説明

無線通信システム、無線通信装置および無線通信方法

【課題】アクセス信号を送信した移動局を特定し、該移動局から送信されたアクセス信号の誤検出の抑制を図る。
【解決手段】移動局はアクセス信号を送信する。無線基地局内の検出判定部は、前回受信したアクセス信号の受信タイミングと、処理基準タイミングとの差分である第1の差分と、今回受信した前記アクセス信号の受信タイミングと、処理基準タイミングとの差分である第2の差分とを求めて比較する。比較結果に応じて、移動局を特定し、特定した移動局から送信されたアクセス信号に対し、閾値レベルを超えるアクセス信号の連続受信回数に応じて、アクセス信号の検出有りと判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信を行う無線通信システム、無線通信装置および無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機の高速データ通信仕様の1つであるLTE(Long Term Evolution)の開発が進められている。LTEの無線通信システムにおいて、移動局と無線基地局との接続を行う際には、ランダムアクセスと呼ばれる無線リンクを確立するための制御が実施される。
【0003】
無線リンクの確立時には、初めに、移動局から無線基地局へアクセス信号が送信される。LTEのランダムアクセスでは、該アクセス信号はランダムアクセス信号(RACH Preamble:Random Access Channel Preamble)と呼ばれている。
【0004】
ランダムアクセス信号は、無線基地局で受信され、無線基地局によって、ランダムアクセス信号と移動局とが結び付けられることで、移動局と無線基地局との間で通信が開始される。
【0005】
従来技術として、ランダムアクセス用チャネルのパラメータの自動設定を行う技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−55356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来では、移動局と無線基地局を取り巻く通信環境のマルチパスまたはノイズ等の影響によって、無線基地局は、ランダムアクセス信号を誤検出してしまうおそれがあるといった問題があった。
【0008】
ランダムアクセス信号の誤検出とは、ランダムアクセス信号の送信が、無線基地局で認識した移動局側で行われていないのに、ランダムアクセス信号を誤って検出することである。
【0009】
無線基地局は、ランダムアクセス信号を検出すると、通信対象の移動局との通信を行うための無線リソースを確保する。しかし、ランダムアクセス信号を誤検出した場合、実際には、どの移動局からもランダムアクセス信号が送信されていないにもかかわらず、不要な無線リソースを確保してしまうことになる。すると、他の移動局のために無線リソースを使用できなくなるので、スループット特性を低下させてしまう。
【0010】
近年の高速無線通信システムにおいては、さらなる伝送品質の向上が求められている。このため、無線リンクを確立する際のアクセス信号を送信した移動局を適切に認識して移動局を特定し、該移動局から送信されたアクセス信号をいかに精度よく検出するかの技術が要望されている。
【0011】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、アクセス信号を送信した移動局を特定し、該移動局から送信されたアクセス信号の誤検出の抑制を図った無線通信システムを提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明の他の目的は、アクセス信号を送信した移動局を特定し、該移動局から送信されたアクセス信号の誤検出の抑制を図った無線通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、無線通信システムが提供される。無線通信システムは、無線リンクを確立するためのアクセス信号を送信する移動局と、前記アクセス信号の受信タイミングを格納する格納部と、前記アクセス信号の検出判定を行う検出判定部と、を含む無線通信装置を有する無線基地局とを備え、前記検出判定部は、前回受信した前記アクセス信号の受信タイミングと、処理基準タイミングとの差分である第1の差分と、今回受信した前記アクセス信号の受信タイミングと、前記処理基準タイミングとの差分である第2の差分とを求めて比較し、比較結果に応じて、前記移動局を特定し、特定した前記移動局から送信された前記アクセス信号に対し、閾値レベルを超える前記アクセス信号の連続受信回数に応じて、前記アクセス信号の検出有りと判定する。
【発明の効果】
【0014】
アクセス信号を送信した移動局を特定し、該移動局から送信されたアクセス信号の誤検出の抑制を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】無線通信システムの構成例を示す図である。
【図2】ネットワーク構成例を示す図である。
【図3】ランダムアクセスのシーケンスを示す図である。
【図4】ランダムアクセス信号のパターンマッチングを説明するための図である。
【図5】遅延プロファイルを示す図である。
【図6】ランダムアクセス信号受信処理部の構成例を示す図である。
【図7】ランダムアクセス信号処理部の構成例を示す図である。
【図8】閾値テーブルを示す図である。
【図9】検出閾値と完了率との関係を示す図である。
【図10】ランダムアクセス信号処理部の動作フローを示す図である。
【図11】検出閾値の更新動作フローを示す図である。
【図12】ランダムアクセス信号処理部の構成例を示す図である。
【図13】閾値テーブルを示す図である。
【図14】検出閾値と測定レベルとの関係を示す図である。
【図15】検出閾値の更新動作フローを示す図である。
【図16】パワーランピングを説明するための図である。
【図17】ランダムアクセス信号処理部の構成例を示す図である。
【図18】ランダムアクセス信号処理部の動作フローを示す図である。
【図19】連続受信回数閾値の調整フローを示す図である。
【図20】ランダムアクセス信号処理部の構成例を示す図である。
【図21】閾値テーブルを示す図である。
【図22】連続受信回数閾値と測定レベルとの関係を示す図である。
【図23】連続受信回数閾値の更新動作フローを示す図である。
【図24】ランダムアクセス信号処理部の構成例を示す図である。
【図25】ランダムアクセス信号処理部の動作フローを示す図である。
【図26】ランダムアクセス信号処理部の構成例を示す図である。
【図27】ランダムアクセス信号処理部の構成例を示す図である。
【図28】ランダムアクセス信号処理部の動作フローを示す図である。
【図29】ランダムアクセス信号処理部の構成例を示す図である。
【図30】検出閾値を示す図である。
【図31】ランダムアクセス信号処理部の動作フローを示す図である。
【図32】ランダムアクセス信号処理部の構成例を示す図である。
【図33】ランダムアクセス信号処理部の動作フローを示す図である。
【図34】ランダムアクセス信号処理部の構成例を示す図である。
【図35】ランダムアクセス信号処理部の動作フローを示す図である。
【図36】無線基地局内部のベースバンド信号処理部のハードウェアのブロック構成例を示す図である。
【図37】移動局のハードウェアのブロック構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は無線通信システムの構成例を示す図である。無線通信システム1は、移動局Msおよび無線基地局Bsを備える。無線基地局Bsは、無線通信装置1−1を有し、無線通信装置1−1は、格納部1−1aおよび検出判定部1−1bを含む。
【0017】
移動局Msは、無線リンクを確立するためのアクセス信号を無線基地局Bsへ送信する。格納部1−1aは、アクセス信号の受信タイミングを格納する。検出判定部1−1bは、アクセス信号の検出判定を行う。
【0018】
ここで、検出判定部1−1bは、前回受信したアクセス信号の受信タイミングと、無線通信装置1−1内部の処理基準タイミングとの差分である第1の差分と、今回受信したアクセス信号の受信タイミングと、処理基準タイミングとの差分である第2の差分とを求めて比較する。比較結果が一致とみなせる場合は、同一の移動局Msからアクセス信号が送信されたものと認識して、移動局Msを特定する。
【0019】
そして、特定した移動局Msから送信されたアクセス信号に対し、閾値レベルを超えるアクセス信号の連続受信回数が連続受信回数閾値以上ある場合は、アクセス信号の検出有りと判定する。
【0020】
このように、無線通信システム1では、アクセス信号の受信タイミングと、処理基準タイミングとの差分情報から、アクセス信号を送信した移動局Msを特定する。そして、特定した移動局Msから、閾値レベルを超えるアクセス信号を、設定した回数以上連続して受信した場合は、アクセス信号の検出有りと判定する構成とした。
【0021】
これにより、アクセス信号を送信した移動局Msを適切に特定することができ、移動局Msから送信されたアクセス信号の誤検出の抑制を図ることが可能になる。また、アクセス信号が精度よく検出されることになるので、無線リソースを有効活用でき、システム全体のスループット特性の向上が図られる。なお、図1の構成および動作については、図24および図25において後述する。
【0022】
次に無線通信システム1が適用されるLTEのネットワーク構成例について説明する。図2はネットワーク構成例を示す図である。通信ネットワーク100は、無線エリア101、102およびコアネットワーク103を含む。
【0023】
