説明

無線受信装置及び指向性制御方法

【課題】SFN環境で、ガードインターバルを超える遅延波が存在する場合でも、受信品質の劣化を防ぐこと。
【解決手段】OFDM受信機100は、単一の周波数を使用するネットワークを介して無線信号を受信する。アンテナ指向性制御部122は、信号を受信する際の指向性を形成する。OFDM受信部120は、受信レベル及び受信品質を測定する。送信局情報データベース140は、送信局の位置情報を送信局と対応付けて格納する。判定部121は、受信レベルと、受信品質と、OFDM受信機100の現在の位置情報と、送信局情報データベース140に格納される送信局の位置情報とに基づいて、送信局を選択するとともに、アンテナ指向性制御部122により形成する指向性を選択毎に変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線受信装置及び指向性制御方法に関し、例えばSFN(Single Frequency Network)等の単一の周波数を使用するネットワークにおいて、OFDM信号を受信する無線受信装置およびその装置における指向性制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、地上デジタル放送などのOFDM(直交周波数分割多重)信号を送受信するシステムにおいては、送受信されるOFDM信号のシンボル区間ごとに、最後尾の一部分の信号を複写して同一シンボル区間の先頭部に付加する手法が用いられている。このように複写される部分をガードインターバルと呼ぶ。ガードインターバルを付加することにより、反射波などの一定時間内の遅延波を受信した場合でも、遅延波が混信波にならず、安定した復調処理を行うことが可能となる。
【0003】
また、近年、ISDB−T(Integrated Services Digital Broadcasting for Terrestrial)方式を発展させたISDB−Tmm(Integrated Services Digital Broadcasting Terrestrial Mobile Multi-Media Broadcasting)方式を用いた、次世代モバイル用のマルチメディア放送が提唱されている。ISDB−Tmm方式では、単一の周波数を使用するSFNシステムを用いる(例えば、特許文献1)。特に、ISDB−Tmmは、VHF帯でのサービスを検討しており、UHF帯のディジタルテレビ放送の電波よりも電波が飛びやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2008/047441号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来においては、ガードインターバルの長さ以上の遅延を生じる伝送路を用いて通信を行う場合、またはSFN等のガードインターバルの長さを超える遅延波を受信しやすいネットワーク環境で通信する場合に、混信を生じるという問題がある。この結果、受信品質が劣化してしまうという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、SFN環境で、ガードインターバルの長さを超える遅延波が存在する場合でも受信品質の劣化を防ぐことができる無線受信装置及び指向性制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の無線受信装置は、単一の周波数を使用するネットワークを介して無線信号を受信する無線受信装置であって、無線信号を受信する受信手段と、前記受信手段により無線信号を受信する際の指向性を形成する指向性形成手段と、前記受信手段により受信した無線信号の受信レベル及び受信品質を測定する測定手段と、通信相手と前記通信相手の位置情報とを対応付けて格納する格納手段と、前記受信レベルと、前記受信品質と、現在の位置情報と、前記格納手段に格納される前記通信相手の位置情報とに基づいて前記通信相手を選択するとともに、前記指向性形成手段により形成する指向性を前記選択毎に変化させる判定手段と、を備える構成を採る。
【0008】
本発明の指向性制御方法は、単一の周波数を使用するネットワークを介して無線信号を受信する無線受信装置における指向性制御方法であって、無線信号を受信するステップと、前記無線信号を受信する際の指向性を形成するステップと、受信した前記無線信号の受信レベル及び受信品質を測定するステップと、通信相手と前記通信相手の位置情報とを対応付けて格納するステップと、前記受信レベルと、前記受信品質と、前記無線受信装置の位置情報と、格納された前記通信相手の位置情報とに基づいて前記通信相手を選択するとともに、前記選択毎に指向性を変化させるステップと、を具備するようにした。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、SFN環境で、ガードインターバルの長さを超える遅延波が存在する場合でも受信品質の劣化を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1に係るOFDM受信機の構成を示すブロック図
