説明

無線端末位置計測システム

【課題】より正確に到達時間差を検出し、より正確な位置測定を行う無線端末位置計測システムを提供する。
【解決手段】無線端末10Aからの無線信号を受信する無線受信部21Aと、前記無線信号の入力電力を検知し検波電圧を出力する検波回路211Aと前記出力された検波電圧から前記無線信号の無線基地局での受信時間を検出する時間計数部22Aと、を備える無線基地局20A、及び、無線受信遅延特性から求めた補正テーブルと、無線基地局の位置情報とを記憶する記憶部32と、前記時間計数部で検出した受信時間を、前記記憶部の補正テーブルを用いて補正し、当該補正した受信時間と無線基地局の位置情報とから、前記無線端末10Aの位置を計測する演算処理部31と、を備える位置計測部30と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、無線端末位置計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報端末と通信ネットワークの偏在化に伴い、位置情報を用いた様々なサービスが実現されつつあり、人やモノの空間内の座標をより精密かつ正確に取得する測位手段が求められている。例えば、産業用途では、作業員や設備の配置状況、稼働状況などを的確に管理し業務の効率化を図るために、プラント、工場、事業所などの建物内における人やモノの所在位置を把握したいという要求がある。
【0003】
屋外においてはGPSを利用した測位方法が既に広く適用されているが、屋内では必ずしもGPSの電波を受信できるとは限らない。そのため、屋内では三次元空間上に存在する位置座標が既知の基地局を利用した方法を用いる。
【0004】
三次元空間上に存在する位置座標が既知の二つの基地局と、無線端末とのそれぞれの距離の差から、前記二つの基地局を焦点とする一組の二葉回転双曲線の方程式を得て、これと同様にして三組以上の双曲線方程式を求め、これらの連立方程式の解から無線端末の座標を一意に求める方法である。無線伝搬速度が一定であるから、無線端末と各基地局間の距離のそれぞれの差分は、端末が発信した電波の到達時間差を測定することにより求めることができるというわけである。
【0005】
この到達時間差を正確に求めるためには、正確に電波を検知し、測位する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−304473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、電波を検知する装置内の信号伝達時間が受信強度により変化することにより、毎回の受信電波の強弱により各基地局への電波の到達時間計測の誤差を生じさせることとなる。
【0008】
上記の事情に鑑み、より正確に到達時間差を検出し、より正確な位置測定を行う無線端末位置計測システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本無線端末位置計測システムは、
測定対象エリア内に存在し無線信号を送受信する無線端末と、固定位置に設置された複数の無線基地局と、前記無線基地局で受信した無線信号から得られる時間パラメータを用いて前記無線端末の位置を計測する位置計測部を含む構成の無線端末位置計測システムであって、
前記無線端末及び前記基準局からの無線信号を受信する無線受信部と、
前記無線信号の入力電力を検知し検波電圧を出力する検波回路と、
前記出力された検波電圧から前記無線信号の無線基地局での受信時間差を検出する時間計数部と、
を備える無線基地局と、
無線受信遅延特性から求めた補正テーブルと、無線基地局の位置情報とを記憶する記憶部と、
前記時間計数部で検出した受信時間差を、前記記憶部の補正テーブルを用いて補正し、当該補正した受信時間と無線基地局の位置情報とから、前記無線端末の位置を計測する演算処理部と、
を備える位置計測部と、
を備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態に係る位置計測システムの構成を示す図。
【図2】検波回路の出力時間変動の一例を示す図。
【図3】入力電力と検波電圧の関係の一例を示す図。
【図4】無線受信部遅延特性評価結果の一例を示す図。
