無線端末装置、無線通信システム、プログラムおよび無線通信方法
【課題】中継処理を行うか否かを各端末に自律的に判断させ、ネットワーク全体の消費電力を低減すること。
【解決手段】無線により通信可能な複数の装置をノードとして含む木構造のネットワークにおいて通信する無線端末装置であって、上記複数の装置のうちの通信可能な周辺無線端末装置のパスコスト、当該周辺無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報、および当該周辺無線端末装置が上記無線端末装置の木構造上の親として選択されている周辺無線端末装置であるか否かに基づいて、当該周辺無線端末装置を木構造上の親として選択することに対する評価値を算出する評価値算出部と、上記評価値に基づいて、上記周辺無線端末装置のいずれかを木構造上の親として選択する状態管理部と、を備える無線端末装置が提供される。
【解決手段】無線により通信可能な複数の装置をノードとして含む木構造のネットワークにおいて通信する無線端末装置であって、上記複数の装置のうちの通信可能な周辺無線端末装置のパスコスト、当該周辺無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報、および当該周辺無線端末装置が上記無線端末装置の木構造上の親として選択されている周辺無線端末装置であるか否かに基づいて、当該周辺無線端末装置を木構造上の親として選択することに対する評価値を算出する評価値算出部と、上記評価値に基づいて、上記周辺無線端末装置のいずれかを木構造上の親として選択する状態管理部と、を備える無線端末装置が提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線端末装置、無線通信システム、プログラムおよび無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の端末でネットワークを構成し、隣接した端末間でパケットの送受信を繰り返すことにより直接接続していない端末間の通信を実現する、様々な方式が開発されている。このような無線ネットワークでは、追加の配線コストを使うことなく信号が周辺の全ての端末に到達するように、全ての端末が周辺の全ての端末と通信可能であることを前提として転送経路を設定することが一般的であった。
【0003】
しかしながら、全ての端末との通信を前提とすると各端末の消費電力が大きくなるという問題がある。信号を受信するためには各端末は常に受信機を動作させておく必要があるためである。
【0004】
これに対して、全ての端末との通信を前提とせず、中継処理を行う端末と中継処理を行わない端末とに分ける方法が開発されている。この場合、中継処理を行うとされた装置だけを用いたルーティング処理が行われる。例えば、特許文献1では、エンドデバイスと名付けられた端末は、中継処理を行わず、自身のデータを送信する時を除き受信機の電源を切る。また、エンドデバイスは、周辺の端末から特定の1つを選択し、選択した端末のみと通信する。このように、エンドデバイスは、消費電力を削減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−55301
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の方法では、各端末が中継処理を行うか否かを事前に決めておく必要がある。しかしながら、各端末による中継処理が必要か否かは周辺の無線伝搬環境、端末の設置状況等によって変化するため、中継処理を行う端末を事前に最適に決めることは現実的ではない。一方で、全ての端末が中継処理を行う場合には、中継処理を行う端末は多くの電力を消費するため通信に必要以上に多くの電力を消費し、ネットワーク全体の消費電力の増大につながる。
【0007】
そこで、本発明は、中継処理を行うか否かを各端末に自律的に判断させ、ネットワーク全体の消費電力を低減することを可能とする、新規かつ改良された無線端末装置、無線通信システム、プログラムおよび無線通信方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、無線により通信可能な複数の装置をノードとして含む木構造のネットワークにおいて通信する無線端末装置であって、上記複数の装置のうちの通信可能な周辺無線端末装置のパスコスト、当該周辺無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報、および当該周辺無線端末装置が上記無線端末装置の木構造上の親として選択されている周辺無線端末装置であるか否かに基づいて、当該周辺無線端末装置を木構造上の親として選択することに対する評価値を算出する評価値算出部と、上記評価値に基づいて、上記周辺無線端末装置のいずれかを木構造上の親として選択する状態管理部と、を備える無線端末装置が提供される。
【0009】
また、上記評価値算出部は、上記無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報にさらに基づいて、上記評価値を算出してもよい。
【0010】
また、上記周辺無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報は、上記周辺無線端末装置の木構造上の子の数を含んでもよい。
【0011】
また、上記周辺無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報は、上記周辺無線端末装置の木構造上の孫を木構造上の子として有する、当該周辺無線端末装置の木構造上の子の数をさらに含んでもよい。
【0012】
また、上記無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報は、上記無線端末装置の木構造上の孫を木構造上の子として有する、当該無線端末装置の木構造上の子の数をさらに含んでもよい。
【0013】
また、上記評価値算出部は、上記周辺無線端末装置のパスコストに第1の係数を乗じた値と、上記周辺無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報、および当該周辺無線端末装置が上記無線端末装置の木構造上の親として選択されている周辺無線端末装置であるか否か、に基づいて得られる付加コストに第2の係数を乗じた値とに応じて、上記評価値を算出してもよい。
【0014】
また、上記状態管理部は、上記無線端末装置が木構造上の子を有しない場合に、上記無線端末装置の受信機に間欠動作を行わせてもよい。
【0015】
また、上記無線端末装置は、上記無線端末装置のパスコスト、上記無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報、および上記無線端末装置の木構造上の親の識別情報のうちの少なくとも1つを含む通知情報を送信する送信部と、上記周辺無線端末装置のパスコスト、上記周辺無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報、および上記周辺無線端末装置の木構造上の親の識別情報のうちの少なくとも1つを含む通知情報を受信する受信部と、をさらに備えてもよい。
【0016】
また、上記送信部は、上記通知情報を繰り返し送信してもよい。
【0017】
また、上記送信部は、間欠動作を行う受信機を有する周辺無線端末装置が上記無線端末装置の木構造上の親として選択された場合に、間欠動作の中止を指示する指示情報を送信してもよい。
【0018】
また、上記状態管理部は、上記評価値に基づいて上記周辺無線端末装置のいずれかを予備の親として選択し、上記無線端末装置が、上記無線端末装置の木構造上の親として選択されている周辺無線端末装置と通信できなくなった場合には、上記予備の親を木構造上の親として選択してもよい。
【0019】
また、上記状態管理部は、上記無線端末装置が木構造上の子を有さず、かつ上記無線端末装置が上記周辺無線端末装置のいずれからも予備の親として選択されていない場合に、上記無線端末装置の受信機に間欠動作を行わせてもよい。
【0020】
また、上記状態管理部は、最善の評価値を伴う上記周辺無線端末装置を木構造上の親として選択し、次善の評価値を伴う上記周辺無線端末装置を予備の親として選択してもよい。
【0021】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、上記無線端末装置を含む無線通信システムが提供される。
【0022】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、無線により通信可能な複数の装置をノードとして含む木構造のネットワークにおいて通信する無線端末装置を制御するコンピュータを、上記複数の装置のうちの通信可能な周辺無線端末装置のパスコスト、当該周辺無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報、および当該周辺無線端末装置が上記無線端末装置の木構造上の親として選択されている周辺無線端末装置であるか否かに基づいて、当該周辺無線端末装置を木構造上の親として選択することに対する評価値を算出する評価値算出部と、上記評価値に基づいて、上記周辺無線端末装置のいずれかを木構造上の親として選択する状態管理部と、として機能させるプログラムが提供される。
【0023】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、無線により通信可能な複数の装置をノードとして含む木構造のネットワークにおいて通信する無線端末装置を用いた無線通信方法であって、上記複数の装置のうちの通信可能な周辺無線端末装置のパスコスト、当該周辺無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報、および当該周辺無線端末装置が上記無線端末装置の木構造上の親として選択されている周辺無線端末装置であるか否かに基づいて、当該周辺無線端末装置を木構造上の親として選択することに対する評価値を算出するステップと、上記評価値に基づいて、上記周辺無線端末装置のいずれかを木構造上の親として選択するステップと、を含む無線通信方法が提供される。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明に係る無線端末装置、無線通信システム、プログラムおよび無線通信方法によれば、中継処理を行うか否かを各端末に自律的に判断させ、ネットワーク全体の消費電力を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】パスコストに基づき形成された木構造のネットワークを示す。
【図2】一実施形態に係る条件Aによる木構造上の親の選択を説明する。
【図3】一実施形態に係る条件Bによる木構造上の親の選択を説明する。
【図4】一実施形態に係る条件Cによる木構造上の親の選択を説明する。
【図5】一実施形態に係る条件Dによる木構造上の親の選択を説明する。
【図6】親選択用コストに基づき形成された木構造のネットワークを示す。
【図7】一実施形態に係る無線端末装置間での送受信を説明する。
【図8】一実施形態に係る無線端末装置間での通信切断時の送受信を説明する。
【図9】一実施形態に係る無線端末装置間での通信切断時の送受信を説明する。
【図10】一実施形態に係る無線端末装置100の構成の一例を示すブロック図である。
【図11】エンドデバイスの処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図12】ルータの処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図13】通信が切断された場合の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に添付の図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。一例として説明される本発明の一実施形態は、[1.木構造のネットワークにおける親の選択方式]、[2.無線端末装置間での送受信]、[3.無線端末装置の構成]、[4.処理の流れ]、[5.変形例]という順序で説明される。
【0027】
[1.木構造のネットワークにおける親の選択方式]
無線により通信可能な複数の装置により形成される無線マルチホップネットワークは、典型的には、外部ネットワークとの接続機能を有する基地局装置(以下、「BS」と呼ぶ)と、BSを介して外部ネットワークに接続する1つ以上の無線端末装置とを含む、木構造のネットワークである。ここで、BSは、当該木構造のネットワークの根であり、各無線端末装置は、当該木構造のネットワークの節または葉である。木構造上の節となる無線端末装置、すなわち木構造上の子を有する無線端末装置を、ルータと呼び、木構造上の葉となる無線端末装置、すなわち木構造上の子を有さない無線端末装置を、エンドデバイスと呼ぶこととする。各無線端末装置は、直接的に、または木構造上の先祖(親を含む)である無線端末装置を経由して、BSにデータを送信することができ、またBSからのデータを受信することができる。また、各無線端末装置は、自身の木構造上の子孫宛のデータを受信した場合には、当該無線端末装置のいずれかの子に当該データを転送する。各無線端末装置は、BS宛のデータを受信した場合には、当該無線端末装置の親に当該データを転送する。このように、各無線端末装置は、直接的に、または他の無線端末装置を経由して、BSに接続される。
【0028】
一実施形態に係るBSは、例えば、スマートグリッドにおけるスマートメータである。また、一実施形態に係る無線端末装置は、例えば、スマートメータと通信する、テレビ、プロジェクタ、DVDレコーダ、ブルーレイレコーダ、音楽プレイヤ、ゲーム機器、エアコンディショナ、洗濯機、冷蔵庫等の家電機器、PC(Personal Computer)、プリンタ、スキャナ等の情報処理機器、または照明機器、湯沸かし器等のその他の電気を使用する機器である。ただし、当然のことながら、一実施形態に係るBSおよび無線端末装置は、これらに限られない。
【0029】
上記木構造のネットワークを形成し、BSと通信するために、無線端末装置は、BSおよび他の無線端末装置のうち通信可能なもの(以下、「周辺無線端末装置」と呼ぶ)のいずれかを、木構造上の親として選択する。各無線端末装置が木構造上の親を選択した結果、エンドデバイスとなった無線端末装置は、他の無線端末装置宛のデータを転送する必要がないため、自らデータを送信する際と、受信すべきデータが存在するか否かを親に問い合わせる際を除き、受信機の電源を切ることができる。これにより、エンドデバイスは、消費電力を低減することができる。一方で、ルータとなった無線端末装置は、他の無線端末装置宛のデータを転送する必要があるため、受信機の電源を切ることが困難である。つまり、ルータの数をより少なくすることができれば、換言するとエンドデバイスの数をより多くすることができれば、ネットワーク全体の消費電力を低減することができる。
【0030】
以下では、無線端末装置が周辺無線端末装置から取得したパスコストのみを用いた親選択方式を説明した上で、本発明に係る一実施形態に係る親選択方式を説明する。
【0031】
(パスコストのみを使用した親選択方式)
一般的なパスコストのみを用いた親選択方式の一例を、以下に示す。
【表1】
この方式により、各無線端末装置は、BSまでの中継回数が最も少ない経路を選択できる。なお、無線端末装置が周辺無線端末装置のパスコストを取得するために、各無線端末装置は、自らの識別情報とパスコストとを含んだ情報を定期的に送信する。
【0032】
図1を参照することにより、上記のパスコストのみを使用した親選択方式を用いた結果を説明する。図1は、パスコストに基づき形成された木構造のネットワークを示す。図1では、ノード1000がBSであり、ノード1010〜1080が無線端末装置である。BS以外の各ノードの中に示されている数字は、各ノードのパスコストを示す。BSと無線端末装置との間または無線端末装置間を結ぶ実線は、それらの間で確立された通信経路を示す。すなわち、当該実線は、BSおよび無線端末装置がデータを直接送受信する通信経路を示す。一方で、無線端末装置間を結ぶ点線は、それらの間の通信経路の候補を示す。すなわち、当該点線は、無線端末装置が互いに通信可能であることを示す。
【0033】
図1に示されるネットワークでは各無線端末装置からBSまでのパスコスト(ここでは送信回数)が最小になっているため、当該ネットワークは最も高い性能をもつネットワークである。しかしながら、当該ネットワークは、消費電力が低いネットワークではない。実際に、ノード1010、1030、1040、1050および1060が、受信機の消費電力を低減することが困難なルータである。
【0034】
さらに各無線端末装置の状況に応じて上記のパスコストを加減する方式がある。例えば、無線端末装置がエンドデバイスである場合に当該無線端末装置のパスコストを割増しすることが考えられる。これは、エンドデバイスが他の無線端末装置から親として選択されないようにすることができる。また、例えば、各無線端末装置の子の数に応じてパスコストを割増しすることも考えられる。
【0035】
しかしながら、パスコストの加減のみによりルータの数を減らすことには限界がある。なぜならば、無線端末装置が親を変更することによる影響は、各無線端末装置によって異なるからである。例えば、無線端末装置の親の子が1つのみである場合、すなわち無線端末装置の親の子が当該無線端末装置のみである場合には、当該無線端末装置が別の周辺無線端末装置を親として選択すれば、結果として上記親である周辺無線端末装置はエンドデバイスとなる。しかし、例えば、無線端末装置の親の子が多数存在する場合には、当該無線端末装置が別の周辺無線端末装置を親として選択しても、上記親である周辺無線端末装置はエンドデバイスとはならない。すなわち、無線端末装置とその周辺無線端末装置との間の関係により、親として選択すべき周辺無線端末装置は異なる。よって、各無線端末装置のパスコストを加減する方式には限界がある。
【0036】
(一実施形態に係る親選択方式)