【図2】本発明の実施の形態1に係るOFDM受信機のアンテナ指向性制御の動作を示すフロー図
【図3】本発明の実施の形態2に係るOFDM受信機のアンテナ指向性制御の動作を示すフロー図
【図4】本発明の実施の形態2に係るOFDM受信機と送信局Aと送信局Bの位置を示す図
【図5】本発明の実施の形態3に係るOFDM受信機のアンテナ指向性制御の動作を示すフロー図
【図6】本発明の実施の形態3に係るOFDM受信機と送信局kと送信局Aの位置を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
(原理説明)
本発明の基本的な考え方について説明する。
【0012】
N(ただし、N≧2)個のアンテナを用意する。まず、任意のN個のアンテナを使用してアンテナ合成を行う。
【0013】
合成後の受信レベルが所定レベル以上で、受信品質が所定レベルより劣化した場合、アンテナの出力の信号位相及び合成比率を制御しアンテナ指向性を変更する。
【0014】
上記アンテナ指向性制御アルゴリズムは、OFDM受信機からの距離に応じてSFNの送信局を選択し、選択した送信局からの信号を最も良く受信するようにアンテナ指向性を制御する。
【0015】
ガードインターバルの長さを超える遅延波が、OFDM受信機から見て、主波と全く異なる方向の送信局からのものである場合、アンテナの指向性を、主波を最も強く受信するように制御することにより、主波と遅延波のレベル差を大きくすることができる。
【0016】
ガードインターバルの長さを超える遅延波が、受信品質の劣化を引き起こす場合は、主波と遅延波のレベルが拮抗している場合であるので、主波と遅延波のレベル差を大きくすることで、受信品質を改善することができる。ガードインターバルの長さを超える遅延波が、OFDM受信機から見て、主波と同じ方向の送信局からのものであれば、アンテナ指向性を、主波として受けている送信局とは別の方向にある送信局からの信号を受けるように制御する。これにより、遅延波と、新たに受信しようとしている送信局からの送信波との時間差、及びレベル差を変化させることができ、受信品質を改善することができる。
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。各実施の形態では、無線受信装置としてOFDM受信機を用いる場合を一例として説明する。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、上記基本的な考え方に基づく本実施の形態に係る無線受信装置であるOFDM受信機100の構成を示すブロック図である。本実施の形態のOFDM受信機100は、携帯電話機等の移動受信機に適用した例である。
【0019】
図1に示すように、OFDM受信機100は、2本のアンテナ101、102、合成回路110、位相制御回路111、OFDM受信部120、判定部121、アンテナ指向性制御部122、GPS回路130、送信局情報データベース140、及びアンテナ指向性データベース150を備えて構成される。
【0020】
アンテナ101は、無線信号を受信して合成回路110へ出力する。
【0021】
アンテナ102は、無線信号を受信して位相制御回路111へ出力する。
【0022】
合成回路110は、アンテナ指向性制御部122から入力した信号に従って、アンテナ101から入力した受信信号と、アンテナ102から入力した受信信号との合成比率を切り替える。また、合成回路110は、受信信号を所定の合成比率で合成した合成信号をOFDM受信部120へ出力する。
【0023】
位相制御回路111は、アンテナ指向性制御部122から入力した信号に従って、アンテナ102から入力した受信信号の位相を切り替えて合成回路110へ出力する。
【0024】
OFDM受信部120は、合成回路110から入力した合成信号に対して増幅、選別及び復調等を行い、受信信号として判定部121へ出力する。また、OFDM受信部120は、合成回路110から入力した合成信号の受信レベル及び受信品質を測定し、測定結果を判定部121へ出力する。受信品質を示す指標としては、ビット誤り率(BER(Bit Error Rate))またはCNR(Carrier to Noise Ratio)などを用いる。
【0025】
判定部121は、CPU、プログラムメモリまたはワークメモリ等から構成され、アンテナ指向性制御部122を制御する。また、判定部121をマイクロプロセッサ等で構成する場合は、OFDM受信機100を搭載する図示しない受信端末装置が、本体機能として備えるCPU等により判定部121を構成してもよい。
【0026】
