出力し、測定データ収集回路223が測定データを収集し、データ解析記憶回路222が測定データを解析して解析データとして記憶する。
【0037】
動作シーケンス2では、リーダを搭載した車両がタグとの通信圏に入ると、リーダの送信回路/送信アンテナ112から送信される起動信号がタグの受信アンテナ/受信回路211に受信される。受信アンテナ/受信回路211は起動信号を受信するとデータ解析記憶回路222および送信回路/送信アンテナ221に通知し、データ解析記憶回路222は解析データを読み出して送信回路221に出力し、送信回路/送信アンテナ221から応答信号として送信する。リーダの受信回路121,122および合成/復調回路123は応答信号を受信して復調し、得られた解析データをデータ記憶回路124に記憶する。
【0038】
このように、動作シーケンス1においてデータ解析記憶回路222では、センサ23で測定された膨大な測定データを解析し、解析データとして記憶しておく。これにより、動作シーケンス2では、センサ23の測定データをそのまま応答信号として送信するのではなく、測定データをコンパクトにした解析データ(浸水の継続時間、揺れや温度が閾値を超える回数)を送信することができ、起動信号の受信から応答信号の送信までの応答処理に要する応答時間を大幅に短縮することができる。
【0039】
したがって、本実施例において、リーダ送信部(T)11とリーダ受信部(R)12を車両1の前後に分離して設置したことにより最大応答時間を拡張するとともに、タグにおける測定データを解析データに変換して応答時間を短縮することにより、マンホールなどの保守監視用の解析データをその上を通過する車両を走行させながら確実に取得することが可能になる。
【実施例2】
【0040】
図5は、本発明の実施例2の無線タグシステムの構成例を示す。
図5において、実施例2の特徴は、1つの保守監視対象物5の両端にタグ受信部21とタグ送信部22を設置するのではなく、異なる保守監視対象物5A,5Bにそれぞれ設置したタグ受信部21とタグ送信部22をケーブルを介して接続したところにある。保守監視対象物5A,5Bは、車両1の進行方向に順に配置されるマンホールなどを想定する。
【0041】
車両前部のリーダ送信部(T)11から送信された起動信号は、保守監視対象物5Aのタグ受信部21に受信され、起動制御信号が保守監視対象物5Bのタグ送信部22に通知される。一方、保守監視対象物5Bのタグ送信部22は、センサ23から測定データを逐次入力し、測定データを解析して解析データとして記憶し、起動制御信号に応じて記憶されている解析データを応答信号として送信する。なお、保守監視対象物5Aにもセンサ23を備え、その測定データを保守監視対象物5Bのタグ送信部22に送信し、タグ送信部22内で保守監視対象物5A,5Bの各センサ23の測定データを解析して解析データとして記憶し、起動制御信号に応じて記憶されている解析データを応答信号として送信する構成としてもよい。この場合には、各解析データに保守監視対象物5A,5Bのそれぞれの識別子が付加される。タグ送信部22から送信された応答信号は、車両後部のリーダ受信部(R)12に受信される。
【0042】
ここで、図5に示すように、リーダ送信部(T)11が送信する起動信号の最大到達距離をL1(m)、タグ送信部22が送信する応答信号の最大到達距離をL2(m)、タグ受信部21とタグ送信部22の間隔(2つのマンホールの長さと間隔の和)を2Lm+Lt(m)、車両1のリーダ受信部(R)12と送信部(T)11の間隔をLc(m)、車両1の速度をV(m/秒)とする。このとき、タグ受信部21が起動信号を受信してからタグ送信部22が応答信号を送信するまでに許容される最大応答時間は、
(Lc+L1+2Lm+Lt+L2)/V(秒)
となる。例えば、L1=2m、L2=7m、Lm=5m、Lt=50m、Lc=4m、V=16.7m/秒(=60km/時)とすると、タグの最大応答時間は4.37秒となり、タグ送信部22は起動制御信号を入力してからこの最大応答時間以内に応答信号を送信すればよい。なお、リーダ送信部(T)11が起動信号を送信する位置が送信周期に応じてL1内に入る場合や、起動信号および応答信号の伝搬時間は無視している。
【0043】
このように、タグ受信部21とタグ送信部22を異なる保守監視対象物5A,5Bにそれぞれ設置したことにより、その間隔2Lm+Lt分だけ最大応答時間が延びることになる。また、タグ送信部22にタイマを接続し、起動制御信号の入力時刻から最大応答時間+α(αは任意のマージン)まで、応答信号を所定の送信周期で繰り返し送信することにより、リーダ受信部(R)12に確実に応答信号を受信させることができるとともに、その後に応答信号の送信を停止することにより消費電力を抑えることができる。