【図5】本発明の実施形態の動作を説明するためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施態様について図面を参照しながら説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
本実施形態の無線端末位置計測システムは、図1に示すように、無線基地局20(20A、…、20C)、基準局25、位置計測部30を含む構成である。各無線基地局20は、エリア100内に設置され、位置の検出対象である無線端末10の位置を推定、検出する。
【0013】
無線端末10は、無線信号発信(送信)機能および無線信号受信機能をもつ。例えば、工作機械、携帯電話や、車載器等である。無線信号とは、電波(電磁波)等をいい、距離に応じて減衰する特性を持つ信号であれば、例えば、超音波に代替することも可能である。この無線端末10が、エリア100内にあるとき、位置計測が行われる。本実施形態では簡単のため一台のみの無線端末を記載しているが複数あってもよい。
【0014】
エリア100は、無線基地局20が配置されるエリアであり、無線端末位置計測システムにより位置計測が行われる対象エリアをいう。対象エリアは無線端末10から発信される電波を無線基地局20が受信可能(認識可能)な強度で受信できる範囲内であればよい。一例として図1に示すように、一定の形状の範囲内に区切る。具体的な場所としては、プラントや工場、立体駐車場の各階の駐車フロアや病院内の一区画である。
【0015】
無線基地局20(20A、…、20C)は、無線受信部21および時間計数部22を含む構成である。本実施形態では、所定の位置に固定されている。例えば、プラントや工場、立体駐車場や病院の天井に備え付ける。各無線基地局20の最初に固定された位置情報(例えば、緯度、経度、高度)は記憶部32に記憶(格納)されている。
【0016】
無線受信部21(21A、…、21C)は、無線端末10が発信した電波を受信する。検波回路221にてこれを検知する。また、基準局25が発信した無線信号を受信する。
【0017】
検波回路221(221A、…、221C)は、図3に示すように受信した無線信号の入力電力に比例する検波電圧を出力する。この検波電圧は時間計測部22および演算処理部31へ送出される。図2に基地局無線受信部の検波回路221の動作を模式的に示している。検波回路221は、無線信号の入力電力が高ければ高い電圧を、入力電力が低ければ低い電圧を出力するが、検波電圧が立ち上がるまでの時間は一定であるという特徴をもつ。このため、検波電圧の立ち上がり傾斜が入力電力に依存して変化するので、無線受信部の0/1出力判定レベルとなるコンパレータのしきい値電圧に達する時間が変化し、出力電圧信号の立ち上がり時間が変動する。即ち、無線信号受信端から時間計数部入力端までの無線受信部回路遅延が無線信号の受信強度により変化することを意味しており、これが時間差計測の誤差を生じる一因となり、結果的に位置算出精度の劣化となる。この時間計測の誤差は、基準局25からのタイミング信号受信時及び無線端末10からの無線信号を受信した場合に発生する。
【0018】
時間計測部22(22A、…、22C)は、各無線基地局内の無線信号の受信時間を検出する。検出した基準局25からの無線信号の受信時間と無線端末10からの無線信号の受信時間の受信時間差を算出する。
【0019】
データ送信部23(23A、…、23C)は、各無線基地局内の無線信号の受信時間に関する情報および電圧に関する情報を位置計測部30へ送出する。
【0020】
基準局25は、基地局同様に既知の予定の位置に固定されており、測位時に各無線基地局20および無線端末10に測位開始のタイミング信号を発信し、測位開始信号を受けた端末10が、無線信号を各基地局に発信する。本実施形態では、その他の機能については、無線基地局20と同様の機能を持っているものとして記載しているが、基準局としての信号発信機能のみであってもよい。
【0021】
また、本実施形態では基準局により時刻の同期を行っているが、その他、位置計測部から各基地局20の同期を行うための時刻を送信して同期をとる同期手段を設けて、基準局25に代えてもよい。
【0022】
位置計測部30は、演算処理部31、記憶部32を含む構成である。
【0023】
