無線受信装置、及び無線送信装置
【課題】複数のユーザ、すなわち無線送信装置から送信される信号がGI長を超えるような異なるタイミングをもって到来した場合でも、複数ユーザの信号の分離を可能とする無線受信装置を提供する。
【解決手段】直交変換器1204は、受信した無線信号から抽出するN個の時系列データに対して直交変換を行う。マルチユーザ検出器1205−1〜1205−Uは、直交変換された時系列データから、各無線送信装置からの送信信号を抽出する。逆直交変換器1206−1〜1206−Uは、抽出された送信信号に対して逆直交変換を行い、逆拡散器1207−1〜1207−Uは、逆直交変換された送信信号に対して逆拡散を行い、矩形フィルタ回路1208−1〜1208−Uは、逆拡散された送信信号から、先端部のMh個と終端部のMt個との時系列データを除去し、Nw個の時系列データを抽出する。
【解決手段】直交変換器1204は、受信した無線信号から抽出するN個の時系列データに対して直交変換を行う。マルチユーザ検出器1205−1〜1205−Uは、直交変換された時系列データから、各無線送信装置からの送信信号を抽出する。逆直交変換器1206−1〜1206−Uは、抽出された送信信号に対して逆直交変換を行い、逆拡散器1207−1〜1207−Uは、逆直交変換された送信信号に対して逆拡散を行い、矩形フィルタ回路1208−1〜1208−Uは、逆拡散された送信信号から、先端部のMh個と終端部のMt個との時系列データを除去し、Nw個の時系列データを抽出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、広帯域信号の送受信を行う無線通信システムにおける無線受信装置、及び無線送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガードインターバル(GI)を用いる直接拡散符号分割多元接続(DS−CDMA)伝送における、端末局装置からアクセスポイントへの上りリンク通信が存在する(例えば、非特許文献1参照)。図10は、GIを用いる上りリンクDS−CDMA伝送における第u番目の端末局装置(MT)の送信機の構成を示したブロック図である。また、図11は、GIを用いる上りリンクDS−CDMA伝送における基地局装置(BS)の受信機の構成例を示したブロック図である。ここで、基地局装置に対して、端末局装置(送信局)がU個存在するとする。また、基地局装置(受信局)における離散フーリエ変換のポイント数をNとする。また、GI長をNgとする。また、拡散率をJ(J>U)とする。
【0003】
図10に示すDS−CDMA伝送の第u番目の端末局装置の送信機は、誤り訂正符号化器101−u、インターリーバ部102−u、データ変調器103−u、拡散器104−u、GI挿入器105−u、波形整形回路106−u、D/A変換器107−u、無線部108−u、送信アンテナ109−uを備える。
【0004】
図10に示す第u番目の端末局装置において、送信データ系列が誤り訂正符号化器101−uで符号化された後、インターリーバ部102−uで送信データをインターリーブし、データ変調器103−uでPSK(Phase Shift Keying)もしくはQAM(Quadrature Amplitude Modulation)による変調が行われて、送信シンボル系列が生成される。その後、拡散器104−uにより送信シンボル系列を、拡散率Jの拡散符号系列によって拡散し、図12に示すように、GI挿入部105−uでN個の送信チップごとに1つのブロックを形成し、その末尾Ng個のチップをコピーし、GIとして挿入する。波形整形回路106−uでは、帯域制限を行うデジタルフィルタリングを行い、D/A変換器107−uでデジタル信号からアナログ信号に変換が行われた後、無線部108−uを経由して送信アンテナ109−uを通じて送信が行われる。
【0005】
一方、図11に示すようなDS−CDMA伝送の基地局装置(BS)の受信機は、受信アンテナ210、無線部211、A/D変換器212、GI除去部213、離散フーリエ変換器214、マルチユーザ検出部300−1〜300−U、データ復調器218−1〜218−U、デ・インターリーバ部219−1〜219−U、誤り訂正復号器220−1〜220−Uを備える。また、マルチユーザ検出部300−1〜300−Uのそれぞれは、等化器215−1〜215−U、逆離散フーリエ変化器216−1〜216−U、逆拡散器217−1〜217−Uを備える。
【0006】
図11において、U個の端末局装置から送信されるDS−CDMA送信信号は、受信アンテナ210により受信され、無線部211でベースバンド信号に変換され、A/D変換器212でアナログ信号からデジタル信号に変換され、GI除去部213によりGIが除去される。その後、離散フーリエ変換器214で、受信信号をN個の周波数成分に変換する。変換された直交信号は、端末局装置(ユーザ)ごとの信号を得るために、等化器215−1〜215−Uによって等化が行われる。等化された直交信号は、逆離散フーリエ変換器216−1〜216−Uにより、時系列信号に変換され、逆拡散器217−1〜217−Uにより、逆拡散処理が行われる。等化から逆拡散までの処理は、マルチユーザ検出部300−1〜300−Uで行われる処理であり、マルチユーザ検出重みを用いて行われる処理である。逆拡散後の時系列信号に対し、データ復調器218−1〜218−Uにより復調が行われ、復調された信号に対してデ・インターリーバ部219−1〜219−Uによりデ・インターリーブが行われ、誤り訂正復号器220−1〜220−Uにより誤り訂正復号が行われ、送信データの推定値が得られることになる。
【非特許文献1】津村 茂彦、原 嘉孝、原 晋介、「上り回線におけるMC-CDMA方式とCP-DS-CDMA方式の特性比較」、電子情報通信学会、信学技報、RCS2003-370、pp.101-106, 2004年3月.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、複数の端末局装置(送信局)から信号が送信される場合、信号伝送のタイミングは、各端末局装置で独立に制御されることになる。このような場合、基地局装置(受信局)では、各端末局装置から送信された信号の到来タイミングが異なることになる。
【0008】
前述したDS−CDMAの上りリンクでは、送信信号をN個の信号からなるブロックとして、そのブロックごとにNg個の信号からなるガードインターバル(GI)を図12のように挿入して送信する。このGIの挿入時間Tgが、端末局装置(ユーザ)間の送信信号の到来する最大のタイミングオフセットTuよりも大きい場合、すなわちTg≧Tuの場合、受信信号の周波数成分は他の信号との直交性が保たれているので信号分離が可能である。
【0009】
しかしながら、GIの挿入時間Tgが、端末局装置(ユーザ)間の送信信号の到来する最大のタイミングオフセットTuより小さい場合、すなわちTg<Tuの場合、他の送信信号との直交性が崩れてしまい、信号がうまく分離できないため、特性が大幅に劣化してしまう。従って、前述したDS−CDMAの場合、複数の端末局装置からの信号がGI長を超えるような異なる受信タイミングをもって基地局装置(受信局)に到来した場合、どのようにして複数ユーザの信号を分離するかが課題となる。
【0010】
本発明は、上記問題を解決すべくなされたもので、その目的は、複数のユーザ、すなわち無線送信装置から送信される信号がGI長を超えるような異なるタイミングをもって到来した場合でも、複数ユーザの信号の分離を可能とする無線受信装置、及び無線送信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記問題を解決するために、本発明は、複数の無線送信装置から送信された無線信号を受信するアンテナと、前記無線信号から抽出される拡散状態の信号系列から、逆拡散後の信号のフィルタリングに用いられる矩形窓フィルタの大きさと前記拡散状態に応じた拡散係数とに基づいて定められる個数ずつ先頭をずらして、信号のブロック単位であるN個ずつ信号を読み出す読出手段と、前記読出手段が読み出したN個の信号を直交変換する直交変換部と、前記複数の無線送信装置ごとに、前記無線送信装置の送信信号の検出に用いられる前記拡散状態を考慮したN個の重みを算出する重み演算部と、前記重み演算部が算出した前記無線送信装置ごとのN個の重みと、前記直交変換部により直交変換された信号とに基づいて、前記複数の無線送信装置ごとの信号を検出する複数の検出部と、前記複数の検出部が検出した信号ごとに逆直交変換を行う複数の逆直交変換部と、前記複数の逆直交変換部から出力される信号ごとに前記拡散状態に応じて予め定められる拡散符号を用いて逆拡散を行う複数の逆拡散器と、前記複数の逆拡散器から出力される信号ごとに前記矩形窓フィルタを用いてブロック間干渉の影響を受けている部分についてフィルタリングを行う複数の矩形フィルタ部と、前記複数の矩形フィルタ部が出力するNw個の信号ごとに復調を行う複数の復調部と、を備えたことを特徴とする無線受信装置である。
【0012】
また、本発明は、上記に記載の発明において、前記重み演算部は、前記無線信号に基づいて前記複数の無線送信装置との間のチャネルのチャネルインパルス応答情報を推定するチャネルインパルス応答推定部と、前記無線信号に基づいて前記複数の無線送信装置で用いられた拡散符号系列を出力する拡散符号系列計算部と、前記チャネルインパルス応答推定部が推定したチャネルインパルス応答情報と、前記拡散符号系列計算部が出力する拡散符号系列とに基づいて、伝達関数と、ブロック間干渉成分のチャネル成分及び拡散符号系列とを推定する演算部と、前記演算部が推定したチャネルごとの伝達関数と、ブロック間干渉成分のチャネル成分及び拡散符号系列とに基づいて前記複数の無線送信装置ごとにN個の重みを算出するマルチユーザ検出重み計算部と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上記に記載の発明において、前記演算部は、前記チャネルインパルス応答推定部が推定したチャネルインパルス応答情報と、前記拡散符号系列計算部が出力する拡散符号系列とに基づいて伝達関数と、信号のブロックの前方からのブロック間干渉成分のチャネル成分及び拡散符号系列と、信号のブロックの後方からのブロック間干渉成分のチャネル成分及び拡散符号系列とを推定することを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、上記に記載の発明において、前記演算部は、前記無線信号に基づいて雑音電力成分を推定する雑音電力推定部を備え、前記マルチユーザ検出重み計算部は、前記雑音電力推定部が推定した雑音電力成分を加えて前記複数の無線送信装置ごとにN個の重みを算出することを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、上記に記載の発明において、前記複数の矩形フィルタ部から出力される信号に基づいて、前記無線送信装置ごとに逐次干渉成分の第1のレプリカ信号を生成する第1のレプリカ生成部を備え、前記複数の検出部は、前記重み演算部が算出したN個の重みと、前記第1のレプリカ生成部が逐次生成する前記第1のレプリカ信号により干渉成分が除去され前記直交変換部により直交変換された信号とに基づいて前記複数の無線送信装置ごとの信号を検出することを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、上記に記載の発明において、いずれか1つの前記検出部により前記重み演算部が算出したN個の重みと、前記第1のレプリカ生成部が逐次生成する前記第1のレプリカ信号により干渉成分が除去され前記直交変換部により直交変換された信号とに基づいて当該検出部に対応する無線送信装置の信号が検出された場合、当該検出部に対応する前記矩形フィルタ部から出力される信号に基づいて、当該検出部以外のいずれか1つの検出部に対応する前記無線送信装置の逐次干渉成分の第2のレプリカ信号を生成する第2のレプリカ生成部を備え、当該検出部以外のいずれか1つの検出部は、前記重み演算部が算出したN個の重みと、前記第1のレプリカ生成部が逐次生成する前記第1のレプリカ信号により干渉成分が除去され前記第2のレプリカ生成部が逐次生成する前記第2のレプリカ信号により干渉成分が除去され前記直交変換部により直交変換された信号とに基づいて当該検出部以外のいずれか1つの検出部に対応する無線送信装置の信号を検出することを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、上記に記載の発明において、前記矩形フィルタ部は、ブロック間干渉の影響を最も多く受けている無線送信装置に対応して、前記矩形窓フィルタの大きさNwサンプルを算出し、算出した大きさの前記矩形窓フィルタによりフィルタリングを行うことを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、上記に記載の発明において、前記直交変換部は、直交変換として高速フーリエ変換を行い、前記高速フーリエ変換の入出力信号数を、前記矩形窓フィルタの大きさに基づいて算出し、算出した入出力信号数に基づいて高速フーリエ変換を行うことを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、上記に記載の発明において、前記矩形フィルタ部からの出力に対して、縦がNw/2(Nwは矩形フィルタ部より出力される信号の個数)で、横がNx(Nxは任意の正数)で構成されるブロック・デ・インターリーバを行うデ・インターリーブ部を具備することを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、アンテナを備え、該アンテナにより無線信号を送信する無線送信装置であって、送信信号系列に対して、縦がNw/2で、横がNx(Nxは任意の正数)で構成されるブロック・インターリーバを行うシンボル・インターリーブ部を具備することを特徴とする無線送信装置である。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、本発明は、受信した無線信号から抽出される拡散状態の信号系列から、逆拡散後の信号のフィルタリングに用いられる矩形窓フィルタの大きさに拡散状態に応じた拡散係数を乗算した値に相当する個数ずつ先頭をずらしてN個ずつ信号を読み出し、読み出したN個の信号を直交変換し、無線送信装置ごとのN個の重みと、直交変換された信号とに基づいて、複数の無線送信装置ごとの信号を検出し、検出した信号ごとに逆直交変換を行い、拡散状態に応じて予め定められる拡散符号を用いて逆拡散を行い、逆拡散された信号ごとに矩形窓フィルタを用いてフィルタリングを行う構成とした。
これにより、ブロック間干渉の影響の少ない信号の部分を矩形窓フィルタにより抽出することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態は、以下に説明する図1に示す無線送信装置1−1〜1−Uと、図2に示す無線受信装置2とを備えた無線通信システムである。
【0023】
(無線送信装置の構成)
図1は、第1実施形態に係る第u番目の端末局装置に相当する無線送信装置1の内部構成を示す概略ブロック図である。なお、無線送信装置1−uと同じ構成を備えた無線送信装置がU個存在するもの(以下、このような無線送信装置を無線送信装置1−1〜1−Uという)として以下の説明を行う。無線送信装置1−uは、誤り訂正符号化器1101−u、インターリーバ回路1102−u、変調器1103−u、拡散器1104−u、波形整形回路1105−u、D/A変換器1106−u、無線部1107−u、送信アンテナ1108−uを備える。
【0024】
誤り訂正符号化器1101−uは、入力される送信データ系列に誤り訂正符号化を行う。インターリーバ部1102−uは、誤り訂正符号化された送信データに対してインターリーブを行う。変調器1103−uは、PSK(Phase Shift Keying)もしくはQAM(Quadrature Amplitude Modulation)による変調を行い送信シンボル系列を生成する。拡散器1104−uにより送信シンボル系列を、予め定められる拡散率Jの拡散符号系列によって拡散を行う。D/A変換器1106−uは、デジタル信号からアナログ信号に変換を行う。無線部1107−uは、送信アンテナ1108−uを通じて無線信号を送信する。
