説明

無線端末装置、無線通信システムおよび通信状態レベルの報知方法

【課題】本発明は、複数のチャンネルで無線通信をおこなう無線中継装置と無線端末装置とを含む無線通信システムにおいて、無線中継装置と無線端末装置との間の通信速度の低下の抑制を図ることを目的とする。
【解決手段】無線通信システムは、無線端末装置が、通信のスループットを測定するスループット測定部と、測定されたスループットが所定のレベル以上か否かを判定する判定部と、所定のレベル以上ではないと判定された場合には、無線中継装置との通信に用いるチャンネルを切り替える端末装置側チャンネル切替部と、チャンネルの切替先を示す切替先情報を無線中継装置に対して送信する端末装置側通信部と、を備えるとともに、無線中継装置が、切替先情報を受信する中継装置側通信部と、切替先情報を受信すると、無線端末装置との通信に用いるチャンネルを切り替える中継装置側チャンネル切替部と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、無線通信を利用した無線LANに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数のチャンネルで無線通信をおこなう無線中継装置(無線LAN親機)と無線端末装置(無線LAN子機)とを含む無線通信システムにおいて、無線LAN親機が、受信するノイズの頻度に応じて無線LAN子機との通信に用いるチャンネルを切り替える技術が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−180106号公報
【特許文献2】特開平10−42353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、無線LAN親機と無線LAN子機との間の通信速度の低下を抑制するために、通信に用いるチャンネルを切り替える技術については、なお改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、複数のチャンネルで無線通信をおこなう無線中継装置と無線端末装置とを含む無線通信システムにおいて、無線中継装置と無線端末装置との間の通信速度の低下の抑制を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の少なくとも一部を解決するために、本発明は、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
複数のチャンネルで無線通信が可能な無線中継装置と無線端末装置とを含む無線通信システムであって、
前記無線端末装置は、
第1のチャンネルを用いた前記無線中継装置との通信のスループットを測定するスループット測定部と、
前記スループット測定部により測定された前記スループットが所定のレベル以上か否かを判定する判定部と、
前記判定部により、前記スループットが前記所定のレベル以上ではないと判定された場合には、前記無線中継装置との通信に用いるチャンネルを前記第1のチャンネルから、前記第1のチャンネルと異なる第2のチャンネルに切り替える端末装置側チャンネル切替部と、
前記チャンネル切替部により切り替えられるチャンネルの切替先を示す切替先情報を前記無線中継装置に対して送信する端末装置側通信部と、を備え、
前記無線中継装置は、
前記無線端末装置から前記切替先情報を受信する中継装置側通信部と、
前記中継装置側通信部が前記切替先情報を受信すると、前記無線端末装置との通信に用いるチャンネルを前記第1のチャンネルから、前記第2のチャンネルに切り替える中継装置側チャンネル切替部と、を備えている、無線通信システム。
【0008】
この構成によれば、無線端末装置が無線中継装置との通信のスループットを測定し、スループットが所定のレベルに達していない場合には、無線中継装置との通信に用いるチャンネルを切り替えるため、無線中継装置と無線端末装置との間の通信速度の低下の抑制を図ることができる。
【0009】
[適用例2]
適用例1に記載の無線通信システムにおいて、
前記スループット測定部は、前記端末装置側チャンネル切替部により、前記無線中継装置との通信に用いるチャンネルが前記第1のチャンネルから前記第2のチャンネルに切り替えられると、前記第2のチャンネルにおける前記無線中継装置との通信のスループットを測定し、
前記端末装置側チャンネル切替部は、判定部により、前記第2のチャンネルにおける前記スループットが前記所定のレベルに達していないとされると、前記無線中継装置との通信に用いるチャンネルを第2のチャンネルと異なる第3のチャンネルに切り替える、無線通信システム。
【0010】
この構成によれば、無線端末装置は、切り替えた先のチャンネルにおいて、無線中継装置との通信のスループットを測定し、スループットが所定のレベルに達していない場合には、さらにチャンネルを切り替えるため、無線中継装置と無線端末装置との間の通信速度の低下の抑制を図ることができる。
【0011】
[適用例3]
適用例1または適用例2に記載の無線通信システムにおいて、
前記中継装置側通信部は、前記中継装置側チャンネル切替部により、前記無線端末装置との通信に用いるチャンネルが前記第1のチャンネルから前記第2のチャンネルに切り替えられると、前記第2のチャンネルを用いて前記無線端末装置に応答データを送信し、
前記端末装置側チャンネル切替部は、所定の期間内に前記第2のチャンネルにおいて前記端末装置側通信部が前記応答データを受信しない場合には、前記無線中継装置との通信に用いるチャンネルを前記第2のチャンネルから前記第1のチャンネルに切り替える、無線通信システム。
【0012】
この構成によれば、無線端末装置は、切り替えた先のチャンネルにおいて、無線中継装置との通信が困難となった場合には、チャンネルを切り替える前のチャンネルに戻すため、無線中継装置と無線端末装置との間における通信の安定性の向上を図ることができる。
【0013】
[適用例4]
適用例1ないし適用例3のいずれかに記載の無線通信システムにおいて、
前記判定部は、無線端末装置110とアクセスポイント200との間で予め設定されている上限のスループットに対する、前記スループット測定部により測定された前記スループットの割合が予め設定された閾値以上となる場合に、前記スループット測定部により測定された前記スループットが前記所定のレベル以上であると判定する、無線通信システム。
【0014】
この構成によれば、通信状態のよくないチャンネルを容易に検出することができるため、無線中継装置と無線端末装置との間における通信の安定性の向上を図ることができる。
【0015】
[適用例5]
複数のチャンネルで無線中継装置と無線通信が可能な無線端末装置であって、
第1のチャンネルを用いた前記無線中継装置との通信のスループットを測定するスループット測定部と、
前記スループット測定部により測定された前記スループットが所定のレベル以上か否かを判定する判定部と、
