説明

無線通信システム

【課題】 ミリ波等を用いた超高速無線通信装置において、point−to−multipoint通信や多様なソースを多重に伝送することを可能にすること。
【解決手段】 親無線装置は送信機のみを有する放送型であり、複数のデータが親無線装置から多重化送信され、受信機のみを有する複数の子無線装置おいては、それらの内選択されたデータを取り出し、処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,マイクロ波・ミリ波帯の超高速無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IEEE1394準拠ネットワーク等動画像を含むマルチメディアデータ伝送が行える超高速双方向無線通信システムが実現されるようになっている。このようなシステムでは、400Mbpsと超高速データ伝送が可能、プラグ&プレイが可能等の長所がある。通常のIEEE1394ネットワークの形態はケーブルによる接続であるが、ケーブルの長さが4.5mに制限されること、部屋間接続が面倒なことから、無線化の検討が行われるようになっている。
【0003】
従来の無線1394としては、ミリ波60GHzの広帯域性を用い、1394の属性をそのまま受け継ぎ、ケーブルを無線リンクに代えた無線伝送速度500Mbpsのリピータ機能を有するもの(アダプタ)が知られている。またより高速なものとして、ギガビットイーサネット(登録商標)を無線化することも行なわれている。これもケーブルを無線リンクに代えた無線伝送速度1.25Gbpsのメディアコンバータの機能を有するものである。尚、関連ある先行技術については以下の特許文献1を参照されたい。
【0004】
【特許文献1】特開2001−136138号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記した従来技術では、図14に示すように限られた映像ソースをpoint−to−point通信で伝送することしかできず、多様なソースをpoint−to−multipoint通信で伝送することが困難な不都合があった。例えば展示会等で、種々の高精細映像信号を共通の親無線機から複数の大型ディスプレイに無線伝送し、表示することが困難であった。また無線リンクの性能に関しては、1394およびギガビットイーサネット(登録商標)とも全二重リンクであるために、図のように送・受別のアンテナを用いた場合アンテナのサイドローブにより一つの無線機において自身の送信波を受信してしまい、エラーを頻発するという問題もあった。ここで、1は無線1394アダプタ#A、2は同じく#Bであり、11、12はアダプタ#Aの送信機および受信機、15、16はアダプタ#Bの送信機および受信機、13は1394のケーブルリンクを無線伝送に適したシリアルリンクに変換する長距離PHY(物理層回路)であり、例えばアダプタ#Aに1394機器としてのデジタルビデオカメラ(DVC)14Aを接続し、アダプタ#Bに1394機器としてのディスプレイ14Bを接続し、ビデオカメラの映像信号をディスプレイに伝送、表示している。17はアンテナである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本件発明は、以下の特徴を有する課題を解決するための手段を採用している。
【0007】
請求項1に記載された発明は、複数のデータソースを多重化し出力する、あるいはデータソースを分割して多重化し出力する、もしくは多重化されたデータソースを出力するデータ処理・出力回路と、前記データ処理・出力回路に接続された親無線装置と、複数の子無線装置と、それぞれ前記複数の子無線装置に接続された複数のデータ端末とを有し、子無線装置およびデータ端末は、前記複数のデータに識別符号をつけて前記データ処理・出力回路で多重化され親無線装置から送信された多重化データを受信し、その内の選択された識別符号のデータを取り出し、処理することを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載された発明は、前記親無線装置は前記子無線装置からの応答信号の有無に関わらずデータを送信することを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載された発明は、前記親無線装置は送信機のみを備え、前記子無線装置は受信機のみを備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載された発明は、無線リンクが双方向半二重であり、前記親無線装置は前記子無線装置からの応答に応じてデータを送信することを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載