判定部121は、OFDM受信部120から入力した受信レベル及び受信品質の測定結果に基づいて、アンテナ指向性制御を行う。具体的には、判定部121は、GPS回路130より得たOFDM受信機100の位置情報、及び送信局情報データベース140より得た送信局の位置情報より、主波として受信する送信局を選択する。また、判定部121は、選択した送信局の方向を算出してアンテナの最大指向性方向を決定する。また、判定部121は、決定した最大指向性方向に指向性を形成するための指向性の情報をアンテナ指向性データベース150より取得する。そして、判定部121は、取得した指向性の情報を制御信号としてアンテナ指向性制御部122へ出力する。
【0027】
アンテナ指向性制御部122は、信号を受信する際の指向性を形成する。具体的には、アンテナ指向性制御部122は、判定部121から入力した制御信号に基づいて合成比率を制御する信号を合成回路110へ出力するとともに、位相の切り替えを制御する信号を位相制御回路111へ出力する。
【0028】
送信局情報データベース140は、送信局の位置などの情報を送信局と対応付けて格納する。
【0029】
アンテナ指向性データベース150は、アンテナ101とアンテナ102とにより合成して形成される指向性の情報を格納する。
【0030】
次に、上述のように構成されたOFDM受信機100のアンテナ指向性制御動作について、図2を用いて説明する。
【0031】
図2は、OFDM受信機100のアンテナ指向性制御の動作を示すフロー図であり、判定部121により所定タイミングで繰り返し実行される。また、図2にいおて、「S」はフローの各ステップを示す。
【0032】
最初に、判定部121は、GPS回路130及び送信局情報データベース140から取得した情報より、OFDM受信機100の現在位置から最も近い送信局を選択する(ステップS1)。
【0033】
次に、判定部121は、選択した送信局の方向を算出し、算出した方向とアンテナの最大指向性方向とを一致させるようにアンテナ指向性制御部122へ指示を出し、位相制御回路111及び合成回路110を制御する(ステップS2)。
【0034】
次に、判定部121は、受信品質が悪いか否かを判定する(ステップS3)。具体的には、判定部121は、OFDM受信部120により測定された受信レベルが所定の閾値以上でかつ、OFDM受信部120により測定された受信品質が所定の閾値以下となる場合に(ステップS3:Yes)、ガードインターバルの長さを超える遅延波が存在すると判定する。この場合、判定部121は、受信品質が悪いと判定し、ステップS4に処理を移行する。
【0035】
一方、判定部121は、OFDM受信部120により測定された受信レベルが所定の閾値以上でかつ、OFDM受信部120により測定された受信品質が所定の閾値以下でない場合に(ステップS3:No)、受信品質が悪くないと判定し、ステップS2で受信を継続する。
【0036】
また、判定部121は、受信品質が悪いと判定した場合に(ステップS3:Yes)、送信局情報データベース140から取得した情報により、OFDM受信機100の周辺に他の送信局が存在するか否かを判定する(ステップS4)。
【0037】
他の送信局が存在すると判定した場合には(ステップS4:Yes)、判定部121は、現在選択している送信局の次に近い送信局を選択する(ステップS5)。
【0038】
一方、他の送信局が存在しないと判定した場合には(ステップS4:No)、判定部121は、ステップS1〜ステップS3の処理を繰り返す。
【0039】
このように、本実施の形態によれば、OFDM受信機は、受信レベルが所定以上あり、かつ受信品質が所定以下である場合、アンテナの最大指向性方向を、選択している送信局の次に近い送信局の方向に向くように制御する。
【0040】
即ち、OFDM受信機は、ガードインターバル長を超える遅延波を発生している送信局からの信号は受信しないようにアンテナ指向性を制御する。これにより、受信感度を向上させることができ、SFN環境で、ガードインターバルの長さを超える遅延波が存在する場合でも受信品質の劣化を防ぐことができる。
【0041】
(実施の形態2)
本実施の形態では、アンテナ指向性制御アルゴリズムとして、受信機に最も近い送信局の方向から、ガードインターバルの長さを超えた遅延波が到来する場合に、この遅延波を受信しないようにアンテナ指向性を制御する。
【0042】
なお、本実施の形態において、OFDM受信機の構成は、図1のOFDM受信機100と同一であるので、その説明を省略するとともに、本実施の形態におけるOFDM受信機に関する説明においては、図1の符号を用いて説明する。
【0043】
図3は、本実施の形態に係る無線受信装置であるOFDM受信機のアンテナ指向性制御の動作を示すフロー図であり、判定部121により所定タイミングで繰り返し実行される。また、図3において、「S」はフローの各ステップを示す。また、図4は、OFDM受信機100と送信局Aと送信局Bの位置を示す図である。図4において、送信局Aは、OFDM受信機100に最も近い送信局であり、送信局Bは、OFDM受信機100が選択した送信局である。