本発明の一実施形態に係る無線端末装置は、周辺無線端末装置のパスコストをそのまま使って親を選択しない。より具体的には、無線端末装置は、周辺無線端末装置のパスコスト、当該周辺無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報、および当該周辺無線端末装置が無線端末装置の木構造上の親として選択されている周辺無線端末装置であるか否かに基づいて、当該周辺無線端末装置を木構造上の親として選択することに対する評価値(以下、「親選択用コスト」と呼ぶ)を算出する。そして、無線端末装置は、この親選択用コストに基づいて、周辺無線端末装置のいずれかを木構造上の親として選択する。
【0037】
具体的な内容は後に説明されるが、一実施形態に係る無線端末装置は、周辺無線端末装置のパスコストをそのまま用いる上記のパスコストのみを用いた親選択方式とは異なり、周辺無線端末装置と自らとの関係に基づき、親選択用コストを自ら算出する。これにより、特定のルータを多数の無線端末装置の親にすることが可能となり、その結果、ルータである無線端末装置の数を減らすことができる。すなわち、一実施形態に係る無線端末装置により、木構造のネットワーク全体の消費電力を減らすことができる。
【0038】
なお、周辺無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報は、例えば、周辺無線端末装置の木構造上の子の数を含む。また、周辺無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報は、例えば、周辺無線端末装置の木構造上の孫を木構造上の子として有する、周辺無線端末装置の木構造上の子の数、すなわち周辺無線端末装置のルータである子(以下、「子ルータ」と呼ぶ)の数を含む。また、無線端末装置は、例えば、無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報にさらに基づいて、親選択用コストを算出する。無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報は、例えば、無線端末装置の子ルータの数を含む。
【0039】
より具体的には、親選択用コストは、例えば、周辺無線端末装置のパスコストに第1の係数を乗じた値と、周辺無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報、および当該周辺無線端末装置が無線端末装置の木構造上の親として選択されている周辺無線端末装置であるか否か、に基づいて得られる付加コストに第2の係数を乗じた値とに応じて、算出される。パスコストが、ネットワークの性能を高めることをその目的としているのに対して、この付加コストは、ネットワーク全体の消費電力を減らす、すなわちネットワークにおけるルータ数を減らす(エンドデバイスを増やす)ことをその目的としている。ここでは、上記第1の係数をαとし、上記第2の係数を1とすると、親選択用コストを例えば以下のように示すことができる。
【数1】
上記の式(1)における付加コストは、ルータ数の増加(エンドデバイス数の減少)に寄与する程度が大きい程、大きい値となる。無線端末装置は、例えば、最善の親選択用コスト、すなわちここでは最も小さい親選択コストを有する周辺無線端末装置を親として選択する。
【0040】
無線端末装置が算出する付加コストの一例を以下に示す。
【表2】
付加コストに対する条件を満たす周辺無線端末装置は、できるだけ選択すべきでない周辺無線端末装置である。すなわち、条件を満たす周辺無線端末装置を選択すると、ルータが冗長に存在する可能性が高くなる。なお、上記条件Fは、上記条件A〜Eとは異なり、自らの子である周辺無線端末装置を選択することを回避するために便宜上設けた条件である。
【0041】
以下では、図2〜5を参照して、例示された上記条件A〜Eの下で、無線端末装置が周辺無線端末装置の中からどのように親を選択するかを具体的に説明する。各条件の特徴を分かりやすくするために、上記式(1)の係数αを1000として各条件を説明する。つまり、無線端末装置は、小さいパスコストを有する周辺無線端末を選択するが、2つ以上の周辺無線端末装置のパスコストが同じであれば、より小さい付加コストを有する周辺無線端末装置を親として選択する。
【0042】
図2を参照して、上記条件Aについて説明する。図2は、一実施形態に係る条件Aによる木構造上の親の選択を説明する。図2の(1)に示すとおり、ネットワークは、1つのBSと3つの無線端末装置を含む。ここで、図2の(2)に示すとおり、無線端末装置1140が新たに設置されたとする。すると、当該無線端末装置1140は、通信可能な周辺無線端末装置1110、1120および1130のうち、パスコストが1である周辺無線端末装置1110または1120のいずれかを親として選択する。ここで上記条件Aによると、子の数が0である(つまりエンドデバイスである)周辺無線端末装置1110は、子の数が0ではない周辺無線端末装置1120よりも、より大きな付加コストを与えられる。したがって、図2の(3)に示すとおり、無線端末装置1140は、周辺無線端末装置1120を親として選択する。その結果、周辺無線端末装置1110はエンドデバイスのままであり、ネットワーク全体の消費電力が抑えられる。ここで仮に周辺無線端末装置1120ではなく周辺無線端末装置1110が無線端末装置1140の親として選択された場合、周辺無線端末装置1110はエンドデバイスからルータとなり、その結果ネットワーク全体の消費電力が増加する。このように、上記条件Aは、エンドデバイスがなるべく親として選択されないようにする。
【0043】
図3を参照して、上記条件Bについて説明する。図3は、一実施形態に係る条件Bによる木構造上の親の選択を説明する。図3の(1)に示すとおり、ネットワークは、1つのBSと4つの無線端末装置を含む。ここで、図3の(2)に示すとおり、無線端末装置1150および1160が新たに設置されたとする。すると、図3の(3)に示すとおり、当該無線端末装置1150は、唯一の周辺無線端末装置である無線端末装置1110を親として選択し、当該無線端末装置1160は、唯一の周辺無線端末装置である無線端末装置1150を親として選択する。その後、無線端末装置1140は、通信可能な周辺無線端末装置1110、1120および1130のうち、パスコストが1である周辺無線端末装置1110または1120のいずれかを親として選択する。ここで上記条件Bによると、子ルータの数が0である周辺無線端末装置1120は、子ルータの数が0ではない周辺無線端末装置1110よりも、より大きな付加コストを与えられる。したがって、図3の(4)に示すとおり、無線端末装置1140は、周辺無線端末装置1120を親として選択する。その後、無線端末装置1130は、周辺無線端末装置1110または1120を親として選択する。ここで上記条件Bによると、子ルータの数が0である周辺無線端末装置1120は、周辺無線端末装置1110よりもより大きな付加コストを与えられる。したがって、図3の(5)に示すとおり、無線端末装置1130は、周辺無線端末装置1110を親として選択する。このように、ネットワークが、図3の(3)のように維持されるのではなく、図3の(5)のように形成されるため、無線端末装置1110は、ルータからエンドデバイスとなる。その結果、ネットワーク全体の消費電力が抑えられる。このように、上記条件Bは、子ルータをもたない周辺無線端末装置がなるべく親として選択されないようにし、繋がっているルータ群の方に無線端末装置が集中して接続されるようにする。
【0044】
図4を参照して、上記条件Cについて説明する。図4は、一実施形態に係る条件Cによる木構造上の親の選択を説明する。図4の(1)に示すとおり、ネットワークは、1つのBSと7つの無線端末装置を含む。ここで、図4の(2)に示すとおり、無線端末装置1180、1190および1200が新たに設置されたとする。すると、図4の(3)に示すとおり、当該無線端末装置1180、1190および1200は、それぞれ無線端末装置1110、1180、1190を親として選択する。その後、無線端末装置1160は、通信可能な周辺無線端末装置1150および1180のうちのいずれかを親として選択する。ここで上記条件Cによると、子が自身(無線端末装置1160)のみである周辺無線端末装置1150は、周辺無線端末装置1180よりも、より大きな付加コストを与えられる。したがって、図4の(4)に示すとおり、無線端末装置1160は、周辺無線端末装置1180を親として選択する。その結果、無線端末装置1150はルータからエンドデバイスとなり、ネットワーク全体の消費電力が抑えられる。このように、上記条件Cは、無線端末装置に別の周辺無線端末を新たな親として選択させることで、当該無線端末装置により選択されていた親をルータからエンドデバイスにする。
【0045】
図5を参照して、上記条件Dについて説明する。図5は、一実施形態に係る条件Dによる木構造上の親の選択を説明する。図5の(1)に示すとおり、ネットワークは、1つのBSと6つの無線端末装置を含む。ここで、図5の(2)に示すとおり、無線端末装置1370および1380が新たに設置されたとする。すると、図5の(3)に示すとおり、無線端末装置1370および1380は、それぞれ無線端末装置1330および1360を親として選択する。その後、無線端末装置1330は、パスコストが1である周辺無線端末装置1310または1340を親として選択する。ここで上記条件Dによると、子ルータが自身(無線端末装置1330)のみである周辺無線端末装置1310は、周辺無線端末装置1340よりも、より大きな付加コストを与えられる。したがって、図5の(4)に示すとおり、無線端末装置1330は、周辺無線端末装置1340を親として選択する。その後、無線端末装置1320は、パスコストが1である周辺無線端末装置1310または1340を親として選択する。ここで上記条件BおよびCに基づき、図5の(5)に示すとおり、無線端末装置1320は、周辺無線端末装置1340を親として選択する。このように、ネットワークが、図5の(3)のように維持されるのではなく、図5の(5)のように形成されるため、無線端末装置1310は、ルータからエンドデバイスとなる。その結果、ネットワーク全体の消費電力が抑えられる。このように、上記条件Dは、子ルータが自身のみである周辺端末装置を無線端末装置がなるべく親として選択しないようにし、当該周辺端末装置の子ルータの数を0にする。結果として、当該周辺端末装置は、図5における無線端末装置1310のように、上記条件B等によって、エンドデバイスになる可能性が高くなる。
【0046】
また、上記条件Eは、子ルータが自身以外の1台である周辺無線端末装置を無線端末装置がなるべく親として選択しないようにする。結果として、当該周辺端末装置は、図5における無線端末装置1310のように、上記条件D等によって、エンドデバイスになる可能性が高くなる。
【0047】
なお、上記A〜Fの条件に加えて、周辺無線端末装置の子の数、周辺無線端末装置の子ルータの数、周辺無線端末装置の周辺無線端末装置の数等に応じて、1つ当たり一定の付加コストを周辺無線端末装置に与えてもよい。例えば、子の数が0の場合に最大の付加コストを与え、子の数が1、2、3、…と増加するに従って、0の場合の最大の付加コストから一定の数を減じた付加コストを与えてもよい。この場合には、周辺無線端末装置の子の数が所定の数以下の場合にのみ付加コストが与えられることになる。このようなさらなる条件も加えることにより、いくつかの周辺無線端末装置の親選択用コストが同一になる機会を減らすことができる。親選択用コストが同一になると親をランダムに選択せざるをえないため、ネットワークの安定性が失われる。よって、上記のさらなる条件は、ランダムの親の選択によるネットワークの安定性の喪失を防ぎ得る。
【0048】
上記のとおり、本発明の一実施形態に係る親選択方式を説明したが、当該方式には、ルータの数を減らせるというメリット、すなわちネットワーク全体の消費電力を減らせるというメリットがあるだけではなく、デメリットも存在する。当該方式によると、一部の無線端末装置とBSとの間の通信経路が長くなり、中継回数が増加し得る。これは、ネットワーク全体の性能が低下することを意味する。また、受信機の電源を切る無線端末装置の数の増加により常時利用可能な通信経路が減少するため、通信経路の切断、無線端末装置の故障等が発生した場合に、ネットワークの機能が回復するまでの時間は長くなる。すなわち、ネットワークの信頼性が低下し得る。
【0049】
上記式(1)の係数αは、ネットワーク全体の性能および信頼性とネットワーク全体の消費電力の低減とのいずれの要素を重視するかを決めるパラメータとして機能する。ネットワーク全体の消費電力の低減を重視する場合には、当該係数αを小さくし、ネットワーク全体の性能および信頼性を重視する場合には、当該係数αを大きくすればよい。例えば、当該係数αを大きくすればするほど、パスコストのみを用いる従来型のネットワークが形成される。ネットワーク環境、動作させるアプリケーション等によって、性能および信頼性と消費電力の低減とのいずれを優先するかを選択する必要があるが、本方式では、パラメータαを変更することによって両者の優先度を調整することができる。
【0050】
本発明の一実施形態に係る親選択方式を図1のネットワークに適用した結果を図6に示す。ここでは、式(1)の係数αを100としている。例えば、図6のネットワークにおいて、無線端末装置1040は、6つの周辺無線端末装置の親算出用コストを以下のように算出し、その結果、周辺無線端末装置1030を親として選択している。
【表3】
図1では、無線端末装置1010および1060はルータであったが、図6では、それらはエンドデバイスとなっている。このように、一実施形態に係る親選択方式によって、ルータの数を減らし、ネットワーク全体の消費電力を低減し得る。
【0051】
[2.無線端末装置間での送受信]
図7〜9を参照して、ルータおよびエンドデバイスが具体的にどのように通信するかを説明する。まず、図7は、一実施形態に係る無線端末装置間での送受信を説明する。図7を参照すると、ルータa、ルータbおよびエンドデバイスcが通信している。ここでは、ルータaはルータbの親であり、ルータbはエンドデバイスcの親である。
【0052】
無線端末装置が木構造上の子を有しない場合、すなわち無線端末装置がエンドデバイスである場合には、無線端末装置の受信機は間欠動作を行う。一方で、ルータの受信機は、間欠動作を行わず、常時受信機の電源を入れたままにしている。そのため、図7のエンドデバイスcの受信機は、間欠動作を行い、ルータaおよびbの受信機は、電源を入れたままにしている。
【0053】
無線端末装置は、当該無線端末装置のパスコスト、当該無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報、および当該無線端末装置の木構造上の親の識別情報を含む通知情報を送信する。当該パスコスト、木構造上の子孫に関する情報、および木構造上の親の識別情報のうち、周辺無線端末装置にとってあらかじめ既知であるもの、または周辺無線端末装置が別の手段により取得できるものがあれば、それは、上記通知情報の中に含まれなくてもよい。無線端末装置は、当該通知情報を繰り返し送信する。図7を参照すると、ルータaおよびルータbは、定期的に通知情報を送信している。また、エンドデバイスcは、受信機に電源を入れる度に、通知情報を送信している。そして、ルータaは、周辺無線端末装置であるルータbから通知情報を受信し、ルータbは、周辺無線端末装置であるルータaおよびエンドデバイスcから通知情報を受信し、エンドデバイスcは、周辺無線端末装置であるルータbから通知情報を受信する。無線端末装置は、通知情報から各周辺無線端末装置に関する情報を取得し、記憶する。
【0054】
各無線端末装置は、通知情報を受信することにより周辺無線端末装置に関する最新情報を取得し、記憶されている過去の情報を更新するとともに、通信可能な周辺無線端末装置の存在を確認することができる。ここで、ルータである無線端末装置は、常に受信機の電源を入れているため、通信可能な周辺無線端末装置からの通知情報を全て受信することができる。一方で、エンドデバイスである無線端末装置は、受信機に間欠動作を行わせているため、受信機の電源を入れている期間のみ、通知情報を受信できる。すなわち、エンドデバイスは、周辺無線端末装置からの最新の通知情報を受信できるとは限らない。そこで、エンドデバイスの親であるルータは、エンドデバイスである周辺無線端末装置からの通知情報を受信すると、それに対する受信確認を送信する。これにより、エンドデバイスは、少なくとも、自らの親である無線端末装置と通信可能であるかを確認することができる。エンドデバイスは、当該受信確認を受信することができなくなった場合に、親である無線端末装置と通信できなくなったことを把握できる。図7を参照すると、ルータbは、エンドデバイスcからの通知情報を受信する度に、受信確認を送信している。なお、エンドデバイスは、親である無線端末装置以外の周辺無線端末装置からの通知情報を常に受信することは難しいが、受信機の電源を入れている期間と当該周辺無線端末の通知情報の送信とのタイミングが合ったときに、当該通知情報を受信することができる。なお、全てのルータが、エンドデバイスである周辺無線端末装置からの通知情報を受信した際に、それに対する受信確認を送信してもよい。これにより、エンドデバイスは、ルータである周辺無線端末装置の存在および各種情報を把握することができる。また、上記受信確認の中に通知情報の中の各種情報を含めることもできる。これにより、エンドデバイスは、少なくとも自らの親である無線端末装置のパスコスト、木構造上の子孫に関する情報、および木構造上の親の識別情報を取得することができる。
【0055】
また、無線端末装置は、他の装置宛のデータを受信すると、通信経路で結ばれた親または子に当該データを転送する。無線端末装置は、データの宛先がエンドデバイスである自らの子である場合を除き、当該データの受信後すみやかに、当該データを転送することができる。一方で、無線端末装置は、データの転送先がエンドデバイスである自らの子である場合には、当該エンドデバイスからの通知信号を受信した後に、当該データを転送することができる。図7を参照すると、ルータbは、エンドデバイスc宛のデータを受信し、その後エンドデバイスcからの通知情報を受信した後に、エンドデバイスcにデータを送信している。
