説明

無線周波信号の同定装置

【課題】照合の為の演算量の削減や、照合に要する時間を短縮することのできる無線周波信号の同定装置を得る。
【解決手段】照合制御手段3は無線周波信号特徴抽出手段2で抽出された無線周波信号特徴パターンから概略特徴を求め、制御情報として制御情報記録保存手段4に保存する。新たな無線周波信号特徴パターンが抽出された場合、照合制御手段3は、その概略特徴を求め、制御情報記録保存手段4に保存されている制御情報に基づいて、概略情報と一致する照合信号特徴パターンを判定する。照合制御手段3は、記録保存手段6の照合信号特徴パターンのうち、概略情報と一致する照合信号特徴パターンを照合手段5に出力する。照合手段5は、新たな無線周波信号特徴パターンと、概略情報と一致する照合特徴パターンとのみ照合を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、無線周波信号を同定する無線周波信号の同定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の無線周波信号の同定装置では、未知の無線周波信号特徴パターンが入力されたときに、記録された既知の多数の照合信号特徴パターンを照合手段に順次入力し、順次それらが一致するかどうかを確認していた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4675216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような無線周波信号の同定装置にあっては、照合信号特徴パターン数が多くなるにつれ、未知の信号の照合により多くの演算を必要とすることになり、演算量の削減や処理時間の短縮化といった観点からなお解決すべき課題が残されていた。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、照合の為の演算量の削減や、照合に要する時間を短縮することのできる無線周波信号の同定装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る無線周波信号の同定装置は、無線周波信号に基づき、その無線周波信号特徴パターンを抽出する無線周波信号特徴抽出手段と、照合信号特徴パターンを記録する記録保存手段と、無線周波信号特徴抽出手段で抽出された無線周波信号特徴パターンと記録保存手段で記録されている照合信号特徴パターンとを照合し、無線周波信号を同定する照合手段とを備えた無線周波信号の同定装置において、無線周波信号特徴パターンからその概略特徴を求める照合制御手段と、概略特徴を保存する制御情報記録保存手段とを備え、無線周波信号特徴抽出手段で新たな無線周波信号特徴パターンが抽出された場合、照合制御手段は、抽出された無線周波信号特徴パターンの概略特徴を求めると共に、制御情報記録保存手段の概略特徴に基づいて、概略特徴と一致した照合信号特徴パターンを判定し、照合手段は、新たな無線周波信号特徴パターンと概略特徴が一致した照合信号特徴パターンのみを照合するようにしたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明の無線周波信号の同定装置は、新たな無線周波信号特徴パターンが抽出された場合、その無線周波信号特徴パターンの概略特徴と一致した照合信号特徴パターンのみと照合するようにしたので、照合の為の演算量の削減や、照合に要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1による無線周波信号の同定装置を示す構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1による無線周波信号の同定装置の概略特徴の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による無線周波信号の同定装置を示す構成図である。
図示の無線周波信号の同定装置は、A/D変換器(A/D)1、無線周波信号特徴抽出手段2、照合制御手段3、制御情報記録保存手段4、照合手段5、記録保存手段6を備えている。
【0010】
A/D変換器1は、受信した無線周波信号SRを入力し、ディジタル信号に変換する。無線周波信号特徴抽出手段2は、ディジタル化された無線周波信号SRを受けて、その振幅変化部分ACを含んだ信号部分SRPの無線周波信号特徴パターンCPを出力する手段であり、信号抜出手段21と瞬時周波数抽出手段22と信号特徴パターン出力手段23とを備えている。
