無線通信システム
【課題】本発明は、親局と子局とから構成される無線通信システムにおいて、干渉信号を検出した際にも親局と子局との間の通信を維持できるようにする。
【解決手段】たとえば、親局(AP)11は、無線通信システムの運用中に干渉信号112を検出した場合、直ちに現在の無線通信チャネルの利用を終わらせ、別の無線通信チャネルへ移行するための回避行動113を実施する必要から、子局(STA)(1)12に向けて、QAM変調よりも無線伝播エラーへの耐性が高い、ビーコン110と同じPSK変調にて、干渉信号112の検出状況および別の無線通信チャネルへ移行するための情報114を送信する。同様に、親局(AP)11は、干渉信号112の検出状況および別の無線通信チャネルへ移行するための情報115を、PSK変調にて、子局(STA)(2)13に送信する。
【解決手段】たとえば、親局(AP)11は、無線通信システムの運用中に干渉信号112を検出した場合、直ちに現在の無線通信チャネルの利用を終わらせ、別の無線通信チャネルへ移行するための回避行動113を実施する必要から、子局(STA)(1)12に向けて、QAM変調よりも無線伝播エラーへの耐性が高い、ビーコン110と同じPSK変調にて、干渉信号112の検出状況および別の無線通信チャネルへ移行するための情報114を送信する。同様に、親局(AP)11は、干渉信号112の検出状況および別の無線通信チャネルへ移行するための情報115を、PSK変調にて、子局(STA)(2)13に送信する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、他の無線局からの制御を受けることなしに送信を行い、無線通信に利用するチャネルを自立的に設定することができる基地局またはアクセスポイントなどの親局と、その親局によって、利用する無線通信チャネルおよび送受信動作が制御される端末局またはステーションなどの子局とから構成される無線通信システムに関するもので、特に、親局と子局との間で行われる無線通信時に干渉信号を検出した際の通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータ(PC)への搭載から広がり始めた無線LAN(Local Area Network)は、次第に様々な他の製品、たとえば、PC周辺機器、携帯電話、ゲーム機、家電製品、車載ナビゲーションシステムなどへ展開されつつある。無線LANとは、米国の電気,電子技術者協会(the Institute of Electrical & Electronics Engineers)が定めた規格「IEEE 802.11」に準じたものである。
【0003】
現在、主に利用されている無線LANは、規格「IEEE 802.11b/g」に準じており、比較的安価に入手が可能である。しかしながら、2.4(GHz)帯を利用するため、上述の通り、多くの製品へ搭載され、様々な市場へ展開し、使われ始めると、混雑してしまい、83.5(MHz)程度しかアサインされていない周波数資源の枯渇が問題となる。
【0004】
また、2.4(GHz)帯は、IMS(Industry Medical Science)帯域としても解放されており、POS(Point Of Sale)システム、倉庫内品管理システム(TAGシステム)、電子レンジ、テレメータシステム、映像素材伝送システム、コードレス電話などが無線LAN以外の用途で実際に運用されている。よく知られたシステムとして、ブルートゥース(Bluetooth(登録商標))が同周波数帯で運用されており、ワイヤレスヘッドセット(イヤホン)およびハンズフリー機能の実現のために、携帯電話などへの搭載が急速に伸び始めている。現在、携帯電話の出荷台数、市場席捲度(市場占有度合い)は、拡大傾向にあり、今後の周波数資源の枯渇対策が急務となっている。
【0005】
上述のような市場要求に応えるべく、西暦2000年頃から無線LANに利用可能な新しい周波数帯を解放する政策が継続的に実施されている。たとえば、西暦2000年に5.15〜5.25(GHz)の100(MHz)帯が、西暦2005年に5.25〜5.35(GHz)の100(MHz)帯がそれぞれ解放され、そして、西暦2007年に5.47〜5.725(GHz)の255(MHz)帯が新しく解放された。その結果、無線LANが5(GHz)帯で利用可能な総周波数帯は455(MHz)になり、さらに5.8(GHz)にアサインされているISM(Industrial Scientific Medical)帯域(5.725〜5.825GHz)の100(MHz)を含めると、555(MHz)もの帯域を利用することが可能になる。2.4(GHz)の83.5(MHz)と比較して、約6.6倍もの帯域が利用可能になるため、周波数資源の枯渇問題が解消される見込みである。
【0006】
しかし、この555(MHz)のうち、5.25〜5.35(GHz)および5.47〜5.725(GHz)の計355(MHz)は、一次業務として、気象レーダのような無線標定にアサインされており、無線LANは二次業務となっている。そのため、この帯域を利用する無線LANには、一次業務への与干渉防止が義務付けられている。具体的には、無線LAN(無線設備)は、レーダ検出機能の実装およびレーダ検出時の無線LANの運用規定を遵守する必要がある。
【0007】
日本の電波法(無線設備規則)、米国のFCC(Federal Communications Commission)規定および欧州のETSI(European Telecommunications Standards Institute)規定の、各法規書に記載されているレーダ検出機能の実装およびレーダ検出時の運用規定は、共通規定となっており、西暦2003年にITU―R(International Telecommunication Union−Radiocommunication Sector)で開催された“WRC(World Radiocommunication Conference)2003”で取り纏められた勧告(世界共通基準)にしたがって定められている。
【0008】
この法規書の規定により、他の無線局からの制御を受けることなしに送信を行い、無線通信に利用するチャネルを自立的に設定することができる基地局またはアクセスポイント(AP)などの親局と、この親局によって、利用する無線通信チャネルおよび送受信動作が制御される端末局またはステーション(Station(STA))などの子局から構成される無線通信システムの場合、親局には、レーダ検出機能の実装と子局への検出結果の通知、および、子局への送受信動作の制御が義務付けられている。また、子局は、親局の指示にしたがって送受信動作(Slave mode)を行う限り、レーダ検出機能の実装が免除されている。
【0009】
この規定の一部に、親局が子局との間で通信を開始した後にレーダ波を検出した場合の運用規定がある。これを運用中(通信中)のレーダ検出(In service monitoring)として、親局は、常に実施する必要がある。具体的には、運用中にレーダ波を検出した場合、それまで運用していた無線通信チャネルでの運用が禁止され、新規の無線通信チャネルへ全子局ごと移行する必要がある。また、その際、レーダ検出したことを起点に親局と子局との間での総通信時間(260msec)、および、現チャネルでの運用停止&新規無線通信チャネルへの移行完了時間(10sec)が規定されており、時間的に十分な余裕がない。
【0010】
レーダ波を検出した親局は、その親局に属している全子局に対して、現在確立している通信の終了または中断の指示および新規チャネルへの移行を、上述の総通信時間(260msec)内に通知する必要がある。周波数マネージメント規格である「IEEE 802.11h」によると、親局から発せられるビーコンタイミングをベースに、一斉に新規チャネルへ移行することになっている。
【0011】
しかし、親局とその親局に属する全子局とで構成される無線通信システム(BSS(Basic Service Set))の場合、全子局に対し、通信制限(終了または中断)および移行先の新規チャネル情報を確実に通知することができるかが運用上の課題となる。特に、子局の台数が多い場合、または、スリープモードの子局が存在する場合、あるいは、子局が親局からの離れている場合などにおいては、全ての子局に確実に情報を通知することが難しくなる。
【0012】
また、周波数マネージメント規定である「IEEE 802.11h」では、レーダ検出時の運用プロシジャ、そのための通信メッセージ構成など、論理的な仕組みは規定されているものの、各国および地域で定める強制規格(電波法令)を鑑みた上で確実に親局から子局へレーダ検出後の回避行動を通知する方法は規定されていない。
【0013】
このような様々な拘束条件下において、実現可能な一番簡単な方法として、親局からの一方的な強制切断(Disconnection)による子局でのタイムアウト処理などが考えられる。しかしながら、レーダ検出対象とする周波数帯域で無線LANを運用する大前提として、“親局によって、子局は利用する無線通信チャネルおよび送受信動作が制御される”がある。つまり、一方的な強制切断により、子局をフリーランさせてしまった場合、規定違反となる可能性もある。また、この場合、子局に移行先の新規チャネル情報が通知されないため、子局(たとえば、ユーザ)が不利益を被ることになる。
【0014】
また、仮に本規定にしたがって、親局が子局を制御していたとしても、制限された総通信時間(260msec)内で全ての子局へ確実に情報を通知するには、何らかの特徴のある運用方法が必要であるが、これまでは検討も規定もなされていなかった。
【0015】
上述したように、無線LANの市場要求、その普及のために新たな周波数帯が解放されているが、現在の強制規格(無線設備規則、FCC規定、ETSI規定)および標準規格(IEEE 802.11h)にしたがった機能の実装と運用だけでは、親局と子局とで構成される無線通信システムにおいては、親局がレーダ検出した際に確実に子局にレーダ検出後の情報などを通知することができず、運用中の切断などといったユーザに不快感や不利益を与える可能性がある。
【0016】
なお、本発明に関連する技術としては、同じ2.4(GHz)帯で運用されているブルートゥース機器とワイヤレスLAN機器との間の干渉を検出し、回避するために、パケット誤り率を用いてチャネル品質を推定するようにしたものが既に提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−211242号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、上記の問題点を解決すべくなされたもので、干渉信号を検出した際に、親局から全ての子局に干渉信号検出後の動作および運用に必要な情報を確実に通知でき、無線設備規則などで定められている干渉信号検出時の動作基準を満たしつつ、親局と子局との間の通信を維持することが可能な無線通信システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本願発明の一態様によれば、他の無線局からの制御を受けることなしに送信を行い、無線通信に利用するチャネルを自立的に設定することができる親局と、前記親局によって、利用する無線通信チャネルおよび送受信動作が制御される子局とから構成される無線通信システムであって、
前記無線通信システム内における無線通信の障害となる干渉信号を、前記親局もしくは前記子局のいずれかが検出した後、前記親局と前記親局に属している前記子局との間の無線通信に適用される変調方式が、前記無線通信システム内における同報通信に利用される変調方式と同一の変調方式に設定されることを特徴とする無線通信システムが提供される。
【0019】
また、本願発明の一態様によれば、他の無線局からの制御を受けることなしに送信を行い、無線通信に利用するチャネルを自立的に設定することができる親局と、前記親局によって、利用する無線通信チャネルおよび送受信動作が制御される子局とから構成される無線通信システムであって、
前記無線通信システム内における無線通信の障害となる干渉信号を、前記親局もしくは前記子局のいずれかが検出した後、前記親局と前記親局に属している前記子局との間の無線通信に適用される伝送方式が、前記干渉信号を検出する前の無線通信に適用されていた伝送方式よりも周波数利用効率の低い伝送方式に設定されることを特徴とする無線通信システムが提供される。
【0020】
さらに、本願発明の一態様によれば、他の無線局からの制御を受けることなしに送信を行い、無線通信に利用するチャネルを自立的に設定することができる親局と、前記親局によって、利用する無線通信チャネルおよび送受信動作が制御される子局とから構成される無線通信システムであって、
前記無線通信システム内における無線通信の障害となる干渉信号を、前記親局もしくは前記子局のいずれかが検出した後、前記親局と前記親局に属している前記子局との間の無線通信に適用される送信電力が、前記干渉信号を検出する前の無線通信に適用されていた送信電力以上の送信電力に設定されることを特徴とする無線通信システムが提供される。
【0021】
つまり、請求項1に記載の発明によれば、干渉信号を検出した後の全ての子局への無線通信に、広範囲に到達可能なビーコンなどに用いられる変調方式を採用するようにしているため、親局に属する全ての子局に対して確実に情報などを通知することが可能となる。
【0022】
請求項2に記載の発明によれば、干渉信号を検出した後の無線通信において、それまでの通信に利用していた伝送方式よりも周波数利用効率が低い伝送方式、すなわち、無線伝送歪み(伝播エラー)に耐性のある伝送方式を利用することで、親局に属する全ての子局に対して確実に情報などを通知することが可能となる。
【0023】
請求項3に記載の発明によれば、干渉信号を検出した後の無線通信において、それまでの通信に利用されていた送信電力以上の送信電力、すなわち、全ての子局が親局からの送信をできるだけ大きな受信レベルで受信できるような送信電力に設定することで、親局に属する全ての子局に対して確実に情報などを通知することが可能となる。
【0024】
請求項4に記載の発明によれば、検出する干渉信号が周期性をもつことから、無線標定として一次運用されているレーダ無線機からの無線信号、すなわち、レーダ波を確実に検出でき、レーダ波の検出後に親局および子局をあらかじめ定めた手順で回避動作させることが容易に可能となる。
【0025】
請求項5に記載の発明によれば、周波数利用効率を低くするために、単位時間(1/sec)かつ単位周波数(1/Hz)当たりに伝送可能な情報ビット数を少なくすることで、伝播エラーへの耐性を高めることが可能となる。
【0026】
また、請求項5に記載の発明によれば、周波数利用効率を低くするために、符号化率を下げることにより、誤り訂正能力を高め、伝播エラーへの耐性を高めることが可能となる。
【0027】
また、請求項5に記載の発明によれば、周波数利用効率を低くするために、複数の送信アンテナから同一の情報を伝送することで、伝播空間を利用した送信ダイバーシチ効果が得られ、伝播エラーへの耐性を高めることが可能となる。
【0028】
また、請求項5に記載の発明によれば、周波数利用効率を低くするために、同一情報を複数の周波数成分に割り当てて伝送することで、周波数ダイバーシチ効果が得られ、伝播エラーへの耐性を高めることが可能となる。
【0029】
また、請求項5に記載の発明によれば、周波数利用効率を低くするために、同一情報を時間的に繰り返し伝送することで、時間ダイバーシチ効果が得られ、伝播エラーへの耐性を高めることが可能となる。
【0030】
さらに、請求項5に記載の発明によれば、周波数利用効率を低くするために、適宜、単位時間または単位周波数当たりの伝送可能な情報ビット数を少なくした変調方式、低符号化率の誤り訂正符号、空間送信ダイバーシチ効果、周波数ダイバーシチ効果、時間ダイバーシチ効果を組み合わせて利用することにより、伝播エラーへの耐性をより高めることが可能となる。
【発明の効果】
【0031】
上記の構成により、干渉信号を検出した際に、親局から全ての子局に干渉信号検出後の動作および運用に必要な情報を確実に通知でき、無線設備規則などで定められている干渉信号検出時の動作基準を満たしつつ、親局と子局との間の通信を維持することが可能な無線通信システムを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。ただし、図面は模式的なものであり、各図面の寸法および比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面の相互間においても、互いの寸法の関係および/または比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。特に、以下に示すいくつかの実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための装置および方法を例示したものであって、構成部品の形状、構造、配置などによって、本発明の技術思想が特定されるものではない。この発明の技術思想は、その要旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0033】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態にしたがった無線通信システムにおける動作の一例を示すものである。ここでは、親局(AP)と子局(STA)との間の通信に利用される変調方式について、時間軸を対象にした場合を例に説明する。具体的には、ある無線通信周波数(以後、無線通信チャネル)を利用し、親局(AP)11とその親局(AP)11に属している子局(STA)(1)12および子局(STA)(2)13との間で行われる通信について、時間の経過に沿って説明する。
【0034】
なお、本実施形態においては、親局(AP)11が利用する無線通信チャネルの設定、および、子局(STA)12,13の送受信動作を制御することに加えて、親局(AP)11が干渉信号を検出し、ビーコン110と同じ変調方式への設定を実行する構成例を示したが、干渉信号の検出や変調方式への設定の実行は、この構成例に限定されるものではない。また、子局(STA)12,13は、先に記載した通り、レーダ検出機能の実装が免除されているが、レーダ検出機能を実装する構成も可能である。したがって、子局(STA)12,13のいずれか、あるいは、全てが干渉信号の検出やビーコン110と同じ変調方式への設定を実行する構成例も可能である。
【0035】
たとえば図1に示すように、親局(AP)11からは、子局(STA)(1)12および子局(STA)(2)13に対して、ビーコン(Beacon)110が周期的に送信されている。ビーコン110は、報知情報をPSK(Phase Shift Keying)変調にて送信するためのものである。また、親局(AP)11と子局(STA)(1)12との間では、QAM(Quadrature Amplitude Modulation)変調にて通常データ111の送受信が行われている。なお、子局(STA)(2)13は親局(AP)11に属しているが、通信し合うデータがないため、アイドル(Idle)状態にある。
【0036】
ここで、親局(AP)11は、無線通信システムの運用中に、別の無線システム(図示していない)からの干渉信号(たとえば、レーダ波)12の有無を常に監視する必要があり、干渉信号112を検出した場合には、直ちに現在の無線通信チャネルの利用を終わらせ、別の無線通信チャネルへ移行するための回避行動113を実施しなければならない。そのため、干渉信号112の検出後、親局(AP)11は、子局(STA)(1)12に向けて、ビーコン110と同じPSK変調にて、干渉信号112の検出状況および別の無線通信チャネルへ移行するための情報114を送信する。同様に、親局(AP)11は、子局(STA)(2)13に向けて、ビーコン110と同じPSK変調にて、干渉信号112の検出状況および別の無線通信チャネルへ移行するための情報115を送信する。なお、子局(STA)(1)12および子局(STA)(2)13に送信される、親局(AP)11からのビーコン110以外の報知情報116は、その変調方式がビーコン110と同一のPSKとなっている。
【0037】
子局(STA)(1)12および子局(STA)(2)13へ送信された情報114,115および報知情報116により、子局(STA)(1)12および子局(STA)(2)13は、移行先の新しい無線通信チャネルに関する情報を入手する。これにより、子局(STA)(1)12および子局(STA)(2)13は、親局(AP)11と共に、無線通信チャネルの変更117を実施する。
