説明

無線通信システム内の干渉を管理する方法および装置

本発明は、無線通信システム内の干渉を管理する方法を提供する。この方法は、第1の無線通信装置によって受信された干渉信号120の一部を示す情報を受信するステップと、干渉信号120の一部を復号するステップと、干渉信号120の復号された一部に基づいて、第2の無線通信装置115に宛てられた少なくとも1つのバックオフ命令を提供するステップとを含んでもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般には、通信システムに関し、より具体的には、無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特に無線周波数で無線通信を行うことは、多数の急増する技術において一般的になっている。たとえば、無線通信は、基地局と、携帯電話、携帯情報端末、スマートフォン、ページャ、テキストメッセージング装置、全地球測位装置、ナビゲーションシステム、ネットワークインターフェースカード、ノート型コンピュータ、デスクトップコンピュータなどの移動体装置との間の伝送のために使用される。無線技術は、Bluetooth(登録商標)、WiFi(登録商標)およびIEEE 802.11プロトコルなどのプロトコルに従って動作する短距離トランシーバを使用して様々なネットワークへのアクセスを提供するためにも使用され得る。たとえば、キーボードは、Bluetoothプロトコルによる無線周波数伝送を使用して、キーストロークを示す情報をデスクトップコンピュータに送信してもよい。別の実施例では、WiFiプロトコルに従って動作する無線インターフェースカードを含むノート型コンピュータは、空港ターミナルにあるアクセスポイントを介してインターネットにアクセスしてもよい。
【0003】
携帯電話システムなど、多くの従来の無線通信システムは、予約された周波数帯内で動作する。たとえば、ユニバーサル移動通信システム(UMTS:Universal Mobile Telecommunication System)を実装する無線通信システムは、約1900MHzから約2200MHzにわたる予約された周波数帯域内で動作してもよい。したがって、それぞれ異なる無線通信システム間の干渉は、重複する周波数帯域でこれらのシステムが送信しないことを保証することによって最小限に抑えられ得る。しかし、無線アプリケーションの急増によって、ますます不足しているスペクトルを求める激しい競争が生じている。したがって、公平で一貫した客観的なやり方で残りのスペクトルを与えることは、集中型コマンド・制御(C&C:command and control)免許付与制度の下では、徐々に難しくなっている。C&C手法は、非効率的でもあり、スペクトル不足を悪化させている。
【0004】
乏しいスペクトルを異なる無線技術およびシステム間で共有するための技術が開発されている。たとえば、世界中の通信規制当局(特に英国のOfcomおよび米国のFCC)は、より柔軟な、あまり「手の掛からない」スペクトル管理ポリシーを実施するための技術を研究している。(小規模ではあるが)既に実施されている、より軽いスペクトル管理制度のいくつかの例は、共有される免許不要の電波利用(spectrum commons)を作成することを含む。一部の場合では、共有スペクトルは免許制とされ、たとえば、共有スペクトル帯域幅は、プライベートコモンズであり、免許所有者は、第2当事者がスペクトルにアクセスすることを許可することができる。あるいは、共有スペクトルは、スペクトルの無免許部分とすることができ(たとえば共有スペクトル帯域幅は、ISMバンドなどのパブリックコモンズであり)、したがって、様々な装置による使用は、全く制限されていない。
【0005】
免許不要の電波利用に関する主な問題のうちの1つは、干渉である。様々な範囲の装置および無線技術が免許不要の電波利用(すなわち免許免除の帯域)で動作することができ、それによって、干渉を緩和するための従来のポライトネスプロトコルの有効性が減少する傾向がある。ポライトネスプロトコルは一般に、各装置が送信帯域幅内に現在存在している送信を「聞き」、他の装置がスペクトルを使用しているかどうか判断することを必要とする。装置は、他の装置が送信している場合、送信を開始する前に、ランダムな時間量を待機してもよい。しかし、免許不要の電波利用内で送信している装置が同じ技術を共有することができず、したがって、他の装置が存在するかどうか判断できないことがある。したがって、それぞれ異なる装置は、その送信が他の送信に干渉しているかどうか判断することができない。これは、装置が明示的なポライトネスプロトコロルに従わないことがあるので、隠れ端末の問題がない場合でも言えることである。
【0006】