【0011】
信号抜出手段21は、ディジタル化した未知の無線周波信号SRを受けて、その信号抜出期間の信号部分SRPを抜き出す手段である。瞬時周波数抽出手段22は、位相変化抽出手段221と、近似線分あてはめ手段222と、近似線分の勾配抽出手段223とを有する。位相変化抽出手段221は、信号抜出手段21で抜き出された信号部分SRPを受け、その信号抜出期間における時間tに対する位相変化Pθを抽出する。この位相変化抽出手段221は、例えば高速フーリエ変換を用いて、信号部分SRPのすべてのサイクルの位相θを求め、時間tに対する位相変化Pθを抽出する。
【0012】
近似線分あてはめ手段222は、位相変化Pθを受け、この位相変化Pθについて、その近似線分のあてはめを行う。近似線分あてはめ手段222は、移動窓を用いて近似線分のあてはめを行う。近似線分あてはめ手段222は、この移動窓を時間軸方向に順次移動させながら、移動窓に含まれる位相変化Pθの各部分について、その位相変化に近似する近似線分をあてはめる。
【0013】
近似線分の勾配抽出手段223は、近似線分あてはめ手段222により、あてはめられた近似線分のそれぞれについて勾配を抽出する。この近似線分の勾配は、信号部分SRPの瞬時周波数fを示す。
【0014】
信号特徴パターン出力手段23は、瞬時周波数特性抽出手段231を有し、この瞬時周波数特性抽出手段231は、信号部分SRPにおける瞬時周波数特性Pfを抽出する。この瞬時周波数特性Pfは、信号抜出期間に対する瞬時周波数fの変化を示す。そして、信号特徴パターン出力手段23は、瞬時周波数特性Pfを無線周波信号特徴パターンCPとして出力する。
【0015】
照合制御手段3は、無線周波信号特徴抽出手段2が出力する無線周波信号特徴パターンCPを入力し、その概略特徴を求めると共に、求めた概略特徴を制御情報として制御情報記録保存手段4に、その無線機器名、またはその識別番号と共に保存する。新たな無線周波信号SRから無線周波信号特徴抽出手段2が無線周波信号特徴パターンCPを出力したとき、照合制御手段3は、その概略情報を演算し、一致する概略情報を持つ照合信号特徴パターンCPrefを、順次、記録保存手段6から照合手段5に入力する。
【0016】
照合手段5は、L2ノルム計算手段51と同一性判定手段52とを有し、L2ノルム計算手段51は、無線周波信号特徴パターンCPと、照合信号特徴パターンCPrefとの差であるパターン差L2ノルムPDLを計算する。同一性判定手段52は、L2ノルム計算手段51で計算したパターン差L2ノルムPDLの大小から未知の無線周波信号特徴パターンCPと、既知の照合信号特徴パターンCPrefとの同一性を判定する。なお、記録保存手段6と制御情報記録保存手段4とは、物理的に同一の装置を用いて実現してもよい。
【0017】
なお、A/D変換器1、無線周波信号特徴抽出手段2、照合手段5および記録保存手段6は、特許文献1に記載されている公知の構成を用いているが、これら手段は同等の機能を有する他の手段を用いてもよい。
【0018】
照合制御手段3の一例は、ある時間領域における中心周波数に対する複数の相対周波数標本を平均し、それぞれの領域における平均の符号からなる列を概略特徴として求め、制御情報として、制御情報記録保存手段4に、その無線機器名、またはその識別番号と共に保存するものである。即ち、無線周波信号SRは、例えば特許文献1に示されているような無線周波搬送波を変調信号に基づいて変調した信号であり、概略特徴は、予め定めた複数の時間領域における、信号の中心周波数に対する複数の相対周波数標本を平均し、それぞれの領域における平均の符号からなる列を用いるものである。
【0019】
図2は、同一種類の送信機4個体が送信した実信号をそれぞれ受信して得た瞬時周波数特性パターンの一部であり、中心周波数に対する相対周波数の標本を標本の相対番号に対してプロットしている。これらの信号は全て同一の情報ビット列に復号され、相対番号はその同一の時間領域に対応している。網掛けで示した部分領域は、それぞれ8個の相対周波数を含む時間領域を示している。それぞれの時間領域において相対周波数を平均すると、個体1と個体2に対しては、符号列+−+−++−が得られる。同じ処理により個体3と個体4に対しては、符号列++++−−+が得られる。これらの符号列を概略特徴として、その無線機器名、またはその識別番号とともに制御情報記録保存手段4に保存しておく。