【0038】
このように、上記した第1の実施形態の場合、親局(AP)11が無線通信システムの運用中に別の無線システムからの干渉信号112を検出した際には、直ちに現在の無線通信チャネルの利用を終わらせ、別の無線通信チャネルへ移行するための回避行動113に必要な情報114,115,116を、同報通信に用いられるビーコン110と同じ変調方式を利用して通知するようにしている。これにより、無線伝播エラーへの耐性が高められるため、確実に、子局(STA)(1)12および子局(STA)(2)13へ回避行動113を行うための情報114,115,116を伝えることが可能となる。
【0039】
なお、本実施形態においては、2つの子局(STA)(1)12,(STA)(2)13を例に説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、ある親局(AP)に属する子局(STA)の台数に制限があるわけではない。
【0040】
[第2の実施形態]
図2は、本発明の第2の実施形態にしたがった無線通信システムにおける動作の一例を示すものである。ここでは、親局(AP)と子局(STA)との間の通信に利用される変調方式について、通信エリアを対象にした場合を例に説明する。また、同図(a)は、通常運用中、すなわち干渉信号を検出する前の無線通信システムの動作を説明するために示すもので、同図(b)は、干渉信号を検出した後の無線通信システムの動作を説明するために示すものである。
【0041】
なお、本実施形態においては、親局(AP)21が利用する無線通信チャネルの設定、および、子局(STA)22,23の送受信動作を制御することに加えて、親局(AP)21が干渉信号を検出し、ビーコンと同じ変調方式(PSK)への設定を実行する構成例を示したが、干渉信号の検出や変調方式への設定の実行は、この構成例に限定されるものではない。また、子局(STA)22,23は、先に記載した通り、レーダ検出機能の実装が免除されているが、レーダ検出機能を実装する構成も可能である。したがって、子局(STA)22,23のいずれか、あるいは、全てが干渉信号の検出やビーコンと同じ変調方式(PSK)への設定を実行する構成例も可能である。
【0042】
本実施形態の場合、たとえば図2(a)に示すように、運用時に干渉信号の有無を監視するIn service monitoring動作中の親局(AP)21と通信中の子局(STA)(1)22との間は、その通信エリア211に応じた変調方式であるQAM変調にて、通常通信214が行われている。また、子局(STA)(1)22よりも遠方となる広範な通信エリア212に位置するIdle中の子局(STA)(2)23は、親局(AP)21との間の通信がない(無通信状態213)。
【0043】
この状態において、たとえば図2(b)に示すように、別の無線システム(図示していない)からの干渉信号(たとえば、レーダ波)217を検出した親局(AP)21は、直ちに子局(STA)(1)22および子局(STA)(2)23に対して、現在の無線通信チャネルの利用を終わらせ、別の無線通信チャネルへ移行(回避行動)するために必要な情報215,216を、PSK変調にて通知する。これにより、子局(STA)(1)22および子局(STA)(2)23は、移行先の新しい無線通信チャネルに関する情報を入手する。この後、子局(STA)(1)22および子局(STA)(2)23は、親局(AP)21と共に、無線通信チャネルの変更を実施する。
【0044】
このように、上記した第2の実施形態の場合、親局(AP)21が無線通信システムの運用中に別の無線システムからの干渉信号217を検出した際には、直ちに現在の無線通信チャネルの利用を終わらせ、別の無線通信チャネルへ移行するための回避行動に必要な情報215,216を、それまでの通信で利用可能であった変調方式(QAM)から広範囲に到達可能なビーコンと同じ変調方式(PSK)に変更して通知するようにしている。これにより、無線伝播エラーへの耐性をより高めることが可能となり、確実に、子局(STA)(1)22および子局(STA)(2)23へ回避行動を行うための情報215,216を伝えることが可能となる。
【0045】
なお、本実施形態においては、2つの子局(STA)(1)22,(STA)(2)23を例に説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、ある親局(AP)に属する子局(STA)の台数に制限があるわけではない。
【0046】
図3は、本発明の無線通信システムにかかる、親局(AP)と子局(STA)とが遵守する必要がある法令(電波法)について説明するために示すものである。法令では、干渉信号を検出した際は、10秒(sec)以内に、現在の無線通信チャネルの利用(送信)を停止し、新しい無線通信チャネルへ移行することを規定している。また、新しい無線通信チャネルへの移行期間(10sec)内の、総通信時間(送信時間の総和)も260ミリ秒(msec)と規定している。
【0047】
説明に際して、対象となる無線通信システムには、親局(AP)31と、子局(STA)(1)32,子局(STA)(2)33,…,子局(STA)(n)34とが属している。ただし、子局(STA)(n)33のnは自然数であり、この例では、“3”以上の値となる。
【0048】
通常運用時、たとえば、親局(AP)31からはビーコン(BC−TX)310が送信される。これに対し、子局(STA)(1)32ではビーコン(BC−RX)311が、子局(STA)(2)33ではビーコン(BC−RX)312が、子局(STA)(n)34ではビーコン(BC−RX)313が、それぞれ受信される。子局(STA)(1)32,(STA)(2)33,…,(STA)(n)34は、それぞれ、親局(AP)31からの伝播距離が異なることにより、受信のタイミングが時間的にズレている。
【0049】
親局(AP)31が干渉信号を検出した後においては、親局(AP)31から子局(STA)(1)32への送信情報320の送信時間t1、子局(STA)(1)32での受信情報321に対する親局(AP)31へのレスポンス情報322の送信時間t2、親局(AP)31から子局(STA)(2)33への送信情報330の送信時間t3、子局(STA)(2)33での受信情報331に対する親局(AP)31へのレスポンス情報332の送信時間t4、親局(AP)31から子局(STA)(n)34への送信情報340の送信時間t5、子局(STA)(n)34での受信情報341に対する親局(AP)31へのレスポンス情報342の送信時間t6、親局(AP)31から全ての子局(STA)(1)32,(STA)(2)33,…,(STA)(n)34へ送信される報知情報350の送信時間t7、および、親局(AP)31から全ての子局(STA)(1)32,(STA)(2)33,…,(STA)(n)34へ送信されるビーコン360の送信時間t8の、合計時間(t1+t2+t3+t4+t5+t6+t7+t8)が260msec以下であり、これら一連の通信による新しい無線通信チャネルへの移行時間(“Interference Signal Detection”のタイミングから“Move to the new Communication Channel”までの時間)が10sec以下でなければならない。
【0050】
このように、無線通信システムにおいては、親局(AP)31から子局(STA)(1)32,(STA)(2)33,…,(STA)(n)34への、干渉信号検出後に新しい無線通信チャネルへの移行に関する情報を伝達するために利用可能な通信時間(送信時間)の総和が規定されている。ゆえに、各子局(STA)(1)32,(STA)(2)33,…,(STA)(n)34に、短い通信時間(送信時間)内で必要な情報を確実に伝えなければならない。そこで、上述した第1および第2の実施形態に示した発明が有効となり、その効果が容易に得られるものである。
【0051】
[第3の実施形態]
図4は、本発明の第3の実施形態にしたがった無線通信システムにおける動作の一例を示すものである。ここでは、親局(AP)と子局(STA)との間の通信に利用される変調方式(情報伝送効率)の、設定プロセス(フロー)について説明する。
【0052】
なお、本実施形態においては、親局(AP)41が利用する無線通信チャネルの設定、および、子局(STA)42,43,44の送受信動作を制御することに加えて、親局(AP)41が干渉信号を検出し、ビーコン45と同じ変調方式への設定を実行する構成例を示したが、干渉信号の検出や変調方式への設定の実行は、この構成例に限定されるものではない。また、子局(STA)42,43,44は、先に記載した通り、レーダ検出機能の実装が免除されているが、レーダ検出機能を実装する構成も可能である。したがって、子局(STA)42,43,44のいずれか、あるいは、全てが干渉信号の検出やビーコン45と同じ変調方式への設定を実行する構成例も可能である。
【0053】
たとえば、子局(STA)(1)42、子局(STA)(2)43、子局(STA)(3)44は、それぞれ、親局(AP)41との通信が可能な状態に設定されている。すなわち、子局(STA)(1)42,(STA)(2)43,(STA)(3)44は親局(AP)41に属しており、全ての子局(STA)(1)42,(STA)(2)43,(STA)(3)44には、共通、かつ、同時に、親局(AP)41からのビーコン45がBPSK(Binary Phase Shift Keying)にて変調されて送信される。
【0054】
本実施形態において、子局(STA)(1)42は、親局(AP)41との通信の状態が良好なエリアに存在し、親局(AP)41と子局(STA)(1)42との間では、情報伝送効率のよい変調方式、たとえば64QAMを利用した通信46を行うようになっている。また、子局(STA)(2)43は、子局(STA)(1)42よりも通信の状態が劣悪なエリアに存在し、親局(AP)41と子局(STA)(2)43との間では、64QAMよりも情報伝送効率が低い変調方式、たとえば16QAMを利用した通信48を行うようになっている。一方、子局(STA)(3)44は、親局(AP)41との間で通信する情報がないため、Idle状態47となっており、共通のビーコン45のみを受信できるようになっている。
【0055】
このような通常運用の状態において、親局(AP)41のIn service monitoring機能によって、他の無線システム(図示していない)からの干渉信号(たとえば、レーダ波)が検出されると、親局(AP)41は干渉信号検出プロセス49を実施する。すなわち、親局(AP)41は、子局(STA)(1)42との通信46に利用していた変調方式(64QAM)を、ビーコン45と同一の変調方式(BPSK)へ変更し、子局(STA)(1)42との通信410を実行する。同様に、子局(STA)(2)43との通信48に利用していた変調方式(16QAM)を、ビーコン45と同一の変調方式(BSPK)へ変更し、子局(STA)(2)43との通信411を実行する。また、Idle状態47であった子局(STA)(3)44に対しては、それまでに通信状態にないことから、たとえばビーコン45と同一の変調方式(BPSK)を利用した通信412を再開させる。こうして、全ての子局(STA)(1)42,(STA)(2)43,(STA)(3)44に対して確実に情報を通知した後に、親局(AP)41および子局(STA)(1)42,(STA)(2)43,(STA)(3)44は、揃って新しい無線通信チャネルへの移行プロセス413を実施する。
【0056】
このように、上記した第3の実施形態の場合、親局(AP)41が無線通信システムの運用中に別の無線システムからの干渉信号を検出した際にも、直ちに現在の無線通信チャネルの利用を終わらせ、別の無線通信チャネルへ移行するための回避行動(移行プロセス413)に必要な情報を、ビーコン45と同一の変調方式を利用して通知(通信410,411,412)するようにしている。これにより、各子局(STA)(1)42,(STA)(2)43,(STA)(3)44との間の無線伝播エラーを生じにくくすることが可能となる結果、確実に回避行動のための情報を通知できるようになる。
【0057】
なお、本実施形態においては、3つの子局(STA)(1)42,(STA)(2)43,(STA)(3)44を例に説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、ある親局(AP)に属する子局(STA)の台数に制限があるわけではない。
【0058】
[第4の実施形態]
図5は、本発明の第4の実施形態にしたがった無線通信システムにおける動作の一例を示すものである。ここでは、親局(AP)と子局(STA)との間の通信に利用される変調方式(周波数利用効率)の、設定プロセス(フロー)について説明する。
【0059】
なお、本実施形態においては、親局(AP)51が利用する無線通信チャネルの設定、および、子局(STA)52,53,54の送受信動作を制御することに加えて、親局(AP)51が干渉信号を検出し、それぞれの子局(STA)52,53,54との通信に利用する変調方式への設定を実行する構成例を示したが、干渉信号の検出や変調方式への設定の実行は、この構成例に限定されるものではない。また、子局(STA)52,53,54は、先に記載した通り、レーダ検出機能の実装が免除されているが、レーダ検出機能を実装する構成も可能である。したがって、子局(STA)52,53,54のいずれか、あるいは、全てが干渉信号の検出や通信に利用する変調方式への設定を実行する構成例も可能である。
【0060】
たとえば、子局(STA)(1)52、子局(STA)(2)53、子局(STA)(3)54は、それぞれ、親局(AP)51との通信が可能な状態に設定されている。すなわち、子局(STA)(1)52,(STA)(2)53,(STA)(3)54は親局(AP)51に属しており、全ての子局(STA)(1)52,(STA)(2)53,(STA)(3)54には、共通、かつ、同時に、親局(AP)51からのビーコン55がBPSKにて変調されて送信される。
【0061】
本実施形態において、子局(STA)(1)52は、親局(AP)51との通信の状態が良好なエリアに存在し、親局(AP)51と子局(STA)(1)52との間では、周波数利用効率の高い変調方式、すなわち単位時間かつ単位周波数当たりに伝送可能な情報ビット数が多い変調方式、たとえば64QAMを利用した通信56を行うようになっている。また、子局(STA)(2)53は、子局(1)52よりも通信の状態が劣悪なエリアに存在し、親局(AP)51と子局(STA)(2)53との間では、64QAMよりも周波数利用効率の低い変調方式、すなわち単位時間かつ単位周波数当たりに伝送可能な情報ビット数が64QAMよりも少ない変調方式、たとえば16QAMを利用した通信58を行うようになっている。一方、子局(STA)(3)54は、親局(AP)51との間で通信する情報がないため、Idle状態57となっており、共通のビーコン55のみを受信できるようになっている。
【0062】
このような通常運用の状態において、親局(AP)51のIn service monitoring機能によって、他の無線システム(図示していない)からの干渉信号(たとえば、レーダ波)が受信されると、親局(AP)51は干渉信号検出プロセス59を実施する。すなわち、親局(AP)51は、子局(STA)(1)52との通信56に利用していた変調方式(64QAM)を、それよりも周波数利用効率は低いものの、無線伝播エラーへの耐性の高い変調方式(16QAM)へ変更し、子局(STA)(1)52との通信510を実行する。同様に、子局(STA)(2)53との通信58に利用していた変調方式(16QAM)を、それよりも周波数利用効率は低いものの、無線伝播エラーへの耐性の高い変調方式(QSPK)へ変更し、子局(STA)(2)53との通信511を実行する。また、Idle状態57であった子局(STA)(3)54に対しては、それまでに通信状態にないことから、たとえばビーコン55と同一の変調方式(BPSK)を利用した通信512を再開させる。こうして、全ての子局(STA)(1)52,(STA)(2)53,(STA)(3)54に対して確実に情報を通知した後に、親局(AP)51および子局(STA)(1)52,(STA)(2)53,(STA)(3)54は、揃って新しい無線通信チャネルへの移行プロセス513を実施する。
【0063】
このように、上記した第4の実施形態の場合、親局(AP)51が無線通信システムの運用中に別の無線システムからの干渉信号を検出した際にも、直ちに現在の無線通信チャネルの利用を終わらせ、別の無線通信チャネルへ移行するための回避行動(移行プロセス513)に必要な情報を、それまで各子局(STA)(1)52,(STA)(2)53,(STA)(3)54が利用していた変調方式よりも無線伝播エラー耐性の高い変調方式を利用して通知(通信510,511,512)するようにしている。これにより、各子局(STA)(1)52,(STA)(2)53,(STA)(3)54との間の無線伝播エラーを生じにくくすることが可能となる結果、確実に回避行動のための情報を通知できるようになる。
【0064】
なお、本実施形態においては、3つの子局(STA)(1)52,(STA)(2)53,(STA)(3)54を例に説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、ある親局(AP)に属する子局(STA)の台数に制限があるわけではない。
【0065】
図6は、本発明にかかる無線通信システムにおいて、親局(AP)が検出する干渉信号について説明するために示すものである。
【0066】
すなわち、干渉信号は周期性をもつ無線信号であって、たとえば無線標定に利用されるレーダ波を想定している。レーダ波は、たとえば図6に示すように、模式的には、時間波形61のような信号である。ただし、図6において、“B”はバースト期間、“L”はバースト長、“PRF”はパルス繰り返し周波数、“W”はパルス幅である。
【0067】
図7は、干渉信号であるレーダ波の例を示すものである。レーダ波62には複数の種類があり、それぞれ仕様が異なる。ここでは6種類のレーダ波62を示しているが、これ以外の仕様のレーダ波も周期性をもつ干渉信号として、検出の対象となり得る。
【0068】
[第5の実施形態]
図8は、本発明の第5の実施形態にしたがった無線通信システムにおける動作の一例を示すものである。ここでは、親局(AP)と子局(STA)との間の通信に利用される伝送方式として、誤り訂正(畳み込み符号)の符号化率を用いた場合の設定プロセス(フロー)について説明する。
【0069】
なお、本実施形態においては、親局(AP)71が利用する無線チャネルの設定、および、子局(STA)72,73,74の送受信動作を制御することに加えて、親局(AP)71が干渉信号を検出し、それぞれの子局(STA)72,73,74との通信に利用する誤り訂正方式(符号化率)への設定を実行する構成例を示したが、干渉信号の検出や変調方式への設定の実行は、この構成例に限定されるものではない。また、子局(STA)72,73,74は、先に記載した通り、レーダ検出機能の実装が免除されているが、レーダ検出機能を実装する構成も可能である。したがって、子局(STA)72,73,74のいずれか、あるいは、全てが干渉信号の検出や通信に利用する誤り訂正方式(符号化率)への設定を実行する構成例も可能である。
【0070】
たとえば、子局(STA)(1)72、子局(STA)(2)73、子局(STA)(3)74は、それぞれ、親局(AP)71との通信が可能な状態に設定されている。すなわち、子局(STA)(1)72,(STA)(2)73,(STA)(3)74は親局(AP)71に属しており、全ての子局(STA)(1)72,(STA)(2)73,(STA)(3)74には、共通、かつ、同時に、親局(AP)71からのビーコン75が、符号化率R=1/2で符号化されて送信される。
【0071】
本実施形態において、子局(STA)(1)72は、親局(AP)71との通信の状態が良好なエリアに存在し、親局(AP)71と子局(STA)(1)72との間では、周波数利用効率のよい符号化率、たとえばR=5/6を利用した通信76を行うようになっている。また、子局(STA)(2)73は、子局(1)72よりも通信の状態が劣悪なエリアに存在し、親局(AP)71と子局(STA)(2)73との間では、符号化率R=5/6よりも符号化率の低い、たとえばR=3/4を利用した通信78を行うようになっている。一方、子局(STA)(3)74は、親局(AP)71との間で通信する情報がないため、Idle状態77となっており、共通のビーコン75のみを受信できるようになっている。
