説明

無線告知放送システム

【課題】低コストで信頼性の高い無線告知放送システムを実現すること。
【解決手段】無線告知放送システムは、センタ装置1と、AD変換器2と、WiMAX基地局3と、WiMAX子局4A、4Bと、DA変換器9A、9Bと、FM親局5A、5Bと、複数のFM子局6A、6Bと、複数の受信端末装置7A、7Bと、センタ装置1と各受信端末装置7A、7Bの間に敷設された伝送線8と、により構成されている。WiMAX子局4A、4BまではWiMAX通信とし、FM親局5A、5BにおいてFM信号に変換することで、FM子局6A、6BによるFM中継で各受信端末装置7A、7Bへと告知放送信号を送信する。FM方式であるから遅延なく告知放送を行うことができる。また、受信端末装置7A、7BはFM方式のものを用いることができるので、低コストである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、災害情報などの告知放送を配信する無線告知放送システムであって、低コストにシステムを構築することができるものに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CATVやFTTHの導入が難しい地域などにおいて、デジタル無線通信技術であるWiMAXを導入し、これを地域の防災情報や行政情報などを伝える告知放送に活用する検討が行われている。また、防災無線のデジタル化のためにWiMAXを導入する試みもなされている。
【0003】
従来の有線放送による告知放送システムとしては、たとえば特許文献1が知られている。特許文献1には、有線放送が受信できない場合に自動的にコミュニティFM放送を受信することができる告知放送システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−178028
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、WiMAXを導入して無線による告知放送システムを構築する場合、以下の点が問題である。第1に、デジタル無線通信では輻輳遅延などによって告知放送に遅延が生じる場合があり、緊急地震速報などの極短時間で提供する必要のある情報を放送する目的には利用することはできない。第2に、WiMAXの受信端末装置はコストが高く、安価に無線告知放送システムを構築することができない。第3に、WiMAXの受信端末装置は消費電力が高く、電池などによる簡易なバックアップ駆動ができず、停電時に告知放送システムを運用することができない。さらに、同時に複数の端末を起動する場合、同時接続台数の制限が生じる。これらの理由から、WiMAXを利用した、安価で信頼性の高い告知放送システムは実現していなかった。
【0006】
そこで本発明の目的は、低コストで構築することができ、信頼性の高い無線告知放送システムを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、告知放送信号であるアナログ信号を生成するセンタ装置と、センタ装置により生成されたアナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換器と、AD変換器により変換されたデジタル信号で搬送波を変調して送信するデジタル無線基地局と、デジタル無線基地局からの変調された搬送波を受信し、変調された搬送波からデジタル信号を復調するデジタル無線子局と、デジタル無線子局が復調したデジタル信号をアナログ信号に変換するDA変換器と、DA変換器により変換されたアナログ信号で所定帯域の搬送波を変調して電波法で規制されない微弱電波、または特定小電力のFM信号を生成し、送信するFM親局と、FM親局からのFM信号を中継して送信する複数のFM子局と、FM親局、またはFM子局からのFM信号を受信して、FM信号からアナログ信号を復調し、告知放送を行う複数の受信端末装置と、を備えることを特徴とする無線告知放送システムである。
【0008】
