説明

無線送受信装置およびそれに用いる無線アンテナ装置

【課題】
無線送受信装置において、長期にわたりメンテナンスフリーとするとともに性能劣化を低減する。
【解決手段】
複数の地点間を無線で送信する無線通信に用いる無線送受信装置は、他の無線送受信装置との間の通信を可能にするアンテナ装置2を有する。さらに、アンテナ装置に付着する水分を検出する水分検出センサーと、アンテナ装置に降る雪および雨を検出する降雪センサーおよび降雨センサーと、アンテナ装置の内部に配置されアンテナ装置を加熱する熱発生手段20と、これら各センサーの出力が入力される中央演算装置とを有する。アンテナ装置は円筒状の外側部材17の内部にアンテナ素子10を有し、この外側部材の表面を撥水性物質と防汚性物質とからなるコーティング膜18で被覆する。前記センサーの少なくともいずれかが、水分または降雨、降雪を検出したら、中央演算装置が熱発生手段に通電するように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線送受信装置およびそれに用いる無線アンテナ装置に係り、特に屋外に配置するのに好適な無線送受信装置およびそれに用いる無線アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
センサーが検出した情報を無線ネットワークで送信する際に、雨や雪、ゴミ等により、電波強度が減衰し、データが未到達になる場合がある。このような不具合を解消する方法が、特許文献1ないし特許文献6に記載されている。この中で、特許文献1では、無線装置のアンテナ設備を大型化させずに、アンテナへの着雪を確実に防止するためにアンテナの開口部前面にレドームを取り付けている。このレドームは、アンテナの反射鏡の開口部周縁から外方向に延びる筒体からなり、斜め下方に向く開口面を形成する。レドームの開口面は、電波に対して透明性を有する開口面カバーで覆われ、この開口面カバーに対する着雪を重力による落下作用で防止している。
【0003】
特許文献2では、アンテナやビデオカメラが降雨や降雪に曝されて機能が低下するのを防止するために、ドーム上の透明カバー内にアンテナやビデオカメラ、太陽電池パネルを収容し、透明カバー内に温風を送出している。また特許文献3では、アンテナ素子が風力で容易にたわむようにして、風力でアンテナ素子を振動させ、アンテナ素子表面上に雪または氷が付着するのを防止している。
【0004】
特許文献4では、パラボナアンテナの反射面の下半分に発熱シートを貼着して、アンテナ面上に付着した雪を融雪している。同様に特許文献5および特許文献6では、パラボナアンテナにヒータ等の融雪装置を設けて、アンテナ面上への着雪を防止している。
【0005】
【特許文献1】特開2002−335112号公報
【特許文献2】特開2005−123442号公報
【特許文献3】特開2005−72695号公報
【特許文献4】特開平9−46111号公報
【特許文献5】特開平10−341101号公報
【特許文献6】特開平9−18211号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
無線センサーネットワークでは、ネットワークを利用して広範囲に通信するために、中継局や基地局を、人が入れないような場所や危険な場所、狭い場所、高所等に配置する場合がある。このような中継局や基地局では、中継局や基地局が有するセンサー類に対して、メンテナンスフリーであることが求められている。上記各特許文献には、気象上、特に積雪によるこれら中継局や基地局の能力低下を防止することが記載されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の無線センサーネットワークでは、送信方向とカバーによる着雪防止方向とが必ずしも一致しなく、通信が不安定になる恐れがある。すなわち、アンテナにホイップアンテナのような無指向性アンテナを用いて、どの方向にも送信できるようにしているが、カバーは風雪の方向にせざるを得ず、通信方向によってはアンテナの利得が低下する。また、特許文献2に記載のものは、半球状のレドームで通信機器等を覆っているが、レドームが汚れると、通信が不安定になる恐れがある。このように通信機器をカバーで覆って積雪による障害を防止するのは、原理的に困難さが伴う。
