説明

無線中継装置および無線中継方法

【課題】移動通信網から無線LANへのハンドオーバを行う無線中継装置を提供する。
【解決手段】無線LAN端末に接続するローカル側無線LAN−IF部と、ネットワーク側の無線LANに接続するネットワーク側無線LAN−IF部と、移動通信網に接続する移動通信網−IF部と、制御手段を備えた無線中継装置において、制御手段は、ローカル側無線LAN−IF部と移動通信網−IF部との間で中継処理を行っているときにネットワーク側無線LAN−IF部を休止するとともに、ローカル側無線LAN−IF部がデータ通信を行っていない空き時間にネットワーク側の無線LANチャネルの探索を行い、接続可能な無線LANチャネルを検出してその受信レベルが閾値を超えれば、ネットワーク側無線LAN−IF部を起動して当該無線LANチャネルにハンドオーバを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローカル側の無線LAN端末と、ネットワーク側の無線LANまたは移動通信網との間で中継処理を行う無線中継装置および無線中継方法に関する。ここで、ネットワーク側の移動通信網は、例えば第3世代、第3.5 世代、第3.9 世代の携帯電話網であり、その規格としては、例えばHSPA(High speed packet access) 、WCDMA(Wide band code division multiple access)、EDGE(Enhanced data rates for GSM evolution)、LTE(Long Term Evolution )などである。
【背景技術】
【0002】
HSPA等の移動通信網と無線LANを比較した場合、一般的に移動通信網はカバーエリアが広いが通信速度は遅く、無線LANはカバーエリアが狭いが通信速度は速いという特徴がある。そこで、移動通信網と無線LANのそれぞれの特徴を活かすために、移動通信網と無線LANにそれぞれ接続できる無線IFを備え、通常は無線LAN端末を移動通信網に接続しながら、無線LANとの接続が可能な状況になれば無線LANに切り替える無線中継装置がある(特許文献1)。
【0003】
この場合の移動通信網と無線LANのハンドオーバ方法として、無線LANの受信レベル(RSSI)を監視し、当該RSSIが閾値以下であれば移動通信網に接続し、当該RSSIが閾値を超えれば無線LANに接続する方法がある。
【0004】
図4は、従来の無線中継装置の構成例を示す。
図4において、無線中継装置は、無線LANのアクセスポイント(AP)に接続するネットワーク側無線LAN−IF部11および移動通信網の基地局(BS)に接続する移動通信網−IF部12と、無線LAN端末に接続するローカル側無線LAN−IF部13と、ネットワーク側無線LAN−IF部11に接続して無線LANの受信レベル(RSSI)を検出する受信レベル検出部14と、ネットワーク側の無線LANのRSSIに応じて、ネットワーク側無線LAN−IF部11または移動通信網−IF部12を選択(またはハンドオーバ)してローカル側無線LAN−IF部13に接続する制御部15とを備える。
【0005】
図5は、従来のハンドオーバ処理手順の例を示す。
図5において、現在のネットワーク側の接続先が無線LANか移動通信網かに応じて(S20)、無線LANに接続している場合には、受信レベル検出部14で定期的に検出される無線LANのRSSIが閾値以下か否かを判断する(S21)。RSSIが閾値以下の場合には、移動通信網へのハンドオーバを行い(S22)、RSSIが閾値を超える場合には無線LANに接続しながらRSSIの閾値判定を繰り返す。
【0006】
また、移動通信網に接続している場合には、ネットワーク側無線LAN−IF部11を定期的に起動して接続可能な無線LANチャネルを探索し(S23)、受信レベル検出部14で検出される無線LANのRSSIが閾値を超えたか否かを判断する(S24)。RSSIが閾値を超えた場合には無線LANへのハンドオーバを行い(S25)、RSSIが閾値以下の場合には移動通信網に接続しながら定期的に無線LANチャネルを探索し、RSSIの閾値判定を繰り返す。
【0007】
