説明

無線端末装置及びチャネル制御方法

【課題】MACチャネル・アグリゲーションを用いる場合において、必要となるパケット処理能力を抑制しつつ、VoIPパケットなどのサイズが小さいパケットを大量に処理する場合でも、より確実に当該パケットを処理することができる無線端末装置及びチャネル制御方法を提供する。
【解決手段】無線端末装置200は、無線基地局とのMAC層レベルの通信チャネルであるMACチャネルを複数まとめて用いたリンクレイヤチャネルを設定するリンクレイヤチャネル処理部203と、リンクレイヤチャネルを介して受信したパケットの種別の解釈、及び当該パケットの再構成を含む無線端末装置200のパケット処理能力に応じて、リンクレイヤチャネルに用いられているMACチャネルの数を減らすMACチャネル制御部205とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線端末装置及びチャネル制御方法に関し、特に、MACチャネルを複数まとめて用いることによってスループットを向上させるMACチャネル・アグリゲーションを実行することができる無線端末装置、及び当該無線端末装置において用いられるチャネル制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、媒体アクセス制御(MAC)層において設定される通信チャネルであるMACチャネルを複数まとめて用いることによってスループットを向上させる、いわゆるMACチャネル・アグリゲーションが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
例えば、iBurst(登録商標)規格に準拠した無線通信システムでは、無線基地局と無線端末装置との間において、1〜3つのMACチャネルをまとめて用いることによって、MACチャネル・アグリゲーションを実行することができる。
【特許文献1】特開2005−252897号公報(第7頁、第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年では、上述したような無線通信システムでも、RTP、UDP及びIPなどを用いて、音声帯域信号が符号化された音声データやビデオのストリーミングデータを中継することが一般的になりつつある。
【0005】
この場合、音声データがパケット化されたVoIPパケットや、ストリーミングデータを含むRTPパケットは、他の一般的なアプリケーション(例えば、ファイル転送や電子メール)によって送受信されるデータを含むIPパケットよりもサイズが小さい。例えば、VoIPパケットは、概ね60バイト程度(非圧縮時)である。
【0006】
このため、例えば、MACチャネル・アグリゲーションによって10Mbpsのスループットが確保されている場合、まとめられた複数のMACチャネルを用いて設定されるリンクレイヤチャネル(論理チャネル)を介して、毎秒約17万パケットを疎通させることができる。しかしながら、無線端末装置では、小サイズのVoIPパケットを大量に処理しなければならず、パケット処理能力、具体的には、搭載されているCPUの処理能力を超えてしまう場合がある。
【0007】
無線端末装置は、IPパケットの受信に際して、IPパケットごとに種別の解釈や再構成を実行しなければならない。勿論、無線端末装置のパケット処理能力を増大すれば、この問題は解決できる。しかしながら、パケット処理能力を増大すれば、無線端末装置のコストが上昇するといった問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、必要となるパケット処理能力を抑制しつつ、VoIPパケットなどのサイズが小さいパケットを大量に処理する場合でも、より確実に当該パケットを処理することができる無線端末装置及びチャネル制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した問題を解決するため、本発明は、次のような特徴を有している。まず、本発明の第1の特徴は、無線基地局とのMAC層レベルの通信チャネルであるMACチャネル(MACチャネルC21〜C23)を複数まとめて用いた論理チャネル(リンクレイヤチャネルC11)を設定する論理チャネル設定部(リンクレイヤチャネル処理部203)と、前記論理チャネルを介して受信したパケット(VoIPパケットPなどを含むMAC層レベルのパケット)の種別の解釈及び前記パケットの再構成を含む前記無線端末装置のパケット処理能力に応じて、前記論理チャネルに用いられている前記MACチャネルの数を制御するMACチャネル制御部(MACチャネル制御部205)とを備える無線端末装置(無線端末装置200)であることを要旨とする。