さらに、装置は、別の装置からの干渉が存在すると判断し得る場合でも、干渉する装置と通信できないことがある。免許不要の電波利用で使用される様々な技術および/またはプロトコルのせいで、装置は、必ずしも干渉元(interferer)を識別できるとは限らない。装置は、干渉元を識別し得る場合でも、干渉装置からの干渉信号を復号するために必要なハードウェアおよび/またはソフトウェアを有していないことがある。この点を例示するために、表1は、互換性がないが、同じ無線周波数帯域で現在共存しているそれぞれ異なる無線技術およびプロトコルの非網羅的なリストを提供している。これらの技術のうちの2つ以上を使用する装置が同時に、同じ地理的領域で送信している場合、破局的な干渉が生じることがある。免許不要の電波利用への干渉を緩和するための確立した技術はないが、免許不要の電波利用のための実現技術を開発する努力は現在行われている。
【表1】

【0007】
共通マルチ無線メディアアクセス制御層(CMR−MAC:common multi−radio medium access control layer)は、多様な無線アクセス技術を制御するための手法である。CMR−MACでは、それぞれ異なるアクセス技術および規格を実装する装置が、共通の、互換性のあるMACを操作する。現在の研究努力は、互いに干渉しない(すなわちそれぞれ異なるスペクトル帯域で動作する)アクセス技術の協力、たとえば複数のアクセス技術を介して宛先にデータを送信することを可能にすることに注力している。したがって、CMR−MACは潜在的には、複数の技術の共存を調整するやり方であり得るが、同じスペクトル内で送信する装置間の干渉を緩和することはできない。またCMR−MACプロトコルは、有効であるために、一規格として誰によっても採用されるものでなければならない。さらに、CMR−MACは、プロトコルスタックの下位層に存在し、したがって、高位層に影響を及ぼし、それによってCMR−MACとアクセス技術の間の密接な結合がもたらされる。これは、アクセス技術がCMR−MACを中心にして構築されなければならないので、すべてのアクセス技術向けに実装することを難しくする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
機会的アクセス(opportunistic access)によるコグニティブ無線は、共有スペクトル内で特定のタスクを実施するためにトランシーバが特定の送信または受信パラメータに変更を加えることを必要とする提案技術である。変更は、無線スペクトルの観察に基づいて行われてもよい。ソフトウェアによって定義された無線は、コグニティブ無線を可能にするための重要な技術と見なされる。ソフトウェア定義の無線は、単一のトランシーバが複数の無線アクセス技術を理解し使用することができるように、無線の動的な再構成のためのソフトウェア技術を使用する。しかし、コグニティブ無線は、依然として未熟な技術であり、それが技術的かつ経済的に実現可能になる前に、多くの異なる分野において著しい進展がなされることが必要である。ソフトウェア定義無線は成熟しておらず、電池式装置のバッテリ寿命を減少させるより電力消費の増加を伴う、より複雑な(したがって高価な)トランシーバがもたらされる。また受信機は現在、すべての使用可能な無線技術をスキャンできるほど高速にそれ自体を再構成することができない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記に述べられた諸問題の1つまたは複数の影響に対処することを対象とする。下記は、本発明のいくつかの態様についての基本的な理解を促すために、本発明の簡略化された要約を示している。この要約は、本発明を網羅的に概観するものではない。それは、本発明の重要なまたは重大な要素を識別するものでも、本発明の範囲を定めるものでもない。その唯一の目的は、以下に説明されるより詳細な説明の序文として、いくつかの概念を簡略化された形で提示することである。
【0010】
本発明の一実施形態では、無線通信システム内の干渉を管理するための方法が提供される。この方法は、第1の無線通信装置によって受信された干渉信号の一部を示す情報を受信するステップと、干渉信号の一部を復号するステップと、干渉信号の復号された一部に基づいて、第2の無線通信装置に宛てられた少なくとも1つのバックオフ命令を提供するステップとを含んでもよい。
【0011】
本発明の別の実施形態では、無線通信システム内の干渉を管理するための方法が提供される。この方法は、干渉信号を受信するステップと、干渉信号が少なくとも1つの無線装置から受信されたかどうか判断するステップと、干渉信号が前記少なくとも1つの無線装置から受信されたと判断することに応答して干渉信号の一部を示す情報を提供するステップとを含んでもよい。
【0012】
本発明は、添付の図面と併せて、以下の説明を参照することによって理解され得る。図面では、同じ参照符号は、同様の要素を識別する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明による、無線通信システムの第1の例示的な実施形態を示す概念図である。
【図2】本発明による、干渉エンフォーサの例示的な一実施形態を示す概念図である。
