説明

無線タグ

【課題】設計自由度を有するとともに、小型化、低コスト化を実現できる発光ダイオードを備えた無線タグを提供すること。
【解決手段】トランジスタ回路2115を介して、送受信アンテナ221と、発光ダイオード並列回路231とを接続する。この発光ダイオード並列回路231は、発光ダイオード2311の逆方向に電圧が印加されると発光ダイオード2312には順方向の電圧が印加される一方、発光ダイオード2312の逆方向に電圧が印加されると発光ダイオード2311には順方向の電圧が印加されるように、発光ダイオード2311と発光ダイオード2312とが並列に接続されている回路である。これにより、送受信アンテナ221で生成された受信時交流電圧で、発光ダイオード2311、2312を発光させることができる。したがって、受信時交流電圧を直流に整流する整流回路を設ける必要がない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオードを備えた無線タグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば複数の物品が近接した場所に位置している場合に、その中からユーザが所望する物品を検索するために、各物品に発光ダイオードを備えた無線タグを装着して、リーダ/ライタと各無線タグとの間で無線通信を行って、ユーザが所望する物品に装着された無線タグの発光ダイオードを発光させる技術が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
具体的には、ユーザはリーダ/ライタを用いて、検索したい無線タグのIDコードを示す検索IDコードを含む電波(以下、リーダ/ライタから送信される電波を交流送信信号と言う。) を外部に送信して、各無線タグにその交流送信信号を交流受信信号として受信させる。各無線タグには、自身を識別するためのIDコードである記憶IDコードが記憶されている。そして、各無線タグは、交流受信信号に含まれている検索IDコードと自身に記憶されている記憶IDコードとが所定の関係を満たしているか否かの照合可否判定を行い、照合可の場合には、自身に備えられている発光ダイオードを発光させ、照合否の場合は発光させない。その結果、ユーザは発光されている無線タグ、すなわち、ユーザが所望する物品を容易に検索することができる。
【特許文献1】特開2006−24018号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、発光ダイオードは、順方向に所定駆動電圧が印加されたときには発光するが、逆方向に電圧が印加されたときには発光しない。したがって、発光ダイオードを発光させるには、上記交流受信信号から得られる受信時交流電圧を直流電圧に整流しなければならないので、無線タグに整流回路を備える必要がある。そのため、発光ダイオードを備えた無線タグを製作するのに余分な部品とその実装場所が必要であり、無線タグの設計自由度の低下、並びに小型化、低コスト化の阻害要因となっていた。
【0005】
本発明は以上の問題点に鑑みてなされたものであり、設計自由度を有するとともに、小型化、低コスト化を実現できる発光ダイオードを備えた無線タグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1の無線タグは、交流送信信号を外部に送信するリーダ/ライタとの間で無線通信を行う無線タグであって、前記リーダ/ライタから送信された前記交流送信信号を交流受信信号として受信する受信アンテナと、前記受信アンテナが受信した前記交流受信信号から得られる受信時交流電圧における正の電位成分と負の電位成分の両方が印加されるように、前記受信アンテナに接続され、順方向に所定駆動電圧が印加されたときに発光する一方、逆方向に電圧が印加されたときに発光しない第1の発光ダイオード及び第2の発光ダイオードを有する回路であって、前記第1の発光ダイオードの逆方向に電圧が印加されると前記第2の発光ダイオードには順方向の電圧が印加される一方、前記第2の発光ダイオードの逆方向に電圧が印加されると前記第1の発光ダイオードには順方向の電圧が印加されるように、前記第1の発光ダイオードと前記第2の発光ダイオードとが並列に接続された発光ダイオード並列回路とを備えることを特徴とする。
【0007】