前記判定部により、前記スループットが前記所定のレベル以上ではないと判定された場合には、前記無線中継装置との通信に用いるチャンネルを前記第1のチャンネルから、前記第1のチャンネルと異なる第2のチャンネルに切り替える端末装置側チャンネル切替部と、
前記チャンネル切替部により切り替えられたチャンネルの切替先を示す切替先情報を前記無線中継装置に対して送信する端末装置側通信部と、を備える無線通信端末。
【0016】
この構成によれば、無線端末装置は、無線中継装置との通信のスループットを測定し、スループットが所定のレベルに達していない場合には、無線中継装置との通信に用いるチャンネルを切り替えるため、無線中継装置と無線端末装置との間の通信速度の低下の抑制を図ることができる。
【0017】
[適用例6]
複数のチャンネルで無線端末装置と無線通信が可能な無線中継装置であって、
第1のチャンネルにおいて、前記無線端末装置から、前記第1のチャンネルと異なる第2のチャンネルを示す切替先情報を受信する中継装置側通信部と、
前記中継装置側通信部が前記切替先情報を受信すると、前記無線端末装置との通信に用いるチャンネルを前記第1のチャンネルから、前記第2のチャンネルに切り替える中継装置側チャンネル切替部と、を備えている、無線中継装置。
【0018】
この構成によれば、無線中継装置は、無線端末装置からチャンネルの切り替え先を示す切替先情報を受信すると、無線端末装置との通信に用いるチャンネルを切り替えるため、無線中継装置と無線端末装置との間の通信速度の低下の抑制を図ることができる。
【0019】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、無線中継装置と無線端末装置との間の無線通信に用いられるチャンネルの切替方法、無線中継装置、無線端末装置および無線通信システムの制御方法、これらの方法または装置の機能を実現するためのコンピュータープログラム、そのコンピュータープログラムを記録した記録媒体、等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施例としての無線LANシステムの概略構成を例示した説明図である。
【図2】第1実施例の無線端末装置および端末PCの内部構成を例示したブロック図である。
【図3】アクセスポイントの内部構成を例示したブロック図である。
【図4】チャンネル切替処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【図5】MACアドレス取得処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【図6】スループット算出処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【図7】チャンネル設定処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【図8】第2実施例の無線端末装置および端末PCの内部構成を例示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.第1実施例:
A−1.無線LANシステムの構成:
A−2.チャンネル切替処理:
B.第2実施例:
B−1.無線LANシステムの構成:
C.変形例:
【0022】
A.第1実施例:
A−1.無線LANシステムの構成:
図1は本発明の一実施例としての無線LANシステムの概略構成を例示した説明図である。無線LANシステム1000は、無線LAN子機である無線端末装置110と、端末PC120と、無線LAN親機であるアクセスポイント200と、を備えている。無線端末装置110およびアクセスポイント200は、IEEE802.11規格に準拠した無線LAN装置である。無線端末装置110およびアクセスポイント200は、互いに電波到達範囲内に設置され、それぞれに接続されたデバイスやネットワークの間の通信を無線により中継する。無線端末装置110およびアクセスポイント200は、N個(Nは2以上の整数、ここではN=11)のチャンネル(チャンネルCH1〜CHn)において、互いに通信が可能である。
【0023】
なお、本実施例では、無線LAN子機である無線中継装置110は、端末PC120とアクセスポイント200との通信を中継する装置として説明するが、無線端末装置は、アクセスポイント200と無線通信が可能な装置であれば、通信を中継する装置以外の装置であってもよい。例えば、無線中継装置は、iPhone(登録商標)のような無線LAN機能を有する携帯電話や、iPad(登録商標)のような無線LAN機能を有するタブレット端末であってもよいし、無線LAN機能を有するゲーム機や、プリンタ、デジタルカメラなどであってもよい。
【0024】
無線端末装置110は、端末PC120と接続され、アクセスポイント200は、インターネットINTと接続されている。端末PC120は、アクセスポイント200と無線端末装置110との間の無線通信を介してインターネットINTに接続することができる。なお、無線LANシステム1000は、複数のアクセスポイント200や複数の無線端末装置110を含んでいてもよい。また、無線LANシステム1000は、アクセスポイント200がインターネットINTに接続されている構成に限定されず、アクセスポイント200がWAN(Wide Area Network)や、他のアクセスポイントやスイッチングハブと接続されている構成であってもよい。
【0025】
本実施例において、無線端末装置110は、2つのアンテナ11,12を備えている。また、アクセスポイント200は、2つのアンテナ21,22を備えている。無線端末装置110とアクセスポイント200とは、これらのアンテナ11,12,21,22を用いて、MIMO方式による無線通信を行う。また、無線端末装置110は、ユーザーに所定の情報を表示するためのインジケーター部13と、ユーザーが押下することができるボタン15を備えている。インジケーター部13は、例えば、LED(Light Emitting Diode)などの有色の発光素子によって構成される。インジケーター部13およびボタン15の機能については後述する。
【0026】
図2は、第1実施例の無線端末装置および端末PCの内部構成を例示したブロック図である。無線端末装置110は内部に、無線端末制御部130と、2つの無線通信回路111,112と、USB(Universal Serial Bus)コントローラー115と、USBポート103と、を備えている。無線端末制御部130は、無線通信回路111、112、USBコントローラー115、インジケーター部13、および、ボタン15とそれぞれ接続されている。
【0027】
