説明

無線機器収納局舎

【課題】運用コストを抑えた融雪装置を備えた無線機器収容局舎を提供する。
【解決手段】局舎本体1の天井裏空間24と前記局舎本体1の室内空間13とを連通する第1のダクト19と第2のダクト22を設け通風路27を構成し、第1のダクト19に前記室内空間13に配置される電気機器14から放出される熱排気を前記天井裏空間24に導く吸気ファン28を設けるとともに、前記天井裏空間24に管パイプ35を設けることで、屋根の融雪と室内空間13の温度制御を同時に行うことができ、また、屋根の融雪にかかる運用コストを大幅に削減させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、融雪装置を備えた無線機器収納局舎に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、降雪地域においては、建物の屋根に積もった雪と建物の周囲の地面に積もった雪とが、その後の降雪により互いに成長していき一体化し、建物の屋根にその一体化した積雪全体の重さがかかり、積雪の圧力により屋根に重大な損傷を加えると共に、その積雪の圧力は、建物の外部に伸びた配線にも影響を加え、前記配線を支持しているラックを破損させ、最悪の場合には、配線を断線させてしまう。そのため、豪雪地域では、慣習的に雪降ろしの作業時に屋根の積雪と地面の積雪とが一体化しないよう切断させることが行われてきた。このように、降雪地域おいては、建物の雪降ろしは常に考慮せねばならない事項であった。
【0003】
そして、携帯電話の普及に伴い携帯電話の電波を中継するための無線中継局舎(無線機器収納局舎)が多数建設されており、このような無線中継局舎は無人化が進み、単に電波中継用の無線機器を内部に設置しただけの無人の無線機器収容局舎は、無線中継局舎の性質上、降雪地域においても人間が立ち入ることが困難なところにも設置される場合もあり、その場合における人手による雪降ろしは効率的ではなかった。
【0004】
そこで、そのような場合に有効な雪降ろし(融雪)手段として、前記無線中継局舎の屋根材に電気ヒータ(特許文献1)を敷設し、電気ヒータを発熱させて屋根の積雪を融雪していた。
【特許文献1】特開2002−188249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の電気ヒータを屋根に敷設した融雪装置を用いて前記無線機器収容局舎を融雪した場合、電気ヒータの電気使用料が無線機器収容局舎の運用コストに加算されることとなり、降雪地域においても運用コストのかからない無線機器収容局舎における融雪装置が望まれていた。
【0006】
解決しようとする問題点は、運用コストを抑えた融雪装置を備えた無線機器収容局舎を提供する点である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、局舎本体の天井裏空間と前記局舎本体の室内空間とを連通する1次側ダクトと2次側ダクトを設け通風路を構成し、前記1次側ダクトに前記室内空間に配置される電気機器から放出される熱排気を前記天井裏空間に導く導気手段を設けるとともに、前記天井裏空間に熱交換器を設けたことである。
【0008】
請求項2の発明は、前記熱交換器は、前記天井裏空間における前記通風路に平行に配設された多数の伝熱管であることである。
【0009】
請求項3の発明は、前記1次側ダクトと前記伝熱管の入口との間に入口分流器を設けたことである。
【0010】
請求項4の発明は、前記伝熱管の出口と前記2次側ダクトとの間に出口合流器を設けたことである。
【0011】
請求項5の発明は、前記1次側ダクトを前記局舎本体の前記室内空間における側壁の上側に取付けたことである。
【0012】
請求項6の発明は、前記室内空間の温度を検知する温度検知手段を備えるとともに、前記温度検知手段により検知された温度により前記導気手段を制御する制御手段を設けたことである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、電気機器の熱排気を利用することで、融雪にかかる運用コストを削減することができる
請求項2の発明によれば、融雪装置の構造を簡単なものとし、既存の局舎への流用を可能とした。
【0014】
請求項3の発明によれば、伝熱管へ熱排気を分散させて送り込むことにより、屋根全体を均一に融雪させることができる。
【0015】
請求項4の発明によれば、通風路の熱排気の流動性を向上させる。
【0016】
請求項5の発明によれば、効率的に熱排気をとり込むことができる。
【0017】
請求項6の発明によれば、局舎の屋根の融雪と共に、室内の温度を一定に保つことで、内部の電気機器を正常に作動させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照して説明する。尚、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