ここで、所定帯域とは、通常は70〜90MHzの帯域であるが、他の任意の帯域であってもよい。また、電波法で規制されない微弱電波とは、電波法第4条第1号、電波法施行規則第6条第1項第1号に規定の微弱な電波である。具体的には、322MHz以下の周波数帯においては3mの距離での電界強度が500μV/m以下、と定められている。また特定小電力とは、出力が0.01W以下であって、73.6MHzを越えて74.8MHz以下の周波数または75.2MHzを越えて76.0MHz以下の周波数を用い、総務大臣が定める用途、電波形式に適合するもの、と定められている。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、センタ装置と各受信端末装置との間には伝送線が敷設され、センタ装置は、生成したアナログ信号で所定帯域の搬送波を変調してFM信号を生成し、伝送線を介して送信する手段をさらに有し、受信端末装置は、伝送線を介してセンタ装置からのFM信号を受信する手段をさらに有する、ことを特徴とする無線告知放送システムである。
【0010】
伝送線は、たとえばCATVケーブルや、光ケーブルなどである。
【0011】
第3の発明は、第1の発明または第2の発明において、デジタル無線子局およびFM子局はグループ分けされて複数設置され、センタ装置は、グループごとに異なる告知放送信号を生成し、デジタル無線基地局は、グループごとに異なる告知放送信号を多重化して送信し、デジタル無線子局は、自己のグループに係る告知放送信号であるデジタル信号を復調し、FM親局は、DA変換器により変換された、自己のグループに係る告知放送信号であるアナログ信号で、グループごとに異なる周波数の搬送波を変調してFM信号を生成し、送信する、ことを特徴とする無線告知放送システムである。
【0012】
第4の発明は、第1の発明から第3の発明において、デジタル無線子局は、FM親局へデジタル信号で搬送波を変調した信号を送信する手段をさらに有し、FM親局は、デジタル無線子局からの変調された搬送波を中継して送信する手段をさらに有し、FM子局は、デジタル無線子局からの変調された搬送波を中継して送信する手段と、変調された変調波からデジタル信号を復調し、告知放送を行う手段をさらに有する、ことを特徴とする無線告知放送システムである。
【0013】
第5の発明は、第1の発明から第4の発明において、FM親局およびFM子局は、FM信号の中継状態に関する情報であるデジタル信号を生成し、そのデジタル信号で搬送波を変調して送信する手段と、他のFM子局からの変調された搬送波を中継する手段とをさらに有し、デジタル無線子局は、FM親局からの変調された搬送波をデジタル無線基地局へと送信する手段をさらに有し、デジタル無線基地局は、デジタル無線子局からの変調された搬送波から、FM信号の中継状態に関する情報であるデジタル信号を復調し、センタ装置1へと転送する手段をさらに有する、ことを特徴とする無線告知放送システムである。
【0014】
第6の発明は、第1の発明から第5の発明において、デジタル無線基地局とデジタル無線子局との間の通信方式は、WiMAX方式であることを特徴とする無線告知放送システムである。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明によると、高速で大容量のデジタル無線方式の利点を生かしつつ、受信端末装置にはアナログFM方式のものを使用することができる。アナログFM方式に用いる受信端末装置は安価であり、電池等によるバックアップ駆動が可能である。また、受信端末装置の起動も早く、告知放送に遅延が生じない。また、電波法で規制されない微弱電波を用いる場合は、微弱電波をFM中継することで、無線局の免許を必要とすることなく、簡易に広範なエリアをカバーすることができる。特定小電力を用いる場合は、送信機の技術基準適合証明を取得することにより、無線局の免許を必要とすることなく、微弱電波方式に比べ広い範囲をカバーすることができる。また、複数の受信端末装置を起動する際の同時接続台数にも制限がない。したがって、安価で信頼性の高い無線告知放送システムを実現することができる。
【0016】
また、第2の発明によると、無線告知放送システムに有線告知放送システムを併用することができるので、より信頼性の高い告知放送システムを実現することができる。これにより、たとえば通常は伝送線による告知放送を行い、災害などにより伝送線が断線した場合には無線による告知放送を行う告知放送システムを構築することができる。
【0017】
また、第3の発明によると、グループ分けされたデジタル無線子局単位で異なる内容の告知放送を、混信することなく行うことができる。