【図3】本発明による、干渉信号を識別し、干渉信号を示す情報を提供する方法の例示的な一実施形態を示す概念図である。
【図4】本発明による、干渉信号を復号し、バックオフ命令を提供する方法の例示的な一実施形態を示す概念図である。
【図5】本発明による、ある無線通信装置から別の無線通信装置にバックオフ命令を提供する方法の例示的な一実施形態を示す概念図である。
【図6】本発明による、無線通信システムの第2の例示的な実施形態を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、様々な修正および代替の形が可能であるが、その特定の実施形態が、例示するために図面に示されており、本明細書で詳細に述べられる。しかし、特定の実施形態について本明細書で述べることは、本発明を開示された特定の形に限定するものではなく、その逆に、添付の特許請求の範囲に定められた本発明の精神および範囲内に含まれるすべての修正物、等価物および代替物を網羅するものであることを理解されたい。
【0015】
本発明の例示的な実施形態について以下に述べられる。分かり易くするために、本明細書では、実際の実装形態のすべての特徴について述べられているとは限らない。もちろん、こうした実際のいずれかの実施形態の開発においては、開発者の特定の目標を達成するために、実装形態によって異なるシステム関連およびジネス関連の制約の遵守など、実装形態に特有の複数の決定が行われるべきであることが理解されよう。さらに、こうした開発努力は複雑で、多大な時間を要するものであり得るが、しかし、本開示の利益を得る当業者にとっては日常的な仕事であることが理解されよう。
【0016】
本発明および対応する詳細な説明の一部は、コンピュータメモリ内のデータビットに対する操作のソフトウェア、またはアルゴリズムおよび記号表現に関して提示されている。これらの説明および表現は、当業者がその仕事の内容を他の当業者に効果的に伝えるためのものである。アルゴリズムは、本明細書で使用される用語のように、または一般に使用されるように、所望の結果をもたらす自己一貫性のある工程シーケンスと考えられる。諸ステップは、物理量の物理的な操作を必要とするステップである。必ずしも必要でないが、通常、これらの量は、格納され、転送され、組み合わされ、比較され、他のやり方で操作されることができる光学的、電気的または磁気的信号の形を取る。主として一般的に使用するために、これらの信号をビット、値、要素、記号、文字、用語、数字などと呼ぶことが時々好都合であることが分かっている。
【0017】
しかし、これらのおよび類似の用語はすべて、適切な物理量に関連付けられるものであり、これらの量に適用された機会的なラベルにすぎないことに留意されたい。特に別記しない限り、または説明から明らかなとおり、「処理する(processing)」、「コンピュータ処理する(computing)」、「計算する(calculating)」、「判断する(determining)」または「表示する(displaying)」などの用語は、コンピュータシステムのレジスタおよびメモリ内の物理、電子量として表されたデータを操作し、コンピュータシステムのメモリまたはレジスタ、あるいは他のこうした情報記憶、伝送または表示装置内の物理量として同様に表された他のデータに変換するコンピュータシステムまたは類似の電子コンピューティング装置の動作およびプロセスを指す。
【0018】
ソフトウェアで実施される本発明の諸態様は一般に、何らかの形プログラム記憶媒体内で符号化され、または何らかのタイプの伝送媒体を介して実施されることにも留意されたい。プログラム記憶媒体は、磁気的(たとえばフロッピー(登録商標)ディスクまたはハードドライブ)であっても、光学的(たとえばコンパクトディスク読出し専用メモリ、すなわち「CD−ROM:compact disk read only memory」)であってもよく、また読出し専用であっても、ランダムアクセスであってもよい。同様に、伝送媒体は、ツイストペア線、同軸ケーブル、光ファイバ、または当技術分野で知られている他の何らかの適切な伝送媒体とすることができる。本発明は、所与のいずれかの実装形態のこれらの態様によって限定されるものではない。
【0019】
次に、本発明について、添付の図面を参照して述べる。様々な構造、システムおよび装置が、説明するためだけに、また当業者によく知られている詳細で本発明を不明瞭にしないように、図面に概略的に示されている。しかし、添付の図面は、本発明の例示的な諸実施例について述べ説明するために含まれている。本明細書で使用される語句は、当業者によるそれらの語句の理解に一致する意味を有するものと理解し解釈すべきである。用語または語句の特別な定義、すなわち、当業者によって理解される通常の慣例的な意味とは異なる定義を、本明細書中で用語または語句を一貫して使用することによって暗示することは意図されていない。用語または語句が特別な意味、すなわち当業者によって理解されている以外の意味を有することが意図される限りでは、こうした特別な定義は、その用語または語句についての特別な定義を直接かつ明確に提供する定義のやり方で本明細書中で明示的に述べるものとする。