【0056】
ルータである無線端末装置は、親からの通知信号を所定の期間以内に受信できなくなった場合に、親と通信できなくなったことを把握する。また、エンドデバイスである無線端末装置は、親からの受信確認を所定回数以内または所定の期間以内に受信できなくなった場合に、親と通信できなくなったことを把握する。無線端末装置は、親と通信できなくなった場合に、自身の動作を通信状態が「切断」である場合の通信切断動作に切り替える。この通信切断動作では、無線端末装置は、エンドデバイスであったとしても、受信機の間欠動作を中止する。無線端末装置は、当該通信切断動作として、所定の期間周辺無線端末装置からの通知信号を受信する。そして、無線端末装置は、周辺無線端末装置の中から新たな親を選択する。図8は、一実施形態に係る無線端末装置間での通信切断時の送受信を説明する。図8を参照すると、ルータd、エンドデバイスeおよびルータfが存在する。ここでは、ルータdはエンドデバイスeの親であり、ルータfはエンドデバイスeの周辺無線端末装置である。図8を参照すると、エンドデバイスeは、通知情報の送信後に親であるルータdからの受信確認を受信できなかった。よって、エンドデバイスeは、自身の動作を通信状態が「切断」である場合の通信切断動作に切り替える。その後、エンドデバイスeは、ルータfからの通信情報を受信し、ルータfを新たな親として選択している。そして、エンドデバイスeは、通信状態が「切断」である場合の通信切断動作を解除し、その受信機の間欠動作を再開する。
【0057】
無線端末装置は、エンドデバイスを親として選択した場合に、間欠動作の中止を指示する指示情報(以下、「ルータ遷移指示」と呼ぶ)を送信する。図9は、一実施形態に係る無線端末装置間での通信切断時の送受信を説明する。図9を参照すると、図8のルータfの代わりに、エンドデバイスgがエンドデバイスeの周辺無線端末装置となっている。図8と同様に、ここでは、ルータdはエンドデバイスeの親である。エンドデバイスeは、自身の動作を通信状態が「切断」である場合の通信切断動作に切り替えた後に、エンドデバイスgから通知情報を受信する。そして、エンドデバイスeは、エンドデバイスgを親として選択する。その後、エンドデバイスeは、エンドデバイスgにルータ遷移指示を送信する。その結果エンドデバイスgは、自身の動作をエンドデバイスモードの動作からルータモードの動作へと切り替える。このように、ルータ遷移指示によって、周辺無線端末装置から親として選択されたエンドデバイスは、エンドデバイスの動作からルータの動作へと自らの動作を切り替えることができ、受信機の間欠動作を中止する。
【0058】
[3.無線端末装置の構成]
図10を用いて、一実施形態に係る無線端末装置100の具体的な構成を説明する。図10は、一実施形態に係る無線端末装置100の構成の一例を示すブロック図である。図10を参照すると、無線端末装置100は、送受信アンテナ110、受信回路120、受信データ処理部130、状態管理部140、親選択用コスト算出部150、アプリケーション部160、送信データ生成部170、送信回路180を備える。ここで、親選択用コスト算出部150は評価値算出部の一例であり、受信回路120および受信データ処理部130は、受信部の一例であり、また送信データ生成部170および送信回路150は、送信部の一例である。
【0059】
(送受信アンテナ110)
送信アンテナ110は、周辺無線端末装置からの信号を受信し、受信回路120に渡す。また、送信アンテナ110は、送信回路150からの信号を周辺無線端末装置へ送信する。
【0060】
(受信回路120)
受信回路120は、受信信号を復調し、復号する。そして、受信回路120は、復号された受信情報を受信データ処理部130に出力する。
【0061】
(受信データ処理部130)
受信データ処理部130は、受信情報の種類を判別する。受信情報が通知情報、受信確認、またはルータ遷移指示であれば、受信データ処理部130は、当該受信情報を状態管理部140へ出力する。また、受信情報が他の装置宛のデータであれば、当該受信情報を送信データ生成部170へ出力する。また、受信情報が無線端末装置100宛のデータであれば、当該受信情報をアプリケーション部160へ出力する。なお、周辺無線端末装置からの通知情報は、当該周辺無線端末装置のパスコスト、当該周辺無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報、および当該周辺無線端末装置の木構造上の親の識別情報のうちの少なくとも1つを含む。
【0062】
(状態管理部140)
状態管理部140は、親選択用コスト算出部150に親選択用コストを算出させる。そして、状態管理部140は、当該親選択用コストに基づいて、周辺無線端末装置のいずれかを木構造上の親として選択する。当該親選択用コストの具体例は、上記[1.木構造のネットワークにおける親の選択方式]で説明されたとおりである。
【0063】
また、状態管理部140は、例えば、親選択用コスト算出部150による親選択用コストの算出のために、周辺無線端末装置のパスコスト、周辺無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報、および周辺無線端末装置の親の識別情報を取得し、記憶する。状態管理部140は、例えば周辺無線端末装置からの通知情報から、これらの情報を取得する。周辺無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報は、例えば、周辺無線端末装置の木構造上の子の数および周辺無線端末装置の子ルータの数を含む。
【0064】
また、状態管理部140は、例えば、無線端末装置100の通知情報の中に含めるべき情報を得るために、周辺無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報および周辺無線端末装置の親の識別情報から、無線端末装置100の子孫に関する情報を得る。無線端末装置100の子孫に関する情報は、例えば、無線端末装置100の子の数、無線端末装置100の子ルータの数を含む。また、状態管理部140は、例えば、親として選択された周辺無線端末装置のパスコストから、無線端末装置100自身のパスコストを得る。例えば、状態管理部140は、「親のパスコスト+1」を自身のパスコストとする。
【0065】
また、状態管理部140は、無線端末装置100がエンドデバイスである場合に、無線端末装置100の受信機に間欠動作を行わせる。換言すると、無線端末装置100の子の数が0となった場合に、状態管理部140は、自身の動作をルータモードの動作から、受信機に間欠動作を行わせるエンドデバイスモードの動作へと切り替える。一方で、状態管理部140は、例えば、ルータ遷移指示を受信した場合に、自身の動作をエンドデバイスモードの動作からルータモードの動作へと切り替え、受信機の間欠動作を中止する。なお、状態管理部140は、通信状態が「切断」である場合の通信切断動作では、無線端末装置100がエンドデバイスであったとしても、無線端末装置100の受信機に間欠動作を行わせない。
【0066】
また、状態管理部140は、例えば、親である周辺無線端末装置からの通知情報または受信確認を、所定の期間以内または所定の回数以内に受信したか否かを判定する。当該通知情報または当該受信確認が所定の期間以内または所定の回数以内に受信されていない場合には、状態管理部140は、親と通信できなくなったと判定する。そして、状態管理部140は、自身の動作を通信状態が「切断」である場合の通信切断動作に切り替える。当該通信切断動作は、[2.無線端末装置間での送受信]にて説明されたとおりである。
【0067】
また、状態管理部140は、エンドデバイスを無線端末装置100の木構造上の親として選択した場合に、ルータ遷移指示の送信を、送信データ生成部170に依頼する。
【0068】
また、状態管理部140は、無線端末装置100のパスコスト、無線端末装置100の木構造上の子孫に関する情報、および無線端末装置100の木構造上の親の識別情報のうちの少なくとも1つを含む通知情報の送信を、送信データ生成部170に依頼する。無線端末装置100の木構造上の子孫に関する情報は、例えば、無線端末装置100の木構造上の子の数および無線端末装置100の子ルータの数を含む。
【0069】
また、状態管理部140は、無線端末装置100のエンドデバイスである子からの通知情報を受信した場合に、受信確認の送信を、送信データ生成部170に依頼する。
【0070】
(親選択用コスト算出部150)
親選択用コスト算出部150は、周辺無線端末装置のパスコスト、当該周辺無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報、および当該周辺無線端末装置が無線端末装置100の木構造上の親として選択されている周辺無線端末装置であるか否かに基づいて、親選択用コストを算出する。当該親選択用コストの具体例は、上記[1.木構造のネットワークにおける親の選択方式]で説明されたとおりである。また、親選択用コスト算出部150は、例えば、無線端末装置100の木構造上の子孫に関する情報にさらに基づいて、親選択用コストを算出する。ここで、周辺無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報は、例えば、周辺無線端末装置の木構造上の子の数および周辺無線端末装置の子ルータの数を含む。また、無線端末装置100の木構造上の子孫に関する情報は、例えば、無線端末装置100の子ルータの数を含む。
【0071】
また、親選択用コスト算出部150は、例えば、周辺無線端末装置のパスコストに第1の係数を乗じた値と、周辺無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報、および当該周辺無線端末装置が無線端末装置の木構造上の親として選択されている周辺無線端末装置であるか否か、に基づいて得られる付加コストに第2の係数を乗じた値とに応じて、親選択用コストを算出する。ここで、親選択用コスト算出部150は、例えば、無線端末装置100の木構造上の子孫に関する情報にさらに基づいて、付加コストを算出する。当該親選択用コストの具体例も、上記[1.木構造のネットワークにおける親の選択方式]で説明されたとおりである。
【0072】
なお、親選択用コスト算出部150は、周辺無線端末装置のパスコスト、当該周辺無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報、当該周辺無線端末装置が無線端末装置100の木構造上の親として選択されている周辺無線端末装置であるか否か、および無線端末装置100の木構造上の子孫に関する情報を、状態管理部140から提供される。
【0073】
(アプリケーション部160)
アプリケーション部160は、無線端末装置100が備えるアプリケーションを実行する。アプリケーション部160は、無線端末装置100宛のデータを受信した場合には、当該データを処理する。また、アプリケーション部160は、無線端末装置100とは別の装置にデータを送信する必要がある場合には、送信データ生成部170に当該データの送信を依頼する。
【0074】
(送信データ生成部170)
送信データ生成部170は、状態管理部140からの依頼に応じて、通知情報、受信確認またはルータ遷移指示を含む送信パケットおよび送信フレームを生成する。また、送信データ生成部170は、受信データ処理部130から受け取った他の装置宛のデータを含む送信パケットおよび送信フレームを生成する。また、送信データ生成部170は、アプリケーション部160からの依頼に応じて、他の装置宛のデータを含む送信パケットおよび送信フレームを生成する。
【0075】
(送信回路180)
送信回路180は、送信フレームを符号化し、変調する。そして、送信回路180は、送受信アンテナ110を介して、変調された送信信号を送信する。
【0076】
以上のとおり、無線端末装置100の構成が説明されたが、当該無線端末装置100は、典型的には、ハードウェエアおよびソフトウェアの組み合わせにより実現され得る。受信回路120および送信回路180は、例えば通信デバイス、通信回路等により実現され得る。また、受信データ処理部130、状態管理部140、親選択用コスト算出部150、アプリケーション部160および送信データ生成部170は、CPU、RAMおよびROMによって実現され得る。例えば、CPUは、無線端末装置100の動作全般を制御する。また、ROMには、無線端末装置100の動作を制御するためのプログラムおよびデータが格納され、RAMにはCPUによる処理の実行時にプログラムおよびデータが一時的に記憶される。
【0077】
[4.処理の流れ]
以下では、図11〜13を用いて、本発明の一実施形態に係る無線通信処理について説明する。一実施形態に係る無線端末装置は、エンドデバイスである場合にはエンドデバイスモードの動作を行い、ルータである場合にはルータモードの動作を行う。ただし、無線端末装置は、親と通信できなくなった場合に、自身の動作を通信状態が「切断」である場合の通信切断動作に切り替える。よって、以下では、エンドデバイスモードの動作、ルータモードの動作、および通信切断動作のそれぞれについて、処理の流れを説明する。
【0078】
(エンドデバイスモードの動作)
まず、エンドデバイスモードの動作における処理の流れを説明する。図11は、エンドデバイスの処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0079】
図11を参照すると、ステップS210で、状態管理部140は、所定の期間、無線端末装置100の受信機の電源を切る。そして、所定の期間経過後に、ステップS220で、状態管理部140は、無線端末装置100の受信機の電源を入れる。
【0080】
次に、ステップS230で、親選択用コスト算出部150は、周辺無線端末装置の親選択用コストを算出する。そして、ステップS240で、状態管理部140は、当該親選択用コストに基づいて、周辺無線端末装置のいずれかを親として選択する。また、ステップS250で、状態管理部140は、通知情報に含めるための無線端末装置100自身のパスコストを算出する。
【0081】
次に、ステップS260で、送信データ生成部170および送信回路180は、送受信アンテナ110を介して、周辺無線端末装置に通知情報を送信する。ここで、エンドデバイスが親として選択されている場合には、送信データ生成部170および送信回路180は、当該エンドデバイスにルータ遷移要求も送信する。
【0082】
次に、ステップS270で、受信回路120および受信データ処理部130は、送受信アンテナ110を介して、周辺無線端末装置から各種情報を受信する。当該各種情報には、例えば、親である周辺無線端末装置からの受信確認、その他の周辺無線端末装置からの通知情報、無線端末装置100宛のデータ、無線端末装置100以外の装置宛の転送すべきデータ、またはルータ遷移指示が含まれ得る。また、ステップS280で、送信データ生成部170および送信回路180は、アプリケーション部160からの他の装置宛のデータを送信する。
【0083】
次に、ステップS290では、状態管理部140は、所定の期間以内または所定の回数以内に無線端末装置100の親からの受信確認を受信したか否かを判定する。ここで、当該受信確認が受信されていれば、処理はステップS300へ進む。一方、当該受信確認が受信されていなければ、処理はステップS320へ進む。
【0084】
ステップS300では、状態管理部140は、ルータ遷移指示を受信したか否かを判定する。ここで、ルータ遷移指示が受信されていれば、処理はステップS310へ進む。一方、ルータ遷移指示が受信されていなければ、処理はステップS210へ戻り、無線端末装置100は、エンドデバイスモードの動作における処理を継続する。
【0085】
ステップS310で、状態管理部140は、動作モードをエンドデバイスモードからルータモードへと切替える。その後当該処理は終了し、無線端末装置100は、ルータモードの動作における処理を開始する。
【0086】
ステップS320では、状態管理部140は、通信状態情報を「接続」から「切断」に変更する。
【0087】
次に、ステップS330では、状態管理部140は、ルータ遷移指示を受信したか否かを判定する。ここで、ルータ遷移指示が受信されていれば、処理はステップS340へ進む。一方、ルータ遷移指示が受信されていなければ、その後当該処理は終了し、無線端末装置100は、通信切断動作における処理を開始する。
【0088】
ステップS340では、状態管理部140は、動作モードをエンドデバイスモードからルータモードへと切替える。その後当該処理は終了し、無線端末装置100は、通信切断動作における処理を開始する。
【0089】
(ルータモードの動作)
次に、ルータモードの動作における処理の流れを説明する。図12は、ルータの処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0090】
図12を参照すると、ステップS410で、状態管理部140は、所定の期間が経過したか否かを判定する。ここで、所定の期間が経過している場合には、処理はステップS420へ進む。一方で、所定の期間が経過していない場合には、処理はステップS470へ進む。
【0091】
ステップS420で、状態管理部140は、既に受信している各周辺無線端末装置の通知情報から、無線端末装置100の子の数および子ルータの数を集計する。次のステップS430〜S470は、既に説明した図11のステップS230〜S270と同じである。
【0092】
ステップS480で、状態管理部140は、エンドデバイスである子からの通知情報を受信したか否かを判定する。当該通知情報が受信されていれば、処理はステップ490へ進む。一方、当該通知情報が受信されていなければ、処理はステップ510へ進む。
【0093】
ステップS490で、送信データ生成部170および送信回路180は、エンドデバイスである子に受信確認を送信する。また、ステップS500で、送信データ生成部170および送信回路180は、当該エンドデバイスである子宛のデータがあれば、当該データを当該エンドデバイスである子に送信する。
【0094】