【0072】
このような通常運用の状態において、親局(AP)71のIn service monitoring機能によって、他の無線システム(図示していない)からの干渉信号(たとえば、レーダ波)が受信されると、親局(AP)71は干渉信号検出プロセス79を実施する。すなわち、親局(AP)71は、子局(STA)(1)72との通信76に利用していた符号化率R=5/6を、それよりも符号化率は低いものの、無線伝播エラーへの耐性の高い符号化率R=1/2へ変更し、子局(STA)(1)72との通信710を実行する。同様に、子局(STA)(2)73との通信78に利用していた符号化率R=3/4を、それよりも符号化率は低いものの、無線伝播エラーへの耐性の高い符号化率R=1/2に変更し、子局(STA)(2)73との通信711を実行する。また、Idle状態77であった子局(STA)(3)74に対しては、それまでに通信状態にないことから、たとえばビーコン75と同一の伝送方式(符号化率R=1/2)を利用した通信712を再開させる。こうして、全ての子局(STA)(1)72,(STA)(2)73,(STA)(3)74に対して確実に情報を通知した後に、親局(AP)71および子局(STA)(1)72,(STA)(2)73,(STA)(3)74は、揃って新しい無線通信チャネルへの移行プロセス713を実施する。
【0073】
このように、上記した第5の実施形態の場合、親局(AP)71が無線通信システムの運用中に別の無線システムからの干渉信号を検出した際にも、直ちに現在の無線通信チャネルの利用を終わらせ、別の無線通信チャネルへ移行するための回避行動(移行プロセス713)に必要な情報を、それまで各子局(STA)(1)72,(STA)(2)73,(STA)(3)74が利用していた符号化率よりも無線伝播エラー耐性の高い符号化率を利用して通知(通信710,711,712)するようにしている。これにより、各子局(STA)(1)72,(STA)(2)73,(STA)(3)74との間の無線伝播エラーを生じにくくすることが可能となる結果、確実に回避行動のための情報を通知できるようになる。
【0074】
なお、本実施形態においては、3つの子局(STA)(1)72,(STA)(2)73,(STA)(3)74を例に説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、ある親局(AP)に属する子局(STA)の台数に制限があるわけではない。
【0075】
また、本実施形態の無線通信システムにおいて、親局(AP)と子局(STA)との間の通信に利用される周波数利用効率を変化させる伝送方式としては、畳み込み符号に限定されるものではない。
【0076】
[第6の実施形態]
図9は、本発明の第6の実施形態にしたがった無線通信システムにおける動作の一例を示すものである。ここでは、親局(AP)と子局(STA)との間の通信に利用される伝送方式として、送信ダイバーシチを用いた場合の設定プロセス(フロー)について説明する。また、同図(a)は、通常運用中、すなわち干渉信号を検出する前の無線通信システムの動作を説明するために示すもので、同図(b)は、干渉信号を検出した後の無線通信システムの動作を説明するために示すものである。
【0077】
なお、本実施形態においては、親局(AP)81が利用する無線通信チャネルの設定、および、子局(STA)84の送受信動作を制御することに加えて、親局(AP)81が干渉信号を検出し、子局(STA)84との通信に利用する親局(AP)81のアンテナ本数を2本(ANTa,ANTb)にする構成例を示したが、干渉信号の検出やアンテナ本数は、この構成例に限定されるものではない。また、子局(STA)84は、先に記載した通り、レーダ検出機能の実装が免除されているが、レーダ検出機能を実装する構成も可能である。したがって、子局(STA)84が干渉信号の検出や子局(STA)84のアンテナ本数を複数化する構成例も可能である。
【0078】
本実施形態の場合、たとえば図9(a)に示すように、親局(AP)81は、複数(この場合、2つ)のアンテナANTa82,ANTb83を有し、通信エリア86内に位置する子局(STA)84との間は、アンテナANTa82およびアンテナANT85を用いて通信87が行われている。通常、親局(AP)81は、送信時には、アンテナANTa82だけを使用し、受信時には、アンテナANTa82だけでなく、アンテナANTb83をも使用する場合がある(受信ダイバーシチ)。
【0079】
これに対し、たとえば図9(b)に示すように、干渉信号(たとえば、レーダ波)811を親局(AP)81が検出した場合、親局(AP)81は、それまでの子局(STA)84との通信87に利用していたアンテナANTa82に加え、アンテナANTb83をも用いて、新しい無線通信チャネルへの移行に関する情報817,818を、子局(STA)84のアンテナ85に送信する。この際、周波数利用効率の低い伝送方式として、アンテナANTa82およびアンテナANTb83から送信される情報817,818を同一とする。
【0080】
このように、上記した第6の実施形態の場合、親局(AP)81が無線通信システムの運用中に別の無線システム(図示していない)からの干渉信号811を検出した際には、直ちに現在の無線通信チャネルの利用を終わらせ、別の無線通信チャネルへ移行するための回避行動に必要な情報817,818を、それまでの子局(STA)84との間の通信で利用していたアンテナANTa82に加えて、アンテナANTb83をも用いて通信するようにしている。これにより、送信ダイバーシチ効果を得ることが可能となり、無線伝播エラー耐性の高い伝送方式を設定できるようになる。その結果として、子局(STA)84との間の無線伝播エラーを生じにくくすることが可能となり、確実に、子局(STA)84へ回避行動を行うための情報817,818を伝えることが可能となる。すなわち、複数の送信アンテナから同一の情報を伝送することで、複数の送信アンテナから複数の異なる情報を伝送するMIMO(Multi Input Multi Output)技術と比較し、明らかに周波数利用効率の低い伝送方式となっている。
【0081】
なお、本実施形態においては、1つの子局(STA)84に対し、親局(AP)81の2本の送信アンテナANTa82,ANTb83を用いて通信を行うようにした場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、ある親局(AP)81に属する子局(STA)の台数、および、親局(AP)が備える送信アンテナの本数に制限があるわけではない。
【0082】
[第7の実施形態]
図10は、本発明の第7の実施形態にしたがった無線通信システムにおける動作の一例を示すものである。ここでは、親局(AP)と子局(STA)との間の通信に利用される伝送方式として、送信ダイバーシチよりも周波数利用効率の低い送信空間ダイバーシチを用いた場合の設定プロセス(フロー)について説明する。
【0083】
なお、本実施形態においては、親局(AP)91が利用する無線通信チャネルの設定、および、子局(STA)92の送受信動作を制御することに加えて、親局(AP)91が干渉信号を検出し、子局(STA)92との通信に利用する親局(AP)91のアンテナ本数を2本(ANTa,ANTb)にする構成例を示したが、干渉信号の検出やアンテナ本数は、この構成例に限定されるものではない。また、子局(STA)92は、先に記載した通り、レーダ検出機能の実装が免除されているが、レーダ検出機能を実装する構成も可能である。したがって、子局(STA)92が干渉信号の検出や子局(STA)92のアンテナ本数を複数化する構成例も可能である。
【0084】
図10に示すように、親局(AP)91は、干渉信号(たとえば、レーダ波)を検出する以前は、アンテナANTaを用いて子局(STA)92との間の通信93を行うようになっている。干渉信号を受信すると、親局(AP)91は、干渉信号検出プロセス94を起動させ、それまでに利用していたアンテナANTaに加えて、アンテナANTbも用いて同一の情報95を通信するように設定を変更する。これにより、子局(STA)92へ確実に情報95が伝えられるようになる結果、親局(AP)91および子局(STA)92は、揃って新しい無線通信チャネルへの移行プロセス96を実施する。
【0085】
このように、上記した第7の実施形態の場合、親局(AP)91が無線通信システムの運用中に別の無線システム(図示していない)からの干渉信号を検出した際には、直ちに現在の無線通信チャネルの利用を終わらせ、別の無線通信チャネルへ移行するための回避行動に必要な情報95を、それまでの子局(STA)92との間の通信で利用していたアンテナANTaに加えて、アンテナANTbをも用いて通信するようにしている。これにより、送信空間ダイバーシチ効果を得ることが可能となり、無線伝播エラー耐性の高い伝送方式を設定できるようになる。その結果として、子局(STA)92との間の無線伝播エラーを生じにくくすることが可能となり、確実に、子局(STA)92へ回避行動を行うための情報95を伝えることが可能となる。
【0086】
なお、本実施形態においては、1つの子局(STA)92に対し、親局(AP)91の2本の送信アンテナANTa,ANTbを用いて通信を行うようにした場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、ある親局(AP)に属する子局(STA)の台数、および、親局(AP)が備える送信アンテナの本数に制限があるわけではない。
【0087】
図11は、本発明の無線通信システムにかかる、親局(AP)と子局(STA)との間の通信で利用される伝送方式として、送信ダイバーシチの利用効果を概念的に示すものである。
【0088】
同図(a)に示すように、親局(AP)のアンテナANTaと子局(STA)のアンテナとの間の伝播路には、お互いの空間的な位置関係で決まる歪みが生じている。そのため、屋内外に問わず、多重反射電波伝播路(マルチパス)によって、子局(STA)で受信した受信信号スペクトラム1001には、周波数選択性フェージング歪み(ノッチ)1002が存在する。
【0089】
同図(b)に示すように、親局(AP)のアンテナANTbから送信され、子局(STA)のアンテナで受信した受信信号スペクトラム1003には、周波数選択性フェージング歪み1004が存在する。
【0090】
周波数選択性フェージング歪みは、上述の通り、親局(AP)のアンテナANTa,ANTbと子局(STA)のアンテナとの空間的な位置関係だけで決まる。それゆえ、親局(AP)のアンテナANTaと子局(STA)のアンテナとの間の特性は、親局(AP)のアンテナANTbと子局(STA)のアンテナとの間の特性とは全く異なったものとなる。
【0091】
同図(c)に示すように、異なる周波数成分(受信信号スペクトラム1001,1003)にそれぞれ異なる周波数選択性フェージング歪み1002,1004が存在することから、親局(AP)の複数のアンテナANTa,ANTbから送信され、子局(STA)で受信した受信信号スペクトラム1001,1003を合成する。これにより、それぞれの周波数選択性フェージングで失われた周波数スペクトル情報1006,1007を補完することが可能となる。したがって、最終的に全ての周波数成分を含む受信信号スペクトラム1005を受信することができる。
【0092】
このように、複数のアンテナから異なる情報を伝送できるMIMO方式と比較して、周波数利用効率は劣るものの、無線伝播エラー耐性の高い伝送方式が設定されることになる。その結果として、親局(AP)と子局(STA)との間の無線伝播エラーが生じにくくなるため、親局(AP)が他の無線システムからの干渉信号を検出した後にも、確実に回避行動のための情報を子局(STA)へ通知することが可能となる。
【0093】
[第8の実施形態]
図12は、本発明の第8の実施形態にしたがった無線通信システムにおける動作の一例を示すものである。ここでは、親局(AP)と子局(STA)との間の通信に利用される伝送方式として、周波数ダイバーシチを用いた場合の設定プロセス(フロー)について説明する。
【0094】
なお、本実施形態においては、親局(AP)1101が利用する無線通信チャネルの設定、および、子局(STA)1102の送受信動作を制御することに加えて、親局(AP)1101が干渉信号を検出し、子局(STA)1102との通信に利用する周波数帯域の追加への設定を実行する構成例を示したが、干渉信号の検出や利用する周波数帯域の追加への設定の実行は、この構成例に限定されるものではない。また、子局(STA)1102は、先に記載した通り、レーダ検出機能の実装が免除されているが、レーダ検出機能を実装する構成も可能である。したがって、子局(STA)1102が干渉信号の検出や利用する周波数帯域の追加への設定を実行する構成例も可能である。
【0095】
図12に示すように、親局(AP)1101は、干渉信号(たとえば、レーダ波)を検出する以前は、周波数帯域BWaを用いて子局(STA)1102との間の通信1103を行うようになっている。干渉信号を受信すると、親局(AP)1101は、干渉信号検出プロセス1104を起動させ、それまでに利用していた周波数帯域BWaに加えて、周波数帯域BWbをも用いて同一の情報1105を通信するように設定を変更する。これにより、子局(STA)1102へ確実に情報1105が伝えられるようになる結果、親局(AP)1101および子局(STA)1102は、揃って新しい無線通信チャネルへの移行プロセス1106を実施する。
【0096】
このように、上記した第8の実施形態の場合、親局(AP)1101が無線通信システムの運用中に別の無線システム(図示していない)からの干渉信号を検出した際には、直ちに現在の無線通信チャネルの利用を終わらせ、別の無線通信チャネルへ移行するための回避行動に必要な情報1105を、それまでの子局(STA)1102との間の通信で利用していた周波数帯域BWaに加えて、周波数帯域BWbをも用いて通信するようにしている。これにより、周波数ダイバーシチ効果を得ることが可能となり、無線伝播エラー耐性の高い伝送方式を設定できるようになる。その結果として、子局(STA)1102との間の無線伝播エラーを生じにくくすることが可能となり、確実に、子局(STA)1102へ回避行動を行うための情報1105を伝えることが可能となる。
【0097】
なお、本実施形態においては、1つの子局(STA)1102に対し、2つの周波数帯域BWa,BWbを利用して通信を行うようにした場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、ある親局(AP)に属する子局(STA)の台数および利用する周波数帯域の数に制限があるわけではない。
【0098】
図13は、本発明の無線通信システムにかかる、親局(AP)と子局(STA)との間の通信で利用される伝送方式として、周波数ダイバーシチの利用効果を概念的に示すものである。
【0099】
同図(a)に示すように、通常、親局(AP)は、子局(STA)との間の通信に、周波数帯域BWa1201を利用している。もしくは、周波数帯域BWa1201と周波数帯域BWb1202とを利用し、周波数帯域1201と周波数帯域1202とで異なる情報の通信を行っている。
【0100】
同図(b)に示すように、干渉信号を検出した後においては、親局(AP)は、子局(STA)との間の通信に、周波数帯域BWa1201と周波数帯域BWb1202とを利用し、周波数帯域1201と周波数帯域1202とで同一の情報の通信を行うようになっている。
【0101】
上述したが、無線伝播には周波数選択性フェージング歪みが存在し、子局(STA)で受信した信号の周波数スペクトラムの一部が確率的に欠損する。このことから、親局(AP)と子局(STA)との間の通信をより確実なものとするために、複数の周波数帯域BWa1203,BWb1204を用いて同一の情報を無線通信することで、情報の欠損を防止することが可能となる。
【0102】
このように、本来は、異なる周波数帯域BWa1201,BWb1202を利用することによって異なる情報を伝送できる伝送方式と比較して、周波数利用効率が低くなるものの、無線伝播エラー耐性の高い伝送方式が設定されることになる。その結果として、親局(AP)と子局(STA)との間の無線伝播エラーが生じにくくなるため、親局(AP)が他の無線システムからの干渉信号を検出した後にも、確実に回避行動のための情報を子局(STA)へ通知することが可能となる。
【0103】
なお、本実施形態における周波数帯域は、直交周波数多重伝送(OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing))方式のサブキャリアに相当し、同一の情報を複数のサブキャリアへ割り当てて伝送する場合も含まれる。
【0104】
[第9の実施形態]
図14は、本発明の第9の実施形態にしたがった無線通信システムにおける動作の一例を示すものである。ここでは、親局(AP)と子局(STA)との間の通信に利用される伝送方式として、時間ダイバーシチを用いた場合の設定プロセス(フロー)について説明する。
【0105】
なお、本実施形態においては、親局(AP)1301が利用する無線チャネルの設定、および、子局(STA)1302の送受信動作を制御することに加えて、親局(AP)1301が干渉信号を検出し、子局(STA)1302との通信での同一情報の送信回数の設定を実行する構成例を示したが、干渉信号の検出や同一情報の送信回数の設定の実行は、この構成例に限定されるものではない。また、子局(STA)1302は、先に記載した通り、レーダ検出機能の実装が免除されているが、レーダ検出機能を実装する構成も可能である。したがって、子局(STA)1302が干渉信号の検出や同一情報の送信回数の設定を実行する構成例も可能である。
【0106】
図14に示すように、親局(AP)1301は、干渉信号(たとえば、レーダ波)を検出する以前は、子局(STA)1302に対して、1つの情報を1度しか送信しない設定にしたがって通信1303を行うようになっている。もちろん、送達確認が必要な情報の場合は、再送制限回数以内であれば、“OK”となるまで再送を繰り返す。
【0107】
ただし、報知情報などは複数の子局(STA)へ同時に送信するため、親局(AP)は、個別に送達確認ができない。このため、無線伝播エラーを起こした子局(STA)は、その情報がない状態のままとなってしまう。また、無線伝播エラーの発生は時変であり、ある時に発生しても、異なる時間には発生しないことがある。
【0108】
そこで、親局(AP)1301は、干渉信号を検出すると、干渉信号検出プロセス1304を起動させ、それまでに設定されていた情報送信回数を“1”ではなく、同一の情報1305を複数回にわたって繰り返し送信するように設定を変更する。これにより、子局(STA)1302へ確実に情報1305が伝えられるようになる結果、親局(AP)1301および子局(STA)1302は、揃って新しい無線通信チャネルへの移行プロセス1306を実施する。
【0109】
このように、上記した第9の実施形態の場合、親局(AP)1301が無線通信システムの運用中に別の無線システム(図示していない)からの干渉信号を検出した際には、直ちに現在の無線通信チャネルの利用を終わらせ、別の無線通信チャネルへ移行するための回避行動に必要な情報1305を、繰り返し送信するようにしている。これにより、時間ダイバーシチ効果を得ることが可能となり、無線伝播エラー耐性の高い伝送方式を設定できるようになる。その結果として、子局(STA)1302との間の無線伝播エラーを生じにくくすることが可能となり、確実に、子局(STA)1302へ回避行動を行うための情報1305を伝えることが可能となる。
【0110】
なお、本実施形態においては、1つの子局(STA)1302に対し、同一の情報を繰り返し送信するようにした場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、ある親局(AP)に属する子局(STA)の台数および繰り返される送信の回数に制限があるわけではない。
【0111】
図15は、本発明の無線通信システムにかかる、親局(AP)と子局(STA)との間の通信で利用される伝送方式として、時間ダイバーシチの利用効果を概念的に示すものである。
【0112】