【0020】
図1は、無線通信システム100の第1の例示的な実施形態を概略的に示している。示された実施形態では、無線通信システム100は、ネットワーク105に通信可能に結合された異なるエンティティ間で情報を送信するために使用され得るネットワーク105を含む。ネットワーク105は、1つまたは複数の規格に従って動作し、1つまたは複数の有線および/または無線通信プロトコルに従って情報を通信してもよい。たとえば、ネットワーク105は、インターネットであってもよい。しかし、ネットワーク105内に実装されたプロトコルおよび/または規格は、設計選択の問題であり、本発明にとって重要ではない。
【0021】
無線通信システム100は、ネットワーク105に通信可能に結合された複数の無線通信装置110、115をも含む。図1には2つの無線通信装置110、115が示されているが、無線通信システム100は任意の数の無線通信装置110、115を含んでもよいことを、本開示の利益を得る当業者には理解されたい。示された実施形態では、無線通信装置110、115は、基地局110、115である。しかし、本発明は基地局110、115に限定されないことを、本開示の利益を得る当業者には理解されたい。代替実施形態では、無線通信装置110、115は、基地局ルータ、アクセスポイントなどであってもよい。無線通信装置110、115は、携帯電話、携帯情報端末、スマートフォン、ページャ、テキストメッセージング装置、全地球測位装置、ネットワークインターフェースカード、ノート型コンピュータ、デスクトップコンピュータなどの移動体装置とすることもできる。
【0022】
基地局110は、基地局115によって送信された情報を識別しかつ/または復号できないことがある。したがって、基地局115によって送信された信号120は、基地局110によって、干渉信号120と解釈され得る。本明細書では、用語「干渉信号」は、無線通信装置が受信しかつ/または復号しようとしている信号に干渉するいずれかの信号を指すために使用される。干渉信号は、無線通信装置が受信しかつ/または復号しようとしている信号を含むスペクトルの一部の中に、周囲、熱および/または環境雑音を含むことがある。干渉信号は、無線通信装置によって認識されず、かつ/または無線通信装置によって復号され得ない、他の無線通信装置によって提供された信号を含むこともある。たとえば、CDMAプロトコルに従って動作する無線通信装置は、TDMAプロトコルに従って送信される信号を認識せず、または復号できないことがある。したがって、TDMAプロトコルに従って送信された信号は、CDMAプロトコルを使用して無線通信装置に送信される信号に干渉することがある。干渉信号は一般に、無線通信装置によってランダムノイズと解釈されるが、これは、必ずしもあらゆる状況に当てはまるとは限らないことがある。
【0023】
基地局110は、干渉信号120が周囲騒音でなく、別の無線通信装置(たとえば基地局115)によって送信されていると決定してもよい。しかし、基地局110は、異なるプロトコルに従って動作するので、干渉信号120を復号し、またはどの無線通信装置が干渉信号120を与えているか識別できないことがある。したがって、基地局110は、ネットワーク105に通信可能に結合された干渉エンフォーサ(interference enforcer)125に、干渉信号120のサンプル(および恐らく干渉信号120に関連する他の情報)を提供してもよい。干渉エンフォーサ125は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェアまたはその任意の組合せで実装されてもよい。さらに、干渉エンフォーサ125は、単一の装置で実装されても、2つ以上の装置で実装されてもよい。
【0024】
干渉エンフォーサ125は、以下に詳細に説明されるように、基地局110によって与えられた干渉信号120のサンプルを復号してもよい。次いで、干渉エンフォーサは、干渉信号120の復号されたサンプルを使用して、干渉信号120を送信している無線通信装置(たとえば基地局115)を識別し、基地局115にバックオフ命令を提供してもよい。本明細書では、用語「バックオフ命令」は、他の無線通信装置上の干渉を低減するために無線通信装置が送信を修正すべきであることを示す任意の命令を指すものと理解されよう。例示的なバックオフ命令は、それだけに限らないが、パワーダウン命令、送信に使用されている1つまたは複数のチャネルを変更する命令、1つまたは複数のチャネル上の送信を中断する命令などを含む。一実施形態では、干渉エンフォーサ125は、罰金、送信権の取消しなど、干渉信号120を与えることへのペナルティを実施することもできる。
【0025】