次に、ステップS510で、エンドデバイスである子以外の装置宛のデータを送信および転送する。当該データは、アプリケーション部160からの他の装置宛のデータ、および周辺無線端末装置から受信した転送すべき他の装置宛のデータを含む。
【0095】
次に、ステップS520で、状態管理部140は、無線端末装置100の親からの受信確認を受信したか否かを判定する。ここで、当該受信確認が受信されていれば、処理はステップ530へ進む。一方、当該受信確認が受信されていなければ、処理はステップ550へ進む。
【0096】
ステップS530で、状態管理部140は、無線端末装置100の子の数が0であるか否かを判定する。ここで、子の数が0であれば、処理はステップ540へ進む。一方、子の数が0でなければ、処理はステップS410へ戻り、無線端末装置100は、ルータモードの動作における処理を継続する。
【0097】
ステップS540で、状態管理部140は、動作モードをルータモードからエンドデバイスモードへと切替える。その後当該処理は終了し、無線端末装置100は、エンドデバイスモードの動作における処理を開始する。
【0098】
ステップS550で、状態管理部140は、通信状態情報を「接続」から「切断」に変更する。
【0099】
次に、ステップS560で、状態管理部140は、無線端末装置100の子の数が0であるか否かを判定する。ここで、子の数が0であれば、処理はステップS570へ進む。一方、子の数が0でなければ、その後当該処理は終了し、無線端末装置100は、通信切断動作における処理を開始する。
【0100】
ステップS570で、状態管理部140は、動作モードをルータモードからエンドデバイスモードへと切替える。その後当該処理は終了し、無線端末装置100は、通信切断動作における処理を開始する。
【0101】
(通信切断動作)
次に、通信切断動作における処理の流れを説明する。図13は、通信が切断された場合の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0102】
図13を参照すると、ステップS610で、受信回路120および受信データ処理部130は、所定の期間、送受信アンテナ110を介して、周辺無線端末装置から各種情報を受信する。
【0103】
次に、ステップS620で、状態管理部140は、周辺無線端末装置からの通知情報を受信したか否かを判定する。当該通知情報が受信されていれば、処理はステップ630へ進む。一方、当該通知情報が受信されていなければ、処理はステップ610へ戻る。
【0104】
次に、ステップS630で、親選択用コスト算出部150は、周辺無線端末装置の親選択用コストを算出する。そして、ステップS640で、状態管理部140は、当該親選択用コストに基づいて、周辺無線端末装置のいずれかを新たな親として選択する。
【0105】
次に、ステップS650で、状態管理部140は、親として選択された周辺無線端末装置がルータであるか否かを判定する。当該周辺無線端末装置がルータであれば、処理はステップS670へ進む。一方で、当該周辺無線端末装置がエンドデバイスであれば、処理はステップS660へ進む。
【0106】
ステップS660で、送信データ生成部170および送信回路180は、親として選択されたエンドデバイスにルータ遷移指示を送信する。
【0107】
ステップS670で、状態管理部140は、通信状態情報を「切断」から「接続」に変更する。その後当該処理は終了し、無線端末装置100は、現在の動作モードに応じて、エンドデバイスモードの動作またはルータモードの動作のいずれかにおける処理を開始する。
【0108】
[5.変形例]
既に説明されたとおり、上記の一実施形態に係る親選択方式は、ネットワーク全体の消費電力を低減するというメリットを有するが、ネットワークの性能および信頼性に関するデメリットを有する。とりわけ、ネットワークの信頼性について言えば、受信機の電源を切る無線端末装置の数の増加により常時利用可能な通信経路が減少するため、通信経路の切断、無線端末装置の故障等が発生した場合に、ネットワークの機能が回復するまでの時間は長くなる。そこで、このネットワークの信頼性に関するデメリットを解消するために、一実施形態の変形例に係る無線端末装置100は、ある周辺無線端末装置を木構造上の親として選択することに加えて、別の周辺無線端末装置を予備の親(以下、「バックアップノード」と呼ぶ)も選択する。バックアップノードとして選択された周辺無線端末装置は、ルータと同様に、受信機の間欠動作を行わない。そして、当該無線端末装置100は、木構造上の親として選択されている周辺無線端末装置と通信できなくなった場合に、当該バックアップノードを木構造上の親として選択する。その結果、無線端末装置100は、バックアップノードであった新たな親を介して、即座に通信を再開することができる。これにより、通信経路の切断、無線端末装置の故障等が発生した場合のネットワーク機能が回復するまでの時間が短縮され得る。
【0109】
(変形例に係る無線端末装置の構成)
上記の一実施形態に係る無線端末装置100と変形例に係る無線端末装置100との構成上の主な相違点を説明する。なお、当該変形例に係る無線端末装置100の構成要素は、図10に示されたものと同じである。
【0110】
状態管理部140は、親選択用コストに基づいて、木構造上の親に加えて、周辺無線端末装置のいずれかをバックアップノードとして選択する。ここで、状態管理部140は、例えば、最善の親選択用コストを伴う周辺無線端末装置を木構造上の親として選択し、次善の親選択用コストを伴う周辺無線端末装置を予備の親として選択する。図6および上記表3を参照すると、例えば、無線端末装置1040は、無線端末装置1010をバックアップノードとして選択する。
【0111】
また、状態管理部140は、無線端末装置100がバックアップノードとして選択されているか否かを把握するために、周辺無線端末装置が選択したバックアップノードの識別情報も取得し、記憶する。状態管理部140は、例えば周辺無線端末装置の通知情報から、当該バックアップノードの識別情報を取得する。
【0112】
また、状態管理部140は、無線端末装置100がエンドデバイスであり、かつ無線端末装置100が周辺無線端末装置のいずれからもバックアップノードとして選択されていない場合に、無線端末装置100の受信機に間欠動作を行わせる。換言すると、無線端末装置100の子の数が0となり、かつ無線端末装置100が周辺無線端末装置のいずれからもバックアップノードとして選択されていないようになると、状態管理部140は、自身の動作をルータモードの動作から、受信機の間欠動作を伴うエンドデバイスモードの動作へと切り替える。
【0113】
また、状態管理部140は、親と通信できなくなったと判定した場合に、バックアップノードを新たな親として選択する。
【0114】
また、状態管理部140は、エンドデバイスを親として選択した場合のみではなく、エンドデバイスをバックアップノードとして選択した場合にも、ルータ遷移指示の送信を、送信データ生成部170に依頼する。
【0115】
また、状態管理部140は、送信データ生成部170に送信を依頼する通知情報に、バックアップノードの識別情報も含める。
【0116】
また、状態管理部140は、無線端末装置100のエンドデバイスである子からの通知情報を受信した場合だけではなく、無線端末装置100をバックアップノードとして選択しているエンドデバイスからの通知情報を受信した場合にも、受信確認の送信を、送信データ生成部170に依頼する。
【0117】
(変形例に係る処理の流れ)
本発明の一実施形態の変形例に係る無線通信処理は、図11および図12の処理の一部を変更することにより実現される。なお、一実施形態の変形例では、エンドデバイスである無線端末装置であっても、周辺無線端末装置からバックアップノードとして選択されている場合には、エンドデバイスモードではなくルータモードの動作を行う。
【0118】
当該変形例では、図11のエンドデバイスモードでの動作における処理の流れのうち、ステップS240、S260およびS290が、以下のように変更される。
【0119】
ステップS240で、状態管理部140は、当該親選択用コストに基づいて、周辺無線端末装置のいずれかを親として選択し、また周辺無線端末装置のいずれか別のものをバックアップノードとして選択する。
【0120】
ステップS260で、送信データ生成部170および送信回路180は、送受信アンテナ110を介して、周辺無線端末装置に通知情報を送信する。ここで、エンドデバイスが親またはバックアップノードとして選択されている場合には、送信データ生成部170および送信回路180は、当該エンドデバイスにルータ遷移要求も送信する。
【0121】
ステップS290で、状態管理部140は、無線端末装置100の親からの受信確認を所定の期間以内または所定の回数以内に受信したか否かを判定する。ここで、当該受信確認が受信されていれば、処理はステップS300へ進む。一方、当該受信確認が受信されていなければ、状態管理部140は、さらに、無線端末装置100のバックアップノードからの受信確認を受信したか否かを判定する。ここで、当該受信確認が受信されていれば、状態管理部140はバックアップノードを新たな親として選択し、処理はステップS300へ進む。一方、当該受信確認が受信されていなければ、処理はステップS320へ進む。
【0122】
また、当該変形例では、図12のエンドデバイスモードでの動作における処理の流れのうち、ステップS440、S460、S480、S490、S520、S530およびS560が、変更される。このうち、変更されたステップS440、S460およびS520は、それぞれ上記変更されたステップS240、S260およびS290と同じである。よって、変更されたS480、S490、S530およびS560が、以下で説明される。
【0123】
ステップS480で、エンドデバイスである子からの通知情報、または無線端末装置100をバックアップノードとして選択した周辺無線端末装置からの通知情報を受信したか否かを判定する。いずれかの通知情報が受信されていれば、処理はステップ490へ進む。一方、いずれの通知情報も受信されていなければ、処理はステップ510へ進む。
【0124】
ステップS490で、送信データ生成部170および送信回路180は、エンドデバイスである子、および/または無線端末装置100をバックアップノードとして選択している周辺無線端末装置に、受信確認を送信する。
【0125】
ステップS530で、状態管理部140は、無線端末装置100の子の数が0であり、かつ無線端末装置100が周辺無線端末装置のいずれからもバックアップノードとして選択されていないか否か、を判定する。ここで、判定結果が真であれば、処理はステップ540へ進む。一方、判定結果が偽であれば、処理はステップ410へ戻り、無線端末装置100は、ルータモードの動作における処理を継続する。
【0126】
ステップS560で、状態管理部140は、無線端末装置100の子の数が0であり、かつ無線端末装置100が周辺無線端末装置のいずれからもバックアップノードとして選択されていないか否か、を判定する。ここで、判定結果が真であれば、処理はステップS570へ進む。一方、判定結果が偽であれば、その後当該処理は終了し、無線端末装置100は、通信切断動作における処理を開始する。
【0127】
ここまで、図1〜図13を用いて、本発明の一実施形態およびその変形例について説明した。本発明の一実施形態によれば、特定のルータを多数の無線端末装置の親とすることができ、その結果、ルータである無線端末装置の数を減らすことができる。すなわち、一実施形態に係る無線端末装置により、ネットワーク全体の消費電力を減らすことができる。
【0128】
また、例えば上記式(1)のように、パスコストと付加コストとを係数により重み付けすることにより、ネットワークの性能および信頼性とネットワーク全体の消費電力の低減との間の優先度を調整することができる。
【0129】
また、上記通知情報の送受信によって、親選択用コストの算出に必要な周辺無線端末装置に関する情報を取得することができる。また、上記ルータ遷移指示によって、新たに親として選択されたエンドデバイスをルータとして動作させることができ、結果としてネットワークの切断を回避することができる。
【0130】
また、本発明の一実施形態の変形例によれば、ネットワーク全体の消費電力を減らすとともに、ネットワークの信頼性も高めることができる。
【0131】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0132】
100 無線端末装置
120 受信回路
130 受信データ処理部
140 状態管理部
150 親選択用コスト算出部
160 アプリケーション部
170 送信データ生成部
180 送信回路
1000 BS
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線端末装置、無線通信システム、プログラムおよび無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の端末でネットワークを構成し、隣接した端末間でパケットの送受信を繰り返すことにより直接接続していない端末間の通信を実現する、様々な方式が開発されている。このような無線ネットワークでは、追加の配線コストを使うことなく信号が周辺の全ての端末に到達するように、全ての端末が周辺の全ての端末と通信可能であることを前提として転送経路を設定することが一般的であった。
【0003】
しかしながら、全ての端末との通信を前提とすると各端末の消費電力が大きくなるという問題がある。信号を受信するためには各端末は常に受信機を動作させておく必要があるためである。
【0004】
これに対して、全ての端末との通信を前提とせず、中継処理を行う端末と中継処理を行わない端末とに分ける方法が開発されている。この場合、中継処理を行うとされた装置だけを用いたルーティング処理が行われる。例えば、特許文献1では、エンドデバイスと名付けられた端末は、中継処理を行わず、自身のデータを送信する時を除き受信機の電源を切る。また、エンドデバイスは、周辺の端末から特定の1つを選択し、選択した端末のみと通信する。このように、エンドデバイスは、消費電力を削減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−55301
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の方法では、各端末が中継処理を行うか否かを事前に決めておく必要がある。しかしながら、各端末による中継処理が必要か否かは周辺の無線伝搬環境、端末の設置状況等によって変化するため、中継処理を行う端末を事前に最適に決めることは現実的ではない。一方で、全ての端末が中継処理を行う場合には、中継処理を行う端末は多くの電力を消費するため通信に必要以上に多くの電力を消費し、ネットワーク全体の消費電力の増大につながる。
【0007】
そこで、本発明は、中継処理を行うか否かを各端末に自律的に判断させ、ネットワーク全体の消費電力を低減することを可能とする、新規かつ改良された無線端末装置、無線通信システム、プログラムおよび無線通信方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、無線により通信可能な複数の装置をノードとして含む木構造のネットワークにおいて通信する無線端末装置であって、上記複数の装置のうちの通信可能な周辺無線端末装置のパスコスト、当該周辺無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報、および当該周辺無線端末装置が上記無線端末装置の木構造上の親として選択されている周辺無線端末装置であるか否かに基づいて、当該周辺無線端末装置を木構造上の親として選択することに対する評価値を算出する評価値算出部と、上記評価値に基づいて、上記周辺無線端末装置のいずれかを木構造上の親として選択する状態管理部と、を備える無線端末装置が提供される。
【0009】
また、上記評価値算出部は、上記無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報にさらに基づいて、上記評価値を算出してもよい。
【0010】
また、上記周辺無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報は、上記周辺無線端末装置の木構造上の子の数を含んでもよい。
【0011】
また、上記周辺無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報は、上記周辺無線端末装置の木構造上の孫を木構造上の子として有する、当該周辺無線端末装置の木構造上の子の数をさらに含んでもよい。
【0012】
また、上記無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報は、上記無線端末装置の木構造上の孫を木構造上の子として有する、当該無線端末装置の木構造上の子の数をさらに含んでもよい。
【0013】
また、上記評価値算出部は、上記周辺無線端末装置のパスコストに第1の係数を乗じた値と、上記周辺無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報、および当該周辺無線端末装置が上記無線端末装置の木構造上の親として選択されている周辺無線端末装置であるか否か、に基づいて得られる付加コストに第2の係数を乗じた値とに応じて、上記評価値を算出してもよい。
【0014】
また、上記状態管理部は、上記無線端末装置が木構造上の子を有しない場合に、上記無線端末装置の受信機に間欠動作を行わせてもよい。
【0015】
また、上記無線端末装置は、上記無線端末装置のパスコスト、上記無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報、および上記無線端末装置の木構造上の親の識別情報のうちの少なくとも1つを含む通知情報を送信する送信部と、上記周辺無線端末装置のパスコスト、上記周辺無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報、および上記周辺無線端末装置の木構造上の親の識別情報のうちの少なくとも1つを含む通知情報を受信する受信部と、をさらに備えてもよい。