【0018】
また、第4の発明のように、アナログFM方式と、デジタル無線方式の2つの独立した無線方式で告知放送を行うことにより、より信頼性の高い告知放送システムを実現することができる。
【0019】
また、第5の発明によると、FM子局によるFM信号の中継状態をセンタ装置において監視することができる。
【0020】
また、第6の発明のように、デジタル無線親局とデジタル無線子局との間の通信方式として、WiMAX方式を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例1の無線告知放送システムの構成を示した図。
【図2】FM子局6Aの構成を示した図。
【図3】TVアンテナを介して受信端末装置7がFM信号を受信する場合の構成を示した図。
【図4】家屋内のコンピュータをWiMAX網に接続する構成を示した図。
【図5】実施例2の無線告知放送システムの構成を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の具体的な実施例について図を参照に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0023】
図1は、本発明の無線告知放送システムの構成を示した図である。無線告知放送システムは、センタ装置1と、AD変換器2と、WiMAX基地局3(本発明のデジタル無線基地局に相当)と、WiMAX子局(本発明のデジタル無線子局に相当)4A、4Bと、DA変換器9A、9Bと、FM親局5A、5Bと、複数のFM子局6A、6Bと、複数の受信端末装置7A、7Bと、センタ装置1と各受信端末装置7A、7Bの間に敷設された伝送線8と、により構成されている。ここで符号のA、Bは、それぞれグループA、グループBに属していることを示している。
【0024】
センタ装置1は、音声信号である告知放送信号を生成し、トーン信号である制御信号を生成する装置であり、告知放送信号と制御信号でFM帯域(70〜90MHz)の搬送波をFM変調して伝送線8を介して送信する装置である。制御信号は、受信端末装置7において、告知放送の開始、終了、録音、音量などの放送の制御や、受信端末装置7の個別ID、グループIDや受信するアナログ信号の周波数などのデータ更新を行うための信号である。センタ装置1は、AD変換器2を介してWiMAX基地局3に接続している。また、センタ装置1と各受信端末装置7A、7Bとは伝送線8を介して接続している。伝送線8は、たとえばCATVケーブルや光ケーブルなどである。
【0025】
WiMAX基地局3は、AD変換器2を介してセンタ装置1と接続している。WiMAX基地局3は、WiMAX規格で定められた方式に従い、WiMAX子局4A、4Bと双方向に通信することができる。WiMAXは、WiMAXフォーラムによってIEEE802.16ファミリーとして規格が標準化されている、もしくは標準化が進められているデジタル無線技術であり、高速で大容量の通信が可能である。また、WiMAXの通信距離は、アンテナや見通しなどにもよるが、おおよそ4〜5kmであるため、WiMAX子局4A、4Bは、WiMAX基地局3からこの範囲内に配置する。
【0026】
なお、WiMAX基地局3と、WiMAX子局4A、4Bとの間の通信は、マルチホップ通信であってもよい。これにより、たとえばWiMAX子局4BがWiMAX基地局3から通信距離以上離れた場所であっても、WiMAX子局4Aの通信距離内であれば、WiMAX子局4Aによる中継によりWiMAX基地局3からのWiMAX信号を受信することができる。WiMAXのマルチホップ通信は、IEEE802.16jとして標準化が進められている技術である。
【0027】
また、WiMAX基地局3と、WiMAX子局4A、4Bとの間の通信は、常時接続状態とするのがよい。送信・受信のオン/オフ切り換えによる遅延時間を削減することができ、信号を遅延なく送信することができるからである。
【0028】