【0020】
新たな無線周波信号SRから無線周波信号特徴抽出手段2が無線周波信号特徴パターンCPを出力したとき、照合制御手段3は、その無線周波信号特徴パターンCPの概略特徴として、平均周波数の符号列を求める。次に、求めた符号列に一致する制御情報を制御情報記録保存手段4から求め、その制御情報に一致する無線機器や識別番号の照合信号特徴パターンCPrefを記録保存手段6から取り出して照合手段5に出力する。
これにより、照合手段5では、L2ノルム計算手段51が、概略特徴が一致する照合信号特徴パターンCPrefのみとのパターン差L2ノルムPDLの計算を行い、同一性判定手段52は、パターン差L2ノルムPDLに基づいて同一性の判定を行う。
【0021】
例えば、概略特徴が、符号列+−+−++−の場合、個体1と個体2に対応した照合信号特徴パターンCPrefが照合手段5に出力されるため、照合手段5では、無線周波信号特徴パターンCPと、個体1、2の照合信号特徴パターンCPrefのみと照合を行う。また、概略特徴が符号列++++−−+であった場合は、個体3と個体4に対応した照合信号特徴パターンCPrefが照合手段5に出力され、照合手段5は、この個体3、4の照合信号特徴パターンCPrefのみと照合を行う。
【0022】
この構成により、新たな無線周波信号SRの無線周波信号特徴パターンCPと概略特徴である符号列が一致しない、即ち、パターン差L2ノルムPDLの大きな照合信号特徴パターンCPrefとの同一性判定を実施することが回避されるので、照合の為の演算量を削減し、または照合の為の時間を短縮するといった従来にない顕著な効果を奏するものである。
【0023】
照合制御手段3における概略特徴の別の例は、信号抜出手段21が抜き出す信号の立上がり部分から立下がり部分までの継続時間を、その無線機器名、またはその識別番号と共に制御情報として制御情報記録保存手段4に保存する。即ち、無線周波信号は、無線周波搬送波を変調信号に基づいて変調した信号であり、変調に基づいて、その振幅がほぼ零からピーク値まで上昇する立上がり部分と、その振幅がピーク値からほぼ零まで減少する立下がり部分を含むもので、信号の立上がりから立下がりまでの信号継続時間を概略特徴として用いるようにしたものである。
【0024】
無線周波信号特徴抽出手段2が新たな無線周波信号SRから無線周波信号特徴パターンCPを出力したとき、照合制御手段3は、前記の処理により継続時間を求め、記録保存手段6に記録された既知の照合信号特徴パターンCPrefのうち、継続時間が一致する照合信号特徴パターンCPrefを順次照合手段5に入力する。この構成により、新たな無線周波信号SRの無線周波信号特徴パターンCPと概略特徴であるパルス継続時間が一致しない、即ち、パターン差L2ノルムPDLの大きな、照合信号特徴パターンCPrefとの同一性判定を実施することが回避されるので、照合の為の演算量を削減し、または照合の為の時間を短縮するといった従来にない顕著な効果を奏するものである。
【0025】
さらに、照合制御手段3の別の例は、瞬時周波数特性抽出手段231が抽出する瞬時周波数特性の分布を、その無線機器名、またはその識別番号と共に制御情報記録保存手段4に保存するものである。無線周波信号特徴抽出手段2が新たな無線周波信号SRから無線周波信号特徴パターンCPを出力したとき、照合制御手段3は、前記の処理により瞬時周波数特性の分布を求め、制御情報記録保存手段4に記録された制御情報に基づいて、既知の照合信号特徴パターンCPrefのうち、瞬時周波数特性の分布が一致する照合信号特徴パターンCPrefを順次照合手段5に入力する。この構成により、新たな無線周波信号特徴パターンCPと概略特徴である瞬時周波数特性の分布が一致しない、即ちパターン差L2ノルムPDLの大きな、照合信号特徴パターンCPrefとの同一性判定を実施することが回避されるので、照合の為の演算量を削減し、または照合の為の時間を短縮するといった従来にない顕著な効果を奏するものである。
【0026】