【0016】
また、上記送信部は、上記通知情報を繰り返し送信してもよい。
【0017】
また、上記送信部は、間欠動作を行う受信機を有する周辺無線端末装置が上記無線端末装置の木構造上の親として選択された場合に、間欠動作の中止を指示する指示情報を送信してもよい。
【0018】
また、上記状態管理部は、上記評価値に基づいて上記周辺無線端末装置のいずれかを予備の親として選択し、上記無線端末装置が、上記無線端末装置の木構造上の親として選択されている周辺無線端末装置と通信できなくなった場合には、上記予備の親を木構造上の親として選択してもよい。
【0019】
また、上記状態管理部は、上記無線端末装置が木構造上の子を有さず、かつ上記無線端末装置が上記周辺無線端末装置のいずれからも予備の親として選択されていない場合に、上記無線端末装置の受信機に間欠動作を行わせてもよい。
【0020】
また、上記状態管理部は、最善の評価値を伴う上記周辺無線端末装置を木構造上の親として選択し、次善の評価値を伴う上記周辺無線端末装置を予備の親として選択してもよい。
【0021】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、上記無線端末装置を含む無線通信システムが提供される。
【0022】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、無線により通信可能な複数の装置をノードとして含む木構造のネットワークにおいて通信する無線端末装置を制御するコンピュータを、上記複数の装置のうちの通信可能な周辺無線端末装置のパスコスト、当該周辺無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報、および当該周辺無線端末装置が上記無線端末装置の木構造上の親として選択されている周辺無線端末装置であるか否かに基づいて、当該周辺無線端末装置を木構造上の親として選択することに対する評価値を算出する評価値算出部と、上記評価値に基づいて、上記周辺無線端末装置のいずれかを木構造上の親として選択する状態管理部と、として機能させるプログラムが提供される。
【0023】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、無線により通信可能な複数の装置をノードとして含む木構造のネットワークにおいて通信する無線端末装置を用いた無線通信方法であって、上記複数の装置のうちの通信可能な周辺無線端末装置のパスコスト、当該周辺無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報、および当該周辺無線端末装置が上記無線端末装置の木構造上の親として選択されている周辺無線端末装置であるか否かに基づいて、当該周辺無線端末装置を木構造上の親として選択することに対する評価値を算出するステップと、上記評価値に基づいて、上記周辺無線端末装置のいずれかを木構造上の親として選択するステップと、を含む無線通信方法が提供される。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明に係る無線端末装置、無線通信システム、プログラムおよび無線通信方法によれば、中継処理を行うか否かを各端末に自律的に判断させ、ネットワーク全体の消費電力を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】パスコストに基づき形成された木構造のネットワークを示す。
【図2】一実施形態に係る条件Aによる木構造上の親の選択を説明する。
【図3】一実施形態に係る条件Bによる木構造上の親の選択を説明する。
【図4】一実施形態に係る条件Cによる木構造上の親の選択を説明する。
【図5】一実施形態に係る条件Dによる木構造上の親の選択を説明する。
【図6】親選択用コストに基づき形成された木構造のネットワークを示す。
【図7】一実施形態に係る無線端末装置間での送受信を説明する。
【図8】一実施形態に係る無線端末装置間での通信切断時の送受信を説明する。
【図9】一実施形態に係る無線端末装置間での通信切断時の送受信を説明する。
【図10】一実施形態に係る無線端末装置100の構成の一例を示すブロック図である。
【図11】エンドデバイスの処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図12】ルータの処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図13】通信が切断された場合の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に添付の図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。一例として説明される本発明の一実施形態は、[1.木構造のネットワークにおける親の選択方式]、[2.無線端末装置間での送受信]、[3.無線端末装置の構成]、[4.処理の流れ]、[5.変形例]という順序で説明される。
【0027】
[1.木構造のネットワークにおける親の選択方式]
無線により通信可能な複数の装置により形成される無線マルチホップネットワークは、典型的には、外部ネットワークとの接続機能を有する基地局装置(以下、「BS」と呼ぶ)と、BSを介して外部ネットワークに接続する1つ以上の無線端末装置とを含む、木構造のネットワークである。ここで、BSは、当該木構造のネットワークの根であり、各無線端末装置は、当該木構造のネットワークの節または葉である。木構造上の節となる無線端末装置、すなわち木構造上の子を有する無線端末装置を、ルータと呼び、木構造上の葉となる無線端末装置、すなわち木構造上の子を有さない無線端末装置を、エンドデバイスと呼ぶこととする。各無線端末装置は、直接的に、または木構造上の先祖(親を含む)である無線端末装置を経由して、BSにデータを送信することができ、またBSからのデータを受信することができる。また、各無線端末装置は、自身の木構造上の子孫宛のデータを受信した場合には、当該無線端末装置のいずれかの子に当該データを転送する。各無線端末装置は、BS宛のデータを受信した場合には、当該無線端末装置の親に当該データを転送する。このように、各無線端末装置は、直接的に、または他の無線端末装置を経由して、BSに接続される。
【0028】
一実施形態に係るBSは、例えば、スマートグリッドにおけるスマートメータである。また、一実施形態に係る無線端末装置は、例えば、スマートメータと通信する、テレビ、プロジェクタ、DVDレコーダ、ブルーレイレコーダ、音楽プレイヤ、ゲーム機器、エアコンディショナ、洗濯機、冷蔵庫等の家電機器、PC(Personal Computer)、プリンタ、スキャナ等の情報処理機器、または照明機器、湯沸かし器等のその他の電気を使用する機器である。ただし、当然のことながら、一実施形態に係るBSおよび無線端末装置は、これらに限られない。
【0029】
上記木構造のネットワークを形成し、BSと通信するために、無線端末装置は、BSおよび他の無線端末装置のうち通信可能なもの(以下、「周辺無線端末装置」と呼ぶ)のいずれかを、木構造上の親として選択する。各無線端末装置が木構造上の親を選択した結果、エンドデバイスとなった無線端末装置は、他の無線端末装置宛のデータを転送する必要がないため、自らデータを送信する際と、受信すべきデータが存在するか否かを親に問い合わせる際を除き、受信機の電源を切ることができる。これにより、エンドデバイスは、消費電力を低減することができる。一方で、ルータとなった無線端末装置は、他の無線端末装置宛のデータを転送する必要があるため、受信機の電源を切ることが困難である。つまり、ルータの数をより少なくすることができれば、換言するとエンドデバイスの数をより多くすることができれば、ネットワーク全体の消費電力を低減することができる。
【0030】
以下では、無線端末装置が周辺無線端末装置から取得したパスコストのみを用いた親選択方式を説明した上で、本発明に係る一実施形態に係る親選択方式を説明する。
【0031】
(パスコストのみを使用した親選択方式)
一般的なパスコストのみを用いた親選択方式の一例を、以下に示す。
【表1】
この方式により、各無線端末装置は、BSまでの中継回数が最も少ない経路を選択できる。なお、無線端末装置が周辺無線端末装置のパスコストを取得するために、各無線端末装置は、自らの識別情報とパスコストとを含んだ情報を定期的に送信する。
【0032】
図1を参照することにより、上記のパスコストのみを使用した親選択方式を用いた結果を説明する。図1は、パスコストに基づき形成された木構造のネットワークを示す。図1では、ノード1000がBSであり、ノード1010〜1080が無線端末装置である。BS以外の各ノードの中に示されている数字は、各ノードのパスコストを示す。BSと無線端末装置との間または無線端末装置間を結ぶ実線は、それらの間で確立された通信経路を示す。すなわち、当該実線は、BSおよび無線端末装置がデータを直接送受信する通信経路を示す。一方で、無線端末装置間を結ぶ点線は、それらの間の通信経路の候補を示す。すなわち、当該点線は、無線端末装置が互いに通信可能であることを示す。
【0033】
図1に示されるネットワークでは各無線端末装置からBSまでのパスコスト(ここでは送信回数)が最小になっているため、当該ネットワークは最も高い性能をもつネットワークである。しかしながら、当該ネットワークは、消費電力が低いネットワークではない。実際に、ノード1010、1030、1040、1050および1060が、受信機の消費電力を低減することが困難なルータである。
【0034】
さらに各無線端末装置の状況に応じて上記のパスコストを加減する方式がある。例えば、無線端末装置がエンドデバイスである場合に当該無線端末装置のパスコストを割増しすることが考えられる。これは、エンドデバイスが他の無線端末装置から親として選択されないようにすることができる。また、例えば、各無線端末装置の子の数に応じてパスコストを割増しすることも考えられる。
【0035】
しかしながら、パスコストの加減のみによりルータの数を減らすことには限界がある。なぜならば、無線端末装置が親を変更することによる影響は、各無線端末装置によって異なるからである。例えば、無線端末装置の親の子が1つのみである場合、すなわち無線端末装置の親の子が当該無線端末装置のみである場合には、当該無線端末装置が別の周辺無線端末装置を親として選択すれば、結果として上記親である周辺無線端末装置はエンドデバイスとなる。しかし、例えば、無線端末装置の親の子が多数存在する場合には、当該無線端末装置が別の周辺無線端末装置を親として選択しても、上記親である周辺無線端末装置はエンドデバイスとはならない。すなわち、無線端末装置とその周辺無線端末装置との間の関係により、親として選択すべき周辺無線端末装置は異なる。よって、各無線端末装置のパスコストを加減する方式には限界がある。
【0036】
(一実施形態に係る親選択方式)
本発明の一実施形態に係る無線端末装置は、周辺無線端末装置のパスコストをそのまま使って親を選択しない。より具体的には、無線端末装置は、周辺無線端末装置のパスコスト、当該周辺無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報、および当該周辺無線端末装置が無線端末装置の木構造上の親として選択されている周辺無線端末装置であるか否かに基づいて、当該周辺無線端末装置を木構造上の親として選択することに対する評価値(以下、「親選択用コスト」と呼ぶ)を算出する。そして、無線端末装置は、この親選択用コストに基づいて、周辺無線端末装置のいずれかを木構造上の親として選択する。
【0037】
具体的な内容は後に説明されるが、一実施形態に係る無線端末装置は、周辺無線端末装置のパスコストをそのまま用いる上記のパスコストのみを用いた親選択方式とは異なり、周辺無線端末装置と自らとの関係に基づき、親選択用コストを自ら算出する。これにより、特定のルータを多数の無線端末装置の親にすることが可能となり、その結果、ルータである無線端末装置の数を減らすことができる。すなわち、一実施形態に係る無線端末装置により、木構造のネットワーク全体の消費電力を減らすことができる。
【0038】
なお、周辺無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報は、例えば、周辺無線端末装置の木構造上の子の数を含む。また、周辺無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報は、例えば、周辺無線端末装置の木構造上の孫を木構造上の子として有する、周辺無線端末装置の木構造上の子の数、すなわち周辺無線端末装置のルータである子(以下、「子ルータ」と呼ぶ)の数を含む。また、無線端末装置は、例えば、無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報にさらに基づいて、親選択用コストを算出する。無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報は、例えば、無線端末装置の子ルータの数を含む。
【0039】
より具体的には、親選択用コストは、例えば、周辺無線端末装置のパスコストに第1の係数を乗じた値と、周辺無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報、および当該周辺無線端末装置が無線端末装置の木構造上の親として選択されている周辺無線端末装置であるか否か、に基づいて得られる付加コストに第2の係数を乗じた値とに応じて、算出される。パスコストが、ネットワークの性能を高めることをその目的としているのに対して、この付加コストは、ネットワーク全体の消費電力を減らす、すなわちネットワークにおけるルータ数を減らす(エンドデバイスを増やす)ことをその目的としている。ここでは、上記第1の係数をαとし、上記第2の係数を1とすると、親選択用コストを例えば以下のように示すことができる。
【数1】
上記の式(1)における付加コストは、ルータ数の増加(エンドデバイス数の減少)に寄与する程度が大きい程、大きい値となる。無線端末装置は、例えば、最善の親選択用コスト、すなわちここでは最も小さい親選択コストを有する周辺無線端末装置を親として選択する。
【0040】
無線端末装置が算出する付加コストの一例を以下に示す。
【表2】
付加コストに対する条件を満たす周辺無線端末装置は、できるだけ選択すべきでない周辺無線端末装置である。すなわち、条件を満たす周辺無線端末装置を選択すると、ルータが冗長に存在する可能性が高くなる。なお、上記条件Fは、上記条件A〜Eとは異なり、自らの子である周辺無線端末装置を選択することを回避するために便宜上設けた条件である。
【0041】
以下では、図2〜5を参照して、例示された上記条件A〜Eの下で、無線端末装置が周辺無線端末装置の中からどのように親を選択するかを具体的に説明する。各条件の特徴を分かりやすくするために、上記式(1)の係数αを1000として各条件を説明する。つまり、無線端末装置は、小さいパスコストを有する周辺無線端末を選択するが、2つ以上の周辺無線端末装置のパスコストが同じであれば、より小さい付加コストを有する周辺無線端末装置を親として選択する。
【0042】
図2を参照して、上記条件Aについて説明する。図2は、一実施形態に係る条件Aによる木構造上の親の選択を説明する。図2の(1)に示すとおり、ネットワークは、1つのBSと3つの無線端末装置を含む。ここで、図2の(2)に示すとおり、無線端末装置1140が新たに設置されたとする。すると、当該無線端末装置1140は、通信可能な周辺無線端末装置1110、1120および1130のうち、パスコストが1である周辺無線端末装置1110または1120のいずれかを親として選択する。ここで上記条件Aによると、子の数が0である(つまりエンドデバイスである)周辺無線端末装置1110は、子の数が0ではない周辺無線端末装置1120よりも、より大きな付加コストを与えられる。したがって、図2の(3)に示すとおり、無線端末装置1140は、周辺無線端末装置1120を親として選択する。その結果、周辺無線端末装置1110はエンドデバイスのままであり、ネットワーク全体の消費電力が抑えられる。ここで仮に周辺無線端末装置1120ではなく周辺無線端末装置1110が無線端末装置1140の親として選択された場合、周辺無線端末装置1110はエンドデバイスからルータとなり、その結果ネットワーク全体の消費電力が増加する。このように、上記条件Aは、エンドデバイスがなるべく親として選択されないようにする。
【0043】
図3を参照して、上記条件Bについて説明する。図3は、一実施形態に係る条件Bによる木構造上の親の選択を説明する。図3の(1)に示すとおり、ネットワークは、1つのBSと4つの無線端末装置を含む。ここで、図3の(2)に示すとおり、無線端末装置1150および1160が新たに設置されたとする。すると、図3の(3)に示すとおり、当該無線端末装置1150は、唯一の周辺無線端末装置である無線端末装置1110を親として選択し、当該無線端末装置1160は、唯一の周辺無線端末装置である無線端末装置1150を親として選択する。その後、無線端末装置1140は、通信可能な周辺無線端末装置1110、1120および1130のうち、パスコストが1である周辺無線端末装置1110または1120のいずれかを親として選択する。ここで上記条件Bによると、子ルータの数が0である周辺無線端末装置1120は、子ルータの数が0ではない周辺無線端末装置1110よりも、より大きな付加コストを与えられる。したがって、図3の(4)に示すとおり、無線端末装置1140は、周辺無線端末装置1120を親として選択する。その後、無線端末装置1130は、周辺無線端末装置1110または1120を親として選択する。ここで上記条件Bによると、子ルータの数が0である周辺無線端末装置1120は、周辺無線端末装置1110よりもより大きな付加コストを与えられる。したがって、図3の(5)に示すとおり、無線端末装置1130は、周辺無線端末装置1110を親として選択する。このように、ネットワークが、図3の(3)のように維持されるのではなく、図3の(5)のように形成されるため、無線端末装置1110は、ルータからエンドデバイスとなる。その結果、ネットワーク全体の消費電力が抑えられる。このように、上記条件Bは、子ルータをもたない周辺無線端末装置がなるべく親として選択されないようにし、繋がっているルータ群の方に無線端末装置が集中して接続されるようにする。
