説明

無線装置

【課題】2次利用システムでの送信機会の向上を図り、周波数の利用効率を高めること。
【解決手段】周波数を優先的に利用する1次利用システムの空き周波数帯を2次的に利用する2次利用システムに用いられる無線機であって、スペクトラムセンシングにより所定の被検出帯域幅以上の空き周波数帯を検出するスペクトラムセンシング部303と、検出された空き周波数帯を用いて所定の伝送帯域幅で無線伝送するデータ伝送部300と、2次利用システムのトラフィック量及びスペクトラムセンシング区間の時間長の少なくとも一方に応じて被検出帯域幅及び伝送帯域幅を決定する帯域幅決定部301と、前記決定された被検出帯域幅及び伝送帯域幅に基づいて、スペクトラムセンシング部303の被検出帯域幅及びデータ伝送部300の伝送帯域幅を可変に制御する制御部302とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、周波数を優先的に利用する1次利用システムと、1次利用システムの空き周波数帯を2次的に利用する2次利用システムを備える周波数共用型の無線通信システムに用いられる無線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の無線通信の発展に伴い、周波数利用の高効率化が求められている。限られた周波数資源をより効率的に利用するため、端末や基地局などの無線機に周囲の電波状況を認識する機能を持たせ、最適な周波数や方式を無線機が自ら選択して通信を行うコグニティブ無線という技術が注目されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
周波数共用型の無線通信システムは、周波数を優先的に利用する1次利用システムが時間的、空間的に使用していない空き周波数帯(ホワイトスペースと呼ばれる)を、他のシステム(2次利用システム)が2次的に利用するものである。2次利用システムは、1次利用システムに対し極力干渉を与えないように1次利用システムの空き周波数帯を利用することが要求される。このため、2次利用システムではデータを送信する前や通信中などに十分なスペクトラムセンシング(信号検出)を行い、1次利用システムが当該周波数帯を使用していないことを確認しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−71569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来技術では、スペクトラムセンシングでの空き周波数帯の被検出帯域幅が固定値であるため、被検出帯域幅以下の空き周波数帯を検出することができなかった。このため、2次利用システムでのトラフィック量が少なく、十分伝送可能な空き帯域が存在している場合でも、送信機会を失うことになる。
【0006】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、2次利用システムでの送信機会の向上を図り、周波数の利用効率を高めることができる無線装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためにこの発明の第1の態様は、周波数を優先的に利用する1次利用システムの空き周波数帯を2次的に利用する2次利用システムに用いられる無線装置であって、スペクトラムセンシングにより所定の被検出帯域幅以上の空き周波数帯を検出する検出手段と、前記検出された空き周波数帯を用いて所定の伝送帯域幅でデータを無線伝送する伝送手段と、前記2次利用システムのトラフィック量及びスペクトラムセンシング区間の時間長の少なくとも一方に応じて、前記被検出帯域幅及び前記伝送帯域幅を決定する決定手段と前記決定手段で決定された前記被検出帯域幅及び前記伝送帯域幅に基づいて、前記検出手段の前記被検出帯域幅及び前記伝送手段の前記伝送帯域幅を可変に制御する制御手段とを具備するものである。
【0008】
また、本発明の第2の態様は、前記第1の態様において、前記決定手段は、前記スペクトラムセンシング区間の時間長が長いほど前記被検出帯域幅を広く設定するものである。
【発明の効果】
【0009】
すなわちこの発明によれば、2次利用システムでの送信機会の向上を図り、周波数の利用効率を高めることができる無線装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】周波数共用型の無線通信システムの全体図。
【図2】2次利用システムの構成例を示す図。
【図3】IPパケットの構成例を示す図。
【図4】本発明の一実施形態に係る無線機の構成例を示すブロック図。
【図5】TDM−TDDフレーム構成の一例を示す図。
【図6】スペクトル利用方法の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照してこの発明に係る無線装置の実施の形態について説明する。
図1は、周波数共用型の無線通信システムの全体図である。このシステムは、周波数を優先的に利用する既存システム(一次利用システム)と、既存システムの空き周波数帯を2次的に利用する2次利用システムとを備える周波数共用型の無線通信システムである。