【0044】
なお、保守監視対象物5Aにタグ送信部22を備え、1つの手前の保守監視対象物5のタグ受信部21との間で同様の構成をとってもよい。また、保守監視対象物5Bにタグ受信部21を備え、1つの後の保守監視対象物5のタグ送信部22との間で同様の構成をとってもよい。また、本実施例におけるタグ受信部21とタグ送信部22は、隣接する保守監視対象物5にそれぞれ設置する場合に限らず、例えば1つおきの保守監視対象物5に設置する構成でもよい。このような場合には、応答信号を送信するタグ送信部22が設置される保守監視対象物5あるいはセンサ23を特定する必要があれば、応答信号にこれらの識別子を付加して送信すればよい。これにより、応答信号の識別子により保守監視対象物5あるいはセンサ23を特定することができ、不要な応答信号を削除することができる。
【実施例3】
【0045】
図6は、本発明の実施例3の無線タグシステムの構成例を示す。
図6において、実施例3の特徴は、保守監視対象物5の両端にタグ受信部21とタグ送信部22を設置するのではなく、タグ受信部21を車両1の進行方向に対して保守監視対象物5の手前に設置し、タグ受信部21とタグ送信部22をケーブルを介して接続したところにある。
【0046】
車両前部のリーダ送信部(T)11から送信された起動信号は、タグ受信部21に受信され、起動制御信号が保守監視対象物5のタグ送信部22に通知される。一方、保守監視対象物5のタグ送信部22は、センサ23から測定データを逐次入力し、測定データを解析して解析データとして記憶し、起動制御信号に応じて記憶されている解析データを応答信号として送信する。タグ送信部22から送信された応答信号は、車両後部のリーダ受信部(R)12に受信される。
【0047】
ここで、図6に示すように、リーダ送信部(T)11が送信する起動信号の最大到達距離をL1(m)、タグ送信部22が送信する応答信号の最大到達距離をL2(m)、タグ受信部21とタグ送信部22の間隔をLm+Ls(m)、車両1のリーダ受信部(R)12と送信部(T)11の間隔をLc(m)、車両1の速度をV(m/秒)とする。このとき、タグ受信部21が起動信号を受信してからタグ送信部22が応答信号を送信するまでに許容される最大応答時間は、
(Lc+L1+Lm+Ls+L2)/V(秒)
となる。例えば、L1=2m、L2=7m、Lm=5m、Ls=30m、Lc=4m、V=16.7m/秒(=60km/時)とすると、タグの最大応答時間は2.87秒となり、タグ送信部22は起動制御信号を入力してからこの最大応答時間内に応答信号を送信すればよい。なお、リーダ送信部(T)11が起動信号を送信する位置が送信周期に応じてL1内に入る場合や、起動信号および応答信号の伝搬時間は無視している。
【0048】
このように、タグ受信部21を保守監視対象物5の手前に設置したことにより、その間隔Lm+Ls分だけ最大応答時間が延びることになる。また、タグ送信部22にタイマを接続し、起動制御信号の入力時刻から最大応答時間+α(αは任意のマージン)まで、応答信号を所定の送信周期で繰り返し送信することにより、リーダ受信部(R)12に確実に応答信号を受信させることができるとともに、その後に応答信号の送信を停止することにより消費電力を抑えることができる。
【実施例4】
【0049】
図7は、本発明の実施例4の無線タグシステムの構成例1を示す。
図7において、実施例4の特徴は、1つの車両1の両端にリーダ送信部(T)11とリーダ受信部12を設置するのではなく、前後して走行する車両1A,1Bにリーダ送信部(T)11とリーダ受信部12を分けて設置したところにある。車両1A,1Bは、その順番に所定の間隔で走行するものとする。なお、各車両1A,1Bにそれぞれリーダ送信部(T)11とリーダ受信部(R)12を備え、先頭を走行する車両1Aはリーダ送信部(T)11が動作し、後続する車両1Bはリーダ受信部(R)12が動作するようにしてもよい。また、その場合のリーダ送信部(T)11とリーダ受信部(R)12は、必ずしも車両の前部と後部に分離して設置する必要はなく、車両を同位置に一体で設置してもよい。
【0050】