無線エリア101内には、無線基地局Bs1および移動局Ms1〜Ms4が配置され、無線基地局Bs1は移動局Ms1〜Ms4と通信を行う。また、無線エリア102内には、無線基地局Bs2および移動局Ms5〜Ms8が配置され、無線基地局Bs2は移動局Ms5〜Ms8と通信を行う。
【0024】
コアネットワーク103と無線基地局Bs1、Bs2は、S1インタフェースと呼ばれる有線伝送路に接続される。また、無線基地局Bs1、Bs2間は、X2インタフェースと呼ばれる有線伝送路に接続される。
【0025】
次にLTEのランダムアクセスのシーケンスについて説明する。図3はランダムアクセスのシーケンスを示す図である。なお、以降ではアクセス信号をランダムアクセス信号と呼ぶ。
【0026】
〔S1〕移動局Ms0は、無線基地局Bs0にRACHメッセージ#1を送信するRACHメッセージ#1は、ランダムアクセス信号(RACH preamble)に該当する。
〔S2〕無線基地局Bs0は、ランダムアクセス信号を検出すると、RACHメッセージ#2を移動局Ms0へ返信する。RACHメッセージ#2は、レスポンス信号(RACH response)に該当する。
【0027】
〔S3〕移動局Ms0は、レスポンス信号を受信すると、RACHメッセージ#3を無線基地局Bs0へ送信する。RACHメッセージ#3には、例えば、ユーザIDや上位レイヤのアプリケーション情報などといった通信に必要な情報が含まれている。
【0028】
〔S4〕無線基地局Bs0は、RACHメッセージ#3を受信すると、RACHメッセージ#4を返信する。以降、所定のランダムアクセス処理が行われる。
ここで、ランダムアクセス信号の信号パターンについて説明する。LTEでは、通常、ランダムアクセス信号としてZadoff−Chu系列が使用される。Zadoff−Chu系列は、1つの系列をサイクリックシフトさせて生成される信号パターンである。Zadoff−Chu系列は、サイクリックした系列同士の相互相関が小さくなる特徴を有するため、1つの系列から複数のランダムアクセス信号を生成することができる。
【0029】
次にランダムアクセス信号のパターンマッチングについて説明する。LTEの無線基地局Bs0は、ランダムアクセス信号の一式(ランダムアクセス信号グループ)を事前に移動局Ms0へ通知している。
【0030】
無線基地局Bs0は、受信が想定されるランダムアクセス信号と、実際に受信したランダムアクセス信号との相関計算によるパターンマッチングを行ってランダムアクセス信号を特定する。
【0031】
図4はランダムアクセス信号のパターンマッチングを説明するための図である。
〔S11〕無線基地局Bs0は、ランダムアクセス信号グループを移動局Ms0へ通知する。
【0032】
〔S12〕移動局Ms0は、ランダムアクセス信号グループから、任意のランダムアクセス信号を選択して、選択したランダムアクセス信号を無線基地局Bs0へ送信する。
〔S13〕無線基地局Bs0は、受信が想定されるランダムアクセス信号(ランダムアクセス信号レプリカ)と、実際に受信したランダムアクセス信号の間で相関計算を行って相関値を求める。
【0033】
〔S14〕無線基地局Bs0は、相関値の大小により(相関性が高ければ相関値は大きく、相関性が低ければ相関値は小さい)、移動局Ms0が送信したランダムアクセス信号を認識する。
【0034】
次に相関計算によって得られる遅延プロファイルについて説明する。図5は遅延プロファイルを示す図である。縦軸は受信レベル(または相関値)、横軸は時間である。
無線基地局Bs0では、ディジタル処理の相関計算が行われるため、離散的にサンプリングされた遅延プロファイルPrが生成されることになる。図中の時間tsは、ディジタルサンプリング時間(サンプリングの分解能)である。
【0035】
遅延プロファイルPrの情報から、想定しているランダムアクセス信号を移動局Ms0が送信したかどうかを認識することができる。さらに、該ランダムアクセス信号を送信している場合は、移動局Ms0と無線基地局Bs0との間の伝搬遅延時間を測定することができる。
【0036】
想定しているランダムアクセス信号が移動局Ms0から送信されたかどうかについては、通常は、あらかじめ用意した閾値(以下、検出閾値とも呼ぶ)のレベルをランダムアクセス信号の受信レベルが超えた場合に送信があったと判断する。
【0037】
また、伝搬遅延時間については、無線基地局Bs0内部の処理基準タイミングとの差分(遅延時間)を測定することで求められる。例えば、図中の時間trは、無線基地局Bs0における処理基準タイミングであり、無線基地局Bs0は、移動局Ms0から送信された信号を時間trにおいて受信したいものとする。
【0038】
さらに、時間t1は、移動局Ms0から送信されたランダムアクセス信号を受信したときの時間である。この場合、時間trと時間t1との差分を測定することで(一般的には、遅延プロファイルPrの中の一番大きい受信レベルとの差分を測定する)、伝搬遅延時間が求められる。
【0039】
また、無線基地局Bs0は、伝搬遅延時間の情報は、TA(Timing Advance)コマンドとして、図3で示したレスポンス信号(RACHメッセージ#2)に含ませて、移動局Ms0へフィードバック通知する。
【0040】
移動局Ms0は、受信したレスポンス信号からTAコマンドを抽出し、TAコマンドの内容にもとづいて、無線基地局Bs0へ送信すべき信号の送信タイミングを認識し、タイミング調整を行う。この例では、無線基地局Bs0に対して、時間trで信号が到達するように、移動局Ms0は、遅延時間(=t1−tr)分早めて信号を送信することになる。
【0041】
次にランダムアクセス信号の誤検出について説明する。移動局Ms0と無線基地局Bs0を取り巻く通信環境によっては、ランダムアクセス信号の誤検出が生じる。
この場合、検出されたランダムアクセス信号が、実際に移動局Ms0から送信されたかどうかにかかわらず、ランダムアクセス信号を検出したとみなせば、無線基地局Bs0は、図3で示したようなランダムアクセス処理のシーケンスを開始しようとする。
【0042】
したがって、誤検出であっても、無線基地局Bs0は、レスポンス信号を下りリンクで送信し、さらに、移動局Ms0から送信されるRACHメッセージ#3を上りリンクで受信しようとする。
【0043】
無線基地局Bs0では、RACHメッセージ#3に割り当てられている無線リソースを使用して受信処理を行う。このとき、CRC(Cyclic Redundancy Checking)などの誤り訂正を用いて、RACHメッセージ#3を正しく受信できなかったと判定すると、RACHメッセージ#3の受信を、システムで規定された最大再送回数分再度試みる。
【0044】
ランダムアクセス信号の誤検出の場合は、RACHメッセージ#3を送信する移動局Ms0が存在しないので、RACHメッセージ#3を受信することはない。このため、RACHメッセージ#3の最大再送回数分の受信処理が実施されてしまうことになる。
【0045】
このような動作により、本来は他の移動局のために使用できるはずの無線リソースを不必要に占有してしまうことになり、誤検出が多発するような場合には、システム全体の上りリンク側のスループット特性を大きく低下させてしまうことになる。
【0046】
本技術はこのような点に鑑みてなされたものであり、ランダムアクセス信号の誤検出の抑制を図った無線通信システム、無線通信装置および無線通信方法を提供するものである。
【0047】
次に図1に示した無線基地局Bsが有する無線通信装置1−1の構成について説明する。図6はランダムアクセス信号受信部の構成例を示す図である。無線通信装置1−1は、ランダムアクセス信号受信部1a−1を備える。
【0048】
ランダムアクセス信号受信部1a−1は、RF(Radio Frequency)処理部21a、A/D変換部21b、復調処理部21−1およびランダムアクセス信号処理部10を備える。
【0049】
復調処理部21−1は、FFT(Fast Fourier Transform)部21−1a、デマッピング部21−1bおよびIDFT(Inverse Discrete Fourier Transform)部21−1cを含む。
【0050】
ランダムアクセス信号処理部10は、相関計算処理部11および検出処理部12を含む。さらに、相関計算処理部11は、相関値算出器11a、電力変換部11bおよびピーク検出器11cを含む。
【0051】
RF処理部21aは、移動局Msより送信されたランダムアクセス信号を無線周波数帯域からベースバンド周波数帯域にダウンコンバートする。A/D変換部21bは、アナログベースバンド信号をディジタルデータに変換する。ディジタルデータは、後段の復調処理部21−1およびランダムアクセス信号処理部10によってベースバンド信号処理が行われる。
【0052】
復調処理部21−1では、ディジタルデータの復調処理を行う。ここで、送信側の変調処理では、ディジタルデータはDFT(Discrete Fourier Transform)処理が行われ、その処理結果を周波数軸にマッピングするマッピング処理が行われ、さらにマッピングデータをIFFT(Inverse FFT)処理して変調処理が行われている。
【0053】
したがって、復調処理部21−1においては、逆の処理として、FFT部21−1aがディジタルデータをFFT処理し、デマッピング部21−1bがその処理結果を周波数軸からデマッピングするデマッピング処理を行う。さらに、IDFT部21−1cがデマッピングデータをIDFT処理することで、ディジタルデータが復調される。
【0054】
復調された信号(上り受信データ)は、ランダムアクセス信号処理部10に入力され、上り受信データは、相関計算処理部11によって、相関計算処理が行われる。
