説明

無線タグ復号方法

【課題】データの種類に応じて確実に判定処理を行う無線タグ復号方法を提供する。
【解決手段】無線タグからの信号を受信して受信信号を出力し、受信信号を閾値と比較してハイまたはロウを判定し、受信信号から固定パターンを読み取る場合は、判定においてハイと判定された際の受信レベルに対して所定比率のレベルを、判定のための新たな閾値として変更し、受信信号からのマンチェスタ符号を復号する場合は、閾値を固定された値の閾値に決定し、判定において受信信号からマンチェスタ符号を復号する場合にハイまたはロウ以外であると判定した場合は、無線タグが複数であってコリジョンが発生していると判断する無線タグ復号方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、無線タグからの信号を確実に復号処理する無線タグ復号方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無線タグからの信号を読み取ったり、無線タグにデータを書き込んだりする無線タグリーダライタ装置が、特に商品流通分野等において開発され利用されている。このような無線タグリーダライタ装置およびシステムにおいては、無線タグからの信号を受信した受信信号について閾値との大小関係を判定し、この判定結果に基づいて、受信信号を判定することが知られている。しかしながら、このような無線タグからの信号の判定処理において、エラー判定が生じることがあり、このエラー判定を回避するための様々な方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−253913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の無線タグ復号方法においては、受信信号を復号する際に、例えば、受信電力に応じて閾値を異ならせることが知られている。
しかしながら、データの種類に応じた復号処理、例えば、マンチェスタ符号化された信号を判定する際に、どのような理由からどのような閾値を用いるかについて、十分な記載がない。
本発明の実施形態は、データの種類に応じて確実に判定処理を行うことができる無線タグ復号方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
課題を解決するための一実施形態は、
無線タグからの信号を受信して受信信号を出力し、
前記受信信号を閾値と比較してハイまたはロウを判定し、
前記受信信号から固定パターンを読み取る場合は、前記判定においてハイと判定された際の受信レベルに対して所定比率のレベルを、判定のための新たな閾値として変更し、
前記受信信号からのマンチェスタ符号を復号する場合は、前記閾値を固定された値の閾値に決定し、
前記判定において前記受信信号からマンチェスタ符号を復号する場合にハイまたはロウ以外であると判定した場合は、前記無線タグが複数であってコリジョンが発生していると判断する、ことを特徴とする無線タグ復号方法である。
【発明の効果】
【0006】
このような特徴をもった無線タグ復号方法によれば、SOFやEOFの領域の固定パターンを読み取る場合は、判定においてハイと判定された際の受信レベルに対して所定比率(1/2等)のレベルを新たな閾値として判定する一方で、マンチェスタ符号を復号する際は固定値の閾値を用いることで、コリジョンの発生を確実に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施形態であるRFIDリーダライタ装置の一例を示す説明図。
【図2】同じくRFIDリーダライタ装置におけるマンチェスタ符号による受信のコリジョン検出を示す説明図。
【図3】同装置における受信信号の鈍りを示す説明図。
【図4】同装置における受信データフォーマットの一例を示す説明図。
【図5】同装置におけるSOFとEOFの符号化パターンを示す説明図。
【図6】同装置における複数タグの受信における不具合の一例を示す説明図。
【図7】同装置における可変閾値を算出するためのフローチャート。
【図8】同装置における2枚のタグが応答した場合の受信レベルを示す説明図。
【図9】同装置における2つの閾値を用いた復号処理を示す説明図。
【図10】同装置における受信レベルの差分を用いた復号処理を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照してこの発明に係わる実施形態を説明する。
本発明の一実施形態に係る無線タグ読取装置1は、図1に示すように、ネットワーク等を介して外部装置の一例であるホストコンピュータ2に接続されており、全体の動作を制御する制御部であるCPU11と、CPU11に接続されておりアプリケーションプログラム等を記憶しているFROM12と、過去に使用した情報等を記憶している記憶領域であるRAM13を有している。
