説明

無線送受信装置

【課題】実装するに際して、大きな付加面積や体積を必要とせず、しかもコストアップを招くことがなく小型化が可能な無線送受信装置を提供する。
【解決手段】送受信回路を備えた無線送受信装置であって、上記送受信回路素子を搭載するプリント配線基板が少なくとも上記送受信回路素子の基準電位を与えるグランド面および電源電位を与える電源面を持つ多層プリント配線基板であって、上記電源面と上記グランド面との間に固有の共振周波数の搬送波を有する信号を上記送受信回路素子より上記電源面電位に印加して送信動作を行い、上記共振周波数に同調した信号を上記送受信回路素子が上記電源面より検出して受信動作を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、RFID(Radio Frequency-IDentification)による無線識別技術を用いた電子機器や、通信機能を有する携帯型コンピュータ装置あるいは携帯型端末装置などの電子機器に用いられる無線送受信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特許第3223594号公報
【特許文献2】特開2001−168625号公報
【特許文献3】特開平6−334421号公報
【特許文献4】特開2005−64829号公報
【非特許文献1】Sandip Lahiri “RFID Sourcebook," IBM Press,Aug.31,2005
【0003】
近年、RFID(Radio Frequency-IDentification)による無線識別技術を用いた無線タグが、個人の証明確認や、電車等の乗り物用の乗車券、あるいは商品等の物品の物流などの幅広い分野で利用されてきている。また、携帯型のパーソナルコンピューターや携帯型の端末装置等においても、出先において、インターネット等に接続可能なように、Bluetooth (登録商標)などの無線通信機能を備えるようになってきている。
【0004】
これらのRFID(Radio Frequency-IDentification)による無線識別技術を用いた無線タグや、Bluetooth (登録商標)などの無線通信機能において利用される周波数帯域は、電波法の改正などに伴って、従来の125KHzや13.65MHzなどの比較的低い周波数帯域から、VHF帯や、889.5MHz、915MHz、950MHzなどのUHF帯、更には2.45GHzなどのマイクロ波領域にまで広がってきている。
【0005】
これらの周波数帯域のうち、UHF帯及びマイクロ波領域の周波数帯域を利用するRFIDによる無線識別技術を用いた無線タグでは、近年、無線タグの更なる高機能化のため、非特許文献1に開示されているように、アクティブ・タグやセミアクティブ・タグといったものも提案されている。これらのアクティブ・タグやセミアクティブ・タグは、オンボード電源によって送受信回路を含む各種のアクティブ素子を駆動するものであり、従来の無線タグと比較してより能動的なものとなっている。
【0006】
また、近年提唱されている所謂“ユビキタス”な情報環境の構築においては、いつでも、どこでも、誰でも、情報やサービスを利用可能なように、ホストとなる小型の送受信装置を多数配置して、様々な機能をユーザーに提供することも試みられており、無線タグだけではなく、ホスト側の無線送受信装置を、小型化することも課題となっている。
【0007】
上記ホスト側の無線送受信装置などにおいて一般に通信に用いられるアンテナ素子は、送受信に利用される周波数に共振して電波を放射する放射電極や、当該放射電極と対向する接地導体、及び放射電極の給電点に励振電流を流す給電線路などから構成されている。上述したUHF帯やマイクロ波領域などの周波数帯域で用いられるアンテナ素子としては、放射電極と接地導体の間に、高い誘電率を有するセラミックなどの材料からなる誘電体を配置した平面型のアンテナ構造が良く用いられている。この平面型のアンテナ構造を有するアンテナ素子は、自由空間中に線状のアンテナ構造を配置し、エレメント長が大きいダイポールアンテナなどと比較して、コンパクトに実装することができるという特徴を有している。
【0008】
かかる平面型のアンテナ構造の代表的なものとしては、特許文献1(特許第3223594号公報)に開示されているような、マイクロストリップアンテナ(通称、「パッチアンテナ」と呼ばれる)を挙げることができる。
【0009】