【0025】
(無線受信装置の構成)
図2は、第1実施形態に係る基地局装置に相当する無線受信装置2の内部構成を示す概略ブロック図である。
【0026】
無線受信装置2は、受信アンテナ1200、無線部1201、A/D変換器1202、メモリ1203、読出部1212、直交変換器1204、マルチユーザ検出器1205−1〜1205−U、逆直交変換器1206−1〜1206−U、逆拡散器1207−1〜1207−U、矩形フィルタ回路1208−1〜1208−U、復調器1209−1〜1209−U、デ・インターリーバ回路1210−1〜1210−U、誤り訂正復号器1211−1〜1211−U、マルチユーザ検出重み演算器1300を備える。
【0027】
無線部1201は、受信アンテナ1200を通じて受信した無線信号をベースバンド信号に変換する。A/D変換器1202は、ベースバンド信号をアナログ信号からデジタル信号に変換し、メモリ1203に変換したデジタル信号を記録する。読出部1212は、メモリ1203から信号をN個ずつ信号を読み出し、読み出した信号を直交変換器1204に入力する。直交変換器1204は、入力された信号に直交変換を行う。マルチユーザ検出器1205−1〜1205−Uは、それぞれ、直交変換された信号に対して前述した等化器215−1〜215−Uと同じく等化を行い、マルチユーザ検出重み演算器1300から入力される重みに従って、ユーザごと、すなわちU個の無線送信装置1−1〜1−Uごとの信号の検出を行う。逆直交変換器1206−1〜1206−Uは、入力される信号に対して逆直交変換より時系列信号に変換を行う。逆拡散器1207−1〜1207−Uは、逆拡散処理を行う。矩形フィルタ回路1208−1〜1208−Uは、入力される信号に対して後述する矩形窓フィルタによりフィルタリングを行い、フィルタリングにより抽出した信号を出力する。復調器1209−1〜1209−Uは、信号の復調を行う。デ・インターリーバ回路1210−1〜1210−Uは、デ・インターリーブを行う。誤り訂正復号器1211−1〜1211−Uは、誤り訂正復号を行い、送信データの推定値を出力する。
【0028】
なお、以下の説明では、オーバサンプリングを仮定していないが、A/D変換器1202でオーバサンプリングを行うことも可能である。この場合、A/D変換器1202から矩形フィルタ回路1208−1〜1208−Uの間のいずれかでダウンサンプリングを行うことになる。ダウンサンプリングをメモリ1203から直交変換器1204までの間のいずれかで行った場合、無線受信装置2の信号処理の演算規模を小さくすることが可能である。また、ダウンサンプリングをマルチユーザ検出器1205−1〜1205−Uから矩形フィルタ回路1208−1〜1208−Uまでのいずれかで行った場合、最終的に得られる信号の信号電力を大きくすることもできる。
【0029】
また、無線受信装置2では、通常用いられている方法により、各無線送信装置1−1〜1−Uの到来タイミングを推定する。
例えば、各無線送信装置1−1〜1−Uの送信信号内に予め定められたタイミング検出用トレーニング信号を挿入し、無線受信装置2では、受信信号と当該タイミング検出用トレーニング信号の相関を算出することによって、各無線送信装置1−1〜1−Uの到来タイミングを推定する方法などがある。
また、各無線送信装置1−1〜1−Uに、上記のタイミング検出用トレーニング信号として予め異なるタイミング検出用トレーニング信号を割り当てるようにしてもよく、その他、各無線送信装置1−1〜1−Uにおいて、予め定められた複数のタイミング検出用トレーニング信号のうち、ランダムに1つを選択して送信する方法もある。
【0030】
また、無線受信装置2に複数の受信アンテナを備えさせ、受信信号レベルの最も高い受信アンテナで受信した信号に対してのみ、タイミング検出用トレーニング信号と相関を算出する方法、受信アンテナで受信された信号ごとにタイミング検出用トレーニング信号との相関を算出する方法、受信アンテナで受信された信号ごとにタイミング検出用トレーニング信号との相関を算出し、算出した相関を合成して到来タイミングを推定する方法などもある。
【0031】
また、これらの到来タイミング検出の検出をフレームごとに行う方法、通信開始前に行う方法、前フレームで推定した到来タイミングを用いる方法などもある。以下の説明では、信号送信を行う通信フレームの前に各無線送信装置1−1〜1−Uからの到来タイミングを推定できているものとし、通信フレームでの動作について説明する。
【0032】
(矩形フィルタ処理の原理)
次に、図3及び図4を参照しつつ、前述した読出部1212及び矩形フィルタ回路1208−1〜1208−Uにより行われる処理の原理について説明する。
【0033】
図3は、ユーザ数、すなわち無線送信装置の数を2(以下、一例として無線送信装置1−1、1−2という)、無線送信装置1−1、及び無線送信装置1−2のパス数(伝搬路数)をそれぞれL(1)、L(2)としたときの受信信号系列を示した図である。
無線受信装置2側では、図3に示すように遅延の異なる複数のパスから構成される伝搬路を通じて到来した全無線送信装置1−1、1−2からの信号の重ね合わせの形式で無線信号を受信する。この受信信号に対し、図3に示す範囲(図3の「直交変換器入力」と記載された矢印の範囲)の信号を入力値として、直交変換器1204にて直交変換を行うと、無線送信装置1−1については、「a」の部分、無線送信装置1−2については、「x」の部分の信号の周期性は保たれている。一方、「b」、「c」、「y」、「z」の部分は周期性が保たれていないのでブロック間干渉(IBI:Inter-Block Interference)となる。ここで、マルチユーザ検出器1205−1〜1205−U及び逆直交変換器1206−1〜1206−Uによる信号分離、及び逆拡散器1207−1〜1207−Uによる逆拡散が行われた後のIBI成分は、ブロック区間全体には広がらず、主にブロックの両端近辺の信号にのみ影響を与えることになる。そのため、図4の下図に示すように矩形フィルタ回路1208−1〜1208−UによりIBIの影響が少ないブロックの中央部分のNw個の信号のみを取り出して復調することで、IBIの影響を回避することができることになる。
【0034】
図4の上図は、読出部1212による時系列信号の読み出し手順(重複切り出し法)を示した図である。読出部1212は、矩形フィルタ回路1206−1〜1206−Uの矩形窓フィルタの大きさであるNwの長さに対応する長さNw×J(ここで、Jは、拡散器1104−u及び逆拡散器1207−1〜1207−Uによる拡散率である)だけずらしてメモリ1203からN個ずつ時系列信号を読み出して直交変換器1204に入力することになる。
【0035】
次に、マルチユーザ検出器1205−1〜1205−Uにより用いられるマルチユーザ検出のための重みとして、これまでのマルチユーザ検出にて用いられる重みをそのまま用いようとすると、残留IBIの影響を考慮していないため、干渉をうまく抑圧できず特性が大幅に劣化してしまう。そこで、第1実施形態では、以下に説明するマルチユーザ重みを用いて、残留IBIの影響を抑圧することとしている。
【0036】
最初に以下の説明で用いる数式の定義を以下に示す。
【0037】
【数1】
【0038】
(重み算出の原理)
まず、受信信号について説明する。以下では、U個の無線送信装置1−1〜1−Uが無線受信装置2に通信することを想定する。
受信アンテナ1200で受信されるベースバンドにおける受信信号で、m番目に直交変換器1204に入力されるN×1の入力信号ベクトルは、次式(1)のように示すことができる。
【0039】
【数2】
【0040】
式(1)において、行列Hu(m)は、u番目の無線送信装置1−uの送信アンテナ1108−uと受信アンテナ1200の間のチャネル応答行列であり、最初の列が次式(2)で示されるベクトルhn(m)である。
【0041】
【数3】
【0042】
そして、行列Hu(m)は、ベクトルhn(m)のN×Nの巡回行列であり、次式(3)のように示される行列である。
【0043】
【数4】
【0044】
なお、式(3)において、L(u)は、u番目の無線送信装置1−uと無線受信装置2の間のチャネル応答数である。また、次式(4)で示されるCu(m)、及び次式(5)で示されるベクトルバーdu(m)(ここで、ベクトルバーdu(m)は、次式(5)で示されるように、dの上の「−」が示された表記に対応する。)は、m番目の直交変換器1204の入力におけるu番目の無線送信装置1−uから送信された拡散符号系列行列、及び推定可能な送信シンボルベクトルである。ただし、次式(6)の条件を満たすものとする。
【0045】
【数5】
【0046】
【数6】
【0047】
【数7】
【0048】
ここで、Jは、拡散率、τ(u)は、無線送信装置(ユーザ)1−uの遅延時間をJで割ったときの剰余(0≦τ(u)<J)、M=N/J、Nsは、マルチユーザ検出後に得られる1ユーザ(無線送信装置)あたりのシンボル数であり、次式(7)を満たすものとする。
【0049】
【数8】
【0050】
また、行列Xu(m)、行列Au(m)、及びベクトルuu(m)は、第m番目の直交変換器1204の入力における、前方からのIBI成分のチャネル成分、拡散符号系列及び信号成分である。また、行列Yu(m)、行列Bu(m)、及びベクトルvu(m)は、第m番目の直交変換器1204の入力における後方からのIBI成分のチャネル成分、拡散符号系列、及び信号成分である。これらは、それぞれ次式(8)〜(13)で示される。
【0051】
【数9】
【0052】
【数10】
【0053】
【数11】
【0054】
【数12】
【0055】
【数13】
【0056】
【数14】
【0057】
ベクトルn(m)は、第m番目の直交変換器1204への入力におけるN×1の雑音の時系列ベクトルであり、次式(14)で示される。ただし、次式(15)の条件を満たすものとする。
【0058】
【数15】
【0059】
【数16】
【0060】
受信信号に対して直交変換器1204によりNポイントの直交変換を行い、その信号に対し重み行列W(m)を用いてマルチユーザ検出を行う。その後、逆直交変換器1206−1〜1206−Uによる逆直交変換、及び逆拡散器1207−1〜1207−Uによる逆拡散が行われて送信信号の推定値が得られる。逆拡散後の出力信号ベクトルチルダdu(m)(ここで、ベクトルチルダdu(m)は、次式(16)で示されるように、dの上の「〜」が示された表記に対応する。)は、次式(16)で示される。
【0061】
【数17】
【0062】
ただし、式(16)において行列Fは、直交変換行列であり、次式(17)で示される。
【0063】
【数18】
【0064】
直交変換器1204における直交変換にフーリエ変換を用いた場合、上式(17)の要素(k,n)は、次式(18)として表すことができる。
【0065】
【数19】
【0066】
また、式(16)の行列バーHuは、次式(19)で表される。
【0067】
【数20】
【0068】
ここで、受信側で拡散符号系列及びチャネルインパルス応答が既知である場合、送信シンボル系列ベクトルバーdu(m)とマルチユーザ検出後のシンボル系列チルダdu(m)の誤差を最小とするような重み行列Wu(m)を求める。行列Wu(m)は、次式(20)で与えられる。
【0069】
【数21】
【0070】
式(20)を展開し、行列Wu(m)Hについて偏微分を行うことで、平均二乗誤差最少(MMSE)基準のマルチユーザ検出重みWu(m)を次式(21)のように求めることができる。
【0071】
【数22】
【0072】
また、無線受信装置2で、雑音電力の推定が不要な重みは次式(22)のように求めることができる。
【0073】
【数23】
【0074】
なお、式(21)及び式(22)において、行列Pは、次式(23)として与えられるものである。
【0075】
【数24】
【0076】
(マルチユーザ検出重み演算器の構成)
次に、図5を参照しつつマルチユーザ検出重み演算器1300の構成について説明する。図5は、マルチユーザ検出重み演算器1300の内部構成を示した概略ブロック図である。マルチユーザ検出重み演算器1300は、読出部1212に接続されるチャンネルインパルス応答推定部1401−1〜1401−U、チャンネルインパルス応答推定部1401−1〜1401−Uに接続される行列ハットH1(m)計算部1402−1〜行列ハットHU(m)計算部1402−U、行列ハットX1(m)計算部1403−1〜行列ハットXU(m)計算部1403−U、行列ハットY1(m)計算部1404−1〜行列ハットYU(m)計算部1404−Uとを備えている。ここで、行列ハットH、行列ハットX、行列ハットYは、図5に示すように、H、X、Yの上に「^」が記載される表記に対応し、行列H、行列X、行列Yは、H、X、Yがボールド体で表記されるものに対応する。
【0077】
また、マルチユーザ検出重み演算器1300は、拡散符号系列計算部1405−1〜1405−U、拡散符号系列計算部1405−1〜1405−Uに接続される行列C1(m)計算部1406−1〜CU(m)計算部1406−U、行列A1(m)計算部1407−1〜行列AU(m)計算部1407−U、行列B1(m)計算部1408−1〜行列BU(m)計算部1408−Uとを備えている。ここで、図5に示すように行列C、行列A、行列Bは、C、A、Bがボールド体で表記されるものに対応する。
【0078】
また、マルチユーザ検出重み演算器1300は、雑音電力推定部1409と、出力がマルチユーザ検出器1205−1〜1205−Uに接続されるマルチユーザ検出重み計算部1410とを備える。
【0079】
チャネルインパルス応答推定部1401−1〜1401−Uは、パイロット受信信号を入力信号として、次式(24)として示される、第u番目の無線送信装置1−uから送信され、無線受信装置2にて受信されたときの伝搬路のインパルス応答の推定値、すなわち伝達関数を推定して出力する。
【0080】
【数25】
【0081】
なお、チャネルインパルス応答推定部1401−1〜1401−Uによる伝達関数の推定は、受信信号とパイロット信号のスライディング相関を演算することによって推定することもできる。また、受信信号とパイロット信号から最尤推定によって伝達関数を推定することもできる。
【0082】
また、第1実施形態では、無線受信装置2において波形整形フィルタを備えていないことから、チャネルインパルス応答推定部1401−1〜1401−Uによりチャネルのインパルス応答と波形整形フィルタの畳み込みの結果を推定しており、これにより、マルチユーザ検出とともに波形整形を行っている。なお、チャネルインパルス応答推定部1401−1〜1401−Uによりチャネルのインパルス応答のみを推定する場合には、A/D変換器1202とメモリ1203の間に波形整形フィルタを備える必要がある。
【0083】
行列ハットH1(m)計算部1402−1〜行列ハットHU(m)計算部1402−U、行列ハットX1(m)計算部1403−1〜行列ハットXU(m)計算部1403−U、行列ハットY1(m)計算部1404−1〜行列ハットYU(m)計算部1404−Uは、上述したチャネルインパルス応答推定部1401−1〜1401−Uで推定されたチャネルインパルス応答を入力値としてそれぞれ、行列ハットH、ハットX、ハットYを算出し、その算出結果を出力として出力する。
【0084】
拡散符号系列計算部1405−1〜1405−Uは、各無線送信装置1−1〜1−Uで用いた拡散符号系列を予め記憶しておくか、もしくは推定し、その結果を出力する。行列C1(m)計算部1406−1〜CU(m)計算部1406−U、行列A1(m)計算部1407−1〜行列AU(m)計算部1407−U、行列B1(m)計算部1408−1〜行列BU(m)計算部1408−Uは、拡散符号系列計算部1405−1〜1405−Uより出力された拡散符号系列を入力信号とし、それぞれの行列C、A、Bを算出し、その算出結果を出力値として出力する。
【0085】
雑音電力推定部1409は、パイロット受信信号を入力信号とし、受信アンテナ1200における雑音電力を推定し、その推定値を出力値として出力する。