【0008】
一方、特許文献3に記載の風力で着雪を振るい落とす方法では、アンテナ上に付着した雪等が凝固して発生する氷や、強固に付着した汚泥等を完全に取り去ることは難しい。さらに、特許文献4ないし特許文献6に記載のアンテナ装置のように、ヒータ等の熱を用いて着雪を融解する方法では、着雪以外の汚泥や高所であれば鳥などの動物の排泄物などが付着する場合には、これをアンテナ装置から無人で完全に取り去ることが困難になる。
【0009】
本発明は上記従来技術の不具合に鑑みなされたものであり、その目的は、無線センサーネットワークに使用される機器を、メンテナンスフリーで着雪から保護するとともに、性能劣化を低減する。本発明の他の目的は、無線センサーネットワークにおけるアンテナ装置の信頼性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する本発明の特徴は、複数の地点間を無線で送信する無線通信に用いる無線送受信装置において、前記無線送受信装置は、他の無線送受信装置との間の通信を可能にするアンテナ装置と、このアンテナ装置に付着する水分を検出する水分検出センサーと、アンテナ装置に降る雪および雨を検出する降雪センサーおよび降雨センサーと、アンテナ装置の内部に配置されアンテナ装置を加熱する熱発生手段と、前記水分検出センサーと、降雨センサーと、降雪センサーの出力が入力される中央演算装置とを有しており、前記アンテナ装置は円筒状の外側部材の内部にアンテナ素子を有し、この外側部材の表面を撥水性物質と防汚性物質とからなるコーティング膜で被覆されており、前記水分検出センサーと、降雨センサーと、降雪センサーの少なくともいずれかが、水分または降雨、降雪を検出したら前記中央演算装置が前記熱発生手段に通電するように制御するものである。
【0011】
そしてこの特徴において、中央演算装置はタイマ手段を有しており、前記降雪センサーが降雪後に降雪が止んだのを検出したら、前記中央演算装置は所定時間タイマ手段を動作させて降雪終了後も継続して前記熱発生手段を動作させるものが好ましく、前記防汚性物質は少なくとも酸化チタンを含み、紫外光により反応を促進させて前記アンテナ装置周りに付着した物質を分解除去するものであってもよい。さらに、防汚性物質を前記撥水性物質に分散担持させてもよい。
【0012】
またこの特徴において、中央演算装置に、紫外光を検出する照度センサーと、紫外光を発生する複数の紫外光源とを接続し、この複数の紫外光源でアンテナ全体を照射可能とするのがよく、照度センサーの出力に応じて、前記中央演算装置が前記紫外光源のオン/オフを制御するのがよい。さらに、上記各特徴において、アンテナ装置が送受信装置に設けられ、前記熱発生手段が発生した熱を流通させる温風流路が内部に形成されているのがよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、降雨、降雪センサーのほかに水分センサーもアンテナが有し、アンテナ内部に加熱手段を設けたので、無線センサーネットワークに使用される無線送受信装置を、メンテナンスフリーで着雪から保護できるとともに、高性能に維持できる。また紫外照射手段を設けたので、アンテナへの汚れの付着を低減でき、無線センサーネットワークにおけるアンテナ装置の信頼性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係るアンテナ装置を含む無線送受信装置の一実施例を、図面を用いて説明する。図1に、無線送受信装置30の一実施例を斜視図で示す。無線送受信装置30は、ZigBee(登録商標)等を用いた無線センサーネットワークが有するものであり、遠隔地にあるポンプ機場等の各種機場からの情報を無線で送受信するのに用いられる。なお、無線センサーネットワークでは、免許不要で利用可能な微弱無線(300MHz帯)や特定省電力無線(400MHz帯)、ISMバンド(Industry Science Medical band)無線(2.4GHz帯)などを使用する。