【0044】
図4を参照して、上記条件Cについて説明する。図4は、一実施形態に係る条件Cによる木構造上の親の選択を説明する。図4の(1)に示すとおり、ネットワークは、1つのBSと7つの無線端末装置を含む。ここで、図4の(2)に示すとおり、無線端末装置1180、1190および1200が新たに設置されたとする。すると、図4の(3)に示すとおり、当該無線端末装置1180、1190および1200は、それぞれ無線端末装置1110、1180、1190を親として選択する。その後、無線端末装置1160は、通信可能な周辺無線端末装置1150および1180のうちのいずれかを親として選択する。ここで上記条件Cによると、子が自身(無線端末装置1160)のみである周辺無線端末装置1150は、周辺無線端末装置1180よりも、より大きな付加コストを与えられる。したがって、図4の(4)に示すとおり、無線端末装置1160は、周辺無線端末装置1180を親として選択する。その結果、無線端末装置1150はルータからエンドデバイスとなり、ネットワーク全体の消費電力が抑えられる。このように、上記条件Cは、無線端末装置に別の周辺無線端末を新たな親として選択させることで、当該無線端末装置により選択されていた親をルータからエンドデバイスにする。
【0045】
図5を参照して、上記条件Dについて説明する。図5は、一実施形態に係る条件Dによる木構造上の親の選択を説明する。図5の(1)に示すとおり、ネットワークは、1つのBSと6つの無線端末装置を含む。ここで、図5の(2)に示すとおり、無線端末装置1370および1380が新たに設置されたとする。すると、図5の(3)に示すとおり、無線端末装置1370および1380は、それぞれ無線端末装置1330および1360を親として選択する。その後、無線端末装置1330は、パスコストが1である周辺無線端末装置1310または1340を親として選択する。ここで上記条件Dによると、子ルータが自身(無線端末装置1330)のみである周辺無線端末装置1310は、周辺無線端末装置1340よりも、より大きな付加コストを与えられる。したがって、図5の(4)に示すとおり、無線端末装置1330は、周辺無線端末装置1340を親として選択する。その後、無線端末装置1320は、パスコストが1である周辺無線端末装置1310または1340を親として選択する。ここで上記条件BおよびCに基づき、図5の(5)に示すとおり、無線端末装置1320は、周辺無線端末装置1340を親として選択する。このように、ネットワークが、図5の(3)のように維持されるのではなく、図5の(5)のように形成されるため、無線端末装置1310は、ルータからエンドデバイスとなる。その結果、ネットワーク全体の消費電力が抑えられる。このように、上記条件Dは、子ルータが自身のみである周辺端末装置を無線端末装置がなるべく親として選択しないようにし、当該周辺端末装置の子ルータの数を0にする。結果として、当該周辺端末装置は、図5における無線端末装置1310のように、上記条件B等によって、エンドデバイスになる可能性が高くなる。
【0046】
また、上記条件Eは、子ルータが自身以外の1台である周辺無線端末装置を無線端末装置がなるべく親として選択しないようにする。結果として、当該周辺端末装置は、図5における無線端末装置1310のように、上記条件D等によって、エンドデバイスになる可能性が高くなる。
【0047】
なお、上記A〜Fの条件に加えて、周辺無線端末装置の子の数、周辺無線端末装置の子ルータの数、周辺無線端末装置の周辺無線端末装置の数等に応じて、1つ当たり一定の付加コストを周辺無線端末装置に与えてもよい。例えば、子の数が0の場合に最大の付加コストを与え、子の数が1、2、3、…と増加するに従って、0の場合の最大の付加コストから一定の数を減じた付加コストを与えてもよい。この場合には、周辺無線端末装置の子の数が所定の数以下の場合にのみ付加コストが与えられることになる。このようなさらなる条件も加えることにより、いくつかの周辺無線端末装置の親選択用コストが同一になる機会を減らすことができる。親選択用コストが同一になると親をランダムに選択せざるをえないため、ネットワークの安定性が失われる。よって、上記のさらなる条件は、ランダムの親の選択によるネットワークの安定性の喪失を防ぎ得る。
【0048】
上記のとおり、本発明の一実施形態に係る親選択方式を説明したが、当該方式には、ルータの数を減らせるというメリット、すなわちネットワーク全体の消費電力を減らせるというメリットがあるだけではなく、デメリットも存在する。当該方式によると、一部の無線端末装置とBSとの間の通信経路が長くなり、中継回数が増加し得る。これは、ネットワーク全体の性能が低下することを意味する。また、受信機の電源を切る無線端末装置の数の増加により常時利用可能な通信経路が減少するため、通信経路の切断、無線端末装置の故障等が発生した場合に、ネットワークの機能が回復するまでの時間は長くなる。すなわち、ネットワークの信頼性が低下し得る。
【0049】
上記式(1)の係数αは、ネットワーク全体の性能および信頼性とネットワーク全体の消費電力の低減とのいずれの要素を重視するかを決めるパラメータとして機能する。ネットワーク全体の消費電力の低減を重視する場合には、当該係数αを小さくし、ネットワーク全体の性能および信頼性を重視する場合には、当該係数αを大きくすればよい。例えば、当該係数αを大きくすればするほど、パスコストのみを用いる従来型のネットワークが形成される。ネットワーク環境、動作させるアプリケーション等によって、性能および信頼性と消費電力の低減とのいずれを優先するかを選択する必要があるが、本方式では、パラメータαを変更することによって両者の優先度を調整することができる。
【0050】
本発明の一実施形態に係る親選択方式を図1のネットワークに適用した結果を図6に示す。ここでは、式(1)の係数αを100としている。例えば、図6のネットワークにおいて、無線端末装置1040は、6つの周辺無線端末装置の親算出用コストを以下のように算出し、その結果、周辺無線端末装置1030を親として選択している。
【表3】
図1では、無線端末装置1010および1060はルータであったが、図6では、それらはエンドデバイスとなっている。このように、一実施形態に係る親選択方式によって、ルータの数を減らし、ネットワーク全体の消費電力を低減し得る。
【0051】
[2.無線端末装置間での送受信]
図7〜9を参照して、ルータおよびエンドデバイスが具体的にどのように通信するかを説明する。まず、図7は、一実施形態に係る無線端末装置間での送受信を説明する。図7を参照すると、ルータa、ルータbおよびエンドデバイスcが通信している。ここでは、ルータaはルータbの親であり、ルータbはエンドデバイスcの親である。
【0052】
無線端末装置が木構造上の子を有しない場合、すなわち無線端末装置がエンドデバイスである場合には、無線端末装置の受信機は間欠動作を行う。一方で、ルータの受信機は、間欠動作を行わず、常時受信機の電源を入れたままにしている。そのため、図7のエンドデバイスcの受信機は、間欠動作を行い、ルータaおよびbの受信機は、電源を入れたままにしている。
【0053】
無線端末装置は、当該無線端末装置のパスコスト、当該無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報、および当該無線端末装置の木構造上の親の識別情報を含む通知情報を送信する。当該パスコスト、木構造上の子孫に関する情報、および木構造上の親の識別情報のうち、周辺無線端末装置にとってあらかじめ既知であるもの、または周辺無線端末装置が別の手段により取得できるものがあれば、それは、上記通知情報の中に含まれなくてもよい。無線端末装置は、当該通知情報を繰り返し送信する。図7を参照すると、ルータaおよびルータbは、定期的に通知情報を送信している。また、エンドデバイスcは、受信機に電源を入れる度に、通知情報を送信している。そして、ルータaは、周辺無線端末装置であるルータbから通知情報を受信し、ルータbは、周辺無線端末装置であるルータaおよびエンドデバイスcから通知情報を受信し、エンドデバイスcは、周辺無線端末装置であるルータbから通知情報を受信する。無線端末装置は、通知情報から各周辺無線端末装置に関する情報を取得し、記憶する。
【0054】
各無線端末装置は、通知情報を受信することにより周辺無線端末装置に関する最新情報を取得し、記憶されている過去の情報を更新するとともに、通信可能な周辺無線端末装置の存在を確認することができる。ここで、ルータである無線端末装置は、常に受信機の電源を入れているため、通信可能な周辺無線端末装置からの通知情報を全て受信することができる。一方で、エンドデバイスである無線端末装置は、受信機に間欠動作を行わせているため、受信機の電源を入れている期間のみ、通知情報を受信できる。すなわち、エンドデバイスは、周辺無線端末装置からの最新の通知情報を受信できるとは限らない。そこで、エンドデバイスの親であるルータは、エンドデバイスである周辺無線端末装置からの通知情報を受信すると、それに対する受信確認を送信する。これにより、エンドデバイスは、少なくとも、自らの親である無線端末装置と通信可能であるかを確認することができる。エンドデバイスは、当該受信確認を受信することができなくなった場合に、親である無線端末装置と通信できなくなったことを把握できる。図7を参照すると、ルータbは、エンドデバイスcからの通知情報を受信する度に、受信確認を送信している。なお、エンドデバイスは、親である無線端末装置以外の周辺無線端末装置からの通知情報を常に受信することは難しいが、受信機の電源を入れている期間と当該周辺無線端末の通知情報の送信とのタイミングが合ったときに、当該通知情報を受信することができる。なお、全てのルータが、エンドデバイスである周辺無線端末装置からの通知情報を受信した際に、それに対する受信確認を送信してもよい。これにより、エンドデバイスは、ルータである周辺無線端末装置の存在および各種情報を把握することができる。また、上記受信確認の中に通知情報の中の各種情報を含めることもできる。これにより、エンドデバイスは、少なくとも自らの親である無線端末装置のパスコスト、木構造上の子孫に関する情報、および木構造上の親の識別情報を取得することができる。
【0055】
また、無線端末装置は、他の装置宛のデータを受信すると、通信経路で結ばれた親または子に当該データを転送する。無線端末装置は、データの宛先がエンドデバイスである自らの子である場合を除き、当該データの受信後すみやかに、当該データを転送することができる。一方で、無線端末装置は、データの転送先がエンドデバイスである自らの子である場合には、当該エンドデバイスからの通知信号を受信した後に、当該データを転送することができる。図7を参照すると、ルータbは、エンドデバイスc宛のデータを受信し、その後エンドデバイスcからの通知情報を受信した後に、エンドデバイスcにデータを送信している。
【0056】
ルータである無線端末装置は、親からの通知信号を所定の期間以内に受信できなくなった場合に、親と通信できなくなったことを把握する。また、エンドデバイスである無線端末装置は、親からの受信確認を所定回数以内または所定の期間以内に受信できなくなった場合に、親と通信できなくなったことを把握する。無線端末装置は、親と通信できなくなった場合に、自身の動作を通信状態が「切断」である場合の通信切断動作に切り替える。この通信切断動作では、無線端末装置は、エンドデバイスであったとしても、受信機の間欠動作を中止する。無線端末装置は、当該通信切断動作として、所定の期間周辺無線端末装置からの通知信号を受信する。そして、無線端末装置は、周辺無線端末装置の中から新たな親を選択する。図8は、一実施形態に係る無線端末装置間での通信切断時の送受信を説明する。図8を参照すると、ルータd、エンドデバイスeおよびルータfが存在する。ここでは、ルータdはエンドデバイスeの親であり、ルータfはエンドデバイスeの周辺無線端末装置である。図8を参照すると、エンドデバイスeは、通知情報の送信後に親であるルータdからの受信確認を受信できなかった。よって、エンドデバイスeは、自身の動作を通信状態が「切断」である場合の通信切断動作に切り替える。その後、エンドデバイスeは、ルータfからの通信情報を受信し、ルータfを新たな親として選択している。そして、エンドデバイスeは、通信状態が「切断」である場合の通信切断動作を解除し、その受信機の間欠動作を再開する。
【0057】
無線端末装置は、エンドデバイスを親として選択した場合に、間欠動作の中止を指示する指示情報(以下、「ルータ遷移指示」と呼ぶ)を送信する。図9は、一実施形態に係る無線端末装置間での通信切断時の送受信を説明する。図9を参照すると、図8のルータfの代わりに、エンドデバイスgがエンドデバイスeの周辺無線端末装置となっている。図8と同様に、ここでは、ルータdはエンドデバイスeの親である。エンドデバイスeは、自身の動作を通信状態が「切断」である場合の通信切断動作に切り替えた後に、エンドデバイスgから通知情報を受信する。そして、エンドデバイスeは、エンドデバイスgを親として選択する。その後、エンドデバイスeは、エンドデバイスgにルータ遷移指示を送信する。その結果エンドデバイスgは、自身の動作をエンドデバイスモードの動作からルータモードの動作へと切り替える。このように、ルータ遷移指示によって、周辺無線端末装置から親として選択されたエンドデバイスは、エンドデバイスの動作からルータの動作へと自らの動作を切り替えることができ、受信機の間欠動作を中止する。
【0058】
[3.無線端末装置の構成]
図10を用いて、一実施形態に係る無線端末装置100の具体的な構成を説明する。図10は、一実施形態に係る無線端末装置100の構成の一例を示すブロック図である。図10を参照すると、無線端末装置100は、送受信アンテナ110、受信回路120、受信データ処理部130、状態管理部140、親選択用コスト算出部150、アプリケーション部160、送信データ生成部170、送信回路180を備える。ここで、親選択用コスト算出部150は評価値算出部の一例であり、受信回路120および受信データ処理部130は、受信部の一例であり、また送信データ生成部170および送信回路150は、送信部の一例である。
【0059】
(送受信アンテナ110)
送信アンテナ110は、周辺無線端末装置からの信号を受信し、受信回路120に渡す。また、送信アンテナ110は、送信回路150からの信号を周辺無線端末装置へ送信する。
【0060】
(受信回路120)
受信回路120は、受信信号を復調し、復号する。そして、受信回路120は、復号された受信情報を受信データ処理部130に出力する。
【0061】
(受信データ処理部130)
受信データ処理部130は、受信情報の種類を判別する。受信情報が通知情報、受信確認、またはルータ遷移指示であれば、受信データ処理部130は、当該受信情報を状態管理部140へ出力する。また、受信情報が他の装置宛のデータであれば、当該受信情報を送信データ生成部170へ出力する。また、受信情報が無線端末装置100宛のデータであれば、当該受信情報をアプリケーション部160へ出力する。なお、周辺無線端末装置からの通知情報は、当該周辺無線端末装置のパスコスト、当該周辺無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報、および当該周辺無線端末装置の木構造上の親の識別情報のうちの少なくとも1つを含む。
【0062】
(状態管理部140)
状態管理部140は、親選択用コスト算出部150に親選択用コストを算出させる。そして、状態管理部140は、当該親選択用コストに基づいて、周辺無線端末装置のいずれかを木構造上の親として選択する。当該親選択用コストの具体例は、上記[1.木構造のネットワークにおける親の選択方式]で説明されたとおりである。
【0063】
また、状態管理部140は、例えば、親選択用コスト算出部150による親選択用コストの算出のために、周辺無線端末装置のパスコスト、周辺無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報、および周辺無線端末装置の親の識別情報を取得し、記憶する。状態管理部140は、例えば周辺無線端末装置からの通知情報から、これらの情報を取得する。周辺無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報は、例えば、周辺無線端末装置の木構造上の子の数および周辺無線端末装置の子ルータの数を含む。
【0064】
また、状態管理部140は、例えば、無線端末装置100の通知情報の中に含めるべき情報を得るために、周辺無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報および周辺無線端末装置の親の識別情報から、無線端末装置100の子孫に関する情報を得る。無線端末装置100の子孫に関する情報は、例えば、無線端末装置100の子の数、無線端末装置100の子ルータの数を含む。また、状態管理部140は、例えば、親として選択された周辺無線端末装置のパスコストから、無線端末装置100自身のパスコストを得る。例えば、状態管理部140は、「親のパスコスト+1」を自身のパスコストとする。
【0065】
また、状態管理部140は、無線端末装置100がエンドデバイスである場合に、無線端末装置100の受信機に間欠動作を行わせる。換言すると、無線端末装置100の子の数が0となった場合に、状態管理部140は、自身の動作をルータモードの動作から、受信機に間欠動作を行わせるエンドデバイスモードの動作へと切り替える。一方で、状態管理部140は、例えば、ルータ遷移指示を受信した場合に、自身の動作をエンドデバイスモードの動作からルータモードの動作へと切り替え、受信機の間欠動作を中止する。なお、状態管理部140は、通信状態が「切断」である場合の通信切断動作では、無線端末装置100がエンドデバイスであったとしても、無線端末装置100の受信機に間欠動作を行わせない。