なお、雑音電力の推定は、例えば、受信信号電力と、推定した伝達関数の電力の和との差から求めることもできる。受信信号電力と、推定した伝達関数の電力の和との差から求める場合、伝達関数を推定することができなかった遅延成分の電力は、雑音電力に加算されることになる。また、その他、受信アンテナ1200で信号が受信されていない時間区間を検出し、検出した区間において測定した受信電力から雑音電力を測定することも可能である。
【0086】
マルチユーザ検出重み計算部1410は、上述した行列ハットH1(m)計算部1402−1〜行列ハットHU(m)計算部1402−U、行列ハットX1(m)計算部1403−1〜行列ハットXU(m)計算部1403−U、行列ハットY1(m)計算部1404−1〜行列ハットYU(m)計算部1404−U、行列C1(m)計算部1406−1〜CU(m)計算部1406−U、行列A1(m)計算部1407−1〜行列AU(m)計算部1407−U、行列B1(m)計算部1408−1〜行列BU(m)計算部1408−U、雑音電力推定部1409の出力値を入力値として、マルチユーザ検出重みを算出し、その計算結果を出力する。
【0087】
ここで、前述したマルチユーザ検出重み計算部1300では、無線送信装置1−1〜1−U側でパイロット信号を送信し、当該パイロット信号に基づいて、マルチユーザ検出重みを推定する方式である。しかし、受信信号のデータ部を入力信号として、判定帰還した信号を送信パイロット信号と同様にみなし、マルチユーザ検出重みを推定することも可能である。
また、前述したチャネルインパルス応答推定部1401−1〜1401−Uによるチャネルインパルス応答の推定は、時間信号を入力信号として推定を行っているが、直交変換器1204による直交変換後の受信信号を入力信号としてチャネルインパルス応答の推定を行うことも可能である。また、上述したマルチユーザ検出重み演算器1300では、雑音電力推定部1409で雑音電力を推定しているが、前述した式(26)で示される(重み2)を用いる場合、この部分は不要となる。
【0088】
(送受信にかかる信号処理)
次に、無線送信装置1−1〜1−Uと、無線受信装置2による信号処理について説明する。前提として、以下の説明では、信号送信を行う通信フレームの前に、各無線送信装置1−1〜1−Uからの受信タイミングは推定できているものとする。
【0089】
(送信側の信号処理)
まず、無線送信装置1−1〜1−Uによる送信処理について説明する。ここでは、第u番目の無線送信装置1−uの信号処理について説明する。まず、誤り訂正符号化器1101−uは、第u番目の無線送信装置1−uで送信されるバイナリデータ系列を入力信号として、誤り訂正符号化されたバイナリデータ系列を出力する。インターリーバ回路1102−uでは、該誤り訂正符号化器1101−uの出力を入力として、インターリーブしたデータ系列を出力する。その後、変調器1103−uは、インターリーブされたデータ系列を変調し、シンボル系列を出力する。拡散器1104−uは、該変調されたシンボル系列を入力として、各無線送信装置1−1〜1−Uにて予め割り当てられた拡散率Jの拡散符号系列によって拡散し、拡散した結果を出力する。
【0090】
拡散器1104−uにより拡散された信号は、波形整形回路1105−uに入力され、該波形整形回路1105−uは、波形整形を行った信号系列を出力する。D/A変換器1106−uは、波形整形回路1105−uから出力される信号に対してデジタル/アナログ変換を行い、変換したアナログ信号を出力する。
【0091】
無線部1107−uは、D/A変換器1106−uから出力されるアナログ信号をRF信号とし、送信アンテナ1108−uを通じて送信する。以上の信号処理が、全無線送信装置1−1〜1−Uで同様に行われる。
【0092】
(受信側の信号処理)
次に、無線受信装置2による受信処理について説明する。受信アンテナ1200で受信された信号は、その信号系列を入力信号として無線部1201に入力される。無線部1201は、入力される信号に対して周波数変換を行い周波数変換により得られたベースバンド信号を、A/D変換器202に出力する。A/D変換器1202は、入力されるベースバンド信号に対してアナログ/デジタル変換を行い、変換したデジタル信号をメモリ1203に記録する。読出部1212は、図4を参照して説明したように、Nw×J個ずつ先頭位置をシフトさせながら、N個ずつデータ系列を読み出し、読み出したN個のデータ系列を直交変換器1204に入力するとともに、マルチユーザ検出重み演算器1300に入力する。
【0093】
マルチユーザ検出重み演算器1300は、入力されるN個のデータ系列に基づいて、図5を参照して説明した構成、及び前述した重み算出の原理に基づいて、行列W(m)を算出する。一例として、次式(25)及び式(26)として2つのマルチユーザMMSE重みを示す。
【0094】
【数26】
【0095】
【数27】
【0096】
ここで、行列ハットHu(m)、行列ハットXu(m)、行列ハットYu(m)及びハットσは、行列Hu(m)、行列Xu(m)、行列Yu(m)及びσの推定値である。式(25)に示す(重み1)は、重み算出の原理の式(21)を参照して説明したように、平均二乗誤差(MMSE)基準で算出された解であり、式(26)に示す(重み2)は、重み算出の原理の式(22)を参照して説明したように、(重み1)で雑音の分散(電力)推定を不要とした重みである。
【0097】
なお、行列ハットHu(m)、行列ハットXu(m)、行列ハットYu(m)は、チャネルの時変動がほとんどない場合、行列ハットHu(n)、行列ハットXu(n)、行列ハットYu(n)(m≠n)として、n番目の直交変換の出力のマルチユーザ検出に用いることもできる。
【0098】
マルチユーザ検出器1205−1〜1205−Uは、直交変換器1204から直交信号が入力され、マルチユーザ検出重み演算器1300の出力値であるマルチユーザ検出重みが入力される。ここでは、第u番目の無線送信装置1−uを例として、当該無線送信装置1−u送信されたデータ系列を推定する処理について説明する。
【0099】
マルチユーザ検出器1205−uは、直交変換器1204により直交変換された受信信号の直交成分と、マルチユーザ検出重み演算器1300から入力されるマルチユーザ検出重みとに基づいて次式(27)で示される演算を行うことで、マルチユーザ検出を行い、N個の出力信号b(m,1)〜b(m,N)を出力する。
【0100】
【数28】
【0101】
次に、逆直交変換器1206−uは、マルチユーザ検出器1205−uから入力されるN個の信号に対して逆直交変換を行い、N個の逆直交変換された信号を出力値として出力する。逆拡散器1207−uは、逆直交変換されたN個の信号系列に対して、無線送信装置1−uにて拡散するときに用いられた拡散符号系列によって逆拡散を行い、逆拡散したM個の信号を出力値として出力する。
【0102】
矩形フィルタ回路1208−uは、図4を参照して説明したように、逆拡散されたM個の信号から、IBI(ブロック間干渉)の影響が大きい前半部Mh個と後半部Mt個の信号を、Nwの矩形窓フィルタにより除去し、干渉の影響が小さい部分である、当該矩形窓フィルタの大きさであるNw(=N−Mh−Mt)個の信号のみを抽出し、抽出した信号を出力信号として出力する。
【0103】
復調器1209−uは、矩形フィルタ回路1208−uにより抽出された信号を復調し、復調した信号を出力する。デ・インターリーバ回路1210−uは、復調された信号をデ・インターリーブし、その結果を誤り訂正復号器1211−uに入力する。誤り訂正復号器1211−uは、デ・インターリーブされた信号に対して誤り訂正復号を行い、復号した信号を出力する。
【0104】
このような構成を適用することで、広帯域信号を伝送する場合においても、任意の無線送信装置1−1〜1−U間のタイミングオフセットでも信号を無線送信装置1−1〜1−Uごとに分離することが可能となる。なお、前述した処理は、ガードインターバル(GI)が存在する場合にも適用可能である。また、無線送信装置1−1〜1−U、及び無線受信装置2に複数のアンテナを備えさせた構成であるMIMO(Multiple Input Multiple Output)伝送にも適用可能である。
【0105】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態にかかる矩形窓フィルタのサイズを可変とする構成について説明する。第1実施形態における無線通信システムでは、無線送信装置1−1〜1−Uごとに伝搬路(チャネルインパルス応答)が異なるため、無線送信装置1−1〜1−UごとにIBIの影響を大きく受けているブロックの端の信号数も異なる。そこで、チャネル推定を行った結果に基づいて、IBIの影響を受けている信号が最も多い無線送信装置1−1〜1−Uに合わせて、除去する前半部の信号数Mh、及び後半部の信号数Mt、矩形フィルタにて抽出する信号数Nw(矩形窓フィルタの大きさに相当)を適用的に変化させることで伝送品質を改善することが可能となる。
【0106】
具体的には、まず、無線受信装置2に予め最大遅延時間とNwの大きさを対応付けたテーブル、あるいは最大遅延時間から当該最大遅延時間に適応するNwの大きさを算出する関数情報を記憶させておく。そして、マルチユーザ検出重み演算器1300のチャネルインパルス応答推定部1401−1で推定したチャネルインパルス応答から遅延スプレッドもしくはチャネルの最大遅延時間を算出し、算出した最大遅延時間に基づいて、前述したテーブルあるいは関数情報を用いて、最適なNwを求め、求めたNwを矩形フィルタ回路1208−1〜1208−Uに入力する。矩形フィルタ回路1208−1〜1208−Uは、入力されるNwの値に基づいて、矩形窓フィルタの大きさを変化させて構成することになる。
【0107】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。ブロックの端のIBIの影響を大きく受けている信号数は、直交変換器1204のサイズNによらず一定である。そこで、直交変換器1204が高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)を行う場合、入力信号数及び出力信号数をN=2n、逆拡散後に矩形フィルタ回路1208−1〜1208−Uにより抽出する信号数がNwであるとき、1つの信号あたりのFFT演算量が最も少なくすむnの値は次式(28)で与えられることになる。
【0108】
【数29】
【0109】
ただし、FFTの演算量は、Nlog2N=n×2nである。また、前述した第2実施形態による演算結果より、Nwが算出された場合、最適なFFTブロックの大きさnを式(28)により算出し、直交変換器1204及び逆直交変換器1206−1〜1206−Uに算出したnを入力することで、最小の演算量にて全信号を復調することが可能となる。
【0110】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。第1実施形態では、IBIによる影響がブロックの端の信号ほど大きくなるため、逆直交変換器1206−1〜1206−Uによる逆直交変換後の信号に対して、ブロックの中心の信号ほど信頼性が高く、すなわち誤り率が小さくなり、ブロックの端へ行くほど信頼性が低く、すなわち誤り率が大きくなる。
【0111】
そこで、無線送信装置1−uにおいて、変調器1103−uと、拡散器1104−uの間に、図6に示すようなNw/2×Nxのブロック・インターリーバ回路を備えさせ、入力される変調後の信号系列を縦に読み込み、横に書き出していく結果を出力させる。
【0112】
また、無線受信装置2においては、矩形フィルタ回路1208−1〜1208−Uと復調器1209−1〜1209−Uの間に、Nw/2×Nxのブロック・デ・インターリーバ回路を備えさせ、入力される矩形窓フィルタの出力後の各信号系列を横に読み込み、縦に書き出していく結果を出力させる。ここで、Nxは、任意の正の整数である。
【0113】
このような、ブロック・インターリーバ回路及びブロック・デ・インターリーバ回路を設けることで、信頼性の高い信号と信頼性の低い信号とが交互に並べることができ、これによって、誤りがバーストからランダムになるため、誤り訂正符号の効果を高めることが可能となる。
【0114】
また、上記のブロック・インターリーバ回路、及びブロック・デ・インターリーバ回路の代わりに、ランダムインターリーバ、及びランダム・デ・インターリーバを行う回路を用いるようにしてもよい。
【0115】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。
第5実施形態は、第1から第4実施形態かかる無線受信装置2におけるマルチユーザ検出の代わりに、逐次干渉除去により信号を分離する無線受信装置3を備えた無線通信システムである。
【0116】
図7は、逐次干渉除去を行なう無線受信装置3の内部構成を示した概略ブロック図である。無線受信装置3は、受信アンテナ1500、無線部1501、A/D変換器1502、メモリ1503、読出部1507、逐次干渉除去部1504、逐次干渉除去部用重み演算器1510、デ・インターリーバ回路1505−1〜1505−U、誤り訂正復号器1506−1〜1506−Uを備える。
【0117】
無線部1501は、受信アンテナ1500を通じて受信した信号に対して周波数変換を行い、ベースバンド信号を出力する。A/D変換器1502は、ベースバンド信号を入力信号として、アナログ信号をデジタル信号へ変換し、変換したデジタル信号をメモリ1503に記録する。読出部1507は、メモリ1503に記憶されたデジタル信号の信号系列を、Nw×J個ずつ先頭をシフトさせながら、N個ずつ読み出し、読み出したN個の信号を、逐次干渉除去部1504に入力するとともに逐次干渉除去部用重み演算器1510に入力する。逐次干渉除去部用重み演算器1510は、入力されるN個の信号に基づいて等化重みを算出し、算出した等化重みを逐次干渉除去部1504に入力する。逐次干渉除去部1504は、読出部1507から入力されるN個の信号と、逐次干渉除去部用重み演算器1510から入力される等化重みとに基づいて、干渉除去を行なったU個の信号系列を出力する。デ・インターリーバ回路1505−1〜1505−Uは、逐次干渉余虚装置1504から出力されるU個の信号を入力信号として、デ・インターリーブを行う。誤り訂正復号器1506−1〜1506−Uは、デ・インターリーブされた信号系列に対して誤り訂正復号化を行い、復号した信号を出力する。
【0118】
図8は、逐次干渉除去部1504の内部構成、及び逐次干渉除去部1504と逐次干渉除去部用重み演算器1510との接続関係を示した図である。
【0119】
逐次干渉除去部1504は、読出部1507に接続される第1干渉減算器1601、直交変換器1602−1〜1602−U、信号検出器1603−1〜1603−U、逆直交変換器1604−1〜1604−U、逆拡散器1605−1〜1605−U、矩形フィルタ回路1606−1〜1606−U、それぞれデ・インターリーバ回路1505−1〜1505−Uに接続される信号判定部1607−1〜1607−U、遅延回路1608−1〜1608−U、第1レプリカ生成回路1609、第2レプリカ生成回路1611−1〜1611−(U−1)、第2干渉減算器1610−1〜1610−(U−1)を備える。
【0120】
逐次干渉除去部1504を動作させる際には、順序付けを行うことが必要であり、例えば、順序付けの方法として、チャネル推定値を用いたり、瞬時受信電力(信号電力対雑音電力比、SNR:Signal to Noise Ratio)を用いたり、各送信信号系列に対する平均の伝送品質(例えば、信号電力対干渉・雑音電力比、SINR:Signal to Interference plus Noise power Ratioや、ビット誤り特性等)を用いたり、優先度の高い送信信号系列順の順序を用いるなどの、通常の逐次干渉除去において用いられる順序付けを全て適用することができる。
【0121】
以下の説明では、第m番目のブロックの受信信号において、1番目の無線送信装置1−1から順に信号判定を行い、第u番目の無線送信装置1−uの復調時には、第(u−1)番目の信号判定結果を用いる場合について説明する。
