説明

無線タグ通信装置及び印刷物作成システム

【課題】対象物が正当な操作者によって取り扱われたことを正しく証明する。
【解決手段】リーダ200は、無線タグTと無線通信を介し情報送受信を行うためのアンテナ203と、操作者がパスワードを操作入力するための操作部206とを有し、IC回路部150に記憶した操作者の署名(サイン)や氏名を印字するための個人印字データ及びパスワードをアンテナ203を介して取得し、取得したパスワードと操作部206で操作入力したパスワードとの適合・不適合を判定し、その判定結果に応じて、上記取得した個人印字データを印刷装置300へ出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線タグに対し情報読み取りを行う無線タグ通信装置、及びこれを備えた印刷物作成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばスーパーマーケットや小売店で販売する商品には、商品単価などを含む各種情報を印刷した印刷物(ラベルなど)が貼り付けられているこが多い。このようなラベルにおいて、生鮮食料品などの品質確保を目的に、商品取扱者(ラベル作成操作者)を識別するための情報(氏名等)を印字するようにした従来技術が知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−192771号公報(図10)
【特許文献2】特開2007−156952号公報(図16)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来技術においては、実際には、テキスト表示された氏名の人物とは異なる人物が操作して印刷物(ラベル)を印刷し対象物(商品)に貼り付ける、いわゆる「なりすまし」行為が可能である。このため、対象物が、表示された正当な操作者によって取り扱われたどうかを証明するのは、困難であった。
【0004】
本発明の目的は、対象物が正当な操作者によって取り扱われたことを正しく証明できる無線タグ通信装置、及び、これを用いた印刷物作成システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、第1の発明は、操作者に付随され、情報を記憶するIC回路部と情報の送受信を行うタグアンテナとを備えた無線タグに対し、情報読み取りを行うための無線タグ通信装置であって、前記無線タグと無線通信を介し情報送受信を行うための装置アンテナと、前記IC回路部に記憶された、前記操作者の個人識別情報を印字するための個人印字データと、パスワードとを、前記装置アンテナを介して取得する情報取得手段と、前記操作者がパスワードを操作入力するための操作手段と、前記情報取得手段で取得されたパスワードと、前記操作手段で操作入力されたパスワードとの、適合・不適合を判定する判定手段と、前記判定手段で前記適合と判定された場合に、前記情報取得手段で取得した前記個人印字データを、印刷装置へ出力する印字データ転送手段とを有することを特徴とする。
【0006】
本願第1発明の無線タグ通信装置は、操作者が無線タグに対し情報読み取りを行わせることにより、操作者本人であることを認証する印刷物を作成するためのものである。無線タグには、操作者の個人印字データと、パスワードとが記憶されており、上記操作者による情報読み取りによって、これらは情報取得手段により取得される。その後、操作者がパスワードを操作手段を介して入力することで、その入力したパスワードと、上記情報取得手段で取得されたパスワードとが照合され、判定手段によってその適合・不適合が判定される。そして、この判定結果に応じて、上記情報取得手段で取得された個人印字データが印刷装置へと出力される。この結果、印刷装置では、入力した個人印字データに基づき、対応する個人識別情報を印字した印刷物を作成する。
【0007】
これにより、例えば操作者により入力されたパスワードと無線タグに記憶されていたパスワードとが適合したときのみ、上記印刷物を作成することができる。さらに、操作者により入力されたパスワードと無線タグに記憶されていたパスワードとが不適合と判定された場合には、その旨を表すエラーメッセージ等の印字データを印刷装置に出力し、当該エラーメッセージ等を含む印刷物しか作成できないようにすることもできる。いずれの場合も、パスワードを知っている操作者本人が無線タグを読み取らせない限り、正当な印刷物は作成されないので、正当な印刷物の作成によって当該操作者本人であることを認証することができる。この結果、作成された正当な印刷物を対象物に設けることで、その対象物が確かに当該操作者によって取り扱われたことを正しく証明することができる。
【0008】
第2発明は、上記第1発明において、前記情報取得手段は、前記個人印字データとして、前記操作者の自筆による署名イメージデータを前記装置アンテナを介して取得し、前記印字データ転送手段は、前記署名イメージデータを前記印刷装置へ出力することを特徴とする。
【0009】
本願第2発明においては、無線タグに操作者の自筆による署名のイメージデータを記憶させておき、その署名イメージを読み取らせて印刷装置へ出力する。これにより、パスワードを知っている操作者本人が無線タグを読み取らせた場合に限り、操作者の自筆署名を印字した印刷物を作成することができ、操作者の実際の署名の代わりに用いることができる。この結果、さらに確実に印刷物の偽造防止を図ることができ、本人認証機能を向上させることができる。
【0010】
第3発明は、上記第1発明において、前記情報取得手段は、前記個人印字データとして、前記操作者の氏名を表す氏名テキストデータを前記装置アンテナを介して取得し、前記印字データ転送手段は、前記氏名テキストデータを前記印刷装置へ出力することを特徴とする。
【0011】
これにより、パスワードを知っている操作者本人が無線タグを読み取らせた場合に限り、操作者の氏名を印字した印刷物を作成することができる。この結果、操作者の自筆署名を印字した印刷物を作成する場合のような(操作者の個人情報である)自筆署名の流出を防止しつつ、一定の本人認証機能を得ることができる。
【0012】
第4発明は、上記第1乃至第3発明のいずれかにおいて、現在時刻を計時する第1計時手段を有し、前記印字データ転送手段は、前記印刷装置への出力時に前記第1計時手段で計時した時刻データを、前記個人印字データとともに前記印刷装置へ出力することを特徴とする。
【0013】
これにより、印刷装置で正当な印刷物を作成するときに、操作者の認証時刻(操作者が無線タグを読み取らせた時刻)を併せて印刷物に印字することができる。この結果、対象物が確かに当該操作者によって取り扱われたことを時間的にも証明することができる。
【0014】