【0015】
無線送受信装置30は、ロッド上のアンテナ2とこのアンテナ2が取り付けられる無線送受信装置筐体1とを含んでいる。筐体1の一側面には、物理値計測用センサーが接続される物理値計測用センサーコネクタ3a〜3dが取り付けられている。筐体1の他の側面、本実施例では物理値計測用センサーコネクタ3a〜3dが取り付けられた面と直角をなす面には、環境測定用センサーコネクタ4a〜4cが取り付けられている。
【0016】
物理値計測用センサーは、例えば、温湿度センサーや圧力センサー、振動センサー、音センサー、位置センサーである。環境測定用センサーは、例えば、降雪センサーや降雨センサーである。これらの各センサーを図1では図示していないが、各センサーは、マイクロコントローラなどの中央演算装置5に接続される(図2参照)。
【0017】
ところで、電波強度は、通信距離の増大とともに増加する自由空間伝搬損失や、建物や森林等の物理的な反射や回折による減衰、伝搬媒質による減衰により、低下する。さらに電波が伝播する空間に、水蒸気や酸素、降雨、降雪等があると、この電波強度は指数関数的に減衰する。これらの影響は、特に直線性の強い10GHz以上の高周波帯域で、顕著である。そこで、本実施例では、空間部での電波強度の低下はさておき、アンテナ2部への降雨、降雪、着水による電波強度の低減を極力抑制することとし、無線送受信装置30に降雪センサー7および降雨センサー8を設けている。
【0018】
ここで、本実施例に使用するセンサーの動作原理は、以下のとおりである。降雪センサー7は、水分電極と雪温により降雪を検出する。降雪方向を勘案して、受雪板上に上向きに水分電極を配置する。電極が融雪後の水分を検出する。降雪センサーには雪温センサーが付随しており、雪温センサーの検出温度が0度以下であれば降雪状態であると判断する。なお、赤外線を照射して降雪切片を検出し、降雪切片からの赤外線の反射量に基づいて降雪の有無および降雪量を検出するようにしてもよい。
【0019】
降雨センサー8は、基板上に櫛型電極を形成し、この櫛型電極間に交流電流を印加する。付着した水滴量の変化を電極間の静電容量変化で計測する。降水強度等をも検出するときは、個々の降水の水滴による衝撃を検出し、衝撃で発生する信号量から降雨量および降水強度、降水時間を計測する。水分センサー11では、所定の熱量を加えたときに水分量に応じて昇温速度が変化するのを利用する。熱発生部分の温度変化量を測定して昇温速度を算出し、水分量を求める。
【0020】
図2に、無線送受信装置30をブロック図で示す。筐体1の内部には、中央演算装置5と無線送受信モジュールが、収容されている。中央演算装置5には、物理値計測用センサー6a〜6dと、環境計測用センサーである降雪センサー7および降雨センサー8が、コネクタ3a〜3d、4a〜4cを介して接続されている。中央演算装置5は、環境計測用センサー7、8および物理値計測用センサー6a〜6dに給電し、各センサー7、8、6a〜6dがデータ取得するのを制御する。センサー6a〜6d、7、8へ給電するときは、中央演算装置5の汎用I/Oピンを用いて制御してもよいし、中央演算装置5の外部に、図示しない定電圧レギュレータを設けて、中央演算装置5がセンサー6a〜6d、7、8に給電する定電圧レギュレータを制御してもよい。
【0021】
中央演算装置5は、センサー6a〜6d、7、8が取得したデータがアナログ値であれば、データをアナログデジタル変換(A/D変換)する。デジタル化されたデータは、無線送受信モジュール9に送信される。センサー6a〜6d、7、8が取得したデータがデジタル値であれば、中央演算装置5は、そのデータをそのまま無線送受信モジュール9に送信する。
【0022】