図15に示すように、通常、親局(AP)1401は、子局(STA)1402との間の通信を1回だけ行うように設定されている。たとえば、親局(AP)1401からのビーコン(BC(TX))の送信1410、および、子局(STA)1402によるビーコン(BC(RX))の受信1411は、それぞれ1回となっている。また、親局(AP)1401から子局(STA)1402への、たとえば、情報の送信1412および情報の受信1413も、それぞれ1回である。もちろん、送達確認のための情報の送信1414および情報の受信1415は、“OK”となるまで、親局(AP)1401と子局(STA)1402との間で再送制限回数以内であれば、通信が繰り返される場合がある。
【0113】
さて、干渉信号を検出した後において、親局(AP)1401から子局(STA)1402への情報の送信1416に対する情報の受信1417が失敗し、その送達確認用の情報の送信1418およびその受信1419がない場合には、上述した通り、同一の情報の再送信1420および受信1421と、その送達確認のための情報の送信1422および受信1423とが行われる。それに加えて、送達確認が不可能な報知情報の送信1424に対する受信1425が子局(STA)1402で失敗している可能性があるため、再度、同一の報知情報の再送信1426が行われ、子局(STA)1402での受信1427が可能となる。
【0114】
このように、周波数利用効率が低くなるものの、子局(STA)1402との間の通信において、時間ダイバーシチ効果によって、無線伝播エラー耐性の高い伝送方式が設定されることになる。その結果として、親局(AP)1401と子局(STA)1402との間の無線伝播エラーが生じにくくなるため、親局(AP)1401が他の無線システムからの干渉信号を検出した後にも、より確実に回避行動のための情報を子局(STA)へ通知することが可能となる。
【0115】
[第10の実施形態]
図16は、本発明の第10の実施形態にしたがった無線通信システムにおける動作の一例を示すものである。ここでは、親局(AP)と子局(STA)との間の通信に利用される伝送方式として、変調方式と誤り訂正(畳み込み符号)の符号化率とを用いた場合の設定プロセス(フロー)について説明する。
【0116】
なお、本実施形態においては、親局(AP)1501が利用する無線通信チャネルの設定、および、子局(STA)1502,1503,1504の送受信動作を制御することに加えて、親局(AP)1501が干渉信号を検出し、それぞれの子局(STA)1502,1503,1504との通信に利用する変調方式、および、誤り訂正方式(符号化率)への設定を実行する構成例を示したが、干渉信号の検出や変調方式、および、誤り訂正方式(符号化率)への設定の実行は、この構成例に限定されるものではない。また、子局(STA)1502,1503,1504は、先に記載した通り、レーダ検出機能の実装が免除されているが、レーダ検出機能を実装する構成も可能である。したがって、子局(STA)1502,1503,1504のいずれか、あるいは、全てが干渉信号の検出や通信に利用する変調方式、および、誤り訂正方式(符号化率)への設定を実行する構成例も可能である。
【0117】
たとえば、子局(STA)(1)1502、子局(STA)(2)1503、子局(STA)(3)1504は、それぞれ、親局(AP)1501との通信が可能な状態に設定されている。すなわち、子局(STA)(1)1502,(STA)(2)1503,(STA)(3)1504は親局(AP)1501に属しており、全ての子局(STA)(1)1502,(STA)(2)1503,(STA)(3)1504には、共通、かつ、同時に、親局(AP)1501からのビーコン1505が、BPSKにて変調および符号化率R=1/2で符号化されて送信される。
【0118】
本実施形態において、子局(STA)(1)1502は、親局(AP)1501との通信の状態が良好なエリアに存在し、親局(AP)1501と子局(STA)(1)1502との間では、周波数利用効率の高い変調方式、たとえば変調方式が64QAMで、符号化率R=3/4を利用した通信1506を行うようになっている。また、子局(STA)(2)1503は、子局(STA)(1)1502よりも通信の状態が劣悪なエリアに存在し、親局(AP)1501と子局(STA)(2)1503との間では、64QAM、R=3/4よりも周波数利用効率の低い変調方式、たとえば変調方式が16QAMで、符号化率R=2/3を利用した通信1508を行うようになっている。一方、子局(STA)(3)1504は、親局(AP)1501との間で通信する情報がないため、Idle状態1507となっており、共通のビーコン1505のみを受信できるようになっている。
【0119】
このような通常運用の状態において、親局(AP)1501のIn service monitoring機能によって、他の無線システム(図示していない)からの干渉信号(たとえば、レーダ波)が受信されると、親局(AP)1501は干渉信号検出プロセス1509を実施する。すなわち、親局(AP)1501は、子局(STA)(1)1502との通信1506に利用していた変調方式64QAMと符号化率R=3/4とを、それよりも周波数利用効率の低い変調方式16QAMと符号化率R=1/2とに変更し、子局(STA)(1)1502との通信1510を実行する。同様に、子局(STA)(2)1503との通信1508に利用していた変調方式16QAMと符号化率R=2/3とを、それよりも周波数利用効率の低い変調方式QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)と符号化率R=1/2とに変更し、子局(STA)(2)1503との通信1511を実行する。また、Idle状態1507であった子局(STA)(3)1504に対しては、それまでに通信状態にないことから、たとえばビーコン1505と同一の変調方式BPSKと符号化率R=1/2とを利用した通信1512を再開させる。こうして、全ての子局(STA)(1)1502,(STA)(2)1503,(STA)(3)1504に対して確実に情報を通知した後に、親局(AP)1501および子局(STA)(1)1502,(STA)(2)1503,(STA)(3)1504は、揃って新しい無線通信チャネルへの移行プロセス1513を実施する。
【0120】
このように、上記した第10の実施形態の場合、親局(AP)1501が無線通信システムの運用中に別の無線システムからの干渉信号を検出した際にも、直ちに現在の無線通信チャネルの利用を終わらせ、別の無線通信チャネルへ移行するための回避行動(移行プロセス1513)に必要な情報を、それまで各子局(STA)(1)1502,(STA)(2)1503,(STA)(3)1504が利用していた変調方式と符号化率との組み合わせよりも無線伝播エラー耐性の高い変調方式と符号化率との組み合わせを利用して通知(通信1510,1511,1512)するようにしている。これにより、各子局(STA)(1)1502,(STA)(2)1503,(STA)(3)1504との間の無線伝播エラーを生じにくくすることが可能となる結果、確実に回避行動のための情報を通知できるようになる。
【0121】
なお、本実施形態においては、3つの子局(STA)(1)1502,(STA)(2)1503,(STA)(3)1504を例に説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、ある親局(AP)に属する子局(STA)の台数に制限があるわけではない。
【0122】
また、本実施形態の無線通信システムにおいて、親局(AP)と子局(STA)との間の通信に利用される周波数利用効率を変化させる伝送方式のうち、誤り訂正の方式として畳み込み符号に限定されるものではない。
【0123】
また、本実施形態では、変調方式と誤り訂正の符号化率との組み合わせだけを取り上げて説明したが、周波数利用効率を変化させる伝送方式としては、変調方式を、たとえば、先に説明した空間送信ダイバーシチ、周波数ダイバーシチ、もしくは、時間ダイバーシチなどと組み合わせることも可能である。
【0124】
[第11の実施形態]
図17は、本発明の第11の実施形態にしたがった無線通信システムにおける動作の一例を示すものである。ここでは、親局(AP)と子局(STA)との間の通信の際に設定される送信電力の、電力量を変化させるようにした場合の設定プロセス(フロー)について説明する。
【0125】
なお、本実施形態においては、親局(AP)1601が利用する無線通信チャネルの設定、および、子局(STA)1602,1603,1604の送受信動作を制御することに加えて、親局(AP)1601が干渉信号を検出し、それぞれの子局(STA)1602,1603,1604との通信の送信電力への設定を実行する構成例を示したが、干渉信号の検出や送信電力への設定の実行は、この構成例に限定されるものではない。また、子局(STA)1602,1603,1604は、先に記載した通り、レーダ検出機能の実装が免除されているが、レーダ検出機能を実装する構成も可能である。したがって、子局(STA)1602,1603,1604のいずれか、あるいは、全てが干渉信号の検出や送信電力への設定を実行する構成例も可能である。
【0126】
たとえば、子局(STA)(1)1602、子局(STA)(2)1603、子局(STA)(3)1604は、それぞれ、親局(AP)1601との通信が可能な状態に設定されている。すなわち、子局(STA)(1)1602,(STA)(2)1603,(STA)(3)1604は親局(AP)1601に属しており、全ての子局(STA)(1)1602,(STA)(2)1603,(STA)(3)1604には、共通、かつ、同時に、親局(AP)1601からのビーコン1605が送信電力A(dBm)の電力量により送信される。
【0127】
本実施形態において、子局(STA)(1)1602は、親局(AP)1601との通信の状態が良好なエリア、すなわち親局(AP)1601に近い位置に存在し、親局(AP)1601と子局(STA)(1)1602との間では、ビーコン1605よりも少ない送信電力B(dBm)により通信1606を行うようになっている。また、子局(STA)(2)1603は、子局(STA)(1)1602よりも遠方に位置し、親局(AP)1601と子局(STA)(2)1603との間では、子局(STA)(1)1602との通信1606よりも大きな送信電力、たとえばC(dBm)の電力量により通信1608を行うようになっている。一方、子局(STA)(3)1604は、親局(AP)1601との間で通信する情報がないため、Idle状態1607となっており、共通のビーコン1605のみを受信できるようになっている。
【0128】
このような通常運用の状態において、親局(AP)1601のIn service monitoring機能によって、他の無線システム(図示していない)からの干渉信号(たとえば、レーダ波)が受信されると、親局(AP)1601は干渉信号検出プロセス1609を実施する。すなわち、親局(AP)1601は、子局(STA)(1)1602との通信1606に用いる電力量を、送信電力B(dBm)以上の送信電力C(dBm)に変更し、子局(STA)(1)1602との通信1610を実行する。同様に、子局(STA)(2)1603との通信に用いる電力量を、送信電力C(dBm)以上の送信電力A(dBm)に変更し、子局(STA)(2)1603との通信1611を実行する。また、Idle状態1607であった子局(STA)(3)1604に対しては、それまでに通信状態にないことから、ビーコン1605の通信に用いた送信電力A(dBm)以上の電力量、たとえばD(dBm)の送信電力を設定して通信1612を再開させる。こうして、全ての子局(STA)(1)1602,(STA)(2)1603,(STA)(3)1604に対して確実に情報を通知した後に、親局(AP)1601および子局(STA)(1)1602,(STA)(2)1603,(STA)(3)1604は、揃って新しい無線通信チャネルへの移行プロセス1613を実施する。
【0129】
このように、上記した第11の実施形態の場合、親局(AP)1601が無線通信システムの運用中に別の無線システムからの干渉信号を検出した際にも、直ちに現在の無線通信チャネルの利用を終わらせ、別の無線通信チャネルへ移行するための回避行動(移行プロセス1613)に必要な情報を、それまで各子局(STA)(1)1602,(STA)(2)1603,(STA)(3)1604への通信に利用されていた送信電力以上の電力量に設定して通知(通信1610,1611,1612)するようにしている。これにより、各子局(STA)(1)1602,(STA)(2)1603,(STA)(3)1604との間の無線伝播エラーを生じにくくすることが可能となる結果、確実に回避行動のための情報を通知できるようになる。
【0130】
なお、本実施形態においては、3つの子局(STA)(1)1602,(STA)(2)1603,(STA)(3)1604を例に説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、ある子局(AP)に属する子局(STA)の台数に制限があるわけではない。
【0131】
また、本実施形態の場合、干渉信号を検出した後に設定する送信電力を干渉信号の検出前の電力量以上に設定するようにしたが、これに限らず、たとえば干渉信号の検出前の送信電力が既に最大値である場合には、そのままの電力量(最大値)での運用が継続されるようにしてもよい。
【0132】
上記したように、本発明にかかる各実施形態にあっては、親局(AP)と少なくとも1つ以上の子局(STA)とで構成される無線通信システムにおいて、無線通信システムの運用中に親局(AP)が別の無線システムからの干渉信号を検出した際には、直ちに現在の無線通信チャネルの利用を終了させ、別の無線通信チャネルへ移行するための回避行動を行うための情報を、無線伝播エラー耐性の高い伝送方式を利用して各子局(STA)に通知するようにしている。これにより、親局(AP)は、子局(STA)に確実に回避行動を行うための情報を通知できるようになる。
【0133】
すなわち、無線LANの市場要求に応じて解放された新たな周波数帯域では、常時、運用中に親局(AP)がレーダ波をモニタリングする義務があり、レーダ波を検出した際には、確実に子局(STA)にレーダ検出後の動作のための指示などの情報を伝える必要があるため、各実施形態によれば、回避行動を行うために必要な情報を子局(STA)に対して確実に与えることが可能となり、運用中の突然の強制的な通信の切断などといった問題の発生を抑制でき、ユーザへの不利益や不快感を回避することが可能になる。
【0134】
その他、本願発明は、上記(各)実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。さらに、上記(各)実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。たとえば、(各)実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題(の少なくとも1つ)が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果(の少なくとも1つ)が得られる場合には、その構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】本発明の第1の実施形態にしたがった無線通信システムにおいて、親局と子局との間の伝送方式の設定にかかる動作について説明するために示す図。
【図2】本発明の第2の実施形態にしたがった無線通信システムにおいて、親局と子局との間の伝送方式の設定にかかる動作について説明するために示す図。
【図3】本発明の無線通信システムにかかる、親局と子局とが遵守すべき法令(電波法)について説明するために示す図。
【図4】本発明の第3の実施形態にしたがった無線通信システムにおいて、親局と子局との間の伝送方式の設定にかかる動作について説明するために示す図。
【図5】本発明の第4の実施形態にしたがった無線通信システムにおいて、親局と子局との間の伝送方式の設定にかかる動作について説明するために示す図。
【図6】本発明にかかる無線通信システムにおいて、親局が検出する干渉信号について説明するために示す図。
【図7】干渉信号がレーダ波である場合を例に示す図。
【図8】本発明の第5の実施形態にしたがった無線通信システムにおいて、親局と子局との間の伝送方式の設定にかかる動作について説明するために示す図。
【図9】本発明の第6の実施形態にしたがった無線通信システムにおいて、親局と子局との間の伝送方式の設定にかかる動作について説明するために示す図。
【図10】本発明の第7の実施形態にしたがった無線通信システムにおいて、親局と子局との間の伝送方式の設定にかかる動作について説明するために示す図。
【図11】本発明にかかる無線通信システムにおいて、送信ダイバーシチの効果について説明するために示す図。
【図12】本発明の第8の実施形態にしたがった無線通信システムにおいて、親局と子局との間の伝送方式の設定にかかる動作について説明するために示す図。
【図13】本発明にかかる無線通信システムにおいて、周波数ダイバーシチの効果について説明するために示す図。
【図14】本発明の第9の実施形態にしたがった無線通信システムにおいて、親局と子局との間の伝送方式の設定にかかる動作について説明するために示す図。
【図15】本発明にかかる無線通信システムにおいて、時間ダイバーシチの効果について説明するために示す図。
【図16】本発明の第10の実施形態にしたがった無線通信システムにおいて、親局と子局との間の伝送方式の設定にかかる動作について説明するために示す図。
【図17】本発明の第11の実施形態にしたがった無線通信システムにおいて、親局と子局との間の伝送方式の設定にかかる動作について説明するために示す図。
【符号の説明】
【0136】
11,21,31,41,51,71,81,91,1101,1301,1401,1501,1601…親局(AP)、12,13,22,23,32,33,34,42,43,44,52,53,54,72,73,74,84,92,1102,1302,1402,1502,1503,1504,1602,1603,1604…子局(STA)、61…周期性干渉波の時間波形。
【技術分野】
【0001】
本発明は、他の無線局からの制御を受けることなしに送信を行い、無線通信に利用するチャネルを自立的に設定することができる基地局またはアクセスポイントなどの親局と、その親局によって、利用する無線通信チャネルおよび送受信動作が制御される端末局またはステーションなどの子局とから構成される無線通信システムに関するもので、特に、親局と子局との間で行われる無線通信時に干渉信号を検出した際の通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータ(PC)への搭載から広がり始めた無線LAN(Local Area Network)は、次第に様々な他の製品、たとえば、PC周辺機器、携帯電話、ゲーム機、家電製品、車載ナビゲーションシステムなどへ展開されつつある。無線LANとは、米国の電気,電子技術者協会(the Institute of Electrical & Electronics Engineers)が定めた規格「IEEE 802.11」に準じたものである。
【0003】
現在、主に利用されている無線LANは、規格「IEEE 802.11b/g」に準じており、比較的安価に入手が可能である。しかしながら、2.4(GHz)帯を利用するため、上述の通り、多くの製品へ搭載され、様々な市場へ展開し、使われ始めると、混雑してしまい、83.5(MHz)程度しかアサインされていない周波数資源の枯渇が問題となる。
【0004】
また、2.4(GHz)帯は、IMS(Industry Medical Science)帯域としても解放されており、POS(Point Of Sale)システム、倉庫内品管理システム(TAGシステム)、電子レンジ、テレメータシステム、映像素材伝送システム、コードレス電話などが無線LAN以外の用途で実際に運用されている。よく知られたシステムとして、ブルートゥース(Bluetooth(登録商標))が同周波数帯で運用されており、ワイヤレスヘッドセット(イヤホン)およびハンズフリー機能の実現のために、携帯電話などへの搭載が急速に伸び始めている。現在、携帯電話の出荷台数、市場席捲度(市場占有度合い)は、拡大傾向にあり、今後の周波数資源の枯渇対策が急務となっている。
【0005】
