説明

無線端末装置及び制御方法

【課題】通信システムの移行を伴う通信処理の終了後に、適切な通信システムを選択できる無線端末装置及びその制御方法を提供すること。
【解決手段】携帯電話機1は、LTEシステムで位置登録している基地局に関するLTE基地局情報を記憶する記憶部60と、LTEシステムでデータ通信中に、3Gシステムでの通信要求が生じた場合、LTEシステムでのデータ通信を中断し、3Gシステムでの通信へ移行する第1の移行処理部31と、3Gシステムでの通信が終了すると、記憶部60に記憶されているLTE基地局情報に基づいて、LTEシステムを捕捉してLTEシステムでの通信へ移行する第2の移行処理部32と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の通信システムのいずれかを選択して無線通信する無線端末装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機等の無線端末装置が利用する通信システムとして、音声及びデータ通信に用いられる回線交換(CS:Circuit Switched)方式(例えば、CDMA2000_1xやW−CDMA)の3Gシステムに加えて、主に高速データ通信に用いられるLTE(Long Term Evolution)方式のLTEシステムが登場している。
【0003】
また、LTEシステムにおいては、当初は音声通信がサポートされないため、音声通信は3Gシステムを使用する必要がある。ところが、無線端末装置では、LTEシステムと3Gシステムとの双方を同時に利用することができない。そのため、無線端末装置は、LTEシステムを利用中に、3Gシステムのページングチャネルを取得できず、着信の有無を知ることができなかった。そこで、3GPP TS 23.272において、CS−Fallback機能が規定され、この機能により、LTEシステムで3Gシステムからの着信要求を通知することができる(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】3GPP TS 23.272 V10.2.1, “Circuit Switched (CS) fallback in Evolved Packet System (EPS); Stage 2,” 2011−01
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
無線端末装置は、例えば、ストリーミング再生やWebページの更新中等、実データパケットをサーバから受信している途中に音声着信が生じると、CS−Fallback機能により、実データパケットの受信を中断し、着信通知をLTEシステムから受信する。無線端末装置がこの着信通知に応答すると、LTEシステムとの通信を切断して3Gシステムへ移行後に音声通信が開始される。そして、音声通信が終了すると、即時、中断していた実データパケットの続きがサーバから送信される。ところが、このとき、3Gシステムのネットワークに割り当てられているため、無線端末装置は、実データパケットを3Gシステムで受信することになり、高速のLTEシステムに比べてスループットが低下していた。
【0006】
さらに、3GシステムからLTEシステムへハンドオーバできない環境下では、一旦3Gシステムへハンドオーバしてしまうと、3Gシステムのロストやユーザによる切断が発生しなければ、LTEシステムで通信を行うことができなかった。
【0007】
本発明は、通信システムの移行を伴う通信処理の終了後に、適切な通信システムを選択できる無線端末装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る無線端末装置は、複数の通信システムのいずれかを選択して無線通信する無線端末装置であって、第1の通信システムで位置登録している基地局に関する第1の基地局情報を記憶する記憶部と、前記第1の通信システムでデータ通信中に、第2の通信システムでの通信要求が生じた場合、前記第1の通信システムでのデータ通信を中断し、当該第2の通信システムでの通信へ移行する第1の移行処理部と、前記第2の通信システムでの通信が終了すると、前記記憶部に記憶されている前記第1の基地局情報に基づいて、前記第1の通信システムを捕捉して当該第1の通信システムでの通信へ移行する第2の移行処理部と、を備える。
【0009】
また、前記第1の通信システムは、前記第2の通信システムよりも高速なデータ通信をサポートし、前記第2の通信システムは、データ通信に加えて音声通信もサポートし、前記通信要求とは、音声通信開始のイベントの発生であることが好ましい。
【0010】
また、前記イベントの発生とは、自装置に対する音声着信の発生であることが好ましい。
【0011】
また、前記第1の通信システムはCDMA方式、前記第2の通信システムはLTE方式であり、前記音声着信の発生により、3GPPにて規定されているCS−Fallbackが行われることが好ましい。
【0012】