この特許文献1に係るマイクロストリップアンテナは、誘電体層を介して接地導体に対向する放射導体を備えたマイクロストリップアンテナにおいて、上記放射導体の第1の中心線上で、且つ上記放射導体の中心点に対して互いに対称となる位置に設けられた上記放射導体と上記接地導体とを短絡する2つの短絡導体と、上記放射導体に設けられ、上記第1の中心線に直交する第2の中心線を中心として互いに線対称な2つの導体剥離部と、上記放射導体の中心点に設けられた給電点とを有するように構成したものであり、接地導体側に設けた給電コネクタを介して給電することにより、アンテナとして動作するようになっている。
【0010】
また、線状のアンテナ構造の小型化に関する技術としては、例えば、特許文献2(特開2001−168625号公報)に開示されているような、所謂“チップアンテナ”が既に提案されている。
【0011】
この特許文献2に係る無線通信装置は、2.4[GHz]乃至2.5[GHz]帯の電波用アンテナと、このアンテナに接続された無線通信手段と、上記アンテナに接続され、周囲長が90[mm]乃至170[mm]のグランドパターンと、を具備するように構成したものである。
【0012】
かかるチップアンテナは、例えば、酸化バリウム、酸化アルミニウム、シリカ等からなる直方体状基体に巻きつけた導体コイルからなるアンテナであり、その断面が数mm角程度のものである。このような小型線状アンテナは、基板からの接続手段、上記基体の保持手段などアンテナそのものがコストアップする他に、付加部品によるコストアップを招くという技術的課題を有している。
【0013】
さらに、外部のアンテナの取り付けを不要とする構造としては、特許文献3(特開平6−334421号公報)に開示されているように、多層基板上のシールドボックスから露出した部分に、プリントパターンにより逆L型アンテナや平面アンテナを形成する方法や、特許文献4(特開2005−64829号公報)に開示されているように、変調回路を備えた基板の一部に、前記変調回路の送信出力端子に接続された送信用のパターンアンテナを形成した無線ユニットが提案されている。
【0014】
これらの特許文献3や特許文献4に開示された発明によると、基板を作製するための工数と部品点数でアンテナを構成することができるため、コストの低減と量産性の向上を図ることができる。
【0015】
しかしながら、上記特許文献3や特許文献4に開示された発明の場合には、プリント基板自体の面積が大きくなるため、実質的なコスト低減効果は小さく、かつ電磁波は送信用パターンの端部から放出されるため、送受信回路との干渉が問題となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ところで、この発明が解決しようとする課題は、実装する際して、大きな付加面積や体積を必要とせず、しかもコストアップを招くことがなく小型化が可能な無線送受信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、送受信回路を備えた無線送受信装置であって、上記送受信回路素子を搭載するプリント配線基板が少なくとも上記送受信回路素子の基準電位を与えるグランド面および電源電位を与える電源面を持つ多層プリント配線基板であって、上記電源面と上記グランド面との間に固有の共振周波数の搬送波を有する信号を上記送受信回路素子より上記電源面電位に印加して送信動作を行い、上記共振周波数に同調した信号を上記送受信回路素子が上記電源面より検出して受信動作を行うことを特徴とする無線送受信装置である。
【0018】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の無線送受信装置において、
上記無線送受信装置への電源供給源と上記電源面との間と、
上記電源面と上記送受信回路素子の電源入力との間に、
上記電源面の送受信する信号周波数におけるインピーダンスよりも大きなインピーダンスをもつインダクタンスもしくは高域素子手段を具備することを特徴とする無線送受信装置である。
【0019】
さらに、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の無線送受信装置において、
上記送受信回路素子の電源入力と上記グランド面との間に第1のキャパシタ素子を備え、
上記電源面から上記送受信回路素子の電源入力へのカットオフ周波数が送受信する信号周波数より低くなるよう上記インダクタもしくは高域素子手段及び上記第1のキャパシタ素子の値で制御することを特徴とする無線送受信装置である。
【0020】
又、請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の無線送受信装置において、
上記電源面の上記送受信回路素子の送受信端子が接続する点の近傍とグンランド面の間に第2のキャパシタ素子を具備することを特徴とする無線送受信装置である。
【0021】