【0010】
このような無線端末装置によれば、無線端末装置のパケット処理能力に応じて、論理チャネルに用いられているMACチャネルの数が制御、例えば、MACチャネルの数が減らされる。このため、無線端末装置が小サイズのパケット(例えば、VoIPパケット)を大量に処理する場合において、論理チャネルのスループットの上限に対しては余裕があるものの、無線端末装置のパケット処理能力の限界によって、当該パケットの種別の解釈や再構成などの処理が実行できなくなることを回避することができる。
【0011】
すなわち、このような無線端末装置によれば、MACチャネル・アグリゲーションを用いる場合において、必要となるパケット処理能力を抑制しつつ、VoIPパケットなどのサイズが小さいパケットを大量に処理する場合でも、より確実に当該パケットを処理することができる。
【0012】
本発明の第2の特徴は、本発明の第1の特徴に係り、前記論理チャネルを介して受信した前記パケットの数を監視するパケット数監視部(PPPパケットカウンタ207)をさらに備え、前記MACチャネル制御部は、所定の単位時間内に受信した前記パケットの数が所定の閾値を超えた場合、前記MACチャネルの数を減らすことを要旨とする。
【0013】
本発明の第3の特徴は、本発明の第1の特徴に係り、前記論理チャネルを介して受信した前記パケットの処理を実行するCPU(CPU200a)を有し、前記MACチャネル制御部は、前記CPUの稼働状況に基づいて前記MACチャネルの数を減らすか否かを決定することを要旨とする。
【0014】
本発明の第4の特徴は、本発明の第3の特徴に係り、前記MACチャネル制御部は、前記CPUの空き時間が所定の閾値を下回った場合、前記MACチャネルの数を減らすことを要旨とする。
【0015】
本発明の第5の特徴は、無線通信区間におけるMAC層レベルの通信チャネルであるMACチャネルを複数まとめて用いた論理チャネルを設定するステップと、前記論理チャネルを介して中継されたパケットの種別の解釈及び前記パケットの再構成を含む無線端末装置のパケット処理能力に応じて、前記論理チャネルに用いられている前記MACチャネルの数を制御するステップとを備えることを要旨とする。
【0016】
本発明の第6の特徴は、本発明の第5の特徴に係り、前記論理チャネルを介して中継された前記パケットの数を監視するステップをさらに備え、前記MACチャネルの数を減らすステップでは、所定の単位時間内に受信した前記パケットの数が所定の閾値を超えた場合、前記MACチャネルの数を減らすことを要旨とする。
【0017】
本発明の第7の特徴は、本発明の第5の特徴に係り、前記無線端末装置は、前記論理チャネルを介して受信した前記パケットの処理を実行するCPUを有し、前記MACチャネルの数を減らすステップでは、前記CPUの稼働状況に基づいて前記MACチャネルの数を減らすか否かを決定することを要旨とする。
【0018】
本発明の第8の特徴は、本発明の第7の特徴に係り、前記MACチャネルの数を減らすステップでは、前記CPUの空き時間が所定の閾値を下回った場合、前記MACチャネルの数を減らすことを要旨とする。
【0019】
本発明の第9の特徴は、無線通信の状態に応じて変調方式を変更することができる適応変調を用いてパケットを送受信する無線通信部(無線通信部201)と、前記無線通信部を介して受信した前記パケットの種別の解釈及び前記パケットの再構成を含む前記無線端末装置のパケット処理能力に基づいて、前記無線通信部において用いられている前記変調方式よりもデータレートが低い低レート変調方式に変更する変調方式変更部(変調クラス制御部211)とを備える無線端末装置(無線端末装置200V)であることを要旨とする。
【0020】
本発明の第10の特徴は、本発明の第9の特徴に係り、前記無線通信部が受信した前記パケットの数を監視するパケット数監視部(PPPパケットカウンタ207)をさらに備え、前記変調方式変更部は、所定の単位時間内に受信した前記パケットの数が所定の閾値を超えた場合、前記低レート変調方式に変更することを要旨とする。
【0021】
本発明の第11の特徴は、本発明の第9の特徴に係り、前記無線通信部が受信した前記パケットの処理を実行するCPU(CPU200a)を有し、前記変調方式変更部は、前記CPUの稼働状況に基づいて前記低レート変調方式に変更することを要旨とする。