【0122】
第1レプリカ生成回路1609は、第(m−1)番目のブロック以前における信号判定部1607−1〜1607−Uによる判定後の、第U番目の系列からなる時系列の受信信号系列を入力信号として、推定したチャネルインパルス応答を用いて、次式(29)に示す、直前のブロックからの干渉成分のレプリカを生成し、生成したレプリカを出力する。
【0123】
【数30】
【0124】
第1干渉減算器1601は、時系列の受信信号ベクトルr(m)、及び第1レプリカ生成回路1609で生成された直前のブロックからの式(29)で示された干渉成分のレプリカを入力として、受信信号から干渉成分を減算し、次式(30)で示す結果を出力する。
【0125】
【数31】
【0126】
直交変換器1602−uは、1つのブロックがN個からなる干渉成分除去後の受信信号を入力信号として直交変換を行い、N個の直交成分を出力する。ここで、直交変換器1602−uから出力された直交成分ベクトルハットru−1(m)は、(u−1)番目の無線送信装置2までの干渉信号を減算した受信信号に対して直交変換を行った後の第k直交成分であり、次式(31)で示される。
【0127】
【数32】
【0128】
信号検出器1603−uは、直交変換器1602−uの出力信号、及び逐次干渉除去部用重み演算器1510で算出された重みを入力信号として信号検出を行い、N個からなるその結果を出力する。ここで、信号検出器1603−uにおける出力は次式(32)で示される。
【0129】
【数33】
【0130】
式(32)において、行列Wu(m)は、逐次干渉除去部用重み演算器1510で生成される逐次干渉除去部1504のためのマルチユーザ検出重みである。一例として、マルチユーザ検出、及び逆拡散を行った後の受信信号と、拡散前の送信信号との二重誤差を最小とするような重みを、次式(33)に示す。
【0131】
【数34】
【0132】
式(33)で示される重みは、前述したマルチユーザ検出のMMSE重みの算出と同様に式を展開することが可能である。
【0133】
次に、逆直交変換器1605−uは、信号検出器1603−uにより検出されたN個の信号に対して逆直交変換を行い、N個の時系列信号を出力する。逆拡散器1605−uは、逆拡散されたN個の時系列信号に対して、無線送信装置1−uで拡散を行う際に用いた拡散符号系列を用いて逆拡散を行う。矩形フィルタ回路1606−uは、逆拡散後の信号系列に対して、IBI(ブロック間干渉)の影響が大きい前半部のMh個と後半部Mt個の信号を除去し、干渉の影響が小さい中心部に存在するNw(=N/J−Mh−Mt)個の信号を抽出する矩形窓フィルタを用いてNw個の信号を出力する。
【0134】
信号判定部1607−uは、Nw個の時系列信号に対して、軟判定もしくは硬判定を行い、Nw個の判定結果を出力する。遅延回路1608−uは、軟判定もしくは硬判定されたNw個の信号に対して、1ブロック分の遅延を与えて第1レプリカ生成回路1609に入力する。
【0135】
次に、第2干渉減算器1610−uは、第1干渉減算器1601にて干渉が除去された受信信号ベクトルz(m)、及び第2レプリカ生成回路1611−uで生成されたu番目の無線送信装置1−uからの干渉成分のレプリカを入力として、干渉を除去した受信信号から、新たに生成された干渉成分を減算した信号を出力する。ここで、第2干渉減算器1610−uの出力信号は、次式(34)で示される。
【0136】
【数35】
【0137】
なお、受信信号ベクトルz(m)を、式(30)で置き換えることで、第2干渉減算器1610−uの出力信号を次式(35)として示すことができる。
【0138】
【数36】
【0139】
なお、直交変換器1602−1〜1602−Uは、第1干渉減算器1601の前段で行うことも可能であり、この場合、直交変換器は、U個必要とせず、1個の直交変換器を備えればよいこととなる。また、この場合、第1レプリカ生成回路1609、及び第2レプリカ生成回路1611−1〜1611−(U−1)から出力される干渉成分のレプリカは、直交成分に変換する必要があり、第1干渉減算器1601、及び第2干渉減算器16101−1〜1610−(U−1)は、直交成分ごとに干渉を除去することになる。
【0140】
上記では、信号判定部1607−1〜1607−Uは、軟判定もしくは硬判定を行い、軟判定値もしくは硬判定値のいずれかの信号を出力としたが、一度、デ・インターリーバ回路および誤り訂正復号器へ入力し、その出力結果を軟判定もしくは硬判定するようにしてもよい。
【0141】
上記逐次干渉除去部1504は、1ブロックで閉じた形で動作することとしているが、複数ブロックに渡って逐次干渉除去を行うことも可能である。例として、4ユーザで各ユーザの送信アンテナがそれぞれ1本で、ユーザ1→ユーザ2→ユーザ3→ユーザ4の順で復調する場合について以下に詳細に説明する。
【0142】
ここで、図9は、逐次干渉除去部1504の復調順の一例を示す概念図である。図9に示すような順番で各ブロックを復調していくことにより、例えば、ユーザ3の第(m+1)ブロックを復調する際、ユーザ1については第(m+3)ブロックまでを、ユーザ2については第(m+2)ブロックまで復調しているので、第(m+1)ブロックにおけるユーザ1及びユーザ2の全信号成分のレプリカの生成が可能となる。したがって、復調誤りが生じていない場合には、ユーザ1及びユーザ2からの干渉信号を完全に除去してユーザ3の信号を復調することができるので、特性が改善される。
【0143】
これを一般的に書くと、第uユーザの第iアンテナから送信された信号の第mブロックの復調を考えた場合、第uユーザの第(i−1)アンテナから送信された送信信号に関しては、少なくとも第(m+1)ブロックまでを復調するように動作させる。これによって、第uユーザの第iアンテナから送信された信号の第mブロックにおける復調は、第uユーザの第(i−1)アンテナまでの干渉を除去した、次式(35)に示す受信信号から行うことになる。これは、第uユーザの第(i−1)アンテナまでの、第(m+1)ブロックからの次式(36)で示されるIBI成分も除去されていることになる。
【0144】
【数37】
【0145】
【数38】
【0146】
このため、上記逐次干渉除去部1504では、第(m+1)ブロックからの干渉を除去できなかったが、このように複数ブロックに渡って動作させることで、干渉をより低減し、第uユーザの第iアンテナから送信された信号の復号特性を改善させることが可能となる。
【0147】
上述した動作は、逐次干渉除去部1504の説明であったが、これを従来の技術と同様に、並列干渉除去を行う装置として適用することも可能である。また、上記逐次干渉除去部1504にも、各種オプションを用いることが可能である.
【0148】
上述した実施形態によれば、従来のGIを用いるマルチユーザMIMOと比較した場合、複数の送信局からの信号の受信タイミングがそれぞれGI長を超えてしまった場合でも、タイミングオフセットによる伝送品質の劣化を軽減することが可能となる。したがって、送信局のタイミングコントロールが不要、もしくは簡易なものでよくなるため、送信側のシステムの簡易化を図ることができる。
【0149】
また、従来の技術で必要であったGIが不要となるため、伝送効率を向上させることができる。
【0150】
さらに、複数の送信局が同時に通信することが可能となるため、周波数利用効率を改善することが可能となる。
【0151】
また、従来の技術と比べて、マルチユーザ検出器の重み及び逆直交変換後の受信信号に対して矩形窓を乗算する演算器を追加しただけであるので,大幅なハードウェアの変更を必要としない。
【0152】
また、マルチユーザMIMOとしてシステムを構成することも可能であるため、GIが無い送信信号でも、ユーザ間・アンテナ間の信号分離が可能となる。
【0153】
なお、前述した第2実施形態、第3実施形態、第4実施形態の構成を、第5実施形態の無線通信システムに適用してもよい。これらの実施形態に適用した場合、第2実施形態では、マルチユーザ検出重み演算器1300のチャネルインパルス応答推定部1401−1で推定したチャネルインパルス応答から遅延スプレッドもしくはチャネルの最大遅延時間を算出するとしていたが、第5実施形態では、逐次干渉除去部用重み演算器1510にて、チャネルインパルス応答を推定する構成となる。また、第3実施形態にて、算出したnを直交変換器1204及び逆直交変換器1206−1〜1206−Uに入力するとしていたが、第5実施形態では、直交変換器1602−1〜1602−U及び逆直交変換器1604−1〜1604−Uに入力することになる。また、第4実施形態にて、矩形フィルタ回路1208−1〜1208−Uと復調器1209−1〜1209−Uの間に、ブロック・デ・インターリーバ回路を設けるとしていたが、第5実施形態では、矩形フィルタ回路1606−1〜1606−Uの出力に、ブロック・デ・インターリーバ回路を設けることになる。
【0154】
また、本発明に記載の重み演算部は、マルチユーザ検出重み演算器1300または逐次干渉除去部用重み演算器1510に対応する。また、本発明に記載の検出部は、マルチユーザ検出器1205−1〜1205−U、または、逐次干渉除去部1504に対応する。
【図面の簡単な説明】
【0155】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる無線送信装置を示す概略ブロック図である。
【図2】同実施形態にかかる無線受信装置を示す概略ブロック図である。
【図3】同実施形態にかかる受信信号系列の一例を示した図である。
【図4】同実施形態にかかる重複切り出し法を用いるマルチユーザ検出を説明するための図である。
【図5】同実施形態にかかるマルチユーザ検出重み演算器を示す概略ブロック図である。
【図6】本発明の第2実施形態にかかるブロック・インターリーバ及びブロック・デ・インターリーバを説明するための図である。
【図7】本発明の第5実施形態にかかる逐次干渉除去を行う無線送信装置を示す概略ブロック図である。
【図8】同実施形態にかかる逐次干渉除去部、及び逐次干渉除去部と逐次干渉除去部用重み演算器との接続関係を示した図である。
【図9】同実施形態にかかる逐次干渉除去部の復調順の一例を示す概略図である。
【図10】GIを用いるDS−CDMAにおける端末局の無線送信装置の構成を示した図である。
【図11】GIを用いるDS−CDMAにおける基地局の無線受信装置の構成を示した図である。
【図12】GIの挿入を示した図である。
【符号の説明】
【0156】
2 無線受信装置
1200 アンテナ
1201 無線部
1202 A/D変換器
1203 メモリ
1212 読出部
1204 直交変換器
1205−1〜1205−U マルチユーザ検出器
1206−1〜1206−U 逆直交変換器
1207−1〜1207−U 逆拡散器
1208−1〜1208−U 矩形フィルタ回路
1209−1〜1209−U 復調器
1210−1〜1210−U デ・インターリーバ回路
1211−1〜1211−U 誤り訂正復号器
1300 マルチユーザ検出重み演算器
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、広帯域信号の送受信を行う無線通信システムにおける無線受信装置、及び無線送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガードインターバル(GI)を用いる直接拡散符号分割多元接続(DS−CDMA)伝送における、端末局装置からアクセスポイントへの上りリンク通信が存在する(例えば、非特許文献1参照)。図10は、GIを用いる上りリンクDS−CDMA伝送における第u番目の端末局装置(MT)の送信機の構成を示したブロック図である。また、図11は、GIを用いる上りリンクDS−CDMA伝送における基地局装置(BS)の受信機の構成例を示したブロック図である。ここで、基地局装置に対して、端末局装置(送信局)がU個存在するとする。また、基地局装置(受信局)における離散フーリエ変換のポイント数をNとする。また、GI長をNgとする。また、拡散率をJ(J>U)とする。
【0003】
図10に示すDS−CDMA伝送の第u番目の端末局装置の送信機は、誤り訂正符号化器101−u、インターリーバ部102−u、データ変調器103−u、拡散器104−u、GI挿入器105−u、波形整形回路106−u、D/A変換器107−u、無線部108−u、送信アンテナ109−uを備える。
【0004】
図10に示す第u番目の端末局装置において、送信データ系列が誤り訂正符号化器101−uで符号化された後、インターリーバ部102−uで送信データをインターリーブし、データ変調器103−uでPSK(Phase Shift Keying)もしくはQAM(Quadrature Amplitude Modulation)による変調が行われて、送信シンボル系列が生成される。その後、拡散器104−uにより送信シンボル系列を、拡散率Jの拡散符号系列によって拡散し、図12に示すように、GI挿入部105−uでN個の送信チップごとに1つのブロックを形成し、その末尾Ng個のチップをコピーし、GIとして挿入する。波形整形回路106−uでは、帯域制限を行うデジタルフィルタリングを行い、D/A変換器107−uでデジタル信号からアナログ信号に変換が行われた後、無線部108−uを経由して送信アンテナ109−uを通じて送信が行われる。
【0005】
一方、図11に示すようなDS−CDMA伝送の基地局装置(BS)の受信機は、受信アンテナ210、無線部211、A/D変換器212、GI除去部213、離散フーリエ変換器214、マルチユーザ検出部300−1〜300−U、データ復調器218−1〜218−U、デ・インターリーバ部219−1〜219−U、誤り訂正復号器220−1〜220−Uを備える。また、マルチユーザ検出部300−1〜300−Uのそれぞれは、等化器215−1〜215−U、逆離散フーリエ変化器216−1〜216−U、逆拡散器217−1〜217−Uを備える。
【0006】
図11において、U個の端末局装置から送信されるDS−CDMA送信信号は、受信アンテナ210により受信され、無線部211でベースバンド信号に変換され、A/D変換器212でアナログ信号からデジタル信号に変換され、GI除去部213によりGIが除去される。その後、離散フーリエ変換器214で、受信信号をN個の周波数成分に変換する。変換された直交信号は、端末局装置(ユーザ)ごとの信号を得るために、等化器215−1〜215−Uによって等化が行われる。等化された直交信号は、逆離散フーリエ変換器216−1〜216−Uにより、時系列信号に変換され、逆拡散器217−1〜217−Uにより、逆拡散処理が行われる。等化から逆拡散までの処理は、マルチユーザ検出部300−1〜300−Uで行われる処理であり、マルチユーザ検出重みを用いて行われる処理である。逆拡散後の時系列信号に対し、データ復調器218−1〜218−Uにより復調が行われ、復調された信号に対してデ・インターリーバ部219−1〜219−Uによりデ・インターリーブが行われ、誤り訂正復号器220−1〜220−Uにより誤り訂正復号が行われ、送信データの推定値が得られることになる。
【非特許文献1】津村 茂彦、原 嘉孝、原 晋介、「上り回線におけるMC-CDMA方式とCP-DS-CDMA方式の特性比較」、電子情報通信学会、信学技報、RCS2003-370、pp.101-106, 2004年3月.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、複数の端末局装置(送信局)から信号が送信される場合、信号伝送のタイミングは、各端末局装置で独立に制御されることになる。このような場合、基地局装置(受信局)では、各端末局装置から送信された信号の到来タイミングが異なることになる。
【0008】
前述したDS−CDMAの上りリンクでは、送信信号をN個の信号からなるブロックとして、そのブロックごとにNg個の信号からなるガードインターバル(GI)を図12のように挿入して送信する。このGIの挿入時間Tgが、端末局装置(ユーザ)間の送信信号の到来する最大のタイミングオフセットTuよりも大きい場合、すなわちTg≧Tuの場合、受信信号の周波数成分は他の信号との直交性が保たれているので信号分離が可能である。