更に、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の無線送受信装置において、
上記電源面に略方形の開口を設け、
上記電源面と隣接する部品面の上記略方形の開口上に上記送受信回路素子を実装し、
かつ上記略方形の開口の位置及び大きさによって偏波面の制御を行うことを特徴とする無線送受信装置である。
【0022】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の無線送受信装置において、
上記送受信回路素子を含む回路ブロックが複数の電位の電源で動作し、
上記複数の電源電位についてそれぞれ電源面を持ち、
上記複数の電源面と上記グランド面に固有の複数の共振周波数の搬送波を有する信号を上記送受信回路素子より上記複数の電源面電位にそれぞれ印加して送信動作を行い、
上記複数の共振周波数に同調した信号を上記送受信回路素子が上記複数の電源面より検出して受信動作を行うことを特徴とする無線送受信装置である。
【発明の効果】
【0023】
請求項1に記載の発明によれば、無線送受信装置の回路ブロックに用いられるプリント基板の電源面をグランド面に対してパッチアンテナ構造とすることで、送受信回路の他にアンテナを付加することが不要となる。また、この請求項1に記載の発明によれば、アンテナ形成のための基板の層数を増やすこともなく、またアンテナをなすプリントパターンの形状及び給電位置により、共振周波数、利得、放射パターン、インピーダンス等を変更することが容易となる。
【0024】
また、請求項2に記載の発明によれば、送受信帯域におけるインピーダンスが大きくかつ直流抵抗が十分小さい素子をパッチアンテナをなす電源面部分の電源パスの両側に配置することで、無線送受信帯域において、パッチアンテナの特性がこれと接続される電源供給回路及び送受信回路の電源系に影響されることがなく、同時に送受信信号が電源供給路に干渉し不要輻射を生じさせたり、送受信回路の動作に干渉することがなくなる。
【0025】
さらに、請求項3に記載の発明によれば、発明者による解析によれば、本発明中で用いられる送受信回路素子など、一般のディジタル信号処理に用いる能動デバイスへの電源供給は、該デバイスの電源ピン近傍でグランド面に対して十分低いインピーダンスかつ十分大きな容量のキャパシタ素子を配置している限りは、電源からの電源供給路は理想的には直流供給路でよいことが示されている。すなわち、この発明によれば、高周波成分を含む送受信回路素子の電源系の過渡電流を送受信回路近傍から十分に供給し、動作不安定や不要輻射を防止すると同時に、パッチアンテナをなす電源面を含む電源供給路が直流供給路として働き、送受信信号との干渉等の問題が生じない。
【0026】
又、請求項4に記載の発明によれば、パッチアンテナの給電点の近傍にグランドとの間に配置したキャパシタが高周波的には短絡線として働くため、小型化に適する逆Fアンテナ構造と透過になる。共振周波数においては、短絡線とパッチアンテナとなる電源面の端部に大きな電流が流れ、逆Fアンテナの入力インピーダンスが高くなる。コンデンサを給電点に近付けると共振周波数が低くなり、共振抵抗が小さくなり、帯域幅が狭くなる。同時に電源供給路としての電源面にとっては、大きなキャパシタが追加されるため電位が安定する効果がある。
【0027】
更に、請求項5に記載の発明によれば、パッチアンテナの偏波面の制御を行うための開口部に送受信回路素子を配置することで、電源面と送受信回路素子内部との容量結合による干渉を排除し、動作を安定化する効果がある。
【0028】
また、請求項6に記載の発明によれば、複数の電源電位を供給する面をそれぞれ異なる周波数に同調させることで、複数の周波数帯域の送受信に対応させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下に、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0030】
[第1実施の形態]
図1は、この発明の実施の形態1に係る無線送受信装置を示す概略構成図である。
【0031】
この無線送受信装置1は、エポキシ樹脂等からなる絶縁性基板(図示を省略)の表面及び裏面、あるいは複数枚積層される絶縁性基板の表面や裏面等に、銅やアルミなどの導電性材料によってプリント配線回路が形成されたプリント基板2を備えている。このプリント基板2の裏面には、銅やアルミなどの導電性材料を全面又は所定の形状に被覆したグランド面(接地面)3と、その表面には、銅やアルミなどの導電性材料を全面に被覆した電源面4を有している。
【0032】