送信されるデジタルデータは、中央演算装置5内でUART(Universal asynchronous receiver transmitter)などのシリアル信号に変換されて、無線送受信モジュール9へ送信される。無線送受信モジュール9は、シリアル信号に変換されたデジタルデータを無線変調し、アンテナ2に送信する。アンテナ2は、アンテナ素子10と、水分センサー11とを有している。アンテナ素子10は、無線送受信モジュール9から送られたデジタルデータを高周波電流の無線データとして、他のアンテナ装置1に送信する。
【0023】
水分センサー11は、アンテナ2の表面に取り付けられており、中央演算装置5に接続されている。中央演算装置5は、水分センサー11に給電するとともに、水分センサー11のデータ取得を制御する。アンテナ2の内部には、温風流路14が形成されており、水分センサー11が水分を検出すると、熱発生装置12で発生した熱が温風流路14を経て、ファン13により送風される。
【0024】
ここで、熱発生装置12は、中央演算装置5に接続されている。熱発生装置12では、温風をアンテナ2の内部に形成された温風流路14へ送風する流路以外を、断熱材料で覆っている。これにより、熱発生装置12で発生した温風が、無線送受信装置30の筐体1の内部に収容した回路へ悪影響を与えるのを防止する。中央演算装置5と熱発生装置12とを接続する信号ラインは、断熱材カバーに穴を開けて通過させ、厳重にシールする。これにより、温風が無線送受信装置30の筐体1の内部に漏れるのを防止する。
【0025】
アンテナ2の詳細を、図3に示す。図3(a)は、アンテナ2の縦断面図であり、同図(b)は、同図(a)のA部詳細斜視図、同図(c)はB部詳細斜視図である。アンテナ2は、頂部が半球状の円筒状を呈する外側部材17を有している。外側部材17は、その外表面を酸化チタン被覆膜18でコーティングされている。外側部材17は樹脂をベース材質としている。
【0026】
酸化チタン被覆膜18は、詳細を図4に示すように、撥水性物質15中に防汚性物質16を散在させている。すなわち、撥水性物質15をベースとして防汚性物質16である酸化チタンが担持されている。酸化チタン16は、撥水性物質15上に等間隔になるように分散されており、光触媒効果でアンテナ2上に付着したあらゆる種類の汚れを分解除去することを目的として用いられている。
【0027】
撥水性物質15と酸化チタン16からなる被覆膜18の表面は、大部分が撥水性物質15で覆われており、酸化チタン16が表面を占める割合は1%程度である。酸化チタン16は光励起により自己親水化する性質を有しているが、被覆膜18の表面を占める割合が1%程度なので、アンテナ2の表面の撥水能力は低下しない。
【0028】
アンテナ2の外側部材17の内側には、断熱材19が配置されており、外側部材17と断熱材19の間には、温風流路14が形成されている。温風流路14を温風が通過すると、外側部材17が加熱され、アンテナ2の表面に付着した雪を融解させ、蒸発させることが可能になる。ここで、アンテナ2の外側部材17を構成する樹脂や撥水性物質15としては、温風により熱劣化しない樹脂材料や撥水性物質15を用いる。断熱材1は、アンテナ2の内部に伝熱して内部に収容したコイル状のアンテナ素子10の性能が低下するのを防止するとともに、効率良く外側部材17を加熱する一助になる。
【0029】
図3(c)に示したアンテナ2のB部には、水分センサー11が取り付けられている。外側部材17の上下方向中間部であって内面側に、所定間隔毎に複数の水分センサー11のプローブ11bが埋め込まれている。外側部材17に平行なプローブ11bの表面が、プローブ11bの内部に設けたマイクロヒーター20により、加熱される。所定熱量をプローブ11bに加えたときに、表面に付着した水分量に応じてプローブ11bの昇温速度が変化する。そこで、マイクロヒーター20の温度変化量を、このマイクロヒータ20に一体化した図示しない温度センサで測定して、昇温速度を算出し水分量を求める。
【0030】
本実施例では、マイクロヒーター20に、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術で作成した数mm角のチップを用いている。したがって、水分センサー11のプローブ11bそれ自体は非常に小さく、アンテナ2の形状に悪影響を与えることは無い。