相関値算出器11aは、上り受信データと、あらかじめ用意してある相関検出用信号であるランダムアクセス信号レプリカとの相関計算(自己相関計算)を行う。
【0055】
電力変換部11bは、相関値算出器11aから出力された相関値の振幅を電力信号に変換する。なお、この電力信号は、図5に示した遅延プロファイルPrに該当する。ピーク検出器11cは、電力信号の中から最もレベルの大きいピーク値を検出する。
【0056】
相関計算処理部11から出力された相関計算結果(ピーク値)は、検出処理部12に入力される。検出処理部12は、相関計算結果から、ランダムアクセス信号の検出処理を行う。
【0057】
ここで、想定しているランダムアクセス信号を受信した場合、最も高い自己相関のピークが現れるため、これを見つけることでランダムアクセス信号の有無を判断している。送信される可能性のあるランダムアクセス信号が複数ある場合は、それらすべてに対して相関値算出処理を実施する。
【0058】
なお、上記の相関値算出器11aにおける相関計算の一手法としては、マッチドフィルタを適用できる。マッチドフィルタでは、受信したデータと相関検出用信号(ランダムアクセス信号レプリカ)との相関を検出する。また、電力変換部11bでは、得られた相関値を自乗することで電力信号に変換する。
【0059】
また、LTEでは、上述したようにZadoff−Chu系列がランダムアクセス信号として使用されているが、この系列の特徴として、サイクリックシフトを行った状態との相互相関が低いといった特徴を有する。すなわち、あるサイクリックシフトを施した系列と、他のサイクリックシフトを施した系列との相関性は低い。
【0060】
したがって、相関値算出器11aにおいては、受信系列の先頭を比較して一致している場合には高い相関が得られているとしてよく、その結果が、図5に示したような遅延プロファイルPrとして現れることになる。
【0061】
次に無線通信装置1−1の第1の実施の形態について説明する。図7はランダムアクセス信号処理部の構成例を示す図である。ランダムアクセス信号処理部10−1は、相関計算処理部11と検出処理部12−1を備える。検出処理部12−1は、完了率算出部12−1a、閾値決定部12−1bおよび判定部12−1cを含む。
【0062】
完了率算出部12−1aは、無線通信装置1−1がランダムアクセス信号を受信した際に、移動局Msへ送信されるレスポンス信号(RACHメッセージ#2)の送信回数と、移動局Msがレスポンス信号を受信した際に無線基地局Bsへ送信するメッセージ信号(RACHメッセージ#3)の受信成功回数とを測定する。
【0063】
そして、レスポンス信号(RACHメッセージ#2)の送信に対して移動局Msから応答されるRACHメッセージ#3の受信確率から得られる完了率を算出する。完了率は以下の式(1)で算出される。
【0064】
完了率=(RACHメッセージ#3の受信成功回数)/(RACHメッセージ#2の送信回数) ・・・(1)
閾値決定部12−1bは、後述の閾値テーブルを有しており、閾値テーブルに登録された完了率を基にして検出閾値を決定する。判定部12−1cは、閾値決定部12−1bで決定された検出閾値を使用し、ランダムアクセス信号の受信レベルが検出閾値以上であれば、ランダムアクセス信号の検出有りと判定する。
【0065】
なお、判定結果は、後段処理部へ転送される。後段処理部では、ランダムアクセス信号の検出有りの判定結果を受信した場合は、レスポンス信号を生成する。そして、レスポンス信号は、無線基地局Bs内の送信系で送信処理が行われて、移動局Msへ送信される。
【0066】
図8は閾値テーブルを示す図である。閾値テーブルT1は、完了率と検出閾値との対応関係が登録されたテーブルである。検出閾値は、閾値テーブルT1の登録内容にもとづいて一意に決定される。
【0067】
図9は検出閾値と完了率との関係を示す図である。縦軸は検出閾値、横軸は完了率である。完了率の値が小さいと誤検出の発生の可能性が高くなる。したがって、誤検出を回避するために、図8に示した閾値テーブルT1では、グラフg1に示されるように、完了率が小さくなるほど検出閾値が高くなるように値が設定されている。
【0068】
次にランダムアクセス信号処理部10−1の動作についてフローチャートを用いて説明する。図10はランダムアクセス信号処理部の動作フローを示す図である。なお、以下に示す動作は、ランダムアクセス信号のID単位で実施される(すなわち、互いに異なるランダムアクセス信号パターンのすべてに対して実施される)。
【0069】
〔S21〕相関計算処理部11は、上り受信データに対する相関計算処理を行う。
〔S22〕判定部12−1cは、可変設定した検出閾値をピークが超えるか否かを判定する。超える場合はステップS23へ行き、超えなければ終了する。なお、検出閾値は、完了率に応じて変更される。
【0070】
〔S23〕判定部12−1cは、ランダムアクセス信号の検出有りと判定する。なお、ランダムアクセス信号の検出有りと判定された場合は、レスポンス信号が無線基地局Bsから移動局Msへ送信されることになる。
【0071】
図11は検出閾値の更新動作フローを示す図である。以下に示す検出閾値更新処理は、無線通信装置1−1に対して、上位のアプリケーションなどから更新処理の停止要求があるまで継続される。
【0072】
〔S31〕閾値決定部12−1bは、上位アプリケーションなどから検出閾値の更新処理開始要求が有るか否かを判断する。更新処理開始要求があればステップS32へ行く。
〔S32〕完了率算出部12−1aは、RACHメッセージ#3の受信成功回数と、レスポンス信号(RACHメッセージ#2)の送信回数とを初期化し、カウントを開始する。
【0073】
〔S33〕閾値決定部12−1bは、閾値更新タイマを初期化してタイムカウントを開始する。
〔S34〕閾値決定部12−1bは、タイマ値が更新周期以上か否かを判断する。タイマ値が更新周期以上の場合は、ステップS35へ行く。
【0074】
〔S35〕完了率算出部12−1aは、完了率を算出する。
〔S36〕閾値決定部12−1bは、閾値テーブルT1から完了率に応じた検出閾値を選択する。
【0075】
〔S37〕完了率算出部12−1aは、RACHメッセージ#3の受信成功回数と、RACHメッセージ#2の送信回数とを初期化し、カウントを再開する。
〔S38〕閾値決定部12−1bは、閾値更新タイマのタイマ値を初期化し、タイムカウントをリスタートする。
【0076】
〔S39〕閾値決定部12−1bは、上位アプリケーションなどから更新処理停止要求が有るか否かを判断する。更新処理停止要求があれば終了し、なければステップS34へ戻る。
【0077】
以上説明したように、第1の実施の形態では、完了率にもとづいて、ランダムアクセス信号の検出閾値を可変設定する構成とした。これにより、移動局Msと無線基地局Bsとの通信環境に応じて、柔軟にかつ適切な検出閾値を設定することができるので、ランダムアクセス信号の誤検出の抑制を図ることが可能になる。
【0078】
次に第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態は、レベル測定値に応じて検出閾値を可変設定するものである。図12はランダムアクセス信号処理部の構成例を示す図である。ランダムアクセス信号処理部10−2は、相関計算処理部11および検出処理部12−2を備える。検出処理部12−2は、レベル測定部12−2a、閾値決定部12−2bおよび判定部12−2cを含む。
【0079】
レベル測定部12−2aは、上り受信データの受信レベルまたは干渉レベルを測定する。閾値決定部12−2bは、後述の閾値テーブルを有しており、閾値テーブルに登録されたレベル測定の結果を基にして検出閾値を決定する。
【0080】
判定部12−2cは、閾値決定部12−2bで決定された検出閾値を使用し、ランダムアクセス信号の受信レベルが検出閾値以上であれば、ランダムアクセス信号の検出有りと判定する。
【0081】
図13は閾値テーブルを示す図である。閾値テーブルT2は、測定レベルと検出閾値との対応関係が登録されたテーブルである。検出閾値は、閾値テーブルT2の登録内容にもとづいて一意に決定される。
【0082】
図14は検出閾値と測定レベルとの関係を示す図である。縦軸は検出閾値、横軸は測定レベルである。測定レベルによる閾値決定においては、測定レベルが設計上でターゲットにしているレベル範囲外となった場合には、誤検出が多くなる。
【0083】
したがって、誤検出を回避するために、閾値テーブルT2では、グラフg2に示すように、測定レベルが設計上でターゲットにしているレベル範囲外となった場合には、検出閾値が高くなるように値が設定されている。
【0084】
図15は検出閾値の更新動作フローを示す図である。以下に示す検出閾値更新処理は、無線通信装置1−1に対して、上位のアプリケーションなどから更新処理の停止要求があるまで継続される。
【0085】
〔S41〕閾値決定部12−2bは、上位アプリケーションなどから検出閾値の更新処理開始要求が有るか否かを判断する。更新処理開始要求があればステップS42へ行く。
〔S42〕レベル測定部12−2aは、測定レベルを初期化し、レベル測定を開始する。
【0086】
〔S43〕閾値決定部12−2bは、閾値更新タイマを初期化してタイムカウントを開始する。
〔S44〕閾値決定部12−2bは、タイマ値が更新周期以上か否かを判断する。タイマ値が更新周期以上の場合は、ステップS45へ行く。
【0087】
〔S45〕レベル測定部12−2aは、レベル測定を実施する。
〔S46〕閾値決定部12−2bは、閾値テーブルT2から測定レベルに応じた検出閾値を選択する。
【0088】