上記目的を達成するために、第5発明は、操作者に付随され、情報を記憶するIC回路部と情報の送受信を行うタグアンテナとを備えた無線タグに対し、情報読み取りを行うための無線タグ通信装置と、前記無線タグ通信装置による情報読み取り内容に対応した印刷物の作成を行う印刷装置とを有する印刷物作成システムであって、前記無線タグ通信装置は、前記無線タグと無線通信を介し情報送受信を行うための装置アンテナと、前記IC回路部に記憶された、前記操作者の個人識別情報を印字するための個人印字データと、記憶パスワードとを、前記装置アンテナを介して取得する情報取得手段と、前記操作者が入力パスワードを操作入力するための操作手段と、前記情報取得手段で取得された前記記憶パスワードと、前記操作手段で操作入力された前記入力パスワードとの、適合・不適合を判定する判定手段と、前記判定手段での判定結果に応じて、前記情報取得手段で取得した前記個人印字データを、前記印刷装置へ出力する印字データ転送手段とを有し、前記印刷装置は、前記個人印字データに基づき、前記個人識別情報を被印刷物に印字し、前記印刷物を作成することを特徴とする。
【0015】
本願第5発明の印刷物作成システムは、操作者が無線タグ通信装置を用いて無線タグに対し情報読み取りを行わせることにより、操作者本人であることを認証する印刷物を印刷装置で作成するものである。無線タグには、操作者の個人印字データと、パスワードとが記憶されており、上記操作者による情報読み取りによって、これらは無線タグ通信装置の情報取得手段により取得される。その後、操作者がパスワードを無線タグ通信装置の操作手段を介して入力することで、その入力したパスワードと、上記情報取得手段で取得されたパスワードとが照合され、判定手段によってその適合・不適合が判定される。そして、この判定結果に応じて、上記情報取得手段で取得された個人印字データが無線タグ通信装置から印刷装置へと出力される。この結果、印刷装置は、入力した個人印字データに基づき、対応する個人識別情報を被印刷物に印字して印刷物を作成する。
【0016】
これにより、例えば操作者により入力されたパスワードと無線タグに記憶されていたパスワードとが適合したときのみ、上記印刷物を作成するようにすることができる。あるいは、操作者により入力されたパスワードと無線タグに記憶されていたパスワードとが不適合と判定された場合には、その旨を表すエラーメッセージ等の印字データを印刷装置に出力し、当該エラーメッセージ等を含む印刷物しか作成できないようにすることもできる。いずれの場合も、パスワードを知っている操作者本人が無線タグ通信装置で無線タグを読み取らせない限り、印刷装置は正当な印刷物を作成しないので、正当な印刷物の作成によって当該操作者本人であることを認証することができる。この結果、作成された正当な印刷物を対象物に設けることで、その対象物が確かに当該操作者によって取り扱われたことを正しく証明することができる。
【0017】
第6発明は、上記第5発明において、前記無線タグ通信装置の前記情報取得手段は、前記個人印字データとして、前記操作者の自筆による署名イメージデータを前記装置アンテナを介して取得し、前記無線タグ通信装置の前記印字データ転送手段は、前記署名イメージデータを前記印刷装置へ出力し、前記印刷装置は、前記署名イメージデータに基づき、前記操作者の自筆による署名イメージを前記被印刷物に印字することを特徴とする。
【0018】
本願第6発明においては、無線タグに操作者の自筆による署名のイメージデータを記憶させておき、その署名イメージを無線タグ通信装置で読み取らせて印刷装置へと出力する。これにより、パスワードを知っている操作者本人が無線タグ通信装置を用いて無線タグを読み取らせた場合に限り、操作者の自筆署名を印字した印刷物を印刷装置で作成することができ、操作者の実際の署名の代わりに用いることができる。この結果、さらに確実に印刷物の偽造防止を図ることができ、本人認証機能を向上させることができる。
【0019】
第7発明は、上記第5発明において、前記無線タグ通信装置の前記情報取得手段は、前記個人印字データとして、前記操作者の氏名を表す氏名テキストデータを前記装置アンテナを介して取得し、前記無線タグ通信装置の前記印字データ転送手段は、前記氏名テキストデータを前記印刷装置へ出力し、前記印刷装置は、 前記氏名テキストデータに基づき、前記操作者の氏名を前記被印刷物に印字することを特徴とする。
【0020】
これにより、パスワードを知っている操作者本人が無線タグ通信装置を用いて無線タグを読み取らせた場合に限り、操作者の氏名を印字した印刷物を印刷装置で作成することができる。この結果、操作者の自筆署名を印字した印刷物を作成する場合のような(操作者の個人情報である)自筆署名の流出を防止しつつ、一定の本人認証機能を得ることができる。
【0021】
第8発明は、上記第5乃至第7発明のいずれかにおいて、現在時刻を計時する第2計時手段を有し、前記印刷装置は、前記第2計時手段で計時した時刻データに基づく現在時刻情報を、前記個人印字データに基づく前記個人識別情報とともに前記被印刷物に印字し、前記印刷物を作成することを特徴とする。
【0022】
これにより、印刷装置が正当な印刷物を作成するときに、当該印刷物の作成時刻を併せて印刷物に印字することができる。この結果、対象物が確かに当該操作者によって取り扱われたことを時間的にも証明することができる。
【0023】
第9発明は、上記第5乃至第8発明のいずれかにおいて、前記印刷装置は、前記無線タグ通信装置の前記データ転送手段から転送された前記個人印字データを入力するデータ入力手段と、ラベル媒体を搬送するための搬送手段と、前記被印刷物としての、前記搬送手段で搬送される前記ラベル媒体か、若しくは、前記ラベル媒体に貼り合わされる被印字媒体に対し、前記データ入力手段で入力した前記個人印字データに基づき前記個人識別情報の印字を行う印字手段とを備え、前記印刷物として、対象物に貼り付け可能な印字ラベルを作成する印字ラベル作成装置であることを特徴とする。
【0024】
本願第9発明においては、印刷装置として印字ラベル作成装置が用いられ、印刷物として印字ラベルが作成される。すなわち、印字ラベル作成装置では、搬送手段でラベル媒体が搬送され、そのラベル媒体(又はラベル媒体に貼り合わされる被印字媒体)に対し、印字手段が、データ入力手段で入力された個人印字データに対応した個人識別情報の印字を行い、印字ラベルを作成する。これにより、パスワードを知っている操作者本人が無線タグを読み取らせた場合に限り、個人識別情報が印字された正当な印字ラベルを作成することができる。この結果、作成された正当な印字ラベルが対象物に貼り付けられていれば、その対象物が確かに当該操作者によって取り扱われたことを正しく証明することができる。特に、食料品等の生産者証明や、製造物の製造者・運搬者・取扱者等の証明等において有効である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、対象物が正当な操作者によって取り扱われたことを正しく証明することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0027】