FM親局5A、5Bは、WiMAX子局4A、4Bにそれぞれ併設されており、DA変換器9A、9Bを介してWiMAX子局4A、4Bにそれぞれ接続している。FM親局5A、5Bは、DA変換器9A、9Bからのアナログ信号でFM帯域の搬送波をFM変調してFM信号を生成し、FM信号をFM子局6A、6Bや受信端末装置7A、7Bに電波法で規制されない微弱電波の条件を満たす、または特定小電力の出力で送信する装置である。電波法で規制されない微弱電波とは、322MHz以下の周波数帯域、つまりFM帯域においては、無線局から3mの距離での電界強度が500μV/m以下の電波である。また、特定小電力とは、出力が0.01W以下であって、73.6MHzを越えて74.8MHz以下の周波数または75.2MHzを越えて76.0MHz以下の周波数を用い、総務大臣が定める用途、電波形式に適合するもの、と定められている。
【0029】
FM子局6A、6Bは、FM親局5A、5BからのFM信号を中継し、また、周囲の受信端末装置7A、7BにFM信号を送信する装置である。電波法で規制されない微弱電波の場合、通信距離は200m程度であるが、中継することにより、電波法で規制されない微弱電波であっても広くエリアをカバーすることができる。また、特定小電力の場合は、微弱電波に比べて0.01W以下と出力が大きいため、中継装置の数を削減することができる。FM子局6A、6Bは、たとえば屋外に立設したポールや、公共施設などに設置される。
【0030】
図2は、FM子局6Aの構成を示したブロック図である。FM子局6Aは、受信アンテナ61と、復調器62と、変調器63と、分配器64と、送信アンテナ65、66とにより構成されている。受信アンテナ61は、指向性を有したアンテナであり、前段のFM親局5A、またはFM子局6AからのFM信号を受信する。復調器62は、FM信号からアナログ信号を復調する。変調器63は、復調器62からのアナログ信号で、再び周波数f1の搬送波をFM変調し、FM信号を生成する。変調器63による被変調波は、分配器64により分配される。送信アンテナ65は、分配器64からの被変調波を、FM子局6Aの周囲の受信端末装置7Aに送信する。一方、送信アンテナ66は、指向性を有したアンテナであり、分配器64からの被変調波を、次段のFM子局6Aに送信する。いずれも電波法で規制されない微弱電波の条件を満たす、もしくは特定小電力の条件を満たすようにして送信する。このようにして、FM子局6AはFM親局5AからのFM信号を中継し、また、周囲の受信端末装置7AにFM信号を送信する。なお、FM子局6Bの構成も同様の構成である。
【0031】
受信端末装置7A、7Bは、FM親局5AまたはFM子局6AからFM信号を受信し、もしくは伝送線8を介してセンタ装置1からFM信号を受信し、FM信号から告知放送信号および制御信号とを含むアナログ信号を復調し、告知放送信号による告知放送を行う装置であり、告知放送は制御信号に制御される。また、受信端末装置7A、7Bは、1次電池、2次電池などのバックアップ電源を備えており、通常は商用電源による駆動とバックアップ電源による駆動とが可能である。受信端末装置7A、7Bは、たとえば各家庭の家屋内や、公共施設などに配置される。
【0032】
FM親局5AまたはFM子局6AからのFM信号は、受信端末装置7A、7Bに受信アンテナを設けて受信するものであってもよいし、既設のTVアンテナを介して受信するものであってもよい。図3は、TVアンテナによりFM信号を受信する場合の構成を示す図である。家屋70の外部にはTVアンテナ71が設置され、家屋70の内部にはTV装置72と受信端末装置7が配置されている。TVアンテナ71とTV装置72、受信端末装置7は、TVケーブル73によって接続されている。TVアンテナ71が受信する信号は、TVケーブル73によって家屋70の内部に引き込まれ、分配器74によって分配されてTV装置72と受信端末装置7とに入力される。このような構成によれば、受信端末装置7が家屋70内に配置される場合であっても、既設のTVアンテナ71によってFM信号を良好に受信することができる。
【0033】
以下、グループA向けの告知放送と、グループB向けの告知放送を行う場合の告知放送の流れについて説明する。
【0034】
センタ装置1は、携帯電話、固定電話、センタ装置1に接続されたマイクなどからの音声入力に基づき、音声信号である告知放送信号を生成する。もしくは、センタ装置1に入力されたデータなどに基づいて、センタ装置1に設けられた音声化装置により告知放送信号を生成する。また、センタ装置1は、受信端末装置7における告知放送の制御のための制御信号を生成する。告知放送信号と制御信号はともにアナログ信号であり、グループA向けの告知放送に係る告知放送信号および制御信号と、グループB向けの告知放送に係る告知放送信号および制御信号とを生成する。この告知放送信号と制御信号を含むアナログ信号は、AD変換器2によってデジタル信号に変換される。
