説明

無線基地局装置、及び無線基地局装置におけるデータ転送方法

【課題】ハンドオーバによるデータの欠落を防止するようにした無線基地局装置、及び無線基地局装置におけるデータ転送方法を提供すること。また、ハンドオーバによるデータの重複送信及び重複受信を防止するようにした無線基地局装置、及び無線基地局装置におけるデータ転送方法を提供すること。
【解決手段】移動端末装置と無線通信を行う無線基地局装置において、前記移動端末装置との間で行われたデータの再送の有無に基づいて、ハンドオーバ先の無線基地局装置に転送する転送対象データを決定する転送対象データ決定部と、前記決定した転送対象データを前記ハンドオーバ先の無線基地局装置に転送するデータ転送処理部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線基地局装置、及び無線基地局装置におけるデータ転送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、携帯電話システムや無線LAN(Local Area Network)などの無線通信システムが広く利用されている。また、無線通信の分野では、通信速度や通信容量を更に向上させるべく、次世代の通信技術について継続的な議論が行われている。例えば、標準化団体の1つである3GPP(3rd Generation Partnership Project)では、LTE(Long Term Evolution)と呼ばれる無線通信システムや、LTEを発展させたLTE−A(Long Term Evolution−Advanced)と呼ばれる無線通信システムが提案されている。
【0003】
このような無線通信システムにおいて、ハンドオーバと呼ばれる技術がある。ハンドオーバは、例えば、移動端末装置(Mobile Station、以下「端末」)が接続する無線基地局装置(Evolved UTRAN NodeB (ENB)、以下「基地局」)を切替えるようにする技術である。これにより端末は、受信電波が一定値より弱くなると他の基地局に接続を切替えることで、継続して無線通信を行うことができる。
【0004】
ハンドオーバにおいては、ハンドオーバ元の基地局から端末にデータが送信されず、ハンドオーバ先の基地局に対してデータが転送(Forwarding)される場合がある。このような転送により、例えば、端末はハンドオーバ先の基地局に接続が切り替わったときでもハンドオーバ先の基地局から継続してデータを受信することができる。
【0005】
このようなハンドオーバにおける基地局間のデータの転送方法に関しては、例えば、2つの方法がある。1つ目は、端末に送信していないデータを転送データ(Forwardingデータ)としてハンドオーバ先の基地局に転送する方法(以下、この方法を「モード1」と称する)である。また、2つ目は、端末からAck信号(又は受信確認通知)を受けていないデータを転送データとしてハンドオーバ先の基地局に転送する方法である(以下、この方法を「モード2」と称する)。
【0006】
図29はモード1、図30はモード2の転送方法における動作例を夫々表わすシーケンス図である。いずれの例においても、端末UEはサービング基地局S−ENBに接続し、ハンドオーバ先としてターゲット基地局T−ENBにハンドオーバする例である。また、いずれの場合においても、サービング基地局S−ENBはゲートウェイGWから3つのSDU(Service Data Unit、SDU−A〜SDU−C)を受信し、このうちSDU−Aのデータを端末UEに送信しているものとする。なお、SDU‐Aにはシーケンス番号SN1〜SN6のPDU(Protocol Data Unit)が含まれ、SDU‐Bにはシーケンス番号SN7〜SN13のPDUが含まれている。いずれの例においても、サービング基地局S−ENBはシーケンス番号SN1〜SN6のPDUを端末UEに送信し、シーケンス番号SN1〜SN3のPDUに対するAck信号を受信しているものとする。
【0007】
このような状況において、モード1はAck信号の有無に拘わらず未送信データを転送データとするため、図29の例ではSDU−Bに属するSN7以降のPDUが転送データとなる。この場合、サービング基地局S−ENBはターゲット基地局T−ENBに対して、シーケンス番号SN7を通知し(S104)、SDU‐BとSDU−Cのデータを転送する(S105)。そして、基地局T−ENBは、端末UEにシーケンス番号SN7以降のPDUを送信する(S106)。
【0008】
一方、モード2はAck信号を受けていないデータを転送データとするため、図30の例では、シーケンス番号SN4以降のPDUが転送データとなる。この場合、サービング基地局S−ENBはターゲット基地局T−ENBに対してシーケンス番号SN4を通知し(S110)、シーケンス番号SN4のPDUを含むSDU−A、SDU−B、及びSDU−Cのデータを転送する(S111)。そして、基地局T−ENBは、シーケンス番号SN4以降のPDUを端末UEに送信する(S106)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009‐267840号公報
【特許文献2】特開2000‐69522号公報
【特許文献3】特開2006‐217219号公報
【特許文献4】特開2007‐96968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、モード1の場合、端末UEが受信できなかったかもしれないデータがサービング基地局S−ENBからターゲット基地局T−ENBに転送されないために、端末UEにおいてデータの欠落が生じる場合がある。
【0011】
例えば、図29の例では、シーケンス番号SN4〜SN6のPDUについてサービング基地局S−ENBはAck信号の受信を確認していない。そのため、端末UEはシーケンス番号SN4〜SN6のPDUを受信できなかった可能性もある。このような状況で、サービング基地局S−ENBはシーケンス番号SN7以降を転送しても、端末UEにおいて受信できなかった可能性のあるシーケンス番号SN4〜SN6のPDUを転送していないため、端末UEはシーケンス番号SN4〜SN6のPDUを受信できない。よって、モード1の場合、端末UEにおいてシーケンス番号SN4〜SN5のPDUが欠落してしまう場合ある。
【0012】
一方、モード2の場合、Ack信号を端末UEが送信したかもしれないデータがサービング基地局S−ENBからターゲット基地局T−ENBに転送される場合もある。そのため、基地局T−ENBは重複してデータを端末UEに送信し、端末UEは重複してデータを受信する場合がある。
【0013】
例えば、図30の例では、サービング基地局S−ENBはシーケンス番号SN4〜SN6のPDUについてはAck信号を受信していないため、シーケンス番号SN4以降のPDUをターゲット基地局T−ENBに転送している。このような場合、例えば、端末UEはシーケンス番号SN4〜SN6について正しく受信してAck信号を送信していたかもしれない。サービング基地局S−ENBは、Ack信号の受信を確認する前にハンドオーバの決定を行い、データを転送する場合もある。このような状況で、サービング基地局S−ENBがターゲット基地局T−ENBにシーケンス番号SN4以降のPDUを転送しても、端末UEにおいて受信したかもしれないシーケンス番号SN4〜SN6のPDUも転送している。そのため、基地局T−ENBは、端末UEにシーケンス番号SN4〜SN6のPDUを重複して送信し、端末UEもシーケンス番号SN4〜SN6のPDUを重複して受信することになる。端末UEはデータを重複して受信した場合、当該データを破棄する処理を行うなど無駄な処理を行うことになる。
【0014】
そこで、本発明の一目的は、ハンドオーバによるデータの欠落を防止するようにした無線基地局装置、及び無線基地局装置におけるデータ転送方法を提供することにある。
【0015】
また、本発明の一目的は、ハンドオーバによるデータの重複送信及び重複受信を防止するようにした無線基地局装置、及び無線基地局装置におけるデータ転送方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
一態様によれば、移動端末装置と無線通信を行う無線基地局装置において、前記移動端末装置との間で行われたデータの再送の有無に基づいて、ハンドオーバ先の無線基地局装置に転送する転送対象データを決定する転送対象データ決定部と、前記決定した転送対象データを前記ハンドオーバ先の無線基地局装置に転送するデータ転送処理部とを備える。
【発明の効果】
【0017】
ハンドオーバによるデータの欠落を防止するようにした無線基地局装置、及び無線基地局装置におけるデータ転送方法を提供することができる。また、ハンドオーバによるデータの重複送信及び重複受信を防止するようにした無線基地局装置、及び無線基地局装置におけるデータ転送方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は無線通信システムの構成例を表わす図である。
【図2】図2は無線通信システムの構成例を表わす図である。
【図3】図3は無線基地局装置の構成例を表わす図である。
【図4】図4は移動端末装置の構成例を表わす図である。
【図5】図5は無線通信システムにおける動作例を表わすシーケンス図である。
【図6】図6は再送情報テーブルの例を表わす図である。
【図7】図7は無線通信システムにおける動作例を表わすシーケンス図である。
【図8】図8は無線通信システムにおける動作例を表わすシーケンス図である。
【図9】図9(A)と図9(B)は転送対象データ決定処理の動作例を表わすフローチャートである。
【図10】図10は無線通信システムにおける動作例を表わすシーケンス図である。
【図11】図11は無線通信システムにおける動作例を表わすシーケンス図である。
【図12】図12は無線通信システムにおける動作例を表わすシーケンス図である。
【図13】図13(A)は統計情報テーブルの例、図13(B)は無線品質の判定例を夫々表わす図である。
【図14】図14はセルの構成例を表わす図である。
【図15】図15は無線通信システムにおける動作例を表わすシーケンス図である。
【図16】図16は無線通信システムにおける動作例を表わすシーケンス図である。
【図17】図17(A)は電波状況テーブルの例、図17(B)は無線品質の判定例を夫々表わす図である。
【図18】図18はセルの構成例を表わす図である。
【図19】図19は無線通信システムにおける動作例を表わすシーケンス図である。
【図20】図20は無線通信システムにおける動作例を表わすシーケンス図である。
【図21】図21は転送対象データ決定処理の動作例を表わすフローチャートである。
【図22】図22は転送対象データの例を表わす図である。
【図23】図23は無線通信システムにおける動作例を表わすシーケンス図である。
【図24】図24は転送対象データの例を表わす図である。
【図25】図25は無線通信システムにおける動作例を表わすシーケンス図である。
【図26】図26は無線通信システムにおける動作例を表わすシーケンス図である。
【図27】図27は無線通信システムにおける動作例を表わすシーケンス図である。
【図28】図28は無線通信システムの構成例を表わす図である。
【図29】図29は無線通信システムにおける動作例を表わすシーケンス図である。
【図30】図30は無線通信システムにおける動作例を表わすシーケンス図である。
【図31】図31は無線通信システムにおける動作例を表わすシーケンス図である。
【図32】図32は転送対象のSDUの例を表わす図である。
【図33】図33は無線通信システムにおける動作例を表わすシーケンス図である。
【図34】図34は再送情報テーブルの例を表わす図である。
【図35】図35は送信可否決定処理の動作例を表わすフローチャートである。
【図36】図36(A)及び図36(B)は無線通信システムにおける動作例をそれぞれ表わすシーケンス図である。
【図37】図37は転送対象データ決定処理の動作例を表わすフローチャートである。
【図38】図38は無線通信システムにおける動作例を表わすシーケンス図である。
【図39】図39は転送対象データ決定処理の動作例を表わすフローチャートである。
【図40】図40は無線通信システムにおける動作例を表わすシーケンス図である。
【図41】図41は無線通信システムにおける動作例を表わすシーケンス図である。
【図42】図42は転送対象データ決定処理の動作例を表わすフローチャートである。
【図43】図43は転送対象データの例を表わす図である。
【図44】図44は無線通信システムにおける動作例を表わすシーケンス図である。
【図45】図45は無線通信システムにおける動作例を表わすシーケンス図である。
【図46】図46は無線通信システムにおける動作例を表わすシーケンス図である。
【図47】図47は無線通信システムにおける動作例を表わすシーケンス図である。
【図48】図48は無線通信システムにおける動作例を表わすシーケンス図である。
【図49】図49は無線通信システムにおける動作例を表わすシーケンス図である。
【図50】図50は無線通信システムにおける動作例を表わすシーケンス図である。
【図51】図51は無線通信システムにおける動作例を表わすシーケンス図である。
【図52】図52は無線通信システムにおける動作例を表わすシーケンス図である。
【図53】図53は無線通信システムにおける動作例を表わすシーケンス図である。
【図54】図54は無線通信システムにおける動作例を表わすシーケンス図である。
【図55】図55は無線通信システムにおける動作例を表わすシーケンス図である。
【図56】図56は転送対象データの例を表わす図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0020】
[第1の実施の形態]
最初に第1の実施の形態について説明する。図1は第1の実施の形態における無線通信システム10の構成例を表わす図である。無線通信システム10は、無線基地局装置200a,200bと移動端末装置100とを備える。
【0021】
移動端末装置100は、無線基地局装置200a,200bと無線通信可能であり、ハンドオーバ元の無線基地局装置200aからハンドオーバ先の無線基地局装置200bに無線接続を切替えることができる。
【0022】
無線基地局装置200aは、転送対象データ決定部270とデータ転送処理部280とを備える。
【0023】
転送対象データ決定部270は、移動端末装置100との間で行われたデータの再送の有無に基づいて、ハンドオーバ先の無線基地局装置200bに転送する転送対処データを決定することができる。また、転送対象データ決定部270は、移動端末装置100との間の無線品質に基づいて、ハンドオーバ先の無線基地局装置200bに転送する転送対象データを決定することもできる。さらに、転送対象データ決定部270は、移動端末装置100との間で行われたデータの再送の有無と移動端末装置100との間の無線品質とに基づいて、ハンドオーバ先の無線基地局装置200bに転送する転送対象データを決定することもできる。
【0024】
データ転送処理部280は、決定した転送対象データをハンドオーバ先の無線基地局装置200bに転送することができる。
【0025】
このように、無線基地局装置200aは、移動端末装置100との間で行われたデータの再送の有無に基づいて、ハンドオーバ先の無線基地局装置200bに転送する転送対象データを決定している。従って、例えば、データの再送が行われたとき再送対象のデータが転送対象データとなるため、移動端末装置100はハンドオーバ先の無線基地局装置200bから再送対象データも受信でき、データの欠落を防止することができる。また、例えば、データの再送が行われなかったとき、無線基地局装置200aから移動端末装置100に送信されていないデータが転送対象データとなり、無線基地局装置200bによるデータの重複送信や移動端末装置100によるデータの重複受信を防止することができる。
【0026】
また、無線基地局装置200aは、移動端末装置100との間の無線品質に基づいて、ハンドオーバ先の無線基地局装置200bに転送する転送対象データを決定している。従って、例えば、無線品質が良好でなければ無線基地局装置200aから送信しているデータも転送対象データとなるため、移動端末装置100はハンドオーバ先の無線基地局装置200bから当該データを受信することでデータの欠落を防止できる。また、例えば、無線品質が良好であれば無線基地局装置200aから移動端末装置100に送信されていないデータが転送対象データとなり、無線基地局装置200bによるデータの重複送信や移動端末装置100によるデータの重複受信を防止することができる。
【0027】
さらに、無線基地局装置200aは、移動端末装置100との間で行われたデータの再送の有無と移動端末装置100との間の無線品質に基づいて、ハンドオーバ先の無線基地局装置200bに転送する転送対象データを決定している。従って、例えば、データの再送が行われず無線品質が良好であれば、無線基地局装置200aから移動端末装置100に送信されていないデータが転送対象データとなる。よって、無線基地局装置200bによるデータの重複送信や移動端末装置100によるデータの重複受信を防止できる。また、例えば、データの再送が行われなくても無線品質が良好でなかったり、データの再送が行われたとき、無線基地局装置200aから送信しているデータも転送対象データとなる。よって、移動端末装置100はハンドオーバ先の無線基地局装置200bから当該データを受信することでデータの欠落を防止できる。
【0028】
[第2の実施の形態]
<全体構成例>
次に第2の実施の形態について説明する。図2は無線通信システム10の構成例を表わす図である。無線通信システム10は、移動端末装置(Mobile Station、以下「端末」)100と、無線基地局装置(Evolved UTRAN NodeB (ENB)、以下「基地局」)200a,200b、及びサービングゲートウェイ(Serving Gateway、以下「ゲートウェイ」)300とを備える。
【0029】
基地局200a,200bは端末100と無線通信を行う無線通信装置である。基地局200a,200bは有線によりゲートウェイ300と接続され、ゲートウェイ300と端末100との間でデータ信号(以下、データ)を送受信することができる。また、基地局200a,200bも互いにデータを転送(Forwarding)することができる。なお、図1の例では、2つの基地局200a,200bの例を表わしているが、3つ以上あってもよい。
【0030】
端末100は、基地局200a,200bと無線接続して無線通信を行う無線通信装置であり、例えば携帯電話機や情報携帯端末装置などである。端末100は、無線通信により、基地局200a,200bから送信されたデータを受信することができる。また、端末100は、無線通信により、基地局200a,200bへデータを送信することもできる。本明細書において、基地局200a,200bから端末100の方向を下りリンク(DL:Down Link)、端末100から基地局200a,200bの方向を上りリンク(UL:Uplink)と呼ぶことにする。なお、図1の例では、端末100は1つだけ表わしているが基地局200aと無線接続する端末100は複数あってもよいし、基地局200bと無線接続する端末100が1または複数あってもよい。
【0031】
なお、図1の例において、2つの基地局200a,200bは双方とも同一構成であり、とくに断らない限り基地局200として説明する。図1の例では、端末100は基地局200aのセル範囲において基地局200aと無線通信を行い、ハンドオーバにより、近隣基地局でもある基地局200bのセル範囲へ移動している様子を表わしている。
【0032】
<基地局200と端末100の各構成例>
次に基地局200と端末100の各構成例について説明する。図3は本第2の実施の形態における基地局200、図4は端末100の構成例を夫々表わす図である。
【0033】
基地局200は、無線送受信部210と、RLCプロトコル制御部220と、メモリ部230と、呼制御部240と、対向E−NodeB IF部(以下、「対向ENB IF部」)250と、GW IF部260とを備える。
【0034】
無線送受信部210は、端末100へ無線信号を送信したり、端末100から送信された無線信号を受信する。無線送受信部210は、例えば、メモリ部230に記憶されたデータを読み出し、当該データに対して誤り訂正符号化処理や変調処理、周波数変換処理などを行い無線信号に変換して端末100に送信することができる。また、無線送受信部210は、例えば、端末100から無線信号を受信すると、当該無線信号に対して周波数変換処理や復調処理、誤り訂正復号化処理などを行うことでデータを抽出し、RLCプロトコル制御部220に出力することができる。さらに、無線送受信部210は、端末100から受信した無線信号がAck信号(受信通知)のとき、当該Ack信号をRLCプロトコル制御部220に出力することもできる。なお、Ack信号は、例えば、送信側から送信されたデータなどが受信側で正しく受信できた場合の応答信号であって、肯定応答または確認応答などと呼ばれることもある。例えば、Ack信号は、データに対する応答信号だけでなく、基地局200が端末100に送信した制御信号に対する応答信号であってもよい。
【0035】