【0012】
図1において、既存システム基地局101と既存システム端末102は、周波数f1で無線通信を行っている。例えば、既存システムがテレビ放送の場合、既存システム基地局101は送信所、既存システム端末102は各家庭のテレビ受信機に相当し、既存システムの通信エリア103は放送エリアとなる。2次利用システム基地局104と2次利用システム端末105−1〜105−3は、既存システムに対し干渉を与えないように送信電力、利用周波数を制御して空き周波数帯(ホワイトスペース)を2次利用する。
【0013】
図1の例では、2次利用システム基地局104、2次利用システム端末105−1,105−2は、既存システムと地理的に離れているため、干渉を生じないよう送信電力制御を行うことにより、同一の周波数f1を利用することができる。2次利用システム端末105−1,105−2は、2次利用システム基地局104を介し、周波数f1を利用してTDD(Time Division Duplex:時分割複信)により通信している。これに対し、2次利用システム端末105−3の位置が放送エリア103内にあることから、2次利用システム基地局104と端末105−3と間の通信が既存システムに対し干渉を与えないように別の周波数f2を利用して通信している。周波数f2は、2次利用システムによるスペクトラムセンシングの結果、空き周波数であると判定されている周波数である。
【0014】
2次利用システムでは、既存システムに干渉を与えないようにするため、利用しようとする周波数に既存システムの無線信号が存在するか否かをセンシングし、当該周波数が空いていると判断した場合、送信を開始する。また、通信中も定期的に送信を停止しスペクトラムセンシングを実行し、既存システムの無線信号が検出された場合、速やかに当該周波数の利用を停止し解放する。既存システムが、日本の地上デジタル放送(ISDB−T)であると想定した場合(将来、法令上、地上デジタル放送用周波数の2次利用が認められると想定した場合)、チャネル帯域幅は6MHzであるため、検出対象とする空き周波数の帯域幅は6MHzに設定され、当該チャネルの6MHz帯域幅、またはその両隣接チャネルも含めた6MHz×3の帯域幅が空いていれば、それを2次利用したブロードバンド通信が可能となる。このテレビ放送の空き周波数はTVホワイトスペースと呼ばれる。
【0015】
災害発生時、携帯電話等の既存通信インフラが故障や電源供給不可により使用出来なくなった被災地において、例えば避難所間の通信手段としてポイント・ツー・ポイントのリンクとして2次利用システムを仮設することを想定する。このような用途では、ブロードバンドデータ通信よりも音声通話の要求が高い。
【0016】
図2に、2次利用システムの構成例を示す。同図では、m台のIP電話端末による音声通話情報が、2次利用システムを用いてポイント・ツー・ポイントで伝送される。IP電話端末201−1〜201−m,206−1〜206−mは音声信号をIPパケットa1−1〜a1−m,e1−1〜e1−mに変換する。
【0017】
図3に音声符号化方式として符号化速度8kbpsのITU−T G.729(CS−ACELP)を使用し、20msec周期で音声をパケット化した場合のIPパケットの構成例を示す。音声符号化データは20byte/20msで生成され、それにUDP/RTPヘッダ20byte、IPヘッダ20byteを付加することにより、60byte/20msecとなる。この場合の情報速度は24kbpsであり、ブロードバンドデータ通信(一般に500kbps以上)に比べ、伝送に必要な帯域は狭い。
【0018】
IP電話端末201−1〜201−m,206−1〜206−mは、イーサネット(登録商標)により集約装置202,205に接続され、集約装置202,205では、m台分のIPパケットa1−1〜a1−m,e1−1〜e1−mを集約/分割する。送信時は入力であるm台分のIPパケットを集約し、集約されたデータb1,d1を出力する。受信時は受信データb1,d1を各IPパケットに分割し、IPアドレスに基づいて、対応するIP電話端末へ送出する。データb1,d1は2次利用基地局203と2次利用端末204とにより相手側に伝送される。
【0019】
2次利用基地局203と2次利用端末204の接続プロセスについては、被災地に仮設され、電源ONされた後、2次利用端末204は2次利用基地局203から送信される制御情報(後述する図5の制御情報2002)を常時受信し、制御情報に含まれる利用周波数、帯域幅、フレ−ム構成等の制御パラメータに従って動作する。初期接続では、2次利用端末204側において利用周波数、帯域幅、フレ−ム構成等が既知である必要があるが、それを実現する方法として以下の2つの手法が考えられる。
【0020】
第1の手法としては、帯域幅、フレ−ム構成は所定の設定とし、利用周波数は複数の候補値の中から2次利用基地局203がスペクトラムセンシングを行い、利用可能な空き周波数を用いて送信する。2次利用端末204は上記数通りの利用周波数の各候補値についてスキャンして受信し、2次利用基地局203からの送信信号を認識した後、通信を開始する。