【実施例1】
【0019】
図1乃至図5は、一実施例を示しており、図1の正面断面図において、1は携帯電話などの電波を中継する収納庫たる無線機器収容局舎(以下、単に局舎という)である。この局舎1は、屋根材2と、天井パネル3と、側壁パネル4と、床パネル5とを箱型に連結したユニット6により構成されており、前記側壁パネル4の一側面7には、開口部8が形成されており、前記開口部8を開閉するための開閉扉9が設けられている。
【0020】
前記ユニット6の一側面7側には、仕切りパネル10が設けられており、前記仕切りパネル10にも開口部11が形成されており、前記開口部11には開閉扉12が設けられている。
【0021】
そして、天井パネル3と、側壁パネル4の一側面7以外の面と、仕切りパネル10と、床パネル5により囲まれた室内空間13には、携帯電話の電波を中継するための電気機器として通信機器14が収納されており、前記通信機器14からの配線15は側壁パネル4に形成された貫通部16(図示せず)へと伸び、その貫通部16より局舎1の外部へと伸びている(図2参照)。
【0022】
前記側壁パネル4の一側面7と対向する他側面17の上側には、第1の貫通部18が形成され、前記第1の貫通部18には1次側ダクトたる第1のダクト19の入口側開口部20が接続されている。また、仕切りパネル10の上側には第2の貫通部21が形成され、その第2の貫通部21に2次側ダクトたる第2のダクト22の出口側開口部23が接続されている。
【0023】
また、前記屋根材2と天井パネル3の間には天井裏空間24が形成されており、この天井裏空間24と室内空間13を第1のダクト19と第2のダクト22により連通させることで、循環型の通風路27が構成される。
【0024】
ここで、前記第1のダクト19及び第2のダクト22の構成について述べるとすると、第1のダクト19は、入口側開口部20を備えた導気手段たる吸気ファン28と、その吸気ファン28に接続された配管29と、配管29から上方へと接続された蛇腹管30とから構成されている。
【0025】
また、第2のダクト22は、先端に開口部分(入口側開口部)31を備えた蛇腹管32aと、蛇腹管32aの基端に接続された配管33と、その配管33に接続された蛇腹管32bと、蛇腹管32bと第2の貫通部21との間に設けられ出口側開口部23を備えた排気ファン34とから構成される。
【0026】
天井裏空間24には、図3に示すように伝熱管たる断面矩形状の中空な角パイプ35が、天井パネル3の長手方向に対し平行になるよう複数配設されており(図2参照)、複数の角パイプ35は互いに間隔を形成し配置されている。
【0027】
そして、図2にあるように、天井裏空間24における第1のダクト19の出口側開口部(蛇腹管30の先端開口部)36と角パイプ35との間には、入口分流器37が設けられ、分流器37は第1の分流部材38と第2の分流部材39とからなり、第1の分流部材38は平面形状を逆L字形状をなすように形成された箱型をしており、底面に開口部40が形成され、その開口部40にはリブ41が形成され、前記リブ41は第1のダクトの出口側開口部36に接続可能に形成されたものである。
【0028】
また、第1の分流部材38の側面には、等間隔に3つ前記角パイプ35が嵌合可能に形成された送風用開口部42が設けられており、さらに他の側面部分を開口させて、その開口部分43の縁にはフランジ44が形成されている。
【0029】
第1の分流部材38の内部には、角度θ(図4参照)をなして立設された分流板45がそれぞれ前記送風用開口部42の一端側に設けられている。
【0030】
第2の分流部材39は、平面形状を矩形に形成した箱体であり、その箱体の側面には等間隔に3つ前記角パイプ35が嵌合可能に形成された送風用開口部46が設けられており、さらに他の側面を開口させ、その開口部分47の縁にはフランジ48が形成されている。
【0031】
前記第2の分流部材39の内部には、前記角度θをなして立設された分流板49がそれぞれ前記送風用開口部46の他端側に設けられている。
【0032】
そして、第1の分流部材38の開口部分43と第2の分流部材39の開口部分47を合わせ、互いのフランジ44,48同士を螺子又は溶接により固定し一体化させ、分流器37を構成している。
【0033】
また、図2にあるように、天井裏空間24における角パイプ35と第2のダクト22の入口側開口部31との間に設けられた出口合流器50については、前述した分流器37と同様の構成をなしているので説明を省略する。
【0034】