無線端末制御部130は、図示しないCPU(Central Processing Unit)やEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)などのメモリにより構成され、無線端末装置110全体を制御する。無線端末制御部130は、メモリに格納されたファームウェアやコンピュータープログラムをCPUが実行することにより、通信制御部131、スループット測定部132、判定部133、および、チャンネル切替部134の各機能部を構成する。
【0028】
通信制御部131は、無線通信回路111、112や、USBコントローラー115を制御して、無線端末装置110と、無線端末装置110に接続される端末PC120やアクセスポイント200などの通信デバイスとの間のデータ転送をおこなう。本実施例では、通信制御部131は、レイヤ2のプロトコルであるLLD2(Link Layer Discovery&Diagnostics)プロトコルを用いた通信を行う。LLD2プロトコルにより、無線端末装置110は、通信デバイスとの間でメッセージのやりとりを行い、MACアドレスなどの当該通信デバイスに関する情報を取得する。
【0029】
スループット測定部132は、無線端末装置110とアクセスポイント200との間の通信のスループットを測定する。判定部133は、スループット測定部132により測定されたスループットから、無線端末装置110とアクセスポイント200との間の無線通信に用いられるチャンネルを切り替えるか否かを判定する。チャンネル切替部134は、判定部133による判定結果に応じて、アクセスポイント200との無線通信に用いるチャンネルの切り替えをおこなう。スループット測定部132、判定部133、および、チャンネル切替部134の具体的な動作については、後述の「チャンネル切替処理」において説明する。チャンネル切替処理とは、無線端末制御部130によりなされる処理であって、無線端末装置110とアクセスポイント200との通信状態に応じて、無線端末装置110とアクセスポイント200との通信に用いられるチャンネルの切替をおこなう処理である。
【0030】
無線通信回路111,112は、それぞれ、アンテナ11,12や、図示しないアンプを含んだ無線LANインターフェースであり、無線端末制御部130からの命令に応じて、送信電波の変調や、受信電波の復調をおこなう。例えば、無線通信回路111,112は、アクセスポイント200に送信するための送信データに基づいて送信信号を生成する。具体的には、無線通信回路111,112は、無線端末制御部130から受信した送信データを分割して、2本のアンテナ11,12に対応する2つの系列の送信信号を生成する。生成された2系列の送信信号を表す送信電波は、2本のアンテナ11,12から同一の周波数帯域で、同時に出力される。また、無線通信回路111,112は、アンテナ11,12を介してアクセスポイント200から受信した受信信号に基づいて受信データを生成する。具体的には、無線通信回路111,112は、2本のアンテナ11,12を介して受信した直接波と反射波とのひずみに基づいてアクセスポイント200との間の伝搬路における伝達行列を推定する。そして、その伝達行列を用いて、受信電波からアクセスポイント200が発信した元の2系列の送信信号を分離・再生し、再生された2系列の信号を組み合わせることにより受信データを生成する。
【0031】
USBコントローラー115は、USB規格に則ってUSBポート103に接続されたUSB機器と、無線端末制御部130との間の通信を制御する。本実施例では、USBポート103には、USBケーブル102を介して端末PC120が接続されている。
【0032】
端末PC120は、CPU121と、RAM(Random Access Memory)122と、ROM(Read Only Memory)123と、表示部125と、操作部127と、USBコントローラー129と、USBポート104とを備える。CPU121、RAM122、ROM123、表示部125、操作部127、および、USBコントローラー129は、バス101を介して互いに接続されている。
【0033】
CPU121は、ROM123やハードディスクドライブなどの図示しない外部記憶装置に格納されたコンピュータープログラムを主記憶装置であるRAM122に展開して実行することで、端末PC120全体を制御する。本実施例では、端末PC120は、OS(Operating System)として、Windows Vista(登録商標)が搭載されている。
【0034】
表示部125は、液晶ディスプレイなどの出力インターフェースにより構成されている。操作部127は、マウスやキーボードなどの入力インターフェースにより構成されている。USBコントローラー129は、USBポート104に接続されたUSB機器と、端末PC120との通信を制御する。
【0035】
なお、本実施例では上述のとおり、無線端末装置110と端末PC120とは、USBケーブル102を介して互いに接続されている。しかし、無線端末装置110と端末PC120とは、USB接続に変えて、LAN接続によって互いに接続されるものとしても良いし、バス接続によって互いに接続されるものとしても良い。また、無線端末装置110と端末PC120とは、一体的に構成されるものとしても良い。例えば、無線LANカードを備えた端末PCや、無線LANモジュールを内蔵した端末PCなどであってもよい。よって、特許請求の範囲における「無線端末装置」には、本実施例の無線端末装置110のみではなく、無線端末装置110の機能を含む端末PCも含まれる。
【0036】
図3は、アクセスポイント200の内部構成を例示したブロック図である。アクセスポイント200は、AP制御部210と、2つの無線通信回路221,222と、WAN(wide area network)ポート231と、を備えている。AP制御部210は、無線通信回路221,222、および、WANポート231とそれぞれ接続されている。
【0037】
AP制御部210は、図示しないCPUやEEPROMどのメモリにより構成され、アクセスポイント200全体を制御する。AP制御部210は、メモリに格納されたファームウェアやコンピュータープログラムをCPUが実行することにより、AP側通信制御部211、および、AP側チャンネル切替部214を構成する。
【0038】
AP側通信制御部211は、無線通信回路221,222を制御して、アクセスポイント200と、無線端末装置110との間のデータ転送をおこなう。また、AP側通信制御部211は、アクセスポイント200と、インターネットINTを介した図示しない通信デバイスとの情報のやりとりをおこなうために、WANポート231に接続された図示しないルータとの間のデータ転送をおこなう。本実施例では、AP側通信制御部211は、無線端末装置110と同様に、LLD2プロトコルを有している。そのため、アクセスポイント200は、無線端末装置110との間でLLD2プロトコルに則したメッセージの交換をおこなう。AP側チャンネル切替部214は、アクセスポイント200が後述するCH切替要求を無線端末装置110から受信すると、無線端末装置110との無線通信に用いるチャンネルをCH切替要求において指定されたチャンネルに切り替える。