【0009】
しかしながら、GIの挿入時間Tgが、端末局装置(ユーザ)間の送信信号の到来する最大のタイミングオフセットTuより小さい場合、すなわちTg<Tuの場合、他の送信信号との直交性が崩れてしまい、信号がうまく分離できないため、特性が大幅に劣化してしまう。従って、前述したDS−CDMAの場合、複数の端末局装置からの信号がGI長を超えるような異なる受信タイミングをもって基地局装置(受信局)に到来した場合、どのようにして複数ユーザの信号を分離するかが課題となる。
【0010】
本発明は、上記問題を解決すべくなされたもので、その目的は、複数のユーザ、すなわち無線送信装置から送信される信号がGI長を超えるような異なるタイミングをもって到来した場合でも、複数ユーザの信号の分離を可能とする無線受信装置、及び無線送信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記問題を解決するために、本発明は、複数の無線送信装置から送信された無線信号を受信するアンテナと、前記無線信号から抽出される拡散状態の信号系列から、逆拡散後の信号のフィルタリングに用いられる矩形窓フィルタの大きさと前記拡散状態に応じた拡散係数とに基づいて定められる個数ずつ先頭をずらして、信号のブロック単位であるN個ずつ信号を読み出す読出手段と、前記読出手段が読み出したN個の信号を直交変換する直交変換部と、前記複数の無線送信装置ごとに、前記無線送信装置の送信信号の検出に用いられる前記拡散状態を考慮したN個の重みを算出する重み演算部と、前記重み演算部が算出した前記無線送信装置ごとのN個の重みと、前記直交変換部により直交変換された信号とに基づいて、前記複数の無線送信装置ごとの信号を検出する複数の検出部と、前記複数の検出部が検出した信号ごとに逆直交変換を行う複数の逆直交変換部と、前記複数の逆直交変換部から出力される信号ごとに前記拡散状態に応じて予め定められる拡散符号を用いて逆拡散を行う複数の逆拡散器と、前記複数の逆拡散器から出力される信号ごとに前記矩形窓フィルタを用いてブロック間干渉の影響を受けている部分についてフィルタリングを行う複数の矩形フィルタ部と、前記複数の矩形フィルタ部が出力するNw個の信号ごとに復調を行う複数の復調部と、を備えたことを特徴とする無線受信装置である。
【0012】
また、本発明は、上記に記載の発明において、前記重み演算部は、前記無線信号に基づいて前記複数の無線送信装置との間のチャネルのチャネルインパルス応答情報を推定するチャネルインパルス応答推定部と、前記無線信号に基づいて前記複数の無線送信装置で用いられた拡散符号系列を出力する拡散符号系列計算部と、前記チャネルインパルス応答推定部が推定したチャネルインパルス応答情報と、前記拡散符号系列計算部が出力する拡散符号系列とに基づいて、伝達関数と、ブロック間干渉成分のチャネル成分及び拡散符号系列とを推定する演算部と、前記演算部が推定したチャネルごとの伝達関数と、ブロック間干渉成分のチャネル成分及び拡散符号系列とに基づいて前記複数の無線送信装置ごとにN個の重みを算出するマルチユーザ検出重み計算部と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上記に記載の発明において、前記演算部は、前記チャネルインパルス応答推定部が推定したチャネルインパルス応答情報と、前記拡散符号系列計算部が出力する拡散符号系列とに基づいて伝達関数と、信号のブロックの前方からのブロック間干渉成分のチャネル成分及び拡散符号系列と、信号のブロックの後方からのブロック間干渉成分のチャネル成分及び拡散符号系列とを推定することを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、上記に記載の発明において、前記演算部は、前記無線信号に基づいて雑音電力成分を推定する雑音電力推定部を備え、前記マルチユーザ検出重み計算部は、前記雑音電力推定部が推定した雑音電力成分を加えて前記複数の無線送信装置ごとにN個の重みを算出することを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、上記に記載の発明において、前記複数の矩形フィルタ部から出力される信号に基づいて、前記無線送信装置ごとに逐次干渉成分の第1のレプリカ信号を生成する第1のレプリカ生成部を備え、前記複数の検出部は、前記重み演算部が算出したN個の重みと、前記第1のレプリカ生成部が逐次生成する前記第1のレプリカ信号により干渉成分が除去され前記直交変換部により直交変換された信号とに基づいて前記複数の無線送信装置ごとの信号を検出することを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、上記に記載の発明において、いずれか1つの前記検出部により前記重み演算部が算出したN個の重みと、前記第1のレプリカ生成部が逐次生成する前記第1のレプリカ信号により干渉成分が除去され前記直交変換部により直交変換された信号とに基づいて当該検出部に対応する無線送信装置の信号が検出された場合、当該検出部に対応する前記矩形フィルタ部から出力される信号に基づいて、当該検出部以外のいずれか1つの検出部に対応する前記無線送信装置の逐次干渉成分の第2のレプリカ信号を生成する第2のレプリカ生成部を備え、当該検出部以外のいずれか1つの検出部は、前記重み演算部が算出したN個の重みと、前記第1のレプリカ生成部が逐次生成する前記第1のレプリカ信号により干渉成分が除去され前記第2のレプリカ生成部が逐次生成する前記第2のレプリカ信号により干渉成分が除去され前記直交変換部により直交変換された信号とに基づいて当該検出部以外のいずれか1つの検出部に対応する無線送信装置の信号を検出することを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、上記に記載の発明において、前記矩形フィルタ部は、ブロック間干渉の影響を最も多く受けている無線送信装置に対応して、前記矩形窓フィルタの大きさNwサンプルを算出し、算出した大きさの前記矩形窓フィルタによりフィルタリングを行うことを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、上記に記載の発明において、前記直交変換部は、直交変換として高速フーリエ変換を行い、前記高速フーリエ変換の入出力信号数を、前記矩形窓フィルタの大きさに基づいて算出し、算出した入出力信号数に基づいて高速フーリエ変換を行うことを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、上記に記載の発明において、前記矩形フィルタ部からの出力に対して、縦がNw/2(Nwは矩形フィルタ部より出力される信号の個数)で、横がNx(Nxは任意の正数)で構成されるブロック・デ・インターリーバを行うデ・インターリーブ部を具備することを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、アンテナを備え、該アンテナにより無線信号を送信する無線送信装置であって、送信信号系列に対して、縦がNw/2で、横がNx(Nxは任意の正数)で構成されるブロック・インターリーバを行うシンボル・インターリーブ部を具備することを特徴とする無線送信装置である。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、本発明は、受信した無線信号から抽出される拡散状態の信号系列から、逆拡散後の信号のフィルタリングに用いられる矩形窓フィルタの大きさに拡散状態に応じた拡散係数を乗算した値に相当する個数ずつ先頭をずらしてN個ずつ信号を読み出し、読み出したN個の信号を直交変換し、無線送信装置ごとのN個の重みと、直交変換された信号とに基づいて、複数の無線送信装置ごとの信号を検出し、検出した信号ごとに逆直交変換を行い、拡散状態に応じて予め定められる拡散符号を用いて逆拡散を行い、逆拡散された信号ごとに矩形窓フィルタを用いてフィルタリングを行う構成とした。
これにより、ブロック間干渉の影響の少ない信号の部分を矩形窓フィルタにより抽出することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態は、以下に説明する図1に示す無線送信装置1−1〜1−Uと、図2に示す無線受信装置2とを備えた無線通信システムである。
【0023】
(無線送信装置の構成)
図1は、第1実施形態に係る第u番目の端末局装置に相当する無線送信装置1の内部構成を示す概略ブロック図である。なお、無線送信装置1−uと同じ構成を備えた無線送信装置がU個存在するもの(以下、このような無線送信装置を無線送信装置1−1〜1−Uという)として以下の説明を行う。無線送信装置1−uは、誤り訂正符号化器1101−u、インターリーバ回路1102−u、変調器1103−u、拡散器1104−u、波形整形回路1105−u、D/A変換器1106−u、無線部1107−u、送信アンテナ1108−uを備える。
【0024】
誤り訂正符号化器1101−uは、入力される送信データ系列に誤り訂正符号化を行う。インターリーバ部1102−uは、誤り訂正符号化された送信データに対してインターリーブを行う。変調器1103−uは、PSK(Phase Shift Keying)もしくはQAM(Quadrature Amplitude Modulation)による変調を行い送信シンボル系列を生成する。拡散器1104−uにより送信シンボル系列を、予め定められる拡散率Jの拡散符号系列によって拡散を行う。D/A変換器1106−uは、デジタル信号からアナログ信号に変換を行う。無線部1107−uは、送信アンテナ1108−uを通じて無線信号を送信する。
【0025】
(無線受信装置の構成)
図2は、第1実施形態に係る基地局装置に相当する無線受信装置2の内部構成を示す概略ブロック図である。
【0026】
無線受信装置2は、受信アンテナ1200、無線部1201、A/D変換器1202、メモリ1203、読出部1212、直交変換器1204、マルチユーザ検出器1205−1〜1205−U、逆直交変換器1206−1〜1206−U、逆拡散器1207−1〜1207−U、矩形フィルタ回路1208−1〜1208−U、復調器1209−1〜1209−U、デ・インターリーバ回路1210−1〜1210−U、誤り訂正復号器1211−1〜1211−U、マルチユーザ検出重み演算器1300を備える。
【0027】
無線部1201は、受信アンテナ1200を通じて受信した無線信号をベースバンド信号に変換する。A/D変換器1202は、ベースバンド信号をアナログ信号からデジタル信号に変換し、メモリ1203に変換したデジタル信号を記録する。読出部1212は、メモリ1203から信号をN個ずつ信号を読み出し、読み出した信号を直交変換器1204に入力する。直交変換器1204は、入力された信号に直交変換を行う。マルチユーザ検出器1205−1〜1205−Uは、それぞれ、直交変換された信号に対して前述した等化器215−1〜215−Uと同じく等化を行い、マルチユーザ検出重み演算器1300から入力される重みに従って、ユーザごと、すなわちU個の無線送信装置1−1〜1−Uごとの信号の検出を行う。逆直交変換器1206−1〜1206−Uは、入力される信号に対して逆直交変換より時系列信号に変換を行う。逆拡散器1207−1〜1207−Uは、逆拡散処理を行う。矩形フィルタ回路1208−1〜1208−Uは、入力される信号に対して後述する矩形窓フィルタによりフィルタリングを行い、フィルタリングにより抽出した信号を出力する。復調器1209−1〜1209−Uは、信号の復調を行う。デ・インターリーバ回路1210−1〜1210−Uは、デ・インターリーブを行う。誤り訂正復号器1211−1〜1211−Uは、誤り訂正復号を行い、送信データの推定値を出力する。
【0028】
なお、以下の説明では、オーバサンプリングを仮定していないが、A/D変換器1202でオーバサンプリングを行うことも可能である。この場合、A/D変換器1202から矩形フィルタ回路1208−1〜1208−Uの間のいずれかでダウンサンプリングを行うことになる。ダウンサンプリングをメモリ1203から直交変換器1204までの間のいずれかで行った場合、無線受信装置2の信号処理の演算規模を小さくすることが可能である。また、ダウンサンプリングをマルチユーザ検出器1205−1〜1205−Uから矩形フィルタ回路1208−1〜1208−Uまでのいずれかで行った場合、最終的に得られる信号の信号電力を大きくすることもできる。
【0029】
また、無線受信装置2では、通常用いられている方法により、各無線送信装置1−1〜1−Uの到来タイミングを推定する。
例えば、各無線送信装置1−1〜1−Uの送信信号内に予め定められたタイミング検出用トレーニング信号を挿入し、無線受信装置2では、受信信号と当該タイミング検出用トレーニング信号の相関を算出することによって、各無線送信装置1−1〜1−Uの到来タイミングを推定する方法などがある。
また、各無線送信装置1−1〜1−Uに、上記のタイミング検出用トレーニング信号として予め異なるタイミング検出用トレーニング信号を割り当てるようにしてもよく、その他、各無線送信装置1−1〜1−Uにおいて、予め定められた複数のタイミング検出用トレーニング信号のうち、ランダムに1つを選択して送信する方法もある。
【0030】
また、無線受信装置2に複数の受信アンテナを備えさせ、受信信号レベルの最も高い受信アンテナで受信した信号に対してのみ、タイミング検出用トレーニング信号と相関を算出する方法、受信アンテナで受信された信号ごとにタイミング検出用トレーニング信号との相関を算出する方法、受信アンテナで受信された信号ごとにタイミング検出用トレーニング信号との相関を算出し、算出した相関を合成して到来タイミングを推定する方法などもある。
【0031】
また、これらの到来タイミング検出の検出をフレームごとに行う方法、通信開始前に行う方法、前フレームで推定した到来タイミングを用いる方法などもある。以下の説明では、信号送信を行う通信フレームの前に各無線送信装置1−1〜1−Uからの到来タイミングを推定できているものとし、通信フレームでの動作について説明する。
【0032】
(矩形フィルタ処理の原理)
次に、図3及び図4を参照しつつ、前述した読出部1212及び矩形フィルタ回路1208−1〜1208−Uにより行われる処理の原理について説明する。
【0033】
図3は、ユーザ数、すなわち無線送信装置の数を2(以下、一例として無線送信装置1−1、1−2という)、無線送信装置1−1、及び無線送信装置1−2のパス数(伝搬路数)をそれぞれL(1)、L(2)としたときの受信信号系列を示した図である。
無線受信装置2側では、図3に示すように遅延の異なる複数のパスから構成される伝搬路を通じて到来した全無線送信装置1−1、1−2からの信号の重ね合わせの形式で無線信号を受信する。この受信信号に対し、図3に示す範囲(図3の「直交変換器入力」と記載された矢印の範囲)の信号を入力値として、直交変換器1204にて直交変換を行うと、無線送信装置1−1については、「a」の部分、無線送信装置1−2については、「x」の部分の信号の周期性は保たれている。一方、「b」、「c」、「y」、「z」の部分は周期性が保たれていないのでブロック間干渉(IBI:Inter-Block Interference)となる。ここで、マルチユーザ検出器1205−1〜1205−U及び逆直交変換器1206−1〜1206−Uによる信号分離、及び逆拡散器1207−1〜1207−Uによる逆拡散が行われた後のIBI成分は、ブロック区間全体には広がらず、主にブロックの両端近辺の信号にのみ影響を与えることになる。そのため、図4の下図に示すように矩形フィルタ回路1208−1〜1208−UによりIBIの影響が少ないブロックの中央部分のNw個の信号のみを取り出して復調することで、IBIの影響を回避することができることになる。
【0034】
図4の上図は、読出部1212による時系列信号の読み出し手順(重複切り出し法)を示した図である。読出部1212は、矩形フィルタ回路1206−1〜1206−Uの矩形窓フィルタの大きさであるNwの長さに対応する長さNw×J(ここで、Jは、拡散器1104−u及び逆拡散器1207−1〜1207−Uによる拡散率である)だけずらしてメモリ1203からN個ずつ時系列信号を読み出して直交変換器1204に入力することになる。