また、請求項2の無線タグは、請求項1に記載の発明の構成に加え、前記交流送信信号には、ユーザが検索したい無線タグのIDコードを示す検索IDコードが含まれており、前記無線タグは、記憶IDコードを記憶するIDコード記憶手段と、前記受信アンテナが受信した前記交流受信信号に含まれる前記検索IDコードと前記IDコード記憶手段に記憶されている前記記憶IDコードとが所定の関係を満たすか否かの照合可否判定をする照合可否判定手段と、前記照合可否判定手段によって照合可となった場合のみ、前記受信アンテナと前記発光ダイオード並列回路とを接続する接続手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、請求項3の無線タグは、請求項2に記載の発明の構成に加え、前記接続手段は、前記受信アンテナと前記発光ダイオード並列回路との間に設けられ、電流の導通/遮断を制御するための電流導通信号又は電流遮断信号が入力される制御端子を有する2つのトランジスタを備えた回路であって、前記2つのトランジスタの前記制御端子に前記電流導通信号が入力された場合には、前記受信時交流電圧における正の電位成分と負の電位成分の両方が前記発光ダイオード並列回路に印加されるように、前記2つのトランジスタが接続されたトランジスタ回路と、前記照合可否判定手段によって照合可と判定された場合、前記2つのトランジスタの前記制御端子に前記電流導通信号を入力する一方、前記照合可否判定手段によって照合否と判定された場合、前記2つのトランジスタの前記制御端子に前記電流遮断信号を入力する信号入力手段とを有することを特徴とする。
【0009】
また、請求項4の無線タグは、請求項1〜3のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記第1の発光ダイオードと前記第2の発光ダイオードは、有機ELであることを特徴とする。
【0010】
また、請求項5の無線タグは、請求項4に記載の発明の構成に加え、前記第1の発光ダイオードと前記第2の発光ダイオードは、印刷によって前記無線タグ上に形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の無線タグによれば、受信アンテナが交流受信信号を受信した場合、その交流受信信号から得られる受信時交流電圧が発光ダイオード並列回路に印加される。この際、受信時交流電圧における正の電位成分で第1の発光ダイオードと第2の発光ダイオードの一方が発光し、負の電位成分で第1の発光ダイオードと第2の発光ダイオードの他方が発光する。すなわち、受信時交流電圧を直流電圧に整流させることなく、第1、第2の発光ダイオードを発光させることができる。したがって、発光ダイオードを備えた無線タグにおいて、整流回路を必要としないので、設計自由度を有するとともに小型化、低コスト化を実現できる。
【0012】
また、請求項2の無線タグは、請求項1に記載の発明の効果に加え、交流送信信号には、ユーザが検索したい無線タグのIDコードを示す検索IDコードが含まれている。そして、照合可否判定手段は、受信アンテナが受信した交流受信信号に含まれる検索IDコードとIDコード記憶手段に記憶されている記憶IDコードとが所定の関係を満たすか否かの照合可否判定をする。その結果、照合可となった場合のみ、接続手段は、受信アンテナと発光ダイオード並列回路とを接続する。その結果、第1、第2の発光ダイオードは発光する。なお、照合可否判定手段による照合可否判定の結果、照合否となった場合には、受信アンテナと発光ダイオード並列回路とは接続されない。その結果、第1、第2の発光ダイオードは発光しない。これにより、複数の無線タグの中から、ユーザが所望する無線タグを発見する目的のために本発明の無線タグを使用することができる。
【0013】
また、請求項3の無線タグは、請求項2に記載の発明の効果に加え、信号入力手段が2つのトランジスタの制御端子に電流導通信号を入力した場合には、受信時交流電圧における正の電位成分は、2つのトランジスタの一方が導通することによって、発光ダイオード並列回路に印加される。一方、受信時交流電圧における負の電位成分も、2つのトランジスタの他方が導通することによって、発光ダイオード並列回路に印加される。また、信号入力手段が2つのトランジスタの制御端子に電流遮断信号を入力した場合には、その2つのトランジスタは遮断して、受信時交流電圧が発光ダイオード並列回路に印加されないので、第1、第2の発光ダイオードは発光しない。このように、2つのトランジスタを用いることによって、簡易に上記接続手段を実現することができる。
【0014】
また、請求項4の無線タグは、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明の効果に加え、第1の発光ダイオードと第2の発光ダイオードは、有機ELであるので無機物を利用した発光ダイオードに比べて発光効率を向上できる。
【0015】
また、請求項5の無線タグは、請求項4に記載の発明の効果に加え、印刷によって、無線タグ上に有機ELを形成しているので、低コスト化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る無線タグの第1実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態の無線タグ201〜209の使用方法の一例を示した図である。同図に示すように、各無線タグ201〜209は、書籍箱20に収納されている書籍101〜109に貼付されている。また、無線タグ201〜209は、自身を識別するための記憶IDコードが記憶されている。さらに、各無線タグ201〜209には、発光ダイオードを備えている。一方、リーダ/ライタ10は、ユーザが所望する書籍101〜109に貼付されている無線タグ201〜209を検索するための機器である。そのリーダ/ライタ10には、ユーザが検索を所望する書籍101〜109に貼付されている無線タグ201〜209の記憶IDコードの入力する入力部11が備えられている。