これにより、無線LANのRSSIが閾値以下であれば移動通信網に接続し、RSSIが閾値を超えれば無線LANに接続することができる。例えば、図6に示すように、移動通信網エリア内に無線LANエリアが局所的に存在しているときに、無線中継装置が無線LANエリア外にあって無線LANのRSSIが閾値以下であれば移動通信網に接続し、無線中継装置が移動して無線LANエリア内に入り、無線LANチャネルを探索してRSSIが閾値を超えれば無線LANに接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−021878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、移動通信網に接続中の無線中継装置は、移動通信網−IF部12とローカル側無線LAN−IF部13との間で中継処理しながら、図7に示すようにネットワーク側無線LAN−IF部11を定期的に起動して接続可能な無線LANチャネルを探索するとともに、受信レベル検出部14で無線LANのRSSIを検出する動作を行っている。そのため、ネットワーク側無線LAN−IF部11は、移動通信網−IF部12が動作中に完全に休止することができなかった。
【0010】
一方、ローカル側無線LAN−IF部13の通信速度が移動通信網−IF部12より高速であるため、同じサイズのデータ転送時間は無線LAN側の方が短い。したがって、図7に示すように、移動通信網−IF部12のデータ通信が終了するまでは、ローカル側無線LAN−IF部13は待機状態となる。すなわち、ローカル側無線LAN−IF部13は起動中であるが、データ通信を行わない空き時間となっていた。
【0011】
本発明は、ネットワーク側で移動通信網に接続中のときに、ネットワーク側無線LAN−IF部を完全に休止させながら、他の無線LANチャネルの探索を可能にする無線中継装置および無線中継方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の発明は、無線LAN端末に接続するローカル側無線LAN−IF部と、ネットワーク側の無線LANに接続するネットワーク側無線LAN−IF部または移動通信網に接続する移動通信網−IF部との間で中継処理を行い、かつネットワーク側の無線LANの受信レベルに応じてネットワーク側の無線LANと移動通信網との間でハンドオーバを行う制御手段を備えた無線中継装置において、制御手段は、ローカル側無線LAN−IF部と移動通信網−IF部との間で中継処理を行っているときにネットワーク側無線LAN−IF部を休止するとともに、ローカル側無線LAN−IF部がデータ通信を行っていない空き時間にネットワーク側の無線LANチャネルの探索を行い、接続可能な無線LANチャネルを検出してその受信レベルが閾値を超えれば、ネットワーク側無線LAN−IF部を起動して当該無線LANチャネルにハンドオーバを行う構成である。
【0013】
第2の発明は、無線LAN端末に接続するローカル側無線LAN−IF部と、ネットワーク側の無線LANに接続するネットワーク側無線LAN−IF部または移動通信網に接続する移動通信網−IF部との間で中継処理を行い、かつネットワーク側の無線LANの受信レベルに応じてネットワーク側の無線LANと移動通信網との間でハンドオーバを行う制御手段を備えた無線中継装置の無線中継方法において、制御手段は、ローカル側無線LAN−IF部と移動通信網−IF部との間で中継処理を行っているときにネットワーク側無線LAN−IF部を休止するとともに、ローカル側無線LAN−IF部がデータ通信を行っていない空き時間にネットワーク側の無線LANチャネルの探索を行い、接続可能な無線LANチャネルを検出してその受信レベルが閾値を超えれば、ネットワーク側無線LAN−IF部を起動して当該無線LANチャネルにハンドオーバを行う。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、ローカル側無線LAN−IF部と移動通信網−IF部との間で中継処理を行っているときに、両者の通信速度の差によるローカル側無線LAN−IF部の空き時間を利用してネットワーク側の無線LANチャネルの探索を代行させることにより、ネットワーク側無線LAN−IF部を完全に休止させることができる。これにより、移動通信網に接続中の消費電力を低減することができるとともに、ネットワーク側の無線LANチャネルの探索も可能であるので、移動通信網から無線LANへのハンドオーバも確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の無線中継装置の実施例を示す図である。
【図2】本発明における無線LANチャネルの探索例を示すタイムチャートである。
【図3】本発明におけるハンドオーバ処理手順の例を示すフローチャートである。
【図4】従来の無線中継装置の構成例を示す図である。
【図5】従来のハンドオーバ処理手順の例を示すフローチャートである。
【図6】移動通信網と無線LANの関係を説明する図である。
【図7】移動通信網に接続中における無線LANチャネルの探索例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の無線中継装置の実施例を示す。