【0009】
さらに、無線タグ読取装置1は、上述したCPU11にそれぞれ接続される、上述したホストコンピュータ2と通信を行なって文字情報等を取得する通信部16と、読出部でありRFIDタグTと無線通信を行なってID情報等を読み取るアンテナ17と、読出部でありRFIDタグTとアンテナ17を介して無線通信を行なってID情報等を以下に詳述するように復号するRFID送受信部18と、各部への電源を供給する電源回路22と、電源回路22に電源を供給するバッテリ23を有している。
【0010】
次に、以下に、上述した無線タグ読取装置1のRFID送受信部18が行う復号処理の具体的な方法を、図面を参照して詳細に説明する。無線タグ読取装置1における復号処理方式は、以下の3種類がある。
1)固定パターンの信号を受信する場合の閾値の決定方法(可変閾値)
2)複数枚の無線タグTの受信を行う必要がある場合の可変パターン信号を復号する際の閾値の決定方法(固定閾値)
3)1枚のみの無線タグTの受信の場合の差分復号方式(閾値を使用しない)。
【0011】
また、RFID送受信部18においては、マンチェスタ符号によるコリジョン検出が行われる。図2は、マンチェスタ符号による受信のコリジョン検出を示す説明図である。RFIDタグ規格ISO15693では、複数枚の応答をコリジョン(輻輳)として検出するために、マンチェスタ符号化を採用している。図2(a)や(b)では、コリジョンが発生していないが、図2の(c)では、複数のタグが異なるデータを応答した場合、通常では現れない受信パターンになるため、RFID送受信部18では、コリジョンを検出することができる。
【0012】
また、RFID送受信部18において、受信回路の特性上受信レベルがハイからロウに落ちるまで、時間がかかってしまう。そのためロウであるはずのところの受信レベルが上がってしまう。図3は、受信信号の鈍りを示す説明図である。図3の(a)または(b)に示すように、ハイの受信レベルが大きいほど、ロウの受信レベルに影響が出ることがわかる。
【0013】
従って、マンチェスタ符号の復号処理を、受信レベルの閾値を使ったハイ/ロウ判定で行う場合、受信レベルの大きなタグを受信すると、ロウをハイと誤判定する可能性がある。こうなるとRFID送受信部18は、コリジョンが発生したものと誤判定を行ってしまう。また、閾値を大きくすると、受信レベルの小さいタグを検出できなくなる。
【0014】
また、RFID送受信部18が受信する受信信号のフォーマットを図4に示す。
RFID送受信部18は、図4に示す固定パターンであるSOF(Start Of Frame)とEOF(End Of Frame)を検出することにより、受信データの開始と終了を判別している。SOF検出後、データ受信モードへ移行しデータをデコードする、EOF検出で受信終了とする。また、CRCはデータ部の計算値であり、受信時にチェックすることによりデータ化けを検出する。また図5は、図4に示すEOFおよびSOFのパターンを示す説明図である。
【0015】
RFIDタグTは、固有の識別番号であるUID(Unique IDentification)を持っている。このUIDとコリジョン検出を組み合わせることにより、複数枚の応答を処理するためのコマンドがインベントリ(Inventory)コマンドである。RFIDタグTは、無線タグ読取装置1からインベントリ(Inventory)コマンドを受信すると、保持しているUIDを上記データフォーマットのデータ部に載せて応答する。
【0016】
SOF/EOFは固定パターンなので、全タグが同じパターンで応答する。UID部は各タグで固有の番号なので、複数のタグの応答を比べると、必ず1ビット以上違う場所がある。この違いにより、複数タグが応答した場合必ずコリジョンとして検出できる仕組みとなっている。
既存のシステムでは、受信レベルの閾値が固定だったため、閾値を受信レベルの低いほうに合わせ、できるだけ、検出率を上げる方向にしている。
【0017】
しかし、図6の(a)、(b)、(c)、(d)に示すように、複数のタグが応答を返した場合、受信信号の鈍りにより、図6の(e)に示すように、SOF後半のロウがハイに見えてしまうという不具合が生じる。
【0018】
(固定パターン信号に対する閾値決定方法)
本発明の一実施形態である、無線タグ読取装置1のRFID送受信部18の復号処理においては、固定パターンの信号(例えばSOF/EOFなど)について、受信レベルの大小にかかわらずに安定して復号でき、また、複数タグの応答を受信しても安定して復号でき、誤検出をしないことを目的として、以下に説明するように、閾値を可変にして判定処理を行うものである。
【0019】