図1は、本実施形態の印字ラベル作成システムLS(印刷物作成システム)の全体構成を表すシステム構成図である。本実施形態は、作成する印字ラベルLを貼り付ける対象物が、スーパーマーケットや小売店等で販売される食品である場合の例である。すなわち、上記食品を取り扱った(食品の販売、製造、運搬等の行為をすべて含む。以下同様)者が、自らの署名(サイン)又は氏名を印字した印字ラベルLを作成し、食品の包装表面に貼られた商品表示ラベル(後述の図11参照)の所定部位に貼り付ける。これにより、当該食品が自身によって取り扱われたことを証明するようになっている。
【0028】
図1において、印字ラベル作成システムLSは、ラベル作成装置300と、リーダ200(無線タグ通信装置)とを有している。
【0029】
ラベル作成装置300は、上記食品の取扱者(以下、操作者という)の操作により、搬送されるラベルテープ303(後述の図4参照)に対し所望の印字を行い、印字ラベルL(印刷物)を作成する。
【0030】
リーダ200は、無線タグTに設けられ、情報を記憶するIC回路部150と情報の送受信を行うタグアンテナ151とを備えた無線タグ回路素子Toに対し、アンテナ203(装置アンテナ)を介して情報読み取りが可能となっている(さらに情報書き込みを可能としてもよい)。
【0031】
上記ラベル作成装置300とリーダ200は、接続手段2(例えばUSBケーブル、又は適宜の無線通信等でもよい)を介して情報送受信可能に接続されている。これにより、リーダ200のアンテナ203を介して読み取られた情報(詳細は後述)は、ラベル作成装置300に接続手段2を介して出力されるようになっている。また、リーダ200には、操作者が自ら自己のパスワードを操作入力するための、例えば適宜のボタン等からなる操作部206(操作手段)を備えている。
【0032】
上記リーダ200による読み取り対象となる無線タグTは、例えば上記操作者がIDカードや名札のような態様で所持しているものである(あるいは操作者の所持品に設けられている等でもよく、いずれにしても操作者に付随していれば足りる)。この無線タグTとしては、上記IDカードや名札等のほか、例えば上記印字ラベルLと同様のラベル形状である、無線タグラベルThを用いることもできる。図2(a)及び図2(b)は、無線タグ回路素子Toを備えたその無線タグラベルThの外観の一例を表す上面図及び下面図であり、図3は、図2中III−III′断面による横断面図である。
【0033】
これら図2(a)、図2(b)、及び図3において、無線タグラベルThは、無線タグ回路素子Toを内包する5層構造となっている。すなわち、上面(図3中上側)より下面側(図3中下側)へ向かって、例えばPET(ポリエチレンテレフタラート)等から構成されたカバーフィルム103と、適宜の粘着材からなる粘着剤層101haと、上記同様PET(ポリエチレンテレフタラート)等から構成された、無線タグ回路素子Toを配置するための基材層101hbと、適宜の粘着材から構成され、基材層101hbを貼り付け対象(例えば社員IDカード)に貼り付けるための粘着剤層101hcと、剥離紙101hdとで5層が構成されている。
【0034】
ベースフィルム101hbの裏側(図3中下側)には、情報の送受信を行うアンテナ151が一体的に設けられており、これに接続するように情報を記憶するIC回路部150が形成され、これによって無線タグ回路素子Toが構成されている。カバーフィルム103の裏面には、印字R(この例では「名古屋太郎」の文字)が印刷されている。剥離紙101hdは、最終的にラベル状に完成した無線タグラベルThが上記貼り付け対象に貼り付けられる際に、これを剥がすことで粘着剤層101hcにより当該貼り付け対象に接着できるようにしたものである。このように、情報読み取りを行う無線タグTとして無線タグラベルThを用いる場合、読み取り装置200で無線タグ回路素子Toからの情報読み取りを行わせ、印字ラベルLを作成する。
【0035】
図4は、印字ラベル作成システムLSの機能構成を表す機能ブロック図である。
【0036】
図4において、リーダ200は、上記無線タグTが有する無線タグ回路素子Toに対し無線通信を介し情報送受信を行うための上記アンテナ203と、このアンテナ203を介して無線タグ回路素子Toに対し情報読み取りを行い、無線タグ回路素子ToのIC回路部150に記憶された情報を取得する高周波回路204と、ラベル作成装置300との間で上記接続手段2を介し情報通信(シリアル通信等)を行うためのインターフェース205と、上記操作部206と、制御回路207と、現在時刻を計時するためのタイマー208(第1計時手段)とを有している。
【0037】
ラベル作成装置300は、ラベルテープ303(ラベル媒体。なお、ラベルテープ303に上記カバーフィルムのような被印字媒体を貼り合わせたものでもよい)を巻回したラベルテープロール304(本来は渦巻であるが簡略化して同心円で図示している)と、このラベルテープロール304から繰り出されたラベルテープ303の対応する印字領域S(後述の図10(a)及び図10(b)参照)に所定の印字(後述)を行う印字ヘッド305(印字手段)と、ラベルテープ303を搬送するための搬送ローラ308(搬送手段)と、印字が終了したラベルテープ303を所定の長さに切断して前述の印字ラベルLとするカッタ307と、上記リーダ200と接続手段2を介し情報通信を行うためのインターフェース309と、以上の印字ヘッド305、カッタ307、搬送ローラ308等の制御を行う制御回路311とを有している。
【0038】
なお、上記ではリーダ200が高周波回路204を有する構成としたが、これに限られず、高周波回路204についてはラベル作成装置300に設け、アンテナ203に対応する部分のみをリーダ200として設ける構成でもよい。
【0039】
図5は、上記リーダ200の高周波回路204の詳細構成を表す機能ブロック図である。
【0040】
この図5において、高周波回路204は、上記アンテナ203を介し無線タグTの無線タグ回路素子ToのIC回路部150の情報へアクセスするものであり、アンテナ203を介し無線タグTの無線タグ回路素子Toに対して信号を送信する送信部142と、アンテナ203により受信された無線タグ回路素子Toからの応答波を入力する受信部143と、送受分離器144とから構成される。
【0041】