【0039】
無線通信回路221,222は、それぞれ、アンテナ21,22や、図示しないアンプを含んだ無線LANインターフェースであり、AP制御部210からの命令に応じて、送信電波の変調や、受信電波の復調をおこなう。無線通信回路221,222の機能や構成は、無線端末装置110の無線通信回路111,112と同様であり、MIMO方式の無線通信のための送信信号の生成や、受信データの生成を行う。
【0040】
MIMO方式による通信では、送信信号の直接波と反射波とのひずみから通信路の伝達行列を推定しているため、無線通信の際の伝搬路における障害物の影響を低減することができる。しかし、MIMO方式による通信を採用した場合であっても、無線通信で使用される周波数帯域にノイズを発生させる機器などが存在する場合には、無線端末装置110とアクセスポイント200との間において十分な通信速度が得られない場合があった。この場合、無線通信に用いる周波数帯域をノイズの影響が少ない帯域に切り替えて通信をおこなうことが好ましい。そこで、無線端末装置110は、以下に説明するチャンネル切替処理をおこなう。
【0041】
A−2.チャンネル切替処理:
図4は、チャンネル切替処理の流れを説明するためのフローチャートである。このチャンネル切替処理は、LLD2プロトコルを利用したメッセージのやりとりにより、アクセスポイント200との間の通信状態のレベルを判定し、通信状態が所定のレベルに達していない場合には互いの通信に用いる周波数帯域を切り替える処理である。まず、無線端末装置110は、ユーザーによるボタン15の押下を検出すると、無線端末装置110に接続する全てのデバイスからMACアドレスを取得するためのMACアドレス取得処理をおこなう(ステップS100)。無線端末装置110が、MACアドレス取得処理を開始するトリガーはボタン15の押下に限定されず、任意に設定することができる。例えば、無線端末装置110は、端末PC120からの開始要求を受信して処理を開始する態様であってもよいし、端末PCとの接続時や、電源投入時に処理を開始する態様であってもよい。
【0042】
図5は、MACアドレス取得処理の流れを説明するためのフローチャートである。図5には、説明の便宜のためにアクセスポイント200により実行される処理が並べて表示されている。無線端末制御部130は、無線端末装置110に接続する全てのデバイスに対してDiscoveryメッセージを送信する(ステップS110)。アクセスポイント200のAP制御部210は、無線端末装置110からDiscoveryメッセージを受信すると、アクセスポイント200のMACアドレスを含むBSSID(Basic Service Set Identifier)を無線端末装置110に対して返信する(ステップS510)。これにより、無線端末装置110は、アクセスポイント200のMACアドレスを取得する(ステップS120)。以後、無線端末装置110は、取得したMACアドレスによって、通信相手をアクセスポイント200に特定してメッセージを送信することができる。以上によりMACアドレス取得処理が終了する。
【0043】
図4に戻り、無線端末装置110は、アクセスポイント200のMACアドレスを取得すると、無線端末装置110とアクセスポイント200との間の通信のスループットを算出するためのスループット算出処理をおこなう(ステップS200)。
【0044】
図6は、スループット算出処理の流れを説明するためのフローチャートである。図6には、図5と同様にアクセスポイント200により実行される処理が並べて表示されている。無線端末制御部130は、アクセスポイント200に対してEchoメッセージを送信する(ステップS210)。ここで、「Echoメッセージ」とは、LLD2プロトコルにおいて、通信機器間における接続状態をテストするために送信される固定長のメッセージである。アクセスポイント200のAP制御部210は、無線端末装置110からEchoメッセージを受信すると、Echoメッセージをそのまま無線端末装置110に返信する(ステップS520)。無線端末装置110とアクセスポイント200とは、このEchoメッセージのやりとりを所定のN回(Nは自然数)だけ繰り返す。
【0045】
無線端末装置110のスループット測定部132は、Echoメッセージのやりとりがおこなわれるごとに、1回のEchoメッセージのやりとりに要した時間t1,t2,…,tNをそれぞれ計測して記憶する。ここでは、計測された各時間t1,t2,…,tNは、通信制御部131が、送信信号を生成するためにEchoメッセージを表すデータの分割を開始したときから、返信されたEchoメッセージを受信電波から再生する処理が完了するまでの時間である。
【0046】
なお、無線端末制御部130は、Echoメッセージを送信した後、所定の時間が経過しても、アクセスポイント200からのEchoメッセージの返信を受信できなかった場合には、通信路においてEchoメッセージが消失したものとみなす。そして、新たにEchoメッセージの送信(ステップS210)をおこなう。
【0047】
無線端末制御部130は、送信したEchoメッセージの回数Nに対するアクセスポイント200からの返信を受信できた回数M(Mは自然数)の割合(M/N×100)をEchoメッセージの返信率として算出する(ステップS220)。Echoメッセージの返信率が所定の値(例えば90%以下)より低い場合には、無線端末制御部130は、予め設定されているアクセスポイント200との間の通信レートを低下させる処理を実行する(ステップS230)。そして、無線端末制御部130は、記憶した計測時間t1,t2,…,tNを初期化した上で、低下させた通信レートによって、アクセスポイント200との間のEchoメッセージのやりとりを再実行する(ステップS210)。このように、ステップS220のEchoメッセージの返信率の判定処理と、ステップS230の通信レートの低下処理とを繰り返すことによって、無線端末装置110とアクセスポイント200とは、より適切な通信レートでの通信をおこなうことができる。
【0048】