SOF/EOF、すなわち固定パターンの信号を受信する場合、RFID送受信部18の復号処理においては、図7のフローチャートに示すように、受信データを復号するときの閾値を、受信レベルにあわせてダイナミックに変化させる。これにより、受信レベルの小さなタグも、受信レベルの大きなタグも安定して検出できるようにする。また、ノイズをタグの応答と区別するために、最小閾値を設定して閾値が小さくなりすぎないようにする。
【0020】
すなわち、RFID送受信部18は、最初に閾値を最小の閾値minとし(ステップS11)、これにより、アンテナ17から与えられる受信信号の受信レベルを判断する(ステップS12)。このときの閾値minとは、ノイズを誤って“ハイ”と判定しない程度の大きさをもった閾値である。ステップS12において受信レベルが閾値に満たなければ、信号は“ロウ”であると判断して、その後、閾値を変更することなく復号処理を継続する(ステップS14)。
【0021】
しかし、ステップS12において受信レベルが閾値を越えれば、RFID送受信部18は、信号は“ハイ”であると判定する(ステップS15)。ここで、閾値min<“受信レベルの所定比率”であれば(一例として、“受信レベルの所定比率”=受信レベル/2とすれば)、閾値min<受信レベル/2であれば、閾値=受信レベル/2へと変更する(ステップS16)。なお、所定比率は、1/2以外の適切な値でかまわない。また、ここで、閾値min<受信レベル/2でなければ、閾値=閾値minのままとする(ステップS17)。ここで、受信が終了であれば閾値も完了するが、受信が継続すればステップS12に戻って、再び、状況に応じて閾値を可変していくものである(ステップS18)。
【0022】
すなわち、SOF/EOFのような固定パターンの信号を復号する場合、上記のように閾値を可変制御することにより、例えば図6に示すような判定エラーが発生することなく、復号処理を確実に行うことができる。
【0023】
(可変パターン信号に対する閾値決定方法)
また、本発明の一実施形態である、無線タグ読取装置1のRFID送受信部18の復号処理においては、可変パターンの信号、特にマンチェスタ符号より符号化された信号(例えばデータ部におけるUIDなど)について、複数タグの応答を受信した際に、各タグからの信号の受信レベルの大小にかかわらずに、確実にコリジョン検出を行うことを目的として、以下に説明するように、閾値を固定にして判定処理を行うものである。
【0024】
図8は、(a)のグラフが示すように、ハイレベルが高めのタグAと、ハイレベルが低めのタグBの受信レベルが、
“ハイ,ハイ”、“ロウ,ロウ”、“ハイ,ハイ”、“ロウ,ロウ”、“ハイ,ロウ”、“ロウ,ハイ”、“ロウ,ロウ”、“ハイ,ハイ”、“ロウ,ハイ”、“ハイ,ロウ”、“ハイ,ハイ”
のように順々に推移していく場合、RFID送受信部18が正しい判定結果を得られるかどうかを示している。
【0025】
ここで、上述した閾値を可変させる決定方法により閾値を制御した場合、図8の(b)に示すように、8番目の“ハイ,ハイ”から9番目の“ロウ,ハイ”へと推移した場合E1において、タグBはハイであるにも関わらず、タグBのハイのレベルが低いことからロウであるとエラー判定してしまっていることがわかる。
【0026】
そこで、本発明では、マンチェスタ符号化された信号の復号処理について、上記閾値を固定とした復号処理を行う。固定した閾値とすると、固定される閾値を超えるレベルの信号は全てハイと判定されるため、本来のデータとは異なる判定結果となる場合がある。しかしこの場合には、連続してハイが検出されることになるため、コリジョンが発生したものと判定される。よって、本来のデータ上ではコリジョンは発生していないものの、コリジョン発生の読みこぼしを確実に防止することが可能である。
【0027】
また、本来のデータとは異なる誤った判定結果によりコリジョン発生と判定された場合であっても、輻輳制御によりタグからの応答受信と復号処理が繰り返し実行されるため、誤った判定結果が発生しなくなるまで復号処理を繰り返すことが可能である。
【0028】
なお、固定される閾値としては、本来のデータがロウである信号について実用上十分な確からしさでロウと判定される値が用いられる。つまり、当該閾値が高いほど、誤った判定結果によるコリジョン検出を減らすことができるが、コリジョン発生の読みこぼしの可能性が大きくなる。一方、当該閾値が低いほど、誤った判定結果によるコリジョン検出は増加するが、コリジョン発生の読みこぼしの可能性を低くすることができる。
【0029】
(複数タグ読取りにおけるコリジョン検出)
次に、読み取ろうとするデータ領域に対応させて、上述の2つの閾値決定方法を組合せて閾値を変えていく手法を図9の例を参照して、以下に説明する。
【0030】