図1において、無線中継装置を構成するネットワーク側無線LAN−IF部11、移動通信網−IF部12、ローカル側無線LAN−IF部13、受信レベル検出部14は、従来の無線中継装置と同様の機能を有する。ただし、受信レベル検出部14は、ローカル側無線LAN−IF13で検出されるネットワーク側の無線LANのRSSIを検出する機能も有する。
【0017】
本実施例の無線中継装置の制御部15は、移動通信網−IF部12とローカル側無線LAN−IF部13との間で中継処理を行っているときに、図2に示すように、ネットワーク側無線LAN−IF部11を休止する。さらに、制御部15は、ローカル側無線LAN−IF部13の空き時間を利用してネットワーク側の無線LANチャネルの探索を行い、受信レベル検出部14で検出される無線LANのRSSIに応じて、ネットワーク側の移動通信網から無線LANへのハンドオーバを制御する処理を行う。
【0018】
図3は、本発明におけるハンドオーバ処理手順の例を示す。
図3において、現在のネットワーク側の接続先が無線LANか移動通信網かに応じて(S10)、無線LANに接続している場合には、受信レベル検出部14で定期的に検出される無線LANのRSSIが閾値以下か否かを判断する(S11)。RSSIが閾値以下の場合には、移動通信網へのハンドオーバを行い(S12)、ネットワーク側無線LAN−IF部11を休止する(S13)。一方、RSSIが閾値を超える場合には無線LANに接続しながらRSSIの閾値判定を繰り返す。
【0019】
また、移動通信網に接続している場合には、ローカル側無線LAN−IF部13の空き時間を利用して接続可能な無線LANチャネルを探索し(S14)、受信レベル検出部14で検出される無線LANのRSSIが閾値を超えたか否かを判断する(S15)。RSSIが閾値を超えた場合にはネットワーク側無線LAN−IF部11を起動し(S16)、探索した無線LANチャネルへのハンドオーバを行う(S17)。一方、RSSIが閾値以下の場合には移動通信網に接続しながら、ローカル側無線LAN−IF部13の空き時間を利用して接続可能な無線LANチャネルを探索し、RSSIの閾値判定を繰り返す。
【符号の説明】
【0020】
11 無線LAN−IF部
12 移動通信網−IF部
13 ローカル側無線LAN−IF部
14 受信レベル検出部
15 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線LAN端末に接続するローカル側無線LAN−IF部と、ネットワーク側の無線LANに接続するネットワーク側無線LAN−IF部または移動通信網に接続する移動通信網−IF部との間で中継処理を行い、かつネットワーク側の無線LANの受信レベルに応じてネットワーク側の無線LANと移動通信網との間でハンドオーバを行う制御手段を備えた無線中継装置において、
前記制御手段は、前記ローカル側無線LAN−IF部と前記移動通信網−IF部との間で中継処理を行っているときに前記ネットワーク側無線LAN−IF部を休止するとともに、前記ローカル側無線LAN−IF部がデータ通信を行っていない空き時間に前記ネットワーク側の無線LANチャネルの探索を行い、接続可能な無線LANチャネルを検出してその受信レベルが閾値を超えれば、前記ネットワーク側無線LAN−IF部を起動して当該無線LANチャネルにハンドオーバを行う構成である
ことを特徴とする無線中継装置。
【請求項2】
無線LAN端末に接続するローカル側無線LAN−IF部と、ネットワーク側の無線LANに接続するネットワーク側無線LAN−IF部または移動通信網に接続する移動通信網−IF部との間で中継処理を行い、かつネットワーク側の無線LANの受信レベルに応じてネットワーク側の無線LANと移動通信網との間でハンドオーバを行う制御手段を備えた無線中継装置の無線中継方法において、
前記制御手段は、前記ローカル側無線LAN−IF部と前記移動通信網−IF部との間で中継処理を行っているときに前記ネットワーク側無線LAN−IF部を休止するとともに、前記ローカル側無線LAN−IF部がデータ通信を行っていない空き時間に前記ネットワーク側の無線LANチャネルの探索を行い、接続可能な無線LANチャネルを検出してその受信レベルが閾値を超えれば、前記ネットワーク側無線LAN−IF部を起動して当該無線LANチャネルにハンドオーバを行う
ことを特徴とする無線中継方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−21651(P2013−21651A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155878(P2011−155878)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】