〔S47〕レベル測定部12−2aは、測定レベルを初期化し、レベル測定を再開する。
〔S48〕閾値決定部12−2bは、閾値更新タイマのタイマ値を初期化し、タイムカウントをリスタートする。
【0089】
〔S49〕閾値決定部12−2bは、上位アプリケーションなどから更新処理停止要求が有るか否かを判断する。更新処理停止要求があれば終了し、なければステップS44へ戻る。
【0090】
以上説明したように、第2の実施の形態では、測定レベル値にもとづいて、ランダムアクセス信号の検出閾値を可変設定する構成とした。これにより、移動局Msと無線基地局Bsとの通信環境に応じて、柔軟にかつ適切な検出閾値を設定することができるので、ランダムアクセス信号の誤検出の抑制を図ることが可能になる。
【0091】
次に第3の実施の形態について説明する。第3の実施の形態では、検出閾値は固定値とする。そして、ランダムアクセス信号が、検出閾値をあらかじめ設定した連続回数分超えるか否かの判断を行って、ランダムアクセス信号の検出判定を行うものである。
【0092】
詳細を説明する前に、移動局Msで行われるパワーランピングについて説明する。図16はパワーランピングを説明するための図である。縦軸は受信レベル、横軸は時間である。LTEでは、移動局Msでのランダムアクセス信号の送信時、移動局Msにおいてパワーランピング処理が実施される。
【0093】
パワーランピングとは、移動局Msからのランダムアクセス信号の送信時、それに対する無線基地局Bsからの応答がない場合に、次のランダムアクセス信号の送信タイミングにおいて、前回送信時よりも送信電力を増加して送信するという動作である。
【0094】
図中の点線波形は、無線基地局Bsがランダムアクセス信号を検出できずに、移動局Msへ送信されなかったレスポンス信号を示している。
図において、移動局Msは、レスポンス信号を一定期間内に受信しないと、ΔPだけ送信電力を増加させて、ランダムアクセス信号を送信している。また、3回目の送信で、ランダムアクセス信号の受信レベルが検出閾値を超えているので、無線基地局Bs側でランダムアクセス信号が検出されて、レスポンス信号が移動局Msへ送信されている。
【0095】
次に第3の実施の形態におけるランダムアクセス信号処理部について説明する。図17はランダムアクセス信号処理部の構成例を示す図である。ランダムアクセス信号処理部10−3は、相関計算処理部11および検出処理部12−3を備える。検出処理部12−3は、完了率算出部12−3a、連続受信回数閾値決定部12−3b、連続閾値超え回数カウンタ12−3cおよび判定部12−3dを含む。
【0096】
完了率算出部12−3aは、上述の式(1)にもとづいて、完了率を算出する。連続受信回数閾値決定部12−3bは、完了率の算出結果を基にして、現在設定されている検出閾値に対して、ランダムアクセス信号の受信レベルが何回連続して検出閾値を超えれば、ランダムアクセス信号の検出とみなすかという連続閾値超え回数の閾値(連続受信回数閾値)を決定する。
【0097】
連続閾値超え回数カウンタ12−3cは、検出閾値のレベルに対して、ランダムアクセス信号の受信レベルが連続して何回超えたかをカウントする。判定部12−3dは、連続受信回数閾値決定部12−3cで決定された連続受信回数閾値を使用し、ランダムアクセス信号の連続閾値超え回数が、連続受信回数閾値以上であればランダムアクセス信号の検出有りと判定する。
【0098】
なお、ランダムアクセス信号の連続閾値超え回数をカウントする場合は、パワーランピングによる送信周期を考慮したタイミングにおいてカウントを行う。
また、ランダムアクセス信号ID毎に、連続閾値超え回数を計測し、その値が連続受信回数閾値に達した場合に、ランダムアクセス信号ID毎にランダムアクセス信号の検出有りと判定する。もし、途中で未検出となった場合には、カウンタをリセットし、再度カウントし直す。
【0099】
次にランダムアクセス信号処理部10−3の動作についてフローチャートを用いて説明する。図18はランダムアクセス信号処理部の動作フローを示す図である。なお、以下に示す動作は、ランダムアクセス信号のID単位で実施される。
【0100】
〔S51〕相関計算処理部11は、上り受信データに対する相関計算処理を行う。
〔S52〕判定部12−3dは、ピークが検出閾値を超えたか否かを判定する。超えない場合はステップS53へ行き、超える場合はステップS54へ行く。
【0101】
〔S53〕連続閾値超え回数カウンタ12−3cは、カウント値をクリアする。動作フローは終了する。
〔S54〕判定部12−3dは、前回のランダムアクセス信号の受信タイミングで、ランダムアクセス信号を検出したか否かを判定する。前回の受信タイミングで検出していない場合はステップS55へ行き、検出している場合はステップS56へ行く。
【0102】
〔S55〕連続閾値超え回数カウンタ12−3cは、カウントを開始する。動作フローは終了する。
〔S56〕連続閾値超え回数カウンタ12−3cは、連続閾値超え回数をカウントアップする。
【0103】
〔S57〕判定部12−3dは、カウント値が連続受信回数閾値以上か否かを判定する。連続受信回数閾値以上の場合はステップS58へ行き、そうでなければ終了する。
〔S58〕判定部12−3dは、ランダムアクセス信号の検出有りと判定する。
【0104】
〔S59〕連続閾値超え回数カウンタ12−3cは、カウント値をクリアする。
図19は連続受信回数閾値の調整フローを示す図である。
〔S61〕完了率算出部12−3aは、完了率を算出する。
【0105】
〔S62〕連続受信回数閾値決定部12−3bは、完了率が目標値の範囲内にあるか否かを判定する。目標値の範囲から外れていればステップS64へ行き、目標値の範囲内であればステップS63へ行く。
【0106】
〔S63〕連続受信回数閾値決定部12−3bは、現状の連続受信回数閾値を維持する。ステップS67へ行く。
〔S64〕連続受信回数閾値決定部12−3bは、完了率が目標値範囲より高いか否かを判断する。高い場合はステップS65へ行き、高くない場合はステップS66へ行く。
【0107】
〔S65〕連続受信回数閾値決定部12−3bは、連続受信回数閾値から1減算する(元の連続受信回数閾値が1の場合はそのまま)。
〔S66〕連続受信回数閾値決定部12−3bは、連続受信回数閾値に1加算する。
【0108】
〔S67〕完了率算出部12−3aは、RACHメッセージ#3の受信成功回数と、RACHメッセージ#2の送信回数とを初期化し、カウントを再開する。
〔S68〕連続受信回数閾値決定部12−3bは、閾値更新タイマのタイマ値を初期化し、タイムカウントをリスタートする。
【0109】
上記のように、連続受信回数閾値の決定においては、目標とする完了率をある範囲(目標値±数%)で決めておき、その範囲を満足するまで受信回数を増減させる。ただし、周囲環境の変化に対応するため、定期的に完了率を確認して連続受信回数閾値の調整を実施する。
【0110】
以上説明したように、第3の実施の形態では、完了率にもとづいて、連続受信回数閾値を決定する。そして、固定レベルの検出閾値に対して、受信したランダムアクセス信号のレベルの連続閾値超え回数を計測し、連続閾値超え回数が連続受信回数閾値以上の場合に、ランダムアクセス信号の検出有りと判定する構成にした。これにより、検出精度を向上させることができ、ランダムアクセス信号の誤検出の抑制を図ることが可能になる。
【0111】
次に第4の実施の形態について説明する。第3の実施の形態では、完了率にもとづき、連続受信回数閾値を決定したが、第4の実施の形態は、測定レベル値にもとづいて、連続受信回数閾値を決定するものである。
【0112】
図20はランダムアクセス信号処理部の構成例を示す図である。ランダムアクセス信号処理部10−4は、相関計算処理部11および検出処理部12−4を備える。検出処理部12−4は、レベル測定部12−4a、連続受信回数閾値決定部12−4b、連続閾値超え回数カウンタ12−4cおよび判定部12−4dを備える。
【0113】
レベル測定部12−4aは、上り受信データの受信レベルまたは干渉レベルを測定する。連続受信回数閾値決定部12−4bは、レベル測定の結果を基にして、現在設定されている検出閾値に対して、ランダムアクセス信号の受信レベルが何回連続して検出閾値を超えれば、ランダムアクセス信号の検出とみなすかという連続受信回数閾値を決定する。
【0114】
連続閾値超え回数カウンタ12−4cは、検出閾値のレベルに対して、ランダムアクセス信号の受信レベルが連続して何回超えたかをカウントする。判定部12−4dは、連続受信回数閾値決定部12−4bで決定された連続受信回数閾値を使用し、ランダムアクセス信号の連続閾値超え回数が、連続受信回数閾値以上であればランダムアクセス信号の検出有りと判定する。
【0115】
図21は閾値テーブルを示す図である。閾値テーブルT3は、測定レベルと連続受信回数閾値との対応関係が登録されたテーブルである。連続受信回数閾値は、閾値テーブルT3の登録内容にもとづいて一意に決定される。
【0116】
図22は連続受信回数閾値と測定レベルとの関係を示す図である。縦軸は検出閾値、横軸は測定レベルである。測定レベルによる連続受信回数閾値決定においては、測定レベルが設計上でターゲットにしているレベル範囲外となった場合には、誤検出が多くなる。
【0117】
したがって、誤検出を回避するために、閾値テーブルT3では、グラフg3に示すように、測定レベルが設計上でターゲットにしているレベル範囲外となった場合には、連続受信回数閾値が高くなるように値が設定されている。
【0118】