【0017】
ユーザは、書籍101〜109のいずれかを検索したいときには、リーダ/ライタ10の入力部11を操作して、検索したい書籍101〜109に貼付されている無線タグ201〜209の記憶IDコードに相当する検索IDコードを入力して、送信スイッチを操作すればよい。すると、リーダ/ライタ10は、ユーザが入力した検索IDコードを含む交流送信信号50を外部に送信する。各無線タグ201〜209はその交流送信信号50を交流受信信号60として受信する。そして、各無線タグ201〜209は、交流受信信号60に含まれている検索IDコードと自身に記憶されている記憶IDコードとが一致するか否かの照合可否判定を実行する。その結果、照合可と判断された場合には、発光ダイオードを発光させ、照合否と判断された場合には、発光ダイオードを発光させない。そして、ユーザは、発光している無線タグ201〜209、すなわち、ユーザが所望する書籍101〜109を容易に発見することができる。
【0018】
次に、リーダ/ライタ10の構成について説明する。図2は、リーダ/ライタ10の電気的構成を示したブロック図である。同図に示すように、リーダ/ライタ10は、入力部11、制御部12、表示部13、電源14、変調部15、復調部16、及び送受信アンテナ17を備えている。
【0019】
入力部11は、上述したように、ユーザが所望する無線タグ201〜209の記憶IDコードに相当する検索IDコードを入力する入力スイッチと、入力スイッチにて入力した無線タグ201〜209の検索IDコードを含む交流送信信号を外部に送信するため送信指示信号を入力する送信スイッチを有している。その入力部11は制御部12に接続されており、入力部11から入力された検索IDコードや、送信指示信号は、制御部12に入力される。
【0020】
制御部12は、後述するリーダ/ライタ制御処理を実行する。この制御部12は、図示しないCPU、ROM、RAMを有している。ROMには、上記リーダ/ライタ制御処理を実行するためのプログラムが記憶されており、CPUは、このROMに記憶されているプログラムに従って、上記リーダ/ライタ制御処理を実行する。また、RAMは、リーダ/ライタ制御処理が実行される過程において、情報を一時的に記憶する役割を担っている。なお、リーダ/ライタ制御処理の詳細については、フローチャートを用いて後述する。
【0021】
表示部13は、液晶ディスプレイで構成されており、入力部11から入力された記憶IDコードを表示したり、制御部12が無線タグ201〜209からの返信信号を受信したときには、その旨を表示する。なお、表示部13として、液晶ディスプレイの代わりに、有機ELディスプレイやプラズマディスプレイなどを用いてもよい。
【0022】
電源14は、制御部12に接続されており、図示しないオンオフスイッチを有している。そして、そのオンオフスイッチがユーザによって操作されてオン状態になったときには、制御部12を駆動させるために、制御部12に直流の所定電圧を供給している。一方、オンオフスイッチがユーザによって操作されてオフ状態になったときには、電源14による制御部12への電圧の供給が停止される。
【0023】
変調部15は、制御部12に接続されており、制御部12から送信される検索IDコードを外部に送信できる形式である交流送信信号50に変調して、その交流送信信号50を出力する。また、変調部15は送受信アンテナ17に接続されており、変調部15から出力された交流送信信号50は、送受信アンテナ17から外部に送信される。
【0024】
復調部16は、送受信アンテナ17に接続されており、送受信アンテナ17が受信した無線タグ201〜209からの返信信号が入力される。そして、復調部16は、その返信信号を復調して、復調後の信号を制御部12に入力する。なお、上記返信信号は、本実施形態では、交流送信信号50に含まれている検索IDコードと無線タグ201〜209に記憶されている記憶IDコードとが一致した旨を示す信号である。
【0025】
次に、無線タグ201〜209の構成について説明する。なお、無線タグ201〜209は、それぞれに記憶されている記憶IDコードのみが異なっているので、以下、代表として無線タグ201の構成について説明する。
【0026】
図3は、無線タグ201の外観図である。同図に示すように、無線タグ201は、長方形上の基板241の外周にコイル状の送受信アンテナ221が設けられている。その送受信アンテナ221にチップ211が接続されている。また、基板241には、薄膜状の2つの発光ダイオードが並列に接続された発光ダイオード並列回路231が設けられている。なお、基板241は、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムであり、発光ダイオード並列回路231を構成する2つの発光ダイオードは有機ELである。
