説明

無線式情報媒体

RFIDタグとRFIDリーダとの間の通信が一対の導線(116、326)によって相互接続される第1のコイル(114、212、324)及び第2のコイル(118、216、328)を具える誘導結合部によって伝達され、前記第1のコイル(114、212、324)が通信ユニット(110、210、320)と電磁気学的に対話するように構成され、前記第2のコイル(118、216、328)が無線式メモリユニット(122、316)と電磁気学的に対話するように構成されることを特徴とする。誘導結合部は導線又は金属板のカットアウトとして認識されてもよく、場合によっては、スイッチ手段を用いることによって別個のRFIDタグに特異的にアクセスするように用いても、実験室の試料の同定及び構築用のシステムで用いてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFIDタグといった無線式メモリユニットに対する情報を読み書きする技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
無線周波数認識(RFID)タグは広範な対象についての情報を記憶するための広範に用いられている技術となっている。RFIDタグは一般的に、タグ内の情報を読み書きするためのアンテナを具備する多くの場合RFIDリーダと称される、トランシーバユニットとの無線通信によって動作する。現在、RFID通信に対するISO規格は135kHzないし2.45GHzの周波数範囲にあるが、本発明は更に高い無線周波数で適用可能である。多くの場合においては、情報はRFIDタグの位置についての情報を必要としない状況下でRFIDタグに書き込まれる。しかしながら他の場合においては、RFIDタグ及びRFIDリーダの相対位置は、一方ではRFIDタグにおける情報及びRFIDタグの位置が関連付けられるために、他方ではRFIDタグ及び関連オブジェクトが、1又は少数の位置を除く無線通信を困難にする位置があるために重要である。RFIDタグでの困難な通信の実施例は、同定すべき対象の周りの物理的空間が限定される場合、あるいは同定すべきいくつかの対象が互いに物理的に近く配置され、対象を間違えて同定するリスクを有する場合である。特異的な通信に関する問題に対する解決は、高指向性アンテナの使用であるが、このようなアンテナの使用は余分な空間を要し、余分なコストがその実装に伴う。
【0003】
これらの問題が観察されうる特異的なケースは、リニア式コンベヤ上のリニア式ラック、あるいは2次元アレイを有する試料の矩形トレイといったサンプルオーガナイザに配置される実験室の試料の場合である。このような試料の同定のためには、一方では試料容器の一体化部分として、多くの場合は試料容器の底部部分として試料容器にRFIDタグを取付ることが、他方では試料中にRFIDタグを配置することが所望される。実験室の試料の同定については、試料が試料容器から取られると同時に、又はその後直ちにRFIDタグと通信することが所望される。この利点は試料は分析と同時に同定できるか、あるいは代替的に通信が分析後直ちになされる場合、結果はサンプルと関連付けたRFIDタグに記憶できることである。この理由については、所望のリーダの位置は、試料が試験ボトルから取られる位置において試料の下にあるか、おそらくは、この試料の隣にあるからであろう。しかしながら、多くの場合に用いられるサンプルオーガナイザの型はアンテナからRFIDタグを遮蔽する金属で生成されるラックであり、更にコンベヤの底部は多くの場合、金属で生成され、コンベヤを制御及び駆動するのに必要な電子機器及びその他のハードウェアを含みうる。この理由のために、試料容器の下にあるリーダの位置は多くの場合は実行可能ではなく、コンベヤの側面の代替的な位置が用いられ、間違った対象を同定するリスクを増加させる。矩形のトレイについては特に、トレイの内部にある試料の読取りが困難であるが、RFIDリーダ又は試料のトレイの移動によって解決されうる。しかしながらこのような解決法は、更なる移動部分によって余分な複雑さが生じる。
【0004】
本発明は上述の問題の一部又は総てを軽減するように意図されている。
【0005】
指向性アンテナによるデータの送信に対する代替例として、RFIDトランシーバとRFIDタグとの間の通信は、誘導結合式連結部を用いることによって確立される。この場合においては、RFIDリーダと有効に結合するコイルはRFIDリーダの近くに配置し、RFIDタグの近くに配置されるコイルに一対の導線によって連結できる。各々のコイルに誘導される無線周波数信号はこのように、それらの物理的位置に関係なく、RFIDリーダのアンテナとRFIDタグのアンテナとの間に方向付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1は、RFIDトランシーバとRFIDタグとの間の通信用の誘導結合式連結部の使用を示す。
【図2】図2は、矩形のオーガナイザにおいて構築される、対象中のRFIDタグと通信する誘導結合式連結部の使用を示す。
【図3】図3は、対象のオーガナイザを示す。