また、上記プリント基板2の電源面4とグランド面3との間には、電源面4に貫通した貫通孔5を介して電源回路6によって所定の直流電圧が印加されている。さらに、上記プリント基板2の電源面4上には、発振回路や増幅器、あるいは変調回路等からなる無線送受信装置1の送受信回路素子7が実装されており、当該送受信回路素子7には、プリント基板2の電源面4に接続された電源端子8によって、所定の直流電圧が印加されているとともに、プリント基板2のグランド3に貫通孔9を介して接続された接地端子10によって接地されている。さらに、上記送受信回路素子5の出力端子11は、プリント基板2の電源面4の所定の位置に接続されている。
【0033】
そして、上記プリント基板2の電源面4には、送受信回路素子5の出力端子11から所定の周波数の出力波形が印加され、そのまま電波を放射するアンテナとしての機能を果たしている。
【0034】
上記無線送受信装置1の送受信回路素子7は、電源面4とグランド面3との間に、例えば、900MHzや2.5GHz等の周波数帯域における固有の共振周波数の搬送波を有する信号を、出力端子11によって電源面4に印加することによって送信動作を行うか、上記共振周波数に同調した信号を電源面4より電源端子8を介して検出して、当該電源端子8から検出された受信信号を検波して受信動作を行うように構成したものである。
【0035】
基準電位を与える導体板によって構成される電源面4は、理想的には無限の広がりが望まれるが、現実的には送受信する電波の波長の1/4波長程度の空間的な広がりを有していれば良い。この電源面4が有限の面積を有することによる主な影響は、放射パターンの歪みであり、本発明者の解析によれば、基準電位を与える導体板4の端部にパッチより強い電界集中がみられ、むしろ放射の主因は、パッチ電極ではなく、グランド面3からなる接地電極側となることがわかっている。
【0036】
このように、上記無線送受信装置1では、図1に示すように、回路ブロックに用いられるプリント基板の電源面4をグランド面3に対してパッチアンテナ構造とすることで、送受信回路7の他にアンテナを別途付加することが不要となる。また、この無線送受信装置1では、プリント基板2の電源面4がそのままパッチアンテナとして機能することで、アンテナ形成のための基板の層数を増やすこともなく、またアンテナをなすプリントパターンの形状及び給電位置により、共振周波数、利得、放射パターン、インピーダンス等を任意に変更することが容易となる。
【0037】
[第2実施の形態]
図2はこの発明の第2実施の形態を示すものであり、前記実施の形態1と同一の部分には同一の符号を付して説明すると、この第2実施の形態では、無線送受信装置への電源供給源と上記電源面との間と、上記電源面と上記送受信回路素子の電源入力との間に、上記電源面の送受信する信号周波数におけるインピーダンスよりも大きなインピーダンスをもつインダクタンスもしくは高域素子手段を具備するように構成したものである。
【0038】
以下、図2に基づいて、この発明の第2実施形態について説明する。
図2は、この発明の第2実施形態に係る無線送受信装置を示す概略構成図である。
【0039】
この無線送受信装置1は、グランド面3及び電源面4を持ち、送受信回路素子7は電源面4とグランド面3との間に固有の共振周波数の搬送波を有する信号を出力ピン11より電源面4に印加して送信動作を行うか、上記共振周波数に同調した信号を電源面4より検出して受信動作を行うように構成されている。
【0040】
この第2実施形態では、図2に示すように、無線送受信装置1への電源供給源及び供給路と電源面4との間、及び電源面4と送受信回路素子7の電源入力との間に、送受信する信号周波数における電源面4のインピーダンスよりも大きなインピーダンスを持つインダクタ21もしくは高域阻止手段(ローパスフィルター回路等)22、23を設けるように構成したものである。
【0041】
上記高域阻止手段22、23として、例えば、インダクタを使用する場合、送受信帯域におけるインピーダンスの大きさが送受信信号の結合を切るには十分に大きく、かつ直流抵抗が十分小さいものを用いることが望ましい。
【0042】
この第2実施形態によれば、送受信帯域におけるインピーダンスが大きくかつ直流抵抗が十分小さい素子21、22、23を、パッチアンテナをなす電源面部分の電源パスの両側に配置することで、無線送受信帯域において、パッチアンテナの特性がこれと接続される電源供給回路及び送受信回路の電源系に影響されることがなく、同時に送受信信号が電源供給路6に干渉して不要輻射を生じさせたり、送受信回路の動作に干渉することがなくなる。
【0043】
その他の構成及び作用は、前記第1実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0044】
[第3実施の形態]