【0035】
また、センタ装置1は、グループA向けの告知放送に係る告知放送信号および制御信号とを含むアナログ信号で、FM帯域である周波数f1の搬送波をFM変調してFM信号を生成し、グループB向けの告知放送に係る告知放送信号および制御信号とを含むアナログ信号で、FM帯域である周波数f2の搬送波をFM変調してFM信号を生成し、これらを多重化して各受信端末装置7A、7Bへと直接送信する。ここでf1とf2は異なる周波数である。なお、必ずしもFM帯域である必要はなく、他の任意の帯域を用いてもよい。
【0036】
WiMAX基地局3は、AD変換器2によって変換された、グループA向けの告知放送に係る告知放送信号および制御信号とを含むデジタル信号と、グループB向けの告知放送に係る告知放送信号および制御信号とを含むデジタル信号とで、それぞれ搬送波を変調、多重化してWiMAX信号を生成し、各WiMAX子局4A、4Bへ送信する。
【0037】
WiMAX子局4Aは、WiMAX基地局3からのWiMAX信号を受信し、グループA向けの告知放送に係る告知放送信号および制御信号とを含むデジタル信号を復調する。また同様に、WiMAX子局4Bは、WiMAX基地局3からのWiMAX信号を受信し、グループB向けの告知放送に係る告知放送信号および制御信号とを含むデジタル信号を復調する。DA変換器9A、9Bは、WiMAX子4A、4Bが復調したデジタル信号をそれぞれアナログ信号に変換する。
【0038】
FM親局5Aは、DA変換器9Aにより変換されたアナログ信号で、FM帯域である周波数f1の搬送波をFM変調し、FM親局5Aが設置されたエリア周辺の受信端末装置7A、FM子局6Aに、電波法で規制されない微弱電波の条件を満たす、または特定小電力の出力で送信する。また同様に、FM親局5Bは、DA変換器9Bにより変換されたアナログ信号で、FM帯域であって周波数f1とは異なる周波数f2の搬送波をFM変調してFM信号を生成し、FM親局5Bが設置されたエリア周辺の受信端末装置7B、FM子局6Bに、電波法で規制されない微弱電波の条件を満たす、または特定小電力の条件を満たすようにして送信する。なお、微弱電波の場合は、必ずしもFM帯域である必要はなく、他の任意の帯域を用いてもよい。
【0039】
FM子局6A、6Bは、FM親局5A、5BからのFM信号を次段のFM子局6A、6Bに中継し、また、周囲の受信端末装置7A、7BにFM信号を送信する。
【0040】
受信端末装置7Aは、FM親局5AまたはFM子局6AからのFM信号を受信し、そのFM信号からグループA向けの告知放送に係る告知放送信号および制御信号とを含むアナログ信号を復調する。また、受信端末装置7Bは、FM親局5BまたはFM子局6BからのFM信号を受信し、そのFM信号からグループB向けの告知放送に係る告知放送信号および制御信号とを含むアナログ信号を復調する。ここで、グループA向けのFM信号は周波数f1の搬送波を変調したものであり、グループB向けのFM信号は、周波数f1とは異なる周波数f2の搬送波を変調したものであるから、混信することなく、それぞれのグループ向けのアナログ信号を復調することができる。その後、受信端末装置7A、7Bでは、アナログ信号に含まれる制御信号に基づき、グループA、B向けの告知放送の開始、終了、録音、音量などの放送の制御がなされる。告知放送はFM方式のものであるから、IP方式による告知放送のような遅延を生じることなく告知放送を行うことができる。したがって、緊急地震速報のような極短時間で提供する必要のある情報も、実施例1の告知放送システムによると提供が可能である。
【0041】
一方、受信端末装置7A、7Bは、伝送線8に接続されており、センタ装置1から伝送線8経由で直接にFM信号を受信することも可能である。したがって、実施例1の告知放送システムでは、無線ネットワーク経由での無線告知放送と、伝送線経由での有線告知放送の双方を行うことができ、また有線告知放送と無線告知放送とでは同一内容の放送である。これにより、たとえば、通常は伝送線8経由での有線告知放送を行い、伝送線8が災害等により断線した際には無線ネットワーク経由の無線告知放送に切り換える運用が可能であり、信頼性の高い告知放送システムを構築することができる。