また、無線送受信部210は、無線電波状況通知部211を備える。無線電波状況通知部211は、例えば、基地局200が端末100から送信された「Measurement Reports」を表わす信号(又はメッセージ)を受信したとき、当該信号に含まれる、端末100と基地局200との間の無線品質を抽出する。そして、無線電波情報通知部211は、抽出した無線品質をハンドオーバ決定部241に通知する。また、無線電波状況通知部211は、抽出した無線品質をメモリ部230に記憶された電波状況テーブル233に保持することもできる。或いは、無線電波状況通知部211は、端末100から受信したAck信号などの無線信号に基づいて、近隣セル(または近隣エリア)ごとの無線品質を測定し、メモリ部230内の電波状況テーブル233に保持することもできる。例えば、無線電波状況通知部211は、受信した無線信号の電力量や、当該電力量に対するノイズなどの無線品質を電波状況テーブル233に保持することができる。図15(A)は電波状況テーブル233の例を表わしているがその詳細は後述する。
【0036】
RLCプロトコル制御部220は、無線送受信部210から出力されたデータをメモリ部230に記憶し、無線送受信部210から出力されたAck信号に基づいて、データの再送の有無を判別し、再送する場合は再送制御を行う。例えば、RLCプロトコル制御部220は、無線送受信部210から端末100にデータを送信後、第1の閾値時間内に無線送受信部210からAck信号を入力したとき、データの再送を行わないことを決定する。一方、RLCプロトコル制御部220は、データを送信後、第1の閾値時間内にAck信号を受信できなかったとき、データの再送を行うことを決定する。RLCプロトコル制御部220は、データの再送を決定すると、メモリ部230から再送データを読み出して無線送受信部210に出力し、これによりデータが端末100に送信(または再送)される。
【0037】
また、RLCプロトコル制御部220は、第1のデータ通信状況収集部221を備える。第1のデータ通信状況収集部221は、呼ごとに再送が発生した状況をメモリ部230内の再送情報テーブル231に保持する。図5は再送が発生している様子の例、図6は再送情報テーブル231の例をそれぞれ表わす図である。
【0038】
図5の例では、サービング基地局(S−ENB)200aは、ゲートウェイ(GW)300からSDU−A〜SDU−Cのデータを受信し(S10)、サービング基地局200aは、SDU−A〜SDU−Cの各データをPDU単位で端末100に送信している。SDUは、例えば、ゲートウェイ300から基地局200aに送信したり、基地局200a,200b間で送信されるデータの単位である。SDUには1又は複数のPDUが含まれ、例えば、基地局200aはPDU単位でデータを端末100に送信することができる。本明細書では、1つのSDUは6つのPDUを含み、SDU−Aはシーケンス番号SN1〜SN6までのPDUを含み、SDU−Bはシーケンス番号SN7〜SN13、SDU−Cはシーケンス番号SN14〜SN20までのPDUを夫々含むものとする。例えば、各SDUは1又は複数のPDUを含むため、SDUをデータ群とすることもできる。なお、以下においては、ハンドオーバ元の基地局であって端末100が接続している基地局をサービング基地局、ハンドオーバ先の基地局をターゲット基地局と適宜呼ぶことにする。端末100がハンドオーバにより基地局の接続を切替えたとき、ターゲット基地局はサービング基地局となる。
【0039】
図5の例では、基地局200aはシーケンス番号SN1〜SN6までのPDUを端末100に送信し(S200,S220)、シーケンス番号SN1〜SN3までのPDUに対するAck信号を受信している(S210)。ここで、基地局200aはシーケンス番号SN4〜SN6までのAck信号を第1の閾値期間内で受信できないことを検出できなかったため(S230)、シーケンス番号SN4〜SN6までのPDUを再送している(S240)。Ack信号の未検出やPDUの再送制御は、RLCプロトコル制御部220で行われる。
【0040】
図6は、このような状況において第1のデータ通信状況収集部221が作成した再送情報テーブル231の例を示す図である。再送情報テーブル231には、呼ごと(又は端末100ごと)に再送が発生したか否かを示すフラグが記憶される。図6の例では、端末100の識別IDと再送の有無を表わすフラグとが記憶されるようになっており、UEID#1の端末について、再送が行われなかったことを表わすフラグ(例えば「0」)が記憶され、UEID#2の端末について、再送が行われたことを表わすフラグ(例えば「1」)が記憶されている。なお、再送情報テーブル231には、監視期間内における再送の有無が記憶されるようにしてもよい。この場合、例えば、第1のデータ通信状況収集部221はメモリ部230に呼ごとに再送の有無を記憶し、ハンドオーバ決定から遡って監視期間期間分の再送の有無を読み出し、再送情報テーブル231に記憶することができる。
【0041】
図3に戻り、メモリ部230は、RLCプロトコル制御部220を介して無線送受信部210で受信したデータや、GW IF部260や対向ENB IF部250を介して近隣基地局やゲートウェイ300から夫々転送されたデータなどを記憶する。記憶したデータは適宜読み出され、無線送受信部210から端末100に送信されたり、データ転送処理部244からハンドオーバ先のターゲット基地局200bに転送される。メモリ部230は、上述したように、再送情報テーブル231(例えば図6)と、統計情報テーブル232(例えば図13A)、及び電波状況テーブル233(例えば図17(A))とを記憶する。統計情報テーブル232と電波状況テーブル233の詳細は後述する。
【0042】
呼制御部240は、端末100とゲートウェイ300、及び近隣基地局200との間において、データの送信や受信、転送などの制御を行う。また、呼制御部240は、例えば、メモリ部230からデータを読み出して(または回収して)、対向ENB IF部250を介して近隣基地局200bにデータを転送することができる。呼制御部240は、ハンドオーバ決定部241、第2のデータ通信状況収集部242、転送対象データ決定部243、及びデータ転送処理部244を備える。
【0043】
なお、第1の実施の形態における転送対象データ決定部270は、例えば、無線電波状況通知部211と、第1のデータ通信状況収集部221と、第2のデータ通信状況収集部242に対応する。また、第1の実施の形態におけるデータ転送処理部280は、例えば、データ転送処理部244と対向ENB IF部250に対応する。
【0044】
ハンドオーバ決定部241は、無線電波状況通知部211から通知された無線品質に基づいて、ハンドオーバの要否やハンドオーバ先などを決定する。ハンドオーバ決定部241は、例えば、無線品質として端末100が測定した受信電力値が第2の閾値以下のとき、ハンドオーバを行うことを決定する。また、ハンドオーバ決定部241は、端末100が測定した他の基地局200における受信電力値のうち最も高い受信電力値の基地局200をハンドオーバ先の基地局200bとして決定する。ハンドオーバ決定部241は、ハンドオーバ先の基地局200bの識別情報などを転送対象データ決定部243に出力する。
【0045】
第2のデータ通信状況収集部242は、近隣基地局200が有するセル(以下、「近隣セル」)ごとにデータ通信状況を収集し、収集したデータ通信状況を統計情報としてメモリ部230内の統計情報テーブル232に保持する。図7は統計情報テーブル232が作成される様子の例を示す図である。図5の例と同様に、基地局200は、シーケンス番号SN4〜SN6までのPDUについては再送している(S200〜S240)。その後、基地局200は「Measurement Reports」を受信してハンドオーバを行うことを決定し(S250,S260)、作成した再送情報テーブル231から、近隣セル毎にデータ通信状況を統計情報テーブル232に記憶するようにしている。図13(A)は統計情報テーブル232の例を表わしており、詳細は後述する。例えば、第2のデータ通信状況収集部242は、ハンドオーバ決定前に再送が行われた場合には、当該ハンドオーバ先の「セル」の項目に対して「再送あり」の項目をカウントアップする。一方、第2のデータ通信状況収集部242は、ハンドオーバ決定前に再送が行われない場合には、当該「セル」の項目に対して「再送なし」の項目をカウントアップするようにしている。
【0046】
図3に戻り、転送対象データ決定部243は、再送情報テーブル231、統計情報テーブル232、又は電波状況テーブル233のいずれか一つ、又はこれらのテーブル231〜233の組み合わせにより、ハンドオーバ先の基地局200bに転送する転送対象データを決定する。転送対象データ決定部243がどのようなデータを転送データとして決定するかについては後述する。転送対象データ決定部243は、決定した転送対象データに関する情報、例えばSDUの識別番号などデータ転送処理部244に出力する。
【0047】
データ転送処理部244は、転送対象データ決定部243で決定した転送対象データに関する情報に基づいて、対応する転送データをメモリ部230から読み出し、対向ENB IF部250に出力する。
【0048】
対向ENB IF部250は、近隣基地局200bとの間でデータなどの送受信を行う場合のインタフェースである。対向ENB IF部250は、例えば、データ転送処理部244から出力される転送データに対して、近隣基地局200bに転送可能な形式の信号(例えば、X2フォーマットの信号)に変換して送信することができる。また、対向ENB IF部250は、近隣基地局200bから送信された当該形式の信号を受信してデータなどを抽出して呼制御部240に出力することもできる。
【0049】
GW IF部260は、ゲートウェイ300との間でデータなどの送受信を行う場合のインタフェースである。GW IF部260は、例えば、メモリ部230に記憶されたデータをゲートウェイ300に転送可能な形式の信号(例えば、S1フォーマットの信号)に変換して送信することができる。また、GW IF部260は、ゲートウェイ300から送信された当該形式の信号を受信してデータを抽出してメモリ部230に記憶させることもできる。
【0050】
次に端末100の構成例を説明する。端末100は、例えば図4に示すように、無線送受信部110、呼制御部120、RLCプロトコル制御部130、及びメモリ140とを備える。
【0051】
無線送受信部110は、基地局200から送信された無線信号を受信することができ、また、基地局200に無線信号を送信することもできる。無線送受信部110は、例えば、基地局200から送信された無線信号を受信し、受信した無線信号に対して周波数変換処理や復調処理、誤り訂正復号処理などを行い、無線信号からデータや制御信号などを抽出する。また、無線送受信部110は、呼制御部120から出力されたデータなどに対して誤り訂正符号化処理や変調処理、周波数変換処理などを行い無線信号に変換する。
【0052】
呼制御部120は、基地局200にどのようなデータを送信するかの決定などを行う。呼制御部120は、例えば、無線送受信部110から出力されたデータをメモリ部140に記憶させることができ、また、基地局200に送信するデータをメモリ部140から読み出して無線送受信部110に出力することができる。
【0053】
RLCプロトコル制御部130は、例えば、データに付加されたCRC(Cyclic Redundancy Check)などの誤り検出符号に基づいて、無線送受信部110で受信したデータまたは制御信号について正しく復号できたか否かを判別する。例えば、RLCプロトコル制御部130は、正しく復号されていると判別したとき、Ack信号を生成して基地局200に送信するよう無線送受信部110に指示する。これにより、端末100は基地局200にAck信号を送信することができる。なお、RLCプロトコル制御部130は正しく復号できなかったと判別したときはとくに何もしない。この場合にNack信号を送信することもできるが、例えば無線リソースを有効活用する観点から本基地局200はNack信号を送信しないものとする。なお、Nack信号は、送信側から送信されたデータを受信側で正しく受信できなかった場合に送信する応答信号のことであり、例えば否定応答などと呼ばれることもある。
【0054】
メモリ部140は、呼制御部120から出力されたデータを記憶したり、RLCプロトコル制御部130から出力されたAck信号の送信の有無についても記憶することができる。メモリ部140に記憶されたデータは、呼制御部120などから適宜読み出されることができる。
【0055】
<動作例>
次に動作例について説明する。本動作例は、例えば図2に示すように、ハンドオーバ元の基地局であるサービング基地局200aが端末100のハンドオーバを決定し、ハンドオーバ先の基地局であるターゲット基地局200bにデータを転送して端末100にデータを送信するまでの例である。サービング基地局200aがハンドオーバすることを決定し、かつ、端末100に送信すべきデータをまだ送信していない状況で、端末100が接続先を基地局200bに切替える場合の例である。動作例については、以下の4つのパターンがある。すなわち、
1)呼ごとに保持した再送状態に基づいて転送対象データを決定する場合と、
2)近隣セルごとに保持した再送発生率などのデータ通信状況に基づいて転送対象データを決定する場合と、
3)ハンドオーバ元の基地局200aと端末100との間の無線電波状況に基づいて転送対象データを決定する場合と、
4)上記1)から3)の組み合わせ
がある。上記1)については、サービング基地局200aは再送情報テーブル231を用いて転送対象データを決定し、上記2)については統計情報テーブル232を用いて転送対象データを決定し、上記3)については電波状況テーブル233を用いて決定する。また、上記4)についてサービング基地局200aは、再送情報テーブル231、統計情報テーブル232、及び電波状況テーブル233の組み合わせにより転送対象データを決定する。以下において、4つの動作例(第1〜第4の動作例)について個別に説明する。
【0056】
<第1の動作例>
第1の動作例として、サービング基地局200aが呼ごとに保持した再送状態に基づいて転送対象データを決定する場合の動作例について説明する。図8と図9(A)、及び図10は第1の動作例におけるシーケンス図やフローチャートの例を夫々表わしている。このうち図8は第1の動作例のシーケンス図を表わしている。図8を例にして第1の動作例を説明する。
【0057】
最初に、サービング基地局(eNode−B)200aは、ゲートウェイ300からSDU−A〜SDU−Cまでのデータを受信する(S10)。このとき、サービング基地局200aは、GW IF部260を介してメモリ部230にSDU−A〜SDU−Cのデータを記憶する。なお、サービング基地局200aのRLCプロトコル制御部220は、例えば、端末100に送信したPDUについてAck信号を受信すると、Ack信号に対応するPDUをメモリ部230から削除することができる。
【0058】
SDU−A〜SDU−Cまでのデータを受信したサービング基地局200aは、SDU−Aのデータを端末(UE:User Equipment)100に送信し、SDU−B,SDU−Cのデータは処理待ちの状態とする。すなわち、サービング基地局200aは、SDU−Aに属するシーケンス番号SN1〜SN6までのPDUを端末100に送信し(S11,S13,S15,S16)、端末100からシーケンス番号SN1〜SN3までのAck信号を受信する(S12,S14)。また、サービング基地局200aは、シーケンス番号SN4〜SN6までのAck信号については端末100から受信していないものとする。
【0059】
このような状態において、サービング基地局200aは、ハンドオーバ決定直前の監視期間において、呼ごとの再送状態を再送情報テーブル231(例えば図6)に保持する(S18)。上述したように、例えば、第1のデータ通信状況収集部221は、端末100毎に再送が行われたか否かを表わす情報を再送情報テーブル231に記憶する。再送が行われたか否かは、RLCプロトコル制御部220による再送制御が行われたときに、再送制御が行われた呼(または端末100)に対して、第1のデータ通信状況収集部221により「再送あり」のフラグを再送情報テーブル241に記憶することで行われる。
【0060】
次いで、サービング基地局200aは、ハンドオーバを行うことを決定する(S19)。例えば、ハンドオーバ決定部241は、「Mesurement Reports」メッセージに含まれる無線品質に基づいてハンドオーバを行うことを決定する。
【0061】
次いで、サービング基地局200aはデータ転送の回収を行う(S20)。例えば、呼制御部240は、RLCプロトコル制御部220からメモリ部230を介して、メモリ部230からデータを読み出すことで本処理を行う。ただし、本S20の処理は、S21の処理により転送対象データを決定した後に行われてもよい。
【0062】
次いで、サービング基地局200aは、呼ごとに保持した再送状態に基づいて転送対象データを決定する(S21)。決定は、例えば、転送対象データ決定部243において再送情報テーブル231に基づいて行われる。図9(A)は本動作例における転送対象データ決定処理の動作例を表わすフローチャートである。サービング基地局200aがS21の処理に移行したときに行われる処理である。
【0063】
転送対象データ決定部243は、転送対象データ決定処理を開始すると(S210)、再送状態を判別する(S211)。例えば、転送対象データ決定部243は、再送情報テーブル231において、対象となる端末100について再送情報のフラグがオンになっているとき、端末100に対して再送が行われたものとして、「再送あり」と判別する。一方、転送対象データ決定部243は、再送情報テーブル231に対象となる端末100の再送情報のフラグがオンになっていないとき、「再送なし」と判別する。
【0064】
図10(A)は「再送あり」のシーケンス例、図10(B)は「再送なし」のシーケンス例を夫々表わす図である。図10(A)の例では、サービング基地局200aは、第1の閾値期間内において、シーケンス番号SN1〜SN3のPDUに対するAck信号の受信を確認できなかったため、シーケンス番号SN1〜SN3のPDUについて再送を行っている(S30〜S32)。この場合、再送情報テーブル231には再送情報のフラグ「1」が記憶され、転送対象データ決定部243は「再送あり」と判別する。
【0065】
一方、図10(B)では、サービング基地局200aは、シーケンス番号SN4〜SN6についてはAck信号の受信は確認されていないものの再送自体は行われていない。図8のS11〜S16についても同じ状況である。この場合、再送情報テーブル231には再送情報のフラグが「0」となり、転送対象データ決定部243は「再送なし」と判別する。
【0066】
図9(A)に戻り、サービング基地局200aは、再送状態として「再送なし」と判別したとき(S211で「再送なし」)、転送対象データを処理中のデータの次に送信する予定の「処理待ちのSDU」とする(S212)。「再送なし」の場合、例えば、SDU内のすべてのPDUについて再送が行われなかったことを表わしており、ターゲット基地局200bへは、端末200への送信処理が行われていない「処理待ち」のSDUを転送すればよい。図10(B)の例では、シーケンス番号SN1〜SN6すべてについて再送が行われていないため、転送対象データ決定部243は、処理待ちの「SDU−B」と「SDU−C」を転送対象データとしている。再送が行われていない場合、基地局200aが端末100に送信したデータは正しく端末100において受信できたものとして、サービング基地局200aは端末100に送信すべきメモリ部230に記憶されたデータを転送対象データとして決定する。
【0067】
一方、サービング基地局200aは、再送状態として「再送あり」と判別したとき(S211で「再送あり」)、転送対象データを処理中のSDUと処理待ちのSDUとする(S213)。例えば、図10(A)の例では、転送対象データ決定部243は、処理中のSDUである「SDU−A」と処理待ちのSDUである「SDU−B」と「SDU−C」とを転送対象データとしている。再送が行われた場合、再送後のSDU内に含まれるすべてのPDUについて端末100が受信したとは限らない。このような場合、サービング基地局200aは送信処理中または再送処理中のSDUも転送対象データとしている。
【0068】
図8に戻り、サービング基地局200aは転送対象データを決定すると(S21)、転送対象データをハンドオーバ先のターゲット基地局(eNodeB−b)200bに送信する(S22)。例えば、転送対象データ決定部243は決定した転送対象データの情報(例えばSDU−AやSDU−Bなど、SDUを識別する情報)をデータ転送処理部244に通知し、データ転送処理部244はメモリ部230から転送対象データを読み出す。上述したデータ転送回収(S20)は、例えば、S21の処理において行われてもよい。サービング基地局200aは、図10(A)の例(「再送あり」)では、「SDU−A」、「SDU−B」、及び「SDU−C」のデータをメモリ部230から読み出してターゲット基地局200bに送信する。また、サービング基地局200aは、図10(B)または図8の例(「再送なし」)では、「SDU−B」と「SDU―C」のデータをメモリ部230から読み出してターゲット基地局200bに送信する。
【0069】
次いで、端末100は接続先を基地局200bに切替えて、ターゲット基地局からサービング基地局となった基地局200bは転送データを端末100に送信する(S23)。例えば、基地局200bはハンドオーバ元の基地局200aから転送対象データを受信すると、対向ENB IF部250と呼制御部240を介してメモリ部230に転送対象データを記憶する。そして、無線送受信部210はメモリ部230から転送対象データを読み出して端末100に無線送信する。図10(A)及び図10(B)などの例の場合、基地局200bは、例えば、「再送あり」としてSDU−A〜SDU−Cのデータが転送されたときは、SDU−Aのシーケンス番号SN1から順次、端末100に無線送信する。一方、基地局200bは、例えば、「再送なし」としてSDU−BとSDU−Cのデータが転送されたとき、SDU−Bのシーケンス番号SN7から順次、端末100に無線送信する。