図3はこの発明の第3実施の形態を示すものであり、前記第1実施形態と同一の部分には同一の符号を付して説明すると、この第3実施形態では、上記送受信回路素子の電源入力と上記グランド面との間に第1のキャパシタ素子を備え、上記電源面から上記送受信回路素子の電源入力へのカットオフ周波数が送受信する信号周波数より低くなるよう上記インダクタもしくは高域素子手段及び上記第1のキャパシタ素子の値で制御するように構成したものである。
【0045】
以下、図3に基づいて、この発明の第3実施形態について説明する。
図3は、この発明の第3実施形態に係る無線送受信装置を示す概略構成図である。
【0046】
この無線送受信装置1は、図3に示すように、グランド面3及び電源面4を持ち、送受信回路素子7は電源面とグランド面との間に固有の共振周波数の搬送波を有する信号を出力ピン11より電源面4に印加して送信動作を行うか、上記共振周波数に同調した信号を電源面より検出して受信動作を行うように構成されている。
【0047】
この第3実施形態では、図3に示すように、無線送受信装置1への電源供給源及び供給路と電源面4との間には、送受信する信号周波数における電源面4のインピーダンスよりも大きなインピーダンスを持つインダクタ31もしくは高域阻止手段32を有し、また電源面4と送受信回路素子7の電源入力端子との間にインダクタンス33、送受信回路素子7の電源入力とグランド面3との間にキャパシタ素子34を備え、電源面4から送受信回路素子7の電源入力へのカットオフ周波数が送受信する信号周波数より低くなるように、インダクタ33及びキャパシタ素子34の値を制御できるようにしたものである。
【0048】
この第3実施形態によれば、発明者による解析によれば、本発明中で用いられる送受信回路素子7など、一般のディジタル信号処理に用いる能動デバイスへの電源供給は、該デバイスの電源ピン8近傍でグランド面3に対して十分低いインピーダンスかつ十分大きな容量のキャパシタ素子34を配置している限りは、電源6からの電源供給路は理想的には直流供給路でよいことが示されている。すなわち、この発明によれば、高周波成分を含む送受信回路素子7の電源系の過渡電流を送受信回路7近傍から十分に供給し、動作不安定や不要輻射を防止すると同時に、パッチアンテナをなす電源面4を含む電源供給路が直流供給路として働き、送受信信号との干渉等の問題が生じないという作用・効果を奏するものである。
【0049】
その他の構成及び作用は、前記第1実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0050】
[第4実施の形態]
図4はこの発明の第4実施の形態を示すものであり、前記実施の形態1と同一の部分には同一の符号を付して説明すると、この第4実施形態では、上記電源面の上記送受信回路素子の送受信端子が接続する点の近傍とグンランド面の間に第2のキャパシタ素子を具備するように構成したものである。
【0051】
以下、図4に基づいて、この発明の第4実施形態について説明する。
図4は、この発明の第4実施形態に係る無線送受信装置を示す概略構成図である。
【0052】
この無線送受信装置1は、グランド面3及び電源面4を持ち、送受信回路素子7は電源面4とグランド面3との間に固有の共振周波数の搬送波を有する信号を出力ピン11より電源面4に印加して送信動作を行うか、上記共振周波数に同調した信号を電源面4より検出して受信動作を行うように構成されている。
【0053】
この第4実施形態では、図4に示すように、無線送受信装置1への電源供給源及び供給路と電源面4との間には、送受信する信号周波数における電源面4のインピーダンスよりも大きなインピーダンスを持つインダクタ41もしくは高域阻止手段42を有し、また電源面4と送受信回路素子7の電源入力との間にインダクタ43、送受信回路素子7の電源入力端子8とグランド面3との間にキャパシタ素子44を備え、電源面4から送受信回路素子7の送受信端子8、11が接続する点の近傍とグランド面3との間にキャパシタ素子45を配置し、逆Fアンテナを構成したものである。
【0054】
そして、この第4実施形態によれば、パッチアンテナの給電点の近傍にグランドとの間に配置したキャパシタ45が高周波的には短絡線として働くため、小型化に適する逆Fアンテナ構造と等価になる。共振周波数においては、短絡線とパッチアンテナとなる電源面の端部に大きな電流が流れ、逆Fアンテナの入力インピーダンスが高くなる。コンデンサ45を給電点に近付けると共振周波数が低くなり、共振抵抗が小さくなり、帯域幅が狭くなる。同時に電源供給路としての電源面4にとっては、大きなキャパシタ45が追加されるため電位が安定する効果がある。
【0055】