図2は、干渉エンフォーサ200の例示的な一実施形態を概念的に示している。示された実施形態では、干渉エンフォーサ200は受信機205と送信機210とを含み、それらは、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェアまたはその任意の組合せで実装されてもよい。図2で受信機205および送信機210は別個のエンティティとして示されているが、別法として受信機205および送信機210は、トランシーバなどの単一の装置で実装されても、他の何らかの装置組合せで実装されてもよいことを、本開示の利益を得る当業者には理解されたい。受信機205および送信機210はそれぞれ、信号を受信し、送信するように構成される。信号は、任意のプロトコルに従って受信されかつ/または送信されてもよい。しかし、以下に詳細に説明されるように、干渉エンフォーサ200は一般に、複数のプロトコルに従って信号および/またはメッセージを受信し、復号し、符号化し、送信することができる。
【0026】
一実施形態では、受信機205は、図1に示される基地局110などの無線通信装置から、干渉信号を示す情報を受信する。たとえば、受信機205は、干渉信号の一部を示す、カプセル化された情報を含む1つまたは複数のパケットを受信してもよい。パケットは、無線通信装置によって理解される1つまたは複数のプロトコルに従って形成されてもよいが、上記に説明されたように、干渉信号の一部は、無線通信装置が識別し、理解しかつ/または符号化できないことがある1つまたは複数の他のプロトコルに従って形成され、符号化されかつ/または送信されていることがある。したがって、上記に説明されたように、カプセル化された情報は、干渉信号をサンプリングすることによって形成されてもよい。
【0027】
干渉エンフォーサ200内のコントローラ215は、干渉信号を示す情報にアクセスする。たとえば、受信機205は、受信されたパケットからヘッダーおよび/または他のカプセル化情報を抜き取り、次いで、干渉信号を示すカプセル化情報をコントローラ215に提供してもよい。図2には示されていないが、干渉エンフォーサ200、受信機205、コントローラ215は、受信されたパケット、および/または干渉信号を示すカプセル化情報を格納するためのメモリ素子、バッファ、レジスタなどを含んでもよいことを、本開示の利益を得る当業者には理解されたい。したがって、受信機205は、記憶素子のうちの1つにカプセル化情報を提供してもよく、コントローラ215は、記憶素子のうちの1つからのカプセル化情報にアクセスしてもよい。次いで、コントローラ215は、干渉信号を示す情報を復号しようと試みてもよい。
【0028】
示された実施形態では、干渉エンフォーサ200は、1つまたは複数の無線アクセスプロトコルスタック225のプロトコルライブラリ220を含む(またはそれへのアクセスを有する)。無線アクセスプロトコルスタック225はそれぞれ、1つまたは複数の関連プロトコルに従って形成されかつ/または符号化された信号を復号するために使用されてもよい。したがって、コントローラ215は、干渉信号を示す情報をうまくデコードすることができる無線アクセスプロトコルスタック225を求めてプロトコルライブラリ220を探索してもよい。たとえば、コントローラ215は、複数の無線アクセスプロトコル225を通って進み、各無線アクセスプロトコルへの干渉信号を示す情報の一部を復号しようと試みてもよい。コントローラ215は、無線アクセスプロトコルスタック225のうちの1つを使用して、干渉信号を示す情報の一部をうまく復号する場合、この無線アクセスプロトコルスタック225を使用して、干渉信号を示す情報のすべてを復号してもよい。一実施形態では、コントローラ215は、以下に詳細に説明されるように、無線通信装置によって提供された他の情報を使用して、適切な無線アクセスプロトコルスタック225を識別することもできる。
【0029】
次いで、コントローラ215は、干渉信号の復号されたサンプルを使用して、干渉信号を送信している1つまたは複数の無線通信装置を識別してもよい。たとえば、復号された情報は、干渉信号を送信している1つまたは複数の無線通信装置の識別(および/またはそれに関連するアドレス)を示す情報を含んでもよい。次いで、コントローラ215は、送信機210を使用して、干渉する無線通信装置に提供され得るバックオフ命令を形成してもよい。一実施形態では、コントローラ215は、干渉する無線通信装置によって使用される1つまたは複数のプロトコルに従って、バックオフ命令を含むメッセージを形成し、次いで、干渉する無線通信装置にこのメッセージを提供する。あるいは、コントローラ215は、干渉する無線通信装置によって使用されるプロトコルに従って、バックオフ命令を含むメッセージを形成し、次いで、干渉信号を受信している無線通信装置によって理解される1つまたは複数のプロトコルを使用して、このメッセージをカプセル化する。次いで、カプセル化メッセージは、干渉信号を受信している無線通信装置に提供されてもよく、この装置は、干渉する無線通信装置に、バックオフ命令を含むメッセージを提供してもよい。上記に説明されたように、干渉エンフォーサ200は、罰金、送信権の取消しなど、干渉信号をもたらすことへのペナルティを実施することもできる。