【0035】
次に、マルチユーザ検出器1205−1〜1205−Uにより用いられるマルチユーザ検出のための重みとして、これまでのマルチユーザ検出にて用いられる重みをそのまま用いようとすると、残留IBIの影響を考慮していないため、干渉をうまく抑圧できず特性が大幅に劣化してしまう。そこで、第1実施形態では、以下に説明するマルチユーザ重みを用いて、残留IBIの影響を抑圧することとしている。
【0036】
最初に以下の説明で用いる数式の定義を以下に示す。
【0037】
【数1】
【0038】
(重み算出の原理)
まず、受信信号について説明する。以下では、U個の無線送信装置1−1〜1−Uが無線受信装置2に通信することを想定する。
受信アンテナ1200で受信されるベースバンドにおける受信信号で、m番目に直交変換器1204に入力されるN×1の入力信号ベクトルは、次式(1)のように示すことができる。
【0039】
【数2】
【0040】
式(1)において、行列Hu(m)は、u番目の無線送信装置1−uの送信アンテナ1108−uと受信アンテナ1200の間のチャネル応答行列であり、最初の列が次式(2)で示されるベクトルhn(m)である。
【0041】
【数3】
【0042】
そして、行列Hu(m)は、ベクトルhn(m)のN×Nの巡回行列であり、次式(3)のように示される行列である。
【0043】
【数4】
【0044】
なお、式(3)において、L(u)は、u番目の無線送信装置1−uと無線受信装置2の間のチャネル応答数である。また、次式(4)で示されるCu(m)、及び次式(5)で示されるベクトルバーdu(m)(ここで、ベクトルバーdu(m)は、次式(5)で示されるように、dの上の「−」が示された表記に対応する。)は、m番目の直交変換器1204の入力におけるu番目の無線送信装置1−uから送信された拡散符号系列行列、及び推定可能な送信シンボルベクトルである。ただし、次式(6)の条件を満たすものとする。
【0045】
【数5】
【0046】
【数6】
【0047】
【数7】
【0048】
ここで、Jは、拡散率、τ(u)は、無線送信装置(ユーザ)1−uの遅延時間をJで割ったときの剰余(0≦τ(u)<J)、M=N/J、Nsは、マルチユーザ検出後に得られる1ユーザ(無線送信装置)あたりのシンボル数であり、次式(7)を満たすものとする。
【0049】
【数8】
【0050】
また、行列Xu(m)、行列Au(m)、及びベクトルuu(m)は、第m番目の直交変換器1204の入力における、前方からのIBI成分のチャネル成分、拡散符号系列及び信号成分である。また、行列Yu(m)、行列Bu(m)、及びベクトルvu(m)は、第m番目の直交変換器1204の入力における後方からのIBI成分のチャネル成分、拡散符号系列、及び信号成分である。これらは、それぞれ次式(8)〜(13)で示される。
【0051】
【数9】
【0052】
【数10】
【0053】
【数11】
【0054】
【数12】
【0055】
【数13】
【0056】
【数14】
【0057】
ベクトルn(m)は、第m番目の直交変換器1204への入力におけるN×1の雑音の時系列ベクトルであり、次式(14)で示される。ただし、次式(15)の条件を満たすものとする。
【0058】
【数15】
【0059】
【数16】
【0060】
受信信号に対して直交変換器1204によりNポイントの直交変換を行い、その信号に対し重み行列W(m)を用いてマルチユーザ検出を行う。その後、逆直交変換器1206−1〜1206−Uによる逆直交変換、及び逆拡散器1207−1〜1207−Uによる逆拡散が行われて送信信号の推定値が得られる。逆拡散後の出力信号ベクトルチルダdu(m)(ここで、ベクトルチルダdu(m)は、次式(16)で示されるように、dの上の「〜」が示された表記に対応する。)は、次式(16)で示される。
【0061】
【数17】
【0062】
ただし、式(16)において行列Fは、直交変換行列であり、次式(17)で示される。
【0063】
【数18】
【0064】
直交変換器1204における直交変換にフーリエ変換を用いた場合、上式(17)の要素(k,n)は、次式(18)として表すことができる。
【0065】
【数19】
【0066】
また、式(16)の行列バーHuは、次式(19)で表される。
【0067】
【数20】
【0068】
ここで、受信側で拡散符号系列及びチャネルインパルス応答が既知である場合、送信シンボル系列ベクトルバーdu(m)とマルチユーザ検出後のシンボル系列チルダdu(m)の誤差を最小とするような重み行列Wu(m)を求める。行列Wu(m)は、次式(20)で与えられる。
【0069】
【数21】
【0070】
式(20)を展開し、行列Wu(m)Hについて偏微分を行うことで、平均二乗誤差最少(MMSE)基準のマルチユーザ検出重みWu(m)を次式(21)のように求めることができる。
【0071】
【数22】
【0072】
また、無線受信装置2で、雑音電力の推定が不要な重みは次式(22)のように求めることができる。
【0073】
【数23】
【0074】
なお、式(21)及び式(22)において、行列Pは、次式(23)として与えられるものである。
【0075】
【数24】
【0076】
(マルチユーザ検出重み演算器の構成)
次に、図5を参照しつつマルチユーザ検出重み演算器1300の構成について説明する。図5は、マルチユーザ検出重み演算器1300の内部構成を示した概略ブロック図である。マルチユーザ検出重み演算器1300は、読出部1212に接続されるチャンネルインパルス応答推定部1401−1〜1401−U、チャンネルインパルス応答推定部1401−1〜1401−Uに接続される行列ハットH1(m)計算部1402−1〜行列ハットHU(m)計算部1402−U、行列ハットX1(m)計算部1403−1〜行列ハットXU(m)計算部1403−U、行列ハットY1(m)計算部1404−1〜行列ハットYU(m)計算部1404−Uとを備えている。ここで、行列ハットH、行列ハットX、行列ハットYは、図5に示すように、H、X、Yの上に「^」が記載される表記に対応し、行列H、行列X、行列Yは、H、X、Yがボールド体で表記されるものに対応する。
【0077】
また、マルチユーザ検出重み演算器1300は、拡散符号系列計算部1405−1〜1405−U、拡散符号系列計算部1405−1〜1405−Uに接続される行列C1(m)計算部1406−1〜CU(m)計算部1406−U、行列A1(m)計算部1407−1〜行列AU(m)計算部1407−U、行列B1(m)計算部1408−1〜行列BU(m)計算部1408−Uとを備えている。ここで、図5に示すように行列C、行列A、行列Bは、C、A、Bがボールド体で表記されるものに対応する。
【0078】
また、マルチユーザ検出重み演算器1300は、雑音電力推定部1409と、出力がマルチユーザ検出器1205−1〜1205−Uに接続されるマルチユーザ検出重み計算部1410とを備える。
【0079】
チャネルインパルス応答推定部1401−1〜1401−Uは、パイロット受信信号を入力信号として、次式(24)として示される、第u番目の無線送信装置1−uから送信され、無線受信装置2にて受信されたときの伝搬路のインパルス応答の推定値、すなわち伝達関数を推定して出力する。
【0080】
【数25】
【0081】
なお、チャネルインパルス応答推定部1401−1〜1401−Uによる伝達関数の推定は、受信信号とパイロット信号のスライディング相関を演算することによって推定することもできる。また、受信信号とパイロット信号から最尤推定によって伝達関数を推定することもできる。
【0082】
また、第1実施形態では、無線受信装置2において波形整形フィルタを備えていないことから、チャネルインパルス応答推定部1401−1〜1401−Uによりチャネルのインパルス応答と波形整形フィルタの畳み込みの結果を推定しており、これにより、マルチユーザ検出とともに波形整形を行っている。なお、チャネルインパルス応答推定部1401−1〜1401−Uによりチャネルのインパルス応答のみを推定する場合には、A/D変換器1202とメモリ1203の間に波形整形フィルタを備える必要がある。
【0083】
行列ハットH1(m)計算部1402−1〜行列ハットHU(m)計算部1402−U、行列ハットX1(m)計算部1403−1〜行列ハットXU(m)計算部1403−U、行列ハットY1(m)計算部1404−1〜行列ハットYU(m)計算部1404−Uは、上述したチャネルインパルス応答推定部1401−1〜1401−Uで推定されたチャネルインパルス応答を入力値としてそれぞれ、行列ハットH、ハットX、ハットYを算出し、その算出結果を出力として出力する。
【0084】
拡散符号系列計算部1405−1〜1405−Uは、各無線送信装置1−1〜1−Uで用いた拡散符号系列を予め記憶しておくか、もしくは推定し、その結果を出力する。行列C1(m)計算部1406−1〜CU(m)計算部1406−U、行列A1(m)計算部1407−1〜行列AU(m)計算部1407−U、行列B1(m)計算部1408−1〜行列BU(m)計算部1408−Uは、拡散符号系列計算部1405−1〜1405−Uより出力された拡散符号系列を入力信号とし、それぞれの行列C、A、Bを算出し、その算出結果を出力値として出力する。
【0085】
雑音電力推定部1409は、パイロット受信信号を入力信号とし、受信アンテナ1200における雑音電力を推定し、その推定値を出力値として出力する。
なお、雑音電力の推定は、例えば、受信信号電力と、推定した伝達関数の電力の和との差から求めることもできる。受信信号電力と、推定した伝達関数の電力の和との差から求める場合、伝達関数を推定することができなかった遅延成分の電力は、雑音電力に加算されることになる。また、その他、受信アンテナ1200で信号が受信されていない時間区間を検出し、検出した区間において測定した受信電力から雑音電力を測定することも可能である。
【0086】
マルチユーザ検出重み計算部1410は、上述した行列ハットH1(m)計算部1402−1〜行列ハットHU(m)計算部1402−U、行列ハットX1(m)計算部1403−1〜行列ハットXU(m)計算部1403−U、行列ハットY1(m)計算部1404−1〜行列ハットYU(m)計算部1404−U、行列C1(m)計算部1406−1〜CU(m)計算部1406−U、行列A1(m)計算部1407−1〜行列AU(m)計算部1407−U、行列B1(m)計算部1408−1〜行列BU(m)計算部1408−U、雑音電力推定部1409の出力値を入力値として、マルチユーザ検出重みを算出し、その計算結果を出力する。
【0087】
ここで、前述したマルチユーザ検出重み計算部1300では、無線送信装置1−1〜1−U側でパイロット信号を送信し、当該パイロット信号に基づいて、マルチユーザ検出重みを推定する方式である。しかし、受信信号のデータ部を入力信号として、判定帰還した信号を送信パイロット信号と同様にみなし、マルチユーザ検出重みを推定することも可能である。
また、前述したチャネルインパルス応答推定部1401−1〜1401−Uによるチャネルインパルス応答の推定は、時間信号を入力信号として推定を行っているが、直交変換器1204による直交変換後の受信信号を入力信号としてチャネルインパルス応答の推定を行うことも可能である。また、上述したマルチユーザ検出重み演算器1300では、雑音電力推定部1409で雑音電力を推定しているが、前述した式(26)で示される(重み2)を用いる場合、この部分は不要となる。
【0088】
(送受信にかかる信号処理)
次に、無線送信装置1−1〜1−Uと、無線受信装置2による信号処理について説明する。前提として、以下の説明では、信号送信を行う通信フレームの前に、各無線送信装置1−1〜1−Uからの受信タイミングは推定できているものとする。
【0089】
(送信側の信号処理)
まず、無線送信装置1−1〜1−Uによる送信処理について説明する。ここでは、第u番目の無線送信装置1−uの信号処理について説明する。まず、誤り訂正符号化器1101−uは、第u番目の無線送信装置1−uで送信されるバイナリデータ系列を入力信号として、誤り訂正符号化されたバイナリデータ系列を出力する。インターリーバ回路1102−uでは、該誤り訂正符号化器1101−uの出力を入力として、インターリーブしたデータ系列を出力する。その後、変調器1103−uは、インターリーブされたデータ系列を変調し、シンボル系列を出力する。拡散器1104−uは、該変調されたシンボル系列を入力として、各無線送信装置1−1〜1−Uにて予め割り当てられた拡散率Jの拡散符号系列によって拡散し、拡散した結果を出力する。
【0090】
拡散器1104−uにより拡散された信号は、波形整形回路1105−uに入力され、該波形整形回路1105−uは、波形整形を行った信号系列を出力する。D/A変換器1106−uは、波形整形回路1105−uから出力される信号に対してデジタル/アナログ変換を行い、変換したアナログ信号を出力する。
【0091】
無線部1107−uは、D/A変換器1106−uから出力されるアナログ信号をRF信号とし、送信アンテナ1108−uを通じて送信する。以上の信号処理が、全無線送信装置1−1〜1−Uで同様に行われる。
【0092】
(受信側の信号処理)
次に、無線受信装置2による受信処理について説明する。受信アンテナ1200で受信された信号は、その信号系列を入力信号として無線部1201に入力される。無線部1201は、入力される信号に対して周波数変換を行い周波数変換により得られたベースバンド信号を、A/D変換器202に出力する。A/D変換器1202は、入力されるベースバンド信号に対してアナログ/デジタル変換を行い、変換したデジタル信号をメモリ1203に記録する。読出部1212は、図4を参照して説明したように、Nw×J個ずつ先頭位置をシフトさせながら、N個ずつデータ系列を読み出し、読み出したN個のデータ系列を直交変換器1204に入力するとともに、マルチユーザ検出重み演算器1300に入力する。
【0093】
マルチユーザ検出重み演算器1300は、入力されるN個のデータ系列に基づいて、図5を参照して説明した構成、及び前述した重み算出の原理に基づいて、行列W(m)を算出する。一例として、次式(25)及び式(26)として2つのマルチユーザMMSE重みを示す。
【0094】
【数26】
【0095】
【数27】
【0096】
ここで、行列ハットHu(m)、行列ハットXu(m)、行列ハットYu(m)及びハットσは、行列Hu(m)、行列Xu(m)、行列Yu(m)及びσの推定値である。式(25)に示す(重み1)は、重み算出の原理の式(21)を参照して説明したように、平均二乗誤差(MMSE)基準で算出された解であり、式(26)に示す(重み2)は、重み算出の原理の式(22)を参照して説明したように、(重み1)で雑音の分散(電力)推定を不要とした重みである。
【0097】
なお、行列ハットHu(m)、行列ハットXu(m)、行列ハットYu(m)は、チャネルの時変動がほとんどない場合、行列ハットHu(n)、行列ハットXu(n)、行列ハットYu(n)(m≠n)として、n番目の直交変換の出力のマルチユーザ検出に用いることもできる。
【0098】
マルチユーザ検出器1205−1〜1205−Uは、直交変換器1204から直交信号が入力され、マルチユーザ検出重み演算器1300の出力値であるマルチユーザ検出重みが入力される。ここでは、第u番目の無線送信装置1−uを例として、当該無線送信装置1−u送信されたデータ系列を推定する処理について説明する。
【0099】
マルチユーザ検出器1205−uは、直交変換器1204により直交変換された受信信号の直交成分と、マルチユーザ検出重み演算器1300から入力されるマルチユーザ検出重みとに基づいて次式(27)で示される演算を行うことで、マルチユーザ検出を行い、N個の出力信号b(m,1)〜b(m,N)を出力する。
【0100】
【数28】
【0101】
次に、逆直交変換器1206−uは、マルチユーザ検出器1205−uから入力されるN個の信号に対して逆直交変換を行い、N個の逆直交変換された信号を出力値として出力する。逆拡散器1207−uは、逆直交変換されたN個の信号系列に対して、無線送信装置1−uにて拡散するときに用いられた拡散符号系列によって逆拡散を行い、逆拡散したM個の信号を出力値として出力する。