【0044】
図3において、上記の実施の形態1との相違は、主にステップS12のアンテナ指向性の制御の方法である。
【0045】
最初に、判定部121は、GPS回路130及び送信局情報データベース140から取得した情報より、OFDM受信機100の現在位置から送信局Bを選択する(ステップS11)。具体的には、判定部121は、現在選択している最も近い送信局A以外の近い送信局Bから順次送信局を選択する。
【0046】
そして、判定部121は、最も近い送信局Aからの遅延波を受信しないように、アンテナ指向性を制御する(ステップS12)。
【0047】
具体的には、判定部121は、次のアルゴリズムに従い、アンテナ指向性を決定する。即ち、判定部121は、アンテナ指向性データベース150より取得した情報、及び送信局情報データベース140より取得した、選択した送信局Bの位置情報より、選択した送信局Bの受信レベルを(1)式を用いて推定する。
【0048】
【数1】

【0049】
次に、判定部121は、アンテナ指向性データベース150より取得した情報、及び送信局情報データベース140より取得した、最も近い送信局Aの位置情報より、送信局Aの受信レベルを(2)式を用いて推定する。
【0050】
【数2】

【0051】
次に、判定部121は、C(θ)/I(θ)が最大となるθを求め、最大となるθの向きにアンテナ指向性が形成されるように制御する。そして、アンテナ指向性制御部122は、最大となるθの向き(図4の矢印#401の向き)にアンテナ指向性を形成する。
【0052】
但し、判定部121は、送信局A=送信局Bの場合は、θ=0とする。即ち、判定部121は、OFDM受信機100から最も近い送信局Aを選択している場合は、送信局Aの方向にアンテナ最大指向性を向けるように制御する。
【0053】
図3に戻って、ステップS12の次に、判定部121は、受信品質が悪いか否かを判定する(ステップS13)。具体的には、判定部121は、OFDM受信部120により測定された受信レベルが所定の閾値以上でかつ、OFDM受信部120により測定された受信品質が所定の閾値以下となる場合に(ステップS13:Yes)、ガードインターバルの長さを超える遅延波が存在すると判定する。この場合、判定部121は、受信品質が悪いと判定し、ステップS14に処理を移行する。
【0054】
一方、判定部121は、OFDM受信部120により測定された受信レベルが所定の閾値以上でかつ、OFDM受信部120により測定された受信品質が所定の閾値以下でない場合に(ステップS13:No)、受信品質が悪くないと判定し、ステップS12で受信を継続する。
【0055】
また、判定部121は、受信品質が悪いと判定した場合に(ステップS13:Yes)、送信局情報データベース140から取得した情報により、OFDM受信機100の周辺に他の送信局が存在するか否かを判定する(ステップS14)。
【0056】
他の送信局が存在すると判定した場合には(ステップS14:Yes)、判定部121は、現在選択している送信局の次に近い送信局を選択する(ステップS15)。
【0057】
一方、他の送信局が存在しないと判定した場合には(ステップS14:No)、判定部121は、ステップS11〜ステップS13の処理を繰り返す。
【0058】
このように、本実施の形態によれば、OFDM受信機から最も近い送信局Aにアンテナ最大指向性を向けた場合において、受信品質が悪い場合は、ガードインターバルの長さを超える遅延波が、OFDM受信機から見て、最も近い送信局Aと同じ方向の他の送信局から到来していると考えられる。従って、OFDM受信機は、遅延波の受信レベルと主波の受信レベルとの差が最大になるようにアンテナ指向性を制御する。これにより、本実施の形態によれば、OFDM受信機から見て、最も近い送信局Aと同じ方向の他の送信局から、ガードインターバルの長さを超える遅延波が到来している場合において、受信感度を向上させることができる。この結果、SFN環境で、ガードインターバルの長さを超える遅延波が存在する場合でも受信品質の劣化を防ぐことができる。
【0059】
(実施の形態3)
本実施の形態では、アンテナ指向性制御アルゴリズムとして、送信局の位置情報から選択した送信局のうち、ガードインターバルの長さを超える遅延波になりうる送信局を抽出し、抽出した送信局からの電波を受信しないようにアンテナ指向性を制御する。
【0060】
なお、本実施の形態において、OFDM受信機の構成は、図1のOFDM受信機100と同一であるので、その説明を省略するとともに、本実施の形態におけるOFDM受信機に関する説明においては、図1の符号を用いて説明する。
【0061】