送信部142は、無線タグ回路素子ToのIC回路部150の無線タグ情報にアクセスするための質問波を生成するブロックである。すなわち、送信部142は、周波数の基準信号を出力する水晶振動子145Aと、制御回路207の制御により水晶振動子145Aの出力を分周/逓倍して所定周波数の搬送波を発生させるPLL(Phase Locked Loop)145B及びVCO(Voltage Controlled Oscillator)145Cと、上記制御回路207から供給される信号に基づいて上記発生させられた搬送波を変調(この例では制御回路207からの「TX_ASK」信号に基づく振幅変調)する送信乗算回路146(振幅変調の場合は増幅率可変アンプ等を用いてもよい)と、その送信乗算回路146により変調された変調波を増幅(この例では制御回路207からの「TX_PWR」信号によって増幅率を決定される増幅)して所望の質問波を生成する可変送信アンプ147とを備えている。そして、上記発生される搬送波は、例えばUHF帯(又はマイクロ波帯、あるいは短波帯でもよい)の周波数を用いており、上記可変送信アンプ147の出力は、送受分離器144を介しアンテナ203に伝達されて無線タグ回路素子ToのIC回路部150に供給される。なお、質問波は上記のように変調した信号(変調波)に限られず、単なる搬送波のみの場合もある。
【0042】
受信部143は、アンテナ203で受信された無線タグ回路素子Toからの応答波と上記搬送波とを乗算して復調するI相受信乗算回路148と、そのI相受信乗算回路148の出力から必要な帯域の信号のみを取り出すためのI相バンドパスフィルタ149と、このI相バンドパスフィルタ149の出力を増幅するI相受信アンプ162と、このI相受信アンプ162の出力をさらに増幅してデジタル信号に変換するI相リミッタ163と、上記アンテナ203で受信された無線タグ回路素子Toからの応答波と上記搬送波が移相器167により位相を90°遅らせた信号とを乗算するQ相受信乗算回路172と、そのQ相受信乗算回路172の出力から必要な帯域の信号のみを取り出すためのQ相バンドパスフィルタ173と、このQ相バンドパスフィルタ173の出力を増幅するQ相受信アンプ175と、このQ相受信アンプ175の出力をさらに増幅してデジタル信号に変換するQ相リミッタ176とを備えている。そして、上記I相リミッタ163から出力される信号「RXS−I」及びQ相リミッタ176から出力される信号「RXS−Q」は、上記制御回路207に入力されて処理される。
【0043】
また、I相受信アンプ162及びQ相受信アンプ175の出力は、強度検出手段としてのRSSI(Received Signal Strength Indicator)回路178にも入力され、それらの信号の強度を示す信号「RSSI」が制御回路207に入力される。これにより、リーダ200では、無線タグ回路素子Toとの通信時における当該無線タグ回路素子Toからの信号の受信強度を検出することが可能となっている。
【0044】
図6は、上記無線タグTに備えられる無線タグ回路素子Toの機能的構成の一例を表す機能ブロック図である。
【0045】
この図6において、無線タグ回路素子Toは、上述したようにリーダ200のアンテナ203と非接触で信号の送受信を行う上記タグアンテナ151と、このタグアンテナ151に接続された上記IC回路部150とを有している。
【0046】
IC回路部150は、タグアンテナ151により受信された質問波を整流する整流部152と、この整流部152により整流された質問波のエネルギを蓄積し駆動電源とするための電源部153と、上記タグアンテナ151により受信された質問波からクロック信号を抽出して制御部157に供給するクロック抽出部154と、前述した操作者のパスワード155aや操作者の個人印字データ(後述)155b等を含む所定の情報信号を記憶し得るメモリ部155と、上記タグアンテナ151に接続された変復調部156と、上記メモリ部155、クロック抽出部154、及び変復調部156等を介し上記無線タグ回路素子Toの作動を制御するための上記制御部157と、を備えている。
【0047】
変復調部156は、タグアンテナ151により受信された上記リーダ200のアンテナ203からの質問波の復調を行い、また、上記制御部157からの返信信号を変調し、タグアンテナ151より応答波(タグIDを含む信号)として送信する。
【0048】
クロック抽出部154は受信した信号からクロック成分を抽出し、当該クロック成分の周波数に対応したクロックを制御部157に供給する。
【0049】
制御部157は、上記変復調部156により復調された受信信号を解釈し、上記メモリ部155において記憶された情報信号に基づいて返信信号を生成し、この返信信号を上記変復調部156により上記タグアンテナ151から返信する制御等の基本的な制御を実行する。
【0050】
上記のような無線タグ回路素子Toに対し、リーダ200により情報読み取りを行うことで、既に述べたように、上記メモリ部155に記憶した操作者の個人印字データ(後述)に基づきラベル作成装置300で対応する操作者の署名や氏名を印字した印字ラベルLを作成する。ここで、上記したように、メモリ部155には、操作者を識別するため操作者それぞれに固有に設定されるパスワード155aが記憶されており、上記情報読み取り時に、操作者がリーダ200の操作部206に入力したパスワードと、上記記憶されたパスワード155とが一致するかどうかが判定される。そして、それらが一致した場合に限り、上記個人印字データがラベル作成装置300へ送られるが、一致しなかった場合には上記個人印字データはラベル作成装置300へは送られない。したがって、ラベル作成装置300により操作者の署名や氏名を印字した印字ラベルLを作成できたことが、操作者本人が操作したことの証明(言い換えれば、当該食品を正当な取扱者が取り扱ったことの証明)となるのである。
【0051】
図7(a)は、前述の上記無線タグ回路素子Toからのアンテナ203を介した情報読み取り結果に応じて、リーダ200からラベル作成装置300へ接続手段を介し出力される信号(以下、リーダ出力信号と称する)の内容の一例を概念的に表す図である。
【0052】
図7(a)において、リーダ出力信号には、無線タグ回路素子Toから取得された、タグ識別情報としてのタグIDと、ラベル作成装置300に対しラベルテープ303に印字を行い印字ラベルLを作成するように指示するためのコマンドと、操作者の署名(サイン)に相当する印字を行うための個人印字データとが含まれている。個人印字データは、この例では、各操作者の肉筆署名をスキャンしたイメージデータをビットマップ形式としたものとなっている。これにより、ラベル作成装置300において印字ヘッド308によって上記の肉筆署名のイメージが、操作者の疑似署名(疑似サイン)としてラベルテープ303に印字されることとなる。
【0053】
また、リーダ出力信号にはさらに、上記無線タグ回路素子Toから取得された各情報に加え、前述のタイマー208により計測された現在時刻(=リーダ出力信号の送信時刻)の時刻情報データが含まれている。
【0054】