また、前記記憶部は、前記第2の通信システムでの通信へ移行した際に、位置登録した基地局に関する第2の基地局情報をさらに記憶し、前記第2の移行処理部は、前記第2の通信システムでの通信が終了後、前記第1の通信システムで中断されたデータ通信が前記第2の通信システムで再開されたとき、当該データ通信が再開されたときの基地局情報が前記記憶部に記憶されている前記第2の基地局情報と一致した場合、前記記憶部に記憶されている前記第1の基地局情報に基づいて、前記第1の通信システムを捕捉して当該第1の通信システムでの通信へ移行することが好ましい。
【0013】
また、前記記憶部は、前記第2の通信システムでの通信へ移行した際に、位置登録した基地局に関する第2の基地局情報をさらに記憶し、前記第2の移行処理部は、前記第2の通信システムでの通信が終了後、前記第1の通信システムで中断されたデータ通信が前記第2の通信システムで再開されずに所定時間が経過したとき、現在位置登録している基地局の基地局情報が前記記憶部に記憶されている前記第2の基地局情報と一致した場合、前記記憶部に記憶されている前記第1の基地局情報に基づいて、前記第1の通信システムを捕捉して当該第1の通信システムでの通信へ移行することが好ましい。
【0014】
また、前記記憶部は、前記第1の通信システムで位置登録する度に、当該位置登録した最新の基地局情報を前記第1の基地局情報として記憶することが好ましい。
【0015】
本発明に係る制御方法は、複数の通信システムのいずれかを選択して無線通信する無線端末装置の制御方法であって、第1の通信システムで位置登録している基地局に関する第1の基地局情報を記憶する記憶ステップと、前記第1の通信システムでデータ通信中に、第2の通信システムでの通信要求が生じた場合、前記第1の通信システムでのデータ通信を中断し、当該第2の通信システムでの通信へ移行する第1の移行処理ステップと、前記第2の通信システムでの通信が終了すると、前記記憶ステップで記憶されている前記第1の基地局情報に基づいて、前記第1の通信システムを捕捉して当該第1の通信システムでの通信へ移行する第2の移行処理ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、無線端末装置において、通信システムの移行を伴う通信処理の終了後に、適切な通信システムを選択できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る携帯電話機の外観斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る携帯電話機の機能を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係る連携位置登録の手順を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係るLTEシステムから3Gシステムへネットワークが切り替わる様子を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る制御部における処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態の一例について説明する。なお、本実施形態では、無線端末装置の一例として携帯電話機1を説明する。
【0019】
図1は、本実施形態に係る携帯電話機1の外観斜視図である。
なお、図1は、いわゆる折り畳み型の携帯電話機の形態を示しているが、本発明に係る携帯電話機の形態はこれに限られない。例えば、両筐体を重ね合わせた状態から一方の筐体を一方向にスライドさせるようにしたスライド式や、重ね合せ方向に沿う軸線を中心に一方の筐体を回転させるようにした回転式(ターンタイプ)や、操作部と表示部とが1つの筐体に配置され、連結部を有さない形式(ストレートタイプ)でもよい。
【0020】
携帯電話機1は、操作部側筐体2と、表示部側筐体3と、を備えて構成される。操作部側筐体2は、表面部10に、操作部11と、携帯電話機1の使用者が通話時や音声認識アプリケーションを利用時に発した音声が入力されるマイク12と、を備えて構成される。操作部11は、各種設定機能や電話帳機能やメール機能等の各種機能を作動させるための機能設定操作ボタン13と、電話番号の数字やメールの文字等を入力するための入力操作ボタン14と、各種操作における決定やスクロール等を行う決定操作ボタン15と、から構成されている。
【0021】
また、表示部側筐体3は、表面部20に、各種情報を表示するための表示部21と、通話の相手側の音声を出力するレシーバ22と、を備えて構成されている。
【0022】
また、操作部側筐体2の上端部と表示部側筐体3の下端部とは、ヒンジ機構4を介して連結されている。また、携帯電話機1は、ヒンジ機構4を介して連結された操作部側筐体2と表示部側筐体3とを相対的に回転することにより、操作部側筐体2と表示部側筐体3とが互いに開いた状態(開状態)にしたり、操作部側筐体2と表示部側筐体3とを折り畳んだ状態(閉状態)にしたりできる。
【0023】