【0066】
また、状態管理部140は、例えば、親である周辺無線端末装置からの通知情報または受信確認を、所定の期間以内または所定の回数以内に受信したか否かを判定する。当該通知情報または当該受信確認が所定の期間以内または所定の回数以内に受信されていない場合には、状態管理部140は、親と通信できなくなったと判定する。そして、状態管理部140は、自身の動作を通信状態が「切断」である場合の通信切断動作に切り替える。当該通信切断動作は、[2.無線端末装置間での送受信]にて説明されたとおりである。
【0067】
また、状態管理部140は、エンドデバイスを無線端末装置100の木構造上の親として選択した場合に、ルータ遷移指示の送信を、送信データ生成部170に依頼する。
【0068】
また、状態管理部140は、無線端末装置100のパスコスト、無線端末装置100の木構造上の子孫に関する情報、および無線端末装置100の木構造上の親の識別情報のうちの少なくとも1つを含む通知情報の送信を、送信データ生成部170に依頼する。無線端末装置100の木構造上の子孫に関する情報は、例えば、無線端末装置100の木構造上の子の数および無線端末装置100の子ルータの数を含む。
【0069】
また、状態管理部140は、無線端末装置100のエンドデバイスである子からの通知情報を受信した場合に、受信確認の送信を、送信データ生成部170に依頼する。
【0070】
(親選択用コスト算出部150)
親選択用コスト算出部150は、周辺無線端末装置のパスコスト、当該周辺無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報、および当該周辺無線端末装置が無線端末装置100の木構造上の親として選択されている周辺無線端末装置であるか否かに基づいて、親選択用コストを算出する。当該親選択用コストの具体例は、上記[1.木構造のネットワークにおける親の選択方式]で説明されたとおりである。また、親選択用コスト算出部150は、例えば、無線端末装置100の木構造上の子孫に関する情報にさらに基づいて、親選択用コストを算出する。ここで、周辺無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報は、例えば、周辺無線端末装置の木構造上の子の数および周辺無線端末装置の子ルータの数を含む。また、無線端末装置100の木構造上の子孫に関する情報は、例えば、無線端末装置100の子ルータの数を含む。
【0071】
また、親選択用コスト算出部150は、例えば、周辺無線端末装置のパスコストに第1の係数を乗じた値と、周辺無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報、および当該周辺無線端末装置が無線端末装置の木構造上の親として選択されている周辺無線端末装置であるか否か、に基づいて得られる付加コストに第2の係数を乗じた値とに応じて、親選択用コストを算出する。ここで、親選択用コスト算出部150は、例えば、無線端末装置100の木構造上の子孫に関する情報にさらに基づいて、付加コストを算出する。当該親選択用コストの具体例も、上記[1.木構造のネットワークにおける親の選択方式]で説明されたとおりである。
【0072】
なお、親選択用コスト算出部150は、周辺無線端末装置のパスコスト、当該周辺無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報、当該周辺無線端末装置が無線端末装置100の木構造上の親として選択されている周辺無線端末装置であるか否か、および無線端末装置100の木構造上の子孫に関する情報を、状態管理部140から提供される。
【0073】
(アプリケーション部160)
アプリケーション部160は、無線端末装置100が備えるアプリケーションを実行する。アプリケーション部160は、無線端末装置100宛のデータを受信した場合には、当該データを処理する。また、アプリケーション部160は、無線端末装置100とは別の装置にデータを送信する必要がある場合には、送信データ生成部170に当該データの送信を依頼する。
【0074】
(送信データ生成部170)
送信データ生成部170は、状態管理部140からの依頼に応じて、通知情報、受信確認またはルータ遷移指示を含む送信パケットおよび送信フレームを生成する。また、送信データ生成部170は、受信データ処理部130から受け取った他の装置宛のデータを含む送信パケットおよび送信フレームを生成する。また、送信データ生成部170は、アプリケーション部160からの依頼に応じて、他の装置宛のデータを含む送信パケットおよび送信フレームを生成する。
【0075】
(送信回路180)
送信回路180は、送信フレームを符号化し、変調する。そして、送信回路180は、送受信アンテナ110を介して、変調された送信信号を送信する。
【0076】
以上のとおり、無線端末装置100の構成が説明されたが、当該無線端末装置100は、典型的には、ハードウェエアおよびソフトウェアの組み合わせにより実現され得る。受信回路120および送信回路180は、例えば通信デバイス、通信回路等により実現され得る。また、受信データ処理部130、状態管理部140、親選択用コスト算出部150、アプリケーション部160および送信データ生成部170は、CPU、RAMおよびROMによって実現され得る。例えば、CPUは、無線端末装置100の動作全般を制御する。また、ROMには、無線端末装置100の動作を制御するためのプログラムおよびデータが格納され、RAMにはCPUによる処理の実行時にプログラムおよびデータが一時的に記憶される。
【0077】
[4.処理の流れ]
以下では、図11〜13を用いて、本発明の一実施形態に係る無線通信処理について説明する。一実施形態に係る無線端末装置は、エンドデバイスである場合にはエンドデバイスモードの動作を行い、ルータである場合にはルータモードの動作を行う。ただし、無線端末装置は、親と通信できなくなった場合に、自身の動作を通信状態が「切断」である場合の通信切断動作に切り替える。よって、以下では、エンドデバイスモードの動作、ルータモードの動作、および通信切断動作のそれぞれについて、処理の流れを説明する。
【0078】
(エンドデバイスモードの動作)
まず、エンドデバイスモードの動作における処理の流れを説明する。図11は、エンドデバイスの処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0079】
図11を参照すると、ステップS210で、状態管理部140は、所定の期間、無線端末装置100の受信機の電源を切る。そして、所定の期間経過後に、ステップS220で、状態管理部140は、無線端末装置100の受信機の電源を入れる。
【0080】
次に、ステップS230で、親選択用コスト算出部150は、周辺無線端末装置の親選択用コストを算出する。そして、ステップS240で、状態管理部140は、当該親選択用コストに基づいて、周辺無線端末装置のいずれかを親として選択する。また、ステップS250で、状態管理部140は、通知情報に含めるための無線端末装置100自身のパスコストを算出する。
【0081】
次に、ステップS260で、送信データ生成部170および送信回路180は、送受信アンテナ110を介して、周辺無線端末装置に通知情報を送信する。ここで、エンドデバイスが親として選択されている場合には、送信データ生成部170および送信回路180は、当該エンドデバイスにルータ遷移要求も送信する。
【0082】
次に、ステップS270で、受信回路120および受信データ処理部130は、送受信アンテナ110を介して、周辺無線端末装置から各種情報を受信する。当該各種情報には、例えば、親である周辺無線端末装置からの受信確認、その他の周辺無線端末装置からの通知情報、無線端末装置100宛のデータ、無線端末装置100以外の装置宛の転送すべきデータ、またはルータ遷移指示が含まれ得る。また、ステップS280で、送信データ生成部170および送信回路180は、アプリケーション部160からの他の装置宛のデータを送信する。
【0083】
次に、ステップS290では、状態管理部140は、所定の期間以内または所定の回数以内に無線端末装置100の親からの受信確認を受信したか否かを判定する。ここで、当該受信確認が受信されていれば、処理はステップS300へ進む。一方、当該受信確認が受信されていなければ、処理はステップS320へ進む。
【0084】
ステップS300では、状態管理部140は、ルータ遷移指示を受信したか否かを判定する。ここで、ルータ遷移指示が受信されていれば、処理はステップS310へ進む。一方、ルータ遷移指示が受信されていなければ、処理はステップS210へ戻り、無線端末装置100は、エンドデバイスモードの動作における処理を継続する。
【0085】
ステップS310で、状態管理部140は、動作モードをエンドデバイスモードからルータモードへと切替える。その後当該処理は終了し、無線端末装置100は、ルータモードの動作における処理を開始する。
【0086】
ステップS320では、状態管理部140は、通信状態情報を「接続」から「切断」に変更する。
【0087】
次に、ステップS330では、状態管理部140は、ルータ遷移指示を受信したか否かを判定する。ここで、ルータ遷移指示が受信されていれば、処理はステップS340へ進む。一方、ルータ遷移指示が受信されていなければ、その後当該処理は終了し、無線端末装置100は、通信切断動作における処理を開始する。
【0088】
ステップS340では、状態管理部140は、動作モードをエンドデバイスモードからルータモードへと切替える。その後当該処理は終了し、無線端末装置100は、通信切断動作における処理を開始する。
【0089】
(ルータモードの動作)
次に、ルータモードの動作における処理の流れを説明する。図12は、ルータの処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0090】
図12を参照すると、ステップS410で、状態管理部140は、所定の期間が経過したか否かを判定する。ここで、所定の期間が経過している場合には、処理はステップS420へ進む。一方で、所定の期間が経過していない場合には、処理はステップS470へ進む。
【0091】
ステップS420で、状態管理部140は、既に受信している各周辺無線端末装置の通知情報から、無線端末装置100の子の数および子ルータの数を集計する。次のステップS430〜S470は、既に説明した図11のステップS230〜S270と同じである。
【0092】
ステップS480で、状態管理部140は、エンドデバイスである子からの通知情報を受信したか否かを判定する。当該通知情報が受信されていれば、処理はステップ490へ進む。一方、当該通知情報が受信されていなければ、処理はステップ510へ進む。
【0093】
ステップS490で、送信データ生成部170および送信回路180は、エンドデバイスである子に受信確認を送信する。また、ステップS500で、送信データ生成部170および送信回路180は、当該エンドデバイスである子宛のデータがあれば、当該データを当該エンドデバイスである子に送信する。
【0094】
次に、ステップS510で、エンドデバイスである子以外の装置宛のデータを送信および転送する。当該データは、アプリケーション部160からの他の装置宛のデータ、および周辺無線端末装置から受信した転送すべき他の装置宛のデータを含む。
【0095】
次に、ステップS520で、状態管理部140は、無線端末装置100の親からの受信確認を受信したか否かを判定する。ここで、当該受信確認が受信されていれば、処理はステップ530へ進む。一方、当該受信確認が受信されていなければ、処理はステップ550へ進む。
【0096】
ステップS530で、状態管理部140は、無線端末装置100の子の数が0であるか否かを判定する。ここで、子の数が0であれば、処理はステップ540へ進む。一方、子の数が0でなければ、処理はステップS410へ戻り、無線端末装置100は、ルータモードの動作における処理を継続する。
【0097】
ステップS540で、状態管理部140は、動作モードをルータモードからエンドデバイスモードへと切替える。その後当該処理は終了し、無線端末装置100は、エンドデバイスモードの動作における処理を開始する。
【0098】
ステップS550で、状態管理部140は、通信状態情報を「接続」から「切断」に変更する。
【0099】
次に、ステップS560で、状態管理部140は、無線端末装置100の子の数が0であるか否かを判定する。ここで、子の数が0であれば、処理はステップS570へ進む。一方、子の数が0でなければ、その後当該処理は終了し、無線端末装置100は、通信切断動作における処理を開始する。
【0100】
ステップS570で、状態管理部140は、動作モードをルータモードからエンドデバイスモードへと切替える。その後当該処理は終了し、無線端末装置100は、通信切断動作における処理を開始する。
【0101】
(通信切断動作)
次に、通信切断動作における処理の流れを説明する。図13は、通信が切断された場合の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0102】
図13を参照すると、ステップS610で、受信回路120および受信データ処理部130は、所定の期間、送受信アンテナ110を介して、周辺無線端末装置から各種情報を受信する。
【0103】
次に、ステップS620で、状態管理部140は、周辺無線端末装置からの通知情報を受信したか否かを判定する。当該通知情報が受信されていれば、処理はステップ630へ進む。一方、当該通知情報が受信されていなければ、処理はステップ610へ戻る。
【0104】
次に、ステップS630で、親選択用コスト算出部150は、周辺無線端末装置の親選択用コストを算出する。そして、ステップS640で、状態管理部140は、当該親選択用コストに基づいて、周辺無線端末装置のいずれかを新たな親として選択する。
【0105】
次に、ステップS650で、状態管理部140は、親として選択された周辺無線端末装置がルータであるか否かを判定する。当該周辺無線端末装置がルータであれば、処理はステップS670へ進む。一方で、当該周辺無線端末装置がエンドデバイスであれば、処理はステップS660へ進む。
【0106】
ステップS660で、送信データ生成部170および送信回路180は、親として選択されたエンドデバイスにルータ遷移指示を送信する。
【0107】
ステップS670で、状態管理部140は、通信状態情報を「切断」から「接続」に変更する。その後当該処理は終了し、無線端末装置100は、現在の動作モードに応じて、エンドデバイスモードの動作またはルータモードの動作のいずれかにおける処理を開始する。
【0108】
[5.変形例]
既に説明されたとおり、上記の一実施形態に係る親選択方式は、ネットワーク全体の消費電力を低減するというメリットを有するが、ネットワークの性能および信頼性に関するデメリットを有する。とりわけ、ネットワークの信頼性について言えば、受信機の電源を切る無線端末装置の数の増加により常時利用可能な通信経路が減少するため、通信経路の切断、無線端末装置の故障等が発生した場合に、ネットワークの機能が回復するまでの時間は長くなる。そこで、このネットワークの信頼性に関するデメリットを解消するために、一実施形態の変形例に係る無線端末装置100は、ある周辺無線端末装置を木構造上の親として選択することに加えて、別の周辺無線端末装置を予備の親(以下、「バックアップノード」と呼ぶ)も選択する。バックアップノードとして選択された周辺無線端末装置は、ルータと同様に、受信機の間欠動作を行わない。そして、当該無線端末装置100は、木構造上の親として選択されている周辺無線端末装置と通信できなくなった場合に、当該バックアップノードを木構造上の親として選択する。その結果、無線端末装置100は、バックアップノードであった新たな親を介して、即座に通信を再開することができる。これにより、通信経路の切断、無線端末装置の故障等が発生した場合のネットワーク機能が回復するまでの時間が短縮され得る。
【0109】
(変形例に係る無線端末装置の構成)
上記の一実施形態に係る無線端末装置100と変形例に係る無線端末装置100との構成上の主な相違点を説明する。なお、当該変形例に係る無線端末装置100の構成要素は、図10に示されたものと同じである。
【0110】
状態管理部140は、親選択用コストに基づいて、木構造上の親に加えて、周辺無線端末装置のいずれかをバックアップノードとして選択する。ここで、状態管理部140は、例えば、最善の親選択用コストを伴う周辺無線端末装置を木構造上の親として選択し、次善の親選択用コストを伴う周辺無線端末装置を予備の親として選択する。図6および上記表3を参照すると、例えば、無線端末装置1040は、無線端末装置1010をバックアップノードとして選択する。
【0111】
また、状態管理部140は、無線端末装置100がバックアップノードとして選択されているか否かを把握するために、周辺無線端末装置が選択したバックアップノードの識別情報も取得し、記憶する。状態管理部140は、例えば周辺無線端末装置の通知情報から、当該バックアップノードの識別情報を取得する。
【0112】
また、状態管理部140は、無線端末装置100がエンドデバイスであり、かつ無線端末装置100が周辺無線端末装置のいずれからもバックアップノードとして選択されていない場合に、無線端末装置100の受信機に間欠動作を行わせる。換言すると、無線端末装置100の子の数が0となり、かつ無線端末装置100が周辺無線端末装置のいずれからもバックアップノードとして選択されていないようになると、状態管理部140は、自身の動作をルータモードの動作から、受信機の間欠動作を伴うエンドデバイスモードの動作へと切り替える。
【0113】
また、状態管理部140は、親と通信できなくなったと判定した場合に、バックアップノードを新たな親として選択する。
【0114】
また、状態管理部140は、エンドデバイスを親として選択した場合のみではなく、エンドデバイスをバックアップノードとして選択した場合にも、ルータ遷移指示の送信を、送信データ生成部170に依頼する。
【0115】
また、状態管理部140は、送信データ生成部170に送信を依頼する通知情報に、バックアップノードの識別情報も含める。