上述のような市場要求に応えるべく、西暦2000年頃から無線LANに利用可能な新しい周波数帯を解放する政策が継続的に実施されている。たとえば、西暦2000年に5.15〜5.25(GHz)の100(MHz)帯が、西暦2005年に5.25〜5.35(GHz)の100(MHz)帯がそれぞれ解放され、そして、西暦2007年に5.47〜5.725(GHz)の255(MHz)帯が新しく解放された。その結果、無線LANが5(GHz)帯で利用可能な総周波数帯は455(MHz)になり、さらに5.8(GHz)にアサインされているISM(Industrial Scientific Medical)帯域(5.725〜5.825GHz)の100(MHz)を含めると、555(MHz)もの帯域を利用することが可能になる。2.4(GHz)の83.5(MHz)と比較して、約6.6倍もの帯域が利用可能になるため、周波数資源の枯渇問題が解消される見込みである。
【0006】
しかし、この555(MHz)のうち、5.25〜5.35(GHz)および5.47〜5.725(GHz)の計355(MHz)は、一次業務として、気象レーダのような無線標定にアサインされており、無線LANは二次業務となっている。そのため、この帯域を利用する無線LANには、一次業務への与干渉防止が義務付けられている。具体的には、無線LAN(無線設備)は、レーダ検出機能の実装およびレーダ検出時の無線LANの運用規定を遵守する必要がある。
【0007】
日本の電波法(無線設備規則)、米国のFCC(Federal Communications Commission)規定および欧州のETSI(European Telecommunications Standards Institute)規定の、各法規書に記載されているレーダ検出機能の実装およびレーダ検出時の運用規定は、共通規定となっており、西暦2003年にITU―R(International Telecommunication Union−Radiocommunication Sector)で開催された“WRC(World Radiocommunication Conference)2003”で取り纏められた勧告(世界共通基準)にしたがって定められている。
【0008】
この法規書の規定により、他の無線局からの制御を受けることなしに送信を行い、無線通信に利用するチャネルを自立的に設定することができる基地局またはアクセスポイント(AP)などの親局と、この親局によって、利用する無線通信チャネルおよび送受信動作が制御される端末局またはステーション(Station(STA))などの子局から構成される無線通信システムの場合、親局には、レーダ検出機能の実装と子局への検出結果の通知、および、子局への送受信動作の制御が義務付けられている。また、子局は、親局の指示にしたがって送受信動作(Slave mode)を行う限り、レーダ検出機能の実装が免除されている。
【0009】
この規定の一部に、親局が子局との間で通信を開始した後にレーダ波を検出した場合の運用規定がある。これを運用中(通信中)のレーダ検出(In service monitoring)として、親局は、常に実施する必要がある。具体的には、運用中にレーダ波を検出した場合、それまで運用していた無線通信チャネルでの運用が禁止され、新規の無線通信チャネルへ全子局ごと移行する必要がある。また、その際、レーダ検出したことを起点に親局と子局との間での総通信時間(260msec)、および、現チャネルでの運用停止&新規無線通信チャネルへの移行完了時間(10sec)が規定されており、時間的に十分な余裕がない。
【0010】
レーダ波を検出した親局は、その親局に属している全子局に対して、現在確立している通信の終了または中断の指示および新規チャネルへの移行を、上述の総通信時間(260msec)内に通知する必要がある。周波数マネージメント規格である「IEEE 802.11h」によると、親局から発せられるビーコンタイミングをベースに、一斉に新規チャネルへ移行することになっている。
【0011】
しかし、親局とその親局に属する全子局とで構成される無線通信システム(BSS(Basic Service Set))の場合、全子局に対し、通信制限(終了または中断)および移行先の新規チャネル情報を確実に通知することができるかが運用上の課題となる。特に、子局の台数が多い場合、または、スリープモードの子局が存在する場合、あるいは、子局が親局からの離れている場合などにおいては、全ての子局に確実に情報を通知することが難しくなる。
【0012】
また、周波数マネージメント規定である「IEEE 802.11h」では、レーダ検出時の運用プロシジャ、そのための通信メッセージ構成など、論理的な仕組みは規定されているものの、各国および地域で定める強制規格(電波法令)を鑑みた上で確実に親局から子局へレーダ検出後の回避行動を通知する方法は規定されていない。
【0013】
このような様々な拘束条件下において、実現可能な一番簡単な方法として、親局からの一方的な強制切断(Disconnection)による子局でのタイムアウト処理などが考えられる。しかしながら、レーダ検出対象とする周波数帯域で無線LANを運用する大前提として、“親局によって、子局は利用する無線通信チャネルおよび送受信動作が制御される”がある。つまり、一方的な強制切断により、子局をフリーランさせてしまった場合、規定違反となる可能性もある。また、この場合、子局に移行先の新規チャネル情報が通知されないため、子局(たとえば、ユーザ)が不利益を被ることになる。
【0014】
また、仮に本規定にしたがって、親局が子局を制御していたとしても、制限された総通信時間(260msec)内で全ての子局へ確実に情報を通知するには、何らかの特徴のある運用方法が必要であるが、これまでは検討も規定もなされていなかった。
【0015】
上述したように、無線LANの市場要求、その普及のために新たな周波数帯が解放されているが、現在の強制規格(無線設備規則、FCC規定、ETSI規定)および標準規格(IEEE 802.11h)にしたがった機能の実装と運用だけでは、親局と子局とで構成される無線通信システムにおいては、親局がレーダ検出した際に確実に子局にレーダ検出後の情報などを通知することができず、運用中の切断などといったユーザに不快感や不利益を与える可能性がある。
【0016】
なお、本発明に関連する技術としては、同じ2.4(GHz)帯で運用されているブルートゥース機器とワイヤレスLAN機器との間の干渉を検出し、回避するために、パケット誤り率を用いてチャネル品質を推定するようにしたものが既に提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−211242号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、上記の問題点を解決すべくなされたもので、干渉信号を検出した際に、親局から全ての子局に干渉信号検出後の動作および運用に必要な情報を確実に通知でき、無線設備規則などで定められている干渉信号検出時の動作基準を満たしつつ、親局と子局との間の通信を維持することが可能な無線通信システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本願発明の一態様によれば、他の無線局からの制御を受けることなしに送信を行い、無線通信に利用するチャネルを自立的に設定することができる親局と、前記親局によって、利用する無線通信チャネルおよび送受信動作が制御される子局とから構成される無線通信システムであって、
前記無線通信システム内における無線通信の障害となる干渉信号を、前記親局もしくは前記子局のいずれかが検出した後、前記親局と前記親局に属している前記子局との間の無線通信に適用される変調方式が、前記無線通信システム内における同報通信に利用される変調方式と同一の変調方式に設定されることを特徴とする無線通信システムが提供される。
【0019】
また、本願発明の一態様によれば、他の無線局からの制御を受けることなしに送信を行い、無線通信に利用するチャネルを自立的に設定することができる親局と、前記親局によって、利用する無線通信チャネルおよび送受信動作が制御される子局とから構成される無線通信システムであって、
前記無線通信システム内における無線通信の障害となる干渉信号を、前記親局もしくは前記子局のいずれかが検出した後、前記親局と前記親局に属している前記子局との間の無線通信に適用される伝送方式が、前記干渉信号を検出する前の無線通信に適用されていた伝送方式よりも周波数利用効率の低い伝送方式に設定されることを特徴とする無線通信システムが提供される。
【0020】
さらに、本願発明の一態様によれば、他の無線局からの制御を受けることなしに送信を行い、無線通信に利用するチャネルを自立的に設定することができる親局と、前記親局によって、利用する無線通信チャネルおよび送受信動作が制御される子局とから構成される無線通信システムであって、
前記無線通信システム内における無線通信の障害となる干渉信号を、前記親局もしくは前記子局のいずれかが検出した後、前記親局と前記親局に属している前記子局との間の無線通信に適用される送信電力が、前記干渉信号を検出する前の無線通信に適用されていた送信電力以上の送信電力に設定されることを特徴とする無線通信システムが提供される。
【0021】
つまり、請求項1に記載の発明によれば、干渉信号を検出した後の全ての子局への無線通信に、広範囲に到達可能なビーコンなどに用いられる変調方式を採用するようにしているため、親局に属する全ての子局に対して確実に情報などを通知することが可能となる。
【0022】
請求項2に記載の発明によれば、干渉信号を検出した後の無線通信において、それまでの通信に利用していた伝送方式よりも周波数利用効率が低い伝送方式、すなわち、無線伝送歪み(伝播エラー)に耐性のある伝送方式を利用することで、親局に属する全ての子局に対して確実に情報などを通知することが可能となる。
【0023】
請求項3に記載の発明によれば、干渉信号を検出した後の無線通信において、それまでの通信に利用されていた送信電力以上の送信電力、すなわち、全ての子局が親局からの送信をできるだけ大きな受信レベルで受信できるような送信電力に設定することで、親局に属する全ての子局に対して確実に情報などを通知することが可能となる。
【0024】
請求項4に記載の発明によれば、検出する干渉信号が周期性をもつことから、無線標定として一次運用されているレーダ無線機からの無線信号、すなわち、レーダ波を確実に検出でき、レーダ波の検出後に親局および子局をあらかじめ定めた手順で回避動作させることが容易に可能となる。
【0025】
請求項5に記載の発明によれば、周波数利用効率を低くするために、単位時間(1/sec)かつ単位周波数(1/Hz)当たりに伝送可能な情報ビット数を少なくすることで、伝播エラーへの耐性を高めることが可能となる。
【0026】
また、請求項5に記載の発明によれば、周波数利用効率を低くするために、符号化率を下げることにより、誤り訂正能力を高め、伝播エラーへの耐性を高めることが可能となる。
【0027】
また、請求項5に記載の発明によれば、周波数利用効率を低くするために、複数の送信アンテナから同一の情報を伝送することで、伝播空間を利用した送信ダイバーシチ効果が得られ、伝播エラーへの耐性を高めることが可能となる。
【0028】
また、請求項5に記載の発明によれば、周波数利用効率を低くするために、同一情報を複数の周波数成分に割り当てて伝送することで、周波数ダイバーシチ効果が得られ、伝播エラーへの耐性を高めることが可能となる。
【0029】
また、請求項5に記載の発明によれば、周波数利用効率を低くするために、同一情報を時間的に繰り返し伝送することで、時間ダイバーシチ効果が得られ、伝播エラーへの耐性を高めることが可能となる。
【0030】
さらに、請求項5に記載の発明によれば、周波数利用効率を低くするために、適宜、単位時間または単位周波数当たりの伝送可能な情報ビット数を少なくした変調方式、低符号化率の誤り訂正符号、空間送信ダイバーシチ効果、周波数ダイバーシチ効果、時間ダイバーシチ効果を組み合わせて利用することにより、伝播エラーへの耐性をより高めることが可能となる。
【発明の効果】
【0031】
上記の構成により、干渉信号を検出した際に、親局から全ての子局に干渉信号検出後の動作および運用に必要な情報を確実に通知でき、無線設備規則などで定められている干渉信号検出時の動作基準を満たしつつ、親局と子局との間の通信を維持することが可能な無線通信システムを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。ただし、図面は模式的なものであり、各図面の寸法および比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面の相互間においても、互いの寸法の関係および/または比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。特に、以下に示すいくつかの実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための装置および方法を例示したものであって、構成部品の形状、構造、配置などによって、本発明の技術思想が特定されるものではない。この発明の技術思想は、その要旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0033】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態にしたがった無線通信システムにおける動作の一例を示すものである。ここでは、親局(AP)と子局(STA)との間の通信に利用される変調方式について、時間軸を対象にした場合を例に説明する。具体的には、ある無線通信周波数(以後、無線通信チャネル)を利用し、親局(AP)11とその親局(AP)11に属している子局(STA)(1)12および子局(STA)(2)13との間で行われる通信について、時間の経過に沿って説明する。
【0034】
なお、本実施形態においては、親局(AP)11が利用する無線通信チャネルの設定、および、子局(STA)12,13の送受信動作を制御することに加えて、親局(AP)11が干渉信号を検出し、ビーコン110と同じ変調方式への設定を実行する構成例を示したが、干渉信号の検出や変調方式への設定の実行は、この構成例に限定されるものではない。また、子局(STA)12,13は、先に記載した通り、レーダ検出機能の実装が免除されているが、レーダ検出機能を実装する構成も可能である。したがって、子局(STA)12,13のいずれか、あるいは、全てが干渉信号の検出やビーコン110と同じ変調方式への設定を実行する構成例も可能である。
【0035】
たとえば図1に示すように、親局(AP)11からは、子局(STA)(1)12および子局(STA)(2)13に対して、ビーコン(Beacon)110が周期的に送信されている。ビーコン110は、報知情報をPSK(Phase Shift Keying)変調にて送信するためのものである。また、親局(AP)11と子局(STA)(1)12との間では、QAM(Quadrature Amplitude Modulation)変調にて通常データ111の送受信が行われている。なお、子局(STA)(2)13は親局(AP)11に属しているが、通信し合うデータがないため、アイドル(Idle)状態にある。
【0036】
ここで、親局(AP)11は、無線通信システムの運用中に、別の無線システム(図示していない)からの干渉信号(たとえば、レーダ波)12の有無を常に監視する必要があり、干渉信号112を検出した場合には、直ちに現在の無線通信チャネルの利用を終わらせ、別の無線通信チャネルへ移行するための回避行動113を実施しなければならない。そのため、干渉信号112の検出後、親局(AP)11は、子局(STA)(1)12に向けて、ビーコン110と同じPSK変調にて、干渉信号112の検出状況および別の無線通信チャネルへ移行するための情報114を送信する。同様に、親局(AP)11は、子局(STA)(2)13に向けて、ビーコン110と同じPSK変調にて、干渉信号112の検出状況および別の無線通信チャネルへ移行するための情報115を送信する。なお、子局(STA)(1)12および子局(STA)(2)13に送信される、親局(AP)11からのビーコン110以外の報知情報116は、その変調方式がビーコン110と同一のPSKとなっている。
【0037】
子局(STA)(1)12および子局(STA)(2)13へ送信された情報114,115および報知情報116により、子局(STA)(1)12および子局(STA)(2)13は、移行先の新しい無線通信チャネルに関する情報を入手する。これにより、子局(STA)(1)12および子局(STA)(2)13は、親局(AP)11と共に、無線通信チャネルの変更117を実施する。
【0038】
このように、上記した第1の実施形態の場合、親局(AP)11が無線通信システムの運用中に別の無線システムからの干渉信号112を検出した際には、直ちに現在の無線通信チャネルの利用を終わらせ、別の無線通信チャネルへ移行するための回避行動113に必要な情報114,115,116を、同報通信に用いられるビーコン110と同じ変調方式を利用して通知するようにしている。これにより、無線伝播エラーへの耐性が高められるため、確実に、子局(STA)(1)12および子局(STA)(2)13へ回避行動113を行うための情報114,115,116を伝えることが可能となる。
【0039】
なお、本実施形態においては、2つの子局(STA)(1)12,(STA)(2)13を例に説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、ある親局(AP)に属する子局(STA)の台数に制限があるわけではない。
【0040】
[第2の実施形態]
図2は、本発明の第2の実施形態にしたがった無線通信システムにおける動作の一例を示すものである。ここでは、親局(AP)と子局(STA)との間の通信に利用される変調方式について、通信エリアを対象にした場合を例に説明する。また、同図(a)は、通常運用中、すなわち干渉信号を検出する前の無線通信システムの動作を説明するために示すもので、同図(b)は、干渉信号を検出した後の無線通信システムの動作を説明するために示すものである。
【0041】
なお、本実施形態においては、親局(AP)21が利用する無線通信チャネルの設定、および、子局(STA)22,23の送受信動作を制御することに加えて、親局(AP)21が干渉信号を検出し、ビーコンと同じ変調方式(PSK)への設定を実行する構成例を示したが、干渉信号の検出や変調方式への設定の実行は、この構成例に限定されるものではない。また、子局(STA)22,23は、先に記載した通り、レーダ検出機能の実装が免除されているが、レーダ検出機能を実装する構成も可能である。したがって、子局(STA)22,23のいずれか、あるいは、全てが干渉信号の検出やビーコンと同じ変調方式(PSK)への設定を実行する構成例も可能である。
【0042】
本実施形態の場合、たとえば図2(a)に示すように、運用時に干渉信号の有無を監視するIn service monitoring動作中の親局(AP)21と通信中の子局(STA)(1)22との間は、その通信エリア211に応じた変調方式であるQAM変調にて、通常通信214が行われている。また、子局(STA)(1)22よりも遠方となる広範な通信エリア212に位置するIdle中の子局(STA)(2)23は、親局(AP)21との間の通信がない(無通信状態213)。
【0043】
この状態において、たとえば図2(b)に示すように、別の無線システム(図示していない)からの干渉信号(たとえば、レーダ波)217を検出した親局(AP)21は、直ちに子局(STA)(1)22および子局(STA)(2)23に対して、現在の無線通信チャネルの利用を終わらせ、別の無線通信チャネルへ移行(回避行動)するために必要な情報215,216を、PSK変調にて通知する。これにより、子局(STA)(1)22および子局(STA)(2)23は、移行先の新しい無線通信チャネルに関する情報を入手する。この後、子局(STA)(1)22および子局(STA)(2)23は、親局(AP)21と共に、無線通信チャネルの変更を実施する。
【0044】
このように、上記した第2の実施形態の場合、親局(AP)21が無線通信システムの運用中に別の無線システムからの干渉信号217を検出した際には、直ちに現在の無線通信チャネルの利用を終わらせ、別の無線通信チャネルへ移行するための回避行動に必要な情報215,216を、それまでの通信で利用可能であった変調方式(QAM)から広範囲に到達可能なビーコンと同じ変調方式(PSK)に変更して通知するようにしている。これにより、無線伝播エラーへの耐性をより高めることが可能となり、確実に、子局(STA)(1)22および子局(STA)(2)23へ回避行動を行うための情報215,216を伝えることが可能となる。