なお、上記個人印字データは、上記のようなビットマップ形式に限られない。例えば、ラベル作成装置300において印字ヘッド308によってラベルテープ303に印字するものが、(例えば明朝体やゴシック体等の通常のフォントを用いた)操作者の氏名テキストで足りる場合には、別の形式でよい。例えば、図7(b)に示すように、個人印字データを、ESC/P:Epson Standard Code for Printer(制御コード)と文字コード形式の氏名テキストデータとで構成する(以下、単に「氏名テキストデータ」という)ことができる。なおこの場合、ラベル作成装置300の制御回路311の構成が上記図7(a)のデータ構造の場合と異なる(後述の図9参照)。
【0055】
図8は、制御回路311の要部機能構成を表す機能ブロック図である。
【0056】
図8は、個人印字データがビットマップ形式である場合(上記図7(a)のデータ構造である場合)に対応しており、制御回路311は、印字バッファ部30bと、制御信号生成部30dとを備えている。
【0057】
印字バッファ部30bは、入出力インターフェース309から入力した上記ビットマップ形式のデータのうち、ビットマップデータを、上記印字バッファ部30bの所定の記憶領域に展開して印字駆動データとして記憶し一時的に保管する。なお、図示の例では、バッファ上の印字駆動データの一例として「A」の一文字を展開した場合を示している。
【0058】
制御信号生成部30dは、上記印字バッファ部30bの印字駆動データを読み取り、印字ヘッド305の制御信号を生成する。そして生成した制御信号を、印字ヘッド305へ出力する。これにより、印字ヘッド305が印字に対応するように通電され、ラベルテープ303の印字領域Sに対応する(この例では「A」、後述の例では操作者氏名「名古屋太郎」の肉筆イメージ)が印刷されるようになっている。
【0059】
この場合、リーダ200側からラベル作成装置300側へ転送するデータが、ビットマップデータと制御コードから構成され、これにより、パソコンやデジタルカメラ等の各種用途において広く汎用されているビットマップデータを、そのまま個人印字データとして無線タグ回路素子Toに記憶させて用いることができる。この結果、無線タグ回路素子Toに記憶させる際に予め特定のデータ形式に変換する必要がなく、利便性を向上することができる。
【0060】
一方、図9は、個人印字データが上記氏名テキストデータである場合(上記図7(b)のデータ構造である場合)に対応しており、制御回路311は、上記ESC/P形式で入力した文字コードを、対応する印字ヘッド305の印字駆動データに変換するデータ変換部30aをさらに備えている。印字バッファ部30bは、このデータ変換部30aでの変換により生成された印字駆動データを読み取り、印字ヘッド305の制御信号を生成する。そして生成した制御信号を、印字ヘッド305へ出力する。これにより、印字ヘッド305が印字に対応するように通電され、ラベルテープ303の印字領域Sに対応する(この例では「A」、後述の例では操作者氏名「名古屋太郎」の明朝体等のテキスト)が印刷されるようになっている。
【0061】
図10(a)は、上記のようにして作成された印字ラベルLの一例を表す図である。この例は、個人印字データがビットマップ形式である場合(上記図7(a)及び図8に対応)の例である。図示のように、印字領域Sに、肉筆署名の「名古屋太郎」のイメージが印字されている。すなわち、前述したように、無線タグ回路素子Toに肉筆署名のビットマップデータが記憶された無線タグTをリーダ200に読み取らせることで、ラベル作成装置300において肉筆署名の「名古屋太郎」が印字された印字ラベルLが作成される。なお、詳細を後述するように、印字領域Sには、上記ラベル作成時の時刻情報が取り扱い日時(この例では製造日時。以下同様)TMとして併せて印字される。
【0062】
図10(b)は、上記のようにして作成された印字ラベルLの他の例を表す図である。この例は、個人印字データが上記氏名テキストデータである場合(上記図7(b)及び図9に対応)の例である。図示のように、印字領域Sに、通常の明朝体やゴシック体等による「名古屋太郎」の氏名テキストが印字されている。すなわち、前述したように、無線タグ回路素子Toに氏名テキストに対応した文字コードが記憶された無線タグTをリーダ200に読み取らせることで、ラベル作成装置300において通常の氏名テキスト「名古屋太郎」が印字された印字ラベルLが作成される(上記同様、製造日時TMも印字される)。なお、このようなテキスト自体をイメージデータとして前述のようにビットマップ形式で無線タグ回路素子Toに記憶させることもでき、この場合も、図10(b)と同様の印字ラベルLを作成することができる。
【0063】
図11は、前述した商品表示ラベルの一例を表す図である。図11において、この例では、商品表示ラベルPに、「品名」(この例は「おにぎり」)、「賞味期限」(この例では「製造日より2日間」)、「製造会社」、「原材料名」の各欄が設けられ、対応する印字がなされている。また、ラベル最下段には、「取扱者」欄が設けられ、その右側に印字ラベルLを貼るための貼り付けスペースが設けられている。そして、食品を取り扱った操作者は、上記のようにして作成され、自分の署名(サイン)又は氏名が印字領域Sに印字された印字ラベルLを、当該貼り付けスペースに貼り付けるようになっている。
【0064】
なお、上記のように商品表示ラベルPの一部領域に印字ラベルLを貼り付けるのではなく、印字ラベルL自体に上記の各種商品表示(品名、賞味期限、製造会社、原材料名等)を印字し(あるいはそのうち一部は予めラベルテープ303に印刷してあってもよい)、上記商品表示ラベルPの機能を持たせるようにしてもよい。
【0065】
図12は、リーダ200の制御回路207により実行される制御手順を表す制御フローである。
【0066】
まず、ステップS310において、高周波回路204に制御信号を出力し、無線タグTの無線タグ回路素子ToのIC回路部150の情報を読み取るためのタグ読み取り信号を生成して、アンテナ203を介し、通信範囲内に存在する無線タグ回路素子Toに送信し、返信を促す。
【0067】
その後、ステップS320で、上記タグ読み取り信号に対応し無線タグTの無線タグ回路素子Toから送信(返信)された応答(リプライ)信号を、アンテナ203を介し受信する。
【0068】
そして、ステップS330において、上記受信したリプライ信号より、無線タグ回路素子ToのIC回路部150のメモリ部155に記憶されていた個人印字データ、パスワード、コマンド、タグID等を抽出して取得する(情報取得手段としての機能)。なお、この抽出及び情報取得はラベル作成装置300の制御回路311側で行う(すなわちリーダ200からラベル作成装置300側へは受信した情報をすべて転送する)ようにしてもよい。
【0069】
その後、ステップS331で、操作部206を介し操作者によるパスワードの操作入力があったか否かを判定する。パスワード入力がない間はループ待機し、パスワード入力があったら判定が満たされ、ステップS332に移行する。
【0070】