【0070】
このように第1の動作例においては、再送が行われたとき、例えばSDU−Aに属するシーケンス番号SN1以降のデータがターゲット基地局200bに転送されるため、端末100はハンドオーバ後、基地局200bからシーケンス番号SN1以降のデータを受信できる。従って、再送が行われた場合、再送対象のデータも転送されて、端末100はハンドオーバ先の基地局200bから再送対象のデータを受信できるため、ハンドオーバを行ってもデータの欠落が生じない。また、再送が行われなかった場合、処理待ちのシーケンス番号SN7以降のデータが転送され端末100に送信されるため、例えばシーケンス番号SN4〜SN6が再度ハンドオーバ先の基地局200bから送信されることがない。よって、基地局200bからシーケンス番号SN4〜SN6のPDUが重複して送信されることもないし、端末100は基地局200bから当該PDUを重複して受信することがない。
【0071】
なお、第1の動作例において、サービング基地局200aは、転送対象データを決定してデータを転送するとき(S22)、PDUのシーケンス番号を通知するようにしてもよい。図11は、シーケンス番号を通知する場合のシーケンス例を表わす図である。通知されるPDUのシーケンス番号(S24)は、例えば、ハンドオーバ先の基地局200bが送信を開始するPDUのシーケンス番号を表わしている。
【0072】
この場合、第1のデータ通信状況収集部221は、再送情報テーブル231に再送の有無と、Ack信号対象のPDUのシーケンス番号とを記憶する。そして、転送対象データ決定部243は、再送情報テーブル231から再送の有無とともに、ハンドオーバ決定前において最後に受信したAck信号対象のPDUのシーケンス番号を読み出し、このシーケンス番号の次のシーケンス番号を通知対象のシーケンス番号とする。
【0073】
例えば、図10(A)の例(「再送あり」の例)では、ハンドオーバ決定前で最後にAck信号を受信したPDUのシーケンス番号がSN0であるため、その次のシーケンス番号SN1を通知対象のシーケンス番号とする。
【0074】
他方、「再送なし」の場合、転送対象データは処理待ちのSDUのため、処理待ちのSDUの中で最も早く端末100に送信すべきSDUを対象とし、当該対象となるSDUに属する最初のシーケンス番号を通知対象のシーケンス番号とすればよい。例えば、図10(B)の例では、SDU−Bが転送対象データのうち最も早く端末100に送信するSDUであるため、SDU−Bに属する先頭のPDUのシーケンス番号SN7を通知対象のシーケンス番号とすればよい。各SDUに属するPDUの各シーケンスは予め決められており、例えばメモリ部230などに保持されているため、転送対象データ決定部243はこれを用いてシーケンス番号を決定することができる。
【0075】
このように、サービング基地局200aは、シーケンス番号をターゲット基地局200bに通知することで、ハンドオーバ先の基地局200bはシーケンス番号のPDUを順に端末100に送信することができる。そのため、基地局200bや端末100は、シーケンス番号の確認などにより、重複送信及び重複受信、データの欠落をさらに防止することができる。
【0076】
<第2の動作例>
次に、第2の動作例として、近隣セルごとの再送発生率などのデータ通信状況に基づいて転送対象データを決定する場合の動作例について説明する。第2の動作例では、統計情報テーブル232が用いられる。図9(B)、図12から図14は本動作例におけるシーケンス例などの例を表わした図である。このうち、図12は第2の動作例のシーケンス例を表わしており、図12を用いて第2の動作例を説明する。
【0077】
図12に表わされるように、データの送信状況については上述した第1の動作例と同様である。すなわち、サービング基地局200aは、シーケンス番号SN1〜SN6のPDUを端末100に送信し、このうちシーケンス番号SN1〜SN3のPDUについてはAck信号を受信している。また、サービング基地局200aは、シーケンス番号SN4〜SN6については再送を行っていない状況である(S10〜S16)。さらに、サービング基地局200aは、呼ごとに再送状態を再送情報テーブル231に保持するものとする(S18)。
【0078】
また、第1の動作例と同様に、サービング基地局200aは端末100についてハンドオーバすることを決定し(S19)、データの回収を行う(S20)。
【0079】
次いで、サービング基地局200aは、近隣セルごとの再送状態と再送発生率とを統計情報テーブル232に記憶する(S30)。例えば、第2のデータ通信状況収集部242が本処理を行う。
【0080】
図13(A)は、統計情報テーブル232の例を表わす図である。統計情報テーブル232は、近隣のエリア(又はセル、以下「近隣セル」)ごとに、「RLC手順の状態」(「再送あり」と「再送なし」)、「再送発生率」、及び「品質判定結果」の各項目を有する。
【0081】
近隣セルの関係については、ターゲット基地局200aからハンドオーバにより移動可能な近隣基地局の有するセルが「近隣セル」として統計情報テーブル232に記憶される。図14は、サービング基地局200aのセルXに対して近隣セルの関係例を表わした図である。図14に表わされるように、セルXに対してセルA−1,B−1,C−1,D−1,E−1,F−1が近隣セルとなる。
【0082】
「RLC手順の状態」の項目には、例えば、近隣セルA−1〜F−1の各ターゲット基地局にハンドオーバするとき、再送の有無に応じた数字が記憶される。例えば、第2のデータ通信状況収集部242は、メモリ部230に記憶された再送情報テーブル231を参照してハンドオーバを行う端末に対して再送ありのフラグがオンになっているか否かを確認する。そして、第2のデータ通信状況収集部242は、再送ありのフラグがオンになっているとき、「RLC手順の状態」における「再送あり」の項目に記憶された数値をカウントアップし、カウントアップした数値を記憶する。また、第2のデータ通信状況収集部242は、再送ありのフラグがオフになっているとき、「再送なし」の項目に記憶された数値をカウントアップし、カウントアップした数値を記憶する。図13(A)の例では、端末100がセルXのサービング基地局200aからセルA−1の基地局にハンドオーバするとき、監視期間内において基地局200aに対して再送が行われた回数は「0」回、再送が行われなかった回数は「500」回であることを表わしている。例えば、端末100がセルXとセルA−1の境界付近に位置し、セルXにおいて基地局200aと通信したときの再送状態が統計情報テーブル232に記憶される。
【0083】
「再送発生率」の項目には、例えば、「RLC手順の状態」に基づいて、近隣セルの基地局にハンドオーバするときにハンドオーバ元の基地局との間で行われた無線通信において再送が行われた割合が記憶される。計算では、「再送発生率」は、「再送あり」と「再送なし」の各カウント数を合計した合計回数のうち「再送あり」の回数の割り合いを表わした数値である。図13(A)の例では、近隣セルA−1に対しては「再送あり」の回数は「0」、「再送あり」と「再送なし」の回数の合計回数は「100」であるため、「0%」が再送発生率となる。近隣セルB−1に対しては、「再送あり」の回数は「250」、合計回数は「500」であるため、「50%」が再送発生率となる。なお、「再送発生率」は、例えば、第2のデータ通信状況収集部242により「RLC手順の状態」に記憶された各項目の数値を読み出して計算し、計算結果を「再送発生率」の項目に記憶させることで統計情報テーブル232に記憶される。
【0084】
「品質判定」の項目には、例えば、再送発生率に基づいて判定された近隣セルA−1〜F−1に対する無線品質が記憶される。図13(B)の例では、「再送発生率」が0%〜20%の場合、無線品質は「良」、「再送発生率」が20%〜100%の場合、無線品質は「劣」と判定され、統計情報テーブル232の「品質判定」の項目に無線品質「良」または「劣」が記憶される。「再送発生率」に第3の閾値を設けて、「再送発生率」が第3の閾値以下のとき無線品質は「良」、「再送発生率」が第3の閾値より大きいとき無線品質は「劣」と判定される。図13(B)の例では、第3の閾値を「20%」としている。図13(A)と図14の例では、例えば、端末100がセルA−1の基地局にハンドオーバすることを決定してセルXとセルA−1の境界付近におけるセルXの範囲に位置するときの無線品質は、再送発生率が第3の閾値以下のため「良」と判定される。また、端末100がセルB−1の基地局にハンドオーバすることを決定し、セルXとセルB−1の境界付近におけるセルXの範囲に位置するときの無線品質は、再送発生率が第3の閾値より大きいため「劣」と判定される。図13(B)では第3の閾値を「20%」としているが、種々の条件や基準などを考慮してそれ以外の値であってもよい。例えば、第2のデータ通信状況収集部242が統計情報テーブル232の「再送発生率」に記憶された値を読み出し、第3の閾値と比較してその大小により無線品質「良」または「劣」を「品質判定」の項目に記憶させるようにする。
【0085】
このように統計情報テーブル232には、近隣セルごとにこれまで行われた再送の有無の回数が記憶され、近隣セルごとの再送の有無に関する統計情報が含まれており、この統計情報に基づいて無線品質が判別されている。
【0086】
図12に戻り、次いで、サービング基地局200aは無線品質状態に基づいて転送対象データを決定する(S31)。転送対象データを決定するための転送対象データ決定処理は、例えば、図9(B)に表わされたフローチャートにより行われる。例えば、転送対象データ決定部243がメモリ部230に記憶された統計情報テーブル232を用いて転送対象データを決定する。
【0087】
転送対象データ決定部243は、転送対象データ決定処理を開始すると(S300)、ハンドオーバ先セルの無線品質を判定する(S301)。この判定は、転送対象データ決定部243が統計情報テーブル232の「品質判定」の項目に記憶された値(「良」または「劣」)を読みだして行われる。
【0088】
そして、転送対象データ決定部243は、ハンドオーバ先の無線品質が「良」のとき(S301で「良」)、転送対象データを「処理待ちのSDU」とする(S302)。例えば、図12の例において、サービング基地局200aは近隣セルA−1の基地局にハンドオーバすることを決定したとき、転送対象データ決定部243は、統計情報テーブル232に基づいて近隣セルA−1の「品質判定」を「良」と判定する。そして、転送対象データ決定部243は、処理待ちの「SDU−B」と「SDU−C」の各データを転送対象データとして決定する。
【0089】
この場合、サービング基地局200aはシーケンス番号SN4〜SN6のPDUに対するAck信号は受信していない。しかし、サービング基地局200aは、セルXからセルA−1に移動するときの無線品質は「良」と判定している。このような場合、転送対象データ決定部243は、シーケンス番号SN4〜SN6のPDUについて端末100で正しく受信できたものと判定して、シーケンス番号SN7から始まる「SDU−B」とそれに続く「SDU−C」を転送対象データとしている。
【0090】
図9(B)に戻り、一方、転送対象データ決定部243は、ハンドオーバ先の無線品質を「劣」と判定したとき(S301で「劣」)、転送対象データを「処理中のSDUと処理待ちのSDU」とする(S303)。例えば、図12の例において、サービング基地局200aがハンドオーバ先としてセルB−1を有する基地局として決定したとき(S19)、転送対象データ決定部243は、統計情報テーブル232に基づいて近隣セルB−1の「品質判定」を「劣」と判定する。そして、転送対象データ決定部243は、処理中の「SDU−A」と処理待ちの「SDU−B」と「SDU−C」の各データを転送対象データとして決定する。
【0091】
この場合、サービング基地局200aはシーケンス番号SN4〜SN6のPDUに対するAck信号は受信していない。また、サービング基地局200aは、セルXからセルB−1に移動するときの無線品質は「劣」と判定している。このような場合、転送対象データ決定部243は、シーケンス番号SN4〜SN6のPDUについて端末100で正しく受信できなかったものと判定して、シーケンス番号SN4〜SN6を含む「SDU−A」以降のSDUを転送対象データとしている。
【0092】
図12に戻り、サービング基地局200aは決定した転送対象データをハンドオーバ先の基地局200bに送信し(S22)、ハンドオーバ先の基地局200bは転送対象データを端末100に送信する(S23)。例えば、無線品質が「良」のとき(図9(B)のS301で「良」のとき)、サービング基地局200aは、処理待ちの「SDU−B」と「SDU−C」の各データをターゲット基地局200bに転送する。そして、基地局200bはシーケンス番号SN7のPDUから順にデータを端末100に無線送信する。一方、無線品質が「劣」のとき(図9(B)のS301で「劣」のとき)、サービング基地局200aは、処理中の「SDU−A」と処理待ちの「SDU−B」と「SDU-C」をターゲット基地局200bに送信する。そして、基地局200bはシーケンス番号SN1のPDUから順にデータを端末100に無線送信する(S23)。
【0093】
このように本動作例においては、サービング基地局200aは、近隣セルごとの再送の有無に関する統計情報に基づいて再送発生率を計算し、再送発生率に基づいて近隣セルごとの無線品質を判定している。そして、サービング基地局200aは、無線品質を「良」と判別したとき、処理中のデータについて端末100において正しく受信できたものと判定して、処理待ちのデータを転送対象データとしている。従って、ハンドオーバ先の基地局200bは処理中のデータを重複して送信することもないし、端末100は受信した処理中のデータをハンドオーバ先の基地局200bから重複して受信することもない。
【0094】
他方、サービング基地局200aは、無線品質を「劣」と判別したとき、処理中のデータが端末100において正しく受信できなかったものと判定して、処理中のデータと処理待ちのデータとを転送対象データとしている。従って、ハンドオーバ先の基地局200bは、ハンドオーバ元の基地局200aにおいて処理中のデータを端末100に送信しているため、端末100はデータの欠落は生じないことになる。
【0095】
上述した第1の動作例と同様に、サービング基地局200aは、送信開始を表わすPDUのシーケンス番号をターゲット基地局200bに通知するようにしてもよい。図15はシーケンス番号を通知する場合の動作例を表わすシーケンス図である。この場合も、第1の動作例と同様に、例えば、第1のデータ通信状況収集部221が再送情報テーブル231に再送の有無と受信したAck信号対象のPDUのシーケンス番号とを記憶する。そして、転送対象データ決定部243は、再送情報テーブル231から、ハンドオーバ決定前において最後に受信したAck信号対象のPDUのシーケンス番号を読み出し、このシーケンス番号の次のシーケンス番号を通知対象のシーケンス番号としこれを通知する(S24)。シーケンス番号を通知することにより、ハンドオーバ先の基地局200bは通知されたシーケンス番号のPDUを端末100に送信することができ、重複送信、重複受信、及びデータの欠落を更に防止することができる。
【0096】
<第3の動作例>
次に第3の動作例として、電波状況に基づいて転送対象データを決定する場合の例について説明する。図16から図19、及び図9(B)が本動作例におけるシーケンス図などの例を表わしている。
【0097】
図16は第3の動作例におけるシーケンス例を表わす図である。本第3の動作例においても、第1及び第2の動作例と同様に、サービング基地局200aは、シーケンス番号SN1〜SN3のPDUに対するAck信号を受信し、シーケンス番号SN4〜SN6のPDUについては再送を行っていない状況である(S10〜S16)。
【0098】
本第3の動作例においては、サービング基地局200aは、端末100から受信した信号に基づいて、サービング基地局200aと端末100間の無線品質を測定し、測定した無線品質を電波状況として電波状況テーブル233に記憶する(S35)。例えば、無線電波状況通知部211は、端末100から受信したAck信号の受信電力や受信電力に対するノイズなどを無線品質として測定し、これを電波状況テーブル233に記憶する。或いは、無線電波状況通知部211は、端末100において測定した無線品質を含む「Measurement Reports」メッセージを受信したとき、当該メッセージに含まれる無線品質を抽出し、これを電波状況として電波状況テーブル233に記憶する。
【0099】
図17(A)は電波状況テーブル233の例を表わす図である。電波状況テーブル233は、近隣セルごとに、「電波状況」と「品質判定」の各項目を有する。
【0100】
近隣セルについては、例えば、図18に表わされるように、サービング基地局200aのセルXに端末100が位置するとき、サービング基地局200aからハンドオーバ可能な基地局のセルA−1〜F−1が近隣セルとなる。
【0101】
「電波状況」の項目は、サービング基地局200aにより測定或いは抽出した無線品質が記憶される。例えば、図17(A)の例において、セル「A−1」についての「電波状況」は、端末100がセルXとセルA−1の境界付近のセルXに位置するときの端末100とサービング基地局200aとの間の無線品質が記憶される。或いは、無線電波状況通知部211は、受信した「Measurement Reports」メッセージに含まれる無線品質とセルIDとを抽出し、該当する「電波状況」の項目に抽出した無線品質を記憶する。
【0102】
「品質判定」の項目は、測定した無線品質が第4の閾値以上のときは「良」、第4の閾値より小さいときは「劣」が近隣セルごとに夫々記憶される。図17(B)では第4の閾値として「2dB」としており、例えば、近隣セルB−1の電波状況は「1.5dB」であり、「2dB」より小さいため「劣」が記憶され、近隣セルA−1の電波状況は「2.5dB」であり、「2dB」より小さいため「良」が記憶されている。
【0103】
図16に戻り、このように無線品質がサービング基地局200aの電波状況テーブル233に記憶される(S35)。この場合、例えば第1の動作例と同様に、ハンドオーバ決定前の監視期間において測定または抽出した無線品質が記憶されてもよい。例えば、無線電波状況通知部211は、測定または抽出した無線品質をメモリ部230に記憶し、ハンドオーバ決定(S19)前の監視期間分の無線品質をメモリ部230から読み出して、電波状況テーブル233に記憶するようにしてもよい。
【0104】
次いで、サービング基地局200aは、ハンドオーバを行うことを決定し(S19)、データの回収を行い(S20)、その後、転送対象データを決定する(S40)。転送対象データ決定処理は、上述した第2の動作例と同様に、例えば図9(B)に表わされたフローチャートにより実施できる。
【0105】
転送対象データ決定部243は、転送対象データ決定処理を開始すると(S300)、無線品質を判定する(S301)。例えば、転送対象データ決定部243は、電波状況テーブル233からハンドオーバ先となる基地局の有する「近隣セル」に対応する「品質判定」の項目に記憶された「良」又は「劣」に基づいて判別する(S301)。
【0106】
そして、転送対象データ決定部243は、ハンドオーバ先の無線品質が「良」のとき(S301で「良」のとき)、転送対象データを「処理待ちのSDU」とする(S302)。この場合は、上述した第2の動作例と同様に、無線品質が「良」であれば、サービング基地局200aはAck信号の受信を確認しなくても送信した処理中のデータは端末100において正しくに受信できたはずであり、その場合は、転送対象データを「処理待ちのSDU」とする。図16及び図17(A)の例では、端末100が近隣セル「A−1」を有する基地局にハンドオーバするとき、サービング基地局200aはシーケンス番号SN4〜SN6についてはAck信号を受信していない。しかし、サービング基地局200aは、近隣セル「A−1」の無線品質が「良」のため、シーケンス番号SN7から始まる「SDU−B」とそれに続く「SDU−C」を転送対象データとしている。
【0107】
一方、転送対象データ決定部243は、ハンドオーバ先の無線品質が「劣」のとき(S302で「劣」のとき)、転送対象データを「処理中のSDUと処理待ちのSDU」とする(S303)。この場合、上述した第2の動作例と同様に、無線品質が「劣」であれば、サービング基地局200aはAck信号の受信を確認していなくても送信した処理中のデータを正しく受信できた可能性は無線品質が「良」の場合と比較して低い。その場合、転送対象データは、Ack信号の受信を確認していないデータを含む「処理中のSDU」とそれに続く「処理待ちのSDU」となる。図16及び図17(A)の例では、端末100が近隣セル「B−1」を有する基地局にハンドオーバするとき、サービング基地局200aは、近隣セル「B−1」の無線品質が「劣」のため、「処理中のSDU−A」と「処理待ちのSDU」とを転送対象データとしている。
【0108】
サービング基地局200aは転送対象データを決定すると(S40)、データをハンドオーバ先のターゲット基地局200bに送信する(S22)。サービング基地局200aは、無線品質が「良」のとき「処理待ちのSDU」を転送し、無線品質が「劣」のとき「処理中のSDUと処理待ちのSDU」を転送する。