【0030】
図3は、干渉信号を識別し、干渉信号を示す情報を提供する方法300の例示的な一実施形態を概念的に示している。示された実施形態では、図1に示された基地局110などの無線通信装置が、干渉信号を受信し(305)、干渉信号が1つまたは複数の別の無線通信装置によってもたらされる可能性が高いかどうか判断する(310)。たとえば、無線通信装置は、干渉信号に関連する周波数帯域内の干渉信号の強度および周囲騒音のレベルを決定してもよい(310)。干渉信号の強度が、周囲雑音レベルによって決定された閾値より小さく、またはほぼ等しい場合は、無線通信装置は、干渉信号が1つまたは複数の別の無線通信装置によってもたらされないと決定してもよい(310)。次いで、無線通信装置は、干渉信号を監視しかつ/または受信し続けてもよい(305)。
【0031】
干渉信号の強度が、周囲雑音レベルによって決定された閾値より大きいと判断される場合は、無線通信装置は、1つまたは複数の別の無線通信装置が干渉信号をもたらされると決定してもよい(310)。次いで、無線通信装置は、干渉信号の一部をサンプリングしてもよい(315)。信号サンプリングの技術は、当技術分野ではよく知られており、分かり易くするために、本明細書ではさらに説明されない。一実施形態では、無線通信装置は、干渉信号の復号を試みることもできる。無線通信装置は、干渉する1つまたは複数の無線通信装置を識別するために、復号試みの結果を使用してもよい。無線通信装置は、知られている干渉源、干渉の周波数帯域、干渉信号に関連する(またはそこから導出された)位置情報など、干渉装置に関連する他の情報を収集し、またはそれにアクセスすることもできる。
【0032】
次いで、無線通信装置は、ペイロードとして干渉信号のサンプリングされた一部を含む1つまたは複数のカプセル化パケットを形成してもよい(320)。一実施形態では、カプセル化パケットは、上記で説明された情報など、干渉信号に関連する他の情報を含むこともできる。あるいは、使用可能であればこの情報は、他のパケット内に提供されてもよい。次いで、カプセル化パケットは、たとえばインターネットまたはあるいは他のネットワークを介して干渉エンフォーサに送信されてもよい(325)。次いで、干渉エンフォーサは、干渉信号のサンプリングされた一部を復号しようと試みてもよい。
【0033】
図4は、干渉信号を復号し、バックオフ命令を提供する方法400の例示的な一実施形態を概念的に示している。示された実施形態では、図2に示された干渉エンフォーサ200などの干渉エンフォーサは、第1の無線通信装置によって検出された干渉信号を示す情報を含む1つまたは複数のパケットを受信する(405)。たとえば、干渉エンフォーサは、ペイロードとして干渉信号のサンプリングされた一部を含むカプセル化パケットを受信してもよい(405)。一実施形態では、干渉エンフォーサは、知られている干渉源、干渉の周波数帯域、位置情報など、干渉信号に関連する他の情報を受信することもできる。
【0034】
干渉エンフォーサは、たとえば上記に説明されたプロトコルスタックのライブラリを使用して、干渉信号のサンプリングされた一部を復号しようと試みる(410)。次いで、干渉エンフォーサは、干渉信号の復号された一部から、干渉する無線通信装置に関連する識別および/またはアドレスを抽出する(415)。次いで、干渉する無線通信装置の識別および/またはアドレスを使用して、上記に説明されたように、干渉する無線通信装置にバックオフ命令を提供してもよい(420)。一実施形態では、干渉エンフォーサは、ネットワークを介して、干渉する無線通信装置にバックオフ命令を提供する(420)。あるいは、干渉エンフォーサは、第1の無線通信装置にバックオフ命令(またはバックオフ命令を含むメッセージ)を提供してもよく(420)、次いで、この第1の無線通信装置は、たとえば2つの無線通信装置間のエアインターフェースを介して、干渉無線通信装置にバックオフ命令を提供してもよい。
【0035】
図5は、第1の無線通信装置から第2の無線通信装置にバックオフ命令を提供する方法の例示的な一実施形態を概念的に示している。示された実施形態では、第1の無線通信装置は、干渉エンフォーサから、バックオフ命令を含むメッセージを受信する(505)。第1および第2の無線通信装置は同じプロトコルに従って動作し得ないので、第1の無線通信装置によって受信された(505)メッセージは、第1の無線通信装置によって理解される第1のプロトコルに従って符号化されるパケットであり得る。しかし、メッセージは、第2の無線通信装置によって理解される第2のプロトコルによって符号化されるペイロードを含んでもよい。
【0036】
次いで、第1の無線通信装置は、バックオフ命令を含むメッセージの少なくとも一部を、たとえば第1と第2の無線通信装置の間のエアインターフェースを介して第2の無線通信装置に提供してもよい(510)。一実施形態では、第1の無線通信装置は、干渉エンフォーサによって提供されたメッセージを第1のプロトコルに従って復号し、メッセージに含まれ得るヘッダーおよび/または他のカプセル化情報を抜き取り、(干渉エンフォーサによって)第2のプロトコルに従って符号化されたメッセージの一部を提供してもよい(510)。