【0022】
本発明の第12の特徴は、本発明の第11の特徴に係り、前記変調方式変更部は、前記CPUの空き時間が所定の閾値を下回った場合、前記低レート変調方式に変更することを要旨とする。
【0023】
本発明の第13の特徴は、無線通信の状態に応じて変調方式を変更することができる適応変調を用いてパケット(VoIPパケットPなどを含むMAC層レベルのパケット)を送受信するステップと、前記パケットの種別の解釈及び前記パケットの再構成を含む無線端末装置のパケット処理能力に基づいて、前記送受信するステップにおいて用いられている前記変調方式よりもデータレートが低い低レート変調方式に変更するステップとを備える無線通信方法であることを要旨とする。
【0024】
本発明の第14の特徴は、本発明の第13の特徴に係り、前記パケットの数を監視するステップをさらに備え、前記変更するステップでは、所定の単位時間内に受信した前記パケットの数が所定の閾値を超えた場合、前記低レート変調方式に変更することを要旨とする。
【0025】
本発明の第15の特徴は、本発明の第13の特徴に係り、前記パケットの処理を実行するCPUを有し、前記変更するステップでは、前記CPUの稼働状況に基づいて前記低レート変調方式に変更することを要旨とする。
【0026】
本発明の第16の特徴は、本発明の第15の特徴に係り、前記変更するステップでは、前記CPUの空き時間が所定の閾値を下回った場合、前記低レート変調方式に変更することを要旨とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明の特徴によれば、MACチャネル・アグリゲーションを用いる場合において、必要となるパケット処理能力を抑制しつつ、VoIPパケットなどのサイズが小さいパケットを大量に処理する場合でも、より確実に当該パケットを処理することができる無線端末装置及びチャネル制御方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
次に、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。
【0029】
したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0030】
(通信システムの全体概略構成)
図1は、本実施形態に係る通信システムの全体概略構成図である。図1に示すように、本実施形態に係る通信システムには、無線基地局100及び無線端末装置200が含まれる。
【0031】
無線基地局100及び無線端末装置200は、TDMA及びSDMA/TDD通信方式を用いるiBurst(登録商標)規格に準拠した無線通信を実行する。具体的には、無線基地局100及び無線端末装置200は、グループGに属する電話端末50A〜50H、及びグループGに属する電話端末60A〜60Hの間において送受信されるVoIPパケットPを中継する。また、本実施形態では、無線基地局100と無線端末装置200との間において実行される無線通信の状態に応じて変調クラス(変調方式)を変更する(例えば、8PSKからQPSK)ことができる適応変調が用いられる。
【0032】
無線基地局100は、インターネット10と接続されている。グループGとグループGとの間において送受信されるVoIPパケットPは、インターネット10を経由する。また、無線基地局100は、PDSN20と接続されている。PDSN20は、VoIPパケットPの通信経路の制御などを実行する。
【0033】
さらに、インターネット10には、SIPサーバ40が接続されている。SIPサーバ40は、SIP(session initiation protocol)にしたがった呼の接続処理などを実行する。
【0034】
一方、無線端末装置200は、IP−PBX30と接続されている。IP−PBX30も、SIPサーバ40と同様に、SIPにしたがった呼の接続処理などを実行する。
【0035】
(通信システムのプロトコルスタック及び論理チャネルの構成例)
図2は、上述した通信システムのプロトコルスタックを示す。また、図3は、上述した通信システムにおいて設定されるリンクレイヤチャネル(論理チャネル)の構成例を示す。
【0036】