【0102】
矩形フィルタ回路1208−uは、図4を参照して説明したように、逆拡散されたM個の信号から、IBI(ブロック間干渉)の影響が大きい前半部Mh個と後半部Mt個の信号を、Nwの矩形窓フィルタにより除去し、干渉の影響が小さい部分である、当該矩形窓フィルタの大きさであるNw(=N−Mh−Mt)個の信号のみを抽出し、抽出した信号を出力信号として出力する。
【0103】
復調器1209−uは、矩形フィルタ回路1208−uにより抽出された信号を復調し、復調した信号を出力する。デ・インターリーバ回路1210−uは、復調された信号をデ・インターリーブし、その結果を誤り訂正復号器1211−uに入力する。誤り訂正復号器1211−uは、デ・インターリーブされた信号に対して誤り訂正復号を行い、復号した信号を出力する。
【0104】
このような構成を適用することで、広帯域信号を伝送する場合においても、任意の無線送信装置1−1〜1−U間のタイミングオフセットでも信号を無線送信装置1−1〜1−Uごとに分離することが可能となる。なお、前述した処理は、ガードインターバル(GI)が存在する場合にも適用可能である。また、無線送信装置1−1〜1−U、及び無線受信装置2に複数のアンテナを備えさせた構成であるMIMO(Multiple Input Multiple Output)伝送にも適用可能である。
【0105】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態にかかる矩形窓フィルタのサイズを可変とする構成について説明する。第1実施形態における無線通信システムでは、無線送信装置1−1〜1−Uごとに伝搬路(チャネルインパルス応答)が異なるため、無線送信装置1−1〜1−UごとにIBIの影響を大きく受けているブロックの端の信号数も異なる。そこで、チャネル推定を行った結果に基づいて、IBIの影響を受けている信号が最も多い無線送信装置1−1〜1−Uに合わせて、除去する前半部の信号数Mh、及び後半部の信号数Mt、矩形フィルタにて抽出する信号数Nw(矩形窓フィルタの大きさに相当)を適用的に変化させることで伝送品質を改善することが可能となる。
【0106】
具体的には、まず、無線受信装置2に予め最大遅延時間とNwの大きさを対応付けたテーブル、あるいは最大遅延時間から当該最大遅延時間に適応するNwの大きさを算出する関数情報を記憶させておく。そして、マルチユーザ検出重み演算器1300のチャネルインパルス応答推定部1401−1で推定したチャネルインパルス応答から遅延スプレッドもしくはチャネルの最大遅延時間を算出し、算出した最大遅延時間に基づいて、前述したテーブルあるいは関数情報を用いて、最適なNwを求め、求めたNwを矩形フィルタ回路1208−1〜1208−Uに入力する。矩形フィルタ回路1208−1〜1208−Uは、入力されるNwの値に基づいて、矩形窓フィルタの大きさを変化させて構成することになる。
【0107】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。ブロックの端のIBIの影響を大きく受けている信号数は、直交変換器1204のサイズNによらず一定である。そこで、直交変換器1204が高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)を行う場合、入力信号数及び出力信号数をN=2n、逆拡散後に矩形フィルタ回路1208−1〜1208−Uにより抽出する信号数がNwであるとき、1つの信号あたりのFFT演算量が最も少なくすむnの値は次式(28)で与えられることになる。
【0108】
【数29】
【0109】
ただし、FFTの演算量は、Nlog2N=n×2nである。また、前述した第2実施形態による演算結果より、Nwが算出された場合、最適なFFTブロックの大きさnを式(28)により算出し、直交変換器1204及び逆直交変換器1206−1〜1206−Uに算出したnを入力することで、最小の演算量にて全信号を復調することが可能となる。
【0110】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。第1実施形態では、IBIによる影響がブロックの端の信号ほど大きくなるため、逆直交変換器1206−1〜1206−Uによる逆直交変換後の信号に対して、ブロックの中心の信号ほど信頼性が高く、すなわち誤り率が小さくなり、ブロックの端へ行くほど信頼性が低く、すなわち誤り率が大きくなる。
【0111】
そこで、無線送信装置1−uにおいて、変調器1103−uと、拡散器1104−uの間に、図6に示すようなNw/2×Nxのブロック・インターリーバ回路を備えさせ、入力される変調後の信号系列を縦に読み込み、横に書き出していく結果を出力させる。
【0112】
また、無線受信装置2においては、矩形フィルタ回路1208−1〜1208−Uと復調器1209−1〜1209−Uの間に、Nw/2×Nxのブロック・デ・インターリーバ回路を備えさせ、入力される矩形窓フィルタの出力後の各信号系列を横に読み込み、縦に書き出していく結果を出力させる。ここで、Nxは、任意の正の整数である。
【0113】
このような、ブロック・インターリーバ回路及びブロック・デ・インターリーバ回路を設けることで、信頼性の高い信号と信頼性の低い信号とが交互に並べることができ、これによって、誤りがバーストからランダムになるため、誤り訂正符号の効果を高めることが可能となる。
【0114】
また、上記のブロック・インターリーバ回路、及びブロック・デ・インターリーバ回路の代わりに、ランダムインターリーバ、及びランダム・デ・インターリーバを行う回路を用いるようにしてもよい。
【0115】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。
第5実施形態は、第1から第4実施形態かかる無線受信装置2におけるマルチユーザ検出の代わりに、逐次干渉除去により信号を分離する無線受信装置3を備えた無線通信システムである。
【0116】
図7は、逐次干渉除去を行なう無線受信装置3の内部構成を示した概略ブロック図である。無線受信装置3は、受信アンテナ1500、無線部1501、A/D変換器1502、メモリ1503、読出部1507、逐次干渉除去部1504、逐次干渉除去部用重み演算器1510、デ・インターリーバ回路1505−1〜1505−U、誤り訂正復号器1506−1〜1506−Uを備える。
【0117】
無線部1501は、受信アンテナ1500を通じて受信した信号に対して周波数変換を行い、ベースバンド信号を出力する。A/D変換器1502は、ベースバンド信号を入力信号として、アナログ信号をデジタル信号へ変換し、変換したデジタル信号をメモリ1503に記録する。読出部1507は、メモリ1503に記憶されたデジタル信号の信号系列を、Nw×J個ずつ先頭をシフトさせながら、N個ずつ読み出し、読み出したN個の信号を、逐次干渉除去部1504に入力するとともに逐次干渉除去部用重み演算器1510に入力する。逐次干渉除去部用重み演算器1510は、入力されるN個の信号に基づいて等化重みを算出し、算出した等化重みを逐次干渉除去部1504に入力する。逐次干渉除去部1504は、読出部1507から入力されるN個の信号と、逐次干渉除去部用重み演算器1510から入力される等化重みとに基づいて、干渉除去を行なったU個の信号系列を出力する。デ・インターリーバ回路1505−1〜1505−Uは、逐次干渉余虚装置1504から出力されるU個の信号を入力信号として、デ・インターリーブを行う。誤り訂正復号器1506−1〜1506−Uは、デ・インターリーブされた信号系列に対して誤り訂正復号化を行い、復号した信号を出力する。
【0118】
図8は、逐次干渉除去部1504の内部構成、及び逐次干渉除去部1504と逐次干渉除去部用重み演算器1510との接続関係を示した図である。
【0119】
逐次干渉除去部1504は、読出部1507に接続される第1干渉減算器1601、直交変換器1602−1〜1602−U、信号検出器1603−1〜1603−U、逆直交変換器1604−1〜1604−U、逆拡散器1605−1〜1605−U、矩形フィルタ回路1606−1〜1606−U、それぞれデ・インターリーバ回路1505−1〜1505−Uに接続される信号判定部1607−1〜1607−U、遅延回路1608−1〜1608−U、第1レプリカ生成回路1609、第2レプリカ生成回路1611−1〜1611−(U−1)、第2干渉減算器1610−1〜1610−(U−1)を備える。
【0120】
逐次干渉除去部1504を動作させる際には、順序付けを行うことが必要であり、例えば、順序付けの方法として、チャネル推定値を用いたり、瞬時受信電力(信号電力対雑音電力比、SNR:Signal to Noise Ratio)を用いたり、各送信信号系列に対する平均の伝送品質(例えば、信号電力対干渉・雑音電力比、SINR:Signal to Interference plus Noise power Ratioや、ビット誤り特性等)を用いたり、優先度の高い送信信号系列順の順序を用いるなどの、通常の逐次干渉除去において用いられる順序付けを全て適用することができる。
【0121】
以下の説明では、第m番目のブロックの受信信号において、1番目の無線送信装置1−1から順に信号判定を行い、第u番目の無線送信装置1−uの復調時には、第(u−1)番目の信号判定結果を用いる場合について説明する。
【0122】
第1レプリカ生成回路1609は、第(m−1)番目のブロック以前における信号判定部1607−1〜1607−Uによる判定後の、第U番目の系列からなる時系列の受信信号系列を入力信号として、推定したチャネルインパルス応答を用いて、次式(29)に示す、直前のブロックからの干渉成分のレプリカを生成し、生成したレプリカを出力する。
【0123】
【数30】
【0124】
第1干渉減算器1601は、時系列の受信信号ベクトルr(m)、及び第1レプリカ生成回路1609で生成された直前のブロックからの式(29)で示された干渉成分のレプリカを入力として、受信信号から干渉成分を減算し、次式(30)で示す結果を出力する。
【0125】
【数31】
【0126】
直交変換器1602−uは、1つのブロックがN個からなる干渉成分除去後の受信信号を入力信号として直交変換を行い、N個の直交成分を出力する。ここで、直交変換器1602−uから出力された直交成分ベクトルハットru−1(m)は、(u−1)番目の無線送信装置2までの干渉信号を減算した受信信号に対して直交変換を行った後の第k直交成分であり、次式(31)で示される。
【0127】
【数32】
【0128】
信号検出器1603−uは、直交変換器1602−uの出力信号、及び逐次干渉除去部用重み演算器1510で算出された重みを入力信号として信号検出を行い、N個からなるその結果を出力する。ここで、信号検出器1603−uにおける出力は次式(32)で示される。
【0129】
【数33】
【0130】
式(32)において、行列Wu(m)は、逐次干渉除去部用重み演算器1510で生成される逐次干渉除去部1504のためのマルチユーザ検出重みである。一例として、マルチユーザ検出、及び逆拡散を行った後の受信信号と、拡散前の送信信号との二重誤差を最小とするような重みを、次式(33)に示す。
【0131】
【数34】
【0132】
式(33)で示される重みは、前述したマルチユーザ検出のMMSE重みの算出と同様に式を展開することが可能である。
【0133】
次に、逆直交変換器1605−uは、信号検出器1603−uにより検出されたN個の信号に対して逆直交変換を行い、N個の時系列信号を出力する。逆拡散器1605−uは、逆拡散されたN個の時系列信号に対して、無線送信装置1−uで拡散を行う際に用いた拡散符号系列を用いて逆拡散を行う。矩形フィルタ回路1606−uは、逆拡散後の信号系列に対して、IBI(ブロック間干渉)の影響が大きい前半部のMh個と後半部Mt個の信号を除去し、干渉の影響が小さい中心部に存在するNw(=N/J−Mh−Mt)個の信号を抽出する矩形窓フィルタを用いてNw個の信号を出力する。
【0134】
信号判定部1607−uは、Nw個の時系列信号に対して、軟判定もしくは硬判定を行い、Nw個の判定結果を出力する。遅延回路1608−uは、軟判定もしくは硬判定されたNw個の信号に対して、1ブロック分の遅延を与えて第1レプリカ生成回路1609に入力する。
【0135】
次に、第2干渉減算器1610−uは、第1干渉減算器1601にて干渉が除去された受信信号ベクトルz(m)、及び第2レプリカ生成回路1611−uで生成されたu番目の無線送信装置1−uからの干渉成分のレプリカを入力として、干渉を除去した受信信号から、新たに生成された干渉成分を減算した信号を出力する。ここで、第2干渉減算器1610−uの出力信号は、次式(34)で示される。
【0136】
【数35】
【0137】
なお、受信信号ベクトルz(m)を、式(30)で置き換えることで、第2干渉減算器1610−uの出力信号を次式(35)として示すことができる。
【0138】
【数36】
【0139】
なお、直交変換器1602−1〜1602−Uは、第1干渉減算器1601の前段で行うことも可能であり、この場合、直交変換器は、U個必要とせず、1個の直交変換器を備えればよいこととなる。また、この場合、第1レプリカ生成回路1609、及び第2レプリカ生成回路1611−1〜1611−(U−1)から出力される干渉成分のレプリカは、直交成分に変換する必要があり、第1干渉減算器1601、及び第2干渉減算器16101−1〜1610−(U−1)は、直交成分ごとに干渉を除去することになる。
【0140】
上記では、信号判定部1607−1〜1607−Uは、軟判定もしくは硬判定を行い、軟判定値もしくは硬判定値のいずれかの信号を出力としたが、一度、デ・インターリーバ回路および誤り訂正復号器へ入力し、その出力結果を軟判定もしくは硬判定するようにしてもよい。
【0141】
上記逐次干渉除去部1504は、1ブロックで閉じた形で動作することとしているが、複数ブロックに渡って逐次干渉除去を行うことも可能である。例として、4ユーザで各ユーザの送信アンテナがそれぞれ1本で、ユーザ1→ユーザ2→ユーザ3→ユーザ4の順で復調する場合について以下に詳細に説明する。
【0142】
ここで、図9は、逐次干渉除去部1504の復調順の一例を示す概念図である。図9に示すような順番で各ブロックを復調していくことにより、例えば、ユーザ3の第(m+1)ブロックを復調する際、ユーザ1については第(m+3)ブロックまでを、ユーザ2については第(m+2)ブロックまで復調しているので、第(m+1)ブロックにおけるユーザ1及びユーザ2の全信号成分のレプリカの生成が可能となる。したがって、復調誤りが生じていない場合には、ユーザ1及びユーザ2からの干渉信号を完全に除去してユーザ3の信号を復調することができるので、特性が改善される。
【0143】
これを一般的に書くと、第uユーザの第iアンテナから送信された信号の第mブロックの復調を考えた場合、第uユーザの第(i−1)アンテナから送信された送信信号に関しては、少なくとも第(m+1)ブロックまでを復調するように動作させる。これによって、第uユーザの第iアンテナから送信された信号の第mブロックにおける復調は、第uユーザの第(i−1)アンテナまでの干渉を除去した、次式(35)に示す受信信号から行うことになる。これは、第uユーザの第(i−1)アンテナまでの、第(m+1)ブロックからの次式(36)で示されるIBI成分も除去されていることになる。
【0144】
【数37】
【0145】
【数38】
【0146】
このため、上記逐次干渉除去部1504では、第(m+1)ブロックからの干渉を除去できなかったが、このように複数ブロックに渡って動作させることで、干渉をより低減し、第uユーザの第iアンテナから送信された信号の復号特性を改善させることが可能となる。
【0147】
上述した動作は、逐次干渉除去部1504の説明であったが、これを従来の技術と同様に、並列干渉除去を行う装置として適用することも可能である。また、上記逐次干渉除去部1504にも、各種オプションを用いることが可能である.