【0037】
図6は、無線通信システム600の第2の例示的な実施形態を概念的に示している。示された実施形態では、アクセス端末605は、エアインターフェース615を介して、アクセスネットワーク610との既存の無線通信接続を有する。無線通信システム600は、アクセス端末605から隠れているアクセス端末620をも含む。本明細書では、また当技術分野における一般的な用法に従って、用語「隠れ端末」は、第2の端末によっては検出され得ない信号を送信し得る第1の端末を指すものと理解されよう。たとえば、第1と第2の端末間の距離が大きすぎる場合、第1および第2の端末は、他の端末による送信の存在を検出できないことがあり、したがって、これらの端末は、互いから「隠れている」。別の実施例では、建物、地理的特徴など1つまたは複数の障害物が、第1および/または第2の端末が他の端末による送信の存在の検出することを妨げることがある。
【0038】
示された実施形態では、矢印625によって示されるように、アクセス端末620は、アクセス端末605と共有された周波数チャネルを使用してアクセスネットワーク610と通信を開始しようと試みる。アクセス端末605および615は互いに隠れているので、アクセス端末620は、アクセス端末605による送信の存在を検出することができず、したがって、関連するポライトネスプロトコルに違反し、アクセス端末605による送信と重複する期間中に既存のエアインターフェース615を介してセッション開始メッセージ625を送信してもよい。次いで、アクセス端末620による送信は、アクセス端末605による送信に干渉し得る。
【0039】
アクセスネットワーク610は、アクセス端末620によって送信された信号625が干渉信号であると決定してもよい。したがって、アクセス端末620からの干渉信号の一部がサンプリングされ、干渉エンフォーサ630に提供されてもよい。たとえば、上記に説明されたように、アクセスネットワーク610は、ペイロードとして干渉信号のサンプリングされた一部を含む1つまたは複数のパケットを提供してもよい。次いで、干渉エンフォーサ630は、(干渉信号がアクセスネットワーク610上でまだ復号されていない場合)干渉信号を復号し、アクセス端末620へのバックオフ命令を形成してもよい。示された実施形態では、干渉エンフォーサ630は、アクセスネットワーク610にバックオフ命令を提供し、次いで、このアクセスネットワーク610は、矢印635によって示されるように、エアインターフェースを介してアクセス端末620にバックオフ命令を提供する。あるいは、干渉エンフォーサ630は、別の経路(図6に示されていない)を介してアクセス端末620にバックオフ命令を提供してもよい。
【0040】
上記の干渉管理実施(interference enforcement)のための技術の実施形態は、従来のやり方に比べていくつかの利点を有し得る。たとえば、無線通信装置は、複数の異なる無線アクセス技術および/またはプロトコルによって提供され得る信号を復号しかつ/または理解する必要はない。したがって、無線通信装置のハードウェア、ファームウェアおよび/またはソフトウェア要件(ならびに関連するコスト)は、無線通信装置が複数の無線アクセス技術および/またはプロトコルを復号しかつ/または理解しようと試みることより著しく小さいものであり得る。さらに、上記技術の実施形態は、レガシー規格および/または機器へ変更をほとんど伴わずに、現在の技術を使用して実施され得る。したがって、上記の手法は、共通の無線スペクトル周波数帯内で複数の無線アクセス技術の使用をサポートするための実用的で実現可能な技術であり得る。
【0041】
上記の技術を実装する無線通信システムを維持しかつ/または向上させることは、コグニティブ無線技術で使用するために提案された方法など、干渉管理実施への分散型手法を使用する無線通信システムを維持しかつ/または向上させることに比べて難しくないかもしれない。具体的には、新しいアクセス技術の導入には干渉エンフォーサへの更新だけが必要であり得るが、分散型の手法は、無線通信システム内のあらゆる単一の受信機への更新を必要とする。上記の干渉エンフォーサ技術は、規制への比較的に緩やかな(light touch)手法を維持しながら、通信規制当局がスペクトル使用に対する制御を実施するための便利な機構を提供することもできる。
【0042】
上記の技術は、隠れ端末の問題を克服するためにも使用され得る。上記の技術は一般に、それぞれ異なる無線通信システムで実装され得るポライトネスプロトコルの動作には密接に結合されていない。したがって、これらの干渉管理実施の技術は、IEEE 802.11規格によって定義されたメディアアクセス制御層で実装された分散協調機能のコンテキストでうまく働き得る。対照的に、IEEE 802.11規格に記載されたポイント調整機能は、分散型システムを完全に集中制御されたシステムへと修正するコストを伴い得るが、隠れ端末の問題の克服に役立つ。