図2に示すように、電話端末50Aと電話端末60Aとの間では、RTP、UDP及びIPを用いたVoIPパケットP(図1参照)が送受信される。具体的には、電話端末50A及び電話端末60Aでは、ITU−TG.729A(8kbps)に準拠した音声コーデックが用いられる。2つの音声コーデックの出力(ペイロード)を、RTP/UDP/IPを用いる1つのに割り当てる設定とした場合、リンクレイヤチャネルC11では、20msecごとに約60バイトのVoIPパケットPが中継される。つまり、グループGに属する電話端末50A〜50Hが、グループGに属する電話端末60A〜60Hと同時に音声データ送受信した場合、毎秒400個のVoIPパケットPがリンクレイヤチャネルC11によって中継される。
【0037】
電話端末50Aと無線端末装置200との間では、PPP(point-to-point protocol)及びPPPoE(ppp over Ethernet(登録商標))を用いてリンクレイヤチャネルC11(図3参照)が設定される。
【0038】
無線端末装置200と無線基地局100との間でも、PPPを用いてリンクレイヤチャネルC11が設定される。また、無線端末装置200と無線基地局100との間では、リンクアクセスコントロール(LAC)層における制御により、MACチャネルC21〜C23をまとめて用いる、いわゆるMACチャネル・アグリゲーションを実行することができる。なお、MACチャネルC21〜C23は、無線基地局100と無線端末装置200との間(無線通信区間)において設定されるMAC層レベルの通信チャネルである。
【0039】
無線基地局100とPDSN20との間では、PPP(point-to-point protocol)及びGRE(generic routing encapsulation)を用いてリンクレイヤチャネルC11が設定される。また、PDSN20と電話端末60Aとの間では、PDSN20と電話端末60A(SIPサーバ40)とを接続する通信回線の種別に応じた所定のリンク層プロトコルを用いてリンクレイヤチャネルC11が設定される。
【0040】
なお、本実施形態では、上述した各区間において設定されるリンクレイヤチャネルを適宜リンクレイヤチャネルC11と表示する。
【0041】
(機能ブロック構成)
次に、本実施形態において、上述したリンクレイヤチャネルC11に用いられるMACチャネルの数を制御する無線端末装置200の機能ブロック構成について説明する。図4は、無線端末装置200の機能ブロック構成図である。
【0042】
図4に示すように、無線端末装置200は、無線通信部201、リンクレイヤチャネル処理部203、MACチャネル制御部205、PPPパケットカウンタ207及び有線LANインタフェース部209を備える。
【0043】
無線通信部201は、iBurst(登録商標)規格に準拠した無線信号を送受信する。具体的には、無線通信部201は、リンクレイヤチャネル処理部203と接続されており、リンクレイヤチャネル処理部203から出力されたVoIPパケットPなどを含むベースバンド信号を所定の変調方式(例えば、8PSK)により変調する。また、無線通信部201は、受信した無線信号をベースバンド信号に復調し、復調したベースバンド信号をリンクレイヤチャネル処理部203に出力する。
【0044】
リンクレイヤチャネル処理部203は、リンクレイヤチャネルを設定する。本実施形態では、リンクレイヤチャネル処理部203は、リンクレイヤチャネルC11(図3参照)を設定する。
【0045】
リンクレイヤチャネル処理部203は、受信した通信要求、例えば、有線LANインタフェース部209を介してIP−PBX30(または電話端末50A)から受信した通信要求に応じて、MACチャネル(MACチャネルC21〜C23)が複数まとめて用いられるリンクレイヤチャネルC11(論理チャネル)を設定する。本実施形態において、リンクレイヤチャネル処理部203は、論理チャネル設定部を構成する。
【0046】
具体的には、リンクレイヤチャネル処理部203は、通信要求を受信した場合、例えば、3つのMACチャネル(MACチャネルC21〜C23)をまとめて用いて、リンクレイヤチャネルC11を設定する(図3参照)。
【0047】
ここで、図6は、本実施形態におけるMACチャネルのデータレートを示す。図6に示すように、本実施形態では、MACチャネルごとに340kbpsのデータレート(スループット)を実現することができる。つまり、3つのMACチャネル(MACチャネルC21〜C23)をまとめて用いた場合、リンクレイヤチャネルC11によれば、計1,020kbpsのデータレートを実現することができる。
【0048】