車両1Aのリーダ送信部(T)11から送信された起動信号は、保守監視対象物5のタグ受信部21に受信され、起動制御信号がタグ送信部22に通知される。一方、タグ送信部22は、センサ23から測定データを逐次入力し、測定データを解析して解析データとして記憶し、起動制御信号に応じて記憶されている解析データを応答信号として送信する。タグ送信部22から送信された応答信号は、車両1Aに後続する車両1Bのリーダ受信部(R)12に受信される。
【0051】
ここで、図7に示すように、リーダ送信部(T)11が送信する起動信号の最大到達距離をL1(m)、タグ送信部22が送信する応答信号の最大到達距離をL2(m)、タグ受信部21とタグ送信部22の間隔をLm(m)、車両1Aのリーダ送信部(T)11と車両1Bのリーダ受信部(R)12の間隔を2Lc+Lp(m)、車両1A,1Bの速度をV(m/秒)とする。なお、Lpは車両1Aと車両1Bの間隔であり、Lcは車両におけるリーダ送信部(T)とリーダ受信部(R)の間隔(車両の長さ)である。このとき、タグ受信部21が起動信号を受信してからタグ送信部22が応答信号を送信するまでに許容される最大応答時間は、
(2Lc+Lp+L1+Lm+L2)/V(秒)
となる。例えば、L1=2m、L2=7m、Lm=5m、Lc=4m、Lp=50m、V=16.7m/秒(=60km/時)とすると、タグの最大応答時間は4.31秒となり、タグ送信部22は起動制御信号を入力してからこの最大応答時間内に応答信号を送信すればよい。なお、リーダ送信部(T)11が起動信号を送信する位置が送信周期に応じてL1内に入る場合や、起動信号および応答信号の伝搬時間は無視している。
【0052】
このように、リーダ送信部(T)11とリーダ受信部(R)12を異なる車両1A、1Bにそれぞれ設置したことにより、その間隔2Lc+Lp分だけ最大応答時間が延びることになる。また、タグ送信部22にタイマを接続し、起動制御信号の入力時刻から最大応答時間+α(αは車両1A,1Bの速度および間隔の変動に対応するマージン)まで、応答信号を所定の送信周期で繰り返し送信することにより、リーダ受信部(R)12に確実に応答信号を受信させることができるとともに、その後に応答信号の送信を停止することにより消費電力を抑えることができる。
【0053】
なお、起動信号を送信するリーダ送信部(T)11と、応答信号を受信するリーダ受信部(R)12が異なる車両1A,1Bに設置されることから、応答信号を送信するタグ送信部22が設置される保守監視対象物5あるいはセンサ23を特定する必要があれば、応答信号にこれらの識別子を付加して送信すればよい。これにより、応答信号の識別子により保守監視対象物5あるいはセンサ23を特定することができ、不要な応答信号を削除することができる。
【0054】
ところで、タグ送信部22が送信する応答信号は、図8に示すように、車両の進行方向に対してタグ送信部22の手前にも到達する。したがって、タグ送信部22が送信する応答信号を車両1Bのリーダ受信部(R)12が受信可能になるまでの走行距離は、
2Lc+Lp+L1+Lm−L2
となる。すなわち、車両1AのLp後方を走行する車両1Bは、車両1Aが起動信号を送信してから
(2Lc+Lp+L1+Lm−L2)〜(2Lc+Lp+L1+Lm+L2)
の範囲を走行中にタグ送信部22が送信する応答信号を受信することができる。
【0055】
この車両1Bの走行に合せたタグ送信部22における応答信号送信開始時間および応答信号送信終了時間(タグの最大応答時間)は、
応答信号送信開始時間:(2Lc+Lp+L1+Lm−L2)/V
応答信号送信終了時間:(2Lc+Lp+L1+Lm+L2)/V
となる。上記の数値例では、タグ送信部22が送信した応答信号を車両1Bのリーダ受信部(R)12が受信できるタイミングは、タグ受信部21が起動信号を受信してから3.47秒〜4.31秒の範囲となる。
【0056】
ただし、本発明で重要な点は、タグの最大応答時間が4.31秒に延びたところにあり、タグ受信部21が起動信号を受信してから3.47秒より前にタグ送信部22が応答信号を送信しても、車両1Bのリーダ受信部(R)12が応答信号を受信できないだけで特に支障はない。なお、消費電力の低減のためには、タグ送信部22にタイマを接続し、応答信号送信開始時間および応答信号送信終了時間を制御することは有効である。
【0057】
例えば、図9に示すタグ送信部22のように、送信回路/送信アンテナ221およびデータ解析記憶回路222に応答信号送信用タイマ225を接続し、起動制御信号に応じて応答信号送信開始時間および応答信号送信終了時間を制御する構成により対応可能である。また、実施例1〜実施例3における最大応答時間+αで応答信号の送信を停止する制御にも、応答信号送信用タイマ225を用いて対応することができる。なお、タグ送信部22の応答信号送信用タイマ225以外については、図3と同様の構成である。