【0109】
そして、ハンドオーバ先の基地局200bは転送されたデータを端末100に送信する(S23)。
【0110】
このように本第3の動作例において、サービング基地局200aは、近隣セルごとの電波状況に基づいて、近隣セルごとの無線品質を判定している。そして、第2の動作例と同様に基地局200aは、無線品質を「良」と判別したとき、処理中のデータが端末100において正しく受信できたものと判定して、処理待ちのデータを転送対象データとしている。従って、ハンドオーバ先の基地局200bは処理中のデータを重複して送信することもないし、端末100は受信した処理中のデータをハンドオーバ先の基地局200bから重複して受信することもない。
【0111】
また、サービング基地局200aは、無線品質を「劣」と判別したとき、処理中のデータが端末100において正しく受信できなかったものと判定して、処理中のデータと処理待ちのデータとを転送対象データとしている。従って、ハンドオーバ先の基地局200bは、ハンドオーバ元の基地局200aで処理中のデータを端末100に送信できるため、端末100はデータの欠落は生じないことになる。
【0112】
第3の動作例においても、第1及び第2の動作例と同様に、サービング基地局200aは、送信開始を表わすPDUのシーケンス番号を通知するようにしてもよい。図19はシーケンス番号を通知する場合の動作例を表わすシーケンス図である。この場合も、第1及び第2の動作例と同様に、第1のデータ通信状況収集部221が、再送情報テーブル231に再送の有無と、受信したAck信号対象のPDUのシーケンス番号とを記憶する。そして、転送対象データ決定部243は、再送情報テーブル231から、ハンドオーバ決定前において最後に受信したAck信号対象のPDUのシーケンス番号を読み出し、このシーケンス番号の次のシーケンス番号を通知対象のシーケンス番号としこれを通知すればよい(S24)。シーケンス番号を通知することにより、ハンドオーバ先の基地局200bは通知されたシーケンス番号のPDUを端末100に送信することができ、重複送信、重複受信、及びデータの欠落をさらに防止することができる。
【0113】
<第4の動作例>
次に第4の動作例、すなわち、第1〜第3の動作例の組み合わせについて説明する。第4の動作例は、呼ごとの再送状態(第1の動作例)と無線品質の状態(第2または第3の動作例)との組み合わせにより転送対象データを決定する方法である。このような組み合わせの場合、2つの動作例が考えられる。1つ目は、第1の動作例(呼ごとの再送状態)と第2の動作例(再送発生率による無線品質状態)とを組み合わせて転送対象データを決定する動作例である。2つ目は、第1の動作例(呼ごとの再送状態)と第3の動作例(電波状況による無線品質状態)とを組み合わせて転送対象データを決定する動作例である。最初に前者について説明し、次に後者について説明することにする。
【0114】
<1.第1の動作例と第2の動作例の組み合わせ>
最初に第1と第2の各動作例を組み合わせた例について説明する。図20〜図24は本動作例のシーケンス図やフローチャートなどを表わす図である。第1及び第2の動作例と同一の処理が行われる部分については同一の符号が付されている。
【0115】
このうち図20は本動作例のシーケンス図である。図20を用いて本動作例を説明する。本動作例は、第1〜第3の動作例と同様に、サービング基地局200aはSDU−Aに含まれるシーケンス番号SN1〜SN6のPDUを端末100に送信し、端末100からシーケンス番号SN1〜SN3のPDUに対するAck信号を受信する(S10〜S16)。
【0116】
そして、サービング基地局200aは、第1の動作例と同様に、呼ごとの再送状態を再送情報テーブル231に保持する(S18)。例えば、第1のデータ通信状況収集部221は、図6に示すように、再送情報テーブル231に端末100ごとの再送の有無を記憶する。
【0117】
次いで、サービング基地局200aは、ハンドオーバの決定とデータの回収とを行う(S19,S20)。
【0118】
次いで、サービング基地局200aは、第2の動作例と同様に、近隣セルごとに再送状態と再送発生率とを統計情報テーブル232に記憶する(S30)。例えば、第2のデータ通信状況収集部242は、図13に示すように、呼ごとの再送状態に基づいて統計情報テーブル232の「再送あり」または「再送なし」の項目に再送回数または再送無しの回数を記憶する。そして、第2のデータ通信状況収集部242は、記憶された回数から再送発生率を計算して「再送発生率」の項目に記憶する。さらに、第2のデータ通信状況収集部242は、第3の閾値と再送発生率とを比較して、統計情報テーブル232の「品質判定」に無線品質を表わす「良」または「劣」を記憶する。
【0119】
次いで、サービング基地局200aは、呼ごとの再送状態と無線品質状態とに基づいて転送対象データを決定する(S50)。例えば、転送対象データ決定部243は、メモリ部230に記憶した再送情報テーブル231と統計情報テーブル232とに基づいて、転送対象データを決定する。
【0120】
図21は本動作例における転送対象データ決定処理の例を表わすフローチャートである。転送対象データ決定部243は、処理を開始すると(S400)、第1の動作例(S211)と同様に、再送情報テーブル231に基づいてハンドオーバを行うことを決定した端末100について再送の有無を判別する(S401)。例えば、転送対象データ決定部243は、再送情報テーブル231の「再送の有無」の項目においてオン(「1」)になっているとき、「再送あり」、オフ(「0」)になっているとき「再送なし」と判別する。
【0121】
再送が行われていないとき(S401で「再送なし」のとき)、転送対象データ決定部243は、ハンドオーバ先セルの無線品質を判別する(S402)。第2の動作例(S301)と同様に、転送対象データ決定部243は、S30により記憶された統計情報テーブル232に基づいて無線品質を判別する。すなわち、転送対象データ決定部243は、統計情報テーブル232の「品質判定」に「良」が記憶されているとき、無線品質は「良」と判定し、統計情報テーブル232の「品質判定」に「劣」が記憶されているとき、無線品質は「劣」と判定する。
【0122】
ハンドオーバ先セルの無線品質が「良」のとき(S402で「良」のとき)、転送対象データ決定部243は、処理中のデータの次に送信する予定の「処理待ちのSDU」を転送対象データとする(S403)。この場合は、処理中のデータについて再送が行われず(S401で「再送なし」)、ハンドオーバ先の無線品質が「良」(S402で「良」)であれば、たとえ端末100からAck信号を受信していなくても、処理中のデータは端末100において正しく受信できたはずであると判定できる。かかる場合、サービング基地局200aは、処理中のデータの次に端末100に送信する予定の「処理待ちのSDU」を転送対象データに決定している。
【0123】
一方、ハンドオーバ先セルの無線品質が「劣」のとき(S402で「劣」)、転送対象データ決定部243は、処理中のデータ(「処理中のSDU」)と処理中のデータの次に送信予定の「処理待ちのSDU」とを転送対象データとして決定する(S404)。この場合は、ハンドオーバ先の無線品質が「劣」であれば、端末100からAck信号を受信していないときでも、処理中のデータは端末100において正しく受信した可能性は無線品質が「良」の場合と比較して低い。かかる場合、サービング基地局200aは、処理中のデータ(「処理中のSDU」)と「処理待ちのSDU」とを転送対象データに決定する。
【0124】
また、再送が行われたとき(S401で「再送あり」)、転送対象データ決定部243は、「処理中のSDU」と「処理待ちのSDU」とを転送対象データとして決定する(S404)。これは、例えば、再送が行われるような状況では、再送データに対するAck信号をサービング基地局200aが受信しなくても、再送がおこなわれない状況と比較して、再度再送が行われる可能性が高い。よって、再送データに対するAck信号の有無に拘わらず、再送が行われた場合、転送対象データは再送が行われた「処理中のSDU」としている。
【0125】
図22は、図20のようにシーケンス番号SN1〜SN6のPDUが端末100に送信され、シーケンス番号SN1〜SN3のPDUについてAck信号が送信された状況のときに、転送対象データがどのようなデータとなるかの例を表わした図である。再送がなく、無線品質が「良」のとき、「処理待ちのSDU」である「SDU−B」と「SDU−C」が転送対象データとなる。それ以外のときは、「SDU−A」〜「SDU−C」が転送対象データとなる。
【0126】
図20に戻り、サービング基地局200aは決定した転送対象データをハンドオーバ先の基地局200bに転送し(S22)、ハンドオーバ先の基地局200bは転送されたデータを端末100に送信する(S23)。
【0127】
図27は、図20の状況において、再送が行われず無線品質が「良」である近隣セルの基地局にハンドオーバが行われるときのシーケンス例を表わす図である。この例では、転送データはシーケンス番号SN7以降のデータとなり、ハンドオーバ先の基地局200bからシーケンス番号SN7以降のPDUが送信されている。
【0128】
本動作例においても、第1から第3の動作例と同様に、サービング基地局200aはシーケンス番号をターゲット基地局200bに送信するようにしてもよい。図23はシーケンス番号の通知を含むシーケンス例を表わす図である。この例においても、例えば、第1のデータ通信状況収集部221が受信したAck信号の対象となるPDUのシーケンス番号を再送情報テーブル231に記憶するなどし、転送対象データ決定部243は決定した転送対象データと記憶されたシーケンス番号とから通知するシーケンス番号を決定すればよい。例えば、図23のような状況において、転送対象データ決定部243は「処理中のSDUと処理待ちのSDU」を転送対象データとして決定したとき、シーケンス番号「SN4」を通知すればよい。また、転送対象データ決定部243は「処理待ちSDU」を転送対象データとして決定したとき、シーケンス番号「SN7」を通知すればよい。
【0129】
図24は、このような状況において通知するシーケンス番号の例を表わした図である。再送状態が再送「なし」で、無線品質が「良」のとき、通知するシーケンス番号は「処理待ち」のSDU−Bに属するPDUの最初のシーケンス番号SN「7」である。再送状態が再送「なし」でも、無線品質が「劣」であれば、通知するシーケンス番号は、Ack信号を受信していない最初のシーケンス番号SN「4」である。再送状態が「再送あり」のとき、無線品質に拘わらず、シーケンス番号SN「4」を通知するシーケンス番号としている。
【0130】
本動作例においても、結局、第1及び第2の動作例と同様に基地局200aは、再送が行われず、無線品質を「良」と判別したとき、処理中のデータについて端末100において正しく受信できたものと判定して、処理待ちのデータを転送対象データとしている。従って、ハンドオーバ先の基地局200bは処理中のデータを重複して送信することもないし、端末100は受信した処理中のデータをハンドオーバ先の基地局200bから重複して受信することもない。
【0131】
また、基地局200aは、再送が行われた場合や、再送が行われずに無線品質が「劣」の場合は、処理中のデータが端末100において正しく受信できなかったものと判定して、処理中のデータと処理待ちのデータとを転送対象データとしている。従って、ハンドオーバ先の基地局200bは、ハンドオーバ元の基地局200aで処理中のデータを端末100に送信しているため、端末100はデータの欠落は生じないことになる。
【0132】
<2.第1の動作例と第3の動作例の組み合わせ>
次に第4の動作例として、上述した第1の動作例と第3の動作例の組み合わせについて説明する。図25は本動作例のシーケンス例、図26はシーケンス番号を通知する場合のシーケンス例を夫々表わす図である。
【0133】
本動作例では、サービング基地局200aは、第1の動作例と同様に、例えば監視期間において呼ごとの再送状態を再送情報テーブル231(例えば図6)に保持する(S18)。また、サービング基地局200aは、第3の動作例と同様に、例えば監視期間において電波状況を電波状況テーブル233(例えば図17(A))に保持する(S35)。
【0134】
そして、サービング基地局200aは、ハンドオーバを決定し(S19)、データの回収を行い(S20)、再送情報テーブル231と電波状況テーブル233とに基づいて転送対象データを決定する(S60)。転送対象データ決定処理は、例えば、上述した第1と第2の動作例の組み合わせで説明したものと同様に行われる。すなわち、図21に表わすように、転送対象データ決定部243は、ハンドオーバを行う端末100について再送が行われず(S401で「再送なし」)、ハンドオーバ先セルの無線品質が「良」のとき(S402で「良」)、転送対象データを「処理待ちのSDU」とする(S403)。一方、転送対象データ決定部243は、再送が行われたり(S401で「再送あり」)、または再送が行われなくても無線品質が「劣」のとき(S402で「劣」)、転送対象データを「処理中のSDUと処理待ちのSDU」としている(S404)。転送対象データの決定は、電波状況テーブル233を用いて行われている点が、上述した第1と第2の動作例の組み合わせと異なる。シーケンス番号を通知する場合について、シーケンス例を図26に表わされているが、どのシーケンス番号を通知するかは、上述した第1と第2の動作例の組み合わせと同様である。
【0135】
本動作例においても、結局、第1及び第3の動作例と同様に、基地局200aは、再送が行われず、無線品質を「良」と判別したとき、処理中のデータが端末100において正しく受信できたものと判定して処理待ちのデータを転送対象データとしている。従って、ハンドオーバ先の基地局200bは処理中のデータを重複して送信することもないし、端末100は受信した処理中のデータをハンドオーバ先の基地局200bから重複して受信することもない。
【0136】
また、基地局200aは、再送が行われなくても無線品質が「劣」のときや、再送が行われたとき、処理中のデータが端末100において正しく受信できなかったものと判定して処理中のデータと処理待ちのデータとを転送対象データとしている。従って、ハンドオーバ先の基地局200bは、ハンドオーバ元の基地局200aで処理中のデータを端末100に送信しているため、端末100はデータの欠落は生じないことになる。
【0137】
[第3の実施の形態]
次に第3の実施の形態について説明する。図28は基地局200と端末100の他の構成例を表わした図である。
【0138】
基地局200は、アンテナ271、DSP(Digital Signal Processing)272、CPU273、ROM(Read Only Memory)274、RAM(Random Access Memory)275、メモリ部230を備える。
【0139】
例えば、CPU273とROM274、及びRAM275との協調動作により、第2の実施の形態における基地局200(例えば図3)の呼制御部240が機能することができる。また、例えば、CPU273からDSP272に指示を与えてDSP272を動作させることで、第2の実施の形態における対応ENB IF部250が機能することができる。さらに、例えば、DSP272とアンテナ271とが動作することで、第2の実施の形態における無線送受信部210が機能することができる。なお、第2の実施の形態におけるRLCプロトコル制御部220は、CPU273とROM274、及びRAM275との協調動作により機能することもできるし、DSP272の動作により機能することもできる。
【0140】
一方、端末100は、アンテナ171、DSP172、CPU173、ROM174、RAM175、及びメモリ部140を備える。
【0141】
例えば、CPU173とROM174、及びRAM175の協調動作により、第2の実施の形態における端末100(例えば図4)の呼制御部120が機能する。また、例えば、CPU173がDSP172に指示を与えてDSP172とアンテナ171とを動作させることで、第2の実施の形態における無線送受信部110が機能することができる。なお、第2の実施の形態におけるRLCプロトコル制御部130は、CPU173とROM174、及びRAM175の協調動作により機能することもできるし、DSP172の動作により機能することもできる。
【0142】
よって、図28に表わされた基地局200と端末100においても、第2の実施の形態と同様に上述した第1〜第4の各動作例を実現することができる。
【0143】
[第4の実施の形態]
次に第4の実施の形態について説明する。第2の実施の形態における第4の動作例として、第1の動作例と第2の動作例の組み合わせ(例えば図20から図24)と第1の動作例を第3の動作例の組み合わせ(例えば図25及び図26)の例を説明した。本第4の実施の形態では、第2の動作例と第3の動作例の組み合わせの動作例について説明する。図31は第4の実施の形態におけるシーケンス例、図32は第4の実施の形態における転送対象のSDUの例をそれぞれ表わす図である。
【0144】
なお、基地局200a,200bと端末100の各構成例は第2の実施の形態と同様である(例えば図3及び図4)。また、端末100がサービング基地局200aからターゲット基地局200bにハンドオーバを行う状況も第2の実施の形態と同様である。
【0145】
また、図31において第2の実施の形態と同一の処理には同一の番号が付されている。図31に表わされるように、サービング基地局200aは、データとして、SDU−A〜SDU−Cをゲートウェイ300から受信し、SDU−Aに含まれるシーケンス番号SN1〜N6のPDUを端末100に送信する。サービング基地局200aは、このうち、シーケンス番号SN1〜SN3のPDUに対するAck信号を受信し、シーケンス番号SN4〜SN6のPDUに対するAck信号を受信していない(S11〜S16)。
【0146】
このような通信状況において、サービング基地局200aは、第2の実施の形態における第2の動作例と同様に、呼ごとの再送状態を再送情報テーブル231に保持する(S18)。例えば、第1のデータ通信状況通収集部221が再送の有無を再送情報テーブル231に記憶する。
【0147】
また、サービング基地局200aは、第2の実施の形態における第3の動作例と同様に、無線品質を電波状況テーブル233に記憶する(S35)。例えば、無線電波状況通知部211は、端末100から受信したMeasurement Reportに含まれる無線品質、或いは、端末100から受信した無線信号に基づいて測定した無線品質を電波状況テーブル233に記憶する。例えば、無線電波状況通知部211は、電波状況テーブル233(例えば図17(A))の「電波状況」と「品質判定」の各項目に値などを記憶する。
【0148】
次いで、サービング基地局200aは、ハンドオーバを行うことを決定し(S19)、データの転送を回収する(S20)。そして、サービング基地局200aは近隣セルごとの再送状態と再送発生率とを統計情報テーブル232に記憶する(S30)。例えば、第2のデータ通信状況収集部242が再送情報テーブル231に基づいて、統計情報テーブル232(例えば図13(A))の「RLC手順の状態」(「再送あり」又は「再送なし」のカウント値)、「再送発生率」、及び「品質判定」の各項目に値などを記憶する。
【0149】
次いで、サービング基地局200aは、無線品質状態により転送対象データを判断する(S65)。例えば、転送対象データ決定部243がメモリ部230に記憶された統計情報テーブル232と電波状況テーブル233に基づいて転送対象データを判断する。この場合、転送対象データ決定部243は、統計情報テーブル232の「品質判定」と電波状況テーブル233の「品質判定」の組み合わせにより判断する。
【0150】
図32はこれらの組み合わせにより「無線品質」がどのように判断されるかの判断例を表わしている。例えば、統計情報テーブル232の「品質判定」(図32では「再送発生率」)が「良」、かつ、電波状況テーブル233の「品質判定」(図32では「電波状況」)が「良」のとき、転送対象データ決定部243は、無線品質について「良」と判断する。それ以外の組み合わせのとき、転送対象データ決定部243は、無線品質について「劣」と判断する。
【0151】
このような無線品質の判断結果が、例えば、第2の実施の形態と同様に転送対象データ決定処理(例えば図9(B))における「ハンドオーバ先セルの無線品質」(S301)に適用されることで、転送対象データが決定される。
【0152】
例えば、図31に示すような通信状況において、無線品質が「良」のとき(S301で「良」)、処理待ちのSDU−BとSDU−Cが転送対象データとされ、無線品質が「劣」のとき(S301で「劣」)、処理中のSDU−Aと処理待ちのSDU−B,SDU−Cが転送対象データとなる(例えば図32)。
【0153】
このように、サービング基地局200aは、端末100に送信したデータ(例えばシーケンス番号SN4〜SN6のPDU)についてAck信号を受信していなくても、無線品質が良好のときは端末100において当該データは受信されたものと判断している。このようなとき、サービング基地局200aは、「処理待ちのSDU」(例えばSDU−B以降)を転送対象データとしている。
【0154】
よって、サービング基地局200aは「処理中のSDU」をターゲット基地局200bに送信することがないため、ターゲット基地局200bは端末100に処理中のデータを重複して送信することもなく、端末100は処理中のデータを重複して受信することもなくなる。