【0045】
なお、本実施形態においては、2つの子局(STA)(1)22,(STA)(2)23を例に説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、ある親局(AP)に属する子局(STA)の台数に制限があるわけではない。
【0046】
図3は、本発明の無線通信システムにかかる、親局(AP)と子局(STA)とが遵守する必要がある法令(電波法)について説明するために示すものである。法令では、干渉信号を検出した際は、10秒(sec)以内に、現在の無線通信チャネルの利用(送信)を停止し、新しい無線通信チャネルへ移行することを規定している。また、新しい無線通信チャネルへの移行期間(10sec)内の、総通信時間(送信時間の総和)も260ミリ秒(msec)と規定している。
【0047】
説明に際して、対象となる無線通信システムには、親局(AP)31と、子局(STA)(1)32,子局(STA)(2)33,…,子局(STA)(n)34とが属している。ただし、子局(STA)(n)33のnは自然数であり、この例では、“3”以上の値となる。
【0048】
通常運用時、たとえば、親局(AP)31からはビーコン(BC−TX)310が送信される。これに対し、子局(STA)(1)32ではビーコン(BC−RX)311が、子局(STA)(2)33ではビーコン(BC−RX)312が、子局(STA)(n)34ではビーコン(BC−RX)313が、それぞれ受信される。子局(STA)(1)32,(STA)(2)33,…,(STA)(n)34は、それぞれ、親局(AP)31からの伝播距離が異なることにより、受信のタイミングが時間的にズレている。
【0049】
親局(AP)31が干渉信号を検出した後においては、親局(AP)31から子局(STA)(1)32への送信情報320の送信時間t1、子局(STA)(1)32での受信情報321に対する親局(AP)31へのレスポンス情報322の送信時間t2、親局(AP)31から子局(STA)(2)33への送信情報330の送信時間t3、子局(STA)(2)33での受信情報331に対する親局(AP)31へのレスポンス情報332の送信時間t4、親局(AP)31から子局(STA)(n)34への送信情報340の送信時間t5、子局(STA)(n)34での受信情報341に対する親局(AP)31へのレスポンス情報342の送信時間t6、親局(AP)31から全ての子局(STA)(1)32,(STA)(2)33,…,(STA)(n)34へ送信される報知情報350の送信時間t7、および、親局(AP)31から全ての子局(STA)(1)32,(STA)(2)33,…,(STA)(n)34へ送信されるビーコン360の送信時間t8の、合計時間(t1+t2+t3+t4+t5+t6+t7+t8)が260msec以下であり、これら一連の通信による新しい無線通信チャネルへの移行時間(“Interference Signal Detection”のタイミングから“Move to the new Communication Channel”までの時間)が10sec以下でなければならない。
【0050】
このように、無線通信システムにおいては、親局(AP)31から子局(STA)(1)32,(STA)(2)33,…,(STA)(n)34への、干渉信号検出後に新しい無線通信チャネルへの移行に関する情報を伝達するために利用可能な通信時間(送信時間)の総和が規定されている。ゆえに、各子局(STA)(1)32,(STA)(2)33,…,(STA)(n)34に、短い通信時間(送信時間)内で必要な情報を確実に伝えなければならない。そこで、上述した第1および第2の実施形態に示した発明が有効となり、その効果が容易に得られるものである。
【0051】
[第3の実施形態]
図4は、本発明の第3の実施形態にしたがった無線通信システムにおける動作の一例を示すものである。ここでは、親局(AP)と子局(STA)との間の通信に利用される変調方式(情報伝送効率)の、設定プロセス(フロー)について説明する。
【0052】
なお、本実施形態においては、親局(AP)41が利用する無線通信チャネルの設定、および、子局(STA)42,43,44の送受信動作を制御することに加えて、親局(AP)41が干渉信号を検出し、ビーコン45と同じ変調方式への設定を実行する構成例を示したが、干渉信号の検出や変調方式への設定の実行は、この構成例に限定されるものではない。また、子局(STA)42,43,44は、先に記載した通り、レーダ検出機能の実装が免除されているが、レーダ検出機能を実装する構成も可能である。したがって、子局(STA)42,43,44のいずれか、あるいは、全てが干渉信号の検出やビーコン45と同じ変調方式への設定を実行する構成例も可能である。
【0053】
たとえば、子局(STA)(1)42、子局(STA)(2)43、子局(STA)(3)44は、それぞれ、親局(AP)41との通信が可能な状態に設定されている。すなわち、子局(STA)(1)42,(STA)(2)43,(STA)(3)44は親局(AP)41に属しており、全ての子局(STA)(1)42,(STA)(2)43,(STA)(3)44には、共通、かつ、同時に、親局(AP)41からのビーコン45がBPSK(Binary Phase Shift Keying)にて変調されて送信される。
【0054】
本実施形態において、子局(STA)(1)42は、親局(AP)41との通信の状態が良好なエリアに存在し、親局(AP)41と子局(STA)(1)42との間では、情報伝送効率のよい変調方式、たとえば64QAMを利用した通信46を行うようになっている。また、子局(STA)(2)43は、子局(STA)(1)42よりも通信の状態が劣悪なエリアに存在し、親局(AP)41と子局(STA)(2)43との間では、64QAMよりも情報伝送効率が低い変調方式、たとえば16QAMを利用した通信48を行うようになっている。一方、子局(STA)(3)44は、親局(AP)41との間で通信する情報がないため、Idle状態47となっており、共通のビーコン45のみを受信できるようになっている。
【0055】
このような通常運用の状態において、親局(AP)41のIn service monitoring機能によって、他の無線システム(図示していない)からの干渉信号(たとえば、レーダ波)が検出されると、親局(AP)41は干渉信号検出プロセス49を実施する。すなわち、親局(AP)41は、子局(STA)(1)42との通信46に利用していた変調方式(64QAM)を、ビーコン45と同一の変調方式(BPSK)へ変更し、子局(STA)(1)42との通信410を実行する。同様に、子局(STA)(2)43との通信48に利用していた変調方式(16QAM)を、ビーコン45と同一の変調方式(BSPK)へ変更し、子局(STA)(2)43との通信411を実行する。また、Idle状態47であった子局(STA)(3)44に対しては、それまでに通信状態にないことから、たとえばビーコン45と同一の変調方式(BPSK)を利用した通信412を再開させる。こうして、全ての子局(STA)(1)42,(STA)(2)43,(STA)(3)44に対して確実に情報を通知した後に、親局(AP)41および子局(STA)(1)42,(STA)(2)43,(STA)(3)44は、揃って新しい無線通信チャネルへの移行プロセス413を実施する。
【0056】
このように、上記した第3の実施形態の場合、親局(AP)41が無線通信システムの運用中に別の無線システムからの干渉信号を検出した際にも、直ちに現在の無線通信チャネルの利用を終わらせ、別の無線通信チャネルへ移行するための回避行動(移行プロセス413)に必要な情報を、ビーコン45と同一の変調方式を利用して通知(通信410,411,412)するようにしている。これにより、各子局(STA)(1)42,(STA)(2)43,(STA)(3)44との間の無線伝播エラーを生じにくくすることが可能となる結果、確実に回避行動のための情報を通知できるようになる。
【0057】
なお、本実施形態においては、3つの子局(STA)(1)42,(STA)(2)43,(STA)(3)44を例に説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、ある親局(AP)に属する子局(STA)の台数に制限があるわけではない。
【0058】
[第4の実施形態]
図5は、本発明の第4の実施形態にしたがった無線通信システムにおける動作の一例を示すものである。ここでは、親局(AP)と子局(STA)との間の通信に利用される変調方式(周波数利用効率)の、設定プロセス(フロー)について説明する。
【0059】
なお、本実施形態においては、親局(AP)51が利用する無線通信チャネルの設定、および、子局(STA)52,53,54の送受信動作を制御することに加えて、親局(AP)51が干渉信号を検出し、それぞれの子局(STA)52,53,54との通信に利用する変調方式への設定を実行する構成例を示したが、干渉信号の検出や変調方式への設定の実行は、この構成例に限定されるものではない。また、子局(STA)52,53,54は、先に記載した通り、レーダ検出機能の実装が免除されているが、レーダ検出機能を実装する構成も可能である。したがって、子局(STA)52,53,54のいずれか、あるいは、全てが干渉信号の検出や通信に利用する変調方式への設定を実行する構成例も可能である。
【0060】
たとえば、子局(STA)(1)52、子局(STA)(2)53、子局(STA)(3)54は、それぞれ、親局(AP)51との通信が可能な状態に設定されている。すなわち、子局(STA)(1)52,(STA)(2)53,(STA)(3)54は親局(AP)51に属しており、全ての子局(STA)(1)52,(STA)(2)53,(STA)(3)54には、共通、かつ、同時に、親局(AP)51からのビーコン55がBPSKにて変調されて送信される。
【0061】
本実施形態において、子局(STA)(1)52は、親局(AP)51との通信の状態が良好なエリアに存在し、親局(AP)51と子局(STA)(1)52との間では、周波数利用効率の高い変調方式、すなわち単位時間かつ単位周波数当たりに伝送可能な情報ビット数が多い変調方式、たとえば64QAMを利用した通信56を行うようになっている。また、子局(STA)(2)53は、子局(1)52よりも通信の状態が劣悪なエリアに存在し、親局(AP)51と子局(STA)(2)53との間では、64QAMよりも周波数利用効率の低い変調方式、すなわち単位時間かつ単位周波数当たりに伝送可能な情報ビット数が64QAMよりも少ない変調方式、たとえば16QAMを利用した通信58を行うようになっている。一方、子局(STA)(3)54は、親局(AP)51との間で通信する情報がないため、Idle状態57となっており、共通のビーコン55のみを受信できるようになっている。
【0062】
このような通常運用の状態において、親局(AP)51のIn service monitoring機能によって、他の無線システム(図示していない)からの干渉信号(たとえば、レーダ波)が受信されると、親局(AP)51は干渉信号検出プロセス59を実施する。すなわち、親局(AP)51は、子局(STA)(1)52との通信56に利用していた変調方式(64QAM)を、それよりも周波数利用効率は低いものの、無線伝播エラーへの耐性の高い変調方式(16QAM)へ変更し、子局(STA)(1)52との通信510を実行する。同様に、子局(STA)(2)53との通信58に利用していた変調方式(16QAM)を、それよりも周波数利用効率は低いものの、無線伝播エラーへの耐性の高い変調方式(QSPK)へ変更し、子局(STA)(2)53との通信511を実行する。また、Idle状態57であった子局(STA)(3)54に対しては、それまでに通信状態にないことから、たとえばビーコン55と同一の変調方式(BPSK)を利用した通信512を再開させる。こうして、全ての子局(STA)(1)52,(STA)(2)53,(STA)(3)54に対して確実に情報を通知した後に、親局(AP)51および子局(STA)(1)52,(STA)(2)53,(STA)(3)54は、揃って新しい無線通信チャネルへの移行プロセス513を実施する。
【0063】
このように、上記した第4の実施形態の場合、親局(AP)51が無線通信システムの運用中に別の無線システムからの干渉信号を検出した際にも、直ちに現在の無線通信チャネルの利用を終わらせ、別の無線通信チャネルへ移行するための回避行動(移行プロセス513)に必要な情報を、それまで各子局(STA)(1)52,(STA)(2)53,(STA)(3)54が利用していた変調方式よりも無線伝播エラー耐性の高い変調方式を利用して通知(通信510,511,512)するようにしている。これにより、各子局(STA)(1)52,(STA)(2)53,(STA)(3)54との間の無線伝播エラーを生じにくくすることが可能となる結果、確実に回避行動のための情報を通知できるようになる。
【0064】
なお、本実施形態においては、3つの子局(STA)(1)52,(STA)(2)53,(STA)(3)54を例に説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、ある親局(AP)に属する子局(STA)の台数に制限があるわけではない。
【0065】
図6は、本発明にかかる無線通信システムにおいて、親局(AP)が検出する干渉信号について説明するために示すものである。
【0066】
すなわち、干渉信号は周期性をもつ無線信号であって、たとえば無線標定に利用されるレーダ波を想定している。レーダ波は、たとえば図6に示すように、模式的には、時間波形61のような信号である。ただし、図6において、“B”はバースト期間、“L”はバースト長、“PRF”はパルス繰り返し周波数、“W”はパルス幅である。
【0067】
図7は、干渉信号であるレーダ波の例を示すものである。レーダ波62には複数の種類があり、それぞれ仕様が異なる。ここでは6種類のレーダ波62を示しているが、これ以外の仕様のレーダ波も周期性をもつ干渉信号として、検出の対象となり得る。
【0068】
[第5の実施形態]
図8は、本発明の第5の実施形態にしたがった無線通信システムにおける動作の一例を示すものである。ここでは、親局(AP)と子局(STA)との間の通信に利用される伝送方式として、誤り訂正(畳み込み符号)の符号化率を用いた場合の設定プロセス(フロー)について説明する。
【0069】
なお、本実施形態においては、親局(AP)71が利用する無線チャネルの設定、および、子局(STA)72,73,74の送受信動作を制御することに加えて、親局(AP)71が干渉信号を検出し、それぞれの子局(STA)72,73,74との通信に利用する誤り訂正方式(符号化率)への設定を実行する構成例を示したが、干渉信号の検出や変調方式への設定の実行は、この構成例に限定されるものではない。また、子局(STA)72,73,74は、先に記載した通り、レーダ検出機能の実装が免除されているが、レーダ検出機能を実装する構成も可能である。したがって、子局(STA)72,73,74のいずれか、あるいは、全てが干渉信号の検出や通信に利用する誤り訂正方式(符号化率)への設定を実行する構成例も可能である。
【0070】
たとえば、子局(STA)(1)72、子局(STA)(2)73、子局(STA)(3)74は、それぞれ、親局(AP)71との通信が可能な状態に設定されている。すなわち、子局(STA)(1)72,(STA)(2)73,(STA)(3)74は親局(AP)71に属しており、全ての子局(STA)(1)72,(STA)(2)73,(STA)(3)74には、共通、かつ、同時に、親局(AP)71からのビーコン75が、符号化率R=1/2で符号化されて送信される。
【0071】
本実施形態において、子局(STA)(1)72は、親局(AP)71との通信の状態が良好なエリアに存在し、親局(AP)71と子局(STA)(1)72との間では、周波数利用効率のよい符号化率、たとえばR=5/6を利用した通信76を行うようになっている。また、子局(STA)(2)73は、子局(1)72よりも通信の状態が劣悪なエリアに存在し、親局(AP)71と子局(STA)(2)73との間では、符号化率R=5/6よりも符号化率の低い、たとえばR=3/4を利用した通信78を行うようになっている。一方、子局(STA)(3)74は、親局(AP)71との間で通信する情報がないため、Idle状態77となっており、共通のビーコン75のみを受信できるようになっている。
【0072】
このような通常運用の状態において、親局(AP)71のIn service monitoring機能によって、他の無線システム(図示していない)からの干渉信号(たとえば、レーダ波)が受信されると、親局(AP)71は干渉信号検出プロセス79を実施する。すなわち、親局(AP)71は、子局(STA)(1)72との通信76に利用していた符号化率R=5/6を、それよりも符号化率は低いものの、無線伝播エラーへの耐性の高い符号化率R=1/2へ変更し、子局(STA)(1)72との通信710を実行する。同様に、子局(STA)(2)73との通信78に利用していた符号化率R=3/4を、それよりも符号化率は低いものの、無線伝播エラーへの耐性の高い符号化率R=1/2に変更し、子局(STA)(2)73との通信711を実行する。また、Idle状態77であった子局(STA)(3)74に対しては、それまでに通信状態にないことから、たとえばビーコン75と同一の伝送方式(符号化率R=1/2)を利用した通信712を再開させる。こうして、全ての子局(STA)(1)72,(STA)(2)73,(STA)(3)74に対して確実に情報を通知した後に、親局(AP)71および子局(STA)(1)72,(STA)(2)73,(STA)(3)74は、揃って新しい無線通信チャネルへの移行プロセス713を実施する。
【0073】
このように、上記した第5の実施形態の場合、親局(AP)71が無線通信システムの運用中に別の無線システムからの干渉信号を検出した際にも、直ちに現在の無線通信チャネルの利用を終わらせ、別の無線通信チャネルへ移行するための回避行動(移行プロセス713)に必要な情報を、それまで各子局(STA)(1)72,(STA)(2)73,(STA)(3)74が利用していた符号化率よりも無線伝播エラー耐性の高い符号化率を利用して通知(通信710,711,712)するようにしている。これにより、各子局(STA)(1)72,(STA)(2)73,(STA)(3)74との間の無線伝播エラーを生じにくくすることが可能となる結果、確実に回避行動のための情報を通知できるようになる。
【0074】
なお、本実施形態においては、3つの子局(STA)(1)72,(STA)(2)73,(STA)(3)74を例に説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、ある親局(AP)に属する子局(STA)の台数に制限があるわけではない。
【0075】
また、本実施形態の無線通信システムにおいて、親局(AP)と子局(STA)との間の通信に利用される周波数利用効率を変化させる伝送方式としては、畳み込み符号に限定されるものではない。
【0076】
[第6の実施形態]
図9は、本発明の第6の実施形態にしたがった無線通信システムにおける動作の一例を示すものである。ここでは、親局(AP)と子局(STA)との間の通信に利用される伝送方式として、送信ダイバーシチを用いた場合の設定プロセス(フロー)について説明する。また、同図(a)は、通常運用中、すなわち干渉信号を検出する前の無線通信システムの動作を説明するために示すもので、同図(b)は、干渉信号を検出した後の無線通信システムの動作を説明するために示すものである。
【0077】
なお、本実施形態においては、親局(AP)81が利用する無線通信チャネルの設定、および、子局(STA)84の送受信動作を制御することに加えて、親局(AP)81が干渉信号を検出し、子局(STA)84との通信に利用する親局(AP)81のアンテナ本数を2本(ANTa,ANTb)にする構成例を示したが、干渉信号の検出やアンテナ本数は、この構成例に限定されるものではない。また、子局(STA)84は、先に記載した通り、レーダ検出機能の実装が免除されているが、レーダ検出機能を実装する構成も可能である。したがって、子局(STA)84が干渉信号の検出や子局(STA)84のアンテナ本数を複数化する構成例も可能である。