【実施例5】
【0058】
実施例1〜実施例4は、車両1または車両1A,1Bの速度V(m/s)が規定値(例えば16.7m/秒=60km/時)であることを前提としたものである。
【0059】
実施例5の特徴は、実施例1〜3の車両1または実施例4の車両1Aにおいて、例えば車両の走行速度Vrを起動信号に付加して送信するところにある。図9のタグにおいて、起動信号を受信したタグ受信部21の受信アンテナ/受信回路211は、起動信号を受信して走行速度Vrを含む起動制御信号を生成し、タグ送信部22に通知する。タグ送信部22の応答信号送信用タイマ225は、上記の最大応答時間、あるいは応答信号送信開始時間および応答信号送信終了時間を算出する式の速度Vに代えて、当該走行速度Vrを用いることにより、車両1または車両1Bが応答信号の受信圏を通過するタイミングに応じて的確に応答信号を送信することができる。
【実施例6】
【0060】
実施例4において車両1Aと車両1Bの時間差が数時間や数日の場合には、タグ送信部22は車両1Aが送信する起動信号に応じて応答信号の送信を開始するのではなく、当該起動信号の受信を契機に応答信号の送信開始時間を制御することは、消費電力の低減のためには極めて有効である。例えば、車両1Aが午前中に保守監視対象物5を通過し、車両1Bが車両1Aの6時間後に保守監視対象物5を通過することが判っている場合には、タグ送信部22の応答信号送信用タイマ225が起動制御信号の入力時刻からカウントを開始し、6−β時間後(βは車両1Bの通過時間の変動に対応するマージン)に応答信号の送信を開始するように送信回路221およびデータ解析記憶回路222を制御する。
【0061】
また、車両1Bが車両1Aの3日後に保守監視対象物5を通過する場合には、応答信号送信用タイマ225が起動制御信号の入力時刻からカウントを開始し、2×24−β時間後(βは車両1Bの通過時間の変動に対応するマージン)に応答信号の送信を開始するように送信回路221およびデータ解析記憶回路222を制御する。あるいは、タイマ225にカレンダ機能を付加し、予め決められる保守点検日ごとに応答信号の送信を開始するように送信回路221およびデータ解析記憶回路222を制御してもよい。
【0062】
実施例6の特徴は、以上のように、車両1Aと車両1Bとの間隔が数時間や数日あるように場合に、タグ送信部22において応答信号の送信開始時刻を制御するところにある。
【0063】
本実施例では、車両1Aと車両1Bが別車両である必要はなく、同一車両で十分に対応可能である。また、車両1Aの走行方向に対して車両1Bが逆方向に走行しても、応答信号送信用タイマ225を利用し、送信回路221およびデータ解析記憶回路222に対して応答信号の送信開始時間を制御することにより対応可能である。例えば、1台の車両が往路でリーダ送信部(T)11から起動信号を送信してタグにおける応答信号の送信開始時間の制御を開始させ、復路でリーダ受信部(R)12が応答信号を受信する形態にも適用することができる。
【0064】
このように、実施例6の構成では、リーダ送信部(T)11とリーダ受信部(R)12を車両の前後に分離して配置すること、またタグ受信部21とタグ送信部22を保守監視対象物5に分離して配置することの必要性は必ずしもなく、タグ受信部21とタグ送信部22が連動し、リーダ受信部(R)12とリーダ送信部(T)11が連動していればよい。この実施例6の無線タグシステムの構成例を図10に示す。
【0065】
図10(1) は、車両1Aのリーダ送信部(T)11が起動信号を送信し、タグ受信部21が起動信号を受信し、起動制御信号がタグ送信部22に通知される状態を示す。タグ送信部22では、起動制御信号を契機として車両1Bが保守監視対象物5を通過するタイミングに合うように応答信号の送信開始時間の制御を開始する。
【0066】
図10(2) は、車両1Bが保守監視対象物5を通過するタイミングに合せて、タグ送信部22が応答信号を送信し、車両1Bのリーダ受信部(R)12が応答信号を受信し、応答信号の受信に応じてリーダ送信部(T)11が停止信号を送信し、タグ受信部21が停止信号を受信し、停止制御信号がタグ送信部22に通知される状態を示す。図10(3) に示すように、タグ送信部22は、応答信号送信開始時間から応答信号送信終了時間まで応答信号を送信するように制御されるところ、停止信号を受信することにより応答信号の送信を停止することができる。