図2は、本実施形態に係る携帯電話機1の機能を示すブロック図である。
携帯電話機1は、操作部11と、表示部21と、制御部30と、通信部40と、音声制御部50と、記憶部60とを備える。
【0024】
制御部30は、携帯電話機1の全体を制御しており、例えば、表示部21、通信部40等の各部に対して所定の制御を行う。また、制御部30は、操作部11や通信部40等から入力を受け付けて、各種処理を実行する。そして、制御部30は、処理実行の際には、記憶部60を制御し、各種プログラム及びデータの読み出し、及びデータの書き込みを行う。なお、本実施形態に係る制御部30の詳細機能は後述する。
【0025】
通信部40は、所定の使用周波数帯(例えば、2GHz帯や800MHz帯等)で外部装置(基地局)と通信を行う。そして、通信部40は、アンテナ41より受信した信号を復調処理し、処理後の信号を制御部30に供給し、また、制御部30から供給された信号を変調処理し、アンテナ41から外部装置に送信する。
【0026】
ここで、通信部40は、本実施形態においては、音声及びデータ通信用の通信プロトコルであるW−CDMAやCDMA2000_1x等の3G方式と、主に高速データ通信に用いられる通信プロトコルであるLTE方式との双方に対応しており、いずれのプロトコルの通信システムでも通信可能である。通信部40は、制御部30からの指令に基づいて、いずれかのプロトコルにより基地局と通信を行う。なお、携帯電話機1は、データ通信時にはLTE方式によるLTEシステム(第1の通信システム)での通信を優先し、音声通話時には、3G方式による3Gシステム(第2の通信システム)での通信へ切り替えるものとする。
【0027】
音声制御部50は、制御部30の制御に従って、通信部40から供給された信号に対して所定の音声処理を行い、処理後の信号をレシーバ22に出力する。レシーバ22は、音声制御部50から供給された信号を外部に出力する。なお、この信号は、レシーバ22に代えて、又はレシーバ22と共に、スピーカ(図示せず)から出力されるとしてもよい。また、音声制御部50は、制御部30の制御に従って、マイク12から入力された信号を処理し、処理後の信号を通信部40に出力する。通信部40は、音声制御部50から供給された信号に所定の処理を行い、処理後の信号をアンテナより出力する。
【0028】
記憶部60は、例えば、ワーキングメモリを含み、制御部30による演算処理に利用される。また、本実施形態に係る各種プログラム等を記憶する。
さらに、記憶部60は、LTEシステムで位置登録している基地局に関するLTE基地局情報(第1の基地局情報)を記憶する。具体的には、LTEシステムで位置登録する度に、この位置登録した最新の基地局情報が記憶されることとしてよい。また、記憶部60は、LTEシステムでの通信から3Gシステムでの通信へ移行した際に、位置登録した基地局に関する3G基地局情報(第2の基地局情報)を、LTE基地局情報と対応付けてさらに記憶する。
【0029】
ここで、LTE基地局情報は、基地局から報知されるシステムインフォメーション情報(バンドクラス、周波数チャネル、キャリア識別情報等)、位置登録情報、IPアドレス情報等を含む。また、3G基地局情報は、基地局から報知されるシステムパラメータメッセージから取得される。
【0030】
次に制御部30の機能を詳述する。
携帯電話機1の制御部30と各通信システムの制御装置とは、LTEシステムにおいて3Gシステムの着信を通知するために、CS−Fallback機能を有している。
【0031】
ここで、CS−Fallback機能を実現するためには、LTEシステムで待ち受け中の端末が3Gシステムにおいて物理的にどの呼出ゾーンにあるかを知る必要がある。そこで、LTEシステムの制御装置であるMME(Mobility Management Entity)は、LTEシステムと3Gシステムとの物理的な呼出ゾーンの重なりの対応関係を示すマッピングデータを記憶している。
【0032】
そして、携帯電話機1の制御部30がLTEシステムで位置登録要求を行った際に、MMEは、LTEシステムの呼出ゾーンと重なるエリアを有する3Gシステムの呼出ゾーンをマッピングデータから取得し、この3Gシステムの呼出ゾーンに対して位置登録要求を行う。3Gシステムは、LTEシステムから位置登録要求を受信すると、位置登録情報を更新し、LTEシステムへ応答を返信する。このように、携帯電話機1は、LTEシステムにおける呼出ゾーンに対して位置登録した際に、このLTEシステムの呼出ゾーンに対応する3Gシステムの呼出ゾーンに対しても、MMEにより位置登録(連携位置登録)される。
【0033】
図3は、本実施形態に係る連携位置登録の手順を示す図である。
LTEシステムの制御装置であるMMEは、3つの呼出ゾーン(TA1、TA2、TA3)を管理している。また、3Gシステムの制御装置であるMSC(Mobile Switching Center)/VLR(Visited Location Register)#1と、MSC/VLR#2とは、それぞれ呼出ゾーンLA1とLA2とを管理している。