【0043】
上記に開示された特定の諸実施形態は、本明細書の教示の利益を得る当業者に明らかな、等価であるが異なるやり方で本発明が修正され実施され得るので、例示的なものにすぎない。さらに、添付の特許請求の範囲に示されるもの以外には、本明細書に示された構成または設計の詳細への制限は意図されていない。したがって、上記に開示された特定の実施形態が変更されまたは修正され得ることは明らかであり、こうした変形形態はすべて、本発明の範囲および精神内のものと見なされる。したがって、本発明に求められる保護について、添付の特許請求の範囲に記載される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の無線通信装置によって受信された干渉信号の少なくとも一部を示す情報を受信するステップと、
干渉信号の受信された一部を復号するステップと、
干渉信号の復号された一部に基づいて、第2の無線通信装置に宛てられた少なくとも1つのバックオフ命令を提供するステップとを含む、方法。
【請求項2】
干渉信号の一部を示す情報を受信するステップが、干渉信号の一部を示すカプセル化された情報を含む、少なくとも1つのパケットを受信するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
干渉信号の一部を復号するステップが、干渉信号が、第2の無線通信装置によって提供された符号化された信号であると決定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
干渉信号の一部を復号するステップが、符号化された信号に関連する少なくとも1つのプロトコルを決定するステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つのプロトコルを決定するステップが、プロトコルライブラリ、および第1の無線通信装置によって提供された前記少なくとも1つのプロトコルを示す情報のうちの少なくとも1つに基づいて前記少なくとも1つのプロトコルを決定するステップを含み、干渉信号の一部を復号するステップが、前記少なくとも1つのプロトコルに基づいて干渉信号の一部を復号するステップを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
干渉信号の復号された一部に基づいて第2の無線通信装置の識別を決定するステップを含み、前記少なくとも1つのバックオフ命令を提供するステップが、第2の無線通信装置の識別を使用して前記少なくとも1つのバックオフ命令を提供するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
干渉信号を受信するステップと、
干渉信号が少なくとも1つの無線通信装置から受信されたかどうか判断するステップと、
干渉信号が前記少なくとも1つの無線通信装置から受信されたと判断することに応答して、干渉信号の少なくとも一部を示す情報を提供するステップとを含む、方法。
【請求項8】
干渉信号が前記少なくとも1つの無線通信装置によって提供されたかどうか判断するステップが、干渉信号の強度を周囲騒音レベルと比較するステップを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
干渉信号の一部をサンプリングするステップを含み、干渉信号を示す情報を提供するステップが、干渉信号のサンプリングされた一部をカプセル化することによって少なくとも1つのパケットを形成するステップと、干渉信号を示すカプセル化された情報を含む前記少なくとも1つのパケットを提供するステップとを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの無線通信装置に宛てられた少なくとも1つのバックオフ命令を示す情報を受信するステップと、前記少なくとも1つのバックオフ命令を前記少なくとも1つの無線通信装置に提供するステップとを含む、請求項7に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−536801(P2009−536801A)
【公表日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−509628(P2009−509628)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【国際出願番号】PCT/US2007/010326
【国際公開番号】WO2007/133432
【国際公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(596092698)アルカテル−ルーセント ユーエスエー インコーポレーテッド (965)
【Fターム(参考)】