説明

無線通信システムおよびその制御方法

【課題】状態遷移を変更する移動局と基地局との間の制御信号を低減させ、サービス品質を劣化させない無線通信システムを提供すること。
【解決手段】複数の移動局20を有し、基地局10とそれぞれの移動局20との間には個別チャネルがそれぞれ確立されている無線通信システムにおいて、
移動局20から状態変更を行う旨のメッセージを受け付け、受け付けた状態変更を一時的に保留し、所定のタイミングで保留した状態変更を許可する旨のメッセージを複数の移動局にブロードキャストする状態遷移処理部13を有するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動局および基地局を有する無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムであるW−CDMA(Wideband-Code Division Multiple Access)システムでは、下り通信の高速パケット伝送方式であるHSDPA(High Speed Downlink Packet Access)や上り通信の高速パケット伝送方式であるEUDCH(Enhanced Uplink Dedicated Channel)が標準化されている。これらのパケット伝送方式は、基地局がスケジューリングを行って複数の移動局に時間多重または符号多重によって、データ送受信のあるときのみ無線リソースを割当てるようにし、無線リソースの使用効率を高めている。
【0003】
W−CDMAを策定している3GPP(3rd Generation Partnership Project)では、移動局は基地局との間で個別チャネル(DPCCH : Dedicated Physical Control Channel)でデータを常に送受信している。
【0004】
個別チャネル (DCH :Dedicated Channel)を使用中移動局は、Cell_DCH状態にあると呼ばれる。他方、データ送受信が長時間行われないと、移動局はCell_DCH以外の状態、例えばCell_FACH状態へ状態遷移する。
【0005】
Cell_FACH状態では、移動局は、下りチャネルFACH(Forward Access Channel)を用いて予め指定された時間間隔で受信するのみであり、個別チャネルの送受信は行わない。従って、Cell_FACH状態の移動局では上りチャネルの同期は確保されていない。
【0006】
その他の状態として、CELL_PCH状態は、セル単位で所在が特定されており、かつPCH(Paging Channel)を受信できる状態である。また、URA_PCH状態は、セル単位で所在が特定されていないが、PCHを受信できる状態である。IDLE状態は、トランスポートチャネルに接続していない状態である。
【0007】
移動局では、RRCメッセージを送受してRRC Connected状態に遷移できる。RRC Connedted状態とは、CELL_DCH状態、CELL_FACH状態、CELL_PCH状態、あるいはURA_PCH状態である。移動局1台の状態遷移につき、それに対応したRRCメッセージ(制御信号)が必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】3GPP TS25.214 3rdGeneration Partnership Project; Technical Specification Group Radio Access Network; Physical layer procedures(FDD)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
Cell_FACH状態の移動局が所定量以上のデータの送受信を開始する場合、Cell_DCH状態へ状態遷移するが、状態遷移が完了しデータ送受信を開始するまでには相当の遅延が生じる。すなわち、基地局制御装置(RNC)を介して当該移動局に個別チャネルリソースの割り当てを行い、移動局並びに基地局に所定の制御パラメータを通知する必要があり、また上りチャネルの同期を確保する必要であるからである。
【0010】
したがって、Cell_DCH状態とCell_FACH状態との間の状態遷移が頻繁に生じると、データ送信遅延が増加しユーザのサービス品質が劣化すると共に、基地局の処理負荷が高まり、さらには基地局間の制御信号量が増加し好ましくない。
【0011】
また、データ通信を頻繁に行うスマートフォン等の移動局においては、状態遷移が頻繁におこるため、RRCメッセージが非常に多くなり、ネットワークへの負荷が大きくなることが予想されている。
【0012】
本発明は、状態遷移を変更する移動局と基地局との間の制御信号を低減させ、サービス品質を劣化させない無線通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の無線通信システムは、複数の移動局を有し、基地局とそれぞれの前記移動局との間には個別チャネルがそれぞれ確立されている無線通信システムにおいて、
前記移動局から状態変更を行う旨のメッセージを受け付け、受け付けた状態変更を一時的に保留し、所定のタイミングで保留した状態変更を許可する旨のメッセージを前記複数の移動局にブロードキャストする状態遷移処理部を有する構成を備えている。
【0014】
また、本発明の無線通信システムは、前記状態遷移処理部は、定期的に、前記状態変更を許可する旨のメッセージを前記複数の移動局にブロードキャストする構成を備えている。
【0015】
本発明の無線通信システムの制御方法は、複数の移動局を有し、基地局とそれぞれの前記移動局との間には個別チャネルがそれぞれ確立されていることにおいて、前記移動局から状態変更を行う旨のメッセージを受け付けるステップと、受け付けた状態変更を一時的に保留するステップと、所定のタイミングで保留した状態変更を許可する旨のメッセージを前記複数の移動局にブロードキャストするステップとを有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、状態遷移を変更する移動局と基地局との間の制御信号を低減させ、サービス品質を劣化させない無線通信システムを提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る無線通信システムの全体概略構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る基地局の構成図である。
【図3】移動局の状態遷移を示す図である。
【図4】本実施形態の無線通信システムの動作を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態に係る無線通信システムの全体概略構成図である。
【0019】