【0034】
そして、MMEは、マッピングデータとして、TA1とLA1との対応関係、並びにTA2及びTA3とLA2との対応関係をマッピング表に記憶している。
【0035】
まず、LTEシステムの呼出ゾーンTA3に位置している携帯電話機1の制御部30がMMEに対して位置登録処理を行う(1)。すると、MMEは、マッピング表から、呼出ゾーンTA3と物理的に重なっている3Gシステムの呼出ゾーンLA2を割り出す(2)。そして、MMEは、呼出ゾーンLA2を管理しているMSC/VLR#2に対して位置登録要求を行う(3)。この要求を受けたMSC/VLR#2は、位置登録処理を行い、携帯電話機1がLTEシステムの呼出ゾーンTA3に位置していることを記憶する。
【0036】
この連携位置登録がされたことにより、3Gシステムでの着信がMSC/VLR#2に通知され、さらに、MSC/VLR#2からMMEに対して着信通知が行われる。
【0037】
また、制御部30は、第1の移行処理部31と、第2の移行処理部32とを備え、所定の条件に従って通信を行う通信システムを選択し、移行させる。
【0038】
第1の移行処理部31は、LTEシステムでデータ通信中に、3Gシステムでの通信要求が生じた場合、LTEシステムでのデータ通信を中断し、3Gシステムでの通信へ移行する。
【0039】
具体的には、第1の移行処理部31は、例えば、CS−Fallback機能により3Gシステムの着信通知パケットを受信した場合、LTEシステムから3Gシステムへハンドオーバして応答処理を行う。また、例えば、LTE通信によりWebページ閲覧中にPhone to機能を使用した場合や、LTE通信中にマルチタスクで音声発呼を要求した場合等にも、第1の移行処理部31は、LTEシステムでのデータ通信を中断して3Gシステムでの音声発呼処理へ移行する。
【0040】
図4は、本実施形態に係るCS−Fallback機能に基づいて、LTEシステムから3Gシステムへネットワークが切り替わる様子を示す図である。
【0041】
3Gシステムにおける発信元MSCから、携帯電話機1が連携位置登録されているMSC/VLRへ音声着信があると(1)、記憶されている携帯電話機1の位置登録情報により対応するLTEシステムのMMEが特定され(2)、特定されたMMEが一斉呼出しを受ける(3)。
【0042】
MMEは、携帯電話機1に対して着信通知の一斉呼出しを行い(4)、回線交換サービスの要求を受けると(5)、携帯電話機1に対して3Gシステムへのハンドオーバを命令する(6)。
【0043】
携帯電話機1は、3Gシステムを捕捉すると、LTEシステムから3Gシステムへハンドオーバした後(7)、一斉呼出しに対する応答をMSC/VLRへ返信し(8)、音声通信の接続を確立する(9)。
【0044】
このとき、LTEのパケット交換機であるS−GW(Serving Gateway)からのパケット通信伝達経路は、3Gの加入者パケット交換機であるSGSN(Serving GPRS Support Node)を介した3Gシステムのネットワークへ切り替わる。
【0045】
第2の移行処理部32は、第1の移行処理部31により移行した3Gシステムでの通信が終了すると、記憶部60に記憶されているLTE基地局情報に基づいてLTEシステムを捕捉して、このシステムでの通信へ移行する。
【0046】
具体的には、第2の移行処理部32は、3Gシステムでの通信が終了後、LTEシステムで中断されたデータ通信が3Gシステムで再開されたとき、このデータ通信が再開されたときの3G基地局情報を取得する。そして、第2の移行処理部32は、取得した3G基地局情報が記憶部60に記憶されているハンドオーバ時の3G基地局情報と一致した場合、記憶部60に対応付けて記憶されているLTE基地局情報に基づいて、LTEシステムを捕捉してLTEシステムでの通信へ移行する。
【0047】
また、第2の移行処理部32は、3Gシステムでの通信が終了後、LTEシステムで中断されたデータ通信が3Gシステムで再開されずに所定時間が経過したとき、現在位置登録している基地局の3G基地局情報を取得する。そして、第2の移行処理部32は、取得した3G基地局情報が記憶部60に記憶されているハンドオーバ時の3G基地局情報と一致した場合、記憶部60に対応付けて記憶されているLTE基地局情報に基づいて、LTEシステムを捕捉してLTEシステムでの通信へ移行する。
【0048】
図5は、本実施形態に係る携帯電話機1の制御部30における処理を示すフローチャートである。
【0049】
ステップS1において、制御部30は、ユーザやアプリケーションからの要求に応じて、LTEシステムでデータ通信を開始する。
【0050】
ステップS2において、制御部30は、CS−Fallback機能による着信通知を受けて3Gシステムへのハンドオーバが要求されたか否かを判定する。この判定がYESの場合、処理はステップS3に移り、判定がNOの場合、処理はステップS2を継続し、着信通知を待機する。
【0051】