ステップS332では、上記ステップS330で取得されたパスワードと、上記ステップS331で操作入力されたパスワードとの合致・不一致(あるいは所定の規則性に沿った適合・不適合でもよい)を判定する(判定手段としての機能)。上記2つのパスワードが互いに合致しなかった場合は判定が満たされずにこのフローを終了し、合致した場合は判定が満たされ、ステップS333に移行する。
【0071】
ステップS333では、インターフェース205を介し、上記取得した個人印字データ、タグID、コマンドと、上記タイマー208で計時したこの時点での現在時刻情報とを、前述のリーダ出力信号(図7(a)や図7(b)参照)として、インターフェース205を介してラベル作成装置300へ転送する(印字データ転送手段としての機能)。その後、このフローを終了する。
【0072】
なお、上記ステップS332の判定が満たされなかった場合に、その旨を表すエラーメッセージ等の印字データをラベル作成装置300に出力し、当該エラーメッセージ等を含む印字ラベルLしか作成できないようにすることもできる。いずれの場合も、パスワードを知っている操作者本人が無線タグTを読み取らせない限り、正当な印字ラベルLは作成されない。
【0073】
ステップS333が完了したら、このフローを終了する。なお、上記のようにリーダ200の制御回路207の制御ではなく、ラベル作成装置300の制御回路311の制御に基づき、リーダ200の高周波回路204、アンテナ103、及びインターフェース205が上記の各動作を行うようにしてもよい(その場合、図12は上記各構成要素の動作フローを表すこととなる)。
【0074】
図13は、図12のフローに対応し、ラベル作成装置300の制御回路311によって実行される制御内容を表すフローチャートである。
【0075】
図13において、まず、ステップS334で、上記図12のステップS333においてリーダ200から転送された上記リーダ出力信号(個人印字データ、タグID、コマンドと、時刻情報とを含む)が、接続手段2を介し転送され入力されたか否かを判定する。リーダ200から信号が入力されていなければ判定が満たされずループ待機する。一方、リーダ200からデータが入力された場合には、判定が満たされ、次のステップS335に移る。
【0076】
ステップS335では、上記ステップS334で入力したリーダ出力信号に含まれる個人印字データ及び時刻情報に基づき、ラベルテープ303に対する印字内容を表す前述の印字駆動データを生成する。なお、このとき、個人印字データが上記氏名テキストデータである場合(上記図7(b)のデータ構造である場合)には、前述した上記データ変換部30aの機能(図9参照)により、ステップS334で入力した個人印字データに含まれるESC/P形式の文字コードを、対応する印字ヘッド305の印字駆動データに変換する。
【0077】
その後、ステップS400に移り、上記ステップS334で入力したコマンドに基づきラベル作成処理を実行し(詳細内容は後述の図14参照)、上記ステップS335で生成した印字駆動データにより、ラベルテープ303の印字領域Sに操作者自身の署名(サイン)又は氏名と、製造日時TMとを印字し、印字ラベルLを作成する。その後、このフローを終了する。
【0078】
図14は、上記ステップS400の詳細手順を表すフローチャートである。
【0079】
まずステップS410において、搬送ローラ308を駆動する搬送用モータ(図示せず)に制御信号を出力し、その駆動力によってラベルテープロール304からラベルテープ303を繰り出す。
【0080】
その後、ステップS420で、ラベルテープ303が所定量だけ搬送されたか否かを判定する。この所定量とは、例えば印字ヘッド305がラベルテープ303の印字領域Sの先端にほぼ対向する位置に到達するだけの搬送距離である。この搬送距離判定は、例えばラベルテープ303に設けたマーキングを公知のテープセンサ(不図示)で検出することにより行えば足りる。判定が満たされたらステップS430に移る。
【0081】
ステップS430では、上記制御信号生成部30d(図8又は図9参照)の機能により印字ヘッド305に制御信号を出力し、印字ヘッド305によるラベルテープ303の印字領域Sへ、上記図13のステップS335で生成した印字駆動データによる印字を開始する。
【0082】
その後、ステップS440で、ラベルテープ303に対する上記印字駆動データによる印字がすべて完了したかどうかを確認した後、ステップS450へ移る。
【0083】
ステップS450では、ラベルテープ303がさらに所定量(例えば、印字領域Sのすべてがカッタ307を所定の長さ(余白量)分越えるだけの搬送距離)だけ搬送されたかどうかを判定する。このときの搬送距離判定も例えば上記ステップS420と同様にすれば足りる。判定が満たされると、ステップS460に移る。
【0084】
ステップS460では、上記搬送用モータに制御信号を出力して搬送ローラ308の駆動を停止し、ラベルテープロール304からのラベルテープ303の繰り出し及び搬送を停止する。
【0085】
その後、ステップS470で、ソレノイド駆動回路(図示せず)に制御信号を出力してカッタ用ソレノイド(図示せず)を駆動し、カッタ307によってラベルテープ303の切断を行う。前述したように、この時点で印字領域Sを含むラベルテープ303のすべてがカッタ307を十分に越えており、このカッタ307の切断によって、印字駆動データに基づく署名(サイン)又は氏名の印字が行われた印字ラベルL(図10(a)又は図10(b)参照)が生成される。
【0086】
その後、ステップS480で、別途設けた排出用ローラ(図示せず)を駆動する排出用モータ(図示せず)に制御信号を出力し、上記ステップS470でラベル状に生成された印字ラベルLをラベル作成装置300の装置外へと排出する。なお、排出用モータがなく手動操作で印字ラベルLを装置外へ排出する場合には、このステップS480は省略される。以上により、このフローを終了する。
【0087】
以上説明したように、本実施形態の印字ラベル作成システムLSにおいては、操作者が、無線タグTをリーダ200のアンテナ203にかざす等により情報読み取りを行わせるとともに、操作者自らが操作部206よりパスワードを操作入力することで、この入力されたパスワードと無線タグTに記憶されていたパスワードとが適合(合致)したときのみ、印字ラベルLが作成される。したがって、パスワードを知っている操作者本人が無線タグTを読み取らせない限り、印字ラベルLが作成されないので、正当な印字ラベルLが作成されたことによって当該操作者本人であることを認証できる。この結果、作成された正当な印字ラベルLを対象物である食品に設けることで、その食品が確かに正当な操作者によって正しく取り扱われたことを証明することができる。
【0088】