演算処理部31は、無線基地局20から送られてきた検波電圧情報、受信時間差情報を受信する。次に、記憶部32に予め記憶された図4に示すような検波電圧に対する遅延時間を予め測定した実験値の集合である無線受信部遅延特性から求めた補正テーブルまたは、検波電圧と遅延時間の関係する2次の近似曲線の数式データから、時間計測部22から送られてきた受信時間差の補正を行う。この補正後の受信時間差から距離差分を求める。同様に3つ以上の距離差分データを求め、これと各無線基地局20の位置情報から無線端末10の位置を算出する。算出した位置情報を図示しない表示部等に表示してもよい。
【0024】
本実施形態では、上記のようにTDOA方式(Time Difference of Arrival)を用いて説明したが、その他、無線端末の位置計測方法として、受信時間を用いる他の方式を使用してもよい。
【0025】
記憶部32は、無線受信部遅延特性から求めた補正テーブルまたは、検波電圧と遅延時間の関係する2次の近似曲線の数式データを記憶している。その他、無線基地局20、基準局25などの位置情報などの位置計測に必要なデータを格納する。
【0026】
データ情報受信33は、基地局20から送られてきたデータを受信し、演算処理部31へ送出する。
【0027】
なお、入力電力と検波電圧は比例関係にあることから、入力電力を別途検出する検出回路を設けて遅延特性評価を行い補正を行ってもよい。
【0028】
次に、本実施形態の動作について図5を参照しながら説明する。
【0029】
基準局25は、測位時に各無線基地局20および無線端末10に測位開始のタイミング信号を発信し、測位開始信号を受けた端末10が、無線信号を各基地局に発信する(ステップS101、S102、S103)。
【0030】
無線受信部21は、無線端末10が発信した電波を各無線基地局20を介して受信
し、検波回路に送出する(ステップS104)。
【0031】
検波回路221は、図3に示すように入力電力に比例する検波電圧を出力する。この検波電圧を時間計測部22及び演算処理部31へ送出する(ステップS105、S106)。
【0032】
時間計測部22で無線基地局20の受信時間を検出する。受信時間を演算処理部31へ送出する(ステップS107、ステップS108)。
【0033】
演算処理部31は、検波電圧を受信し、記憶部32に予め記憶された図4に示すような無線受信部遅延特性から求めた補正テーブルまたは、検波電圧と遅延時間の関係する2次の近似曲線の数式データから、受信時間差の補正を行う(ステップS109)。
【0034】
次に演算処理部31は、ステップS109で求めた補正後の受信時間差から距離差分を求め、このように求めた3つ以上の距離差分データと各無線基地局20の位置から無線端末10の位置を算出し表示部に表示などして、処理を終了する(ステップS110、ステップS111)。
【0035】
このように、受信時間を検波電圧を用いて補正することにより、正確な位置計測が行える。また、新たな回路を設置することなくより正確な位置の計測が行える。
【0036】
(その他の実施形態)
第1の実施形態では、基準局25を用いて、時間差を用いた実施形態である。この他、基準局を設ける手段のほか、各基地局を位置計測部30内の演算処理部31やその時間同期用の外部機器(図示しない)を利用して同期をする方法をとってもよい。この場合基準局25は不要である。
【0037】
この際、位置計測部30の位置計測においては、各基地局20間の受信時間差ではなく受信時間同士の差を利用して無線端末10の位置を計測する。
【0038】
基準局を用いないことにより、検波回路211内での遅延時間が発生するのは無線端末10から無線基地局20が電波または信号を受信した場合のみとなるので、補正が一つのパラメータに対して行うのみで済む。
【0039】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0040】
1 … 位置計測システム
10(10A) … 無線端末
100、200、300… エリア
20(20A、…、20C) … 無線基地局
25 … 基準局
21(21A、…、21C) … 無線受信部
211(211A、…、211C) … 検波回路
22(22A、…、22C) … 時間計数部
30 … 位置計測部
31 … 演算処理部
32 … 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象エリア内に存在し無線信号を送受信する無線端末と、固定位置に設置された複数の無線基地局と、前記無線基地局で受信した無線信号から得られるパラメータを用いて前記無線端末の位置を計測する位置計測部を含む構成の無線端末位置計測システムであって、