【0116】
また、状態管理部140は、無線端末装置100のエンドデバイスである子からの通知情報を受信した場合だけではなく、無線端末装置100をバックアップノードとして選択しているエンドデバイスからの通知情報を受信した場合にも、受信確認の送信を、送信データ生成部170に依頼する。
【0117】
(変形例に係る処理の流れ)
本発明の一実施形態の変形例に係る無線通信処理は、図11および図12の処理の一部を変更することにより実現される。なお、一実施形態の変形例では、エンドデバイスである無線端末装置であっても、周辺無線端末装置からバックアップノードとして選択されている場合には、エンドデバイスモードではなくルータモードの動作を行う。
【0118】
当該変形例では、図11のエンドデバイスモードでの動作における処理の流れのうち、ステップS240、S260およびS290が、以下のように変更される。
【0119】
ステップS240で、状態管理部140は、当該親選択用コストに基づいて、周辺無線端末装置のいずれかを親として選択し、また周辺無線端末装置のいずれか別のものをバックアップノードとして選択する。
【0120】
ステップS260で、送信データ生成部170および送信回路180は、送受信アンテナ110を介して、周辺無線端末装置に通知情報を送信する。ここで、エンドデバイスが親またはバックアップノードとして選択されている場合には、送信データ生成部170および送信回路180は、当該エンドデバイスにルータ遷移要求も送信する。
【0121】
ステップS290で、状態管理部140は、無線端末装置100の親からの受信確認を所定の期間以内または所定の回数以内に受信したか否かを判定する。ここで、当該受信確認が受信されていれば、処理はステップS300へ進む。一方、当該受信確認が受信されていなければ、状態管理部140は、さらに、無線端末装置100のバックアップノードからの受信確認を受信したか否かを判定する。ここで、当該受信確認が受信されていれば、状態管理部140はバックアップノードを新たな親として選択し、処理はステップS300へ進む。一方、当該受信確認が受信されていなければ、処理はステップS320へ進む。
【0122】
また、当該変形例では、図12のエンドデバイスモードでの動作における処理の流れのうち、ステップS440、S460、S480、S490、S520、S530およびS560が、変更される。このうち、変更されたステップS440、S460およびS520は、それぞれ上記変更されたステップS240、S260およびS290と同じである。よって、変更されたS480、S490、S530およびS560が、以下で説明される。
【0123】
ステップS480で、エンドデバイスである子からの通知情報、または無線端末装置100をバックアップノードとして選択した周辺無線端末装置からの通知情報を受信したか否かを判定する。いずれかの通知情報が受信されていれば、処理はステップ490へ進む。一方、いずれの通知情報も受信されていなければ、処理はステップ510へ進む。
【0124】
ステップS490で、送信データ生成部170および送信回路180は、エンドデバイスである子、および/または無線端末装置100をバックアップノードとして選択している周辺無線端末装置に、受信確認を送信する。
【0125】
ステップS530で、状態管理部140は、無線端末装置100の子の数が0であり、かつ無線端末装置100が周辺無線端末装置のいずれからもバックアップノードとして選択されていないか否か、を判定する。ここで、判定結果が真であれば、処理はステップ540へ進む。一方、判定結果が偽であれば、処理はステップ410へ戻り、無線端末装置100は、ルータモードの動作における処理を継続する。
【0126】
ステップS560で、状態管理部140は、無線端末装置100の子の数が0であり、かつ無線端末装置100が周辺無線端末装置のいずれからもバックアップノードとして選択されていないか否か、を判定する。ここで、判定結果が真であれば、処理はステップS570へ進む。一方、判定結果が偽であれば、その後当該処理は終了し、無線端末装置100は、通信切断動作における処理を開始する。
【0127】
ここまで、図1〜図13を用いて、本発明の一実施形態およびその変形例について説明した。本発明の一実施形態によれば、特定のルータを多数の無線端末装置の親とすることができ、その結果、ルータである無線端末装置の数を減らすことができる。すなわち、一実施形態に係る無線端末装置により、ネットワーク全体の消費電力を減らすことができる。
【0128】
また、例えば上記式(1)のように、パスコストと付加コストとを係数により重み付けすることにより、ネットワークの性能および信頼性とネットワーク全体の消費電力の低減との間の優先度を調整することができる。
【0129】
また、上記通知情報の送受信によって、親選択用コストの算出に必要な周辺無線端末装置に関する情報を取得することができる。また、上記ルータ遷移指示によって、新たに親として選択されたエンドデバイスをルータとして動作させることができ、結果としてネットワークの切断を回避することができる。
【0130】
また、本発明の一実施形態の変形例によれば、ネットワーク全体の消費電力を減らすとともに、ネットワークの信頼性も高めることができる。
【0131】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0132】
100 無線端末装置
120 受信回路
130 受信データ処理部
140 状態管理部
150 親選択用コスト算出部
160 アプリケーション部
170 送信データ生成部
180 送信回路
1000 BS
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線により通信可能な複数の装置をノードとして含む木構造のネットワークにおいて通信する無線端末装置であって、
前記複数の装置のうちの通信可能な周辺無線端末装置のパスコスト、当該周辺無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報、および当該周辺無線端末装置が前記無線端末装置の木構造上の親として選択されている周辺無線端末装置であるか否かに基づいて、当該周辺無線端末装置を木構造上の親として選択することに対する評価値を算出する評価値算出部と、
前記評価値に基づいて、前記周辺無線端末装置のいずれかを木構造上の親として選択する状態管理部と、
を備える無線端末装置。
【請求項2】
前記評価値算出部は、前記無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報にさらに基づいて、前記評価値を算出する、請求項1の無線端末装置。
【請求項3】
前記周辺無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報は、前記周辺無線端末装置の木構造上の子の数を含む、請求項1または2の無線端末装置。
【請求項4】
前記周辺無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報は、前記周辺無線端末装置の木構造上の孫を木構造上の子として有する、当該周辺無線端末装置の木構造上の子の数をさらに含む、請求項3の無線端末装置
【請求項5】
前記無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報は、前記無線端末装置の木構造上の孫を木構造上の子として有する、当該無線端末装置の木構造上の子の数をさらに含む、請求項2から4のいずれかの無線端末装置
【請求項6】
前記評価値算出部は、前記周辺無線端末装置のパスコストに第1の係数を乗じた値と、前記周辺無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報、および当該周辺無線端末装置が前記無線端末装置の木構造上の親として選択されている周辺無線端末装置であるか否か、に基づいて得られる付加コストに第2の係数を乗じた値とに応じて、前記評価値を算出する、請求項1から5のいずれかの無線端末装置。
【請求項7】
前記状態管理部は、前記無線端末装置が木構造上の子を有しない場合に、前記無線端末装置の受信機に間欠動作を行わせる、請求項1から6のいずれかの無線端末装置。
【請求項8】
前記無線端末装置のパスコスト、前記無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報、および前記無線端末装置の木構造上の親の識別情報のうちの少なくとも1つを含む通知情報を送信する送信部と、
前記周辺無線端末装置のパスコスト、前記周辺無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報、および前記周辺無線端末装置の木構造上の親の識別情報のうちの少なくとも1つを含む通知情報を受信する受信部と、
をさらに備える、請求項1から7のいずれかの無線端末装置。
【請求項9】
前記送信部は、前記通知情報を繰り返し送信する、請求項8の無線端末装置。
【請求項10】
前記送信部は、間欠動作を行う受信機を有する周辺無線端末装置が前記無線端末装置の木構造上の親として選択された場合に、間欠動作の中止を指示する指示情報を送信する、請求項7から9のいずれかの無線端末装置。
【請求項11】
前記状態管理部は、前記評価値に基づいて前記周辺無線端末装置のいずれかを予備の親として選択し、前記無線端末装置が、前記無線端末装置の木構造上の親として選択されている周辺無線端末装置と通信できなくなった場合には、前記予備の親を木構造上の親として選択する、請求項1から10のいずれかの無線端末装置。
【請求項12】
前記状態管理部は、前記無線端末装置が木構造上の子を有さず、かつ前記無線端末装置が前記周辺無線端末装置のいずれからも予備の親として選択されていない場合に、前記無線端末装置の受信機に間欠動作を行わせる、請求項11の無線端末装置。
【請求項13】
前記状態管理部は、最善の評価値を伴う前記周辺無線端末装置を木構造上の親として選択し、次善の評価値を伴う前記周辺無線端末装置を予備の親として選択する、請求項11または12の無線端末装置。
【請求項14】
請求項1から13のいずれかの無線端末装置を含む無線通信システム。
【請求項15】
無線により通信可能な複数の装置をノードとして含む木構造のネットワークにおいて通信する無線端末装置を制御するコンピュータを、
前記複数の装置のうちの通信可能な周辺無線端末装置のパスコスト、当該周辺無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報、および当該周辺無線端末装置が前記無線端末装置の木構造上の親として選択されている周辺無線端末装置であるか否かに基づいて、当該周辺無線端末装置を木構造上の親として選択することに対する評価値を算出する評価値算出部と、
前記評価値に基づいて、前記周辺無線端末装置のいずれかを木構造上の親として選択する状態管理部と、
として機能させるプログラム。
【請求項16】
無線により通信可能な複数の装置をノードとして含む木構造のネットワークにおいて通信する無線端末装置を用いた無線通信方法であって、
前記複数の装置のうちの通信可能な周辺無線端末装置のパスコスト、当該周辺無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報、および当該周辺無線端末装置が前記無線端末装置の木構造上の親として選択されている周辺無線端末装置であるか否かに基づいて、当該周辺無線端末装置を木構造上の親として選択することに対する評価値を算出するステップと、
前記評価値に基づいて、前記周辺無線端末装置のいずれかを木構造上の親として選択するステップと、
を含む無線通信方法。
【請求項1】
無線により通信可能な複数の装置をノードとして含む木構造のネットワークにおいて通信する無線端末装置であって、
前記複数の装置のうちの通信可能な周辺無線端末装置のパスコスト、当該周辺無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報、および当該周辺無線端末装置が前記無線端末装置の木構造上の親として選択されている周辺無線端末装置であるか否かに基づいて、当該周辺無線端末装置を木構造上の親として選択することに対する評価値を算出する評価値算出部と、
前記評価値に基づいて、前記周辺無線端末装置のいずれかを木構造上の親として選択する状態管理部と、
を備える無線端末装置。
【請求項2】
前記評価値算出部は、前記無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報にさらに基づいて、前記評価値を算出する、請求項1の無線端末装置。
【請求項3】
前記周辺無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報は、前記周辺無線端末装置の木構造上の子の数を含む、請求項1または2の無線端末装置。
【請求項4】
前記周辺無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報は、前記周辺無線端末装置の木構造上の孫を木構造上の子として有する、当該周辺無線端末装置の木構造上の子の数をさらに含む、請求項3の無線端末装置
【請求項5】
前記無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報は、前記無線端末装置の木構造上の孫を木構造上の子として有する、当該無線端末装置の木構造上の子の数をさらに含む、請求項2から4のいずれかの無線端末装置
【請求項6】
前記評価値算出部は、前記周辺無線端末装置のパスコストに第1の係数を乗じた値と、前記周辺無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報、および当該周辺無線端末装置が前記無線端末装置の木構造上の親として選択されている周辺無線端末装置であるか否か、に基づいて得られる付加コストに第2の係数を乗じた値とに応じて、前記評価値を算出する、請求項1から5のいずれかの無線端末装置。
【請求項7】
前記状態管理部は、前記無線端末装置が木構造上の子を有しない場合に、前記無線端末装置の受信機に間欠動作を行わせる、請求項1から6のいずれかの無線端末装置。
【請求項8】
前記無線端末装置のパスコスト、前記無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報、および前記無線端末装置の木構造上の親の識別情報のうちの少なくとも1つを含む通知情報を送信する送信部と、
前記周辺無線端末装置のパスコスト、前記周辺無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報、および前記周辺無線端末装置の木構造上の親の識別情報のうちの少なくとも1つを含む通知情報を受信する受信部と、
をさらに備える、請求項1から7のいずれかの無線端末装置。
【請求項9】
前記送信部は、前記通知情報を繰り返し送信する、請求項8の無線端末装置。
【請求項10】
前記送信部は、間欠動作を行う受信機を有する周辺無線端末装置が前記無線端末装置の木構造上の親として選択された場合に、間欠動作の中止を指示する指示情報を送信する、請求項7から9のいずれかの無線端末装置。
【請求項11】
前記状態管理部は、前記評価値に基づいて前記周辺無線端末装置のいずれかを予備の親として選択し、前記無線端末装置が、前記無線端末装置の木構造上の親として選択されている周辺無線端末装置と通信できなくなった場合には、前記予備の親を木構造上の親として選択する、請求項1から10のいずれかの無線端末装置。
【請求項12】
前記状態管理部は、前記無線端末装置が木構造上の子を有さず、かつ前記無線端末装置が前記周辺無線端末装置のいずれからも予備の親として選択されていない場合に、前記無線端末装置の受信機に間欠動作を行わせる、請求項11の無線端末装置。
【請求項13】
前記状態管理部は、最善の評価値を伴う前記周辺無線端末装置を木構造上の親として選択し、次善の評価値を伴う前記周辺無線端末装置を予備の親として選択する、請求項11または12の無線端末装置。
【請求項14】
請求項1から13のいずれかの無線端末装置を含む無線通信システム。
【請求項15】
無線により通信可能な複数の装置をノードとして含む木構造のネットワークにおいて通信する無線端末装置を制御するコンピュータを、
前記複数の装置のうちの通信可能な周辺無線端末装置のパスコスト、当該周辺無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報、および当該周辺無線端末装置が前記無線端末装置の木構造上の親として選択されている周辺無線端末装置であるか否かに基づいて、当該周辺無線端末装置を木構造上の親として選択することに対する評価値を算出する評価値算出部と、
前記評価値に基づいて、前記周辺無線端末装置のいずれかを木構造上の親として選択する状態管理部と、
として機能させるプログラム。
【請求項16】
無線により通信可能な複数の装置をノードとして含む木構造のネットワークにおいて通信する無線端末装置を用いた無線通信方法であって、
前記複数の装置のうちの通信可能な周辺無線端末装置のパスコスト、当該周辺無線端末装置の木構造上の子孫に関する情報、および当該周辺無線端末装置が前記無線端末装置の木構造上の親として選択されている周辺無線端末装置であるか否かに基づいて、当該周辺無線端末装置を木構造上の親として選択することに対する評価値を算出するステップと、
前記評価値に基づいて、前記周辺無線端末装置のいずれかを木構造上の親として選択するステップと、
を含む無線通信方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−235324(P2012−235324A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102725(P2011−102725)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【Fターム(参考)】
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