【0155】
一方、サービング基地局200aは、端末100に送信したデータについて、閾値時間内にAck信号を受信していないとき(「再送発生率」が「劣」のとき)や、無線品質が閾値未満のとき(「電波状況」が「劣」のとき)、「処理中のSDU」と「処理待ちのSDU」とを転送対象データとしている。
【0156】
よって、サービング基地局200aは端末100に対して処理中のデータを送信しているため、端末100は正常に受信できなかったデータも受信することができ、データの欠落が生じないことになる。
【0157】
なお、例えば図32に表わされるように、本第4の実施の形態では、統計情報テーブル232と電波状況テーブル233における「品質判定」がともに「良」のとき、全体の「品質判定」が「良」と判断するようにしている。したがって、全体の「品質判定」が「良」となるときの信頼性は、第2の実施の形態における第2の動作例又は第3の動作例における場合よりも高くすることができる。
【0158】
図31において、転送対象データ決定(S65)以降の処理は第2の実施の形態と同一の処理が行われる(S22,S23)。この場合、サービング基地局200aは、ターゲット基地局200bが送信を開始するPDUのシーケンス番号を通知するようにしてもよい(S24)。
【0159】
[第5の実施の形態]
次に第5の実施の形態について説明する。第2から第4の実施の形態では、サービング基地局200aはSDUに含まれるPDUをすべて送信した後でハンドオーバを決定する例について説明した。本第5の実施の形態では、サービング基地局200aは、SDUに含まれるすべてのPDUを送信する前にハンドオーバの決定を行い、そのため、送信待ちのPDU(又は未送信のPDU)がある場合の例である。
【0160】
図33は第5の実施の形態におけるシーケンス例を表わし、その詳細は後述するが、例えば以下のような通信状況を考える。すなわち、サービング基地局200aは端末100宛てのデータとしてゲートウェイからSDU−A〜SDU−Cを受信する。そして、サービング基地局200aはSDU−Aに含まれるシーケンス番号SN1〜SN4のPDUを端末100に送信し(S11〜S73)、その後ハンドオーバを行うことを決定する(S19)。この場合、SDU−Aに含まれるシーケンス番号SN5〜SN6のPDUは送信待ち(又は未送信)となる。なお、SDUやPDUの構成例は第2の実施の形態などと同一である。
【0161】
このとき、サービング基地局200aは、送信可否決定(S76)により送信できると判定したとき、送信待ちのシーケンス番号SN5〜SN6を端末100に送信する(S77)。この場合、サービング基地局200aは、シーケンス番号SN7以降のSDU−B、SDU−Cを転送対象データとしてターゲット基地局200bに転送している(S22)。
【0162】
このように、本第5の実施の形態におけるサービング基地局200aは、送信待ちのデータ(例えば未送信のデータ)がある場合において送信できる状態のとき、送信待ちのデータを端末100に送信し、送信待ちのデータをターゲット基地局200bに転送しないようにしている。
【0163】
よって、ターゲット基地局200bから端末100に送信待ちのデータ(例えばシーケンス番号SN5〜SN6のPDU)が送信されることがなく、ターゲット基地局200bは送信待ちのデータをサービング基地局200aと重複して端末100に送信することがなくなる。また、この場合、端末100は、2つの基地局200a,200bから送信待ちのデータ(例えばシーケンス番号SN5〜SN6)を受信することがなくなり、重複受信することがない。
【0164】
さらに、送信待ちのデータ(例えばシーケンス番号SN5〜SN6)はサービング基地局200aから送信されるため(例えばS77)、送信待ちのデータが送信されずにデータの欠落が生じる事態が回避されることができる。
【0165】
以下、詳細に説明する。図33から図44は本第5の実施の形態における動作例などを表わす図である。なお、無線通信システム10、サービング基地局200a、ターゲット基地局200b、端末100の各構成例は第2から第4の実施の形態と同一である(例えば、図2〜図4など)。
【0166】
また、SDUやPDUなどの構成例についても第2から第4の実施の形態と同様に、例えば、SDU−Aにはシーケンス番号SN1〜SN6までのPDUが含まれる。さらに、SDU−Bにはシーケンス番号SN7〜SN12までのPDUが含まれ、SDU−Cにはシーケンス番号SN13〜SN18までのPDUが含まれる。
【0167】
本第5の実施の形態における動作例についても、第2の実施の形態と同様に以下の4つのパターンがある。
【0168】
1)呼ごとに保持した再送状態に基づいて転送対象データを決定する場合、
2)近隣セルごとに保持した再送発生率などのデータ通信状況に基づいて転送対象データを決定する場合、
3)サービング基地局200aと端末100との間の無線電波状況に基づいて転送対象データを決定する場合、
4)上記1)から3)の組み合わせ。
【0169】
以下において、第2の実施の形態と同様に4つの動作例(第1〜第4の動作例)についてそれぞれ説明する。
【0170】
<第1の動作例>
第5の実施の形態における第1の動作例として、送信待ちのデータがあるときにハンドオーバの決定がなされ、さらに、再送状態に基づいて転送対象データが決定される場合の例である。図33は本第1の動作例におけるシーケンス例、図34は本第1の動作例における再送情報テーブル231の例、図35は本第1の動作例における送信可否決定処理の例をそれぞれ表わしている。また、図36(A)及び図36(B)は本第1の動作例におけるシーケンス例、図37は第1の動作例における転送対象データ決定処理の例をそれぞれ表わしている。なお、図33などにおいて、第2の実施の形態における第1の動作例などと同一の処理については同一の符号が付されている。
【0171】
通信状況としては、上述したように、例えば以下のような状況を考える。すなわち、サービング基地局200aはSDU−A〜SDU−Cまでのデータをゲートウェイ300から受信し、SDU−Aに含まれるシーケンス番号SN1からSN4までのデータを端末100に送信している(S11〜S73)。サービング基地局200aは、そのうち、シーケンス番号SN1,SN2のPDUについてAck信号を端末100から受信し、シーケンス番号SN3,SN4のPDUについてはAck信号を受信していない。そして、サービング基地局200aは、端末100についてハンドオーバを行うことを決定し(S19)、シーケンス番号SN5,SN6のPDUについては送信待ちの状態となっている。
【0172】
このような通信状況において、サービング基地局200aは、呼ごとの再送状態と送信時間を再送情報テーブル231に保持する(S75)。例えば、第1のデータ通信状況収集部221が呼ごと(例えば端末100ごと)の再送の有無を検出し、また、呼ごとの送信時間を検出する。
【0173】
例えば、第1のデータ通信状況収集部221は、無線送受信部210から送信されたPDUの送信間隔を測定することで送信時間を検出することができる。図33の例では、第1のデータ通信状況収集部221はシーケンス番号SN1のPDUを送信後、シーケンス番号SN2のPDUを送信するまでにかかる時間を測定することで送信時間を測定できる。送信時間の測定については、例えば、第1のデータ通信状況収集部221は複数のPDUの送信時間から平均時間を測定することで送信時間を測定することもできるし、1つのPDUを送信する時間が最も長い時間や最も短い時間を送信時間とすることもできる。
【0174】
図34は第5の実施の形態における再送情報テーブル231の例を表わす図である。図34の再送情報テーブル231の例は、送信時間として「平均時間」の項目があり、第1のデータ通信状況収集部221が「平均時間」の項目に値を記憶する。
【0175】
図33に戻り、サービング基地局200aは、ハンドオーバを行うことを決定した後(S19)、送信可否の決定を行う(S76)。サービング基地局200aは、例えば、送信可否決定処理を行うことで、送信待ちのシーケンス番号SN5,SN6のPDUを送信できるか否かを判定する。
【0176】
図35は送信可否決定処理の例を表わすフローチャートである。送信可否決定処理は、例えば転送対象データ決定部243又はハンドオーバ決定部241で行われる。
【0177】
サービング基地局200aは、送信可否決定処理を開始すると(S760)、送信予測時間は最大保留可能時間よりも長いか否かを判別する(S761)。ここで送信予測時間と最大保留可能時間について説明する。
【0178】
図36(A)及び図36(B)は、送信予測時間と最大保留可能時間の例をそれぞれ説明するための図である。
【0179】
送信予測時間とは、例えば、送信待ちのPDUがどれくらいあるかに基づく時間であり、ハンドオーバ決定(S19)後、送信待ちの最後のPDUを送信し終えるまでのかかる時間である。例えば、送信予測時間は、図36(A)及び図36(B)の例では、ハンドオーバ決定(S19)後、送信待ちの最後のPDUであるシーケンス番号SN6のPDUを送信し終えるまでの時間(*1)である。
【0180】
一方、最大保留可能時間とは、例えば、ハンドオーバ決定(S19)後、ハンドオーバが確定する(S78)までの時間である。ハンドオーバの確定(S78)とは、例えば、ハンドオーバの決定によりハンドオーバ先が決定され、当該ハンドオーバ先の基地局200bにハンドオーバ要求を通知する直前の状態のことである。よって、最大保留可能時間とは、例えば、ハンドオーバ決定(S19)後、ハンドオーバ要求を送信する直前(S78)までの時間(*2)でもある。
【0181】
送信予測時間は、例えば、送信待ちのPDUの個数や1つのPDUを送信する送信時間に応じて変化する時間でもある。例えば、転送対象データ決定部243は、再送情報テーブル231(例えば図34)の「平均時間」を読み出して送信待ちのPDUの個数に乗算し、送信予測時間を計算することができる。
【0182】
一方、最大保留可能時間は、ハンドオーバ決定後からハンドオーバ要求の送信までは、例えば、予め決められた時間内において行われる処理である。例えば、メモリ部230には最大保留可能時間が記憶されて、転送対象データ決定部243はメモリ部230に記憶された最大保留時間を読み出すことができる。
【0183】
図36(A)に表わされるように、送信予測時間(*1)が最大保留可能時間(*2)未満のとき、この場合は送信待ちのシーケンス番号SN5,SN6を端末100に送信するだけの時間がある。
【0184】
一方、図36(B)に表わされるように、送信予測時間(*1)が最大保留可能時間(*2)以上となるとき、送信待ちのシーケンス番号SN6のPDUは最大保留可能時間(*2)を超えて送信されることになり、最大保留可能時間(*2)内で送信することができない。
【0185】
よって、図35に表わされるように、転送対象データ決定部243は、送信予測時間が最大保留可能時間未満のときは(S761でYes)、送信待ちのPDUを送信できるだけの時間があるため、送信待ちのPDUを送信することを決定することができる(S762)。
【0186】
一方、転送対象データ決定部243は、送信予測時間が最大保留可能時間以上となるとき(S761でNo)、送信待ちのPDUを最大保留時間内で送信する時間がないため、送信待ちのPDUを送信しないことを決定することができる(S764)。例えば、端末100が未送信PDUを受信する前に、ハンドオーバ元の基地局と端末100が通信できなくなり、データの欠落が生じるのを回避することができる。
【0187】
転送対象データ決定部243は、送信するか否か(S762又はS764)を決定すると送信可否処理を終了する(S763)。
【0188】
以上により送信可否決定(S76)が行われ、例えば、送信待ちのPDUについて送信可能か否かが判別される。
【0189】
図33に戻り、サービング基地局200aは送信可否決定処理(S76)を行うと、その決定に従って送信待ちのデータを端末100に送信し、又は、送信待ちのデータを送信しないようにする。図33の例では、送信待ちのシーケンス番号SN5,SN6のPDUが送信されている(S77)例が表わされている。
【0190】
次いで、サービング基地局200aはハンドオーバを確定し(S78)、ハンドオーバ要求をターゲット基地局200bに送信する(S79)。例えば、ハンドオーバ決定部241はハンドオーバ決定(S19)に従いハンドオーバ先の基地局200b(又はターゲット基地局200b)へのハンドオーバ要求を生成し、対向E−Node IF250を介してターゲット基地局200bに送信することができる。
【0191】
次いで、サービング基地局200aはデータ転送回収を行い(S20)、転送対象データを決定する(S80)。
【0192】
図37は転送対象データ決定処理の動作例を表わすフローチャートである。サービング基地局200aは転送対象データ決定処理を行うことで、転送対象データを決定することができる。
【0193】
転送対象データ決定部243は、転送対象データ決定処理を開始すると(S800)、再送状態を判別する(S801)。
【0194】
例えば、転送対象データ決定部243は、再送情報テーブル231(例えば図34)において、対象となる端末100についての「再送の有無」の項目がオンになっているとき、端末100について再送が行われたものとして「再送あり」と判別する。一方、転送対象データ決定部243は、対象となる端末100についての「再送の有無」の項目がオフになっているとき、「再送なし」と判別する。
【0195】
転送対象データ決定部243は、ハンドオーバ対象の端末100について「再送あり」と判別したとき(S801で「再送あり」)、転送対象データを「処理中のSDU」と「処理待ちのSDU」とする(S804)。
【0196】
例えば、図33の通信状況の例においてシーケンス番号SN3,SN4のPDUについてサービング基地局200aが再送を行ったときは再度再送を行う場合もある。このような場合はシーケンス番号SN3,SN4のPDUを含むSDU−A、さらに処理待ちのSDU−B,SDU−Cを転送対象データとしている。
【0197】
一方、転送対象データ決定部243は、再送状態について「再送なし」と判別したとき(S801で「再送なし」)、送信予測時間が最大保留可能時間未満となるか否かを判別する(S802)。この判別は送信可否決定処理(S76)におけるS761と同一の処理であり、例えば、送信待ちのPDUが全て送信できる程度の時間があるか否か(例えば図36(A))、或いは、送信待ちのPDUがS761の判別により全て送信されたか否かを判別している。
【0198】
従って、転送対象データ決定部243は、送信予測時間が最大保留可能時間未満のとき(S802でYes)、送信待ちのPDUは全て送信できる程度の時間がある、或いは送信待ちのPDUを全て送信した、と判別して、転送対象データを「処理待ちのSDU」とする(S803)。
【0199】
例えば、送信待ちのシーケンス番号SN5,SN6のPDUが送信可否決定処理(S76)により端末100に送信され(S77)、かつ、最大予測時間が最大保留可能時間未満であるとき(S802でYes)、SDU−B,SDU−Cが転送対象データとなる。
【0200】
一方、転送対象データ決定部243は送信予測時間が最大保留可能時間以上となるとき(S802でNo)、転送対象データを「処理中のSDU」と「処理待ちのSDU」とする(S804)。例えば、送信予測時間が最大保留可能時間以上のとき、送信待ちのPDUは端末100に送信されない(例えば図36(B))。従って、例えばデータの欠落を防止するために、シーケンス番号SN5,6のPDUを含むSDU−Aと、処理待ちのSDU−B,SDU−Cが転送対象データとなる。
【0201】
以上の転送対象データ決定処理(S80)により、サービング基地局200aは転送対象データを決定する。図33に戻り、サービング基地局200aは、転送対象データ決定処理の決定に従って転送対象データをターゲット基地局200bに送信する(S22)。
【0202】
このとき、サービング基地局200aは、第2の実施の形態と同様に、ターゲット基地局200bが端末100への送信を開始するPDUのシーケンス番号を通知するようにしてもよい(S24)。例えば、図33の例では、サービング基地局200aはシーケンス番号SN7(S802でYesのとき)、又はシーケンス番号SN5(S802でNoのとき)を通知することができる。また、例えば、図33の例においてシーケンス番号SN3,SN4について再送があったときは(S801でYes)、サービング基地局200aはシーケンス番号SN3を通知することができる。シーケンス番号の通知により、第2の実施の形態における第1の動作例と同様に重複送信や重複受信、さらにデータの欠落などを更に防止できる。
【0203】
次いで、サービング基地局200aは下り方向(基地局200a,200bから端末100への方向)のリソース割当て情報(DL allocation)を端末100に送信する(S90)。この割当て情報には、例えば、端末100のハンドオーバ先であるターゲット基地局200bの識別情報が含まれてもよい。
【0204】
そして、端末100は、ターゲット基地局200bと同期処理を行い(S91)、ターゲット基地局200bがサービング基地局となって転送対象データを受信することができる(S23)。この場合、端末100は、例えば、シーケンス番号の通知があったとき(S24)は当該シーケンス番号のPDUから受信することができ、シーケンス番号の通知がないときはSDUに含まれるPDUのうち、先頭のシーケンス番号のPDUから受信することができる。
【0205】
<第2の動作例>
次に第2の動作例について説明する。第2の動作例は、例えば送信待ちのデータがあるときにハンドオーバの決定がなされ、再送発生率などに基づいて転送対象データが決定される場合の例である。図38は本第2の動作例におけるシーケンス例を表わしている。また、図39は本第2の動作例における転送対象データ決定処理の動作例を表わすフローチャートである。
【0206】
図38に表わされるように、通信状況としては第1の動作例と同様に、サービング基地局200aはシーケンス番号SN1〜SN4のPDUを端末100に送信し、そのうちシーケンス番号SN1,SN2のPDUに対するAck信号を受信している(S11〜S73)。また、サービング基地局200aはシーケンス番号SN5,SN6の送信を行う前にハンドオーバの決定を行い(S19)、そのため、シーケンス番号SN5,SN6のPDUは送信待ちとなっている。
【0207】
このような通信状況において、サービング基地局200aは、第1の動作例と同様に、呼ごとの再送状態と送信時間を再送情報テーブル231に保持する(S75)。例えば、第1のデータ通信状況収集部221は、ハンドオーバ決定前の監視期間において、呼ごと(例えば端末100ごと)の再送の有無と送信時間を再送情報テーブル231(例えば図34)に記憶する。
【0208】
次いで、サービング基地局200aは、ハンドオーバを行うことを決定し(S19)、近隣セルごとの再送状態と再送発生率とを統計情報テーブル232に記憶する(S30)。
【0209】
第2の実施の形態と同様に、例えば、第2のデータ通信状況収集部242は、再送情報テーブル231(例えば図34)に基づいて、統計情報テーブル232(例えば図13(A))の「RLC手順の状態」(「再送あり」または「再送なし」)のカウント値を書き込む。そして、第2のデータ通信状況収集部242は、カウント値に基づいて再送発生率を計算し、統計情報テーブル232の「再送発生率」の項目に計算値を記憶する。第2のデータ通信状況収集部242は、統計情報テーブル232の「再送発生率」に基づいて品質判定を行い、「良」又は「劣」を統計情報テーブル232の「品質判定」の項目に記憶する。
【0210】
次いで、サービング基地局200aは送信可否決定を行う(S76)。送信可否決定の処理は、本第5の実施の形態における第1の動作例と同様である(例えば図35)。例えば、転送対象データ決定部243は、送信予測時間が最大保留可能時間未満であれば(図35のS761でYes)、送信待ちのPDUを端末100に送信できることを決定する。一方、転送対象データ決定部243は、送信予測時間が最大保留可能時間以上となるとき(S761でNo)、送信待ちのPDUを送信しないことを決定する(S764)。
【0211】
図38に戻り、サービング基地局200aは、送信可否決定において送信できると判別したときは、送信待ちのPDUを端末100に送信する(S77)。
【0212】
次いで、サービング基地局200aはハンドオーバを確定し(S78)、端末100に対するハンドオーバ要求をターゲット基地局200bに送信する(S79)。ターゲット基地局200bはハンドオーバ要求に対する応答をサービング基地局200aに送信することができる。
【0213】
次いで、サービング基地局200aはデータ転送の回収を行い(S20)、無線品質状態に基づいて転送対象データを決定する(S81)。
【0214】
図39は、本第2の動作例における転送対象データ決定処理の動作例を表わすフローチャートである。例えば、転送対象データ決定部243がメモリ部230に記憶された統計情報テーブル232を用いて転送対象データを決定する。
【0215】
転送対象データ決定部243は、転送対象データ決定処理を開始すると(S810)、ハンドオーバ先セルの無線品質を判定する(S811)。転送対象データ決定部243は、統計情報テーブル232におけるターゲット基地局200bについての「品質判定」を読み出して判定する。
【0216】