【0031】
水分センサー11は、信号ライン21により中央演算装置5に接続される。信号ライン21は、図示したように、温風流路14を利用して接続される。そこで、信号ライン21を、温風による劣化が少ない樹脂材料で被覆している。本実施例では、信号ライン21をアンテナ2の内部に配線しているが、信号ライン21をプローブ11bの背面側からアンテナ2の外部に引き出し、防水材質を用いて防水し、無線送受信装置30の筐体1の側面に形成した取り付け口を経て中央演算装置5に接続するようにしてもよい。
【0032】
図5に、中央演算装置5が熱発生装置12を制御する制御フローチャートを示す。中央演算装置5は、降雪センサー7および降雨センサー8が検出した降雪や降雨に基づいて、アンテナ2に水分が付着していれば、熱発生装置12をオンオフ制御する。以下その詳細を、図5を用いて説明する。
【0033】
初めに、アンテナ2に水分が付着しているかいないかを、水分センサー11が検出する(ステップS510)。降雪や降雨により、アンテナ2の表面上に水分が付着していれば、水分センサー11から水分検出信号が中央演算装置5へ送信される。ここで、降雪や降雨が無くても、大気中の水分が結露したりしてアンテナ2に水分が付着することがある。このような水分の付着にも対応できるように、水分検出の優先度を最も高く設定する。
【0034】
水分センサー11が水分を検出し、中央演算装置5へ検出信号を送信すると、中央演算装置5は、熱発生装置(ヒーター)12に通電してヒーター12を作動させる。ヒーター12周囲の空気が暖められ、ファン13がアンテナ2内部に温風を送風する(ステップS512)。外側部材17が温風で暖められ、アンテナ2外表面に付着した水分が蒸発する。水分センサー11は継続的にアンテナ2表面の水分を監視し続けるので、アンテナ2表面に付着した水分が無くなったことを水分センサー11が検出したら(ステップS514)、熱発生装置12への給電を停止し、温風の送風を停止する(ステップS502)。
【0035】
ステップS510において、水分センサー11がアンテナ2表面に水分が付着していないことを検出したら、中央演算装置5は降雪センサー7の出力を調べる(ステップS522)。降雪センサー7が降雪を検出していたら、中央演算装置5は熱発生装置12に給電を開始する。水分センサー11での水分検出の場合と同様に、アンテナ2内部にファン13がヒーター12で暖められた温風を送風する(ステップS524)。降雪センサー7も継続的にアンテナ2表面への降雪を監視し続ける(ステップS526)。
【0036】
降雪センサー7がアンテナ2への降雪が無くなったことを検出したら、中央演算装置5が備える内部タイマを起動する(ステップS528)。降雪量が多いときは、降雪が終わってもアンテナ2上に着雪している可能性がある。そこで、降雪の有無に関係なく、降雪後の所定時間Tだけ、温風の送風を継続する。所定時間Tが経過したら(ステップS530)、水分センサー11による計測を再開する。水分センサー11が、アンテナ2表面に水分が付着していないことを検出したら(ステップS532)、熱発生装置12への給電を停止し、ファン13での温風の送風を停止する(ステップS502)。
【0037】
ステップS522において、アンテナ2外表面上に水分が付着しておらず、降雪もないことが分かったときには、中央演算装置5は降雨センサー8の出力を調べる(ステップS542)。降雨センサー8が降雨を検出したら、熱発生装置12に給電し、ファン13を作動させて温風をアンテナ2内部に送風する(ステップS544)。降雨センサー8が降雨を検出したら、中央演算装置5は継続して降雨センサー8の出力を監視し続ける(ステップS546)。
【0038】
降雪の場合と同様に、降雨がやんでもアンテナ2表面上に水分が付着している場合がある。ただし、降雪とは異なり液状での付着であり、氷等の固体状での付着ではないので、水分センサー11の監視に移行する。水分センサー11がアンテナ2表面に水分が付着していないことを検出した(ステップS548)ら、熱発生装置12への給電を停止し、ファン13による温風の送付を停止する。降雨の場合、タイマによる所定時間Tの加熱を省いたので、無駄な加熱による電力消費を削減できる。