ここで、連続受信回数閾値の設定例について説明する。例えば、測定レベルAにおける誤検出確率が0.1%、測定レベルBにおける誤検出確率が1%、測定レベルCにおける誤検出確率が10%とした場合、システムとしては、“3GPP TS36.104(ver8.11.0) 8.4.1 PRACH False alarm probability”で規定されているような、誤検出確率0.1%以下となることを目標に設定する場合を考える。
【0119】
ランダムアクセス信号の検出処理は、受信処理タイミングにおける瞬間の受信データのみに依存し、過去の受信データを合成して使用することはない。そのため、連続受信した場合に、連続して誤検出が発生する確率は、それぞれの受信機会における誤検出確率を連続受信回数で乗算したものと考えることができる。
【0120】
つまり、誤検出が多い環境においては、連続受信結果を考慮することで誤検出確率を低下させることができるので、この性質を考慮して、目標とする誤検出確率以下となるように連続受信回数を決定する。
【0121】
上記の例の場合、目標とする誤検出確率0.1%を満足させるには、測定レベルAでは1回、測定レベルBでは2回、測定レベルCでは3回の連続受信が必要となるので、この値を図21の閾値テーブルT3に登録することになる。
【0122】
なお、第3の実施の形態と同様に、ランダムアクセス信号の連続閾値超え回数をカウントする場合は、パワーランピングによる送信周期を考慮したタイミングにおいてカウントする。
【0123】
また、ランダムアクセス信号ID毎に、連続閾値超え回数を計測し、その値が連続受信回数閾値に達した場合に、ランダムアクセス信号の検出有りと判定する。もし、途中で未検出となった場合には、カウンタをリセットし、再度カウントし直す。
【0124】
図23は連続受信回数閾値の更新動作フローを示す図である。以下に示す連続受信回数閾値の更新処理は、無線通信装置1−1に対して、上位のアプリケーションなどから更新処理の停止要求があるまで継続される。
【0125】
〔S71〕連続受信回数閾値決定部12−4bは、上位アプリケーションなどから連続受信回数閾値の更新処理開始要求が有るか否かを判断する。更新処理開始要求があればステップS72へ行く。
【0126】
〔S72〕レベル測定部12−4aは、測定レベルを初期化し、レベル測定を開始する。
〔S73〕連続受信回数閾値決定部12−4bは、閾値更新タイマを初期化してタイムカウントを開始する。
【0127】
〔S74〕連続受信回数閾値決定部12−4bは、タイマ値が更新周期以上か否かを判断する。タイマ値が更新周期以上の場合は、ステップS75へ行く。
〔S75〕レベル測定部12−4aは、レベル測定を実施する。
【0128】
〔S76〕連続受信回数閾値決定部12−4bは、閾値テーブルT3から測定レベルに応じた連続受信回数閾値を選択する。
〔S77〕レベル測定部12−4aは、測定レベルを初期化し、レベル測定を再開する。
【0129】
〔S78〕連続受信回数閾値決定部12−4bは、閾値更新タイマのタイマ値を初期化し、タイムカウントをリスタートする。
〔S79〕連続受信回数閾値決定部12−4bは、上位アプリケーションなどから更新処理停止要求が有るか否かを判断する。更新処理停止要求があれば終了し、なければステップS74へ戻る。
【0130】
以上説明したように、第4の実施の形態では、測定レベル値にもとづいて、連続受信回数閾値を決定する。そして、固定レベルの検出閾値に対して、受信したランダムアクセス信号のレベルの連続閾値超え回数を計測し、連続閾値超え回数が連続受信回数閾値以上の場合に、ランダムアクセス信号の検出有りと判定する構成にした。これにより、検出精度を向上させることができ、ランダムアクセス信号の誤検出の抑制を図ることが可能になる。
【0131】
次に第5の実施の形態について説明する。第5の実施の形態は、図1で上述したランダムアクセス信号の検出動作に該当する。
図24はランダムアクセス信号処理部の構成例を示す図である。ランダムアクセス信号処理部10−5は、相関計算処理部11および検出処理部12−5を備える。検出処理部12−5は、完了率算出部12−5a、連続受信回数閾値決定部12−5b、連続閾値超え回数カウンタ12−5c、受信結果格納部12−5dおよび判定部12−5eを備える。
【0132】
なお、受信結果格納部12−5dは、図1の格納部1−1aの機能を有し、判定部12−5eは、図1の検出判定部1−1bの機能を有する。
完了率算出部12−5aは、上述の式(1)にもとづいて、完了率を算出する。連続受信回数閾値決定部12−5bは、完了率の算出結果を基にして、現在設定されている検出閾値に対して、ランダムアクセス信号の受信レベルが何回連続して検出閾値を超えれば、ランダムアクセス信号の検出とみなすかという連続受信回数閾値を決定する。
【0133】
連続閾値超え回数カウンタ12−5cは、検出閾値のレベルに対して、受信したランダムアクセス信号のレベルが連続して何回超えたかをカウントする。受信結果格納部12−5dは、ランダムアクセス信号のIDおよび該ランダムアクセス信号を受信したときの受信タイミングを格納する。
【0134】
判定部12−5eは、連続受信回数閾値決定部12−5bで決定された連続受信回数閾値を使用し、ランダムアクセス信号の連続閾値超え回数が、連続受信回数閾値以上であればランダムアクセス信号の検出有りと判定する。
【0135】
なお、受信結果格納部12−5dにおいて、データを格納するときのタイミングは、判定部12−5eでランダムアクセス信号の判定処理が終わった後とし、前回の受信結果として検出されたランダムアクセス信号のIDと、その受信タイミングとが格納される。この結果は、一定期間格納され、判定部12−5eにて使用されなくなったタイミングで消去され、新しい受信結果が上書きされる。
【0136】
ここで、移動局Msの特定処理について説明する。ランダムアクセス信号のパワーランピング中に移動局Msから送信されるランダムアクセス信号IDは、常に同じではなく、異なることがある。
【0137】
したがって、判定部12−5eでは、同一移動局Msから送信されたランダムアクセス信号かどうかを判定するための処理(移動局特定処理)を行う。受信したランダムアクセス信号が、同一移動局Msから送信されたものか否かの判断は、無線基地局Bsと移動局Ms間の距離が殆ど変化しないことを利用して判断する。
【0138】
移動局Msがパワーランピング中に、同一の移動局Msから異なるIDで送信したとしても、無線基地局Bsと移動局Ms間の距離は殆ど変化しない。このことは、図5に示した、ランダムアクセス信号の受信タイミングt1と、無線通信装置1−1における処理基準タイミングtrとの差分が殆ど変化しないということになる。
【0139】
したがって、判定部12−5eでは、新たに検出されたランダムアクセス信号に対して算出された処理基準タイミングとの差分と、前回検出したランダムアクセス信号の差分とを比較する。そして、同値(無線環境による測定誤差を意識し範囲を設けてもよい)とみなせるものが存在すれば、同一移動局Msからランダムアクセス信号が送信されたと認識する。
【0140】
次にランダムアクセス信号処理部10−5の動作についてフローチャートを用いて説明する。図25はランダムアクセス信号処理部の動作フローを示す図である。なお、以下に示す動作は、ランダムアクセス信号のID単位で実施される。
【0141】
〔S80〕相関計算処理部11は、上り受信データに対する相関計算処理を行う。
〔S81〕判定部12−5eは、ピークが検出閾値を超えたか否かを判定する。超えない場合はステップS89へ行き、超える場合はステップS82へ行く。
【0142】
〔S82〕判定部12−5eは、移動局特定処理を行う。すなわち、前回受信したランダムアクセス信号の受信タイミングと、装置内部の処理基準タイミングとの差分である第1の差分と、今回受信したランダムアクセス信号の受信タイミングと、該処理基準タイミングとの差分である第2の差分とを求めて比較する。そして、比較結果が一致とみなせる場合は、同一の移動局Msからランダムアクセス信号が送信されたものと認識して、移動局Msを特定する。
【0143】
〔S83〕判定部12−5eは、前回の受信タイミングで同一移動局Msと思われる検出があるか判断する。あればステップS85へ行き、なければステップS84へ行く。
〔S84〕連続閾値超え回数カウンタ12−5cは、カウント値をクリアした後、カウントを開始する。ステップS89へ行く。
【0144】
〔S85〕連続閾値超え回数カウンタ12−5cは、連続閾値超え回数をカウントアップする。
〔S86〕判定部12−5eは、カウント値が連続受信回数閾値以上か否かを判定する。連続受信回数閾値以上ならばステップS87へ行き、そうでなければステップS89へ行く。
【0145】
〔S87〕判定部12−5eは、ランダムアクセス信号の検出有りと判定する。
〔S88〕連続閾値超え回数カウンタ12−5cは、カウント値をクリアする。
〔S89〕受信結果格納部12−5dは、受信結果を格納する。
【0146】
以上説明したように、第5の実施の形態では、ランダムアクセス信号の受信タイミングと、処理基準タイミングとの差分情報から、移動局Msの特定処理を行う。また、完了率にもとづいて、連続受信回数閾値を決定する。
【0147】
そして、特定された移動局Msから送信されたランダムアクセス信号の検出閾値に対する連続閾値超え回数を計測し、連続閾値超え回数が連続受信回数閾値以上の場合に、ランダムアクセス信号の検出有りと判定する構成にした。
【0148】
これにより、ランダムアクセス信号を送信した移動局Msを適切に特定することができ、また、特定した移動局Msから送信されたランダムアクセス信号の誤検出の抑制を図ることが可能になる。
【0149】