図5は、本実施の形態に係る無線受信装置であるOFDM受信機のアンテナ指向性制御の動作を示すフロー図であり、判定部121により所定タイミングで繰り返し実行される。また、図5にいおて、「S」はフローの各ステップを示す。また、図6は、OFDM受信機100と送信局kと送信局Aの位置を示す図である。図6において、送信局kは、OFDM受信機100に対して妨害になり得る送信局であり、送信局Aは、OFDM受信機100が選択した送信局である。
【0062】
図5において、上記の実施の形態1との相違は、主にステップS22のアンテナ指向性の制御の方法である。
【0063】
最初に、判定部121は、GPS回路130及び送信局情報データベース140から取得した情報より、OFDM受信機100の現在位置から、受信しようとする送信局Aを選択する(ステップS21)。
【0064】
次に、判定部121は、ガードインターバルの長さを超える遅延波になりうる送信局kからの電波を受信しないように、アンテナ指向性を制御する(ステップS22)。
【0065】
具体的には、判定部121は、次のアルゴリズムに従い、アンテナ指向性を決定する。
【0066】
即ち、判定部121は、アンテナ指向性データベース150より取得した情報、及び送信局情報データベース140より取得した、選択した送信局Aの位置情報より、選択した送信局Aの受信レベルを(3)式を用いて推定する。
【0067】
【数3】

【0068】
次に、判定部121は、選択した送信局AとOFDM受信機100との距離の差分に対して、ガードインターバルの長さを超える遅延波になりうる送信局kを抽出する。具体的には、混信波は遅延波であるため、判定部121は、送信局AとOFDM受信機100との距離より遅延時間を求めることができ、求めた遅延時間がガードインターバルの長さを超えるか否かを判定する。このように、判定部121は、上記の方法により求めた遅延時間がガードインターバルの長さを超える送信局kを抽出する。また、上記の場合、判定部121は、複数の送信局を抽出することも可能である。そして、判定部121は、アンテナ指向性データベース150より取得した情報、及び送信局情報データベース140より取得した、送信局kの位置情報より、送信局kの受信レベルを(4)式を用いて推定する。
【0069】
【数4】

【0070】
次に、判定部121は、C(θ)/(ΣIk(θ))が最大となるθを求め、最大となるθの向きにアンテナ指向性が形成されるように制御する。そして、アンテナ指向性制御部122は、最大となるθの向き(図6の矢印#601の向き)にアンテナ指向性を形成する。
【0071】
図5に戻って、ステップS22の次に、判定部121は、受信品質が悪いか否かを判定する(ステップS23)。具体的には、判定部121は、OFDM受信部120により測定された受信レベルが所定の閾値以上でかつ、OFDM受信部120により測定された受信品質が所定の閾値以下となる場合に(ステップS23:Yes)、ガードインターバルの長さを超える遅延波が存在すると判定する。この場合、判定部121は、受信品質が悪いと判定し、ステップS24に処理を移行する。
【0072】
一方、判定部121は、OFDM受信部120により測定された受信レベルが所定の閾値以上でかつ、OFDM受信部120により測定された受信品質が所定の閾値以下でない場合に(ステップS23:No)、受信品質が悪くないと判定し、ステップS22で受信を継続する。
【0073】
また、判定部121は、受信品質が悪いと判定した場合に(ステップS23:Yes)、送信局情報データベース140から取得した情報により、OFDM受信機100の周辺に他の送信局が存在するか否かを判定する(ステップS24)。
【0074】
他の送信局が存在すると判定した場合には(ステップS24:Yes)、判定部121は、現在選択している送信局の次に近い送信局を選択する(ステップS25)。
【0075】
一方、他の送信局が存在しないと判定した場合には(ステップS24:No)、判定部121は、ステップS21〜ステップS23の処理を繰り返す。
【0076】
このように、本実施の形態によれば、OFDM受信機は、遅延波の受信レベルと主波の受信レベルとの差が最大になるようにアンテナ指向性を制御することにより、受信感度を向上させることができる。この結果、SFN環境で、ガードインターバルの長さを超える遅延波が存在する場合でも受信品質の劣化を防ぐことができる。
【0077】
上記の実施の形態1〜実施の形態3は、本発明の好適な実施の形態の例示であり、本発明の範囲はこれに限定されることはない。
【0078】
例えば、上記の各実施の形態において、アンテナを2本用いたが、本発明はこれに限らず、アンテナを3本以上用いてもよく、アンテナの数に限定はない。また、3本以上のアンテナを用いても、2本のアンテナを用いる場合と同様の効果を得ることができる。
【0079】
また、上記の各実施の形態において、アンテナ合成により指向性を制御したが、本発明はこれに限らず、1本のアンテナを機械的に動かして指向性を制御してもよい。
【0080】