【0021】
第2の手法としては、帯域幅、フレ−ム構成は所定の設定とし、2次利用基地局203によるスペクトラムセンシングで決定された利用周波数を、使用可能な別の通信手段(業務用無線等)を使用して2次利用端末204に伝える。
次に、2次利用基地局203および2次利用端末204に設けられる無線機について説明する。図4は、この無線機の構成例を示すブロック図である。無線機は、データ伝送部300、帯域幅決定部301、制御部302、及びスペクトラムセンシング部303を備え、制御部302が他の3つの各部を制御する。データ伝送部300は、組立/分解部304、誤り訂正部305、変復調部306、及び無線部307を備える。2次利用基地局203と2次利用端末204とでは、制御部302及びデータ伝送部300の中の組立/分解部304の動作が異なるのみで構成は同じである。
【0022】
データ伝送部300の組立/分解部304は、送信時には、集約装置202からの入力データa2に対しフレーム組立処理を行い、受信時にはフレームを分解処理しデータa2を抽出し出力する。
図5に、組立/分解部304において組立てられるフレームe2の構成例を示す。通信は1つの周波数で送受信を行うため、TDM(Time Division Multiplexing:時分割多重)、TDD(Time Division Duplex:時分割複信)方式を用いている。以下、フレームの各フィードについて説明する。
【0023】
スペクトラムセンシング区間2000では、送信を止め、後述するスペクトラムセンシング処理を行う。この処理は2次利用基地局203と2次利用端末204の両方で実行する。
次に続く第1プリアンブル2001から下りデータ2004までは下り方向(基地局から端末へ)の送信区間(送信情報)である。
【0024】
第1プリアンブル2001は、下り通信でのフレーム同期、搬送波再生、及びクロック再生等に使用される。
制御情報2002は、例えば、以下の制御パラメータを含むものとする。
「利用周波数」は、スペクトラムセンシング結果に基づき決定される現フレーム及び次フレームにおける利用周波数である。
【0025】
「帯域幅」は、帯域幅決定部301で決定される現フレーム及び次フレームにおける空き周波数の被検出帯域幅及び伝送帯域幅である。
「フレ−ム構成」は、現フレームのフレ−ム構成情報であり、図5に示す各フィードのサイズを指定する。下りデータ2004及び上りデータ2006のサイズは入力データa2のトラフィック量に応じて変化する。
【0026】
「データ部の変復調方式」は、リアルタイム性が要求される音声データの場合は、再送は出来ないため、ノイズ耐性の強いBPSK(Binary Phase Shift Keying)またはQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)を用いる。
【0027】
「データ部の誤り訂正方式」は、符号化無し(符号化率1)または畳み込み符号(符号化率1/2)を指定する。
「端末の送信停止命令」は、2次利用基地局203または2次利用端末204でのスペクトラムセンシングの結果、利用周波数に既存システム等の信号有りと判断され、かつバックアップ用の他の空き周波数もない場合、2次利用端末204へ送信停止を命令し、直後に2次利用基地局203の送信も停止する。通信再開の手順は、前述の初期接続と同様とする。
【0028】
第2プリアンブル2003は、本フィールド以降、伝送帯域幅を可変にするため、フレーム同期、搬送波再生、及びクロック再生等を可能にするために設けたものである。
下りデータ2004は、制御情報2002に含まれるフレ−ム構成情報に基づき、下りデータ(音声情報)を挿入する。
【0029】
次に続く第3プリアンブル2005から上りトラフィック情報2008までのフィールドは、上り方向(端末から基地局へ)の送信区間(送信情報)である。
第3プリアンブル2005は、上り通信でのフレーム同期、搬送波再生、及びクロック再生等に使用される。
【0030】
上りデータ2006は、制御情報2002のフレ−ム構成情報に基づき、上りデータ(音声情報)を挿入する。上り下り対称の音声通信を想定しているため、下りデータ2004と上りデータ2006のデータ量は等しい。
スペクトラムセンシング結果2007は、2次利用端末204から報告されるスペクトラムセンシング結果である。
【0031】
上りトラフィック情報2008は、2次利用端末204から通知される上りトラフィック量であり、2次利用端末204側で新たに送話が開始された場合など、2次利用基地局203が上りトラフィック量の変化を認識するために送られる情報である。2次利用基地局203は下りトラフィック量と上りトラフィック量のうち、値の大きな方に合わせて他方を変更し伝送帯域幅を決定する。
【0032】