以上のように、実施の形態1の無線周波信号の同定装置によれば、無線周波信号に基づき、その無線周波信号特徴パターンを抽出する無線周波信号特徴抽出手段と、照合信号特徴パターンを記録する記録保存手段と、無線周波信号特徴抽出手段で抽出された無線周波信号特徴パターンと記録保存手段で記録されている照合信号特徴パターンとを照合し、無線周波信号を同定する照合手段とを備えた無線周波信号の同定装置において、無線周波信号特徴パターンからその概略特徴を求める照合制御手段と、概略特徴を保存する制御情報記録保存手段とを備え、無線周波信号特徴抽出手段で新たな無線周波信号特徴パターンが抽出された場合、照合制御手段は、抽出された無線周波信号特徴パターンの概略特徴を求めると共に、制御情報記録保存手段の概略特徴に基づいて、概略特徴と一致した照合信号特徴パターンを判定し、照合手段は、新たな無線周波信号特徴パターンと概略特徴が一致した照合信号特徴パターンのみを照合するようにしたので、照合の為の演算量を削減することができ、照合に要する時間を短縮することができる。
【0027】
また、実施の形態1の無線周波信号の同定装置によれば、無線周波信号は、無線周波搬送波を変調信号に基づいて変調した信号であり、予め定めた複数の時間領域における、信号の中心周波数に対する複数の相対周波数標本を平均し、それぞれの領域における平均の符号からなる列を概略特徴として用いるようにしたので、装置としての構成の複雑化を回避しつつ演算量の削減や照合時間の短縮化を図ることができる。
【0028】
また、実施の形態1の無線周波信号の同定装置によれば、無線周波信号は、無線周波搬送波を変調信号に基づいて変調した信号であり、変調に基づいて、その振幅がほぼ零からピーク値まで上昇する立上がり部分と、その振幅がピーク値からほぼ零まで減少する立下がり部分を含み、信号の立上がりから立下がりまでの信号継続時間を概略特徴として用いるようにしたので、装置としての構成の複雑化を回避しつつ演算量の削減や照合時間の短縮化を図ることができる。
【0029】
また、実施の形態1の無線周波信号の同定装置によれば、無線周波信号は、無線周波搬送波を変調信号に基づいて変調した信号であり、信号の瞬時周波数の分布を概略特徴として用いるようにしたので、装置としての構成の複雑化を回避しつつ演算量の削減や照合時間の短縮化を図ることができる。
【0030】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 A/D変換器、2 無線周波信号特徴抽出手段、3 照合制御手段、4 制御情報記録保存手段、5 照合手段、6 記録保存手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線周波信号に基づき、その無線周波信号特徴パターンを抽出する無線周波信号特徴抽出手段と、照合信号特徴パターンを記録する記録保存手段と、前記無線周波信号特徴抽出手段で抽出された無線周波信号特徴パターンと前記記録保存手段で記録されている照合信号特徴パターンとを照合し、前記無線周波信号を同定する照合手段とを備えた無線周波信号の同定装置において、
前記無線周波信号特徴パターンからその概略特徴を求める照合制御手段と、
前記概略特徴を保存する制御情報記録保存手段とを備え、
前記無線周波信号特徴抽出手段で新たな無線周波信号特徴パターンが抽出された場合、前記照合制御手段は、前記抽出された無線周波信号特徴パターンの概略特徴を求めると共に、前記制御情報記録保存手段の概略特徴に基づいて、当該概略特徴と一致した照合信号特徴パターンを判定し、前記照合手段は、前記新たな無線周波信号特徴パターンと前記概略特徴が一致した照合信号特徴パターンのみを照合することを特徴とする無線周波信号の同定装置。
【請求項2】
無線周波信号は、無線周波搬送波を変調信号に基づいて変調した信号であり、予め定めた複数の時間領域における、前記信号の中心周波数に対する複数の相対周波数標本を平均し、それぞれの領域における平均の符号からなる列を概略特徴として用いることを特徴とする請求項1記載の無線周波信号の同定装置。
【請求項3】
無線周波信号は、無線周波搬送波を変調信号に基づいて変調した信号であり、変調に基づいて、その振幅がほぼ零からピーク値まで上昇する立上がり部分と、その振幅が前記ピーク値からほぼ零まで減少する立下がり部分を含み、前記信号の立上がりから立下がりまでの信号継続時間を概略特徴として用いることを特徴とする請求項1記載の無線周波信号の同定装置。
【請求項4】
無線周波信号は、無線周波搬送波を変調信号に基づいて変調した信号であり、前記信号の瞬時周波数の分布を概略特徴として用いることを特徴とする請求項1記載の無線周波信号の同定装置。

【図1】
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【図2】
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