【0042】
また、受信端末装置7A、7Bは、アナログFM式の端末装置であるため低コストである。また、消費電力が小さいので1次電池、2次電池などのバックアップ電源によりバックアップ駆動が可能である。そのため、災害等により商用電源が停電している場合でも使用することができる。これにより、通常は伝送線8経由での有線告知放送を行い、災害等により公共施設などに避難する際には、避難場所に受信端末装置7を携帯し、その避難場所においてFM親局5やFM子局6からFM信号を受信して告知放送を聞くことができるように運用することも可能である。
【0043】
なお、FM親局5A、5BやFM子局6A、6Bに、アナログ信号に含まれる制御信号に基づき、アナログ信号に含まれる告知放送信号による告知放送を行う拡声器を設け、受信端末装置7A、7Bが設置されていない野外などにおいても告知放送を聞くことができるようにしてもよい。同様に、WiMAX子局4A、4Bに、デジタル信号に含まれる制御信号に基づき、デジタル信号に含まれる告知放送信号による告知放送を行う拡声器を設けてもよい。
【0044】
また、実施例1の無線告知放送システムでは、センタ装置と各受信端末装置間に伝送線を敷設し、伝送線による告知放送と、無線による告知放送とに二重化した構成としているが、伝送線による告知放送システムの構築は必ずしも必要ではなく、無線による告知放送のみであってもよい。
【0045】
また、実施例1の無線告知放送システムにおける、WiMAX基地局3、WiMAX子局4A、4BによるWiMAX網を、IP網の構築に利用することもできる。図4は、家屋70内にコンピュータ75が設置されている場合において、コンピュータ75をWiMAX網に接続する構成を示した図である。図4において、図3の構成と同じものには同一の符号を付している。家屋70の外部には、TVアンテナ71とWiMAXアンテナ76、同軸モデム77aが設置され、家屋70の内部には、TV装置72、受信端末装置7、コンピュータ75、同軸モデム77bが配置されている。WiMAXアンテナ76は同軸モデム77aに接続しており、同軸モデム77aは、混合器78を介してTVケーブル73に接続されている。TVケーブルは、家屋70外部から家屋70の内部に引き込まれている。TVケーブル73は分配器74によって分配され、一方はTV装置72に接続し、他方は分配器79によってさらに分配されて一方は受信端末装置7に、他方は同軸モデム77bを介してコンピュータ75に接続している。
【0046】
WiMAXアンテナ76がWiMAX網から受信した信号は、同軸モデム77aによってTVケーブルを伝送させるのに適した信号に変換された後、TVケーブル73に混合され、分配器74、79によって分配された後、同軸モデム77bに入力される。そして、同軸モデム77bにより、WiMAXアンテナ76が受信した元の信号に再変換され、コンピュータ75に入力される。このような構成によれば、通常は遮蔽等によってWiMAX通信は難しい家屋70内部であっても、WiMAX網に接続が可能となり、IP網を構築することができる。また、上記の構成は、既設のTV施設を利用して容易に構築することができる。また、WiMAXアンテナ76をTVアンテナ71と同じマストに取り付けるようにすれば、WiMAX網からの信号をより容易にTV施設へ混合することができる。
【実施例2】
【0047】
図5は、実施例2の無線告知放送システムの構成について示した図である。センタ装置1からWiMAX基地局3までの間の構成は、実施例1の無線告知放送システムと同様であるが、WiMAX子局4に替えてWiMAX子局24とした点、FM親局5、FM子局6それぞれに無線LAN装置20と、放送装置21とを併設した構成である点、およびグループ分けをしていない構成である点が異なっている。
【0048】
WiMAX子局24は、WiMAX子局4に、WiMAX信号と無線LAN信号とを相互に変換する手段と、無線LAN信号を送受信する手段を加えた装置である。無線LAN装置20は、無線LAN信号を中継する手段と、FM親局5またはFM子局6の中継状態を監視する手段とを備えた装置である。放送装置21は、無線LAN装置20において復調されたデジタル信号に基づき、告知放送を行う装置である。