スループット測定部132は、無線端末装置110とアクセスポイント200との間のEchoメッセージのやりとりから、無線端末装置110とアクセスポイント200との間の通信の実効スループットを算出する(ステップS240)。具体的には、スループット測定部132は、記憶している各計測時間t1,t2,…,tNと、EchoメッセージのMACフレームのデータ量bとを用いて、Echoメッセージのやりとりの1回ごとのスループット(b/t)を算出し、その平均値を算出する。以降、算出したスループットの平均値を実効スループットVe(Mbps)と呼ぶ。実効スループットVeは、無線端末装置110とアクセスポイント200との間でやりとりがなされた全てのEchoメッセージからそれぞれ算出されたスループットの平均値であってもよいし、予め設定された所定数のEchoメッセージからそれぞれ算出されたスループットの平均値であってもよい。本実施例では、スループット測定部132は、MACレイヤにおけるスループットを算出しているが、スループット測定部132は、IPレイヤや、TCPレイヤ、または、PHYレイヤなど、MACレイヤ以外のレイヤにおけるスループットを算出してもよい。以上によりスループット算出処理が終了する。
【0049】
図4に戻り、判定部133は、実効スループットVeから無線端末装置110とアクセスポイント200との通信に用いられているチャンネルを切り替えるか否かの判定をおこなう(ステップS300)。具体的には、判定部133は、無線端末装置110とアクセスポイント200との間で予め設定されているリンク速度における最大処理能力を表す理論スループットVt(Mbps)に対する実効スループットVe(Mbps)の割合(Ve/Vt×100)を実効率Rとして算出し、実効率Rが予め設定された閾値Th(例えば50%)を下回っているか否かを判定する。閾値Thは、ノイズ発生源からノイズが発生している場合におけるスループットの低下の程度など種々の経験値を勘案して任意の値を設定することができる。なお、判定部133によるチャンネルを切り替えるか否かの判定は、上記の実効率を用いた方法に限定されず、種々の方法によりおこなうことができる。例えば、設定可能なリンク速度ごとに予め決められている閾値と実効スループットVeとを比較し、実効スループットVeが閾値を超えているか否かにより判定する構成であってもよいし、リンク速度の違いによらず一定の閾値と実効スループットVeとを比較する構成であってもよい。
【0050】
実効率Rが閾値Th以上の場合(ステップS300:NO)、無線端末装置110は、アクセスポイント200との通信に用いるチャンネルの切り替えをおこなわずにチャンネル切替処理を終了する。一方、実効率Rが閾値Thより小さい場合(ステップS300:YES)、無線端末装置110は、アクセスポイント200との通信に用いるチャンネルを切り替えるためのチャンネル設定処理をおこなう。なお、無線端末装置110は、実効率Rが閾値Thより小さいときにインジケーター部13にその旨を表示する機能を備えていてもよい。また、無線端末装置110は、インジケーター部13に実効率Rが閾値Thより小さい旨を表示した後、ユーザーによるボタン15の押下を検出したときにチャンネル設定処理をおこなう態様であってもよい。
【0051】
図7は、チャンネル設定処理の流れを説明するためのフローチャートである。図7には、図5と同様にアクセスポイント200により実行される処理が並べて表示されている。ます、チャンネル切替部134は、アクセスポイント200との通信に用いるチャンネルの切替先を決定する(ステップS410)。具体的には、無線端末制御部130は、無線端末装置110およびアクセスポイント200がサポートしているN個のチャンネル(チャンネルCH1〜CHn)のうち、現在、アクセスポイント200との通信に用いられているチャンネルCHpと異なるチャンネルの1つを切替先のチャンネルCHjとして決定する。
【0052】
通信制御部131は、ステップS410において決定された切替先のチャンネルCHjを示す情報を含むCH切替要求をアクセスポイント200に送信する(ステップS420)。また、チャンネル切替部134は、アクセスポイント200との無線通信に用いるチャンネルの切り替えをおこなう(ステップS430)。具体的には、チャンネル切替部134は、無線通信回路111,112を制御して、無線端末装置110がアクセスポイント200との無線通信に用いるチャンネルを現在のチャンネルCHpから、ステップS410において決定したチャンネルCHjに切り替える。通信制御部131は、切替先のチャンネルCHjにおいてアクセスポイント200との通信が可能か否かを確認するためのCH切替確認をアクセスポイント200に対して送信する(ステップS440)。
【0053】
一方、アクセスポイント200のAP側チャンネル切替部214は、アクセスポイント200が無線端末装置110からCH切替要求を受信すると、無線端末装置110との無線通信に用いるチャンネルの切り替えをおこなう(ステップS530)。具体的には、AP側チャンネル切替部214は、無線通信回路221,222を制御して、アクセスポイント200が無線端末装置110との無線通信に用いるチャンネルを現在のチャンネルCHpから、CH切替要求に示されているチャンネルCHjに切り替える。
【0054】
また、アクセスポイント200のAP側通信制御部211は、アクセスポイント200が無線端末装置110からCH切替確認を受信すると、切り替え先のチャンネルCHjにおいてCH切替応答を無線端末装置110に送信する(ステップS540)。この構成により、無線端末装置110は、アクセスポイント200からCH切替応答を受信したか否かにより、切替先のチャンネルCHjにおいてアクセスポイント200との通信が可能か否かを判別することができる。
【0055】
無線端末制御部130は、アクセスポイント200からCH切替応答を受信すると(ステップS450:YES)、チャンネルCHjにおいてアクセスポイント200との通信が可能であるため、チャンネル設定処理を終了する。一方、無線端末制御部130は、CH切替応答の受信がない場合には(ステップS450:NO)、所定の期間待機する(ステップS460:NO)。所定の期間は、任意に設定可能であり、本実施例では、無線端末装置110がCH切替要求を送信した時点から予め設定された時間(例えば60秒)経過した時点までの期間である。
【0056】
無線端末制御部130は、所定の期間待機してもアクセスポイント200からCH切替応答を受信しない場合には(ステップS460:YES)、チャンネルを元に戻す(ステップS470)。具体的には、無線端末制御部130は、アクセスポイント200との通信に用いるチャンネルをステップS430で切り替えた後のチャンネルCHjから、切り替える前のチャンネルCHpに変更する。このとき、無線端末制御部130は、チャンネルの切替を正しくおこなうことができなかった切替先のチャンネルCHjを切替対象外チャンネルとして記憶する。こうすることにより、無線端末制御部130は、再度、ステップS410においてチャンネルの切替先を決定するときに、切替先のチャンネルの候補からチャンネルの切替を正しくおこなうことができない切替対象外チャンネルを外すことができる。
【0057】