次に第6の実施の形態について説明する。第6の実施の形態の動作は、基本的に第5の実施の形態と同じである。第5の実施の形態では、完了率にもとづき、連続受信回数閾値を決定したが、第6の実施の形態は、測定レベル値にもとづいて、連続受信回数閾値を決定するものである。
【0150】
図26はランダムアクセス信号処理部の構成例を示す図である。ランダムアクセス信号処理部10−6は、相関計算処理部11および検出処理部12−6を備える。
検出処理部12−6は、レベル測定部12−6a、連続受信回数閾値決定部12−6b、連続閾値超え回数カウンタ12−6c、受信結果格納部12−6dおよび判定部12−6eを備える。
【0151】
レベル測定部12−6aは、上り受信データの受信レベルまたは干渉レベルを測定する。連続受信回数閾値決定部12−6bは、レベル測定の結果を基にして、現在設定されている検出閾値に対して、ランダムアクセス信号の受信レベルが何回連続して検出閾値を超えれば、ランダムアクセス信号の検出とみなすかという連続受信回数閾値を決定する。
【0152】
連続閾値超え回数カウンタ12−6cは、検出閾値のレベルに対して、受信したランダムアクセス信号のレベルが連続して何回超えたかをカウントする。受信結果格納部12−6dは、ランダムアクセス信号のIDおよび該ランダムアクセス信号を受信したときの受信タイミングを格納する。
【0153】
判定部12−6eは、連続受信回数閾値決定部12−6bで決定された連続受信回数閾値を使用し、ランダムアクセス信号の連続閾値超え回数が、連続受信回数閾値以上であればランダムアクセス信号の検出有りと判定する。
【0154】
なお、測定レベルにもとづいて連続受信回数閾値を決定する以外は、第5の実施の形態と同じ動作なので説明は省略する。
以上説明したように、第6の実施の形態では、ランダムアクセス信号の受信タイミングと、処理基準タイミングとの差分情報から、移動局Msの特定処理を行う。また、測定レベル値にもとづいて、連続受信回数閾値を決定する。
【0155】
そして、特定された移動局Msから送信されたランダムアクセス信号の検出閾値に対する連続閾値超え回数を計測し、連続閾値超え回数が連続受信回数閾値以上の場合に、ランダムアクセス信号の検出有りと判定する構成にした。
【0156】
これにより、ランダムアクセス信号を送信した移動局Msを適切に認識することができ、移動局Msから送信されたランダムアクセス信号の誤検出の抑制を図ることが可能になる。
【0157】
次に第7の実施の形態について説明する。第7の実施の形態では、移動局Msのパワーランピングによる電力増加分を認識して、ランダムアクセス信号の検出判定に要する処理時間を短縮化させるものである。
【0158】
図27はランダムアクセス信号処理部の構成例を示す図である。ランダムアクセス信号処理部10−7は、相関計算処理部11および検出処理部12−7を備える。検出処理部12−7は、受信結果格納部12−7aおよび判定部12−7bを備える。
【0159】
受信結果格納部12−7aは、ランダムアクセス信号のID、受信タイミングおよび受信レベルを格納する。判定部12−7bは、検出閾値のレベルを超える今回受信したランダムアクセス信号の受信レベルと、前回受信したランダムアクセス信号の受信レベルとの差分を算出する。そして、この差分が、移動局Ms側で行われたパワーランピングによる電力増加分とみなせる場合は、ランダムアクセス信号の検出有りと判定する。
【0160】
次にランダムアクセス信号処理部10−7の動作についてフローチャートを用いて説明する。図28はランダムアクセス信号処理部の動作フローを示す図である。なお、以下に示す動作は、ランダムアクセス信号のID単位で実施される。
【0161】
〔S91〕相関計算処理部11は、上り受信データに対する相関計算処理を行う。
〔S92〕判定部12−7bは、ピークが検出閾値を超えたか否かを判定する。超えない場合はステップS96へ行き、超える場合はステップS93へ行く。
【0162】
〔S93〕判定部12−7bは、前回受信したランダムアクセス信号と今回受信したランダムアクセス信号との電力差分を算出する。
〔S94〕判定部12−7bは、電力差分がΔP±αの範囲内か否かを判定する(αはマージン)。電力差分が設定範囲内にある場合はステップS95へ行き、設定範囲内にない場合はステップS96へ行く。
【0163】
〔S95〕判定部12−7bは、ランダムアクセス信号の検出有りと判定する。
〔S96〕受信結果格納部12−7aは、受信結果を格納する。
このように、第7の実施の形態では、今回受信したランダムアクセス信号が検出閾値以上であった場合、判定部12−7bは、今回受信したランダムアクセス信号の受信レベルと、前回受信したランダムアクセス信号の受信レベルと、の差分を算出する。なお、前回受信したランダムアクセス信号の受信レベルは、受信結果格納部12−7aに格納されているものである。
【0164】
そして、その電力差分がパワーランピングにおける電力増加分であるΔPの増加と認識した場合は、同一移動局Msからパワーランピングにより送信されたランダムアクセス信号であると認識し、ランダムアクセス信号の検出有りとして判定する。なお、上記では、無線環境による伝搬ロス、測定誤差を意識して、電力増加分をΔP±αとしている。
【0165】
ここで、上述した第1の実施の形態から第6の実施の形態では、ランダムアクセス信号の受信レベルが検出閾値を超えたときに検出有りと判定する、または検出閾値を超えるランダムアクセス信号を連続して受信した場合に検出有りと判定するといった動作を行った。
【0166】
この場合、移動局Msからのランダム信号の送信開始から、ランダムアクセス信号を検出するまでに時間がかかる可能性がある。これに対し、第7の実施の形態では、検出閾値を超える今回受信したランダムアクセス信号が、パワーランピングにおいて電力増加されて移動局Msから送信されたと認識した場合は、即時にランダムアクセス信号の検出有りと判定している。
【0167】
これにより、ランダムアクセス信号の誤検出の抑制を図ることができ、さらに、ランダムアクセス信号の送信開始からレスポンス信号送信までの応答時間を短縮化することが可能になる。
【0168】
次に第8の実施の形態について説明する。第8の実施の形態は、2つの検出閾値を設けて、ランダムアクセス信号の検出処理を行うものである。
図29はランダムアクセス信号処理部の構成例を示す図である。ランダムアクセス信号処理部10−8は、相関計算処理部11および検出処理部12−8を備える。検出処理部12−8は、受信結果格納部12−8aおよび判定部12−8bを備える。
【0169】
受信結果格納部12−8aは、ランダムアクセス信号のID、受信タイミングおよび受信レベルを格納する。判定部12−8bは、第1の検出閾値と、第1の検出閾値よりもレベルが低い第2の検出閾値とを有する。
【0170】
そして、今回受信したランダムアクセス信号が、第1の検出閾値のレベルを超える場合は、ランダムアクセス信号の検出有りと即時に判定する。
また、今回受信したランダムアクセス信号が、第1の検出閾値のレベルを超えず、第2の検出閾値のレベルを超える場合は、第7の実施の形態と同じ動作を行う。
【0171】
すなわち、今回受信したランダムアクセス信号の受信レベルと、前回受信したランダムアクセス信号の受信レベルとの差分を算出し、この差分が、移動局Ms側で行われたパワーランピングによる電力増加分とみなせる場合は、ランダムアクセス信号の検出有りと判定する。
【0172】
図30は検出閾値を示す図である。判定部12−8bは、2つの検出閾値を有する。検出閾値th2(第2の検出閾値)は、例えば、第7の実施の形態で用いた検出閾値と同等のレベルである。また、検出閾値th1(第1の検出閾値)は、検出閾値th2よりも大きいレベルの閾値である。
【0173】
ランダムアクセス信号の受信レベルが検出閾値th1以上となった場合には、移動局Msから確実にランダムアクセス信号を送信していると判断し、即時にランダムアクセス信号の検出有りと判定して、レスポンス信号の送信処理に移行する。
【0174】
また、ランダムアクセス信号の受信レベルが、検出閾値th1未満かつ検出閾値th2以上の場合は、移動局Msからランダムアクセス信号が送信された可能性があるため、第7の実施の形態と同等の処理を実施する。
【0175】
次にランダムアクセス信号処理部10−8の動作についてフローチャートを用いて説明する。図31はランダムアクセス信号処理部の動作フローを示す図である。なお、以下に示す動作は、ランダムアクセス信号のID単位で実施される。
【0176】
〔S101〕相関計算処理部11は、上り受信データに対する相関計算処理を行う。
〔S102〕判定部12−8bは、ピークが検出閾値th1を超えたか否かを判定する。超えない場合はステップS103へ行き、超える場合はステップS106へ行く。
【0177】
〔S103〕判定部12−8bは、ピークが検出閾値th2を超えたか否かを判定する。超えない場合はステップS107へ行き、超える場合はステップS104へ行く。
〔S104〕判定部12−8bは、前回受信したランダムアクセス信号と今回受信したランダムアクセス信号との電力差分を算出する。
【0178】
〔S105〕判定部12−8bは、電力差分がΔP±αの範囲内か否かを判定する。電力差分が設定範囲内にある場合はステップS106へ行き、設定範囲内にない場合はステップS107へ行く。
【0179】
〔S106〕判定部12−8bは、ランダムアクセス信号の検出有りと判定する。
〔S107〕受信結果格納部12−8aは、受信結果を格納する。
以上説明したように、第8の実施の形態では、2つの検出閾値th1、th2を設け、受信したランダムアクセス信号が検出閾値th1を超える場合は、即時にランダムアクセス信号の検出有りと判定する。
【0180】