このとき、図10(a)に示すように、ビットマップ形式の個人印字データを用いて操作者の自筆署名を印字した印字ラベルLを作成する場合には、操作者の実際の署名の代わりに用いることができる。この結果、さらに確実に印字ラベルLの偽造防止(なりすまし防止)を図ることができ、本人認証機能を向上させることができる。図10(b)に示すように、上記氏名テキストデータの個人印字データを用いて印字ラベルLを作成する場合には、上述の操作者の自筆署名を印字した印字ラベルLを作成する場合のような(操作者の個人情報である)自筆署名の流出を防止しつつ、一定の本人認証機能を得ることができる。
【0089】
また、本実施形態では特に、タイマー208で計時した現在時刻情報に基づき、ラベル作成装置300で印字ラベルLを作成するときに、操作者の認証時刻(操作者が無線タグTを読み取らせた時刻)を併せて製造日時TMとして印字ラベルLに印字する。この結果、食品が確かに当該操作者によって取り扱われたことを時間的にも証明することができる。
【0090】
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で変形が可能である。以下、そのような変形例を説明する。
【0091】
(1)時刻情報をラベル作成装置300側で取得する場合
すなわち、上記実施形態においては、リーダ200側にタイマー208を設けて、タイマー208で計時した現在時刻情報を、リーダ200からラベル作成装置300へのリーダ出力信号に含めるようにしたが、これに限られない。すなわち、ラベル作成装置300側にタイマーを設けてもよい。
【0092】
図15は、本変形例の印字ラベル作成システムLSの機能構成を表す機能ブロック図であり、上記図4に相当する図である。図15では、図4におけるリーダ200のタイマー208が省略され、代わってラベル作成装置300に同様の計時機能を持つタイマー310(第2計時手段)が設けられている。
【0093】
図16(a)及び図16(b)は、本変形例において、リーダ200からラベル作成装置300へ接続手段を介し出力されるリーダ出力信号の内容の一例を概念的に表す図であり、上記実施形態の図7(a)及び図7(b)に相当する図である。すなわち、図16(a)が個人印字データがビットマップ形式である場合を表し、図16(b)が個人印字データが氏名テキストデータで構成されている場合を表している。これら図16(a)及び図16(b)に示すように、前述したようにラベル作成装置300側にタイマー310が移った結果、リーダ出力信号には時刻情報が含まれなくなっている。
【0094】
すなわち、本変形例では、ラベル作成装置300での印字ラベルLの作成時に、ラベル作成装置300に設けたタイマー310で計時した時刻データに基づく現在時刻情報を、個人印字データに基づく操作者の署名(サイン)又は氏名とともに、印字ラベルLに印字する。それ以外の構成及び動作は、上記実施形態とほぼ同様である。
【0095】
本変形例においても、上記実施形態と同様、ラベル作成装置300で印字ラベルLを作成するときに作成時刻を併せて印字ラベルLに印字することで、対象物である食品が、確かに正当な操作者によって取り扱われたことを時間的にも証明することができる。
【0096】
なお、本変形例の印字ラベル作成システムLSにおいて、タイマー(第2計時手段)を、リーダ200やラベル作成装置300とはさらに別の箇所に設ける(あるいは単独のタイマー装置として設ける)ことも可能である。この場合も、上記と同等の効果を得る。
【0097】
(2)その他
なお、以上においては、印字の終了したラベルテープ303をカッタ307で切断して印字ラベルLを作成した場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、ラベルに対応した所定の大きさに予め分離されたラベル台紙(いわゆるダイカットラベル)がロールから繰り出されるテープ上に連続配置されているような場合には、カッタ307で切断しなくても、テープが排出口から排出されてきた後にラベル台紙のみをテープから剥がして印字ラベルLを作成しても良く、本発明はこのようなものに対しても適用できる。
【0098】
さらに、以上においては、ラベルテープ303に備えられた被印字テープ層に印字を行う方式(貼りあわせを行わないタイプ)に本発明を適用した場合を例にとって説明したが、これに限られず、ラベルテープ303とは別の被印字媒体に印字を行ってこれらを貼り合わせる方式に本発明を適用してもよい。この場合、作成された印字ラベルLの断面構造を、例えば上記図3と同様の積層構造(但し無線タグ回路素子Toは含まれない)とすることもできる。
【0099】
また、以上は、本発明を、印字ラベルLを貼り付ける対象物が食品である場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、その他の可搬物品(例えば書類、ファイル、図書、文具、OA機器等)等に設けられるラベルや、その他の認証用ラベルに本発明を適用しても良い。
【0100】
また、以上は、印刷装置として、ラベル作成装置300を例にとって説明したが、本発明の適用対象はこれに限られるものではなく、通常のプリンタでの印刷物(ラベルでない印刷物)の印刷に本発明を適用し、当該印刷物が作成できたことをもって正当な操作者であることを証明するようにしても良い。この場合も同様の効果を得る。
【0101】
なお、以上において、各図中に示す矢印は信号の流れの一例を示すものであり、信号の流れ方向を限定するものではない。
【0102】
また、各図に示すフローチャートは本発明を上記フローに示す手順に限定するものではなく、発明の趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で手順の追加・削除又は順番の変更等をしてもよい。
【0103】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0104】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本実施形態の印字ラベル作成システムの全体構成を示すシステム構成図である。
【図2】無線タグ回路素子を備えた無線タグラベルの外観の一例を示す上面図及び下面図である。
【図3】図2(a)中III−III′断面による横断面図である。
【図4】印字ラベル作成システムの機能構成の一例を表す機能ブロック図である。
【図5】リーダの高周波回路の詳細構成を示す機能ブロック図である。
【図6】無線タグに備えられる無線タグ回路素子の機能的構成の一例を示す機能ブロック図である。
【図7】リーダからラベル作成装置へ出力されるリーダ出力信号の内容の一例を概念的に表す図である。
【図8】ラベル作成装置の制御回路の機能構成の一例を表す機能ブロック図である。
【図9】ラベル作成装置の制御回路の機能構成の他の例を表す機能ブロック図である。
【図10】作成される印字ラベルの例を表す平面図である。