された発明は、データソースが接続された親無線装置と、複数の子無線装置とそれぞれに接続されたデータ端末とを有し、前記親無線装置と前記複数の子無線装置の内、選択された一の子無線装置は送信機および受信機を有し、残りの子無線装置は受信機のみを備え、親無線装置と前記送信機および受信機を有する選択子無線装置との間で双方向通信がなされ、複数のデータが識別符号をつけて多重化され、当該多重化データが親無線装置から送信され、前記複数の子無線装置と前記複数の子無線装置それぞれに接続された各データ端末は、前記複数のデータに識別符号をつけて前記親無線装置から送信された多重化データを受信し、その内の選択された識別符号のデータを取り出し、処理することを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載された発明は、データ通信方式がIEEE1394に基づいていることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載された発明は、前記多重化データがStream Headerを有し、M(Mは1以上の整数)個のストリームデータには前記Stream Headerによりそれぞれデータ識別符号が付与されることを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載された発明は、前記受信器のみを有する子無線装置において、SD(Signal Detect)を信号受信の発出レベルに固定しておき、通信リンクが常に形成されているように設定されていることを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載された発明は、データ通信方式がEthernet(登録商標)に基づいていることを特徴とする。
【0016】
請求項10に記載された発明は、前記多重化データはRTPヘッダを有し、当該RTPヘッダは各実データの識別符号を指定することを特徴とする。
【0017】
請求項11に記載された発明は、前記複数の子無線装置もしくはデータ端末はネットワークを形成しており、子無線装置の内の選ばれた一つの装置が他を制御することを特徴とする。
【0018】
請求項12に記載された発明は、前記親無線装置のアンテナは広ビームあるいはマルチビームであることを特徴とする。
【0019】
請求項13に記載された発明は、データソースが接続されたデータ側無線装置と、複数の端末側無線装置とを有し、前記データ側無線装置はデータ用送信機およびコマンド用受信機を備え、前記端末側無線装置の内の選択された一の装置はデータ用受信機およびコマンド用送信機を有し、残りの端末側無線装置は少なくともデータ用受信機を有し、前記端末側無線装置は、前記複数のデータに識別符号をつけて多重化され前記データ側無線装置から送信された多重化データを受信し、その内の選択された識別符号のデータを取り出し、処理することを特徴とする。
【0020】
請求項14記載された発明は、データソースが接続されたデータ側無線装置と、複数の端末側無線装置とを有し、前記データ側無線装置はデータ用送信機およびコマンド用送受信機を有し、端末側無線装置の内の選択された一の装置はデータ用受信機およびコマンド用送受信機を有し、残りの端末側無線装置は少なくともデータ用受信機を有し、端末側無線装置では、複数のデータが識別符号をつけて多重化されデータ側無線装置から送信された多重化データを受信し、それらの内選択された識別符号のデータを取り出して、処理することを特徴とする。
【0021】
請求項15に記載された発明は、データ用送信のモードは放送型であることを特徴とする。
【0022】
請求項16に記載された発明は、データ側無線装置のデータ用送信機のアンテナは広ビームあるいはマルチビームであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明においては、ミリ波等を用いた超高速無線通信システムにおいて、親無線装置から多様なデータソースが、それに識別符号をつけて多重化送信される。受信機のみを有する複数の子無線装置がその多重化信号を受信し、所定の識別符号のデータソースを復調、映像表示等データ処理できる。したがって、超高速point−to−multipoint通信システム、マルチディスプレイ表示システム等を経済的に構築することが可能となる。また選ばれた子無線装置に送信機、あるいはコマンド用無線機を具備することもできるので、経済性を損なわずにさらに応用を拡大することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1は本発明の第1の実施の形態に係る無線通信システムの構成例を示している。