【0027】
図4は、無線タグ201の電気的構成を示したブロック図である。同図に示すように、無線タグ201は、送受信アンテナ221、チップ211、及び発光ダイオード並列回路231を備えている。送受信アンテナ221は、本発明の「受信アンテナ」に相当し、リーダ/ライタ10から送信された交流送信信号50を交流受信信号60として受信する。この送受信アンテナ221は、チップ211に接続されており、受信した交流受信信号60をチップ211に入力する。また、送受信アンテナ221は、チップ211から上記返信信号が送信されてきた場合には、その返信信号を外部に送信する。さらに、送受信アンテナ221は、電源の役割を担っており、交流受信信号60から受信時交流電圧を生成している。その受信時交流電圧もチップ211に入力される。
【0028】
チップ211は、図4に示すように、記憶部2112、復調部2113、変調部2114、トランジスタ回路2115、及びこれらと接続された制御部2111を有している。
【0029】
記憶部2112は、本発明の「IDコード記憶手段」に相当し、記憶IDコードを記憶する。復調部2113は、送受信アンテナ221と接続されており、送受信アンテナ221から送信されてきた交流受信信号を復調する。この復調部2113は、制御部2111と接続されており、復調後の信号を制御部2111に入力する。変調部2114は、制御部2111に接続されており、制御部2111から入力される返信信号を外部に送信できる形式に変調して、その変調後の返信信号を出力する。また、変調部2114は送受信アンテナ221に接続されており、変調部2114から出力された返信信号は、送受信アンテナ221から外部に送信される。
【0030】
トランジスタ回路2115は、制御部2111の指示に基づいて、送受信アンテナ221と発光ダイオード並列回路231とを接続したり、接続を停止したりする回路である。図5は、トランジスタ回路2115の構成の一例を示している。同図に示すように、トランジスタ回路2115は、2つの電界効果トランジスタFET1、FET2を有している。この電界効果トランジスタFET1、FET2はスイッチング素子の役割を担っており、ゲート端子に高レベルの信号である電流導通信号が入力された場合には、ソース−ドレイン間が導通して、ソース−ドレイン間に電流を流すことができる。一方、ゲート端子に低レベルの信号である電流遮断信号が入力された場合には、ソース−ドレイン間は遮断して、ソース−ドレイン間に電流を流すことはできない。
【0031】
電界効果トランジスタFET1、FET2のゲート端子は共に制御部2111に接続されている。また、電界効果トランジスタFET1のソース端子は送受信アンテナ221に接続されており、ドレイン端子は発光ダイオード並列回路231に接続されている。一方、電界効果トランジスタFET2のソース端子は発光ダイオード並列回路に接続されており、ドレイン端子は送受信アンテナ221に接続されている。このように電界効果トランジスタFET1、FET2が接続されたトランジスタ回路2115において、制御部2111から電界効果トランジスタFET1、FET2のゲート端子に電流導通信号が入力されると、電界効果トランジスタFET1、FET2は共に導通状態となる。この際、送受信アンテナ221で生成された受信時交流電圧における正の電位成分は電界効果トランジスタFET1を介して発光ダイオード並列回路231に印加され、負の電位成分は電界効果トランジスタFET2を介して発光ダイオード並列回路231に印加される。
【0032】
なお、送受信アンテナ221が交流受信信号を受信しない間は、電界効果トランジスタFET1、FET2のゲート端子には低レベル(ゼロ電位)の信号である電流遮断信号が入力されており、そのため、電界効果トランジスタFET1、FET2は遮断状態となっている。
【0033】
制御部2111は、送受信アンテナ221が生成した受信時交流電圧を受けて、後述する無線タグ制御処理を実行する。この制御部2111は、CPU2111a、ROM2111b、RAM2111cを有している。ROM2111bには、上記無線タグ制御処理を実行するためのプログラムが記憶されており、CPU2111aは、このROM2111bに記憶されているプログラムに従って、上記無線タグ制御処理を実行する。また、RAM2111cは、無線タグ制御処理が実行される過程において、情報を一時的に記憶する役割を担っている。
【0034】