【実施例7】
【0067】
図11は、本発明の実施例7の無線タグシステムの構成例を示す。
図11において、実施例7の特徴は、車両1にリーダ送受信部(T/R)13とビームチルトアンテナ14を備え、車両の前方と後方に受信レベルが高い領域を形成して電波の到達距離を拡張するところにある。
【0068】
実施例1では、リーダ送信部(T)11とリーダ受信部(R)12を車両1の前後に分離して設置したことにより、その間隔Lc分だけ最大応答時間が延びるようにしたものである。本実施例では、リーダ送受信部(T/R)13からビームチルトアンテナ14を介して送受信する起動信号および応答信号の最大到達距離をL3(m)、タグ受信部21とタグ送信部22の間隔(マンホールの長さ)をLm(m)、車両1の速度をV(m/秒)とする。このとき、タグ受信部21が起動信号を受信してからタグ送信部22が応答信号を送信するまでに許容される最大応答時間は、
(2L3+Lm+L2)/V(秒)
となる。例えば、L3=10m、Lc=4m、V=16.7m/秒(=60km/時)とすると、タグの最大応答時間は1.44秒となり、タグ送信部22は起動制御信号を入力してからこの最大応答時間以内に応答信号を送信すればよい。なお、リーダ送信部(T)11が起動信号を送信する位置が送信周期に応じてL3内に入る場合や、起動信号および応答信号の伝搬時間は無視している。
【0069】
なお、実施例1〜実施例4におけるL1=2m、L2=7mの数値例は、起動信号にLF信号、応答信号にUHF信号を用いたものであるが、ともにUHF信号を用いることによりL1=L2=7mとなり、さらに最大応答時間の延ばすことができる。本実施例は、起動信号および応答信号ともにUHF信号を用い、さらにビームチルトアンテナ14を用いることによりL3=10mに拡張したものである。すなわち、L3>L1、L3>L2、2L3>Lc+L1+L2となる。
【0070】
ここで、図12を参照してビームチルトアンテナ14の効果について説明する。図12は、上空から見下ろした車両1が走行する路上の状況を示し、図11と同じ配置で、中央にある保守監視対象物(マンホール)5に接近している左側の車両1と、同じ車両1が保守監視対象物(マンホール)5を通過して右側にある状況を示す。この車両1の屋根にはビームチルトアンテナ14が搭載されており、このビームチルトアンテナ14から送信されるUHF信号が高いレベルで受信できる領域を破線の円で描いている。特に、道路上ではこのUHF信号の高いレベルの受信領域は、走行する車両1の前方の領域Aと後方の領域Bにできる。これは1つのビームチルトアンテナ14により、実施例1〜実施例4の車両1の前後に送信と受信を空間的に分離したことと同じような効果を論理的に生成することができることを示す。すなわち、車両1の前後に受信レベルが高い領域を生む効果により、実施例7と実施例1〜実施例4は同等の効果を有する実施例と見なすことができる。
【0071】
このように、ビームチルトアンテナ14を用いることにより、起動信号および応答信号の最大到達距離が拡大した分だけ最大応答時間が延びることになる。また、タグ送信部22にタイマを接続し、起動制御信号の入力時刻から最大応答時間+α(αは任意のマージン)まで、応答信号を所定の送信周期で繰り返し送信することにより、リーダ受信部(R)12に確実に応答信号を受信させることができるとともに、その後に応答信号の送信を停止することにより消費電力を抑えることができる。
【0072】
また、本実施例においても、実施例5と同様に車両1の走行速度Vrをタグに通知し、最大応答時間を算出する式の速度Vに代えて、当該走行速度Vrを用いることにより、車両1が応答信号の受信圏を通過するタイミングに応じて的確に応答信号を送信することができる。
【符号の説明】
【0073】
1,1A,1B 車両
5,5A,5B 保守監視対象物(マンホール)
11 リーダ送信部(T)
111 制御回路
112 送信回路/送信アンテナ
12 リーダ受信部(R)
121,122 受信アンテナ/受信回路
123 合成/復調回路
124 データ記憶回路
13 リーダ送受信部(T/R)
14 ビームチルトアンテナ
21 タグ受信部
211 受信アンテナ/受信回路
22 タグ送信部
221 送信回路/送信アンテナ
222 データ解析記憶回路
223 測定データ収集回路
224 測定データ収集/解析用タイマ
225 応答信号送信用タイマ