複数タグの検出については、ISO15693の輻輳制御で応答するタグをふるいにかけていくと、最終的に1枚ずつの応答になるので、SOF/EOFの検出率アップと、データ部のコリジョンを読みこぼさないことが重要になる。
【0031】
従って、固定パターンであるSOF/EOFに対しては、図9に示すように、輻輳制御によりフォロー可能な判定結果を得ることができるので、図7のフローチャートで上述した可変閾値で対応することがよい。
【0032】
一方、データ部に対しては、図9に示すように、複数タグのデータの組み合わせにより、色々な受信レベルが混在してしまうので、可変閾値を使うことにより、ハイがロウに見えてしまう場合(図9のE2)がある。ハイがロウに見えると、読みこぼしの原因になるので、閾値を閾値minに固定することにより、ロウがハイに見えてコリジョン判定になってでも、読みこぼしをなくすようにすることが好適である。
【0033】
(単一タグの読取り:差分復号方式)
UID指定のコマンドでは、必ず1枚のタグからしか応答がないはずなので、データ部でコリジョンを検出する必要がない。従って、無線タグ読取装置1から、読み取るべき無線タグのUIDを指定してコマンドを実行する場合、データ部の読取りについては、受信レベルの差分を利用して、以下の条件(差分法)でマンチェスタ復号処理を行うことが好適である。すなわち、無線タグ読取装置1のCPU11は、UID指定のコマンドにより復号処理を行う際は、
1)閾値は、閾値minに固定して、ハイ/ロウ判定を行う。
2)図10の(a)、(b)のように、正常のパターン[ハイ、ロウ]と[ロウ、ハイ]はそのまま、検出結果に応じて、[ハイ、ロウ]を符号=0、[ロウ、ハイ]を符号=1に復号する。
3)図10の(c)、(d)のような異常のパターン[ハイ、ハイ]と
図10の(e)、(f)のような異常のパターン[ロウ、ロウ]の場合は、コリジョンやデータ無しではなく、受信レベルを比較し、符号0/1を判定する。すなわち、
受信レベル1≧受信レベル2の場合: 符号=0とし、
受信レベル1<受信レベル2の場合: 符号=1とする。
こうすることにより、確実な判定処理を行うことができる。
【0034】
なお、UID指定のコマンドにより単一のタグからの受信信号を復号する場合、SOF/EOFデータについては、上述の可変閾値を用いて復号を行い、データ部については上述の差分復号方式を用いて復号を行う方法を用いるのが好ましい態様である。
【0035】
このように、読み出そうとする無線タグが単数であるか複数であるかによって、復号処理を異ならせることが好適である。
すなわち、複数のタグの応答を検出する必要が有る場合は、固定パターンのSOF/EOFに対しては、可変閾値を採用することにより検出率をアップすると共に、可変パターンのデータ部に対しては、固定閾値を採用することにより確実なコリジョン検出を行う。このように、可変と固定の2種類の閾値を使用することにより、SOF/EOFの検出率を落とすことなく、かつ、コリジョンを取りこぼさないようにできる。
【0036】
必ず1枚のタグからの応答しかないことが分かっている場合は、コリジョンの検出が必要ないので、上述した受信レベルの差分法を使用することにより、微小な受信データを検出することができる。
【0037】
なお、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施可能である。要するにこの発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1…無線タグリーダライタ装置、2…ホストコンピュータ、11…CPU、17…アンテナ、18…RFID送受信部、T…RFIDタグ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線タグからの信号を受信して受信信号を出力し、
前記受信信号を閾値と比較してハイまたはロウを判定し、
前記受信信号から固定パターンを読み取る場合は、前記判定においてハイと判定された際の受信レベルに対して所定比率のレベルを、判定のための新たな閾値として変更し、
前記受信信号からのマンチェスタ符号を復号する場合は、前記閾値を固定された値の閾値に決定し、
前記判定において前記受信信号からマンチェスタ符号を復号する場合にハイまたはロウ以外であると判定した場合は、前記無線タグが複数であってコリジョンが発生していると判断する、ことを特徴とする無線タグ復号方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−175629(P2012−175629A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38345(P2011−38345)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】