無線端末装置110がアクセスポイント200からCH切替応答を200受信できないときの原因としては、例えば、切替先のチャンネルCHjにノイズの発生源が存在するなどしてCH切替要求がアクセスポイント200に届いていない場合や、CH切替要求がアクセスポイント200に届いていても、変更先チャンネルで気象レーダーを検出したなどの理由によりアクセスポイント200側のチャンネルの切替がおこなわれていない場合などが考えられる。これらの原因により、無線端末装置110は、切替先のチャンネルCHjにおいてアクセスポイント200との通信が困難となっても、自主的にチャンネルを切替前に戻すことにより、再度、元のチャンネルCHpにおいてアクセスポイント200との通信を継続することができる。以上によりチャンネル設定処理が終了する。
【0058】
図4に示すように、チャンネル設定処理が終了すると、ステップS200に戻り、無線端末装置110は、再度、スループット算出処理をおこなう(ステップS200)。すなわち、無線端末装置110は、チャンネル設定処理において設定されたチャンネルにおいてアクセスポイント200との通信のスループットを算出する。この構成により、例えば、チャンネル設定処理において無線端末装置110とアクセスポイント200との間で用いられるチャンネルがチャンネルCHpからチャンネルCHjに切り替えられた場合には、スループット測定部132は、切替先のチャンネルCHjにおける実効スループットVeを算出し(ステップS200)、判定部133は、切替先のチャンネルCHjにおける実効率Rが閾値Thより小さいか否かを判定する(ステップS300)。切替先のチャンネルCHjにおける実効率Rが閾値Thより小さい場合には、無線端末装置110は、再度、チャンネル設定処理をおこなう。
【0059】
2回目に実施されるチャンネル設定処理では、チャンネル切替部134は、アクセスポイント200との通信に用いるチャンネルの切替先として、無線端末装置110およびアクセスポイント200がサポートしているN個のチャンネル(チャンネルCH1〜CHn)のうち、最初にアクセスポイント200との通信に用いられているチャンネルCHp、および、1回目のチャンネル設定処理において切替先のチャンネルとして決定したチャンネルCHj以外のチャンネルCHsを新たな切替先のチャンネルとして決定する。以降の処理は、1回目のチャンネル設定処理と同様であるため説明を省略する。
【0060】
本実施例における「チャンネルCHp」は、特許請求の範囲における「第1のチャンネル」に該当する。本実施例における「チャンネルCHj」は、特許請求の範囲における「第2のチャンネル」に該当する。本実施例における「チャンネルCHs」は、特許請求の範囲における「第3のチャンネル」に該当する。本実施例における「通信制御部131」は、特許請求の範囲における「端末装置側通信部」に該当する。本実施例における「AP側通信制御部211」は、特許請求の範囲における「中継装置側通信部」に該当する。
【0061】
以上説明した、第1実施例における無線LANシステム1000によれば、無線端末装置110がアクセスポイント200との通信のスループットを測定し、スループットが所定のレベルに達していない場合には、アクセスポイント200との通信に用いるチャンネルを切り替えるため、無線端末装置110とアクセスポイント200との間の通信速度の低下の抑制を図ることができる。具体的には、図4に示すように、無線端末装置110は、アクセスポイント200との間の通信のスループットが所定のレベルに達しているか否かを判定し(ステップS300)、スループットが所定のレベルに達していない場合には(ステップS300:YES)、チャンネル設定処理(ステップS400)により通信に用いるチャンネルを切り替えることができる。そのため、アクセスポイント200との通信に使用しているチャンネルが電子レンジなどのノイズ発生源からノイズを受けたり、他のネットワークに属する無線端末装置に使用されることにより、スループットが低下しても、使用するチャンネルを他のチャンネルに切り替えて通信をおこなうことができるため、スループットの低下の抑制を図ることができる。
【0062】
従来から、アクセスポイントが無線端末装置から受ける電波の強度(「RSSI」とも呼ぶ)に応じて、無線端末装置との通信に用いるチャンネルを切り替える無線LANシステムが知られている。しかし、アクセスポイントが受信する電波にノイズ発生源からのノイズが含まれていても、受信する電波の強度からノイズの有無を判別することは容易ではなかった。しかし、本発明に係る無線LANシステム1000によれば、無線端末装置110が測定するスループットのレベルに応じて無線端末装置110がアクセスポイント200との通信に用いるチャンネルを切り替えるため、スループットの低下とチャンネルの切替とを直接的に関連づけることができ、効果的にスループットの低下を抑制することができる。
【0063】
B.第2実施例:
第1実施例では、クライアント側の無線端末装置および端末PCのうち、無線端末装置においてチャンネル切替処理がおこなわれる無線LANシステムについて説明したが、第2実施例では、チャンネル切替処理の少なくとも一部が端末PCによりおこなわれる無線LANシステムついて説明する。本実施例では、無線端末装置および端末PCからなる複合体が特許請求の範囲における「無線端末装置」に該当する。
【0064】
B−1.無線LANシステムの構成:
図8は、第2実施例の無線端末装置および端末PCの内部構成を例示したブロック図である。第1実施例において無線端末装置110の内部に構成されていた、スループット測定部132、判定部133、および、チャンネル切替部134は、第2実施例では、端末PC120Aの内部に構成されている。具体的には、スループット測定部132、判定部133、および、チャンネル切替部134は、端末PC120AのCPU121が、ROM123や図示しないハードディスクドライブなどに格納されたコンピュータープログラムをRAM122に展開して実行することで構成される。また、第1実施例において無線端末装置110が備えていたボタン15やインジケーター部13は、第2実施例では、端末PC120Aの表示部125にボタン画像15Iやインジケーター画像13Iが表示されるように構成されている。第2実施例において、第1実施例と同様の符号を付した機能部や構成は、第1実施例と同様の機能や構成を有している。
【0065】
インターフェース部135は、表示部125に無線通信に関するインターフェース画像を表示する。具体的には、インターフェース部135は、表示部125に、インターフェース画像として、ボタン画像15Iと、インジケーター画像13Iとを表示する。ボタン画像15Iは、ユーザーが表示部125に表示されたポインターによって押下することができる画像である。ボタン画像15Iおよびインジケーター画像13Iは、第1実施例のインジケーター部13およびボタン15と同様の機能を有している。
【0066】