【0148】
上述した実施形態によれば、従来のGIを用いるマルチユーザMIMOと比較した場合、複数の送信局からの信号の受信タイミングがそれぞれGI長を超えてしまった場合でも、タイミングオフセットによる伝送品質の劣化を軽減することが可能となる。したがって、送信局のタイミングコントロールが不要、もしくは簡易なものでよくなるため、送信側のシステムの簡易化を図ることができる。
【0149】
また、従来の技術で必要であったGIが不要となるため、伝送効率を向上させることができる。
【0150】
さらに、複数の送信局が同時に通信することが可能となるため、周波数利用効率を改善することが可能となる。
【0151】
また、従来の技術と比べて、マルチユーザ検出器の重み及び逆直交変換後の受信信号に対して矩形窓を乗算する演算器を追加しただけであるので,大幅なハードウェアの変更を必要としない。
【0152】
また、マルチユーザMIMOとしてシステムを構成することも可能であるため、GIが無い送信信号でも、ユーザ間・アンテナ間の信号分離が可能となる。
【0153】
なお、前述した第2実施形態、第3実施形態、第4実施形態の構成を、第5実施形態の無線通信システムに適用してもよい。これらの実施形態に適用した場合、第2実施形態では、マルチユーザ検出重み演算器1300のチャネルインパルス応答推定部1401−1で推定したチャネルインパルス応答から遅延スプレッドもしくはチャネルの最大遅延時間を算出するとしていたが、第5実施形態では、逐次干渉除去部用重み演算器1510にて、チャネルインパルス応答を推定する構成となる。また、第3実施形態にて、算出したnを直交変換器1204及び逆直交変換器1206−1〜1206−Uに入力するとしていたが、第5実施形態では、直交変換器1602−1〜1602−U及び逆直交変換器1604−1〜1604−Uに入力することになる。また、第4実施形態にて、矩形フィルタ回路1208−1〜1208−Uと復調器1209−1〜1209−Uの間に、ブロック・デ・インターリーバ回路を設けるとしていたが、第5実施形態では、矩形フィルタ回路1606−1〜1606−Uの出力に、ブロック・デ・インターリーバ回路を設けることになる。
【0154】
また、本発明に記載の重み演算部は、マルチユーザ検出重み演算器1300または逐次干渉除去部用重み演算器1510に対応する。また、本発明に記載の検出部は、マルチユーザ検出器1205−1〜1205−U、または、逐次干渉除去部1504に対応する。
【図面の簡単な説明】
【0155】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる無線送信装置を示す概略ブロック図である。
【図2】同実施形態にかかる無線受信装置を示す概略ブロック図である。
【図3】同実施形態にかかる受信信号系列の一例を示した図である。
【図4】同実施形態にかかる重複切り出し法を用いるマルチユーザ検出を説明するための図である。
【図5】同実施形態にかかるマルチユーザ検出重み演算器を示す概略ブロック図である。
【図6】本発明の第2実施形態にかかるブロック・インターリーバ及びブロック・デ・インターリーバを説明するための図である。
【図7】本発明の第5実施形態にかかる逐次干渉除去を行う無線送信装置を示す概略ブロック図である。
【図8】同実施形態にかかる逐次干渉除去部、及び逐次干渉除去部と逐次干渉除去部用重み演算器との接続関係を示した図である。
【図9】同実施形態にかかる逐次干渉除去部の復調順の一例を示す概略図である。
【図10】GIを用いるDS−CDMAにおける端末局の無線送信装置の構成を示した図である。
【図11】GIを用いるDS−CDMAにおける基地局の無線受信装置の構成を示した図である。
【図12】GIの挿入を示した図である。
【符号の説明】
【0156】
2 無線受信装置
1200 アンテナ
1201 無線部
1202 A/D変換器
1203 メモリ
1212 読出部
1204 直交変換器
1205−1〜1205−U マルチユーザ検出器
1206−1〜1206−U 逆直交変換器
1207−1〜1207−U 逆拡散器
1208−1〜1208−U 矩形フィルタ回路
1209−1〜1209−U 復調器
1210−1〜1210−U デ・インターリーバ回路
1211−1〜1211−U 誤り訂正復号器
1300 マルチユーザ検出重み演算器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線送信装置から送信された無線信号を受信するアンテナと、
前記無線信号から抽出される拡散状態の信号系列から、逆拡散後の信号のフィルタリングに用いられる矩形窓フィルタの大きさと前記拡散状態に応じた拡散係数とに基づいて定められる個数ずつ先頭をずらして、信号のブロック単位であるN個ずつ信号を読み出す読出手段と、
前記読出手段が読み出したN個の信号を直交変換する直交変換部と、
前記複数の無線送信装置ごとに、前記無線送信装置の送信信号の検出に用いられる前記拡散状態を考慮したN個の重みを算出する重み演算部と、
前記重み演算部が算出した前記無線送信装置ごとのN個の重みと、前記直交変換部により直交変換された信号とに基づいて、前記複数の無線送信装置ごとの信号を検出する複数の検出部と、
前記複数の検出部が検出した信号ごとに逆直交変換を行う複数の逆直交変換部と、
前記複数の逆直交変換部から出力される信号ごとに前記拡散状態に応じて予め定められる拡散符号を用いて逆拡散を行う複数の逆拡散器と、
前記複数の逆拡散器から出力される信号ごとに前記矩形窓フィルタを用いてブロック間干渉の影響を受けている部分についてフィルタリングを行う複数の矩形フィルタ部と、
前記複数の矩形フィルタ部が出力するNw個の信号ごとに復調を行う複数の復調部と、
を備えたことを特徴とする無線受信装置。
【請求項2】
前記重み演算部は、
前記無線信号に基づいて前記複数の無線送信装置との間のチャネルのチャネルインパルス応答情報を推定するチャネルインパルス応答推定部と、
前記無線信号に基づいて前記複数の無線送信装置で用いられた拡散符号系列を出力する拡散符号系列計算部と、
前記チャネルインパルス応答推定部が推定したチャネルインパルス応答情報と、前記拡散符号系列計算部が出力する拡散符号系列とに基づいて、伝達関数と、ブロック間干渉成分のチャネル成分及び拡散符号系列とを推定する演算部と、
前記演算部が推定したチャネルごとの伝達関数と、ブロック間干渉成分のチャネル成分及び拡散符号系列とに基づいて前記複数の無線送信装置ごとにN個の重みを算出するマルチユーザ検出重み計算部と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の無線受信装置。
【請求項3】
前記演算部は、
前記チャネルインパルス応答推定部が推定したチャネルインパルス応答情報と、前記拡散符号系列計算部が出力する拡散符号系列とに基づいて伝達関数と、信号のブロックの前方からのブロック間干渉成分のチャネル成分及び拡散符号系列と、信号のブロックの後方からのブロック間干渉成分のチャネル成分及び拡散符号系列とを推定する
ことを特徴とする請求項2に記載の無線受信装置。
【請求項4】
前記演算部は、
前記無線信号に基づいて雑音電力成分を推定する雑音電力推定部を備え、
前記マルチユーザ検出重み計算部は、
前記雑音電力推定部が推定した雑音電力成分を加えて前記複数の無線送信装置ごとにN個の重みを算出する
ことを特徴とする請求項2または3に記載の無線受信装置。
【請求項5】
前記複数の矩形フィルタ部から出力される信号に基づいて、前記無線送信装置ごとに逐次干渉成分の第1のレプリカ信号を生成する第1のレプリカ生成部を備え、
前記複数の検出部は、
前記重み演算部が算出したN個の重みと、前記第1のレプリカ生成部が逐次生成する前記第1のレプリカ信号により干渉成分が除去され前記直交変換部により直交変換された信号とに基づいて前記複数の無線送信装置ごとの信号を検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の無線受信装置。
【請求項6】
いずれか1つの前記検出部により前記重み演算部が算出したN個の重みと、前記第1のレプリカ生成部が逐次生成する前記第1のレプリカ信号により干渉成分が除去され前記直交変換部により直交変換された信号とに基づいて当該検出部に対応する無線送信装置の信号が検出された場合、当該検出部に対応する前記矩形フィルタ部から出力される信号に基づいて、当該検出部以外のいずれか1つの検出部に対応する前記無線送信装置の逐次干渉成分の第2のレプリカ信号を生成する第2のレプリカ生成部を備え、
当該検出部以外のいずれか1つの検出部は、
前記重み演算部が算出したN個の重みと、前記第1のレプリカ生成部が逐次生成する前記第1のレプリカ信号により干渉成分が除去され前記第2のレプリカ生成部が逐次生成する前記第2のレプリカ信号により干渉成分が除去され前記直交変換部により直交変換された信号とに基づいて当該検出部以外のいずれか1つの検出部に対応する無線送信装置の信号を検出する
ことを特徴とする請求項5に記載の無線受信装置。
【請求項7】
前記矩形フィルタ部は、
ブロック間干渉の影響を最も多く受けている無線送信装置に対応して、前記矩形窓フィルタの大きさNwサンプルを算出し、算出した大きさの前記矩形窓フィルタによりフィルタリングを行う
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載の無線受信装置。
【請求項8】
前記直交変換部は、
直交変換として高速フーリエ変換を行い、前記高速フーリエ変換の入出力信号数を、前記矩形窓フィルタの大きさに基づいて算出し、算出した入出力信号数に基づいて高速フーリエ変換を行う
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1つに記載の無線受信装置。
【請求項9】
前記矩形フィルタ部からの出力に対して、縦がNw/2で、横がNx(Nxは任意の正数)で構成されるブロック・デ・インターリーバを行うデ・インターリーブ部
を具備することを特徴とする請求項1から8のいずれか1つに記載の無線受信装置。
【請求項10】
アンテナを備え、該アンテナにより無線信号を送信する無線送信装置であって、
送信信号系列に対して、縦がNw/2で、横がNx(Nxは任意の正数)で構成されるブロック・インターリーバを行うシンボル・インターリーブ部
を具備することを特徴とする無線送信装置。
【請求項1】
複数の無線送信装置から送信された無線信号を受信するアンテナと、
前記無線信号から抽出される拡散状態の信号系列から、逆拡散後の信号のフィルタリングに用いられる矩形窓フィルタの大きさと前記拡散状態に応じた拡散係数とに基づいて定められる個数ずつ先頭をずらして、信号のブロック単位であるN個ずつ信号を読み出す読出手段と、
前記読出手段が読み出したN個の信号を直交変換する直交変換部と、
前記複数の無線送信装置ごとに、前記無線送信装置の送信信号の検出に用いられる前記拡散状態を考慮したN個の重みを算出する重み演算部と、
前記重み演算部が算出した前記無線送信装置ごとのN個の重みと、前記直交変換部により直交変換された信号とに基づいて、前記複数の無線送信装置ごとの信号を検出する複数の検出部と、
前記複数の検出部が検出した信号ごとに逆直交変換を行う複数の逆直交変換部と、
前記複数の逆直交変換部から出力される信号ごとに前記拡散状態に応じて予め定められる拡散符号を用いて逆拡散を行う複数の逆拡散器と、
前記複数の逆拡散器から出力される信号ごとに前記矩形窓フィルタを用いてブロック間干渉の影響を受けている部分についてフィルタリングを行う複数の矩形フィルタ部と、
前記複数の矩形フィルタ部が出力するNw個の信号ごとに復調を行う複数の復調部と、
を備えたことを特徴とする無線受信装置。
【請求項2】
前記重み演算部は、
前記無線信号に基づいて前記複数の無線送信装置との間のチャネルのチャネルインパルス応答情報を推定するチャネルインパルス応答推定部と、
前記無線信号に基づいて前記複数の無線送信装置で用いられた拡散符号系列を出力する拡散符号系列計算部と、
前記チャネルインパルス応答推定部が推定したチャネルインパルス応答情報と、前記拡散符号系列計算部が出力する拡散符号系列とに基づいて、伝達関数と、ブロック間干渉成分のチャネル成分及び拡散符号系列とを推定する演算部と、
前記演算部が推定したチャネルごとの伝達関数と、ブロック間干渉成分のチャネル成分及び拡散符号系列とに基づいて前記複数の無線送信装置ごとにN個の重みを算出するマルチユーザ検出重み計算部と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の無線受信装置。
【請求項3】
前記演算部は、
前記チャネルインパルス応答推定部が推定したチャネルインパルス応答情報と、前記拡散符号系列計算部が出力する拡散符号系列とに基づいて伝達関数と、信号のブロックの前方からのブロック間干渉成分のチャネル成分及び拡散符号系列と、信号のブロックの後方からのブロック間干渉成分のチャネル成分及び拡散符号系列とを推定する
ことを特徴とする請求項2に記載の無線受信装置。
【請求項4】
前記演算部は、
前記無線信号に基づいて雑音電力成分を推定する雑音電力推定部を備え、
前記マルチユーザ検出重み計算部は、
前記雑音電力推定部が推定した雑音電力成分を加えて前記複数の無線送信装置ごとにN個の重みを算出する
ことを特徴とする請求項2または3に記載の無線受信装置。
【請求項5】
前記複数の矩形フィルタ部から出力される信号に基づいて、前記無線送信装置ごとに逐次干渉成分の第1のレプリカ信号を生成する第1のレプリカ生成部を備え、
前記複数の検出部は、
前記重み演算部が算出したN個の重みと、前記第1のレプリカ生成部が逐次生成する前記第1のレプリカ信号により干渉成分が除去され前記直交変換部により直交変換された信号とに基づいて前記複数の無線送信装置ごとの信号を検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の無線受信装置。
【請求項6】
いずれか1つの前記検出部により前記重み演算部が算出したN個の重みと、前記第1のレプリカ生成部が逐次生成する前記第1のレプリカ信号により干渉成分が除去され前記直交変換部により直交変換された信号とに基づいて当該検出部に対応する無線送信装置の信号が検出された場合、当該検出部に対応する前記矩形フィルタ部から出力される信号に基づいて、当該検出部以外のいずれか1つの検出部に対応する前記無線送信装置の逐次干渉成分の第2のレプリカ信号を生成する第2のレプリカ生成部を備え、
当該検出部以外のいずれか1つの検出部は、
前記重み演算部が算出したN個の重みと、前記第1のレプリカ生成部が逐次生成する前記第1のレプリカ信号により干渉成分が除去され前記第2のレプリカ生成部が逐次生成する前記第2のレプリカ信号により干渉成分が除去され前記直交変換部により直交変換された信号とに基づいて当該検出部以外のいずれか1つの検出部に対応する無線送信装置の信号を検出する
ことを特徴とする請求項5に記載の無線受信装置。
【請求項7】
前記矩形フィルタ部は、
ブロック間干渉の影響を最も多く受けている無線送信装置に対応して、前記矩形窓フィルタの大きさNwサンプルを算出し、算出した大きさの前記矩形窓フィルタによりフィルタリングを行う
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載の無線受信装置。
【請求項8】
前記直交変換部は、
直交変換として高速フーリエ変換を行い、前記高速フーリエ変換の入出力信号数を、前記矩形窓フィルタの大きさに基づいて算出し、算出した入出力信号数に基づいて高速フーリエ変換を行う
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1つに記載の無線受信装置。
【請求項9】
前記矩形フィルタ部からの出力に対して、縦がNw/2で、横がNx(Nxは任意の正数)で構成されるブロック・デ・インターリーバを行うデ・インターリーブ部
を具備することを特徴とする請求項1から8のいずれか1つに記載の無線受信装置。
【請求項10】
アンテナを備え、該アンテナにより無線信号を送信する無線送信装置であって、
送信信号系列に対して、縦がNw/2で、横がNx(Nxは任意の正数)で構成されるブロック・インターリーバを行うシンボル・インターリーブ部
を具備することを特徴とする無線送信装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−71448(P2009−71448A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−235860(P2007−235860)
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
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