そして、天井裏空間24における天井パネル3には、断面ハット型形状に形成されたスペース部材51が天井パネル3の長手方向に対し平行となるように複数個互いに間隔を形成しながら配置され、そのスペース部材51の上部に互いの送風用開口部42,46に角パイプ35を嵌合させ、角パイプ35を介し互いを連結させた分流器37と合流器50が載置される。
【0035】
また、室内空間13には、温度検知手段たる温度センサ52が設けられており、温度センサ52からの信号を受け、吸気ファン28及び排気ファン34の動作を制御する制御手段53が局舎1には設けられている。
【0036】
以上の構成について作用を述べると、先ず最初に局舎1に形成された通風路27において説明すると、電気機器14から放出された排熱により、室内空間13の温度は上昇していき、室内空間13の温度がある一定温度(例えば、30℃前後)になると温度センサ52より信号を受けていた制御手段53が吸気ファン28と排気ファン34を作動させる。
【0037】
吸気ファン28により、室内空間13の一定温度以上に温められた空気(以下、熱排気と呼称する)を強制的に第1の貫通部18を通じて第1のダクト19の内部へと吸引し、第1のダクト19から天井裏空間24における分流器37へと送られた熱排気は、分流板45,49によりその流量を均等に分けられ、送風用開口部42,46より各角パイプ35内部へと送られる。角パイプ35へと送られた熱排気は、その熱を屋根材2へと伝え、屋根材2を発熱させる。このとき、分流器37により各角パイプ35の内部の熱排気の流量を均等にしたことで、局舎1の屋根は均一に発熱する。その後、屋根材2にその熱を奪われ、冷やされた熱排気(以下、冷排気と呼称する)は、角パイプ35の内部からその角パイプ35に連通した送風用開口部42,46から合流器50へと送られる。合流器50に送られた冷排気は合流板(分流板)45,49により、各角パイプ35より送られてきた冷排気を収束させて、開口部40に接続された第2のダクト22の入口側開口部31へと送る。第2のダクト22に設けられた排気ファン34により、入口側開口部31から出口側開口部36へ、そして出口側開口部23の接続された第2の貫通部21から室内空間13へと空気の流れ(通風路27)が生じており、入口側開口部31へと集められた冷排気は、そのまま強制的に室内空間13へと送り出させる。室内空間13へと送り出された冷排気により、一定温度以上に温められた室内空間13の温度は、冷排気にその温度を奪われることにより、室内空間13の温度は低下する。この一連の熱排気及び冷排気の通風路27における流れにより、先ず屋根材2が発熱することにより、屋根材2に積もった雪が溶かされ、さらに室温が適度な温度へと下げられたことにより、室内空間13の電気機器14は正常に作動する。
【0038】
本発明の局舎は、既存の局舎を改造することでも実施可能であり、まず、ユニット5に対し第1の貫通部18、第2の貫通部21に対応する孔を形成するとともに、角パイプ35を天井裏空間24に配設するが、ここで角パイプ35が屋根材2側に配置されるよう角パイプ35と天井パネル3との間に敷設されるスペース部材51の高さを適宜選択して使用する。
【0039】
そして、分流器37と合流器50における各送風用開口部42,46を角パイプ35の開口部分と嵌合させ、さらに開口部40,40のリブ41,41を第1のダクト19の出口側開口部36と第2のダクト22の入口側開口部31とにそれぞれ接続する。
【0040】
その後、第1のダクト19の吸気ファン28を第1の貫通部18に接続させ、出口側開口部36を分流器37のリブ41に接続させる。
【0041】
同様に、第2のダクト22の排気ファン34を第2の貫通部21に接続させ、入口側開口部31を合流器50のリブ41に接続させる。
【0042】
こうして、既存の局舎に対し室内空間13と天井裏空間24とを連通させた通風路27が作成され、これに室内空間13に温度センサ52を設け、温度センサ52から信号を受け吸気ファン28と排気ファン34の動作を制御する制御手段53を設けることで、本発明の局舎が完成する。
【0043】
また、本発明の通風路27は循環式の構造を有しているので、降雪地域で局舎1全体が雪に覆われた状態でも内部でのみ空気を循環させているため、融雪を行うことができる。
【0044】
尚、本発明の局舎1は、降雪時期以外においては、室内空間13の熱排気を第1のダクト29により天井裏空間24に吸い上げて、角パイプ35を通過させることで、角パイプ35周辺を流れる天井裏空間24の空気に熱を奪われることにより、熱排気は冷排気へと変化し排気ファン34により室内空間13へと戻り、その冷排気により室内空間13の温度を下げることで室内空間13の冷却装置としての効果を有する。