また、リンクレイヤチャネル処理部203は、リンクレイヤチャネルC11を介して中継され、VoIPパケットPなどを含むMAC層(OSI第2層相当)レベルのパケット(不図示)の種別の解釈、及びMAC層よりも上位層(例えば、OSI第3層相当)レベルのパケットへの再構築を実行する。
【0049】
リンクレイヤチャネル処理部203は、リンクレイヤチャネルC11の設定に際して、MACチャネル(MACチャネルC21〜C23)の設定をMACチャネル制御部205に要求する。
【0050】
MACチャネル制御部205は、リンクレイヤチャネル処理部203からの要求に基づいて、MACチャネルC21〜C23を設定する。また、MACチャネル制御部205は、リンクレイヤチャネル処理部203によって設定されたリンクレイヤチャネルC11に用いられているMACチャネルを制御する。
【0051】
具体的には、MACチャネル制御部205は、リンクレイヤチャネルC11を介して受信するIPパケットの種別の解釈及び再構成を含む無線端末装置200のパケット処理能力に応じて、リンクレイヤチャネルC11に用いられているMACチャネルの数を制御、具体的には、MACチャネルの数を減らすことができる。
【0052】
より具体的には、MACチャネル制御部205は、所定の単位時間(例えば、1秒間)内に受信したIPパケット(例えば、VoIPパケットP)の数が所定の閾値(例えば、300パケット)を超えた場合、MACチャネルの数を減らす。
【0053】
ここで、図7は、当該閾値の例を示す。図7に示すように、本実施形態では、単位時間(1秒間)内にリンクレイヤチャネルC11を介して受信したIPパケットの数(受信パケット数d)が300パケットを超えた場合、1つのMACチャネル(例えば、MACチャネルC23)が開放される。また、受信パケット数dが400パケットを超えた場合、2つのMACチャネル(例えば、MACチャネルC22,C23)が開放される。
【0054】
また、本実施形態では、無線端末装置200は、リンクレイヤチャネルC11を介して受信したVoIPパケットPの処理を実行するCPU200a(図1参照)を有する。
【0055】
本実施形態では、CPU200aを含むハードウエア性能の限界によって、3つのMACチャネルを用いたMACチャネル・アグリゲーションが実行されている場合、無線端末装置200は、VoIPパケットPなどのIPパケットを毎秒300個しか処理することができない。つまり、リンクレイヤチャネルC11のデータレートが1,020kbpsの場合、LACやMAC層によるオーバーヘッドを加味すると、毎秒約1,900個のVoIPパケットPがリンクレイヤチャネルC11によって中継できる。
【0056】
しかしながら、無線端末装置200は、毎秒300個のIPパケットしか処理することができないため、リンクレイヤチャネルC11のデータレート、具体的には、MACチャネルの数を制限する必要がある。
【0057】
なお、MACチャネル制御部205は、CPU200aの稼働状況に基づいてMACチャネルの数を減らすか否かを決定することもできる。具体的には、MACチャネル制御部205は、単位時間内におけるCPU200aの空き時間の割合が所定の閾値(例えば、20%)未満となった場合、MACチャネルの数を減らすことができる。なお、MACチャネル制御部205は、CPU200aの空き時間の割合ではなく、他のパラメータ、例えば、CPU200aの稼働率が所定の閾値を超えた場合、MACチャネルの数を減らすようにしてもよい。
【0058】
PPPパケットカウンタ207は、リンクレイヤチャネルC11を介して受信したIPパケット(具体的には、PPPフレームに含まれるIPパケット)の数を監視する。本実施形態において、PPPパケットカウンタ207は、パケット数監視部を構成する。PPPパケットカウンタ207は、リンクレイヤチャネルC11を介して受信したIPパケットの数をカウントし、カウントしたIPパケットの数を示す情報を単位時間(1秒間)ごとに、リンクレイヤチャネル処理部203を介してMACチャネル制御部205に通知する。
【0059】
有線LANインタフェース部209は、所定の有線LAN方式(例えば、Ethernet(登録商標))に準拠したインタフェースを提供する。本実施形態では、無線端末装置200は、有線LANインタフェース部209を介して、IP−PBX30及び電話端末50A〜50Hとの通信を実行する。
【0060】
(無線端末装置の動作)