【図4】図4は、誘導結合式連結部として金属性のサンプルオーガナイザを用いる、試料の分析用のシステムを例示する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明のある例示的な実施形態は図1に示され、通信ユニット110と無線式メモリユニット122との間の通信用のシステムが開示されている。この実施形態においては、RFIDリーダといった通信ユニット110が導電性材料のコイル114に近接して配置され、一対の導線116及び第2のコイル118とともに誘導結合式連結部を構成する。第2のコイル118は、RFIDタグといったRF無線式メモリユニット122に近接して配置され、無線通信及びメモリ記憶用のサブユニット、場合によっては更にデータ処理用のサブユニットを具え、前記ユニットは誘導電流で電力供給される受動型であってもよく、あるいは内蔵電源で電力供給される能動型であってもよい。本発明は以下に述べるように、読み出しモード及び書き込みモードの一方又は双方で動作させてもよい。書き込みモードにおいては、通信ユニット110は無線式メモリユニット122に転送すべき情報を受信する。通信ユニット110は、好適なプロトコルによって無線式メモリユニット122に転送すべき情報を無線信号112に翻訳し、信号112を送信し、それは第1のコイル114によって受信され、一対の導線116によって第2のコイル118に伝達され、そこから無線信号120が無線式メモリユニット122に送信され、そこに信号は通信プロトコルによって解読及び処理、ならびに/又は記憶される。読み出しモードにおいては、通信ユニット110は、用いたプロトコルによってメモリユニット122から情報を要求する無線信号を送信する。従って、信号は誘導結合式連結部を介して無線式メモリユニット122に伝達され、次いで通信プロトコルによって好適な情報を通信するようにコード化された無線信号120を送信する。無線式メモリユニット122から送信される信号120は第2のコイル118によって受信され、導線116を介して伝達され、通信ユニット110によって受信されるべく第1のコイル114から送信され、読み出しモードにおいては、誘導結合式連結部がメモリユニット122から通信ユニット110に無線信号120を伝達することを示している。
【0008】
第2の例示的な実施形態は図2に示される。この実施形態は誘導結合式連結部を介した無線周波数情報の送達を、サンプルオーガナイザの矩形トレイにおける試料容器といった、多次元トレイにおける多数の対象を構築する装置と組合わせる。第1のコイル212は通信ユニット210に近接して配置され、多数の第2のコイル216が試料容器の位置に近接して配置される。機械的に、あるいは電気的に制御されたスイッチといったスイッチ手段214は前記第1のコイル212と1以上の特定の第2のコイル216との間の電気的接続を規定するように設定される。このようにして、通信ユニット210は、オーガナイザの1以上の特定の位置において、オーガナイザ又はリーダの物理的な移動なしに、1以上の特定の無線式メモリユニット218と通信するようにスイッチングでき、特定の試料容器と関連付けられる。
【0009】
特定の実施形態は、特定の試料容器の位置と関連付けられた無線式メモリユニット218からの分析前の試料同定情報の読み出しと、分析後の無線式メモリユニット218における分析結果のその後の書き込みである。この場合においては、動作の順番はスイッチ手段214が通信ユニット210と、分析すべき試料を含む試料容器と関連付けられる特定の第2のコイル214との間の通信用に構成されるようになる。試料同定情報はその後第1のコイル212と、スイッチ手段214と、第2のコイル216とを具える連結部を介して、通信ユニット210によって無線式メモリユニット218から読み出される。この分析がなされた後に、分析結果は次いで第1のコイル212、スイッチ手段214、及び第2のコイル216を含む連結部を介して通信ユニット210の書き込みプロセスによって無線式メモリユニット218に記憶できる。
【0010】
この実施形態の例示においては、コイルは通信ユニット210とスイッチ手段214との間の誘導結合部212を構成するのに用いられる。しかしながら、この接続は更に、通信ユニット210の無線周波数回路をスイッチ手段214に接続することによって直接的に構成してもよく、場合によっては変成器といった手段によってインダクタンスの好適な整合を要求する。
【0011】
スイッチ手段214を含む実施形態の実現においては特に、相当な保護が無線周波数通信の良好な実行に続いてなされ、回路の好適なレイアウト及び寸法入れ、ノイズからの遮断、インダクタンスの整合を含む。
【0012】
図3は第3の例示的な実施形態を示し、無線通信ユニット320と試料容器314と関連付けられた無線式メモリユニット316との間の通信用のシステムであり、高周波数信号が金属板の表面で伝導されるという事実を用いる。従って、金属性の対象の縁部は導電体と等価物であり、大部分の金属板が絶縁体と等価物であると見なされうる。それに応じて、第1の例示的な実施形態の誘導結合式連結部に対する等価物が、以下に記載のようにオーガナイザの金属における好適なカットアウトによって生成できる。前記システムは、多数のプレースホルダ315と、無線通信ユニット320と、試料容器314といった1以上の対象を有する、金属で生成されたオーガナイザ312を具える。各々のプレースホルダ315は、本実施形態においては各々のプレースホルダ315に配置される試料容器314とともに配置される付随する別個のメモリユニット316を有する。オーガナイザ312は、本実施形態にあるように、実験室の試料容器314を構築するためのラックであってもよい。このラック312は図3に示されるように、好適なプレースホルダ315と円形コイルであるカットアウト324、328とを有する折り曲げられた金属板から形成できる。第1の円形カットアウト324及び第2の円形カットアウト328は、第1の実施形態における第1の単巻コイル114及び第2の単巻コイル118と等価であり、直線形カットアウト326の2の稜線は一対の導線116と等価である。オーガナイザ312は好適には各々のプレースホルダ315用に、いくつかのこのような一対の連結部を有し、各々の対象314とともに配置される無線式メモリユニット316との特異的な通信を可能にする。
【0013】