数台のDVC:14A1〜14Amの映像データは例えばデータ処理・出力回路23としてのPCに取り込まれIDを付加、多重化され、例えばギガビットイーサネット(登録商標)に載せられ、親無線装置21としてのギガビットイーサネット(登録商標)コントローラ24を通じて高速ASK方式送信機TX1から送信される。各子無線装置1〜n:22B1〜22BnにはASK復調器を有する受信機RX2〜RXn+1が用いられ、コントローラにより受信データの中から選択されたIDの映像データが取り出され、ビデオカード25を通じてディスプレイ1〜n:14C1〜14Cnにより表示される。ただし通常のギガビットイーサネット(登録商標)では、全二重双方向通信であるので、親無線装置と通信リンクを形成できるのはどれか一つの子装置だけであり、point−to−point通信である。
【0025】
本実施の形態ではmultipoint通信を実現するために、親無線装置は放送型であり、親無線装置は子無線装置からの応答信号の有無に関わらずデータを送信し、子無線装置は常に受信し続ける。このため図1に示した構成では、親無線装置は送信機のみ備え、子無線装置は受信機のみ備えており、極めて経済的なシステムを提供できる。また子無線装置は送信機を有していないので、受信機は自装置が出すエラー信号となる送信波を受信することが無い。このような放送型の通信を実現するパケットの構成例を図2に示す。パケットは、Datalink Header51、IP Header52、UDP Header53、RTP Header54と実データが流れるPaylord55で構成される。
【0026】
本構成では、UDP/IP転送により放送型とし、IP Header52においてMulticast IP Address使用により任意の受信機がデータを受信することが可能となる。また各データのIDはRTP Header54で指定する。各子無線装置では、Multicast IP AdressとIDを指定することにより、所望のデータを抜き出すことができる。図1の構成では、例えばあらかじめコントローラにこれらの設定を行なっておくことにより、所望のデータが得られる。またデータを変更するには、親無線装置側のPCでIDを変更すれば良い。
【0027】
本実施の形態では、無線伝送速度が1Gbps以上と高速であり、DVフォーマットデータ(〜100Mbps使用)なら、9チャネルまとめて送信でき、3×3のマルチディスプレイ分のデータ伝送が可能である。また親局アンテナにはビーム角20°程度の少し広いビームのアンテナ(距離20mで水平広がり〜7m)あるいはビーム角10°で3ビームのマルチビームアンテナを用いれば、例えば子側の4台並べた大型PDPへの伝送範囲が確保できる。またマルチビームの代わりにサイドローブを利用する方法もある。子側アンテナは、狭ビーム高利得アンテナとし、通信距離を確保し、かつマルチパスを防ぐ。図3はこのようなマルチディスプレイへのマルチ映像信号の伝送、表示システムの例であり、親無線装置21により、DVC等14A1〜14A4の4つの映像コンテンツを送信し、22B1〜22B4の受信機で受信、選択復調し、14C1〜14C4の4つのPDPで表示する。
【0028】
子無線装置群は水平方向に並べて設置されているので、親無線装置には水平広ビーム、垂直狭ビームのアンテナを用いると良い。このようなアンテナは比較的高い利得を有して通信距離を確保できるとともに、床、天井での電波の反射によるマルチパスを防いでエラーの無い通信を確保できる。各表示映像は、PCサーバ23での図2のようなパケット構成において、IDの付け替えによって変更できる。また各映像ソースを任意に並べ替え、また一つの映像ソースを分割することができ、したがってディスプレイに表示される映像を任意に入れ替え、また合成することもできる。このシステムは、展示会等で煩雑なケーブル敷設工事が不要で容易に設営することができ、大きな経済効果をもたらす。このような表示コンテンツの変更等制御を子無線装置側で行なう実施形態を示したのが図4である。
【0029】
子無線装置側のコントローラは子無線装置制御回路、例えばPC26とネットワーク、例えばBluetoothで繋がっており、Multicast IP AddressとIDの指定をこの回路でいつでも書き換えることができる。また図4の実施形態では、映像ソースは複数台のサーバ1〜m:14D1〜14Dmから供給される。この場合は各サーバに異なるMulticast IP Addressが付与される。
【0030】
またギガビットイーサネット(登録商標)の半二重通信モードを用いれば、親無線装置は各子無線装置からの応答に応じてデータを送信するMultipoint通信も可能である。この構成例を図5に示す。ここではすべての無線装置が送信機と受信機を有している。
【0031】