前記無線端末からの無線信号を受信する無線受信部と、
前記無線信号の入力電力を検知し検波電圧を出力する検波回路と、
前記出力された検波電圧から前記無線信号の無線基地局での受信時間を検出する時間計数部と、
を備える無線基地局と、
無線受信遅延特性から求めた補正テーブルと、無線基地局の位置情報とを記憶する記憶部と、
前記時間計数部で検出した受信時間を、前記記憶部の補正テーブルを用いて補正し、当該補正した受信時間と無線基地局の位置情報とから、前記無線端末の位置を計測する演算処理部と、
を備える位置計測部と、
を備える無線端末位置計測システム。
【請求項2】
前記記憶部は、
検波電圧と遅延時間の関係する2次の近似曲線の数式データと、無線基地局の位置情報とを記憶し、
前記演算処理部は、
前記時間計数部で検出した受信時間を、前記数式データを用いて補正し、当該補正した受信時間と無線基地局の位置情報とから、前記無線端末の位置を計測する
請求項1に記載する無線端末位置計測システム。
【請求項3】
測定対象エリア内に存在し無線信号を送受信する無線端末と、固定位置に設置された複数の無線基地局と、基準時刻となる無線信号を送信する基準局と、前記無線基地局で受信した無線信号から得られる時間パラメータを用いて前記無線端末の位置を計測する位置計測部を含む構成の無線端末位置計測システムであって、
前記無線端末及び前記基準局からの無線信号を受信する無線受信部と、
前記無線信号の入力電力を検知し検波電圧を出力する検波回路と、
前記検波回路から出力された検波電圧から前記無線信号の無線基地局での受信時間差を検出する時間計数部と、
を備える無線基地局と、
無線受信遅延特性から求めた補正テーブルと、無線基地局の位置情報とを記憶する記憶部と、
前記時間計数部で検出した受信時間差を、前記記憶部の補正テーブルを用いて補正し、当該補正した受信時間と無線基地局の位置情報とから、前記無線端末の位置を計測する演算処理部と、
を備える位置計測部と、
を備える無線端末位置計測システム。
【請求項4】
前記記憶部は、
検波電圧と遅延時間の関係する2次の近似曲線の数式データと、無線基地局の位置情報とを記憶し、
前記演算処理部は、
前記時間計数部で検出した受信時間差を、前記数式データを用いて補正し、当該補正した受信時間差と無線基地局の位置情報とから、前記無線端末の位置を計測する
請求項3に記載する無線端末位置計測システム。
【請求項5】
測定対象エリア内に存在し無線信号を送受信する無線端末と、固定位置に設置された複数の無線基地局と、基準時刻となる無線信号を送信する基準局と、前記無線基地局で受信した無線信号から得られる時間パラメータを用いて前記無線端末の位置を計測する位置計測部を含む構成の無線端末位置計測システムであって、
前記無線端末及び前記基準局からの無線信号を受信する無線受信部と、
前記無線信号の入力電力を検知し検波電圧を出力する検波回路と、
前記出力された検波電圧から前記無線信号の無線基地局での受信時間差を検出する時間計数部と、
前記入力電力を測定する電力測定用回路と、
を備える無線基地局と、
無線受信遅延特性から求めた補正テーブルと、無線基地局の位置情報とを記憶する記憶部と、
前記時間計数部で検出した受信時間差を、前記記憶部の補正テーブルを用いて補正し、当該補正した受信時間と無線基地局の位置情報とから、前記無線端末の位置を計測する演算処理部と、
を備える位置計測部と、
を備える無線端末位置計測システム。
【請求項6】
前記記憶部は、
前記電力測定用回路で測定された入力電力と遅延時間の関係する2次の近似曲線の数式データと、無線基地局の位置情報とを記憶し、
前記演算処理部は、
前記時間計数部で検出した受信時間差を、前記数式データを用いて補正し、当該補正した受信時間と無線基地局の位置情報とから、前記無線端末の位置を計測する
請求項5に記載する無線端末位置計測システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−150009(P2012−150009A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8992(P2011−8992)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】