転送対象データ決定部243は、ターゲット基地局200bの「品質判定」が「劣」(S811で「劣」)のとき、転送対象データを「処理中のSDU」と「処理待ちのSDU」とする(S814)。
【0217】
例えば、シーケンス番号SN3,SN4のPDUについては端末100からAck信号の受信はないものの無線品質は「劣」のため、かかるシーケンス番号のPDUは端末100において正しく受信した可能性は、無線品質が「良」の場合と比較して低くなる。よって、このような場合、転送対象データ決定部243は転送対象データを「処理中のSDU」と「処理待ちのSDU」としている。
【0218】
一方、転送対象データ決定部243は、ターゲット基地局200bの「品質判定」が「良」(S811で「良」)のとき、送信予測時間が最大保留可能時間未満か否かを判別する(S812)。
【0219】
この判別も第1の動作例における判別(例えば図37のS802)と同様に、例えば、送信待ちのPDUについて送信可能か否か(又は送信待ちのPDUについて送信できたか否か)を判別している。本第2の動作例においても、送信可否決定(S76)において送信待ちのPDUが送信可能と判別されたとき、送信待ちのPDUの送信が行われており(S77)、送信待ちのPDUの送信が行われたのであれば、かかるPDUをターゲット基地局200bへの転送しないことができる。
【0220】
よって、転送対象データ決定部243は、送信予測時間が最大保留可能時間未満のとき(S812でYes)、転送対象データを「処理待ちのSDU」とする(S813)。例えば、送信待ちのシーケンス番号SN5,SN6のPDUについて送信可能であれば(又は送信できたのであれば)、転送対象データ決定部243は「処理待ちのSDU」であるSDU−B,SDU−Cを転送対象データとして判定することができる。
【0221】
一方、転送対象データ決定部243は、送信予測時間が最大保留可能時間以上となるとき(812でNo)、転送対象データを「処理中のSDU」と「処理待ちのSDU」とする(S814)。例えば、処理待ちのシーケンス番号SN5,SN6のPDUについて送信できないのであれば(又は送信しなかったのであれば)、転送対象データ決定部243は「処理中のSDU」であるSDU−Aと、「処理待ちのSDU」であるSDU−B,SDU−Cを転送対象データと判定する。以上よりサービング基地局200aは転送対象データを決定することができる。
【0222】
図38に戻り、サービング基地局200aは、決定した転送対象データをターゲット基地局200bに転送する(S22)。この場合、第1の動作例と同様に、サービング基地局200aはターゲット基地局200bから送信を開始するPDUのシーケンス番号を通知するようにしてもよい(S24)。
【0223】
次いで、サービング基地局200aは下り方向の割当て情報(DL allocation)を端末100に送信し(S90)、端末100はハンドオーバ先であるターゲット基地局200bと同期処理を行う(S91)。そして、端末100はサービング基地局となった基地局200bから転送データを受信することができる(S23)。
【0224】
<第3の動作例>
次に、本第5の実施の形態における第3の動作例について説明する。第3の動作例は、例えば、送信待ちのデータがあるときにハンドオーバの決定がなされ、さらに電波状況などに基づいて転送対象データが決定される場合の例である。例えば、図39と図40が本第3の動作例におけるシーケンス例などを表わしている。
【0225】
図40は本第3の動作例におけるシーケンス例を表わす図である。本第3の動作例においても、サービング基地局200aはシーケンス番号SN1〜SN4のPDUを端末100に送信し、このうちシーケンス番号SN1,SN2のPDUについてのAck信号を受信している(S11〜S73)。また、サービング基地局200aはシーケンス番号SN5,SN6の送信を行う前にハンドオーバの決定を行い(S19)、そのため、シーケンス番号SN5,SN6のPDUは送信待ちとなっている。
【0226】
このような通信状況においてサービング基地局200aは一定期間の電波状況を保持する(S35)。電波状況の保持は第2の実施の形態における第3の動作例と同様で、例えば、無線電波状況通知部211は端末100から受信したAck信号の受信電力や受信電力に対するノイズなどを無線品質として測定し、これを電波状況テーブル233に記憶する。図17(A)は電波状況テーブル233の例を表わしている。第2の実施の形態における第3の動作例と同様に、無線電波状況通知部211は無線品質の値を、電波状況テーブル233における「電波状況」の項目に記憶し、閾値判定などにより(例えば図17(B))、「品質判定」の項目に「良」又は「劣」を記憶する。「電波状況」に記憶される値は、第2の実施の形態における第3の動作例と同様に複数測定したものの平均値でもよいし、最新の値が記憶されるようにしてもよいし、ある期間における最大値や最小値などでもよい。
【0227】
サービング基地局200aは、ハンドオーバ決定(S19)後、送信可否決定を行う(S76)。例えば、第1の動作例などと同様に、転送対象データ決定部243又はハンドオーバ決定部241は、図35に示すフローチャートにおいて送信予測時間が最大保留可能時間未満か否か(S761)により、送信待ちのデータを送信できるか否かを判定する。
【0228】
図40に戻り、サービング基地局200aは、送信可否決定(S76)により送信待ちのPDUについて送信できると判定したときは、送信待ちのPDUを送信することができる(S77)。図40の例では、サービング基地局200aは、送信待ちのシーケンス番号SN5,SN6のPDUを送信することができると判定して、当該PDUを送信している例を表わしている。一方、サービング基地局200aは、送信待ちのデータについて送信できないと判定したときは送信待ちのデータを送信することはしない。
【0229】
次いで、サービング基地局200aは、ハンドオーバを確定し(S78)、ハンドオーバ要求をターゲット基地局200bに送信する(S79)。
【0230】
次いで、サービング基地局200aは、データ転送の回収を行い(S20)、無線品質状態に基づいて転送対象データを決定する(S82)。
【0231】
転送対象データ決定処理は、例えば、本第5の実施の形態における第2の動作例と同様に、図39に表わされたフローチャートにより実施できる。例えば、転送対象データ決定部243がメモリ部230に記憶された電波状況テーブル233を用いて転送対象データを決定する。
【0232】
転送対象データ決定部243は、転送対象データ決定処理を開始すると(S810)、ハンドオーバ先セルの無線品質を判定する(S811)。転送対象データ決定部243は、例えば、第2の実施の形態における第3の動作例と同様に、電波状況テーブル233におけるターゲット基地局200bについての「品質判定」を読み出して判定することができる。
【0233】
転送対象データ決定部243は、ハンドオーバ先セルの無線品質が「劣」(S811で「劣」)のとき、転送対象データを「処理中のSDU」と「処理待ちのSDU」とする(S814)。図33の例では、無線品質が「劣」のとき、転送対象データとして「処理中のSDU」はSDU−Aとなり、「処理待ちのSDU」はSDU−B、SDU−Cとなる。
【0234】
一方、転送対象データ決定部243は、ハンドオーバ先セルの無線品質が「良」(S811で「良」)のとき、送信予測時間が最大保留可能時間未満か否かを判定する(S812)。第2の動作例と同様に、例えば、送信待ちのPDUについて送信可能か否か(又は送信待ちのPDUについて送信できたか否か)を判別している。本第3の動作例においても、送信可否決定(S76)において送信待ちのPDUが送信可能と判別されたとき、送信待ちのPDUの送信が行われており(S76)、送信待ちのPDUの送信が行われたのであれば、かかるPDUをターゲット基地局200bへの転送しないようにすることができる。
【0235】
よって、転送対象データ決定部243は、送信予測時間が最大保留可能時間未満のとき(S812でYes)、転送対象データを「処理待ちのSDU」とする(S813)。例えば、送信待ちのシーケンス番号SN5,SN6のPDUについて送信可能であれば(又は送信できたのであれば)、転送対象データ決定部243は「処理待ちのSDU」であるSDU−B,SDU−Cを転送対象データとして判定することができる。
【0236】
一方、転送対象データ決定部243は、送信予測時間が最大保留可能時間以上となるとき(812でNo)、転送対象データを「処理中のSDU」と「処理待ちのSDU」とする(S814)。例えば、処理待ちのシーケンス番号SN5,SN6のPDUについて送信できないのであれば(又は送信しなかったのであれば)、転送対象データ決定部243は「処理中のSDU」であるSDU−Aと、「処理待ちのSDU」であるSDU−B,SDU−Cを転送対象データと判定する。以上よりサービング基地局200aは転送対象データを決定することができる。
【0237】
図40に戻り、サービング基地局200aは転送対象データをターゲット基地局200bに転送する(S22)。この場合、第1の動作例などと同様に、サービング基地局200aはターゲット基地局200bにおいて送信を開始するPDUのシーケンス番号を通知するようにしてもよい(S24)。
【0238】
次いで、サービング基地局200aは下り方向の割当て情報(DL allocation)を端末100に送信し(S90)、端末100はハンドオーバ先であるターゲット基地局200bと同期処理を行う(S91)。そして、端末100はサービング基地局となった基地局200bから転送データを受信することができる(S23)。
【0239】
<第4の動作例>
次に第4の動作例、すなわち第1〜第3の動作例の組み合わせについて説明する。最初に第1の動作例(呼ごとの再送状態)と第2の動作例(再送発生率による無線品質)の組み合わせについて説明し、次に、第1の動作例と第3の動作例(電波状況による無線品質)の組み合わせについて説明し、最後に、第2の動作例と第3の動作例の組み合わせについて説明する。
【0240】
<1.第1の動作例と第2の動作例の組み合わせ>
最初に、本第5の実施の形態における第1の動作例と第2の動作例との組み合わせの例について説明する。図41〜図43は本動作例におけるシーケンス例などを表わす図である。第1の動作例や第2の動作例と同一の処理が行われる部分については同一の符号が付されている。
【0241】
このうち、図41は本動作例におけるシーケンス例を表わす図である。通信状況は、第1の動作例などと同様に、サービング基地局200aはシーケンス番号SN1〜SN4のPDUを端末100に送信し、このうち、シーケンス番号SN1,SN2のPDUに対するAck信号を受信している。また、サービング基地局200aはシーケンス番号SN5,SN6の送信を行う前にハンドオーバの決定を行い(S19)、そのため、シーケンス番号SN5,SN6のPDUは送信待ちとなっている。
【0242】
このような通信状況において、サービング基地局200aは、第1の動作例と同様に、呼ごとの再送状態と送信時間を再送情報テーブル231(例えば図34)に保持する(S75)。例えば、第1のデータ通信状況収集部221が再送状態と送信時間を再送情報テーブル231に記憶する。
【0243】
そして、サービング基地局200aは、ハンドオーバを行うことを決定し(S19)、第2の動作例と同様に、近隣セルごとの再送状態と再送発生率とを統計情報テーブル232に記憶する(S30)。例えば、第2のデータ通信状況収集部242は、再送情報テーブル231に基づいて統計情報テーブル232(例えば図13(A))の各項目に値などを記憶する。
【0244】
次いで、サービング基地局200aは、送信待ちのPDUについての送信可否を決定する(S76)。例えば、第5の実施の形態における第1の動作例などと同様に、ハンドオーバ決定部241又は転送対象データ決定部243は、送信可否決定処理(例えば図35)を行い、送信予測時間が最大保留可能時間未満か否か(例えば図35のS761)を判別することで送信可否を決定する。
【0245】
サービング基地局200aは、送信可否決定(S76)により送信待ちのPDUについて送信できると判別したときは送信待ちのPDUを送信する(S77)。一方、サービング基地局200aは、送信可否決定(S76)により送信待ちのPDUについて送信できないと判別したときは送信しないことになる。
【0246】
次いで、サービング基地局200aは、ハンドオーバを確定し(S78)、ハンドオーバ要求をターゲット基地局200bに送信する(S79)。
【0247】
次いで、サービング基地局200aは、データ転送の回収を行い(S20)、無線品質状態に基づいて転送対象データを決定する(S83)。
【0248】
図42は、本動作例における転送対象データ決定処理の例を表わすフローチャートである。例えば、転送対象データ決定部243がメモリ部230に記憶された再送情報テーブル231(例えば図34)と統計情報テーブル232(例えば図13(A))を用いて転送対象データを決定することができる。
【0249】
転送対象データ決定部243は、転送対象データ決定処理を開始すると(S830)、再送状態を判別する(S831)。例えば、本第5の実施の形態における第1の動作例と同様に、転送対象データ決定部243は再送情報テーブル231に記憶された再送の有無に基づいて判別することができる。
【0250】
転送対象データ決定部243は、ハンドオーバ対象の端末100について「再送あり」と判別したとき(S831で「再送あり」)、転送対象データを「処理中のSDU」と「処理待ちのSDU」とする(S835)。例えば、図33の例においてシーケンス番号SN3,SN4のPDUについてサービング基地局200aが再送を行ったときは、当該シーケンス番号のPDUを含むSDU−Aを「処理中のSDU」、SDU−B,SDU−Cを「処理待ちのSDU」として転送対象データを判定することができる。
【0251】
一方、転送対象データ決定部243は、ハンドオーバ対象の端末100について「再送なし」と判別したとき(S831で「再送なし」)、ハンドオーバ先エリアにおける無線品質を判別する(S832)。無線品質の判別は、例えば、転送対象データ決定部243が統計情報テーブル232におけるターゲット基地局200bについての「品質判定」の項目を読み出して判定することができる。
【0252】
転送対象データ決定部243は、ハンドオーバ先エリアの無線品質が「劣」のとき(S832で「劣」のとき)、転送対象データを「処理中のSDU」と「処理待ちのSDU」とする(S835)。
【0253】
例えば、サービング基地局200aは、PDUについて再送を行っていないとき(S831で「再送なし」)でも、ターゲット基地局200bに対する無線品質が「劣」のとき(S833で「劣」)、端末100が処理中のPDUを正しく受信した可能性は無線品質が「良」の場合と比較して低い。よって、このような場合、転送対象データ決定部243は転送対象データを「処理中のSDU」と「処理待ちのSDU」としている。
【0254】
一方、転送対象データ決定部243は、ハンドオーバ先エリアの無線品質が「良」のとき(S832で「良」のとき)、送信予測時間が最大保留可能時間未満か否かを判別する(S833)。この判別も第1の動作例などにおける判別(例えば図37のS802)と同様に、例えば、送信待ちのPDUについて送信可能か否か(又は送信待ちのPDUについて送信できたか否か)を判別している。
【0255】
そして、転送対象データ決定部243は、送信予測時間が最大保留可能時間未満のとき(S833でYes)、転送対象データを「処理待ちのSDU」とする(S834)。
【0256】
例えば、再送が行われず(S831で「再送なし」)、無線品質が「良」のとき(S832で「良」)、かつ、送信待ちのPDUの送信ができるとき(又は送信したとき)(S833でYes)は、端末100において送信待ちPDUを正しく受信した可能性は無線品質が「劣」の場合よりも高い。このような場合は、転送対象データ決定部243は、送信待ちのPDUを含むSDU(又は「処理中のSDU」)を転送対象データに含めないようにすることができる。送信待ちのPDUを含むSDUを転送対象データに含めないことで、送信待ちのPDUが送信された(S76)にも拘わらず、ターゲット基地局200bから端末100に送信待ちのPDUが送信される事態を防止することができ、重複送信や重複受信を防止することができる。図33の例において、再送が行われず、ターゲット基地局200bに対する無線品質が「良」で、かつ、送信待ちのシーケンス番号SN3,SN4のPDUについて送信されたとき(S77)、転送対象データは「処理待ちのSDU」であるSDU−B,SDU−Cとなる。
【0257】
一方、転送対象データ決定部243は、送信予測時間が最大保留可能時間以上となるとき(S833でNo)、転送対象データを「処理中のSDU」と「処理待ちのSDU」とする(S835)。
【0258】
例えば、再送が行われず(S831で「再送なし」)、無線品質が「良」のとき(S832で「良」)、かつ、送信待ちのPDUの送信ができないとき(S833でYes)は、サービング基地局200aから端末100へ送信待ちPDUの送信が行われていないことになる。このような場合、端末100においてデータの欠落を防止するため、転送対象データ決定部243は、送信待ちのPDUを含む「処理中のSDU」と、「処理待ちのSDU」を転送対象データとしている。
【0259】
以上により転送対象データ決定処理(図41のS83)が行われ、次いで、サービング基地局200aは転送対象データ決定処理で決定した転送対象データを転送する(S22)。この場合、第1の動作例などと同様に、サービング基地局200aは送信を開始するPDUのシーケンス番号を通知するようにしてもよい(S24)。
【0260】
図43は、図41の例における転送対象データの例を表わす図である。図43に表わされるように、再送状態が「再送なし」、無線品質が「良」、かつ、未送信PDUがないとき(送信待ちPDUについて送信された(S77)又は送信可能なとき)、シーケンス番号SN7が通知される。一方、再送状態が「再送なし」、無線品質が「良」、かつ、未送信PDUがあるとき(送信待ちPDUについて送信されていない又は送信できないとき)、送信待ちのPDUのシーケンス番号SN5が通知される。それ以外のときは、Ack信号の受信が行われていない送信中のPDUのシーケンス番号SN3が通知される。
【0261】
次いで、サービング基地局200aは下り方向の割当て情報(AL allocation)を端末100に送信し(S90)、端末100はターゲット基地局200bと同期処理を行い(S91)、転送データを受信することができる(S23)。
【0262】
<2.第1の動作例と第3の動作例の組み合わせ>
次に、第4の動作例として、第1の動作例(呼ごとの再送状態)と第3の動作例(電波状況による無線品質)を組み合わせた動作例について説明する。図44は本動作例におけるシーケンス例を表わす図である。
【0263】
サービング基地局200aは、第1の動作例と同様に、呼ごとの再送状態と送信時間を再送情報テーブル231(例えば図34)に保持する(S75)。また、サービング基地局200aは、第3の動作例と同様に、無線電波状況を電波状況テーブル233(例えば図17(A))に保持する(S35)。
【0264】
次いで、サービング基地局200aは、ハンドオーバを行うことを決定し(S19)、送信可否決定を行う(S76)。サービング基地局200aは、送信可否決定(S76、例えば図35)により、送信待ちのPDUについて送信できると判定したときは送信待ちのPDUを端末100に送信することができる(S77)。一方、サービング基地局200aは、送信可否決定(S76)により、送信待ちのPDUについて送信できないと判定したときは送信待ちのPDUの送信は行わない。
【0265】
次いで、サービング基地局200aは、ハンドオーバを確定し(S78)、ハンドオーバ要求をターゲット基地局200bに送信する(S79)。
【0266】
次いで、サービング基地局200aは、データ転送の回収を行い(S20)、無線品質状態に基づいて転送対象データを決定する(S84)。本動作例における転送対象データ決定処理は、例えば、第1の動作例と第2の動作例の組み合わせと同様に図42により行うことができる。この場合、図42におけるハンドオーバ先エリアの無線品質は、電波状況テーブル233の「無線品質」の項目に記憶された「良」又は「劣」により行われる。
【0267】
本動作例における転送対象データ決定処理も、再送状態が「再送なし」(S831で「再送なし」)、無線品質が「良」(S832で「良」)、かつ、送信待ちのPDUの送信ができるとき(又は送信したとき)(S833でYes)、「処理待ちのSDU」が転送対象データとなる(S834)。これにより、例えば、重複送信と重複受信を防止することができる。
【0268】
一方、再送状態、無線品質、及び送信待ちのPDUの送信について、それ以外のとき(S831で「再送あり」、S832で「劣」、又はS833でNo)は、「処理中のSDU」と「処理待ちのSDU」が転送対象データとなる(S835)。これにより、例えば、データの欠落を防止することができる。
【0269】
図44に戻り、サービング基地局200aは、転送対象データ決定処理(S84)において決定した転送対象データをターゲット基地局200bに送信する(S22)。この場合、サービング基地局200aはシーケンス番号を通知することもできる(S24)。図43は、第1の動作例と第2の動作例とを組み合わせた場合の例と同様に、本動作例における通知するシーケンス番号の例を表わしている。
【0270】