その他の構成及び作用は、前記第1実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0056】
[第5実施の形態]
図5はこの発明の第5実施の形態を示すものであり、前記実施の形態1と同一の部分には同一の符号を付して説明すると、この第5実施形態では、上記電源面に略方形の開口を設け、上記電源面と隣接する部品面の上記略方形の開口上に上記送受信回路素子を実装し、かつ上記略方形の開口の位置及び大きさによって偏波面の制御を行うように構成したものである。
【0057】
以下、図5に基づいて、この発明の第5実施形態について説明する。
図5は、この発明の第4実施形態に係る無線送受信装置を示す概略構成図である。
【0058】
この無線送受信装置1は、上記第1〜第4実施形態と同様の構造であって、電源面4はグランド面3との間に誘電体層51を、送受信回路7が実装される部品面52との間に誘電体層53がはさまれ、送受信回路7は、部品面52の上記略方形(平面四角形)状の開口54上に実装し、部品面52上のプリント配線55で電源入力端子56と電源面4を、プリント配線57で送受信回路7の出力端子58と電源面4との送受信給電位置とを接続するように構成したものである。
【0059】
この第5実施形態によれば、パッチアンテナの偏波面の制御を行うための開口部54の内部に送受信回路素子7を配置することで、電源面4と送受信回路素子7内部との容量結合による干渉を排除し、動作を安定化する効果がある。
【0060】
その他の構成及び作用は、前記第1実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0061】
[第6実施の形態]
図6はこの発明の第6実施の形態を示すものであり、前記実施の形態1と同一の部分には同一の符号を付して説明すると、この第6実施形態では、上記送受信回路素子を含む回路ブロックが複数の電位の電源で動作し、上記複数の電源電位についてそれぞれ電源面を持ち、上記複数の電源面と上記グランド面に固有の複数の共振周波数の搬送波を有する信号を上記送受信回路素子より上記複数の電源面電位にそれぞれ印加して送信動作を行い、上記複数の共振周波数に同調した信号を上記送受信回路素子が上記複数の電源面より検出して受信動作を行うように構成したものである。
【0062】
以下、図6に基づいて、この発明の第6実施形態について説明する。
図6は、この発明の第6実施形態に係る無線送受信装置を示す概略構成図である。
【0063】
この無線送受信装置1は、上記第1〜第5実施形態と同様の構造であって、第1の電源面61及び第2の電源面62はグランド面3と間にそれぞれ誘電体層63、64を挟んで構成され、送受信回路7が実装される第1の部品面65は、第1の電源面61との間に誘電体層66を介して構成されるものである。
【0064】
また、第2の部品面67は、第2の電源面62との間に誘電体層68を介して構成され、異なる周波数の送受信回路素子などの任意の回路素子69を実装できるように構成したものである。
【0065】
この第6実施形態によれば、複数の電源電位を供給する電源面61、62をそれぞれ異なる周波数に同調させることで、複数の周波数帯域の送受信に対応させることが可能となる。
【0066】
その他の構成及び作用は、前記第1実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0067】
実施例
次に、本発明の実施例について説明する。第1実施形態で説明した構造による無線送受信装置を以下のパラメータで構成し、その特性の解析を行った。
【0068】
17.2mm角の正方形電源面4を30mm角の正方形グランド面3に対してパッチアンテナとして構成した。グランド面3との電源面4間の誘電体(FR4)厚みは1mmで、中央からやや偏心した位置から給電した。
【0069】
図7は、上記実施例の構造による無線送受信装置1で送信を行うときの、送信信号のリターンロスを示している。約2.7GHzに共振点をみることができる。図8はこの共振周波数における放射パターンを示している。放射強度は、グランド面3をゼロとしたときの仰角および水平角に依存する、パッチアンテナとして典型的な特性を示している。
【0070】
このように、従来、数GHzの短距離の無線タグを駆動する装置は、一般には基板の外にダイポールアンテナ等を接続しており、またプリント基板上に例えば平板アンテナ構造を実現する場合にも、ドライバを含む部品を搭載するスペースを確保する必要があった。
【0071】
これに対して、本発明によれば、外部アンテナを付加する必要がなく、また同じ基板上にアンテナ面積を確保する必要もなく、平面アンテナ構造を実現することができる。このため、外部アンテナや基板付加領域分の実装面積・体積の増加がなく、しかもコストアップの生じない、むしろ外部アンテナ分のコストを削減することが可能となる。