この無線通信システムは、3GPPの規格(例えば、W−CDMAやLTE等の規格)に準拠し、基地局10と、移動局20A及び移動局20Bを含む。図1では、移動局20A及び移動局20Bの2つしか示していないが、2つに限定しているわけではない。なお、基地局制御装置(RNC)などは、説明を簡素化するため、省略してある。
【0020】
なお、基地局10と、移動局20との間には、個別チャネル (DCH :Dedicated Channel)が確立されている。
【0021】
次に、本発明の実施の形態に係る基地局の構成について説明する。図2は、本発明の実施の形態に係る基地局のブロック図である。基地局10は、無線通信部11、ネットワークインタフェース12、状態遷移処理部13、および制御部14を有している。
【0022】
無線通信部11は、移動局20と通信するためにアンテナ(図示していない)からRF信号を送受信するものである。また、無線通信部11は、3GPPで規定されている通信方式に準拠した通信を行うものである。例えば、無線通信部11は、制御部14から出力された信号を変調処理し、変調処理された信号を無線信号に変換して送信するようになっており、受信した信号を変換し、変換したものを復調処理して制御部14に出力するようになっている。
【0023】
ネットワークインタフェース12は、インターネット、専用線、または電話網との通信を行うものである。また、ネットワークインタフェース12は、他の基地局、基地局制御装置、および特定の通信装置などと通信することが可能である。
【0024】
状態遷移処理部13は、上述した移動局の状態であるCell_DCH状態、Cell_FACH状態、CELL_PCH状態、URA_PCH状態を処理するものである。状態遷移処理部13および制御部14は、1つのプロセッサで実施されてもよい。
【0025】
制御部14は、例えばプログラムを実行するプロセッサ、ROM、RAMなどによって構成され、移動局20と送受信する信号(RRCメッセージ、MBMSメッセージ)の処理などを行うものである。MBMSは、Multimedia Broadcast/Multicast Serviceの略であり、そのメッセージは、移動局20に対してブロードキャストされる。
【0026】
ここで、本実施形態では、図3に示すように、移動局の状態遷移において、破線で示した方向の状態遷移についてMBMSを使った制御を行う。実線で示した状態遷移に関しては、移動局に個別の無線リソースを割り当てる必要があるため、本実施形態では説明しない。
【0027】
図4は、本実施形態の無線通信システムの動作を示すシーケンス図である。本実施形態では、CELL_DCHからCELL_FACHへの状態遷移について説明する。
【0028】
まず、状態遷移を行うとき、移動局20Aは、基地局20に対してCELL_DCHからCELL_FACHへの状態遷移する旨のRRCメッセージを送信する(ステップS1)。
【0029】
基地局20(状態遷移処理部13)は、移動局20Aから送信されたRRCメッセージを受信し、受信したRRCメッセージに応じて移動局20AのDCHをキャンセルする(ステップS2)。このとき、移動局20Aに応答のメッセージは送信しない。すなわち、基地局20(状態遷移処理部13)は、即座には移動局20のRRCメッセージには応答しないで、受け付けた状態変更を一時的に保留しておく。
【0030】
移動局20AからRRCメッセージが送信された同じ時期に、移動局20Bは、基地局20に対してCELL_DCHからCELL_FACHへの状態遷移する旨のRRCメッセージを送信する(ステップS3)。
【0031】
基地局20(状態遷移処理部13)は、移動局20Bから送信されたRRCメッセージを受信し、受信したRRCメッセージに応じて移動局20BのDCHをキャンセルする(ステップS4)。同様に、移動局20Bに応答のメッセージは送信しない。
【0032】
定期的に移動局の状態遷移のためのMBMSメッセージをブロードキャストするため、所定タイミングで、基地局20は、状態遷移のためのMBMSメッセージをブロードキャストする(ステップS5)。ここで、基地局20(状態遷移処理部13)は、移動局20Aおよび移動局20Bから状態遷移する旨のRRCメッセージを受信しているため、MBMSメッセージには、状態遷移を許可するための情報が含まれる。
【0033】
定期的にブロードキャストするとしたが、適切なタイミングで(状態変更の保留数が一定値を超えたタイミングなど、または、このタイミングと定期的タイミングとの組み合わせ等)ブロードキャストすればよく、特に定期的であることには限定しない。
【0034】
移動局20Aおよび移動局20Bは、このMBMSメッセージを受信すると、CELL_DCHからCELL_FACHに状態遷移する(ステップS6、S7)。
【0035】
本実施形態では、CELL_DCHからCELL_FACHへの状態遷移について説明したが、図3の破線で示した状態遷移も同様である。
【0036】
なお、状態遷移処理部13は、本実施形態では基地局10にあるが、基地局制御装置(RNC)などにあってもよい。
【0037】
以上説明したように、本発明の実施の形態に係る無線通信システムは、単方向通信であるMBMSを使用することで複数台の端末の状態遷移を一度に行うことが可能となり、ネットワークの負荷を軽減することができ、サービス品質を劣化させないようにすることができる。
【符号の説明】
【0038】
10 基地局
11 無線通信部
12 ネットワークインタフェース
13 状態遷移処理部
14 制御部
20 移動局


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の移動局を有し、基地局とそれぞれの前記移動局との間には個別チャネルがそれぞれ確立されている無線通信システムにおいて、
前記移動局から状態変更を行う旨のメッセージを受け付け、受け付けた状態変更を一時的に保留し、所定のタイミングで保留した状態変更を許可する旨のメッセージを前記複数の移動局にブロードキャストする状態遷移処理部を有することを特徴とした無線通信システム。
【請求項2】
前記状態遷移処理部は、定期的に、前記状態変更を許可する旨のメッセージを前記複数の移動局にブロードキャストすることを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
複数の移動局を有し、基地局とそれぞれの前記移動局との間には個別チャネルがそれぞれ確立されている無線通信システムの制御方法において、
前記移動局から状態変更を行う旨のメッセージを受け付けるステップと、
受け付けた状態変更を一時的に保留するステップと、
所定のタイミングで保留した状態変更を許可する旨のメッセージを前記複数の移動局にブロードキャストするステップとを有することを特徴とした無線通信システムの制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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