【0049】
実施例2の無線告知放送システムでは、実施例1の無線告知放送システムと同様に受信端末装置7において告知放送を行うことができるとともに、FM信号の中継の状態を監視し、無線LAN経由での告知放送を行うことが可能である。
【0050】
まず、FM信号の中継の状態を監視する方法について説明する。
【0051】
無線LAN装置20によるFM信号の中継状態の監視は、たとえば、告知放送を行わない場合にも随時搬送波をFM子局6によって中継する状態とし、無線LAN装置20に併設されたFM子局6が搬送波を受信しているかどうかを見ることによって、中継機能が正常に機能しているかを監視することができる。無線LAN装置20は、併設されたFM子局6の中継機能の状態に関する情報を含むデジタル信号を生成し、そのデジタル信号で搬送波を変調して無線LAN規格に則した無線LAN信号を生成して送信する。その無線LAN信号は、他の無線LAN装置20により中継され、WiMAX子局24へと送信される。WiMAX子局24は、無線LAN装置20からの無線LAN信号を、WiMAX規格に則したWiMAX信号に変換してWiMAX基地局3へと送信する。WiMAX基地局は、そのWiMAX信号からFM子局6の中継機能の状態に関する情報を含むデジタル信号を復調し、センタ装置1へと転送する。これにより、センタ装置1は、各FM子局6における中継の状態を監視することができ、中継が途切れている場合には、どのFM子局6の中継に問題が生じているのかを判断することができる。
【0052】
次に、放送装置21による告知放送の流れについて説明する。
【0053】
WiMAX子局24がWiMAX信号を受信するところまでの流れは、告知放送信号をグループ分けしていない点以外は実施例1の場合と同様なので省略する。WiMAX子局24は、WiMAX基地局3から受信したWiMAX信号を、無線LAN規格に則した無線LAN信号へと変換する。変換された無線LAN信号は、FM親局5に併設された無線LAN装置20に送信され、無線LAN装置20に中継されてFM子局6に併設された無線LAN装置20へと送信される。無線LAN装置20では、受信した無線LAN信号からデジタル信号を復調し、再度変調して無線LAN信号生成して送信する。放送装置21は、無線LAN装置20において復調されたデジタル信号をアナログ信号に変換し、アナログ信号に含まれる制御信号に基づき、アナログ信号に含まれる告知放送信号による告知放送を行う。
【0054】
この実施例2の無線告知放送システムによれば、FM中継によるFM方式の告知放送と、無線LAN方式の告知放送とを独立に行うことができ、一方の方式を他方の方式の補完に用いるなどすることで信頼性の高い告知放送システムを運用することができる。たとえばFM中継が正常に機能している場合には、このFM中継方式による告知放送を行い、FM中継が途中で途切れるなどして正常に機能していない場合には、FM親局5やFM子局6に併設された放送装置21によって無線LAN方式による告知放送を行うように、告知放送システムを運用することができる。
【0055】
なお、実施例1では、グループA、Bの2グループに分けた場合について説明し、実施例2ではグループ分けしなかった場合について説明したが、本発明の告知放送システムは、グループ分けしない場合にも、3グループ以上に分ける場合にも適用可能なシステムである。
【0056】
また、実施例1、2において、WiMAX方式に替えて、他のデジタル無線方式を用いてもよい。たとえば、IEEE802.20規格のデジタル無線方式などである。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の告知放送システムは安価に構築することができ、信頼性の高い告知放送を行うことができる。
【符号の説明】
【0058】
1:センタ装置
2:AD変換器
3:WiMAX基地局
4A、4B、24:WiMAX子局
5A、5B:FM親局
6A、6B:FM子局
7A、7B:受信端末装置
8:伝送線
9A、9B:DA変換器
20:無線LAN装置
21:放送装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