なお、実際には、制御情報2002と第2プリアンブル2003との間に伝送帯域幅切替のためのギャップ時間が必要であり、また、下りデータ2004と第3プリアンブル2005との間に送信/受信切替のためのギャップ時間が必要であるが、図示は省略している。
【0033】
誤り訂正部305は、送信時はフレームe2内の制御情報2002に対し誤り訂正符号化(畳み込み符号化(符号化率1/2))を行い、また制御情報2002でデータ部の誤り訂正方式が畳み込み符号化(符号化率1/2)に指定されている場合には下りデータ2004と上りデータ2006に対しても誤り訂正符号化を行い誤り訂正符号化後のデータ列f2を出力する。受信時は、復調後の受信データ列f2に対し、誤り訂正処理を行い、誤り訂正後の受信データ列(フレーム)e2を出力する。
【0034】
変復調部306は、送信時は、制御情報2002で指定された変調方式により、誤り訂正符号化後のデータ列f2のデータを変調処理し、変調された信号g2を出力する。受信時は、無線部307からの出力であるベースバンド受信信号g2に対し、同様に制御情報2002で指定される復調方式を用いて復調処理し、復調データf2を出力する。
【0035】
無線部307は、その内部構成の図示は省略するが、送信時は、変調された信号g2に対し、制御部302からの制御情報b2に含まれる利用周波数、帯域幅に基づき、送信フィルタ処理、及び利用周波数(キャリア周波数)にアップコンバートする直交変調処理を行い、パワーアンプ、送信アンテナを通し、送信電波h2を送出する。受信時は、制御部302からの利用周波数、帯域幅に基づき、相手局からの電波h2を、受信アンテナ、ローノイズアンプを介して受信した信号に対し、ベースバンド周波数にダウンコンバートする直交復調処理、受信フィルタ処理を行い、ベースバンド受信信号g2を出力する。
【0036】
スペクトラムセンシング部303は、制御部302からの制御情報c2に含まれる周波数、帯域幅について電波d2の使用状況を検出し、その結果である信号の有無c2を制御部302に報告する。本処理は上記図5に示すフレーム構成のスペクトラムセンシング区間2000で実行される。
【0037】
帯域幅決定部301は、入力a2のデータ量に応じて、空き周波数の検出対象帯域幅(被検出帯域幅)の設定値及び伝送帯域幅の設定値a3を決定し、制御部302に指示する。これに基づき、制御部302は、スペクトラムセンシング部303に対し空き周波数の被検出帯域幅c2として、帯域幅決定部301で決定した被検出帯域幅の設定値a3を指示する。また、データ伝送部300に対し、制御信号b2により伝送帯域幅として帯域幅決定部301で決定した伝送帯域幅の設定値a3を指示する。
【0038】
データ伝送部300は、制御部302により指示される伝送帯域幅に基づき、上記図5の第2プリアンブル2003以降のフィールドの伝送帯域幅を可変するように動作する。被検出帯域幅の設定値及び伝送帯域幅の設定値a3は、数段階に切り替え可能な構成としてもよい。
【0039】
図5の第1プリアンブル2001と制御情報2002の伝送帯域幅については、2次利用端末204側で帯域幅が既知である必要があり、また制御情報2002のデータ量は伝送情報のトラフィック量に依存せず一定であるため、固定の帯域幅(例えば、最小の設定値)とする。
【0040】
帯域幅決定部301での被検出帯域幅の設定値及び伝送帯域幅の設定値a3の決定の基準としては、例えば、図5のフレーム構成において、下りデータ2004の区間の送出時間が所定の時間内に収まる変調速度で変調し、それに対応するシンボルレートにロールオフ率、及びガードバンドを加味した帯域幅とする。なお、本実施形態では、下りデータ2004と上りデータ2006のトラフィック量は等しく、これらのフィールドは制御情報2002、スペクトラムセンシング結果2007、及び上りトラフィック情報2008に比べ情報伝送速度が高くなるため、これらのトラフィック量を帯域幅決定の基準としている。
【0041】
次に、帯域幅決定の計算例を示す。本実施形態において算出条件は以下のようにする。
[条件1]として、図5に示す1フレームの時間長を20msとし、このうち3msを下りデータ区間2004に配分する。
[条件2]として、例えば、図2において2回線のIP電話が使用されるものとする。図3に示すように1回線当りのIPパケットのトラフィック量は60byte/20msとする。したがって、2回線分のトラフィック量は120byte/20msとなる。
[条件3]として、データ部(下りデータ2004および上りデータ2006)の誤り訂正方式は畳み込み符号(符号化率1/2)とする。
[条件4]として、データ部の変調方式はQPSKとし、ロールオフ率は0.25とする。
【0042】
上記[条件1]及び[条件2]より、下りデータ区間での伝送速度は(式1)となる。
120byte×8bit/3ms=320kbps…(式1)
[条件3]より、誤り訂正符号化(符号化率1/2)後の伝送速度は(式2)となる。
320kbps×2=640kbps…(式2)
[条件4]より、シンボル速度は(式3)となる。なお、QPSKでのシンボル当りのビット数は“2”である。