図6は本発明の第2の実施の形態に係る無線通信システムの構成例を示している。本例では、通信は1394に基づいて行なわれる。14A1〜14Amからの映像データは例えばPCに取り込まれ、IDを付加、多重化され、親無線装置としての例えばワイヤレス1394アダプタ:21Aから送信される。各子無線装置:22D1〜22Dnでは同じく1394PHYを通じて信号が取り出され、セレクタを有する1394機器:14E1〜14Enにより、選択されたIDの映像データが取り出され、ディスプレイに表示される。
【0032】
1394では実効320Mbpsのデータ伝送が可能であるので、DVフォーマットデータ(〜100Mbps使用)なら、3チャネルまとめて送信できる。ただし通常の1394リンクでは、全二重双方向通信であるので、親無線装置と通信リンクを形成できるのはどれか一つの子装置だけであり、point−to−point通信である。本実施例ではmultipoint通信を実現するために、親無線装置は放送型であり、親無線装置は子無線装置からの応答信号の有無に関わらずデータを送信し、子無線装置は常に受信し続ける。この状態は、IEEE1394では、通信リンクが形成されている条件であるSD(Signal Detect)を、信号が受信されていることの発出レベルであるHigh Levelに固定しておくことによって実現できる。また1394において、このような放送型の通信を実現するパケットの構成例を図7に示す。パケットは、Isochronous Header61、Stream Header62、と実データが流れるStreamデータ群:63〜65で構成される。Isochronous Header61でBroadcast Channelを設定し、また各データのIDはStream Headerで付与する。
【0033】
図8は本発明の第3の実施形態に係る無線通信システムの構成例を示している。親無線装置としてのサーバを有するワイヤレスギガビットイーサネット(登録商標)トランシーバ21Cと選ばれた子無線装置としてのワイヤレスギガビットイーサネット(登録商標)トランシーバ22C1はそれぞれ送信および受信機を有しており、双方向全二重通信がなされている。また選ばれた子無線装置22C1と並んで、受信機のみを有する従属型の子無線装置としてのワイヤレスギガビットイーサネット(登録商標)無線装置:22C2〜22Cnが設けられている。数台のDVC:14A1〜14Amの識別符号付き映像データは親無線装置21Cの高速ASK方式送信器TX1から送信される。
【0034】
各子装置にはASK復調器を有する受信機RX2〜RXn+1が用いられ、選択された識別符号の映像データが取り出され、表示される。従属型の子無線装置:22C2〜22Cnは、常に受信モードで動作する。親無線装置21は、選ばれた子無線装置22C1だけからの応答信号を受信するので、point−to−point通信としてのリンクが形成され、ギガビットイーサネット(登録商標)に基づいた通信が可能となる。また従属型の子無線装置:22C2〜22Cnはミリ波の送信機が不要であるため、システムを低価格にすることができる。無線伝送速度が1Gbps以上と高速な場合、DVフォーマットデータ(〜100Mbps使用)なら、9チャネルまとめて送信でき、3×3のマルチディスプレイ分のデータ伝送が可能である。また親局アンテナにはビーム角20°程度の少し広いビームのアンテナ(距離20mで水平広がり〜7m)あるいはビーム角10°で3ビームのマルチビームアンテナを用いれば、例えば子側の4台並べたPDPへの伝送範囲が確保できる。またマルチビームの代わりにサイドローブを利用する方法もある。子側アンテナは、狭ビーム高利得アンテナとし、通信距離を確保し、かつマルチパスを防ぐ。
【0035】
このような構成の映像伝送・表示システムの例を図9に示す。本例では3×3のマルチディスプレイ:14C1〜14C9が設置され、選ばれた子無線装置22C1および子無線装置22C2〜22C9が装着されている。多数の映像ソースが保存されたHDD装置14Mが親無線装置21Cに接続され、ここから映像データが送信され、ディスプレイに表示される。親無線装置はサーバ機能を持っており、各個別映像ソースを多重化して伝送しても良いし、一つの高精細映像を分割して伝送し、ディスプレイ側で合成して表示しても良い。後者では大画面での高精細映像の表示ができる。1ディスプレイ当りDVフォーマットデータの780×480ピクセルを表示すれば、全体で2340×1440の超高精細画面となる。このシステムは、展示会等で煩雑なケーブル敷設工事が不要で容易に設営することができ、大きな経済効果をもたらす。
【0036】