【図11】商品表示ラベルの一例を示す平面図である。
【図12】リーダの制御回路により実行される制御手順を表すフローチャートである。
【図13】ラベル作成装置の制御回路によって実行される制御内容を表すフローチャートである。
【図14】ステップS400の詳細内容を示すフローチャートである。
【図15】ラベル作成装置側にタイマー機能を備えた変形例における印字ラベル作成システムの機能構成を表す機能ブロック図である。
【図16】リーダからラベル作成装置へ出力されるリーダ出力信号の内容の一例を概念的に表す図である。
【符号の説明】
【0106】
150 IC回路部
151 タグアンテナ
200 リーダ(無線タグ通信装置)
203 アンテナ(装置アンテナ)
204 高周波回路
205 インターフェース
206 操作部(操作手段)
207 制御回路
208 タイマー(第1計時手段)
300 ラベル作成装置
303 ラベルテープ(ラベル媒体)
305 印字ヘッド(印字手段)
308 搬送ローラ(搬送手段)
309 インターフェース
310 タイマー(第2計時手段)
311 制御回路
L 印字ラベル
LS 印字ラベル作成システム(印刷物作成システム)
To 無線タグ回路素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作者に付随され、情報を記憶するIC回路部と情報の送受信を行うタグアンテナとを備えた無線タグに対し、情報読み取りを行うための無線タグ通信装置であって、
前記無線タグと無線通信を介し情報送受信を行うための装置アンテナと、
前記IC回路部に記憶された、前記操作者の個人識別情報を印字するための個人印字データと、パスワードとを、前記装置アンテナを介して取得する情報取得手段と、
前記操作者がパスワードを操作入力するための操作手段と、
前記情報取得手段で取得されたパスワードと、前記操作手段で操作入力されたパスワードとの、適合・不適合を判定する判定手段と、
前記判定手段で前記適合と判定された場合に、前記情報取得手段で取得した前記個人印字データを、印刷装置へ出力する印字データ転送手段と
を有することを特徴とする無線タグ通信装置。
【請求項2】
請求項1記載の無線タグ通信装置において、
前記情報取得手段は、
前記個人印字データとして、前記操作者の自筆による署名イメージデータを前記装置アンテナを介して取得し、
前記印字データ転送手段は、
前記署名イメージデータを前記印刷装置へ出力する
ことを特徴とする無線タグ通信装置。
【請求項3】
請求項1記載の無線タグ通信装置において、
前記情報取得手段は、
前記個人印字データとして、前記操作者の氏名を表す氏名テキストデータを前記装置アンテナを介して取得し、
前記印字データ転送手段は、
前記氏名テキストデータを前記印刷装置へ出力する
ことを特徴とする無線タグ通信装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の無線タグ通信装置において、
現在時刻を計時する第1計時手段を有し、
前記印字データ転送手段は、
前記印刷装置への出力時に前記第1計時手段で計時した時刻データを、前記個人印字データとともに前記印刷装置へ出力する
ことを特徴とする無線タグ通信装置。
【請求項5】
操作者に付随され、情報を記憶するIC回路部と情報の送受信を行うタグアンテナとを備えた無線タグに対し、情報読み取りを行うための無線タグ通信装置と、前記無線タグ通信装置による情報読み取り内容に対応した印刷物の作成を行う印刷装置とを有する印刷物作成システムであって、
前記無線タグ通信装置は、
前記無線タグと無線通信を介し情報送受信を行うための装置アンテナと、
前記IC回路部に記憶された、前記操作者の個人識別情報を印字するための個人印字データと、記憶パスワードとを、前記装置アンテナを介して取得する情報取得手段と、
前記操作者が入力パスワードを操作入力するための操作手段と、
前記情報取得手段で取得された前記記憶パスワードと、前記操作手段で操作入力された前記入力パスワードとの、適合・不適合を判定する判定手段と、
前記判定手段での判定結果に応じて、前記情報取得手段で取得した前記個人印字データを、前記印刷装置へ出力する印字データ転送手段とを有し、
前記印刷装置は、
前記個人印字データに基づき、前記個人識別情報を被印刷物に印字し、前記印刷物を作成する
ことを特徴とする印刷物作成システム。
【請求項6】
請求項5記載の印刷物作成システムにおいて、
前記無線タグ通信装置の前記情報取得手段は、
前記個人印字データとして、前記操作者の自筆による署名イメージデータを前記装置アンテナを介して取得し、
前記無線タグ通信装置の前記印字データ転送手段は、
前記署名イメージデータを前記印刷装置へ出力し、
前記印刷装置は、
前記署名イメージデータに基づき、前記操作者の自筆による署名イメージを前記被印刷物に印字する
ことを特徴とする印刷物作成システム。
【請求項7】
請求項5記載の印刷物作成システムにおいて、
前記無線タグ通信装置の前記情報取得手段は、
前記個人印字データとして、前記操作者の氏名を表す氏名テキストデータを前記装置アンテナを介して取得し、
前記無線タグ通信装置の前記印字データ転送手段は、
前記氏名テキストデータを前記印刷装置へ出力し、
前記印刷装置は、
前記氏名テキストデータに基づき、前記操作者の氏名を前記被印刷物に印字する
ことを特徴とする印刷物作成システム。
【請求項8】
請求項5乃至請求項7のいずれか1項記載の印刷物作成システムにおいて、
現在時刻を計時する第2計時手段を有し、
前記印刷装置は、
前記第2計時手段で計時した時刻データに基づく現在時刻情報を、前記個人印字データに基づく前記個人識別情報とともに前記被印刷物に印字し、前記印刷物を作成する
ことを特徴とする印刷物作成システム。
【請求項9】
請求項5乃至請求項8のいずれか1項記載の印刷物作成システムにおいて、
前記印刷装置は、
前記無線タグ通信装置の前記データ転送手段から転送された前記個人印字データを入力するデータ入力手段と、
ラベル媒体を搬送するための搬送手段と、
前記被印刷物としての、前記搬送手段で搬送される前記ラベル媒体か、若しくは、前記ラベル媒体に貼り合わされる被印字媒体に対し、前記データ入力手段で入力した前記個人印字データに基づき前記個人識別情報の印字を行う印字手段と
を備え、前記印刷物として、対象物に貼り付け可能な印字ラベルを作成する印字ラベル作成装置である
ことを特徴とする印刷物作成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−140214(P2010−140214A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−315202(P2008−315202)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】