【0078】
本実施形態の場合、たとえば図9(a)に示すように、親局(AP)81は、複数(この場合、2つ)のアンテナANTa82,ANTb83を有し、通信エリア86内に位置する子局(STA)84との間は、アンテナANTa82およびアンテナANT85を用いて通信87が行われている。通常、親局(AP)81は、送信時には、アンテナANTa82だけを使用し、受信時には、アンテナANTa82だけでなく、アンテナANTb83をも使用する場合がある(受信ダイバーシチ)。
【0079】
これに対し、たとえば図9(b)に示すように、干渉信号(たとえば、レーダ波)811を親局(AP)81が検出した場合、親局(AP)81は、それまでの子局(STA)84との通信87に利用していたアンテナANTa82に加え、アンテナANTb83をも用いて、新しい無線通信チャネルへの移行に関する情報817,818を、子局(STA)84のアンテナ85に送信する。この際、周波数利用効率の低い伝送方式として、アンテナANTa82およびアンテナANTb83から送信される情報817,818を同一とする。
【0080】
このように、上記した第6の実施形態の場合、親局(AP)81が無線通信システムの運用中に別の無線システム(図示していない)からの干渉信号811を検出した際には、直ちに現在の無線通信チャネルの利用を終わらせ、別の無線通信チャネルへ移行するための回避行動に必要な情報817,818を、それまでの子局(STA)84との間の通信で利用していたアンテナANTa82に加えて、アンテナANTb83をも用いて通信するようにしている。これにより、送信ダイバーシチ効果を得ることが可能となり、無線伝播エラー耐性の高い伝送方式を設定できるようになる。その結果として、子局(STA)84との間の無線伝播エラーを生じにくくすることが可能となり、確実に、子局(STA)84へ回避行動を行うための情報817,818を伝えることが可能となる。すなわち、複数の送信アンテナから同一の情報を伝送することで、複数の送信アンテナから複数の異なる情報を伝送するMIMO(Multi Input Multi Output)技術と比較し、明らかに周波数利用効率の低い伝送方式となっている。
【0081】
なお、本実施形態においては、1つの子局(STA)84に対し、親局(AP)81の2本の送信アンテナANTa82,ANTb83を用いて通信を行うようにした場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、ある親局(AP)81に属する子局(STA)の台数、および、親局(AP)が備える送信アンテナの本数に制限があるわけではない。
【0082】
[第7の実施形態]
図10は、本発明の第7の実施形態にしたがった無線通信システムにおける動作の一例を示すものである。ここでは、親局(AP)と子局(STA)との間の通信に利用される伝送方式として、送信ダイバーシチよりも周波数利用効率の低い送信空間ダイバーシチを用いた場合の設定プロセス(フロー)について説明する。
【0083】
なお、本実施形態においては、親局(AP)91が利用する無線通信チャネルの設定、および、子局(STA)92の送受信動作を制御することに加えて、親局(AP)91が干渉信号を検出し、子局(STA)92との通信に利用する親局(AP)91のアンテナ本数を2本(ANTa,ANTb)にする構成例を示したが、干渉信号の検出やアンテナ本数は、この構成例に限定されるものではない。また、子局(STA)92は、先に記載した通り、レーダ検出機能の実装が免除されているが、レーダ検出機能を実装する構成も可能である。したがって、子局(STA)92が干渉信号の検出や子局(STA)92のアンテナ本数を複数化する構成例も可能である。
【0084】
図10に示すように、親局(AP)91は、干渉信号(たとえば、レーダ波)を検出する以前は、アンテナANTaを用いて子局(STA)92との間の通信93を行うようになっている。干渉信号を受信すると、親局(AP)91は、干渉信号検出プロセス94を起動させ、それまでに利用していたアンテナANTaに加えて、アンテナANTbも用いて同一の情報95を通信するように設定を変更する。これにより、子局(STA)92へ確実に情報95が伝えられるようになる結果、親局(AP)91および子局(STA)92は、揃って新しい無線通信チャネルへの移行プロセス96を実施する。
【0085】
このように、上記した第7の実施形態の場合、親局(AP)91が無線通信システムの運用中に別の無線システム(図示していない)からの干渉信号を検出した際には、直ちに現在の無線通信チャネルの利用を終わらせ、別の無線通信チャネルへ移行するための回避行動に必要な情報95を、それまでの子局(STA)92との間の通信で利用していたアンテナANTaに加えて、アンテナANTbをも用いて通信するようにしている。これにより、送信空間ダイバーシチ効果を得ることが可能となり、無線伝播エラー耐性の高い伝送方式を設定できるようになる。その結果として、子局(STA)92との間の無線伝播エラーを生じにくくすることが可能となり、確実に、子局(STA)92へ回避行動を行うための情報95を伝えることが可能となる。
【0086】
なお、本実施形態においては、1つの子局(STA)92に対し、親局(AP)91の2本の送信アンテナANTa,ANTbを用いて通信を行うようにした場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、ある親局(AP)に属する子局(STA)の台数、および、親局(AP)が備える送信アンテナの本数に制限があるわけではない。
【0087】
図11は、本発明の無線通信システムにかかる、親局(AP)と子局(STA)との間の通信で利用される伝送方式として、送信ダイバーシチの利用効果を概念的に示すものである。
【0088】
同図(a)に示すように、親局(AP)のアンテナANTaと子局(STA)のアンテナとの間の伝播路には、お互いの空間的な位置関係で決まる歪みが生じている。そのため、屋内外に問わず、多重反射電波伝播路(マルチパス)によって、子局(STA)で受信した受信信号スペクトラム1001には、周波数選択性フェージング歪み(ノッチ)1002が存在する。
【0089】
同図(b)に示すように、親局(AP)のアンテナANTbから送信され、子局(STA)のアンテナで受信した受信信号スペクトラム1003には、周波数選択性フェージング歪み1004が存在する。
【0090】
周波数選択性フェージング歪みは、上述の通り、親局(AP)のアンテナANTa,ANTbと子局(STA)のアンテナとの空間的な位置関係だけで決まる。それゆえ、親局(AP)のアンテナANTaと子局(STA)のアンテナとの間の特性は、親局(AP)のアンテナANTbと子局(STA)のアンテナとの間の特性とは全く異なったものとなる。
【0091】
同図(c)に示すように、異なる周波数成分(受信信号スペクトラム1001,1003)にそれぞれ異なる周波数選択性フェージング歪み1002,1004が存在することから、親局(AP)の複数のアンテナANTa,ANTbから送信され、子局(STA)で受信した受信信号スペクトラム1001,1003を合成する。これにより、それぞれの周波数選択性フェージングで失われた周波数スペクトル情報1006,1007を補完することが可能となる。したがって、最終的に全ての周波数成分を含む受信信号スペクトラム1005を受信することができる。
【0092】
このように、複数のアンテナから異なる情報を伝送できるMIMO方式と比較して、周波数利用効率は劣るものの、無線伝播エラー耐性の高い伝送方式が設定されることになる。その結果として、親局(AP)と子局(STA)との間の無線伝播エラーが生じにくくなるため、親局(AP)が他の無線システムからの干渉信号を検出した後にも、確実に回避行動のための情報を子局(STA)へ通知することが可能となる。
【0093】
[第8の実施形態]
図12は、本発明の第8の実施形態にしたがった無線通信システムにおける動作の一例を示すものである。ここでは、親局(AP)と子局(STA)との間の通信に利用される伝送方式として、周波数ダイバーシチを用いた場合の設定プロセス(フロー)について説明する。
【0094】
なお、本実施形態においては、親局(AP)1101が利用する無線通信チャネルの設定、および、子局(STA)1102の送受信動作を制御することに加えて、親局(AP)1101が干渉信号を検出し、子局(STA)1102との通信に利用する周波数帯域の追加への設定を実行する構成例を示したが、干渉信号の検出や利用する周波数帯域の追加への設定の実行は、この構成例に限定されるものではない。また、子局(STA)1102は、先に記載した通り、レーダ検出機能の実装が免除されているが、レーダ検出機能を実装する構成も可能である。したがって、子局(STA)1102が干渉信号の検出や利用する周波数帯域の追加への設定を実行する構成例も可能である。
【0095】
図12に示すように、親局(AP)1101は、干渉信号(たとえば、レーダ波)を検出する以前は、周波数帯域BWaを用いて子局(STA)1102との間の通信1103を行うようになっている。干渉信号を受信すると、親局(AP)1101は、干渉信号検出プロセス1104を起動させ、それまでに利用していた周波数帯域BWaに加えて、周波数帯域BWbをも用いて同一の情報1105を通信するように設定を変更する。これにより、子局(STA)1102へ確実に情報1105が伝えられるようになる結果、親局(AP)1101および子局(STA)1102は、揃って新しい無線通信チャネルへの移行プロセス1106を実施する。
【0096】
このように、上記した第8の実施形態の場合、親局(AP)1101が無線通信システムの運用中に別の無線システム(図示していない)からの干渉信号を検出した際には、直ちに現在の無線通信チャネルの利用を終わらせ、別の無線通信チャネルへ移行するための回避行動に必要な情報1105を、それまでの子局(STA)1102との間の通信で利用していた周波数帯域BWaに加えて、周波数帯域BWbをも用いて通信するようにしている。これにより、周波数ダイバーシチ効果を得ることが可能となり、無線伝播エラー耐性の高い伝送方式を設定できるようになる。その結果として、子局(STA)1102との間の無線伝播エラーを生じにくくすることが可能となり、確実に、子局(STA)1102へ回避行動を行うための情報1105を伝えることが可能となる。
【0097】
なお、本実施形態においては、1つの子局(STA)1102に対し、2つの周波数帯域BWa,BWbを利用して通信を行うようにした場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、ある親局(AP)に属する子局(STA)の台数および利用する周波数帯域の数に制限があるわけではない。
【0098】
図13は、本発明の無線通信システムにかかる、親局(AP)と子局(STA)との間の通信で利用される伝送方式として、周波数ダイバーシチの利用効果を概念的に示すものである。
【0099】
同図(a)に示すように、通常、親局(AP)は、子局(STA)との間の通信に、周波数帯域BWa1201を利用している。もしくは、周波数帯域BWa1201と周波数帯域BWb1202とを利用し、周波数帯域1201と周波数帯域1202とで異なる情報の通信を行っている。
【0100】
同図(b)に示すように、干渉信号を検出した後においては、親局(AP)は、子局(STA)との間の通信に、周波数帯域BWa1201と周波数帯域BWb1202とを利用し、周波数帯域1201と周波数帯域1202とで同一の情報の通信を行うようになっている。
【0101】
上述したが、無線伝播には周波数選択性フェージング歪みが存在し、子局(STA)で受信した信号の周波数スペクトラムの一部が確率的に欠損する。このことから、親局(AP)と子局(STA)との間の通信をより確実なものとするために、複数の周波数帯域BWa1203,BWb1204を用いて同一の情報を無線通信することで、情報の欠損を防止することが可能となる。
【0102】
このように、本来は、異なる周波数帯域BWa1201,BWb1202を利用することによって異なる情報を伝送できる伝送方式と比較して、周波数利用効率が低くなるものの、無線伝播エラー耐性の高い伝送方式が設定されることになる。その結果として、親局(AP)と子局(STA)との間の無線伝播エラーが生じにくくなるため、親局(AP)が他の無線システムからの干渉信号を検出した後にも、確実に回避行動のための情報を子局(STA)へ通知することが可能となる。
【0103】
なお、本実施形態における周波数帯域は、直交周波数多重伝送(OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing))方式のサブキャリアに相当し、同一の情報を複数のサブキャリアへ割り当てて伝送する場合も含まれる。
【0104】
[第9の実施形態]
図14は、本発明の第9の実施形態にしたがった無線通信システムにおける動作の一例を示すものである。ここでは、親局(AP)と子局(STA)との間の通信に利用される伝送方式として、時間ダイバーシチを用いた場合の設定プロセス(フロー)について説明する。
【0105】
なお、本実施形態においては、親局(AP)1301が利用する無線チャネルの設定、および、子局(STA)1302の送受信動作を制御することに加えて、親局(AP)1301が干渉信号を検出し、子局(STA)1302との通信での同一情報の送信回数の設定を実行する構成例を示したが、干渉信号の検出や同一情報の送信回数の設定の実行は、この構成例に限定されるものではない。また、子局(STA)1302は、先に記載した通り、レーダ検出機能の実装が免除されているが、レーダ検出機能を実装する構成も可能である。したがって、子局(STA)1302が干渉信号の検出や同一情報の送信回数の設定を実行する構成例も可能である。
【0106】
図14に示すように、親局(AP)1301は、干渉信号(たとえば、レーダ波)を検出する以前は、子局(STA)1302に対して、1つの情報を1度しか送信しない設定にしたがって通信1303を行うようになっている。もちろん、送達確認が必要な情報の場合は、再送制限回数以内であれば、“OK”となるまで再送を繰り返す。
【0107】
ただし、報知情報などは複数の子局(STA)へ同時に送信するため、親局(AP)は、個別に送達確認ができない。このため、無線伝播エラーを起こした子局(STA)は、その情報がない状態のままとなってしまう。また、無線伝播エラーの発生は時変であり、ある時に発生しても、異なる時間には発生しないことがある。
【0108】
そこで、親局(AP)1301は、干渉信号を検出すると、干渉信号検出プロセス1304を起動させ、それまでに設定されていた情報送信回数を“1”ではなく、同一の情報1305を複数回にわたって繰り返し送信するように設定を変更する。これにより、子局(STA)1302へ確実に情報1305が伝えられるようになる結果、親局(AP)1301および子局(STA)1302は、揃って新しい無線通信チャネルへの移行プロセス1306を実施する。
【0109】
このように、上記した第9の実施形態の場合、親局(AP)1301が無線通信システムの運用中に別の無線システム(図示していない)からの干渉信号を検出した際には、直ちに現在の無線通信チャネルの利用を終わらせ、別の無線通信チャネルへ移行するための回避行動に必要な情報1305を、繰り返し送信するようにしている。これにより、時間ダイバーシチ効果を得ることが可能となり、無線伝播エラー耐性の高い伝送方式を設定できるようになる。その結果として、子局(STA)1302との間の無線伝播エラーを生じにくくすることが可能となり、確実に、子局(STA)1302へ回避行動を行うための情報1305を伝えることが可能となる。
【0110】
なお、本実施形態においては、1つの子局(STA)1302に対し、同一の情報を繰り返し送信するようにした場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、ある親局(AP)に属する子局(STA)の台数および繰り返される送信の回数に制限があるわけではない。
【0111】
図15は、本発明の無線通信システムにかかる、親局(AP)と子局(STA)との間の通信で利用される伝送方式として、時間ダイバーシチの利用効果を概念的に示すものである。
【0112】
図15に示すように、通常、親局(AP)1401は、子局(STA)1402との間の通信を1回だけ行うように設定されている。たとえば、親局(AP)1401からのビーコン(BC(TX))の送信1410、および、子局(STA)1402によるビーコン(BC(RX))の受信1411は、それぞれ1回となっている。また、親局(AP)1401から子局(STA)1402への、たとえば、情報の送信1412および情報の受信1413も、それぞれ1回である。もちろん、送達確認のための情報の送信1414および情報の受信1415は、“OK”となるまで、親局(AP)1401と子局(STA)1402との間で再送制限回数以内であれば、通信が繰り返される場合がある。
【0113】
さて、干渉信号を検出した後において、親局(AP)1401から子局(STA)1402への情報の送信1416に対する情報の受信1417が失敗し、その送達確認用の情報の送信1418およびその受信1419がない場合には、上述した通り、同一の情報の再送信1420および受信1421と、その送達確認のための情報の送信1422および受信1423とが行われる。それに加えて、送達確認が不可能な報知情報の送信1424に対する受信1425が子局(STA)1402で失敗している可能性があるため、再度、同一の報知情報の再送信1426が行われ、子局(STA)1402での受信1427が可能となる。
【0114】
このように、周波数利用効率が低くなるものの、子局(STA)1402との間の通信において、時間ダイバーシチ効果によって、無線伝播エラー耐性の高い伝送方式が設定されることになる。その結果として、親局(AP)1401と子局(STA)1402との間の無線伝播エラーが生じにくくなるため、親局(AP)1401が他の無線システムからの干渉信号を検出した後にも、より確実に回避行動のための情報を子局(STA)へ通知することが可能となる。
【0115】
[第10の実施形態]
図16は、本発明の第10の実施形態にしたがった無線通信システムにおける動作の一例を示すものである。ここでは、親局(AP)と子局(STA)との間の通信に利用される伝送方式として、変調方式と誤り訂正(畳み込み符号)の符号化率とを用いた場合の設定プロセス(フロー)について説明する。
【0116】
なお、本実施形態においては、親局(AP)1501が利用する無線通信チャネルの設定、および、子局(STA)1502,1503,1504の送受信動作を制御することに加えて、親局(AP)1501が干渉信号を検出し、それぞれの子局(STA)1502,1503,1504との通信に利用する変調方式、および、誤り訂正方式(符号化率)への設定を実行する構成例を示したが、干渉信号の検出や変調方式、および、誤り訂正方式(符号化率)への設定の実行は、この構成例に限定されるものではない。また、子局(STA)1502,1503,1504は、先に記載した通り、レーダ検出機能の実装が免除されているが、レーダ検出機能を実装する構成も可能である。したがって、子局(STA)1502,1503,1504のいずれか、あるいは、全てが干渉信号の検出や通信に利用する変調方式、および、誤り訂正方式(符号化率)への設定を実行する構成例も可能である。
【0117】
たとえば、子局(STA)(1)1502、子局(STA)(2)1503、子局(STA)(3)1504は、それぞれ、親局(AP)1501との通信が可能な状態に設定されている。すなわち、子局(STA)(1)1502,(STA)(2)1503,(STA)(3)1504は親局(AP)1501に属しており、全ての子局(STA)(1)1502,(STA)(2)1503,(STA)(3)1504には、共通、かつ、同時に、親局(AP)1501からのビーコン1505が、BPSKにて変調および符号化率R=1/2で符号化されて送信される。
【0118】