23 センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保守監視対象物に設置されるタグと、前記保守監視対象物の近傍を通過する移動体に設置されるリーダとにより構成され、前記リーダから所定の周期で起動信号を送信し、当該起動信号を受信した前記タグから応答信号を送信し、当該応答信号を前記リーダが受信する無線タグシステムにおいて、
前記リーダは、前記起動信号を送信するリーダ送信部を前記移動体の移動方向前方に設置し、前記応答信号を受信するリーダ受信部を前記移動体の移動方向後方に設置する構成であり、
前記タグは、前記移動体の移動方向手前に前記起動信号を受信するタグ受信部を設置し、前記移動体の移動方向先に前記応答信号を送信するタグ送信部を設置し、タグ送信部はタグ受信部から前記起動信号の受信通知に応じて前記応答信号を送信する構成であり、
さらに前記タグは、前記保守監視対象物の状態を測定した測定データを解析し、その解析データを記憶しておき、前記起動信号の受信通知に応じて当該解析データを読み出して前記応答信号として送信する制御手段を備えた
ことを特徴とする無線タグシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の無線タグシステムにおいて、
前記保守監視対象物が前記移動体の移動経路に少なくとも2つあり、前記移動体の移動方向手前の第1の保守監視対象物に前記タグ受信部を設置し、前記移動体の移動方向先の第2の保守監視対象物に前記タグ送信部を設置し、前記タグ受信部から前記タグ送信部にケーブルを介して前記起動信号の受信通知を行う構成であり、
前記タグの制御手段は、前記第1の保守監視対象物および前記第2の保守監視対象物の少なくとも一方の状態に対応する前記解析データを前記応答信号として送信する構成である
ことを特徴とする無線タグシステム。
【請求項3】
請求項1に記載の無線タグシステムにおいて、
前記タグのタグ受信部を前記保守監視対象物から離れて前記移動体の移動方向手前に設置し、前記タグ受信部から前記タグ送信部にケーブルを介して前記起動信号の受信通知を行う構成である
ことを特徴とする無線タグシステム。
【請求項4】
請求項1に記載の無線タグシステムにおいて、
前記移動体は、所定の間隔をおいて移動する少なくとも2台で構成され、前方の第1の移動体に前記リーダ送信部を設置し、後方の第2の移動体に前記リーダ受信部を設置する構成である
ことを特徴とする無線タグシステム。
【請求項5】
請求項1に記載の無線タグシステムにおいて、
前記タグ送信部は、前記起動信号の受信通知を受けてから前記タグ送信部と前記リーダ受信部が通信可能な位置関係になるタイミングを判断し、当該タイミングで前記応答信号の送信を開始する送信タイミング制御手段を備えた
ことを特徴とする無線タグシステム。
【請求項6】
請求項1に記載の無線タグシステムにおいて、
前記移動体は、所定の間隔をおいて移動する少なくとも2台で構成され、前方の第1の移動体に前記リーダ送信部を設置し、後方の第2の移動体に前記リーダ受信部を設置する構成であり、
前記タグ送信部は、前記第1の移動体と前記第2の移動体の時間差により、前記起動信号の受信通知を受けてから前記タグ送信部と前記リーダ受信部が通信可能な位置関係になるタイミングを判断し、当該タイミングで前記応答信号の送信を開始する送信タイミング制御手段を備えた
ことを特徴とする無線タグシステム。
【請求項7】
請求項4または請求項6に記載の無線タグシステムにおいて、
前記第1の移動体と前記第2の移動体は、所定の時間差で移動する1台の移動体で実現する構成である
ことを特徴とする無線タグシステム。
【請求項8】
請求項1に記載の無線タグシステムにおいて、
前記リーダ受信部は、前記応答信号を受信する2つの受信手段およびその受信信号をダイバーシチ合成する手段を備えた構成である
ことを特徴とする無線タグシステム。
【請求項9】
請求項1に記載の無線タグシステムにおいて、
前記タグ送信部は、前記応答信号を所定の送信周期で繰り返し送信する構成である
ことを特徴とする無線タグシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−84064(P2012−84064A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231642(P2010−231642)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】