第4の例示的な実施形態が図4に示される。この実施形態は第3の実施形態に記載の一対の連結部の型を用いる分析システムである。システムは、その総て又は一部がそこに配置され、例えば試料容器314に接続又は統合される無線式メモリユニット316を有しうる多数の試料容器314のオーガナイザ312を移動させるためのコンベヤ310と、情報を読み出す及び/又は書き込むための通信ユニット320と、前記試料の一定部分を抽出することによって、あるいは前記サンプルを全体として分析に供することによって、前記試料を分析するための分析用装置とを具える。試料に関する情報はその後、試料が分析用装置318によって要求されるような既知の位置にある場合に前記無線式メモリユニット316から読み出すか、あるいはそこに書き込むことができる。
【0014】
この実施形態においては、通信装置320は無線通信信号を受信する第1のカットアウト324に近接して配置され、RFIDタグといった無線式メモリユニット316によって受信されるように無線通信信号を送信する第2のカットアウト328に、導電稜線326を介してこれを伝達する。可能な通信モードは第1の実施形態と同様である。図3に示されるように、分析用装置318の隣に配置される試料容器314は、誘導結合式連結部によって通信ユニット320に接続される。このことによって、通信が常に、最も最近に分析された試料を含む試料容器314と関連付けられた無線式メモリユニット316となされることを確立する。
【0015】
光学上の物理的なコイルの寸法は、電磁場のオーバーラップの要求によって決定され、従って、RFIDタグ及びRFIDリーダにおける、無線通信の周波数ならびに造付けアンテナコイルの寸法によって規定される。13.5MHzの周波数で動作する一般的なRFIDタグについては、コイルの好適な寸法は10ないし30mmであるが、RFIDタグ及びRFIDリーダのアンテナコイルの大きさが大きくなる場合、サイズの増加が可能である。大きさの減少は回路の自己インダクタンスによって制限され、従って本発明は125kHzのRFIDシステムと互換性のある大きめのコイルを要求する。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の導線(116、326)によって相互接続された、第1のコイル(114、212、324)及び第2のコイル(118、216、328)を具える誘導結合部であって、前記第1のコイル(114、212、324)が通信ユニット(110、210、320)との無線通信によって対話するように構成され、前記第2のコイル(118、216、328)が無線式メモリユニット(122、316)との無線通信によって対話するように構成されることを特徴とする誘導結合部。
【請求項2】
請求項1に記載の誘導結合部において、前記第1及び第2のコイル(324及び328)ならびに接続する一対の導線(326)が金属板においてカットアウトとして等価に生成されることを特徴とする誘導結合部。
【請求項3】
通信ユニット(110、210、320)と、無線式メモリユニット(122、218、316)と、誘導結合部とを具えるシステムであって、前記誘導結合部が請求項1又は2に記載のものであることを特徴とするシステム。
【請求項4】
1以上のプレースホルダ(315)を有するオーガナイザ(312)であって、各々のプレースホルダ(315)が、請求項1又は2に記載に記載の誘導結合部の第2のコイルと特異的に関連付けられることを特徴とするオーガナイザ。
【請求項5】
請求項4に記載のオーガナイザにおいて、前記プレースホルダ(315)が分析すべき試料用の試料容器(314)を受けるように構成されることを特徴とするオーガナイザ。
【請求項6】
請求項5に記載のオーガナイザにおいて、前記誘導結合部が請求項2に記載のように認識されることを特徴とするオーガナイザ。
【請求項7】
通信ユニット(320)を具えるシステムであって、オーガナイザ(312)が、対象(314)用の、各々が独自の無線式メモリユニット(316)と関連付けられる1以上のプレースホルダ(315)を具え、前記通信ユニット(320)と前記無線式メモリユニット(316)との間の無線通信が請求項1又は2に記載の対応する誘導結合部によって伝達されることを特徴とするシステム。
【請求項8】
通信ユニット(210)と;各々の対象と関連付けられる無線式メモリユニット(218)と通信するために好適な位置で、多数のコイル(216)と関連付けられる、関連付けられた無線式メモリユニット(218)をそれぞれ有する、1以上の対象のオーガナイザと;制御可能なスイッチ手段(214)と;前記通信ユニット(210)と前記制御可能なスイッチ手段(214)との間の誘導的又は電気的な接続部と;を具えるシステムであって、前記制御可能なスイッチ手段(214)が、前記通信ユニット(210)に連結されている別個の無線式メモリユニット(218)を選択するように制御可能であることを特徴とするシステム。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2011−516996(P2011−516996A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−504325(P2011−504325)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【国際出願番号】PCT/EP2008/054569
【国際公開番号】WO2009/127246
【国際公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(510270878)
【氏名又は名称原語表記】FOSS ANALYTICAL A/S
【Fターム(参考)】