【0039】
本実施例によれば、アンテナ2の外表面上に水分が付着した状態では、水分が温風により蒸発される。降雪や降雨時には、温風により融雪と蒸発を繰り返すので、アンテナ2上に水分が付着するのを極力防止できる。また、降雪時には、タイマで設定した時間だけアンテナ2の加熱時間を延ばしているので、確実にアンテナ2への着雪を低減できる。
【0040】
図6ないし図8を用いて、本発明に係る無線送受信装置30の他の実施例を説明する。図6は、無線送受信装置30ブロック図である。本実施例が上記実施例と異なるのは、紫外光をアンテナ2表面上に照射して、アンテナ2の汚れを防止するようにしたことにある。無線送受信装置30のアンテナ2部は、紫外光源23を有している。降雪センサー7および降雨センサー8に加えて、照度センサー22が中央演算装置5に接続されている。中央演算装置5は、照度センサー22に給電するとともに、照度センサーからデータを取得する。照度センサー22は、周囲の光量に応じて抵抗値が変化する素子を有しており、この抵抗値の変化を計測して、照度を算出する。
【0041】
紫外光源23は中央演算装置5に接続されており、中央演算装置5は紫外光源23への給電を制御する。紫外光源23への給電を、中央演算装置5の汎用I/Oピンを用いて制御してもよいし、中央演算装置5とは別に定電圧レギュレータを備えて、中央演算装置5が定電圧レギュレータを制御し、照度センサー22に給電するようにしてもよい。
【0042】
図7に、アンテナ2の斜視図を示す。アンテナ2は、図3に示した実施例のアンテナ2と同様のものであるが、紫外光源23をアンテナ2の基部付近に配置している。紫外光源23は、軸方向がアンテナ2の軸方向とほぼ同じであり、アンテナ2の周方向に間隔を置いて複数個配置されている。本実施例では、アンテナ2の下端部に4個配置している。このように、アンテナ2の下部に複数個の紫外光源23を配置したので、アンテナ2全体に紫外光を照射できる。
【0043】
このように構成した本実施例のアンテナ2の動作を、図8に示すフローチャートを用いて説明する。図8は、紫外光照射のオンオフを制御する際のフローチャートである。照度センサー22が予め定めた照度以上の照度を検出した(ステップS810)ら、中央演算装置5は、何も実行せずに継続的に照度センサー22を監視する。夜間や曇り空などで照度が予め定めた値に満たない場合には、周囲に紫外光が少ないものとして、中央演算装置5は紫外光源23に給電する(ステップS820)。紫外光源23は、アンテナ2全体に紫外光を照射する。紫外光源23が紫外光を照射中も、中央演算装置5は照度センサー22を監視し続ける(ステップS830)。照度センサー22が検出した照度が予め定めた照度以上になったら、紫外光源23への給電を止める(ステップS840)。
【0044】
上記アンテナ2の動作における光触媒である酸化チタンの作用は、以下のとおりである。酸化チタンは、バンドギャップエネルギー以上の光を吸収すると、荷電子帯の電子が伝導帯に励起され、荷電子帯に正孔が発生する。発生した正孔は強酸化力を有しているので、水中にある水酸化物イオン(OH)から電子を引き抜く。電子を奪われた水酸化物イオンは、不安定な水酸化ラジカル(OH)になる。変化した水酸化ラジカルも強酸化力を有しているので、有機物から電子を奪い安定になろうとする。その結果、電子を奪われた有機物は化学結合が切れて、最終的に二酸化炭素や水となって大気中に発散する。このように、酸化チタンを含む層をアンテナ2の表面層に形成したので、アンテナ2の汚れを防止できる。
【0045】