第1実施例において、無線端末装置110の通信制御部131、スループット測定部132、判定部133、および、チャンネル切替部134により実行されているチャンネル切替処理は、第2実施例において、無線端末装置110の通信制御部131と、端末PC120Aのスループット測定部132、判定部133、および、チャンネル切替部134により同様に実効される。
【0067】
以上説明した、第2実施例における無線LANシステム1000によれば、クライアント側において実行されるチャンネル切替処理は、クライアントを構成する無線端末装置および端末PCのいずれがおこなう構成であっても、無線端末装置とアクセスポイントとの間の通信速度の低下の抑制を図ることができる。すなわち、本発明は、クライアントの構成に関係なく実現することができる。例えば、本発明は他にも、無線LANカードを備えた端末PCや、無線LANモジュールを内蔵した端末PCなど、無線端末装置と端末PCとが一体的に構成されていても実現することができる。
【0068】
C.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0069】
C−1.変形例1:
第1実施例における無線LANシステム1000は、無線端末装置110が、インジケーター部13、および、ボタン15を備え、第2実施例における無線LANシステム1000は、端末PC120Aが、インジケーター画像13I、および、ボタン画像15Iを表示するためのインターフェース部135を備えているものとして説明した。しかし、本発明に係る無線LANシステム1000は、無線端末装置110にインジケーター部13やボタン15を備えていなくてもよく、また、端末PC120Aにインターフェース部135を備えていなくてもよい。これらの場合であっても、無線端末装置もしくは端末PCは、チャンネル切替処理を実行することができるため、無線端末装置とアクセスポイントとの間の通信速度の低下の抑制を図ることができる。
【0070】
C−2.変形例2:
本実施例では、図4に示すように、チャンネル切替処理には、MACアドレス取得処理が含まれているものとして説明した。しかし、チャンネル切替処理には、MACアドレス取得処理が含まれていなくてもよい。すなわち、チャンネル切替処理は、MACアドレス取得処理とは別に、任意のタイミングで無線端末装置110もしくは端末PCにより実行されてもよい。例えば、チャンネル切替処理は、ユーザーからの無線端末装置もしくは端末PCへの入力に応じて適宜実行されてもよいし、ユーザーからの入力によらず定期的に実行されてもよい。
【0071】
C−3.変形例3:
本実施例では、図4に示すように、チャンネル切替処理には、スループット算出処理が含まれているものとして説明した。しかし、チャンネル切替処理には、スループット算出処理の代わりに、無線端末装置110とアクセスポイント200との通信状態を判定するためのスループット以外のパラメーターを検出する処理が含まれていてもよい。この場合であっても、検出したパラメーターにより通信状態を判定し、通信状態が所定のレベル以下の場合には、チャンネルを切り替える構成とすることで、無線端末装置とアクセスポイントとの間の通信速度の低下の抑制を図ることができる。通信状態を判定するためのパラメーターには、例えば、TCPにおける再送率や、FCS(Frame Check Sequence)エラーの検出率などを採用することができる。
【0072】
C−4.変形例4:
本実施例では、図6に示すスループット算出処理において、スループット測定部132は、無線端末装置110とアクセスポイント200との間のEchoメッセージのやりとりにおけるスループットを用いて実効スループットVeを算出していた。しかし、スループット測定部132は、Echoメッセージ以外の他のデータの送受信処理におけるスループットから実効スループットVeを算出する構成であってもよい。ただし、Echoメッセージのやりとりなど、利用する通信プロトコルが有する通信テスト機能を利用して、通信のスループットを測定すれば、通信状態のレベルの測定が適切かつ容易に行えるため好ましい。
【0073】
C−5.変形例5:
本実施例では、図7に示すチャンネル設定処理において、無線端末装置や端末PCなどのクライアント側のチャンネル切替部134が切替先のチャンネルを決定する構成として説明した。しかし、無線端末装置や端末PCなどのクライアント側は、測定したスループットが所定のレベルに達していないときに、切替先が指定されていないCH切替要求をアクセスポイント200に対して送信し、アクセスポイント200が切替先のチャンネルを決定し、クライアント側に通知する構成であってもよい。
【0074】
C−6.変形例6:
本実施例では、無線端末装置110とアクセスポイント200は、LLD2プロトコルを利用した通信をおこなうものとして説明した。しかし、無線端末装置110とアクセスポイント200は、他のレイヤ2のプロトコルを利用して通信をおこなう構成であってもよいし、TCP/IPやFTPなど、レイヤ2以上のプロトコルを利用して通信をおこなう構成であってもよい。なお、LLD2プロトコルを利用する場合には、比較的容易に接続デバイスのMACアドレスを取得することができ、接続デバイスを特定した通信を容易に行うことができる。
【0075】
C−7.変形例7:
本実施例では、無線端末装置110は、チャンネル切替処理において、実効率Rが閾値Thより小さいときに、自動的にチャンネル設定処理をおこなう構成として説明したが、無線端末装置110は、チャンネル設定処理をおこなうか否かをユーザーに確認する構成としてもよい。具体的には、実効率Rが閾値Thより小さいとき、無線端末装置110は、インジケーター部13にその旨を表示し、ユーザーによるボタン15の押下を検出した後にチャンネル設定処理を実行する構成としてもよい。これらの場合であっても、無線端末装置もしくは端末PCは、チャンネル設定処理を適宜実行することができるため、無線端末装置とアクセスポイントとの間の通信速度の低下の抑制を図ることができる。また、無線端末装置110は、実効率Rによらず、ユーザーからのボタン15の押下を検出したときに適宜、チャンネル設定処理を実行する構成としてもよい。
【0076】
C−8.変形例8:
本実施例において、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよい。例えば、無線通信回路111,112の機能の一部を通信制御部131が実行するようにしてもよい。
【0077】
C−9.変形例9:
本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、無線中継装置と無線端末装置との間の無線通信に用いられるチャンネルの切替方法、無線中継装置、無線端末装置および無線通信システムの制御方法、これらの方法または装置の機能を実現するためのコンピュータープログラム、そのコンピュータープログラムを記録した記録媒体、等の形態で実現することができる。