以降、サービング基地局200aは割当て情報(DL allocation)の送信(S90)を行い、端末100は同期処理を行い(S91)、サービング基地局となった基地局200bから転送対象データを受信することができる(S23)。
【0271】
<3.第2の動作例と第3の動作例の組み合わせ>
次に、第2の動作例(再送発生率による無線品質)と第3の動作例(電波状況による無線品質)の組み合わせについて説明する。図45及び図46は本動作におけるシーケンス例をそれぞれ表わしている。
【0272】
サービング基地局200aは、第1又は第2の動作例と同様に、呼ごとの再送状態と送信時間を再送情報テーブル231(例えば図34)に保持する(S75)。また、サービング基地局200aは、第3の動作例と同様に、無線電波状況を電波状況テーブル233(例えば図17(A))に保持する(S35)。
【0273】
サービング基地局200aは、ハンドオーバを行うことを決定すると(S19)、第2の動作例と同様に、近隣セルごとの再送状態と再送発生率とを統計情報テーブル232に記憶する(S30)。例えば、第2のデータ通信状況収集部242は、再送情報テーブル231に基づいて統計情報テーブル232(例えば図13(A))の各項目に値などを記憶する。
【0274】
次いで、サービング基地局200aは、送信待ちのPDUについて送信可否を決定し(S76)、送信可否決定(S76)に従って送信待ちのPDUについて送信できるときは送信を行い(S77)、送信できないときは送信を行わないようにする。
【0275】
次いで、サービング基地局200aは、ハンドオーバを確定し(S78)、ハンドオーバ要求をターゲット基地局200bに送信する(S79)。
【0276】
次いで、サービング基地局200aは、データ転送の回収を行い(S20)、転送対象データを決定する(S85)。本動作例における転送対象データ決定処理は、第4の実施の形態と同様に、例えば、統計情報テーブル232の「無線品質」と電波状況テーブル233の「無線品質」の2つの無線品質の組み合わせから最終的な「無線品質」を判別する(例えば図32)。そして、判別した「無線品質」が転送対象データ決定処理(例えば図39)における「ハンドオーバ先セルの無線品質」(図39のS811)に適用されることで処理が行われる。
【0277】
例えば、図32に表わされるように、統計情報テーブル232の「無線品質」(図32では「再送発生率による無線品質」)が「良」、かつ、電波状況テーブル233の「無線品質」(図32では「電波状況による無線品質」)が「良」のとき、最終的な無線品質は「良」とすることができる。この場合、転送対象データ決定処理(例えば図39)においては、ハンドオーバ先セルの無線品質が「良」と判別される(S811で「良」)。一方、2つのテーブル232,233の「無線品質」がいずれも「良」でないときは、最終的な無線品質は「劣」と判別されて(例えば図32)、ハンドオーバ先セルの無線品質は「劣」と判別される(S811で「劣」)。
【0278】
以降の動作例は、第5の実施の形態と同様に、転送対象データ決定処理(例えば図39)により転送対象データが決定されることができる。
【0279】
図45に戻り、サービング基地局200aは転送対象データを決定すると(S85)、データの転送を行い(図46のS22)、シーケンス番号の通知も行うこともできる(S24)。以降は第3の動作例などと同様に実施することができる。
【0280】
[第6の実施の形態]
次に第6の実施の形態について説明する。第5の実施の形態は、送信待ちのPDUがある場合において、送信待ちのPDUの送信後に転送対象データが決定される例について説明した。本第6の実施の形態では、先に転送対象データが決定され、その後、送信待ちのPDUが送信される例について説明する。図47から図55は本第6の実施の形態におけるシーケンス例などをそれぞれ表わす図である。
【0281】
なお、無線通信システム10、基地局200a,200b、及び端末100の各構成例は、第2の実施の形態などと同様であり、例えば図2〜図4にそれぞれ表わされている。また、通信状況やSDU、PDUの構成例なども第2の実施の形態と同様である。
【0282】
本第6の実施の形態における動作例についても、第2の実施の形態や第5の実施の形態と同様に以下の4つのパターンがある。
【0283】
1)呼ごとに保持した再送状態に基づいて転送対象データを決定する場合、
2)近隣セルごとに保持した再送発生率などのデータ通信状況に基づいて転送対象データを決定する場合、
3)サービング基地局200aと端末100との間の無線電波状況に基づいて転送対象データを決定する場合、
4)上記1)から3)の組み合わせ。
【0284】
以下において、第2の実施の形態と同様に4つの動作例(第1〜第4の動作例)について順次説明する。
【0285】
<第1の動作例>
第1の動作例としては、送信待ちのデータがあるときにハンドオーバの決定がなされ、さらに、再送状態に基づいて転送対象データが決定される場合の例である。図47は本第6の実施の形態における第1の動作例のシーケンス例を表わす図である。第5の実施の形態における第1の動作例などと同一の処理について同一の符号が付されている。
【0286】
本第6の実施の形態では、サービング基地局200aは送信可否決定を行い(S76)、転送対象データを決定する(S80)。例えば、サービング基地局200aは、送信可否決定処理と転送対象データ決定処理について第5の実施の形態と同一の処理(例えば、それぞれ図35と図37)を行うことができる。
【0287】
そして、サービング基地局200aは、転送対象データ決定処理(S80)で決定した転送対象データを転送し(S22)、その後、送信可否決定(S76)により送信待ちのPDUを送信することを決定したときは送信待ちのPDUの送信を行う(S77)。
【0288】
ここで、送信可否決定処理(S76、例えば図35)に関して、転送対象データ決定部243(又はハンドオーバ決定部241)は送信予測時間が最大保留可能時間未満か否かを判別しているが、最大保留可能時間については第5の実施の形態と異なるものとなる。例えば、図36(A)又は図36(B)において、最大保留可能時間(*2)はハンドオーバ決定(S19)後、ハンドオーバを確定する(S78)直前である点は第5の実施の形態と同様であるが、ハンドオーバの確定は下り方向の割当て情報の送信により確定する。下り方向の割当て情報には、例えば、ハンドオーバ先の基地局に関する識別情報などが含まれているため、本第6の実施の形態において、サービング基地局200aはこの割当て情報の送信によりハンドオーバを確定するようにしている。
【0289】
最大保留可能時間は、例えば、第2の実施の形態と同様に、メモリ部230などに記憶されて送信可否決定処理(S76)や転送対象データ決定処理(S80)などにおいて適宜読み出されることができる。
【0290】
また、送信予測時間(*1)は、例えば、第5の実施の形態と同様に、ハンドオーバ決定後から送信待ちのPDUを送信し終えるまでの時間であり、転送対象データ決定部243などにより送信待ちのPDUの個数や送信時間に基づいて計算されることができる。
【0291】
送信可否決定処理(例えば図35)は、最大保留可能時間が異なる時間となること以外は本第6の実施の形態においても第5の実施の形態と同様に実施することができる。また、転送対象データ決定処理(例えば図37)も、最大保留可能時間が異なる時間となること以外は第5の実施の形態と同様に実施することができる。
【0292】
なお、転送対象データとしては、例えば、再送が発生したとき(図37のS801で「再送あり」)はシーケンス番号SN3のPDUを含むSDU−Aとすることができる。また、再送が発生してないときでも送信待ちのデータを送信できないとき(図37のS802でNo)はシーケンス番号SN5のPDUを含むSDU−Aが転送対象データとすることができる。さらに、再送が発生していないときで送信待ちのデータを送信できるとき(図37のS802でYes)、シーケンス番号SN7のPDUを含むSDU−Bが転送対象データとすることができる。サービング基地局200aは、このように判断されたシーケンス番号をターゲット基地局200bに通知することもできる(S24)。
【0293】
次いで、サービング基地局200aはハンドオーバを確定し(S78)、下り方向の割当て方法を端末100に送信する(S90)。以降は第5の実施の形態と同様である。
【0294】
なお、本第1の動作例において、サービング基地局200aはハンドオーバ決定後(S19)、データ転送の回収を行い(S20)、その後、ハンドオーバ要求をターゲット基地局200bに送信している。ハンドオーバ要求の送信は、例えば、ハンドオーバ決定(S19)とデータ転送回収(S20)の間でもよい。
【0295】
<第2の動作例と第3の動作例>
本第6の実施の形態において、上述した第1の動作例において説明したように、転送対象データ決定処理が行われ(図47のS80)、その後、送信待ちのデータが送信される(S77)ことが第5の実施の形態と異なり、それ以外の処理についてほぼ同様である。
【0296】
図48及び図49は、例えば第2の動作例におけるシーケンス例をそれぞれ表わす図である。サービング基地局200aは、第5の実施の形態における第2の動作例と同様に、再送状態(又は再送の有無)と送信時間を再送情報テーブル231に保持し(S75)、再送発生率などを計算して、統計情報テーブル232に記憶する(S30)。
【0297】
そして、サービング基地局200aは、送信待ちのPDUについて送信可否を決定し(S76)、統計情報テーブル232に基づいて転送対象データを決定する(S81)。送信可否決定処理と転送対象データ決定処理も、第5の実施の形態における第2の動作例と同様に実施することができる(例えば、それぞれ図35と図39)。
【0298】
ただし、第1の動作例と同様に、サービング基地局200aがハンドオーバを確定する(S78)のは下り方向の割当て情報を送信する直前であり、最大保留可能時間が第5の実施の形態とは異なる時間となる。
【0299】
そして、サービング基地局200aは、転送対象データをターゲット基地局200bに送信し(S22)、送信待ちのPDUを送信できるときは送信する(S77)。次いで、サービング基地局200aはハンドオーバを確定し(図49のS78)、下り方向の割当て情報(DL allocation)を端末100に送信する。以降は本第6の実施の形態における第1の動作例を同一の処理が行われる。
【0300】
次に、第3の動作例について説明する。図50は第3の動作例におけるシーケンス例を表わす図である。サービング基地局200aは、電波状況を電波状況テーブル233に保持し(S35)、送信可否を決定した後(S76)、保持した電波状況テーブル233に基づいて転送対象データを決定する(S82)。
【0301】
そして、サービング基地局200aは転送対象データをターゲット基地局200bに送信し、送信待ちのPDUを送信できるときは送信する(S77)。次いで、サービング基地局200aはハンドオーバを確定し(S78)、下り方法の割当て情報(DL allocation)を端末100に送信する(S90)。以降は本第6の実施の形態における第1の動作例と同一の処理が行われる。
【0302】
<第4の動作例>
次に、第1から第3の動作例の各動作例について組み合わせた動作例について説明する。それぞれの場合についても、転送対象データ決定処理が行われ(例えば図51のS83)、その後、送信待ちのデータが送信される(S77)ことが第5の実施の形態と異なり、それ以外の処理についてほぼ同様である。
【0303】
図51及び図52は第1の動作例(呼ごとの再送状態)と第2の動作例(再送発生率による無線品質)とを組み合わせた場合のシーケンス例を表わす図である。サービング基地局200aは、第5の実施の形態における第4の動作例と同様に、再送状態(又は再送の有無)と送信時間を再送情報テーブル231に保持し(S75)、再送発生率などを計算して、統計情報テーブル232に記憶する(S30)。
【0304】
そして、サービング基地局200aは、送信待ちのPDUについて送信可否を決定し(S76)、再送状態と無線品質などから転送対象データを決定する(S83)。図42は、例えは本第4の動作例における転送対象データ決定処理のシーケンス例を表わしており、最大保留可能時間が第5の実施の形態における場合と異なること以外は、第5の実施の形態と同様に実施することができる。
【0305】
転送対象データを決定後、サービング基地局200aは、転送対象データをターゲット基地局200bに送信し(S22)、送信可否決定(S76)により送信待ちのPDUについて送信できることを決定したときは当該PDUを端末100に送信する(S77)。
【0306】
次いで、サービング基地局200aはハンドオーバを確定し(図52のS78)、下り方向の割当て情報(DL allocation)を端末100に送信する(S90)。以降は本第6の実施の形態における第1の動作例と同一の処理が行われる。
【0307】
図53は第1の動作例(呼ごとの再送状態)と第3の動作例(電波状況による無線品質)を組み合わせた場合のシーケンス例を表わす図である。サービング基地局200aは、第5の実施の形態における第4の動作例と同様に、再送状態(又は再送の有無)と送信時間を再送情報テーブル231に保持し(S75)、電波状況を電波状況テーブル233に保持する(S35)。
【0308】
そして、サービング基地局200aは、送信待ちのPDUについて送信可否を決定し(S76)、再送情報テーブル231と電波状況テーブル233など基づいて転送対象データを決定する(S84)。転送対象データ決定処理は、第5の実施の形態における第4の動作例と同様に実施することができる(例えば図42)。
【0309】
転送対象データ決定後、サービング基地局200aは、転送対象データをターゲット基地局200bに送信し(S22)、送信可否決定(S76)により送信待ちのPDUについて送信できることを決定したときは当該PDUを端末100に送信する(S77)。次いで、サービング基地局200aはハンドオーバを確定し(S78)、下り方向の割り当て情報(DL allocation)を端末100に送信する(S90)。以降は第6の実施のけいたいにおける第1の動作例と同一の処理が行われる。
【0310】
図54及び図55は第2の動作例と第3の動作例を組み合わせた場合のシーケンス例を表わす図である。サービング基地局200aは、第5の実施の形態における第4の動作例と同様に、再送状態(又は再送の有無)と送信時間を再送情報テーブル231に保持し(S75)、電波状況を電波状況テーブル233に保持する(S35)。また、サービング基地局200aは、再送情報テーブル231に基づいて、再送発生率を計算して、再送状態や再送発生率などを統計情報テーブル232に保持する(S30)。
【0311】
そして、サービング基地局200aは、送信待ちのPDUについて送信可否を決定し(S76)、統計情報テーブル232と電波状況テーブル233に基づいて転送対象データを決定する(S65)。以降は本第6の実施の形態における第1の動作例と同一の処理が行われる。
【0312】
以上第6の実施の形態について第1から第4の動作例について説明したが、本第6の実施の形態におけるサービング基地局200aは、第5の実施の形態と同様に、送信待ちのデータがある場合において送信できる状態のとき、送信待ちのデータを端末100に送信している。そして、サービング基地局200aは、送信待ちのデータをターゲット基地局200bに転送しないようにしている。
【0313】
よって、ターゲット基地局200bから端末100に送信待ちのデータ(例えばシーケンス番号SN5〜SN6のPDU)が送信されることがなく、ターゲット基地局200bは送信待ちのデータをサービング基地局200aと重複して端末100に送信することがなくなる。また、この場合、端末100は、2つの基地局200a,200bから送信待ちのデータ(例えばシーケンス番号SN5〜SN6)を受信することがなくなり、重複受信することがない。
【0314】
さらに、送信待ちのデータ(例えばシーケンス番号SN5〜SN6)はサービング基地局200aから送信されるため(例えばS77)、送信待ちのデータが送信されずにデータの欠落が生じる事態が回避されることができる。
【0315】
[第7の実施の形態]
上述した第2の実施の形態では、
1)第1の動作例として、例えば、サービング基地局200aが呼ごとに保持した再送状態(再送の有無)に基づいて転送対象データを決定する例について説明した。
【0316】
2)また、第2の動作例として、例えば、サービング基地局200aが近隣セルごとに保持した再送発生率などのデータ通信状況に基づいて転送対象データを決定する例について説明した。
【0317】
3)さらに、第3の動作例として、例えば、サービング基地局200a(例えばハンドオーバ元の基地局)と端末100との間の無線電波状況に基づいて転送対象データを決定する例について説明した。
【0318】
そして、第2の実施の形態では、さらに、第1の動作例と第2の動作例の組み合わせの例と、第1の動作例と第3の動作例の組み合わせの例についても説明した。
【0319】
また、第4の実施の形態では、さらに、第2の動作例と第3の動作例の組み合わせについても説明した。
【0320】
本第7の実施の形態では、第1の動作例と第2の動作例と第3の動作例の組み合わせの例について説明する。第7の実施の形態のシーケンスは、例えば、第4の実施の形態で説明した図31により実施することができる。
【0321】
すなわち、サービング基地局200aは、第4の実施の形態と同様に、呼ごとの再送状態を再送情報テーブル231に保持する(S18)。図6は、例えば、再送情報テーブル231の例を表わしている。
【0322】
また、サービング基地局200aは、第4の実施の形態と同様に、端末100又はサービング基地局200aで測定された無線品質を電波状況として電波状況テーブル233に保持する(S35)。図17(A)は、例えば、電波状況テーブル233の例を表わしている。
【0323】
さらに、サービング基地局200aは、第4の実施の形態と同様に、近隣セルごとの再送状態と再送発生率とを統計情報テーブル232に記憶する(S30)。図13(A)は、例えば、統計情報テーブル232の例を表わしている。
【0324】
そして、サービング基地局200aは、これら保持した結果から無線品質を判定し、転送対象データを判断する(S65)。
【0325】
図56は、呼ごとの再送状態、電波状況、近隣セルごとの再送状態と再送発生率の3つの組み合わせにより「無線品質」がどのように判断されるかの判断例を表わしている。例えば、再送情報テーブル231に保持された呼ごとの再送状態が、図56における「呼ごとの再送状態」に相当する。また、統計情報テーブル232に保持された再送発生率による無線品質が、図56における「再送発生率による無線品質」に相当する。さらに、電波状況テーブル233に保持された電波状況による無線品質が、図56における「電波状況における無線品質」に相当する。
【0326】
例えば、サービング基地局200aの転送対象データ決定部243は、メモリ部230に記憶された3つのテーブル231,232,233から呼ごとの再送状態や、再送発生率による無線品質、電波状況による無線品質をそれぞれ読み出す。そして、転送対象データ決定部243は、例えば、図56に表わされるように「呼ごとの再送状態」が「なし」(=再送なし)であり、「再送発生率による無線品質」と「電波状況による無線品質」がともに「良」のとき、「無線品質」は「良」と判断する。転送対象データ決定部243は、例えば、それ以外のときは「無線品質」は「劣」と判断する。
【0327】
そして、転送対象データ決定部243は、「無線品質」の判断結果を、例えば、図9(B)のS301の判断結果として、転送対象データを決定する(S302,S303)。この場合、転送対象データ決定部243は、「無線品質」が「良」のとき、転送対象データを「処理待ちのSDU」(例えば「SDU−B」以降のSDU)とすることができる(S302、図56)。一方、転送対象データ決定部243は、「無線品質」が「劣」のとき、転送対象データを「処理中のSDU」(例えば、「SDU−A」と「SDU−B」以降のSDU)とすることができる(S303,図56)。
【0328】
この場合、最終的な「無線品質」の判断において、「良」となるのは、「呼ごとの再送状態」を含めているため、第2の動作例と第3の動作例とを組み合わせた例(第4の実施の形態)よりもさらに信頼性が高く(又は増す)することができる。
【0329】
なお、この第1の動作例から第3の動作例をすべて組み合わせた例は、第5の実施の形態と第6の実施の形態においても実施することができる。
【0330】
例えば、第5の実施の形態における図45は、ハンドオーバ決定前に端末100に送信されてない未送信のPDUがある例において、未送信のPDUが端末100に送信された後で(S77)、転送対象データが決定される(S85)例におけるシーケンス図を表わしている。第5の実施の形態において、第1の動作例から第3の動作例を組み合わせた動作例は、例えば、この図45により実施することができる。
【0331】
すなわち、サービング基地局200aは、呼ごとの再送状態と送信時間を再送情報テーブル231に保持する(S75)。図34は、例えば、再送情報テーブル231の例を表わしている。
【0332】
また、サービング基地局200aは、端末100又はサービング基地局200aで測定された無線品質を電波状況として電波状況テーブル233に保持する(S35)。図17(A)は、例えば、電波状況テーブル233の例を表わしている。
【0333】