ステップS3において、制御部30は、位置登録している基地局に関するLTE基地局情報を取得し、記憶部60に保存する。
【0052】
ステップS4において、制御部30は、LTEシステムでのデータ通信を中断し、3Gシステムへハンドオーバする。
【0053】
ステップS5において、制御部30は、位置登録した基地局に関する3G基地局情報を取得し、記憶部60に保存する。
【0054】
ステップS6において、制御部30は、3Gシステムで音声通信を開始し、通話が終了すると、3Gシステムでの通信待ち受け状態となる。
【0055】
ステップS7において、制御部30は、LTEシステムで中断したデータ通信を3Gシステムで再開するためのパケット着信があるか否かを判定する。この判定がYESの場合、処理はステップS8に移り、判定がNOの場合、つまり所定時間パケット着信がなければ、処理はステップS12に移る。
【0056】
ステップS8において、制御部30は、3Gシステムへのハンドオーバ時から3G基地局情報に変化がないか否かを判定する。この判定がYESの場合、処理はステップS9に移り、判定がNOの場合、処理はステップS11に移る。
【0057】
ステップS9において、制御部30は、ハンドオーバ時の3G基地局情報と対応付けて記憶部60に記憶されているLTE基地局情報に基づいて、LTEシステムへハンドオーバする。
【0058】
ステップS10において、制御部30は、ステップS7でパケット着信のあったデータ通信を、LTEシステムで再開する。
【0059】
ステップS11において、制御部30は、記憶部60に記憶されているLTE基地局情報を用いてLTEシステムへハンドオーバすることができないので、3Gシステムでデータ通信を再開する。
【0060】
ステップS12において、制御部30は、3Gシステムへのハンドオーバ時から3G基地局情報に変化がないか否か、つまり3Gシステム内で大きく移動(ハンドオーバ)していないかどうかを判定する。この判定がYESの場合、処理はステップS13に移り、判定がNOの場合、処理はステップS15に移る。
【0061】
ステップS13において、制御部30は、ハンドオーバ時の3G基地局情報と対応付けて記憶部60に記憶されているLTE基地局情報に基づいて、LTEシステムへハンドオーバする。
【0062】
ステップS14において、制御部30は、3Gシステムよりも優先されるLTEシステムでの通信に備えて、LTEシステムで通信待ち受け状態となる。
【0063】
ステップS15において、制御部30は、3Gシステムよりも優先されるLTEシステムに移行するために、LTEシステムをスキャンする。
【0064】
ステップS16において、制御部30は、LTEシステムの捕捉に成功したか否かを判定する。この判定がYESの場合、処理はステップS14に移り、判定がNOの場合、処理はステップS17に移る。
【0065】
ステップS17において、制御部30は、LTEシステムへ移行できなかったので、3Gシステムで通信待ち受け状態となる。
【0066】
以上のように、本実施形態によれば、携帯電話機1は、LTE基地局情報を記憶しておくことにより、3Gシステムでの通信終了後に、3Gシステムよりもデータ通信のスループットが高いLTEシステムへ復帰できるので、適切な通信システムを選択できる。
このとき、携帯電話機1は、LTEシステムで位置登録する度に、すなわち基地局を遷移する度に最新のLTE基地局情報を記憶しておくので、3Gシステムへハンドオーバする際の処理負荷を低減できる。
【0067】
また、携帯電話機1は、LTEシステムから3Gシステムへハンドオーバした際に、3G基地局情報を記憶しておく。したがって、携帯電話機1は、3Gシステムでの通信(例えば、音声通信)が終了したとき、3G基地局情報が変化していないことを条件に、記憶しておいたLTE基地局情報に基づいてLTEシステムへ効率的に復帰できる。
【0068】
また、携帯電話機1は、LTEシステムでデータ通信中にCS−Fallback機能により3Gシステムへハンドオーバした後、基地局を遷移していなければ、中断したデータ通信をLTEシステムで再開できるので、スループットの低下を抑制できる。
【0069】
さらに、携帯電話機1は、データ通信が再開されない場合であっても、基地局を遷移していなければ、3GシステムからLTEシステムへ復帰できるので、この後のデータ通信の発生に備えて、適切な通信システムを選択できる。
【0070】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限るものではない。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0071】
前述の実施形態におけるW−CDMA方式、CDMA2000_1x方式及びLTE方式は一例に過ぎず、他の通信プロトコルであってもよい。すなわち、一方がデータ通信専用の高速な通信方式、他方が音声通信とデータ通信との双方をサポートする通信方式であればよい。例えば、GSM方式とワイヤレスLAN等であっても同様である。
【0072】