640kbps/2=320ksymbols/s…(式3)
ここで、ロールオフ率0.25の場合の占有帯域幅(伝送帯域幅)は(式4)となる。
320ksymbols/s×1.25=400kHz…(式4)
被検出帯域幅は、ガードバンドを考慮し2倍とすれば(式5)により求められる。
400kHz×2=800kHz…(式5)
【0043】
上記[条件1]において、1フレーム20ms内の配分として、スペクトラムセンシング区間2000の時間長を長く設定するほど、下りデータ区間2004に配分される時間は短くなり、被検出帯域幅と伝送帯域幅は広くなる。逆にスペクトラムセンシング区間2000の時間長を短く設定するほど、下りデータ区間2004に配分される時間は長くなり、被検出帯域幅と伝送帯域幅は狭くなる。
また、上記[条件2]において、2回線分から、例えば3回線分に増えると、トラフィック量は180byte/20msとなり、(式1)〜(式5)の結果は、1.5倍となり、被検出帯域幅は1.5倍となる。
【0044】
従来技術では、スペクトラムセンシング部での被検出帯域幅、及びデータ伝送部での伝送帯域幅が、固定値(IP電話の最大接続数、すなわち最大トラフィック量に基づいて決定されている)であるため、音声通話のトラフィック量(図2の集約装置202の出力の情報速度)が少ない場合には以下のような課題があった。
【0045】
図6(a)に示すように、スペクトラムセンシング部での被検出帯域幅をBとすると、空き周波数604の帯域幅はB以上であるため、空き周波数を検出することができ、図6(b)に示すように2次利用システムでの利用が可能である(図6(b)の斜線パターンで示す部分)。しかし、空き周波数が空き周波数602しかない場合、その帯域幅はBより小さいため、周囲の周波数の信号も含めてセンシングするため、空き周波数として検出されず、2次利用システムでの利用が出来ない。ここで、音声通話のトラフィック量が少なく、「第1空き周波数」でも十分伝送可能な帯域である場合、送信機会を失うことになる。
【0046】
これに対し、上記実施形態によれば、伝送したいデータ量に応じてスペクトラムセンシング部での被検出帯域幅を制御し、伝送に必要な最低限の空き周波数を探索することにより、2次利用システムでの送信機会の向上が図れるため、被災地等において、より確実な音声通信の維持が可能となる。
【0047】
なお、上記実施形態では、無線アクセス方式としてシングルキャリアのTDM−TDDを用いて説明したが、本発明はOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiplexing Access)についても適用可能である。また図2の集約装置202,205の一方は、公衆網等の管理外のネットワークでもよく、集約装置202,205は、適宜ルータやSIPサーバ機能を内蔵することができる。
【0048】
要するに、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0049】
101…既存システム基地局、102…既存システム端末、103…既存システムの通信エリア、104…2次利用システム基地局、105−1〜105−3…2次利用システム端末、106…2次利用システムの通信エリア、201−1〜201−m…IP電話端末、202…集線装置、203…2次利用基地局、204…2次利用端末、205…集線装置、206−1〜206−m…IP電話端末、300…データ伝送部、301…帯域幅決定部、302…制御部、303…スペクトラムセンシング部、304…組立/分解部、305…誤り訂正部、306…変復調部、307…無線部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数を優先的に利用する1次利用システムの空き周波数帯を2次的に利用する2次利用システムに用いられる無線装置であって、
スペクトラムセンシングにより所定の被検出帯域幅以上の空き周波数帯を検出する検出手段と、
前記検出された空き周波数帯を用いて所定の伝送帯域幅でデータを無線伝送する伝送手段と、
前記2次利用システムのトラフィック量及びスペクトラムセンシング区間の時間長の少なくとも一方に応じて、前記被検出帯域幅及び前記伝送帯域幅を決定する決定手段と
前記決定手段で決定された前記被検出帯域幅及び前記伝送帯域幅に基づいて、前記検出手段の前記被検出帯域幅及び前記伝送手段の前記伝送帯域幅を可変に制御する制御手段と
を具備することを特徴とする無線装置。
【請求項2】
前記決定手段は、前記スペクトラムセンシング区間の時間長が長いほど前記被検出帯域幅を広く設定することを特徴とする請求項1記載の無線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−5283(P2013−5283A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135480(P2011−135480)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】