本実施形態において、子局(STA)(1)1502は、親局(AP)1501との通信の状態が良好なエリアに存在し、親局(AP)1501と子局(STA)(1)1502との間では、周波数利用効率の高い変調方式、たとえば変調方式が64QAMで、符号化率R=3/4を利用した通信1506を行うようになっている。また、子局(STA)(2)1503は、子局(STA)(1)1502よりも通信の状態が劣悪なエリアに存在し、親局(AP)1501と子局(STA)(2)1503との間では、64QAM、R=3/4よりも周波数利用効率の低い変調方式、たとえば変調方式が16QAMで、符号化率R=2/3を利用した通信1508を行うようになっている。一方、子局(STA)(3)1504は、親局(AP)1501との間で通信する情報がないため、Idle状態1507となっており、共通のビーコン1505のみを受信できるようになっている。
【0119】
このような通常運用の状態において、親局(AP)1501のIn service monitoring機能によって、他の無線システム(図示していない)からの干渉信号(たとえば、レーダ波)が受信されると、親局(AP)1501は干渉信号検出プロセス1509を実施する。すなわち、親局(AP)1501は、子局(STA)(1)1502との通信1506に利用していた変調方式64QAMと符号化率R=3/4とを、それよりも周波数利用効率の低い変調方式16QAMと符号化率R=1/2とに変更し、子局(STA)(1)1502との通信1510を実行する。同様に、子局(STA)(2)1503との通信1508に利用していた変調方式16QAMと符号化率R=2/3とを、それよりも周波数利用効率の低い変調方式QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)と符号化率R=1/2とに変更し、子局(STA)(2)1503との通信1511を実行する。また、Idle状態1507であった子局(STA)(3)1504に対しては、それまでに通信状態にないことから、たとえばビーコン1505と同一の変調方式BPSKと符号化率R=1/2とを利用した通信1512を再開させる。こうして、全ての子局(STA)(1)1502,(STA)(2)1503,(STA)(3)1504に対して確実に情報を通知した後に、親局(AP)1501および子局(STA)(1)1502,(STA)(2)1503,(STA)(3)1504は、揃って新しい無線通信チャネルへの移行プロセス1513を実施する。
【0120】
このように、上記した第10の実施形態の場合、親局(AP)1501が無線通信システムの運用中に別の無線システムからの干渉信号を検出した際にも、直ちに現在の無線通信チャネルの利用を終わらせ、別の無線通信チャネルへ移行するための回避行動(移行プロセス1513)に必要な情報を、それまで各子局(STA)(1)1502,(STA)(2)1503,(STA)(3)1504が利用していた変調方式と符号化率との組み合わせよりも無線伝播エラー耐性の高い変調方式と符号化率との組み合わせを利用して通知(通信1510,1511,1512)するようにしている。これにより、各子局(STA)(1)1502,(STA)(2)1503,(STA)(3)1504との間の無線伝播エラーを生じにくくすることが可能となる結果、確実に回避行動のための情報を通知できるようになる。
【0121】
なお、本実施形態においては、3つの子局(STA)(1)1502,(STA)(2)1503,(STA)(3)1504を例に説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、ある親局(AP)に属する子局(STA)の台数に制限があるわけではない。
【0122】
また、本実施形態の無線通信システムにおいて、親局(AP)と子局(STA)との間の通信に利用される周波数利用効率を変化させる伝送方式のうち、誤り訂正の方式として畳み込み符号に限定されるものではない。
【0123】
また、本実施形態では、変調方式と誤り訂正の符号化率との組み合わせだけを取り上げて説明したが、周波数利用効率を変化させる伝送方式としては、変調方式を、たとえば、先に説明した空間送信ダイバーシチ、周波数ダイバーシチ、もしくは、時間ダイバーシチなどと組み合わせることも可能である。
【0124】
[第11の実施形態]
図17は、本発明の第11の実施形態にしたがった無線通信システムにおける動作の一例を示すものである。ここでは、親局(AP)と子局(STA)との間の通信の際に設定される送信電力の、電力量を変化させるようにした場合の設定プロセス(フロー)について説明する。
【0125】
なお、本実施形態においては、親局(AP)1601が利用する無線通信チャネルの設定、および、子局(STA)1602,1603,1604の送受信動作を制御することに加えて、親局(AP)1601が干渉信号を検出し、それぞれの子局(STA)1602,1603,1604との通信の送信電力への設定を実行する構成例を示したが、干渉信号の検出や送信電力への設定の実行は、この構成例に限定されるものではない。また、子局(STA)1602,1603,1604は、先に記載した通り、レーダ検出機能の実装が免除されているが、レーダ検出機能を実装する構成も可能である。したがって、子局(STA)1602,1603,1604のいずれか、あるいは、全てが干渉信号の検出や送信電力への設定を実行する構成例も可能である。
【0126】
たとえば、子局(STA)(1)1602、子局(STA)(2)1603、子局(STA)(3)1604は、それぞれ、親局(AP)1601との通信が可能な状態に設定されている。すなわち、子局(STA)(1)1602,(STA)(2)1603,(STA)(3)1604は親局(AP)1601に属しており、全ての子局(STA)(1)1602,(STA)(2)1603,(STA)(3)1604には、共通、かつ、同時に、親局(AP)1601からのビーコン1605が送信電力A(dBm)の電力量により送信される。
【0127】
本実施形態において、子局(STA)(1)1602は、親局(AP)1601との通信の状態が良好なエリア、すなわち親局(AP)1601に近い位置に存在し、親局(AP)1601と子局(STA)(1)1602との間では、ビーコン1605よりも少ない送信電力B(dBm)により通信1606を行うようになっている。また、子局(STA)(2)1603は、子局(STA)(1)1602よりも遠方に位置し、親局(AP)1601と子局(STA)(2)1603との間では、子局(STA)(1)1602との通信1606よりも大きな送信電力、たとえばC(dBm)の電力量により通信1608を行うようになっている。一方、子局(STA)(3)1604は、親局(AP)1601との間で通信する情報がないため、Idle状態1607となっており、共通のビーコン1605のみを受信できるようになっている。
【0128】
このような通常運用の状態において、親局(AP)1601のIn service monitoring機能によって、他の無線システム(図示していない)からの干渉信号(たとえば、レーダ波)が受信されると、親局(AP)1601は干渉信号検出プロセス1609を実施する。すなわち、親局(AP)1601は、子局(STA)(1)1602との通信1606に用いる電力量を、送信電力B(dBm)以上の送信電力C(dBm)に変更し、子局(STA)(1)1602との通信1610を実行する。同様に、子局(STA)(2)1603との通信に用いる電力量を、送信電力C(dBm)以上の送信電力A(dBm)に変更し、子局(STA)(2)1603との通信1611を実行する。また、Idle状態1607であった子局(STA)(3)1604に対しては、それまでに通信状態にないことから、ビーコン1605の通信に用いた送信電力A(dBm)以上の電力量、たとえばD(dBm)の送信電力を設定して通信1612を再開させる。こうして、全ての子局(STA)(1)1602,(STA)(2)1603,(STA)(3)1604に対して確実に情報を通知した後に、親局(AP)1601および子局(STA)(1)1602,(STA)(2)1603,(STA)(3)1604は、揃って新しい無線通信チャネルへの移行プロセス1613を実施する。
【0129】
このように、上記した第11の実施形態の場合、親局(AP)1601が無線通信システムの運用中に別の無線システムからの干渉信号を検出した際にも、直ちに現在の無線通信チャネルの利用を終わらせ、別の無線通信チャネルへ移行するための回避行動(移行プロセス1613)に必要な情報を、それまで各子局(STA)(1)1602,(STA)(2)1603,(STA)(3)1604への通信に利用されていた送信電力以上の電力量に設定して通知(通信1610,1611,1612)するようにしている。これにより、各子局(STA)(1)1602,(STA)(2)1603,(STA)(3)1604との間の無線伝播エラーを生じにくくすることが可能となる結果、確実に回避行動のための情報を通知できるようになる。
【0130】
なお、本実施形態においては、3つの子局(STA)(1)1602,(STA)(2)1603,(STA)(3)1604を例に説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、ある子局(AP)に属する子局(STA)の台数に制限があるわけではない。
【0131】
また、本実施形態の場合、干渉信号を検出した後に設定する送信電力を干渉信号の検出前の電力量以上に設定するようにしたが、これに限らず、たとえば干渉信号の検出前の送信電力が既に最大値である場合には、そのままの電力量(最大値)での運用が継続されるようにしてもよい。
【0132】
上記したように、本発明にかかる各実施形態にあっては、親局(AP)と少なくとも1つ以上の子局(STA)とで構成される無線通信システムにおいて、無線通信システムの運用中に親局(AP)が別の無線システムからの干渉信号を検出した際には、直ちに現在の無線通信チャネルの利用を終了させ、別の無線通信チャネルへ移行するための回避行動を行うための情報を、無線伝播エラー耐性の高い伝送方式を利用して各子局(STA)に通知するようにしている。これにより、親局(AP)は、子局(STA)に確実に回避行動を行うための情報を通知できるようになる。
【0133】
すなわち、無線LANの市場要求に応じて解放された新たな周波数帯域では、常時、運用中に親局(AP)がレーダ波をモニタリングする義務があり、レーダ波を検出した際には、確実に子局(STA)にレーダ検出後の動作のための指示などの情報を伝える必要があるため、各実施形態によれば、回避行動を行うために必要な情報を子局(STA)に対して確実に与えることが可能となり、運用中の突然の強制的な通信の切断などといった問題の発生を抑制でき、ユーザへの不利益や不快感を回避することが可能になる。
【0134】
その他、本願発明は、上記(各)実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。さらに、上記(各)実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。たとえば、(各)実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題(の少なくとも1つ)が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果(の少なくとも1つ)が得られる場合には、その構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】本発明の第1の実施形態にしたがった無線通信システムにおいて、親局と子局との間の伝送方式の設定にかかる動作について説明するために示す図。
【図2】本発明の第2の実施形態にしたがった無線通信システムにおいて、親局と子局との間の伝送方式の設定にかかる動作について説明するために示す図。
【図3】本発明の無線通信システムにかかる、親局と子局とが遵守すべき法令(電波法)について説明するために示す図。
【図4】本発明の第3の実施形態にしたがった無線通信システムにおいて、親局と子局との間の伝送方式の設定にかかる動作について説明するために示す図。
【図5】本発明の第4の実施形態にしたがった無線通信システムにおいて、親局と子局との間の伝送方式の設定にかかる動作について説明するために示す図。
【図6】本発明にかかる無線通信システムにおいて、親局が検出する干渉信号について説明するために示す図。
【図7】干渉信号がレーダ波である場合を例に示す図。
【図8】本発明の第5の実施形態にしたがった無線通信システムにおいて、親局と子局との間の伝送方式の設定にかかる動作について説明するために示す図。
【図9】本発明の第6の実施形態にしたがった無線通信システムにおいて、親局と子局との間の伝送方式の設定にかかる動作について説明するために示す図。
【図10】本発明の第7の実施形態にしたがった無線通信システムにおいて、親局と子局との間の伝送方式の設定にかかる動作について説明するために示す図。
【図11】本発明にかかる無線通信システムにおいて、送信ダイバーシチの効果について説明するために示す図。
【図12】本発明の第8の実施形態にしたがった無線通信システムにおいて、親局と子局との間の伝送方式の設定にかかる動作について説明するために示す図。
【図13】本発明にかかる無線通信システムにおいて、周波数ダイバーシチの効果について説明するために示す図。
【図14】本発明の第9の実施形態にしたがった無線通信システムにおいて、親局と子局との間の伝送方式の設定にかかる動作について説明するために示す図。
【図15】本発明にかかる無線通信システムにおいて、時間ダイバーシチの効果について説明するために示す図。
【図16】本発明の第10の実施形態にしたがった無線通信システムにおいて、親局と子局との間の伝送方式の設定にかかる動作について説明するために示す図。
【図17】本発明の第11の実施形態にしたがった無線通信システムにおいて、親局と子局との間の伝送方式の設定にかかる動作について説明するために示す図。
【符号の説明】
【0136】
11,21,31,41,51,71,81,91,1101,1301,1401,1501,1601…親局(AP)、12,13,22,23,32,33,34,42,43,44,52,53,54,72,73,74,84,92,1102,1302,1402,1502,1503,1504,1602,1603,1604…子局(STA)、61…周期性干渉波の時間波形。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
他の無線局からの制御を受けることなしに送信を行い、無線通信に利用するチャネルを自立的に設定することができる親局と、前記親局によって、利用する無線通信チャネルおよび送受信動作が制御される子局とから構成される無線通信システムであって、
前記無線通信システム内における無線通信の障害となる干渉信号を、前記親局もしくは前記子局のいずれかが検出した後、前記親局と前記親局に属している前記子局との間の無線通信に適用される変調方式が、前記無線通信システム内における同報通信に利用される変調方式と同一の変調方式に設定されることを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
他の無線局からの制御を受けることなしに送信を行い、無線通信に利用するチャネルを自立的に設定することができる親局と、前記親局によって、利用する無線通信チャネルおよび送受信動作が制御される子局とから構成される無線通信システムであって、
前記無線通信システム内における無線通信の障害となる干渉信号を、前記親局もしくは前記子局のいずれかが検出した後、前記親局と前記親局に属している前記子局との間の無線通信に適用される伝送方式が、前記干渉信号を検出する前の無線通信に適用されていた伝送方式よりも周波数利用効率の低い伝送方式に設定されることを特徴とする無線通信システム。
【請求項3】
他の無線局からの制御を受けることなしに送信を行い、無線通信に利用するチャネルを自立的に設定することができる親局と、前記親局によって、利用する無線通信チャネルおよび送受信動作が制御される子局とから構成される無線通信システムであって、
前記無線通信システム内における無線通信の障害となる干渉信号を、前記親局もしくは前記子局のいずれかが検出した後、前記親局と前記親局に属している前記子局との間の無線通信に適用される送信電力が、前記干渉信号を検出する前の無線通信に適用されていた送信電力以上の送信電力に設定されることを特徴とする無線通信システム。
【請求項4】
前記干渉信号が周期性をもつ無線信号であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記周波数利用効率の低い伝送方式とは、単位時間かつ単位周波数当たりに伝送可能な情報ビット数が少ない変調方式を利用する伝送方式、または、誤り訂正の符号化率を低くして冗長を多く設定した伝送方式、または、複数の送信アンテナから同一情報を送信する伝送方式、または、同一情報を複数の周波数成分を利用して伝送する伝送方式、または、同一情報を時間的に繰り返し伝送する伝送方式のいずれか1つ、もしくは、いくつかを組み合わせた伝送方式であることを特徴とする請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項1】
他の無線局からの制御を受けることなしに送信を行い、無線通信に利用するチャネルを自立的に設定することができる親局と、前記親局によって、利用する無線通信チャネルおよび送受信動作が制御される子局とから構成される無線通信システムであって、
前記無線通信システム内における無線通信の障害となる干渉信号を、前記親局もしくは前記子局のいずれかが検出した後、前記親局と前記親局に属している前記子局との間の無線通信に適用される変調方式が、前記無線通信システム内における同報通信に利用される変調方式と同一の変調方式に設定されることを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
他の無線局からの制御を受けることなしに送信を行い、無線通信に利用するチャネルを自立的に設定することができる親局と、前記親局によって、利用する無線通信チャネルおよび送受信動作が制御される子局とから構成される無線通信システムであって、
前記無線通信システム内における無線通信の障害となる干渉信号を、前記親局もしくは前記子局のいずれかが検出した後、前記親局と前記親局に属している前記子局との間の無線通信に適用される伝送方式が、前記干渉信号を検出する前の無線通信に適用されていた伝送方式よりも周波数利用効率の低い伝送方式に設定されることを特徴とする無線通信システム。
【請求項3】
他の無線局からの制御を受けることなしに送信を行い、無線通信に利用するチャネルを自立的に設定することができる親局と、前記親局によって、利用する無線通信チャネルおよび送受信動作が制御される子局とから構成される無線通信システムであって、
前記無線通信システム内における無線通信の障害となる干渉信号を、前記親局もしくは前記子局のいずれかが検出した後、前記親局と前記親局に属している前記子局との間の無線通信に適用される送信電力が、前記干渉信号を検出する前の無線通信に適用されていた送信電力以上の送信電力に設定されることを特徴とする無線通信システム。
【請求項4】
前記干渉信号が周期性をもつ無線信号であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記周波数利用効率の低い伝送方式とは、単位時間かつ単位周波数当たりに伝送可能な情報ビット数が少ない変調方式を利用する伝送方式、または、誤り訂正の符号化率を低くして冗長を多く設定した伝送方式、または、複数の送信アンテナから同一情報を送信する伝送方式、または、同一情報を複数の周波数成分を利用して伝送する伝送方式、または、同一情報を時間的に繰り返し伝送する伝送方式のいずれか1つ、もしくは、いくつかを組み合わせた伝送方式であることを特徴とする請求項2に記載の無線通信システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
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【図14】
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【図16】
【図17】
【公開番号】特開2008−306409(P2008−306409A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−150976(P2007−150976)
【出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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