本実施例によれば、アンテナ2表面が自然光に含まれる紫外光と、自然光が少ない場合には紫外光源23からの紫外光とで、常時照射されるので、アンテナ2の外側部材17表面に形成した被覆膜中の酸化チタンの光触媒効果が持続し、アンテナ2表面上の汚れを防止できる。ここで、酸化チタン自体は触媒なので反応を促進させるだけで、消費されない。したがって、半永久的アンテナ表面の汚れを防止でき、メンテナンス周期を従来よりも伸ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係る無線送受信装置の一実施例の斜視図。
【図2】図1に示した無線送受信装置のブロック図。
【図3】図1に示した無線送受信装置が有するアンテナ装置の図であり、(a)は縦断面図、(b)はその一部分の斜視図、(c)は他の部分の斜視図。
【図4】被覆膜を説明する図であり、横断面図。
【図5】図1に示した無線送受信装置が有する熱発生装置の動作フローチャート。
【図6】本発明に係る無線送受信装置の他の実施例のブロック図。
【図7】図6に示した無線送受信装置が有するアンテナ装置の斜視図。
【図8】図7に示したアンテナ装置の動作フローチャート。
【符号の説明】
【0047】
1…無線送受信装置筐体、2…アンテナ(装置)、3…物理値計測用センサーコネクタ、4…環境計測用センサーコネクタ、5…中央演算装置、6…物理値計測用センサー、7…降雪センサー、8…降雨センサー、9…無線送受信モジュール、10…アンテナ素子、11…水分センサー、12…熱発生装置、13…ファン、14…温風流路、15…撥水性物質、16…汚性物質、17…外側部材、18…被覆膜、19…断熱材料、20…マイクロヒーター、21…信号ライン、22…照度センサー、23…外光源、30…無線送受信装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の地点間を無線で送信する無線通信に用いる無線送受信装置において、
前記無線送受信装置は、他の無線送受信装置との間の通信を可能にするアンテナ装置と、このアンテナ装置に付着する水分を検出する水分検出センサーと、アンテナ装置に降る雪および雨を検出する降雪センサーおよび降雨センサーと、アンテナ装置の内部に配置されアンテナ装置を加熱する熱発生手段と、前記水分検出センサーと、降雨センサーと、降雪センサーの出力が入力される中央演算装置とを有しており、前記アンテナ装置は円筒状の外側部材の内部にアンテナ素子を有し、この外側部材の表面を撥水性物質と防汚性物質とからなるコーティング膜で被覆されており、前記水分検出センサーと、降雨センサーと、降雪センサーの少なくともいずれかが、水分または降雨、降雪を検出したら前記中央演算装置が前記熱発生手段に通電するように制御することを特徴とする無線送受信装置。
【請求項2】
前記中央演算装置はタイマ手段を有しており、前記降雪センサーが降雪後に降雪が止んだのを検出したら、前記中央演算装置は所定時間タイマ手段を動作させて降雪終了後も継続して前記熱発生手段を動作させることを特徴とする請求項1に記載の無線送受信装置。
【請求項3】
前記防汚性物質は少なくとも酸化チタンを含み、紫外光により反応を促進させて前記アンテナ装置周りに付着した物質を分解除去することを特徴とする請求項1に記載の無線送受信装置。
【請求項4】
前記防汚性物質を前記撥水性物質に分散担持させたことを特徴とする請求項3に記載の無縁送受信装置。
【請求項5】
前記中央演算装置に、紫外光を検出する照度センサーと、紫外光を発生する複数の紫外光源とを接続し、この複数の紫外光源でアンテナ全体を照射可能としたことを特徴とする請求項1に記載の送受信装置。
【請求項6】
前記照度センサーの出力に応じて、前記中央演算装置が前記紫外光源のオン/オフを制御することを特徴とする請求項5に記載の送受信装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかの請求項に記載の送受信装置に設けられ、前記熱発生手段が発生した熱を流通させる温風流路が内部に形成されていることを特徴とする無線アンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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