発光ダイオード並列回路231は、トランジスタ回路2115に接続されており、上述したように2つの発光ダイオードが並列に接続された回路である。図5に発光ダイオード並列回路231の詳細について示している。同図に示すように、発光ダイオード並列回路231は、発光ダイオード2311(本発明の「第1の発光ダイオード」に相当)と発光ダイオード2312(本発明の「第2の発光ダイオード」に相当)との並列回路である。発光ダイオード2311、2312は、順方向に所定駆動電圧が印加されたときに発光する一方、逆方向に電圧が印加されたときに発光しない。また発光ダイオード並列回路231は、発光ダイオード2311の逆方向に電圧が印加されると発光ダイオード2312には順方向の電圧が印加される一方、発光ダイオード2312の逆方向に電圧が印加されると発光ダイオード2311には順方向の電圧が印加されるように、発光ダイオード2311と発光ダイオード2312とが並列に接続されている回路である。
【0035】
次に、発光ダイオード2311の製造工程について説明する。なお、発光ダイオード2312は発光ダイオード2311と同じ方法で製造されるので、発光ダイオード2312の製造工程についての説明は省略する。
【0036】
図6は、発光ダイオード2311を基板241に設ける工程を説明するための図である。同図に示すように、発光ダイオード2311は、アノード端子1、カソード端子2、陽極2311a、陰極2311b、発光層2311c、絶縁層2311d、及び陰極支持ラミネートフィルム2311eを有している。このように構成される発光ダイオード2311をPETフィルムである基板241に設けるには、アノード端子1として、Cuなどの金属をエッチング若しくはスクリーン印刷する。同様に、カソード端子2として、Cuなどの金属をエッチング若しくはスクリーン印刷する。次いで、陽極2311aとして、ITO(Indium Tin Oxide)をスクリーン印刷若しくはインクジェット印刷する。次いで、発光層2311cとして、PPV、PF、PVK等をスクリーン印刷若しくはインクジェット印刷する。次いで、絶縁層2311dをスクリーン印刷若しくはインクジェット印刷によって形成する。陰極2311bは、陰極支持ラミネートフィルム2311eに蒸着によって予め形成されている。最後に、この陰極2311bが形成された陰極支持ラミネートフィルム2311eを熱により圧着する。なお、陰極2311bには、Alを用いる。また、陰極支持ラミネートフィルム2311eには、PETなどのプラスチックを用いる。このように、印刷技術を用いることにより、低コストで発光ダイオード2311を形成することができる。
【0037】
なお、チップ211と送受信アンテナ221は、発光ダイオード2311、2312を基板241に形成してから、基板241に設置する。
【0038】
次に、リーダ/ライタ10の制御部12が実行する上記リーダ/ライタ制御処理について、図7のフローチャートに基づいて説明する。このリーダ/ライタ制御処理は、電源14のオンオフスイッチがオン状態になったときに開始され、それ以降、一定期間おきに実行される。
【0039】
先ず、ステップS11では、ユーザによって入力部11が有している入力スイッチが操作されて、検索IDコードが入力されたか否かを判定する。ここで、検索IDコードが入力された場合には、処理をステップS12へ進め、検索IDコードが入力されていない場合には、このフローチャートを抜ける。
【0040】
ステップS12では、入力部11が有している送信スイッチが操作されたか否かを判定する。これは、入力部11から送信指示信号が入力されたか否かで判断する。ここで、入力部11が有している送信スイッチが操作された場合、処理をステップS13へ進め、入力部11が有している送信スイッチが操作されていない場合は、再度、本ステップを実行する。
【0041】
ステップS13では、検索IDコードを外部に送信する。具体的には、検索IDコードを変調部15に入力する。変調部15では、入力された検索IDコードを外部に送信できる形式の信号である交流送信信号50に変調し、その交流送信信号50を送受信アンテナ17から外部に送信する。
【0042】
続くステップS14では、無線タグ201〜209からの返信信号を受信したか否かを判定する。具体的には、無線タグ201〜209が返信信号を外部に送信した場合には、その返信信号を送受信アンテナ17が受信する。そして、送受信アンテナ17で受信された返信信号は、復調部16へ入力される。復調部16へ入力された返信信号は、復調され、その復調後の返信信号が制御部12に入力される。したがって、制御部12は、復調部16から返信信号の入力があるか否かで、無線タグ201〜209からの返信信号を受信したか否かを判定する。ここで、無線タグ201〜209からの返信信号を受信した場合は、処理をステップS15へ進め、無線タグ201〜209からの返信信号を受信していない場合は、このフローチャートを抜ける。この場合、ステップS13において送信した交流送信信号50を無線タグ201〜209が受信していないか、受信していたとしても、照合可否判定において、照合否となった場合が考えられる。交流送信信号50を無線タグ201〜209が受信していない場合には、もう少し、リーダ/ライタ10を無線タグ201〜209に近づけて、交流送信信号50を送信する必要がある。また、照合可否判定において、照合否となった場合は、他の無線タグが貼付されている書籍に向けて、交流送信信号50を送信する必要がある。