図10は本発明の第4の実施の形態に係る無線通信システムの構成例を示している。本実施の形態では、親無線装置21Dと選ばれた子無線装置22D1とは無線1394での双方向通信がなされている。また数台の1394データ端末、ここではDVC、との1394のリンクを通常のケーブル接続の1394物理層回路を含むサーバ28との間で形成し、このサーバを親無線装置としてのアダプタ21Dに接続しているため、接続できるDVCの数を増やすことができ、汎用性が高まる。また子無線装置群は、選ばれた子無線装置22D1が接続されているPCを中心にネットワークを形成しており、該PCにより高度な映像表示の制御が可能である。
【0037】
図11は本発明の第5の実施の形態に係る無線通信システムの構成例を示している。データ側無線装置31は、例えば1Gbpsの超高速データ送出用ASK方式送信機TXa34、端末側からのコマンド受信用受信機RXa35および制御ならびにデータ入出力回路36Aを有しており、選ばれた端末側装置32は超高速データ用受信機RX1:37、コマンド用送信機TXb38および制御ならびにデータ・コマンド入出力回路36Bを有している。また選ばれた端末側無線装置32と並んで、超高速データ用受信機RX2〜RXh:39B2〜39Bhのみを有する残りの端末側無線装置2〜h:33B2〜33Bhが設けられている。数台のDVCの識別符号付き映像データはデータ側無線装置に取り込まれ、端末側装置から要求された受信コマンドに基づき、データ用送信機から送信される。各端末側装置にはASK復調器を有するデータ用受信機が用いられ、選択された識別符号の映像データが取り出され、表示される。選ばれた端末側装置はデータ側無線装置への要求コマンド送出だけでなく、残りの端末側無線装置の制御を行っても良い。またこの制御回線40は有線と無線のどちらでも良い。コマンド用通信は低速度で良いので、低価格の送・受信機を用いることができ、また超高速データ通信は単方向であるので、全体のシステム価格を低減できる。例えば超高速データ通信にはミリ波60GHz帯を用い、コマンド用通信には2.4GHz帯を用いれば良い。データ用無線伝送速度が1Gbpsの場合、DVフォーマットデータ(〜100Mbps使用)なら、9チャネルまとめて送信でき、3×3のマルチディスプレイ分のデータ伝送が可能である。またデータ側無線装置の送信用アンテナにはビーム角20°程度の少し広いビームのアンテナ(距離20mで水平広がり〜7m)あるいはビーム角10°で3ビームのマルチビームアンテナを用いれば、例えば端末側の4台並べたPDPへの伝送範囲が確保できる。またマルチビームの代わりにサイドローブを利用する方法もある。端末側装置の受信用アンテナは、狭ビーム高利得アンテナとし、通信距離を確保し、かつマルチパスを防ぐ。
【0038】
図12は本発明の第6の実施の形態に係る無線通信システムの構成例を示している。図11の実施形態における選ばれた端末側無線装置からデータ側無線装置へのコマンド用の単方向無線機に変えて、それぞれ送・受信機を有する無線機TRXa41(データ側)およびTRXb42(端末側)を設けたものである。この場合は、データ側無線装置からも端末装置へコマンドを送って制御することが可能となり、汎用性が高まる。選ばれた端末側無線装置32C以外のデータ端末装置群:33C2〜33Cpはデータ受信用受信機:RX2〜RXpのみを備えていても良いし、図示のようにさらにコマンド用無線機TRXb2〜TRXbpも具備しても良い。コマンド用無線機には例えばBluetoothを利用すれば低コスト化が図れる。また本例では、データ側無線装置31Aはサーバ43を内蔵しており、超高速データ送出用ギガビットイーサネット(登録商標)コントローラ(GEC)A:43Aとバックボーンネットワーク44に接続されるギガビットイーサネット(登録商標)コントローラ(GEC)B:43Bと、データストレージのHDD43Cを備えている。したがってデータ装置側のマルチデータは随時更新し、さらに増やすことが可能である。またデータ端末側ではそのコンテンツの内容を照会し、所望のコンテンツの送出をリクエストできる。
【0039】
図13はこのような超高速データ伝送システムを応用したホットスポットの例を示すものである。例えば天井にデータ側無線装置31Aを設置する。これはギガビットイーサネット(登録商標)ケーブル44でバックボーンのネットワークに繋がっている。このデータ用送信機は円形状の広角ビームアンテナ、例えばビーム半値幅60°を備えており、下方に広いエリアで1Gbpsの超高速でデータを送出できる。下方には例えば、超高速データ用受信機とコマンド用無線機を具備した無線装置51Aを有し、映像コンテンツを選択、表示できるキオスク端末51、同じく同様な無線装置を備えたPC、PDA等個人用データ端末52〜54が置かれている。各データ端末では、コマンド用無線機を用いてデータ側無線装置内のコンテンツの内容を照会し、所要コンテンツのダウンロード要求を出す。その要求に基づきデータ側無線装置内のサーバは、このコンテンツに対し所定のIDを付加し、超高速データ用送信機から送出する。データ端末では受信データから所定のIDのコンテンツを取り出し、保存、表示等の処理を行なう。またここでデータ送信は放送型であり、またコマンド用無線はアドホック型とすれば、データ端末はこのスポットに自由に出入りできる。本システムでは、超高速が要求されるデータ通信にはGbpsクラスの単方向無線を用い、また広角ビームアンテナを適用することにより、point−to−multipointのギガビットホットスポットシステムを経済的に構築できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る無線通信システムの構成を示した図である。