【0072】
同時にこの構造は、回路からの電源系を介した外部への不要電磁波を低減することが可能であり、電磁波的には通信アンテナとなるため、これまで回路系からの不要放射を低減するために必要であったシールド部材等が不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】図1はこの発明の第1実施形態に係る無線送受信装置を示す概略図である。
【図2】図2はこの発明の第2実施形態に係る無線送受信装置を示す概略図である。
【図3】図3はこの発明の第3実施形態に係る無線送受信装置を示す概略図である。
【図4】図4はこの発明の第4実施形態に係る無線送受信装置を示す概略図である。
【図5】図5はこの発明の第5実施形態に係る無線送受信装置を示す概略図である。
【図6】図6はこの発明の第6実施形態に係る無線送受信装置を示す概略図である。
【図7】図7はこの発明の第1実施形態に係る無線送受信装置の特性を示すグラフである。
【図8】図8はこの発明の第1実施形態に係る無線送受信装置の特性を示すグラフである。
【符号の説明】
【0074】
1:無線送受信装置、2:プリント基板、3:グランド面(接地面)、4:電源面、5:貫通孔、6:電源回路、7:送受信回路素子、8:電源端子、9:貫通孔、10:接地端子、11:出力端子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送受信回路を備えた無線送受信装置であって、
上記送受信回路素子を搭載するプリント配線基板が少なくとも上記送受信回路素子の基準電位を与えるグランド面および電源電位を与える電源面を持つ多層プリント配線基板であって、上記電源面と上記グランド面との間に固有の共振周波数の搬送波を有する信号を上記送受信回路素子より上記電源面電位に印加して送信動作を行い、上記共振周波数に同調した信号を上記送受信回路素子が上記電源面より検出して受信動作を行うことを特徴とする無線送受信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の無線送受信装置において、
上記無線送受信装置への電源供給源と上記電源面との間と、
上記電源面と上記送受信回路素子の電源入力との間に、
上記電源面の送受信する信号周波数におけるインピーダンスよりも大きなインピーダンスをもつインダクタンスもしくは高域素子手段を具備することを特徴とする無線送受信装置。
【請求項3】
請求項2に記載の無線送受信装置において、
上記送受信回路素子の電源入力と上記グランド面との間に第1のキャパシタ素子を備え、
上記電源面から上記送受信回路素子の電源入力へのカットオフ周波数が送受信する信号周波数より低くなるよう上記インダクタもしくは高域素子手段及び上記第1のキャパシタ素子の値で制御することを特徴とする無線送受信装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の無線送受信装置において、
上記電源面の上記送受信回路素子の送受信端子が接続する点の近傍とグンランド面の間に第2のキャパシタ素子を具備することを特徴とする無線送受信装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の無線送受信装置において、
上記電源面に略方形の開口を設け、
上記電源面と隣接する部品面の上記略方形の開口上に上記送受信回路素子を実装し、
かつ上記略方形の開口の位置及び大きさによって偏波面の制御を行うことを特徴とする無線送受信装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の無線送受信装置において、
上記送受信回路素子を含む回路ブロックが複数の電位の電源で動作し、
上記複数の電源電位についてそれぞれ電源面を持ち、
上記複数の電源面と上記グランド面に固有の複数の共振周波数の搬送波を有する信号を上記送受信回路素子より上記複数の電源面電位にそれぞれ印加して送信動作を行い、
上記複数の共振周波数に同調した信号を上記送受信回路素子が上記複数の電源面より検出して受信動作を行うことを特徴とする無線送受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−237822(P2009−237822A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−81921(P2008−81921)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】