【0043】
ステップS15では、ステップS13において送信した交流送信信号50に含まれている検索IDコードと無線タグ201〜209に記憶されている記憶IDコードとが一致した旨を表示部13に表示して報知する。例えば、「照合可となりました」等の表示をする。その後、このフローチャートを終了する。一方、無線タグ201〜209からの返信信号を受信していない場合(ステップS14否定判定)は、報知されないことになる。
【0044】
続いて、無線タグ201の制御部2111が有しているCPU2111aが実行する上記無線タグ制御処理について、図8のフローチャートに基づいて説明する。このフローチャートは、上記交流受信信号60を受信したときに開始される。
【0045】
先ず、ステップS21では、検索IDコードを受信する。具体的には、送受信アンテナ221で受信された交流受信信号60は復調部2113に入力される。復調部2113では、入力された交流受信信号60を検索IDコードに復調して、その検索IDコードをCPU2111aに入力する。
【0046】
続くステップS22では、入力された検索IDコードと記憶部2112に記憶されている記憶IDコードとを照合する。続くステップS23では、ステップS22における照合の結果、検索IDコードと記憶IDコードとが一致していたか否かを判定する。なお、ステップS22及びステップS23は、本発明の「照合可否判定手段」に相当する。ここで、検索IDコードと記憶IDコードとが一致していた場合は、処理をステップS24へ進み、検索IDコードと記憶IDコードとが一致していない場合は、このフローチャートを抜ける。この場合、トランジスタ回路2115を構成する電界効果トランジスタFET1、FET2のゲート端子には電流遮断信号の入力が維持されたままなので、電界効果トランジスタFET1、FET2は遮断状態を維持する。その結果、送受信アンテナ221で生成された受信時交流電圧は発光ダイオード並列回路231に印加されないので、発光ダイオード2311、2312は発光しない。
【0047】
なお、本実施形態では、ステップS23において、検索IDコードと記憶IDコードとが一致しているか否かを判定しているが、検索IDコードと記憶IDコードとが所定の関係を満たしているか否かを判定するようにしてもよい。
【0048】
ステップS24では、電界効果トランジスタFET1、FET2が導通状態となるように、電界効果トランジスタFET1、FET2のゲート端子に電流導通信号を入力する。その結果、電界効果トランジスタFET1のソース−ドレイン間及び電界効果トランジスタFET2のソース−ドレイン間が導通して、送受信アンテナ221で生成された受信時交流電圧が発光ダイオード並列回路231に印加される。すると、受信時交流電圧における正の電位成分によって、電界効果トランジスタFET1を介して、発光ダイオード2311の順方向に電圧が印加される。そして、その電圧が発光ダイオード2311の駆動電圧以上であれば、発光ダイオード2311は発光する。一方、受信時交流電圧における負の電位成分によって、電界効果トランジスタFET2を介して、発光ダイオード2312の順方向に電圧が印加される。そして、その電圧が発光ダイオード2312の駆動電圧以上であれば、発光ダイオード2312は発光する。これにより、ユーザは、発光ダイオード2311、2312が発光しているのを視認すると、自身が検索している書籍101を書籍箱20の中から発見することができる。
【0049】
なお、ステップS24を実行するCPU2111aとトランジスタ回路2115の構成は、本発明の「接続手段」に相当する。また、ステップS24及びステップS23否定判定するCPU2111aは、本発明の「信号入力手段」に相当する。
【0050】
続くステップS25では、検索IDコードと記憶IDコードとが一致した旨を示す返信信号を外部に送信する。具体的には、その返信信号を変調部2114に入力する。変調部2114は、入力された返信信号を外部に送信可能な形式に変調して、その変調後の返信信号を送受信アンテナ221から外部に送信する。その後、この返信信号を受信したリーダ/ライタ10は、上述したように、表示部13に、例えば、「照合可となりました」等の表示をする。そして、このフローチャートを終了する。
【0051】
以上、本実施形態の無線タグ201では、リーダ/ライタ10から送信された検索IDコードを含む交流送信信号50を交流受信信号60として受信する。そして、その交流受信信号60に含まれている検索IDコードと記憶部2112に記憶されている記憶IDコードとが一致するか否かの照合可否判定を実行する。その結果、照合可となった場合には、電界効果トランジスタFET1、FET2を導通状態にして、送受信アンテナ221で生成された受信時交流電圧を発光ダイオード並列回路231に印加させる。そして、発光ダイオード2311、2312を発光させる。これに対し、照合否となった場合には、電界効果トランジスタFET1、FET2を導通状態にさせないで、送受信アンテナ221で生成された受信時交流電圧を発光ダイオード並列回路231に印加させない。そして、発光ダイオード2311、2312を発光させない。これにより、無線タグ201〜209が貼付されている書籍101〜109の中から、ユーザが所望する書籍101〜109を発見することができる。