さらに、サービング基地局200aは、近隣セルごとの再送状態と再送発生率とを統計情報テーブル232に記憶する(S30)。図13(A)は、例えば、統計情報テーブル232の例を表わしている。
【0334】
そして、サービング基地局200aは、これら保持した結果から無線品質を判定し、転送対象データを判断する(S85)。転送対象データの判断は、例えば図56に表わされるように、上述した例と同様に判断することができる。この場合、例えば、転送対象データ決定部243は、転送対象データ決定処理の例を表わす図39のS811の判断結果とすることで、第5の実施の形態と同様に転送対象データを決定することができる。
【0335】
また、例えば、第6の実施の形態における図54は、ハンドオーバ決定前に端末100に送信されていない未送信のPDUがある例において、転送対象データ決定後(S65)、未送信のPDUを端末100に送信する(S77)例におけるシーケンス図を表わしている。第6の実施の形態において、第1の動作例から第3の動作例を組み合わせた動作例は、例えば、この図54により実施することができる。
【0336】
すなわち、サービング基地局200aは、呼ごとの再送状態と送信時間を再送情報テーブル231に保持する(S75)。図34は、例えば、再送情報テーブル231の例を表わしている。
【0337】
また、サービング基地局200aは、端末100又はサービング基地局200aで測定された無線品質を電波状況として電波状況テーブル233に保持する(S35)。図17(A)は、例えば、電波状況テーブル233の例を表わしている。
【0338】
さらに、サービング基地局200aは、近隣セルごとの再送状態と再送発生率とを統計情報テーブル232に記憶する(S30)。図13(A)は、例えば、統計情報テーブル232の例を表わしている。
【0339】
そして、サービング基地局200aは、これら保持した結果から無線品質を判定し、転送対象データを判断する(S65)。転送対象データの判断は、例えば図56に表わされるように、上述した例と同様に判断することができる。この場合、例えば、転送対象データ決定部243は、転送対象データ決定処理の例を表わす図39のS811の判断結果とすることで、第5の実施の形態と同様に転送対象データを決定することができる。
【0340】
第5及び第6の実施の形態において、第1の動作例から第3の動作例を組み合わせた動作例も、最終的な「無線品質」の判断において、「呼ごとの再送状態」が含まれているため、第2及び第3の動作例を組み合わせた例よりもさらに信頼性を高く(又は増す)することができる。
【0341】
以上まとめると付記のようになる。
【0342】
(付記1)
移動端末装置と無線通信を行う無線基地局装置において、
前記移動端末装置との間で行われたデータの再送の有無に基づいて、ハンドオーバ先の無線基地局装置に転送する転送対象データを決定する転送対象データ決定部と、
前記決定した転送対象データを前記ハンドオーバ先の無線基地局装置に転送するデータ転送処理部と
を備えることを特徴とする無線基地局装置。
【0343】
(付記2)
更に、前記移動端末装置に送信するデータを記憶するメモリ部を備え、
前記転送対象データ決定部は、前記移動端末装置についてハンドオーバすることを決定し、かつ、前記メモリ部に前記データが記憶されているとき、前記転送対象データを決定することを特徴とする付記1記載の無線基地局装置。
【0344】
(付記3)
更に、前記移動端末装置に送信するデータを記憶するメモリ部を備え、
前記転送対象データ決定部は、前記データの再送が行われたとき、前記再送が行われたデータを含む第1のデータ群と前記メモリ部に記憶された第2のデータ群とを前記転送対象データとして決定し、前記データの再送が行われなかったとき、前記メモリ部に記憶された前記第2のデータ群を前記転送対象データとして決定し、
前記データ転送処理部は、前記データの再送が行われたとき、前記第1のデータ群と前記第2のデータ群とを前記ハンドオーバ先の無線基地局装置に転送し、前記データの再送が行われなかったとき、前記第2のデータ群を前記ハンドオーバ先の無線基地局装置に転送することを特徴とする付記1記載の無線基地局装置。
【0345】
(付記4)
前記転送対象データ決定部は、監視期間内における前記データの再送の有無に基づいて前記転送対象データを決定することを特徴とする付記1記載の無線基地局装置。
【0346】
(付記5)
前記転送対象データ決定部は、1又は複数のデータを有するデータ群を前記転送対象データとして決定したとき、前記ハンドオーバ先の無線基地局装置から前記移動端末装置に送信を開始する前記データのシーケンス番号を決定し、
前記データ転送処理部は、前記決定したシーケンス番号を前記ハンドオーバ先の無線基地局装置に通知することを特徴とする付記1記載の無線基地局装置。
【0347】
(付記6)
前記転送対象データ決定部は、前記データの再送の有無に基づく再送発生率を前記ハンドオーバ先の無線基地局装置ごとに演算し、前記再送発生率に対応する無線品質に基づいて前記転送対象データを決定することを特徴とする付記1記載の無線基地局装置。
【0348】
(付記7)
更に、前記移動端末装置に送信するデータを記憶するメモリ部を備え、
前記転送対象データ決定部は、前記再送発生率が閾値以上のときに第1の無線品質と判定し、前記再送発生率が前記閾値より小さいときに第2の無線品質と判定し、前記第1の無線品質と判定したとき、前記移動端末装置に送信しているデータを含む第1のデータ群と前記メモリ部に記憶された第2のデータ群とを前記転送対象データとして決定し、前記第2の無線品質と判定したとき、前記メモリ部に記憶された前記第2のデータ群を前記転送対象データとして決定し、
前記データ転送処理部は、前記無線品質が前記第1の無線品質と判定されたとき、前記第1のデータ群と前記第2のデータ群とを前記ハンドオーバ先の無線基地局装置に転送し、前記無線品質が前記第2の無線品質と判定されたとき、前記第2のデータ群を前記ハンドオーバ先の無線基地局装置に転送することを特徴とする付記6記載の無線基地局装置。
【0349】
(付記8)
前記転送対象データ決定部は、1又は複数のデータを有するデータ群を前記転送対象データとして決定したとき、前記ハンドオーバ先の無線基地局装置から前記移動端末装置に送信を開始する前記データのシーケンス番号を決定し、
前記データ転送処理部は、前記決定したシーケンス番号を前記ハンドオーバ先の無線基地局装置に通知することを特徴とする付記6記載の無線基地局装置。
【0350】
(付記9)
移動端末装置と無線通信を行う無線基地局装置において、
前記移動端末装置との間の無線品質に基づいて、ハンドオーバ先の無線基地局装置に転送する転送対象データを決定する転送対象データ決定部と、
前記決定した転送対象データを前記ハンドオーバ先の無線基地局装置に転送するデータ転送処理部と
を備えることを特徴とする無線基地局装置。
【0351】
(付記10)
更に、前記移動端末装置に送信するデータを記憶するメモリ部を備え、
前記転送対象データ決定部は、前記移動端末装置についてハンドオーバすることを決定し、かつ、前記メモリ部に前記データが記憶されているとき、前記転送対象データを決定することを特徴とする付記9記載の無線基地局装置。
【0352】
(付記11)
前記転送対象データ決定部は、前記データの再送の有無に基づく再送発生率を前記ハンドオーバ先の無線基地局装置ごとに演算し、前記再送発生率に対応する無線品質に基づいて前記転送対象データを決定することを特徴とする付記9記載の無線基地局装置。
【0353】
(付記12)
更に、前記移動端末装置に送信するデータを記憶するメモリ部を備え、
前記転送対象データ決定部は、前記再送発生率が閾値以上のときに前記無線品質を第1の無線品質と判定し、前記再送発生率が前記閾値より小さいときに前記無線品質を第2の無線品質と判定し、前記第1の無線品質と判定したとき、前記移動端末装置に送信しているデータを含む第1のデータ群と前記メモリ部に記憶された第2のデータ群とを前記転送対象データとして決定し、前記第2の無線品質と判定したとき、前記メモリ部に記憶された前記第2のデータ群を前記転送対象データとして決定し、
前記データ転送処理部は、前記無線品質が前記第1の無線品質と判定されたとき、前記第1のデータ群と前記第2のデータ群とを前記ハンドオーバ先の無線基地局装置に転送し、前記無線品質が前記第2の無線品質と判定されたとき、前記第2のデータ群を前記ハンドオーバ先の無線基地局装置に転送することを特徴とする付記11記載の無線基地局装置。
【0354】
(付記13)
前記転送対象データ決定部は、1又は複数のデータを有するデータ群を前記転送対象データとして決定したとき、前記ハンドオーバ先の無線基地局装置から前記移動端末装置に送信を開始する前記データのシーケンス番号を決定し、
前記データ転送処理部は、前記決定したシーケンス番号を前記ハンドオーバ先の無線基地局装置に通知することを特徴とする付記11記載の無線基地局装置。
【0355】
(付記14)
更に、前記移動端末装置に送信するデータを記憶するメモリ部を備え、
前記転送対象データ決定部は、前記移動端末装置または前記無線基地局装置において測定した前記無線品質が閾値以上のときに前記無線品質を第3の無線品質と判定し、前記測定した前記無線品質が閾値より小さいときに前記無線品質を第4の無線品質と判定し、前記第3の無線品質と判定したとき、前記移動端末装置に送信しているデータを含む第3のデータ群と前記メモリ部に記憶された第4のデータ群とを前記転送対象データとして決定し、前記第4の無線品質と判定したとき、前記メモリ部に記憶された前記第4のデータ群を前記転送対象データとして決定し、
前記データ転送処理部は、前記無線品質が前記第3の無線品質と判定されたとき、前記第3のデータ群と前記第4のデータ群とを前記ハンドオーバ先の無線基地局装置に転送し、前記無線品質が前記第4の無線品質と判定されたとき、前記第4のデータ群を前記ハンドオーバ先の無線基地局装置に転送することを特徴とする付記9記載の無線基地局装置。
【0356】
(付記15)
移動端末装置と無線通信を行う無線基地局装置において、
前記移動端末装置との間で行われたデータの再送の有無と前記移動端末装置との間の無線品質とに基づいて、ハンドオーバ先の無線基地局装置に転送する転送対象データを決定する転送対象データ決定部と、
前記決定した転送対象データを前記ハンドオーバ先の無線基地局装置に転送するデータ転送処理部と
を備えることを特徴とする無線基地局装置。
【0357】
(付記16)
移動端末装置と無線通信を行う無線基地局装置におけるデータ転送方法であって、
前記移動端末装置との間で行われたデータの再送の有無に基づいて、ハンドオーバ先の無線基地局装置に転送する転送対象データを決定し、
前記決定した転送対象データを前記ハンドオーバ先の無線基地局装置に転送する
ことを特徴とするデータ転送方法。
【0358】
(付記17)
移動端末装置と無線通信を行う無線基地局装置におけるデータ転送方法であって、
前記移動端末装置との間の無線品質に基づいて、ハンドオーバ先の無線基地局装置に転送する転送対象データを決定し、
前記決定した転送対象データを前記ハンドオーバ先の無線基地局装置に転送する
ことを特徴とするデータ転送方法。
【0359】
(付記18)
移動端末装置と無線通信を行う無線基地局装置におけるデータ転送方法であって、
前記移動端末装置との間で行われたデータの再送の有無と前記移動端末装置との間の無線品質とに基づいて、ハンドオーバ先の無線基地局装置に転送する転送対象データを決定し、
前記決定した転送対象データを前記ハンドオーバ先の無線基地局装置に転送する
ことを特徴とするデータ転送方法。
【0360】
(付記19)
前記転送対象データ決定部は、前記無線品質のうち、前記データの再送の有無に基づいて演算した前記ハンドオーバ先の無線基地局装置における再送発生率に対応する第1の無線品質と、前記移動端末装置又は前記無線基地局装置で測定された第2の無線品質とに基づいて、前記転送対象データを決定することを特徴とする付記9記載の無線基地局装置。
【0361】
(付記20)
更に、前記移動端末装置に送信するデータを記憶するメモリ部を備え、
前記転送対象データ決定部は、前記移動端末装置の前記ハンドオーバ先の無線基地局装置へのハンドオーバを決定したときに前記メモリ部に記憶された第1のデータ群に含まれるデータのうち第1のデータを前記移動端末装置に送信し、前記第1のデータ群に含まれる第2のデータを前記移動端末装置に送信していないとき、前記第1のデータに対する再送の有無と前記第2のデータに対する送信可否とに基づいて前記転送対象データを決定することを特徴とする付記1記載の無線基地局装置。
【0362】
(付記21)
前記転送対象データ決定部は、前記第1のデータの再送が行われたとき、又は、前記第1のデータの再送が行われなかったときであって前記第2のデータの前記移動端末装置への送信が行われないとき、前記第1のデータ群を前記転送対象データとして決定し、前記第1のデータの再送が行われなかったときであって前記第2のデータの前記移動端末装置への送信が行われるとき、前記第1のデータ群に続く前記メモリ部に記憶された第2のデータ群を前記転送対象データとして決定することを特徴とする付記19記載の無線基地局装置。
【0363】
(付記22)
前記転送対象データ決定部は、
前記第1のデータの再送が行われたとき、前記第1のデータに対するシーケンス番号を通知することを決定し、
前記第1のデータの再送が行われなかったときであって前記第2のデータの前記移動端末装置への送信が行われなかったとき、前記第2のデータに対するシーケンス番号を通知することを決定し、
前記第1のデータの再送が行われなかったときであって前記第2のデータの前記移動端末装置への送信が行われたとき、前記第2のデータ群に含まれる第3のデータに対するシーケンス番号を通知することを決定し、
前記データ転送処理部は、前記決定したシーケンス番号を前記ハンドオーバ先の無線基地局装置に転送することを特徴とする付記20記載の無線基地局装置。
【0364】
(付記23)
更に、前記移動端末装置に送信するデータを記憶するメモリ部を備え、
前記転送対象データ決定部は、前記移動端末装置の前記ハンドオーバ先の無線基地局装置へのハンドオーバを決定したときに前記メモリ部に記憶された第1のデータ群に含まれるデータのうち第1のデータを前記移動端末装置に送信し、前記第1のデータ群に含まれる第2のデータを前記移動端末装置に送信していないとき、前記無線品質と前記第2のデータに対する送信可否とに基づいて前記転送対象データを決定することを特徴とする付記9記載の無線基地局装置。
【0365】
(付記24)
前記転送対象データ決定部は、
前記第1のデータの再送の有無に基づく再送発生率が閾値以上のときに前記無線品質を第1の無線品質と判定し、前記再送発生率が前記閾値より小さいときに前記無線品質を第2の無線品質と判定し、
前記無線品質を前記第2の無線品質と判定したとき、又は、前記無線品質を前記第1の無線品質と判定したときであって前記第2のデータの送信が行われないとき、前記第1のデータ群を前記転送対象データとして決定し、
前記無線品質を前記第1の無線品質と判定したときであって前記第2の送信が行われるとき、前記第1のデータ群に続く前記メモリ部に記憶された第2のデータ群を前記転送対象データとして決定することを特徴とする付記23記載の無線基地局装置。
【0366】
(付記25)
前記転送対象データ決定部は、
前記無線品質を前記第2の無線品質と判定したとき、前記第1のデータに対するシーケンス番号を通知することを決定し、
前記無線品質を前記第1の無線品質と判定したときであって前記第2のデータの送信が行われないとき前記第2のデータに対するシーケンス番号を通知することを決定し、
前記無線品質を前記第1の無線品質と判定したときであって前記第2のデータの送信が行われるとき前記第2のデータ群に含まれる第3のデータに対するシーケンス番号を通知することを決定し、
前記データ転送処理部は、前記決定したシーケンス番号を前記ハンドオーバ先の無線基地局装置に転送することを特徴とする付記24記載の無線基地局装置。
【0367】
(付記26)
前記転送対象データ決定部は、
前記移動端末装置又は前記無線基地局装置で測定された前記無線品質が閾値以上のときに前記無線品質を第3の無線品質と判定し、前記無線品質が前記閾値より小さいときに前記無線品質を第4の無線品質と判定し、
前記無線品質を前記第2の無線品質と判定したとき、又は、前記無線品質を前記第1の無線品質と判定したときであって前記第2のデータの送信が行われないとき、前記第1のデータ群を前記転送対象データとして決定し、
前記無線品質を前記第1の無線品質と判定したときであって前記第2のデータの送信が行われるとき、前記第1のデータ群に続く前記メモリ部に記憶された第2のデータ群を前記転送対象データとして決定することを特徴とする付記25記載の無線基地局装置。
【0368】
(付記27)
前記無線品質を前記第2の無線品質と判定したとき、前記第1のデータに対するシーケンス番号を通知することを決定し、
前記無線品質を前記第1の無線品質と判定したときであって前記第2のデータの送信が行われたないとき前記第2のデータに対するシーケンス番号を通知することを決定し、
前記無線品質を前記第1の無線品質と判定したときであって前記第2のデータの送信が行われるとき前記第2のデータ群に含まれる第3のデータに対するシーケンス番号を通知することを決定し、
前記データ転送処理部は、前記決定したシーケンス番号を前記ハンドオーバ先の無線基地局装置に転送することを特徴とする付記26記載の無線基地局装置。
【符号の説明】
【0369】
10:無線通信システム 100:移動端末装置(端末)
110:無線送受信部 130:RLCプロトコル制御部
200:無線基地局装置(基地局) 210:無線送受信部
211:無線電波状況通知部 220:RLCプロトコル制御部
221:第1のデータ通信状況収集部 230:メモリ部
231:再送情報テーブル 232:統計情報テーブル
233:電波状況テーブル 240:呼制御部
241:ハンドオーバ決定部 242:第2のデータ通信状況収集部
243:転送対象データ決定部 244:データ転送処理部
250:対向E−NodeB IF部(対向ENB IF部)
260:GW IF部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動端末装置と無線通信を行う無線基地局装置において、
前記移動端末装置との間で行われたデータの再送の有無に基づいて、ハンドオーバ先の無線基地局装置に転送する転送対象データを決定する転送対象データ決定部と、
前記決定した転送対象データを前記ハンドオーバ先の無線基地局装置に転送するデータ転送処理部と
を備えることを特徴とする無線基地局装置。
【請求項2】
移動端末装置と無線通信を行う無線基地局装置において、
前記移動端末装置との間の無線品質に基づいて、ハンドオーバ先の無線基地局装置に転送する転送対象データを決定する転送対象データ決定部と、
前記決定した転送対象データを前記ハンドオーバ先の無線基地局装置に転送するデータ転送処理部と
を備えることを特徴とする無線基地局装置。
【請求項3】
移動端末装置と無線通信を行う無線基地局装置において、
前記移動端末装置との間で行われたデータの再送の有無と前記移動端末装置との間の無線品質とに基づいて、ハンドオーバ先の無線基地局装置に転送する転送対象データを決定する転送対象データ決定部と、
前記決定した転送対象データを前記ハンドオーバ先の無線基地局装置に転送するデータ転送処理部と
を備えることを特徴とする無線基地局装置。
【請求項4】
移動端末装置と無線通信を行う無線基地局装置におけるデータ転送方法であって、
前記移動端末装置との間で行われたデータの再送の有無に基づいて、ハンドオーバ先の無線基地局装置に転送する転送対象データを決定し、
前記決定した転送対象データを前記ハンドオーバ先の無線基地局装置に転送する
ことを特徴とするデータ転送方法。
【請求項5】
移動端末装置と無線通信を行う無線基地局装置におけるデータ転送方法であって、
前記移動端末装置との間の無線品質に基づいて、ハンドオーバ先の無線基地局装置に転送する転送対象データを決定し、
前記決定した転送対象データを前記ハンドオーバ先の無線基地局装置に転送する
ことを特徴とするデータ転送方法。
【請求項6】
移動端末装置と無線通信を行う無線基地局装置におけるデータ転送方法であって、
前記移動端末装置との間で行われたデータの再送の有無と前記移動端末装置との間の無線品質とに基づいて、ハンドオーバ先の無線基地局装置に転送する転送対象データを決定し、
前記決定した転送対象データを前記ハンドオーバ先の無線基地局装置に転送する
ことを特徴とするデータ転送方法。
【請求項7】
更に、前記移動端末装置に送信するデータを記憶するメモリ部を備え、
前記転送対象データ決定部は、前記移動端末装置の前記ハンドオーバ先の無線基地局装置へのハンドオーバを決定したときに前記メモリ部に記憶された第1のデータ群に含まれるデータのうち第1のデータを前記移動端末装置に送信し、前記第1のデータ群に含まれる第2のデータを前記移動端末装置に送信していないとき、前記第1のデータに対する再送の有無と前記第2のデータに対する送信可否とに基づいて前記転送対象データを決定することを特徴とする請求項1記載の無線基地局装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【公開番号】特開2012−209925(P2012−209925A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200450(P2011−200450)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】