次に、無線端末装置200の動作について説明する。具体的には、無線端末装置200がリンクレイヤチャネルC11として用いられるMACチャネルの数を減らす動作について説明する。
【0061】
図5に示すように、ステップS10において、無線端末装置200は、リンクレイヤチャネルC11を介して受信したIPパケット(具体的には、PPPフレームに含まれるIPパケット)の数(受信パケット数d)をカウントする。具体的には、無線端末装置200は、単位時間(1秒間)に受信したIPパケットの数をカウントする。
【0062】
ステップS20において、無線端末装置200は、カウントしたIPパケットの数(受信パケット数d)が所定の閾値(図7参照)を超えたか否かを判定する。
【0063】
カウントしたIPパケットの数が所定の閾値を超えた場合(ステップS20のYES)、ステップS30において、無線端末装置200は、リンクレイヤチャネルC11として用いられるMACチャネルの数を減らす。なお、ここでは、MACチャネルC21〜C23がリンクレイヤチャネルC11として用いられているものとする。
【0064】
例えば、カウントしたIPパケットの数(受信パケット数d)が、300を超え、400以下である場合(図7参照)、リンクレイヤチャネルC11として用いられる1つのMACチャネルが(例えば、MACチャネルC23)開放される。
【0065】
カウントしたIPパケットの数が所定の閾値を超えていない場合(ステップS20のNO)、無線端末装置200は、ステップS10からの処理を繰り返す。
【0066】
(作用・効果)
無線端末装置200によれば、無線端末装置200(CPU200a)のパケット処理能力に応じて、リンクレイヤチャネルC11に用いられているMACチャネルの数が減らされる。このため、無線端末装置200が、60バイト程度の小サイズのVoIPパケットPを大量に処理する場合において、リンクレイヤチャネルC11のスループットの上限(例えば、1,020kbps)に対しては余裕があるものの、CPU200aのパケット処理能力の限界によって、当該IPパケットの種別の解釈や再構成などの処理が実行できなくなることを回避することができる。
【0067】
すなわち、無線端末装置200によれば、MACチャネル・アグリゲーションを用いる場合において、必要となるパケット処理能力を抑制しつつ、VoIPパケットPなどのサイズが小さいIPパケットを大量に処理する場合でも、より確実に当該IPパケットを処理することができる。
【0068】
一般的な無線端末装置は、パケット処理能力を超えるIPパケットを受信した場合、IPパケットの廃棄などで対処する。しかしながら、小サイズのIPパケットを大量に受信すると、無線区間におけるMAC層レベルのパケットからIPパケットに再構成し、IPパケット単位で廃棄できるようになるまでの処理負荷の増加によって、無線端末装置のパケット処理能力を超えてしまう場合があったのである。無線端末装置200によれば、MACチャネルの数が減らされることによってリンクレイヤチャネルC11のデータレート(スループット)が低下し、受信するIPパケット数が抑制される。このため、このような不具合の発生も回避することができる。
【0069】
また、本実施形態では、無線端末装置200は、MACチャネルの数を減らしてスループットを抑制し、処理負荷を軽減する。このため、図7に示したように、通常であれば毎秒300個までのIPパケットしか処理することができないが、当該処理負荷の軽減によって確保されたパケット処理能力によって、毎秒400個までIPパケットを処理することができる。
【0070】
(変更例)
上述した無線端末装置200では、無線端末装置200(CPU200a)のパケット処理能力に応じて、リンクレイヤチャネルC11に用いられているMACチャネルの数が減らされていたが、MACチャネルの数に代えて、無線基地局100と無線端末装置200との間において実行される無線通信の変調クラス(変調方式)を変更してもよい。
【0071】
図8は、このような変更例に係る無線端末装置200Vの機能ブロック構成図である。以下、上述した無線端末装置200と異なる部分について主に説明し、無線端末装置200と同様の部分については、説明を適宜省略する。
【0072】
無線端末装置200と比較すると、無線端末装置200Vでは、MACチャネル制御部205に代えて、変調クラス制御部211が備えられている。
【0073】