【0052】
また、無線タグ201は、発光ダイオード2311の逆方向に電圧が印加されると発光ダイオード2312には順方向の電圧が印加される一方、発光ダイオード2312の逆方向に電圧が印加されると発光ダイオード2311には順方向の電圧が印加されるように、2つの発光ダイオード2311、2312とが並列に接続された発光ダイオード並列回路231を備えている。これにより、送受信アンテナ221で生成された受信時交流電圧を直流に整流させる必要なく、その受信時交流電圧で発光ダイオード2311、2312を発光させることができる。したがって、整流回路を必要としないので、無線タグ201の設計自由度を有するとともに小型化、低コスト化を実現できる。
【0053】
また、発光ダイオード2311、2312は有機ELであるので、無機物を利用した発光ダイオードに比べて発光効率を向上できる。さらに、発光ダイオード2311、2312を、印刷によって、基板241に形成しているので、低コスト化を図ることができる。
【0054】
(変形例)
上記第1実施形態では、2つの電界効果トランジスタFET1、FET2でトランジスタ回路2115を構成していた。このように、2つの電界効果トランジスタFET1、FET2を用いていたのは、電界効果トランジスタFET1、FET2は、ソースからドレインに向けて電流を流すが、ドレインからソースに向けては電流が流れないためである。すなわち、受信時交流電圧における正の電位成分と負の電位成分の両方を発光ダイオード回路231に印加させるためである。このような観点から、将来的に、両方向に電流を流すトランジスタが開発されれば、図9に示すように、トランジスタ回路2115に代えて、両方向に電流を流す電界効果トランジスタFET3を送受信アンテナ221と発光ダイオード並列回路231との間に接続してもよい。こうすることにより、部品点数を減らすことができる。
【0055】
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、無線タグ201〜209を書籍101〜109に貼付して、ユーザはリーダ/ライタ10を用いて、所望の書籍101〜109を検索するために無線タグ201〜209を使用していたが、本実施形態でが、検索の目的ではなく、位置把握の目的で無線タグを使用している。
【0056】
図10は、本実施形態の無線タグ271、リーダ/ライタ70及びサーバ80を備える無線タグシステムを説明するための図である。同図に示すように、リーダ/ライタ70は複数の地点に設置される。また、各リーダ/ライタ70は、サーバ80に有線で接続されている。一方、無線タグ271は、ユーザに所持されている。なお、リーダ/ライタ70の構成はリーダ/ライタ10と同じであるが、図示しない制御部が実行する処理は、制御部12が実行する処理と異なっている。また、無線タグ271の構成は、無線タグ201〜209と同じであるが、図示しない制御部が実行する処理は、制御部2111が実行する処理と異なっている。したがって、リーダ/ライタ70の構成、及び、無線タグ271の構成の説明を省略して、リーダ/ライタ70が実行する処理、無線タグ271が実行する処理、及びサーバ80が実行する処理について、簡単に説明する。
【0057】
各リーダ/ライタ70は、定期的に無線タグ271を呼び出すための交流送信信号51を外部に送信するようにする。一方、無線タグ271は、リーダ/ライタ70の近くにあるときには、交流送信信号51を交流受信信号61として受信し、その後、リーダ/ライタ70に記憶IDコードを送信する。そして、リーダ/ライタ70は、その記憶IDコードを受信して、サーバ80に送信する。サーバ80は、リーダ/ライタ70から送信されてきた記憶IDコードを、リーダ/ライタ70が設置されている地点に関する情報(名称、住所等)、及び現在の時刻に関連付けて記憶しておく。また、サーバ80には、無線タグ271を所持するユーザに関する情報(氏名、年齢、住所等)を無線タグ271に記憶されている記憶IDコードを関連付けて記憶されている。なお、図10では、A地点に無線タグ271を所持しているユーザが居る状態を示している。
【0058】
これにより、サーバ80は、どの人がいつどこに居たのかを、把握することができる。この際、無線タグ271は、リーダ/ライタ70によって記憶IDコードが読み出されたときに、自身に備えられている発光ダイオード231を発光させるようにする。これにより、無線タグ271を所持しているユーザは、リーダ/ライタ70によって、記憶IDコードが読み出されたことを把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】無線タグ201〜209の使用方法の一例を示した図である。