【図2】図1のシステムにおける、放送型の通信を実現するパケットの構成を示した図である。
【図3】図1のシステムにおける、マルチディスプレイへのマルチ映像信号の伝送、表示システムの例を示した図である。
【図4】表示コンテンツの変更等制御を子無線装置側で行なう実施形態を示した図である。
【図5】図4のシステムで、無線装置が送信機と受信機を有している構成を示した図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る無線通信システムの構成を示した図である。
【図7】図6のシステムにおける、放送型の通信を実現するパケットの構成を示した図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態に係る無線通信システムの構成を示した図である。
【図9】図8のシステムにおける、マルチディスプレイへのマルチ映像信号の伝送、表示システムの例を示した図である。
【図10】本発明の第4の実施の形態に係る無線通信システムの構成を示した図である。
【図11】本発明の第5の実施の形態に係る無線通信システムの構成を示した図である。
【図12】本発明の第6の実施の形態に係る無線通信システムの構成を示した図である。
【図13】超高速データ伝送システムを応用したホットスポットの例を示した図である。
【図14】従来の超高速双方向無線通信システムの構成を示した図である。
【符号の説明】
【0041】
1 無線1394アダプタ#A
2 無線1394アダプタ#B
11,15 送信機
12,16 受信機
13 1394長距離PHY(物理層回路)
14A,14A1〜14Am 1394機器(ビデオカメラ)
14B,14C1〜14Cn, 14E1〜14En ディスプレイ
14D1〜14Dm サーバ
17 アンテナ
21,21A,21B,21C,21D 親無線装置
22C1,22D1 選択子無線装置
22B1〜22Bn,22C2〜22Cn,22D1〜22Dn :子無線装置
23 データ処理・出力回路
24 ギガビットイーサネット(登録商標)コントローラ
25 ビデオカード
26 子無線装置制御回路
31,31A データ側無線装置
32,32C 選択端末側無線装置
33B2〜33Bl 端末側無線装置
33C2〜33Cp データ端末
34 データ用送信機
35 コマンド用受信機
36A,36B 制御入出力回路
37,39B2〜39Bh データ用受信機
38 コマンド用送信機
40 制御用ネットワーク
41,42 コマンド用無線機
43 サーバ
43A,43B ギガビットイーサネット(登録商標)コントローラ
43C HDD
44 バックボーンネットワーク
51 キオスク端末
51A 端末側無線装置
52〜54 個人用データ端末
TX1,TX2 送信機
RX1〜RXn+1 受信機
TXa データ用送信機
TXb コマンド用送信機
RXa コマンド用受信機
TRXa,TRXb コマンド用無線機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のデータソースを多重化し出力する、あるいはデータソースを分割して多重化し出力する、もしくは多重化されたデータソースを出力するデータ処理・出力回路と、
前記データ処理・出力回路に接続された親無線装置と、
複数の子無線装置と、
それぞれ前記複数の子無線装置に接続された複数のデータ端末とを有し、
子無線装置およびデータ端末は、前記複数のデータに識別符号をつけて前記親無線装置から送信された多重化データを受信し、その内の選択された識別符号のデータを取り出し、処理することを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記親無線装置は前記子無線装置からの応答信号の有無に関わらずデータを送信することを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記親無線装置は送信機のみを備え、前記子無線装置は受信機のみを備えたことを特徴とする請求項1および2記載の無線通信システム。