【0045】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、第1のダクト、第2のダクト、分流器及び合流器といった基本的な構成は前記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。また、温度センサ及び制御手段の配置におけるレイアウトにおいても本発明の要旨の範囲内で様々の変形実施が可能である。さらに、スペース部材の形状においても種々の変形実施が可能である。
【0046】
以上のように、前記実施例では請求項1に対応して、局舎本体1の天井裏空間24と前記局舎本体1の室内空間13とを連通する1次側ダクト19と2次側ダクト22を設け通風路27を構成し、前記1次側ダクト19に前記室内空間13に配置される電気機器14から放出される熱排気を前記天井裏空間24に導く導気手段28を設けるとともに、前記天井裏空間24に熱交換器35を設けたことである。電気機器14の熱排気を利用することで、融雪にかかる運用コストを削減することができる
また、前記実施例では請求項2に対応して、前記熱交換器35は、前記天井裏空間24における前記通風路27に平行に配設された多数の伝熱管であることにより、融雪装置の構造を簡単なものとし、既存の局舎への流用を可能とした。
【0047】
さらに、前記実施例では請求項3に対応して、前記1次側ダクト19と前記伝熱管35の入口との間に入口分流器37を設けたことにより、伝熱管35へ熱排気を分散させて送り込み、屋根全体を均一に融雪させることができる。
【0048】
また、前記実施例では請求項4に対応して、前記伝熱管35の出口と前記2次側ダクト22との間に出口合流器50を設けたことにより、通風路27の熱排気の流動性を向上させる。
【0049】
さらに、前記実施例では請求項5に対応して、前記1次側ダクト19を前記局舎本体1の前記室内空間13における側壁17の上側に取付けたことにより、効率的に熱排気をとり込むことができる。
【0050】
また、前記実施例では請求項6に対応して、前記室内空間13の温度を検知する温度検知手段52を備えるとともに、前記温度検知手段52により検知された温度により前記導気手段28を制御する制御手段53を設けたことにより、局舎1の屋根の融雪と共に、室内13の温度を一定に保つことで、内部の電気機器14を正常に作動させる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施例を示す正面断面図である。
【図2】本発明の一実施例を示す平面断面図である。
【図3】本発明の一実施例を示す側面断面図である。
【図4】本発明の一実施例における分流器(合流器)の図4(a)は第1の分流部材の正面図を示し、図4(b)はA―A線断面図である。
【図5】本発明の一実施例における分流器(合流器)の図5(a)は第2の分流部材の正面図を示し、図5(b)はB―B線断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 局舎
13 室内空間
19 第1のダクト
22 第2のダクト
24 天井裏空間
27 通風路
28 吸気ファン
37 入口分流器
50 出口合流器
52 温度センサ
53 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
局舎本体の天井裏空間と前記局舎本体の室内空間とを連通する1次側ダクトと2次側ダクトを設け通風路を構成し、前記1次側ダクトに前記室内空間に配置される電気機器から放出される熱排気を前記天井裏空間に導く導気手段を設けるとともに、前記天井裏空間に熱交換器を設けたことを特徴とする無線機器収納局舎。
【請求項2】
前記熱交換器は、前記天井裏空間における前記通風路に平行に配設された多数の伝熱管であることを特徴とする請求項1記載の無線機器収納局舎。
【請求項3】
前記1次側ダクトと前記伝熱管の入口との間に入口分流器を設けたことを特徴とする請求項2記載の無線機器収納局舎。
【請求項4】
前記伝熱管の出口と前記2次側ダクトとの間に出口合流器を設けたことを特徴とする請求項2又は3記載の無線機器収納局舎。
【請求項5】
前記1次側ダクトを前記局舎本体の前記室内空間における側壁の上側に取付けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の無線機器収納局舎。
【請求項6】
前記室内空間の温度を検知する温度検知手段を備えるとともに、前記温度検知手段により検知された温度により前記導気手段を制御する制御手段を設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の無線機器収納局舎。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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