【図2】リーダ/ライタ10の電気的構成を示したブロック図である。
【図3】無線タグ201の外観図である。
【図4】無線タグ201の電気的構成を示したブロック図である。
【図5】トランジスタ回路2115の構成と発光ダイオード並列回路231の構成を説明するための図である。
【図6】発光ダイオード2311を基板241に設ける工程を説明するための図である。
【図7】リーダ/ライタ10の制御部12が実行するリーダ/ライタ制御処理を示したフローチャートである。
【図8】CPU2111aが実行する無線タグ制御処理を示したフローチャートである。
【図9】両方向に電流を流すトランジスタFET3を送受信アンテナ221と発光ダイオード並列回路231との間に接続した状態を示した図である。
【図10】第2実施形態における、無線タグ271、リーダ/ライタ70及びサーバ80を備える無線タグシステムを説明するための図である。
【符号の説明】
【0060】
10、70・・・リーダ/ライタ
50、51・・・交流送信信号
60、61・・・交流受信信号
201〜209、271・・・無線タグ
221・・・送受信アンテナ(受信アンテナ)
231・・・発光ダイオード並列回路
2311・・・発光ダイオード(第1の発光ダイオード、有機EL)
2312・・・発光ダイオード(第2の発光ダイオード、有機EL)
2112・・・記憶部(IDコード記憶手段)
2115・・・トランジスタ回路
2111a・・・CPU
FET1、FET2、FET3・・・電界効果トランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流送信信号を外部に送信するリーダ/ライタとの間で無線通信を行う無線タグであって、
前記リーダ/ライタから送信された前記交流送信信号を交流受信信号として受信する受信アンテナと、
前記受信アンテナが受信した前記交流受信信号から得られる受信時交流電圧における正の電位成分と負の電位成分の両方が印加されるように、前記受信アンテナに接続され、順方向に所定駆動電圧が印加されたときに発光する一方、逆方向に電圧が印加されたときに発光しない第1の発光ダイオード及び第2の発光ダイオードを有する回路であって、前記第1の発光ダイオードの逆方向に電圧が印加されると前記第2の発光ダイオードには順方向の電圧が印加される一方、前記第2の発光ダイオードの逆方向に電圧が印加されると前記第1の発光ダイオードには順方向の電圧が印加されるように、前記第1の発光ダイオードと前記第2の発光ダイオードとが並列に接続された発光ダイオード並列回路とを備えることを特徴とする無線タグ。
【請求項2】
前記交流送信信号には、ユーザが検索したい無線タグのIDコードを示す検索IDコードが含まれており、
前記無線タグは、
記憶IDコードを記憶するIDコード記憶手段と、
前記受信アンテナが受信した前記交流受信信号に含まれる前記検索IDコードと前記IDコード記憶手段に記憶されている前記記憶IDコードとが所定の関係を満たすか否かの照合可否判定をする照合可否判定手段と、
前記照合可否判定手段によって照合可となった場合のみ、前記受信アンテナと前記発光ダイオード並列回路とを接続する接続手段とを備えることを特徴とする請求項1に記載の無線タグ。
【請求項3】
前記接続手段は、
前記受信アンテナと前記発光ダイオード並列回路との間に設けられ、電流の導通/遮断を制御するための電流導通信号又は電流遮断信号が入力される制御端子を有する2つのトランジスタを備えた回路であって、前記2つのトランジスタの前記制御端子に前記電流導通信号が入力された場合には、前記受信時交流電圧における正の電位成分と負の電位成分の両方が前記発光ダイオード並列回路に印加されるように、前記2つのトランジスタが接続されたトランジスタ回路と、
前記照合可否判定手段によって照合可と判定された場合、前記2つのトランジスタの前記制御端子に前記電流導通信号を入力する一方、前記照合可否判定手段によって照合否と判定された場合、前記2つのトランジスタの前記制御端子に前記電流遮断信号を入力する信号入力手段とを有することを特徴とする請求項2に記載の無線タグ。
【請求項4】
前記第1の発光ダイオードと前記第2の発光ダイオードは、有機ELであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の無線タグ。
【請求項5】
前記第1の発光ダイオードと前記第2の発光ダイオードは、印刷によって前記無線タグ上に形成されたことを特徴とする請求項4に記載の無線タグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−2974(P2010−2974A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−159059(P2008−159059)
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】