また、本発明に係る無線端末装置は、携帯電話機1には限られない。本発明は、PHS(登録商標;Personal Handy phone System)、PDA(Personal Digital Assistant)、ゲーム機、ナビゲーション装置、パーソナルコンピュータ、通信機能に特化した通信専用モジュール等、様々な装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 携帯電話機(無線端末装置)
11 操作部
21 表示部
30 制御部
31 第1の移行処理部
32 第2の移行処理部
40 通信部
41 アンテナ
50 音声制御部
60 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の通信システムのいずれかを選択して無線通信する無線端末装置であって、
第1の通信システムで位置登録している基地局に関する第1の基地局情報を記憶する記憶部と、
前記第1の通信システムでデータ通信中に、第2の通信システムでの通信要求が生じた場合、前記第1の通信システムでのデータ通信を中断し、当該第2の通信システムでの通信へ移行する第1の移行処理部と、
前記第2の通信システムでの通信が終了すると、前記記憶部に記憶されている前記第1の基地局情報に基づいて、前記第1の通信システムを捕捉して当該第1の通信システムでの通信へ移行する第2の移行処理部と、を備える無線端末装置。
【請求項2】
前記第1の通信システムは、前記第2の通信システムよりも高速なデータ通信をサポートし、
前記第2の通信システムは、データ通信に加えて音声通信もサポートし、
前記通信要求とは、音声通信開始のイベントの発生である請求項1に記載の無線端末装置。
【請求項3】
前記イベントの発生とは、自装置に対する音声着信の発生である請求項2に記載の無線端末装置。
【請求項4】
前記第1の通信システムはCDMA方式、前記第2の通信システムはLTE方式であり、
前記音声着信の発生により、3GPPにて規定されているCS−Fallbackが行われる請求項3に記載の無線端末装置。
【請求項5】
前記記憶部は、前記第2の通信システムでの通信へ移行した際に、位置登録した基地局に関する第2の基地局情報をさらに記憶し、
前記第2の移行処理部は、前記第2の通信システムでの通信が終了後、前記第1の通信システムで中断されたデータ通信が前記第2の通信システムで再開されたとき、当該データ通信が再開されたときの基地局情報が前記記憶部に記憶されている前記第2の基地局情報と一致した場合、前記記憶部に記憶されている前記第1の基地局情報に基づいて、前記第1の通信システムを捕捉して当該第1の通信システムでの通信へ移行する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の無線端末装置。
【請求項6】
前記記憶部は、前記第2の通信システムでの通信へ移行した際に、位置登録した基地局に関する第2の基地局情報をさらに記憶し、
前記第2の移行処理部は、前記第2の通信システムでの通信が終了後、前記第1の通信システムで中断されたデータ通信が前記第2の通信システムで再開されずに所定時間が経過したとき、現在位置登録している基地局の基地局情報が前記記憶部に記憶されている前記第2の基地局情報と一致した場合、前記記憶部に記憶されている前記第1の基地局情報に基づいて、前記第1の通信システムを捕捉して当該第1の通信システムでの通信へ移行する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の無線端末装置。
【請求項7】
前記記憶部は、前記第1の通信システムで位置登録する度に、当該位置登録した最新の基地局情報を前記第1の基地局情報として記憶する請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の無線端末装置。
【請求項8】
複数の通信システムのいずれかを選択して無線通信する無線端末装置の制御方法であって、
第1の通信システムで位置登録している基地局に関する第1の基地局情報を記憶する記憶ステップと、
前記第1の通信システムでデータ通信中に、第2の通信システムでの通信要求が生じた場合、前記第1の通信システムでのデータ通信を中断し、当該第2の通信システムでの通信へ移行する第1の移行処理ステップと、
前記第2の通信システムでの通信が終了すると、前記記憶ステップで記憶されている前記第1の基地局情報に基づいて、前記第1の通信システムを捕捉して当該第1の通信システムでの通信へ移行する第2の移行処理ステップと、を含む制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−175643(P2012−175643A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38512(P2011−38512)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】