【請求項4】
無線リンクが双方向半二重であり、前記親無線装置は前記子無線装置からの応答に応じてデータを送信することを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項5】
データソースが接続された親無線装置と、
複数の子無線装置とそれぞれに接続されたデータ端末とを有し、
前記親無線装置と前記複数の子無線装置の内、選択された一の子無線装置は送信機および受信機を有し、残りの子無線装置は受信機のみを備え、
親無線装置と前記送信機および受信機を有する選択子無線装置との間で双方向通信がなされ、
複数のデータが識別符号をつけて多重化され、当該多重化データが前記親無線装置から送信され、
前記複数の子無線装置と前記複数の子無線装置それぞれに接続された各データ端末は、前記複数のデータに識別符号をつけて前記親無線装置から送信された多重化データを受信し、その内の選択された識別符号のデータを取り出し、処理することを特徴とする無線通信システム。
【請求項6】
データ通信方式がIEEE1394に基づいていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の無線通信システム。
【請求項7】
前記多重化データはStream Headerを有し、M(Mは1以上の整数)個のストリームデータには前記Stream Headerによりそれぞれデータ識別符号が付与されることを特徴とする請求項6記載の無線通信システム。
【請求項8】
前記受信器のみを有する子無線装置において、SD(Signal Detect)を信号受信の発出レベルに固定しておき、通信リンクが常に形成されているように設定されていることを特徴とする請求項6又は7記載の無線通信システム。
【請求項9】
データ通信方式がEthernet(登録商標)に基づいていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の無線通信システム。
【請求項10】
前記多重化データはRTPヘッダを有し、当該RTPヘッダは各実データの識別符号を指定することを特徴とする請求項9記載の無線通信システム。
【請求項11】
前記複数の子無線装置もしくはデータ端末はネットワークを形成しており、子無線装置の内の選ばれた一つの装置が他を制御することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の無線通信システム。
【請求項12】
前記親無線装置のアンテナは広ビームあるいはマルチビームであることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の無線通信システム。
【請求項13】
データソースが接続されたデータ側無線装置と、
複数の端末側無線装置とを有し、
前記データ側無線装置はデータ用送信機およびコマンド用受信機を備え、
前記端末側無線装置の内の選択された一の装置はデータ用受信機およびコマンド用送信機を有し、残りの端末側無線装置は少なくともデータ用受信機を有し、
前記端末側無線装置は、前記複数のデータに識別符号をつけて多重化され前記データ側無線装置から送信された多重化データを受信し、その内の選択された識別符号のデータを取り出し、処理することを特徴とする無線通信システム。
【請求項14】
データソースが接続されたデータ側無線装置と、
複数の端末側無線装置とを有し、
前記データ側無線装置はデータ用送信機およびコマンド用送受信機を有し、
端末側無線装置の内の選択された一の装置はデータ用受信機およびコマンド用送受信機を有し、残りの端末側無線装置は少なくともデータ用受信機を有し、端末側無線装置では、
複数のデータが識別符号をつけて多重化され前記データ側無線装置から送信された多重化データを受信し、それらの内選択された識別符号のデータを取り出して、処理することを特徴とする無線通信システム。
【請求項15】
データ用送信のモードは放送型であることを特徴とする請求項13および14記載の無線通信システム。
【請求項16】
データ側無線装置のデータ用送信機のアンテナは広ビームあるいはマルチビームであることを特徴とする請求項13〜15のいずれかに記載の無線通信システム。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−165689(P2006−165689A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−350257(P2004−350257)
【出願日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【出願人】(395011218)エフ・エーシステムエンジニアリング株式会社 (7)
【Fターム(参考)】