また、上記の各実施の形態において、OFDM受信機を構成する各回路部の種類、数及び接続方法などは、上記の各実施の形態に示すものに限られない。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明に係る無線受信装置及び指向性制御方法は、例えば単一の周波数を使用するネットワークにおいて、OFDM信号を受信するのに好適である。
【符号の説明】
【0082】
100 OFDM受信機
101、102 アンテナ
110 合成回路
111 位相制御回路
120 OFDM受信部
121 判定部
122 アンテナ指向性制御部
130 GPS回路
140 送信局情報データベース
150 アンテナ指向性データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一の周波数を使用するネットワークを介して無線信号を受信する無線受信装置であって、
無線信号を受信する受信手段と、
前記受信手段により無線信号を受信する際の指向性を形成する指向性形成手段と、
前記受信手段により受信した無線信号の受信レベル及び受信品質を測定する測定手段と、
通信相手と前記通信相手の位置情報とを対応付けて格納する格納手段と、
前記受信レベルと、前記受信品質と、現在の位置情報と、前記格納手段に格納される前記通信相手の位置情報とに基づいて前記通信相手を選択するとともに、前記指向性形成手段により形成する指向性を前記選択毎に変化させる判定手段と、
を備える無線受信装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記受信レベルが第1の閾値以上かつ前記受信品質が第2の閾値以下の場合に、前記現在の位置情報と前記格納手段に格納される前記通信相手の位置情報とに基づいて、最も近い前記通信相手を選択するとともに、前記指向性形成手段により形成する指向性を、選択した最も近い前記通信相手に向けた指向性に変化させる請求項1記載の無線受信装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記指向性形成手段により最も近い前記通信相手に向けて指向性を形成した場合において、前記受信レベルが前記第1の閾値以上かつ前記受信品質が前記第2の閾値以下の場合に、前記現在の位置情報と前記格納手段に格納される前記通信相手の位置情報とに基づいて最も近い前記通信相手以外の近い前記通信相手から順次選択するとともに、前記受信品質が前記第2の閾値より大きくなるまで、前記指向性形成手段により形成する指向性を、選択した前記通信相手に向けた指向性に順次変化させる請求項1記載の無線受信装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記指向性形成手段により最も近い前記通信相手に向けて指向性を形成した場合において、前記受信レベルが前記第1の閾値以上かつ前記受信品質が前記第2の閾値以下の場合に、前記現在の位置情報と前記格納手段に格納される前記通信相手の位置情報とに基づいて最も近い前記通信相手以外の近い前記通信相手から順次選択するとともに、前記受信品質が前記第2の閾値より大きくなるまで、前記指向性形成手段により形成する指向性を、式(5)
【数5】

に従って求めた値を式(6)
【数6】

に従って求めた値で除算した除算値が最大になる角度に向けた指向性に順次変化させる請求項1記載の無線受信装置。
【請求項5】
前記判定手段は、前記現在の位置情報と前記格納手段に格納される前記通信相手の位置情報とに基づいて近い前記通信相手から順次選択するとともに、前記受信品質が閾値より大きくなるまで、前記指向性形成手段により形成する指向性を、式(7)
【数7】

に従って求めた値を式(8)
【数8】

に従って求めた値で除算した除算値が最大になる角度に向けた指向性に順次変化させる請求項1記載の無線受信装置。
【請求項6】
単一の周波数を使用するネットワークを介して無線信号を受信する無線受信装置における指向性制御方法であって、
無線信号を受信するステップと、
前記無線信号を受信する際の指向性を形成するステップと、
受信した前記無線信号の受信レベル及び受信品質を測定するステップと、
通信相手と前記通信相手の位置情報とを対応付けて格納するステップと、
前記受信レベルと、前記受信品質と、前記無線受信装置の位置情報と、格納された前記通信相手の位置情報とに基づいて前記通信相手を選択するとともに、前記選択毎に指向性を変化させるステップと、
を具備する指向性制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−182074(P2011−182074A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42446(P2010−42446)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】