また、検出閾値th1のレベルを超えず、検出閾値th2のレベルを超える場合は、今回受信したランダムアクセス信号の受信レベルと、前回受信したランダムアクセス信号の受信レベルとの差分を算出する。そして、この差分が、移動局Ms側で行われたパワーランピングによる電力増加分とみなせる場合は、ランダムアクセス信号の検出有りと判定する構成とした。
【0181】
これにより、ランダムアクセス信号の誤検出の抑制を図ることができ、さらに、ランダムアクセス信号の送信開始からレスポンス信号送信までの応答時間を短縮化することが可能になる。
【0182】
なお、例えば、シャドゥイングから復帰した移動局Msは、すでに無線基地局Bsとの間で通信を行うのに十分過ぎる電力で信号を送信している場合もある。したがって、検出閾値th1を設けることで、このような移動局Msに対して即時にレスポンス信号を送信することができ、応答時間を短縮化することができる。
【0183】
次に第9の実施の形態について説明する。第9の実施の形態は、第5の実施の形態で説明した移動局特定処理を行い、特定した移動局Msに対して、第7の実施の形態の動作を実行するものである。
【0184】
図32はランダムアクセス信号処理部の構成例を示す図である。ランダムアクセス信号処理部10−9は、相関計算処理部11および検出処理部12−9を備える。検出処理部12−9は、受信結果格納部12−9aおよび判定部12−9bを備える。
【0185】
受信結果格納部12−9aは、ランダムアクセス信号のID、受信タイミングおよび受信レベルを格納する。判定部12−9bは、ランダムアクセス信号の受信タイミングと、処理基準タイミングとの差分情報から、移動局Msの特定処理を行う。そして、特定した移動局Msに対して、検出閾値を超える今回受信したランダムアクセス信号が、パワーランピングにおいて電力増加されて送信されたことを認識した場合は、即時にランダムアクセス信号の検出有りと判定する。
【0186】
次にランダムアクセス信号処理部10−9の動作についてフローチャートを用いて説明する。図33はランダムアクセス信号処理部の動作フローを示す図である。なお、以下に示す動作は、ランダムアクセス信号のID単位で実施される。
【0187】
〔S111〕相関計算処理部11は、上り受信データに対する相関計算処理を行う。
〔S112〕判定部12−9bは、ピークが検出閾値を超えたか否かを判定する。超えない場合はステップS118へ行き、超える場合はステップS113へ行く。
【0188】
〔S113〕判定部12−9bは、移動局Msの特定処理を行う。
〔S114〕判定部12−9bは、前回の受信タイミングで同一移動局Msと思われる検出があるか判断する。あればステップS115へ行き、なければステップS118へ行く。
【0189】
〔S115〕判定部12−9bは、前回受信したランダムアクセス信号と今回受信したランダムアクセス信号との電力差分を算出する。
〔S116〕判定部12−9bは、電力差分がΔP±αの範囲内か否かを判定する。電力差分が設定範囲内にある場合はステップS117へ行き、設定範囲内にない場合はステップS118へ行く。
【0190】
〔S117〕判定部12−9bは、ランダムアクセス信号の検出有りと判定する。
〔S118〕受信結果格納部12−9aは、受信結果を格納する。
以上説明したように、第9の実施の形態では、ランダムアクセス信号の受信タイミングと、処理基準タイミングとの差分情報から、移動局Msの特定処理を行う。
【0191】
そして、特定した移動局Msに対して、検出閾値を超える今回受信したランダムアクセス信号が、パワーランピングにおいて電力増加されて送信されたことを認識した場合は、即時にランダムアクセス信号の検出有りと判定する構成とした。
【0192】
これにより、ランダムアクセス信号の誤検出の抑制を図ることができ、さらに、ランダムアクセス信号の送信開始からレスポンス信号送信までの応答時間を短縮化することが可能になる。
【0193】
次に第10の実施の形態について説明する。第10の実施の形態は、第8の実施の形態で説明した2つの検出閾値による判定処理と、第5の実施の形態で説明した移動局特定処理とを行い、さらに、特定した移動局Msに対して、第7の実施の形態の動作を実行するものである。
【0194】
図34はランダムアクセス信号処理部の構成例を示す図である。ランダムアクセス信号処理部10−10は、相関計算処理部11および検出処理部12−10を備える。検出処理部12−10は、受信結果格納部12−10aおよび判定部12−10bを備える。
【0195】
受信結果格納部12−10aは、ランダムアクセス信号のID、受信タイミングおよび受信レベルを格納する。判定部12−10bは、検出閾値th1、th2を有する。今回受信したランダムアクセス信号が、検出閾値th1のレベルを超える場合は、ランダムアクセス信号の検出有りと判定する。
【0196】
また、今回受信したランダムアクセス信号が、検出閾値th1のレベルを超えず、検出閾値th2のレベルを超える場合は、ランダムアクセス信号の受信タイミングと、処理基準タイミングとの差分情報から、移動局Msの特定処理を行う。そして、特定した移動局Msに対して、検出閾値を超える今回受信したランダムアクセス信号が、パワーランピングにおいて電力増加されて送信されたことを認識した場合は、即時にランダムアクセス信号の検出有りと判定する。
【0197】
次にランダムアクセス信号処理部10−10の動作についてフローチャートを用いて説明する。図35はランダムアクセス信号処理部の動作フローを示す図である。なお、以下に示す動作は、ランダムアクセス信号のID単位で実施される。
【0198】
〔S121〕相関計算処理部11は、上り受信データに対する相関計算処理を行う。
〔S122〕判定部12−10bは、ピークが検出閾値th1を超えたか否かを判定する。超えない場合はステップS123へ行き、超える場合はステップS128へ行く。
【0199】
〔S123〕判定部12−10bは、ピークが検出閾値th2を超えたか否かを判定する。超えない場合はステップS129へ行き、超える場合はステップS124へ行く。
〔S124〕判定部12−10bは、移動局Msの特定処理を行う。
【0200】
〔S125〕判定部12−10bは、前回の受信タイミングで同一移動局Msと思われる検出があるか判断する。あればステップS126へ行き、なければステップS129へ行く。
【0201】
〔S126〕判定部12−10bは、前回受信したランダムアクセス信号と今回受信したランダムアクセス信号との電力差分を算出する。
〔S127〕判定部12−10bは、電力差分がΔP±αの範囲内か否かを判定する。電力差分が設定範囲内にある場合はステップS128へ行き、設定範囲内にない場合はステップS129へ行く。
【0202】
〔S128〕判定部12−10bは、ランダムアクセス信号の検出有りと判定する。
〔S129〕受信結果格納部12−10aは、受信結果を格納する。
以上説明したように、第10の実施の形態では、今回受信したランダムアクセス信号が、検出閾値th1のレベルを超える場合は、ランダムアクセス信号の検出有りと判定する。
【0203】
また、今回受信したランダムアクセス信号が、検出閾値th1のレベルを超えず、検出閾値th2のレベルを超える場合は、ランダムアクセス信号の受信タイミングと、処理基準タイミングとの差分情報から、移動局Msの特定処理を行う。そして、特定した移動局Msに対して、検出閾値を超える今回受信したランダムアクセス信号が、パワーランピングにおいて電力増加されて送信されたことを認識した場合は、即時にランダムアクセス信号の検出有りと判定する。
【0204】
これにより、ランダムアクセス信号の誤検出の抑制を図ることができ、さらに、ランダムアクセス信号の送信開始からレスポンス信号送信までの応答時間を短縮化することが可能になる。
【0205】
次に無線基地局Bsと移動局Msのハードウェア構成について説明する。図36は無線基地局内部のベースバンド信号処理部のハードウェアのブロック構成例を示す図である。
無線基地局Bs内のベースバンド信号処理部30は、FPGA(Field-Programmable Gate Array)/ASIC(Application Specific Integrated Circuit)31、スイッチ32、CPU(Central Processing Unit)/MPU(Micro Processing Unit)33、DSP(Digital Signal Processor)33−1〜33−nおよびメモリ34−1〜34−mを備える。
【0206】
FPGA/ASIC31は、ベースバンド信号処理と、他の処理部とのインタフェース処理などを行う。CPU/MPU33は、ベースバンド信号処理に関わる制御を行う。
DSP33−1〜33−nは、ディジタル変復調処理等のベースバンド処理を行う。メモリ34−1〜34−mは、処理結果の一時退避に使用される。スイッチ32は、FPGA/ASIC31、CPU/MPU33およびDSP33−1〜33−nの接続を行う。
【0207】
なお、無線通信装置1−1の機能は、主にDSP33−1〜33−nで実現され、受信結果の格納には、メモリ34−1〜34−mが使用される。
図37は移動局のハードウェアのブロック構成例を示す図である。移動局Msは、ベースバンド信号処理部40、D/A変換部4a−1、送信RF部4a−2、受信RF部4b−1およびA/D変換部4b−2を備える。ベースバンド信号処理部40は、送信部41、制御部42および受信部43を含む。
【0208】
送信処理において、送信部41は、送信データのディジタル変調を行う。D/A変換部4a−1は、ディジタル信号をアナログ信号に変換する。送信RF部4a−2は、アナログベースバンド信号を無線周波数帯にアップコンバートする。アンプコンバートされた信号は、アンテナを通じて無線基地局へ送信される。