告知放送信号であるアナログ信号を生成するセンタ装置と、
前記センタ装置により生成されたアナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換器と、
前記AD変換器により変換されたデジタル信号で搬送波を変調して送信するデジタル無線基地局と、
前記デジタル無線基地局からの変調された搬送波を受信し、変調された搬送波からデジタル信号を復調するデジタル無線子局と、
前記デジタル無線子局が復調したデジタル信号をアナログ信号に変換するDA変換器と、
前記DA変換器により変換されたアナログ信号で所定帯域の搬送波を変調して電波法で規制されない微弱電波、または特定小電力のFM信号を生成し、送信するFM親局と、
前記FM親局からのFM信号を中継して送信する複数のFM子局と、
前記FM親局、または前記FM子局からのFM信号を受信して、FM信号からアナログ信号を復調し、告知放送を行う複数の受信端末装置と、
を備えることを特徴とする無線告知放送システム。
【請求項2】
前記センタ装置と各前記受信端末装置との間には伝送線が敷設され、
前記センタ装置は、生成したアナログ信号で所定帯域の搬送波を変調してFM信号を生成し、前記伝送線を介して送信する手段をさらに有し、
前記受信端末装置は、前記伝送線を介して前記センタ装置からのFM信号を受信する手段をさらに有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の無線告知放送システム。
【請求項3】
前記デジタル無線子局およびFM子局はグループ分けされて複数設置され、
前記センタ装置は、グループごとに異なる告知放送信号を生成し、
前記デジタル無線基地局は、グループごとに異なる告知放送信号を多重化して送信し、
前記デジタル無線子局は、自己のグループに係る告知放送信号であるデジタル信号を復調し、
前記FM親局は、前記DA変換器により変換された、自己のグループに係る告知放送信号であるアナログ信号で、グループごとに異なる周波数の搬送波を変調してFM信号を生成し、送信する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の無線告知放送システム。
【請求項4】
前記デジタル無線子局は、前記FM親局へデジタル信号で搬送波を変調した信号を送信する手段をさらに有し、
前記FM親局は、前記デジタル無線子局からの変調された搬送波を中継して送信する手段をさらに有し、
前記FM子局は、前記デジタル無線子局からの変調された搬送波を中継して送信する手段と、変調された変調波からデジタル信号を復調し、告知放送を行う手段をさらに有する、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の無線告知放送システム。
【請求項5】
前記FM親局および前記FM子局は、FM信号の中継状態に関する情報であるデジタル信号を生成し、そのデジタル信号で搬送波を変調して送信する手段と、他の前記FM子局からの変調された搬送波を中継する手段とをさらに有し、
前記デジタル無線子局は、前記FM親局からの変調された搬送波を前記デジタル無線基地局へと送信する手段をさらに有し、
前記デジタル無線基地局は、前記デジタル無線子局からの変調された搬送波から、FM信号の中継状態に関する情報であるデジタル信号を復調し、センタ装置1へと転送する手段をさらに有する、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の無線告知放送システム。
【請求項6】
前記デジタル無線基地局と前記デジタル無線子局との間の通信方式は、WiMAX方式であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の無線告知放送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−166419(P2010−166419A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−8101(P2009−8101)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【出願人】(000116677)シンクレイヤ株式会社 (38)
【Fターム(参考)】