【符号の説明】
【0078】
11,12,21,22…アンテナ
13…インジケーター部
15…ボタン
101…バス
102…USBケーブル
103,104…USBポート
110…無線端末装置
111,112,221,222…無線通信回路
115,129…USBコントローラー
120…端末PC
121…CPU
122…RAM
123…ROM
125…表示部
127…操作部
130…無線端末制御部
131…通信制御部
132…スループット測定部
133…判定部
134…チャンネル切替部
135…インターフェース部
200…アクセスポイント
210…AP制御部
211…AP側通信制御部
214…AP側チャンネル切替部
231…WANポート
1000…無線LANシステム
INT…インターネット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のチャンネルで無線通信が可能な無線中継装置と無線端末装置とを含む無線通信システムであって、
前記無線端末装置は、
第1のチャンネルを用いた前記無線中継装置との通信のスループットを測定するスループット測定部と、
前記スループット測定部により測定された前記スループットが所定のレベル以上か否かを判定する判定部と、
前記判定部により、前記スループットが前記所定のレベル以上ではないと判定された場合には、前記無線中継装置との通信に用いるチャンネルを前記第1のチャンネルから、前記第1のチャンネルと異なる第2のチャンネルに切り替える端末装置側チャンネル切替部と、
前記チャンネル切替部により切り替えられるチャンネルの切替先を示す切替先情報を前記無線中継装置に対して送信する端末装置側通信部と、を備え、
前記無線中継装置は、
前記無線端末装置から前記切替先情報を受信する中継装置側通信部と、
前記中継装置側通信部が前記切替先情報を受信すると、前記無線端末装置との通信に用いるチャンネルを前記第1のチャンネルから、前記第2のチャンネルに切り替える中継装置側チャンネル切替部と、を備えている、無線通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信システムにおいて、
前記スループット測定部は、前記端末装置側チャンネル切替部により、前記無線中継装置との通信に用いるチャンネルが前記第1のチャンネルから前記第2のチャンネルに切り替えられると、前記第2のチャンネルにおける前記無線中継装置との通信のスループットを測定し、
前記端末装置側チャンネル切替部は、判定部により、前記第2のチャンネルにおける前記スループットが前記所定のレベルに達していないとされると、前記無線中継装置との通信に用いるチャンネルを第2のチャンネルと異なる第3のチャンネルに切り替える、無線通信システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の無線通信システムにおいて、
前記中継装置側通信部は、前記中継装置側チャンネル切替部により、前記無線端末装置との通信に用いるチャンネルが前記第1のチャンネルから前記第2のチャンネルに切り替えられると、前記第2のチャンネルを用いて前記無線端末装置に応答データを送信し、
前記端末装置側チャンネル切替部は、所定の期間内に前記第2のチャンネルにおいて前記端末装置側通信部が前記応答データを受信しない場合には、前記無線中継装置との通信に用いるチャンネルを前記第2のチャンネルから前記第1のチャンネルに切り替える、無線通信システム。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の無線通信システムにおいて、
前記判定部は、無線端末装置110とアクセスポイント200との間で予め設定されている上限のスループットに対する、前記スループット測定部により測定された前記スループットの割合が予め設定された閾値以上となる場合に、前記スループット測定部により測定された前記スループットが前記所定のレベル以上であると判定する、無線通信システム。
【請求項5】
複数のチャンネルで無線中継装置と無線通信が可能な無線端末装置であって、
第1のチャンネルを用いた前記無線中継装置との通信のスループットを測定するスループット測定部と、
前記スループット測定部により測定された前記スループットが所定のレベル以上か否かを判定する判定部と、
前記判定部により、前記スループットが前記所定のレベル以上ではないと判定された場合には、前記無線中継装置との通信に用いるチャンネルを前記第1のチャンネルから、前記第1のチャンネルと異なる第2のチャンネルに切り替える端末装置側チャンネル切替部と、
前記チャンネル切替部により切り替えられたチャンネルの切替先を示す切替先情報を前記無線中継装置に対して送信する端末装置側通信部と、を備える無線通信端末。
【請求項6】
複数のチャンネルで無線端末装置と無線通信が可能な無線中継装置であって、
第1のチャンネルにおいて、前記無線端末装置から、前記第1のチャンネルと異なる第2のチャンネルを示す切替先情報を受信する中継装置側通信部と、
前記中継装置側通信部が前記切替先情報を受信すると、前記無線端末装置との通信に用いるチャンネルを前記第1のチャンネルから、前記第2のチャンネルに切り替える中継装置側チャンネル切替部と、を備えている、無線中継装置。
【請求項7】
無線中継装置と無線端末装置との間の無線通信に用いられるチャンネルの切替方法であって、
第1のチャンネルを用いた前記無線中継装置と前記無線端末装置との間の通信のスループットを測定する工程と、
測定された前記スループットが所定のレベル以上か否かを判定する工程と、
前記判定により、前記スループットが前記所定のレベル以上ではないと判定された場合には、前記無線中継装置と前記無線端末装置との通信に用いるチャンネルを前記第1のチャンネルから、前記第1のチャンネルと異なる第2のチャンネルに切り替える工程と、を備えている、チャンネルの切替方法。
【請求項8】
無線中継装置と無線端末装置との間の無線通信に用いられるチャンネルの切替をおこなうためのプログラムであって、
第1のチャンネルを用いた前記無線中継装置と前記無線端末装置との間の通信のスループットを測定するスループット測定機能と、
測定された前記スループットが所定のレベル以上か否かを判定する判定機能と、
前記判定により、前記スループットが前記所定のレベル以上ではないと判定された場合には、前記無線中継装置と前記無線端末装置との通信に用いるチャンネルを前記第1のチャンネルから、前記第1のチャンネルと異なる第2のチャンネルに切り替えるチャンネル切替機能と、をコンピュータに実現させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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