【0209】
受信処理において、無線基地局より送信された信号は、アンテナを通じて入力され、受信RF部4b−1は、無線周波数帯からベースバンド信号にダウンコンバートする。A/D変換部4b−2は、ダウンコンバート後のアナログ信号をディジタル信号に変換する。受信部43は、ディジタルベースバンド信号の検波復調処理を行う。なお、制御部42は、送信部41および受信部43の制御を行う。
【0210】
以上説明したように、本技術により、ランダムアクセス信号の誤検出を低減させることが可能になり、従来よりも無線リソースを有効に活用することが可能になる。その結果、システム全体のスループット特性の向上が実現できる。
【0211】
以上、実施の形態を例示したが、実施の形態で示した各部の構成は同様の機能を有する他のものに置換することができる。また、他の任意の構成物や工程が付加されてもよい。
【符号の説明】
【0212】
1 無線通信システム
1−1 無線通信装置
1−1a 格納部
1−1b 検出判定部
Ms 移動局
Bs 無線基地局

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線リンクを確立するためのアクセス信号を送信する移動局と、
前記アクセス信号の受信タイミングを格納する格納部と、前記アクセス信号の検出判定を行う検出判定部と、を含む無線通信装置を有する無線基地局と、
を備え、
前記検出判定部は、
前回受信した前記アクセス信号の受信タイミングと、処理基準タイミングとの差分である第1の差分と、今回受信した前記アクセス信号の受信タイミングと、前記処理基準タイミングとの差分である第2の差分とを求めて比較し、
比較結果に応じて、前記移動局を特定し、
特定した前記移動局から送信された前記アクセス信号に対し、閾値レベルを超える前記アクセス信号の連続受信回数に応じて、前記アクセス信号の検出有りと判定する、
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記無線通信装置は、
前記アクセス信号を受信した際に前記移動局へ送信されるレスポンス信号の送信回数と、前記移動局が前記レスポンス信号を受信した際に前記無線基地局へ送信するメッセージ信号の受信成功回数とを測定し、前記送信回数と前記受信成功回数との比率である完了率を算出する完了率算出部と、
前記完了率にもとづいて、前記連続受信回数閾値を決定する連続受信回数閾値決定部と、
をさらに有することを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記無線通信装置は、
前記移動局から送信される信号のレベルを測定するレベル測定部と、
測定レベルにもとづいて、前記連続受信回数閾値を決定する連続受信回数閾値決定部と、
をさらに有することを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項4】
無線通信装置において、
移動局から送信された、無線リンクを確立するためのアクセス信号の受信タイミングを格納する格納部と、
前記アクセス信号の検出判定を行う検出判定部と、
を備え、
前記検出判定部は、
前回受信した前記アクセス信号の受信タイミングと、処理基準タイミングとの差分である第1の差分と、今回受信した前記アクセス信号の受信タイミングと、前記処理基準タイミングとの差分である第2の差分とを求めて比較し、
比較結果に応じて、前記移動局を特定し、
特定した前記移動局から送信された前記アクセス信号に対し、閾値レベルを超える前記アクセス信号の連続受信回数に応じて、前記アクセス信号の検出有りと判定する、
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項5】
無線通信方法において、
移動局から送信された、無線リンクを確立するためのアクセス信号の受信タイミングを格納し、
前回受信した前記アクセス信号の受信タイミングと、処理基準タイミングとの差分である第1の差分と、今回受信した前記アクセス信号の受信タイミングと、前記処理基準タイミングとの差分である第2の差分とを求めて比較し、
比較結果に応じて、前記移動局を特定し、
特定した前記移動局から送信された前記アクセス信号に対し、閾値レベルを超える前記アクセス信号の連続受信回数に応じて、前記アクセス信号の検出有りと判定する、
ことを特徴とする無線通信方法。
【請求項6】
移動局から送信された、無線リンクを確立するためのアクセス信号を受信した際に、前記移動局へ送信されるレスポンス信号の送信回数と、前記移動局が前記レスポンス信号を受信した際に送信するメッセージ信号の受信成功回数とを測定し、前記送信回数と前記受信成功回数との比率である完了率を算出する完了率算出部と、
前記完了率にもとづいて閾値レベルを決定する閾値レベル決定部と、
決定された前記閾値レベルを超える前記アクセス信号を受信した場合は、前記アクセス信号の検出有りと判定する検出判定部と、
を有することを特徴とする無線通信装置。
【請求項7】
移動局から送信される信号のレベルを測定するレベル測定部と、
測定レベルにもとづいて閾値レベルを決定する閾値レベル決定部と、
前記移動局から送信された、無線リンクを確立するためのアクセス信号が、決定された前記閾値レベルを超える場合は、前記アクセス信号の検出有りと判定する検出判定部と、
を有することを特徴とする無線通信装置。
【請求項8】
連続受信回数閾値を決定する連続受信回数閾値決定部と、
移動局から送信された、無線リンクを確立するためのアクセス信号に対し、前記アクセス信号の閾値レベルを超える連続受信回数が、前記連続受信回数閾値以上ある場合は、前記アクセス信号の検出有りと判定する検出判定部と、
を有することを特徴とする無線通信装置。
【請求項9】
前記アクセス信号を受信した際に前記移動局へ送信されるレスポンス信号の送信回数と、前記移動局が前記レスポンス信号を受信した際に無線基地局へ送信するメッセージ信号の受信成功回数とを測定し、前記送信回数と前記受信成功回数との比率である完了率を算出する完了率算出部をさらに備え、
前記連続受信回数閾値決定部は、前記完了率にもとづいて、前記連続受信回数閾値を決定する、
ことを特徴とする請求項8記載の無線通信装置。
【請求項10】
前記移動局から送信される信号のレベルを測定するレベル測定部をさらに備え、
前記連続受信回数閾値決定部は、測定レベルにもとづいて、前記連続受信回数閾値を決定する、
ことを特徴とする請求項8記載の無線通信装置。
【請求項11】
移動局から送信された、無線リンクを確立するためのアクセス信号の受信レベルおよび受信タイミングを格納する格納部と、
閾値レベルを超える今回受信した前記アクセス信号の前記受信レベルと、前回受信した前記アクセス信号の受信レベルとの差分を算出し、前記差分が、前記移動局側で行われたパワーランピングによる電力増加分とみなせる場合は、前記アクセス信号の検出有りと判定する検出判定部と、
を有することを特徴とする無線通信装置。
【請求項12】
前記検出判定部は、
第1の閾値と、前記第1の閾値よりもレベルが低い第2の閾値とを有し、
今回受信した前記アクセス信号が、前記第1の閾値のレベルを超える場合は、前記アクセス信号の検出有りと判定し、
今回受信した前記アクセス信号が、前記第1の閾値のレベルを超えず、前記第2の閾値のレベルを超える場合は、今回受信した前記アクセス信号の前記受信レベルと、前回受信した前記アクセス信号の受信レベルとの差分を算出し、前記差分が、前記移動局側で行われたパワーランピングによる電力増加分とみなせる場合は、前記アクセス信号の検出有りと判定する、
ことを特徴とする請求項11記載の無線通信装置。
【請求項13】
前記検出判定部は、
前回受信した前記アクセス信号の受信タイミングと、処理基準タイミングとの差分である第1の差分と、今回受信した前記アクセス信号の受信タイミングと、前記処理基準タイミングとの差分である第2の差分とを求めて比較し、
比較結果に応じて、移動局を特定し、
特定した前記移動局から送信された前記アクセス信号に対し、閾値レベルを超える今回受信した前記アクセス信号の前記受信レベルと、前回受信した前記アクセス信号の受信レベルとの差分を算出し、前記差分が、前記移動局側で行われたパワーランピングによる電力増加分とみなせる場合は、前記アクセス信号の検出有りと判定する、
ことを特徴とする請求項11記載の無線通信装置。
【請求項14】
前記検出判定部は、
第1の閾値と、前記第1の閾値よりもレベルが低い第2の閾値とを有し、
今回受信した前記アクセス信号が、前記第1の閾値のレベルを超える場合は、前記アクセス信号の検出有りと判定し、
今回受信した前記アクセス信号が、前記第1の閾値のレベルを超えず、前記第2の閾値のレベルを超える場合は、
前回受信した前記アクセス信号の受信タイミングと、処理基準タイミングとの差分である第1の差分と、今回受信した前記アクセス信号の受信タイミングと、前記処理基準タイミングとの差分である第2の差分とを求めて比較し、
比較結果に応じて、前記移動局を特定し、
特定した前記移動局から送信された前記アクセス信号に対し、今回受信した前記アクセス信号の前記受信レベルと、前回受信した前記アクセス信号の受信レベルとの差分を算出し、前記差分が、前記移動局側で行われたパワーランピングによる電力増加分とみなせる場合は、前記アクセス信号の検出有りと判定する、
ことを特徴とする請求項11記載の無線通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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