無線通信部201は、無線端末装置200と同様に、無線基地局100との無線通信の状態に応じて変調クラスを変更することができる適応変調を用いてIPパケットを送受信することができる。
【0074】
ここで、図9は、無線端末装置200Vにおいて用いられる変調クラスの例を示す。図9に示すように、無線端末装置200Vでは、1〜4の変調クラスを設定することができる。
【0075】
変調クラスは、1シンボルに割り当てられるビット数(ビット/シンボル)と変調方式との組合せによって規定され、データレートとしては、408、612、816または1,020kbpsが設定される。なお、無線端末装置200Vでは、変調方式として、QPSK及び8PSKが用いられる。なお、変調方式には、PSKに限らずQAMを用いても構わない。
【0076】
また、図10は、図9に示した各変調クラスの選択に用いられる変調クラス選択条件を示す。図10に示すように、変調クラス選択条件は、無線通信部201が受信する無線信号のRSSIによって規定される。
【0077】
無線通信部201は、無線通信の状態、具体的には、受信RSSIに応じた変調クラスを選択し、IPパケットなどを含むベースバンド信号を所定の変調方式(例えば、8PSK)により変調する。また、無線通信部201は、受信した無線信号をベースバンド信号に復調する。
【0078】
変調クラス制御部211は、無線通信部201において用いられる変調クラスを制御する。具体的には、変調クラス制御部211は、無線端末装置200Vのパケット処理能力に基づいて、無線通信部201において用いられる変調クラスを制御することができる。
【0079】
本実施形態では、図11に示すように、単位時間(1秒間)内にリンクレイヤチャネルC11を介して受信したIPパケットの数(受信パケット数d)が300パケットを超えた場合、変調クラス制御部211は、無線通信部201に変調クラス1を選択するよう指示する。つまり、変調クラス制御部211は、無線通信部201において用いられている変調クラス(例えば、変調クラス4)よりもデータレートが低い変調クラス1(低レート変調方式)に変更することができる。本変更例において、変調クラス制御部211は、変調方式変更部を構成する。
【0080】
なお、受信パケット数dが300パケットを超えない場合、変調クラス制御部211は、無線通信部201に対して何ら指示しない。このため、無線通信部201は、図10に示した変調クラス選択条件にしたがって変調クラスを選択する。
【0081】
また、変調クラス制御部211は、無線端末装置200と同様に、CPUの稼働状況に基づいて前記低レート変調方式に変更することもできる。具体的には、変調クラス制御部211は、CPUの空き時間が所定の閾値を下回った場合、変調クラス1に変更することができる。
【0082】
無線端末装置200Vによれば、無線端末装置200Vのパケット処理能力に基づいて、データレートが低い変調クラス1に変更されるため、上述した無線端末装置200と同様に、必要となるパケット処理能力を抑制しつつ、VoIPパケットPなどのサイズが小さいIPパケットを大量に処理する場合でも、より確実に当該IPパケットを処理することができる。
【0083】
(その他の実施形態)
上述したように、本発明の一実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態が明らかとなろう。
【0084】
例えば、上述した実施形態では、iBurstを準拠した無線基地局100及び無線端末装置200が含まれる通信システムを例として説明したが、本発明は、iBurst以外のディジタル無線通信方式にも適用することができる。
【0085】
また、上述した実施形態では、無線端末装置200(及び無線端末装置200V)において、MACチャネルの数(変調クラス)を制御する形態としたが、無線基地局100、つまり、無線端末装置200が受信するIPパケットの送信側において、MACチャネルの数(変調クラス)を制御してもよい。
【0086】
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の実施形態に係る通信システムの全体概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る通信システムを構成する装置のプロトコルスタックを示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る通信システムにおいて設定されるリンクレイヤチャネル(論理チャネル)の構成例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る無線端末装置の機能ブロック構成図である。
【図5】本発明の実施形態に係る無線端末装置の動作フロー図である。
【図6】本発明の実施形態に係るMACチャネルのデータレートを示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係るMACチャネルの開放閾値の一例を示す図である。
【図8】本発明の変更例に係る無線端末装置の機能ブロック構成図である。
【図9】本発明の変更例に係る無線端末装置において用いられる変調クラスの一例を示す図である。
【図10】本発明の変更例に係る無線端末装置において用いられる変調クラス選択条件の一例を示す図である。
【図11】本発明の変更例に係るMACチャネルの開放閾値の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0088】
10…インターネット、20…PDSN、30…IP−PBX、40…SIPサーバ、50A〜50H,60A〜60H…電話端末、100…無線基地局、200,200V…無線端末装置、200a…CPU、201…無線通信部、203…リンクレイヤチャネル処理部、205…MACチャネル制御部、207…PPPパケットカウンタ、211…変調クラス制御部、209…有線LANインタフェース部、C11…リンクレイヤチャネル、C21〜C23…MACチャネル、G,G…グループ、P…VoIPパケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線基地局とのMAC層レベルの通信チャネルであるMACチャネルを複数まとめて用いた論理チャネルを設定する論理チャネル設定部と、
前記論理チャネルを介して受信したパケットの種別の解釈及び前記パケットの再構成を含む前記無線端末装置のパケット処理能力に応じて、前記論理チャネルに用いられている前記MACチャネルの数を制御するMACチャネル制御部と
を備える無線端末装置。
【請求項2】
前記論理チャネルを介して受信した前記パケットの数を監視するパケット数監視部をさらに備え、
前記MACチャネル制御部は、所定の単位時間内に受信した前記パケットの数が所定の閾値を超えた場合、前記MACチャネルの数を減らす請求項1に記載の無線端末装置。
【請求項3】
前記論理チャネルを介して受信した前記パケットの処理を実行するCPUを有し、
前記MACチャネル制御部は、前記CPUの稼働状況に基づいて前記MACチャネルの数を減らすか否かを決定する請求項1に記載の無線端末装置。
【請求項4】
前記MACチャネル制御部は、前記CPUの空き時間が所定の閾値を下回った場合、前記MACチャネルの数を減らす請求項3に記載の無線端末装置。
【請求項5】
無線通信区間におけるMAC層レベルの通信チャネルであるMACチャネルを複数まとめて用いた論理チャネルを設定するステップと、
前記論理チャネルを介して中継されたパケットの種別の解釈及び前記パケットの再構成を含む無線端末装置のパケット処理能力に応じて、前記論理チャネルに用いられている前記MACチャネルの数を制御するステップと
を備えるチャネル制御方法。
【請求項6】
前記論理チャネルを介して中継された前記パケットの数を監視するステップをさらに備え、
前記MACチャネルの数を減らすステップでは、所定の単位時間内に受信した前記パケットの数が所定の閾値を超えた場合、前記MACチャネルの数を減らす請求項5に記載のチャネル制御方法。
【請求項7】
前記無線端末装置は、前記論理チャネルを介して受信した前記パケットの処理を実行するCPUを有し、
前記MACチャネルの数を減らすステップでは、前記CPUの稼働状況に基づいて前記MACチャネルの数を減らすか否かを決定する請求項5に記載のチャネル制御方法。
【請求項8】
前記MACチャネルの数を減らすステップでは、前記CPUの空き時間が所定の閾値を下回った場合、前記MACチャネルの数を減らす請求項7に記載のチャネル制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−11167(P2008−11167A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−179493(P2006−179493)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】