説明

無線通信システム

【課題】周波数の利用効率を向上可能な無線通信システムを提供する。
【解決手段】端末装置4は、端末装置5との間で予め決定された共通バックオフBOF_com4−5を保持している。そして、端末装置4は、パケットを端末装置5と同時に送信する必要がある場合、無線通信空間が空き、IFSが経過し、更に、共通バックオフBOF_com4−5が経過すると、パケットをAP1へ送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、無線通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
IEEE802.11で規定される無線LAN(Local Area Network)では、CSMA/CA(Carrier Sense Mutiple Access with Collision Avoidance)方式に基づき、複数のアクセスポイントおよび複数の端末装置間でパケットの送信タイミングが重ならないように調整することで、同一の無線チャネルを共有して無線通信が行なわれる。
【0003】
CSMA/CA方式では、同一の無線チャネルを用いる各アクセスポイントおよび端末装置が自律的に送信タイミングを決定する。即ち、パケットの送信を試みようとするアクセスポイントおよび端末装置は、他のアクセスポイントおよび端末装置による無線チャネルの使用状況を確認し、無線チャネルが、一定時間、未使用であれば、パケットの送信を開始する。
【0004】
そして、他のアクセスポイントおよび端末装置が無線チャネルの使用を終了した後、パケットの送信を待っている複数のアクセスポイントおよび複数の端末装置が同時に送信を開始するのを回避するため、各アクセスポイントおよび端末装置は、バックオフと呼ばれるランダムに決定された待機時間だけ、更に無線チャネルの使用状況を確認し、未使用であれば、パケットの送信を開始する(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】IEEE Std 802.11−1999.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の無線LANシステムにおいては、複数のアクセスポイントおよび複数の端末装置が故意に同一のタイミングでパケットを送信することは不可能である。従って、複数のアクセスポイントまたは複数の端末装置から同時に送信された合成電波を受信し、信号処理して復号することによって周波数の利用効率を向上させるマルチサイトMIMO(Multiple Input−Multiple Output)伝送またはダイバーシチ受信を利用することは困難である。
【0007】
そこで、この発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、周波数の利用効率を向上可能な無線通信システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の実施の形態によれば、無線通信システムは、無線通信空間の空きを検知するためのキャリアセンスを行い、無線通信空間が空いているときに無線通信を行なう無線通信システムであって、第1から第3の無線装置を備える。第1の無線装置は、無線通信空間が空いているとき、第1のバックオフが経過すると、パケットを送信する。第2の無線装置は、無線通信空間が空いているとき、第1のバックオフと同じ第2のバックオフが経過すると、パケットを送信する。第3の無線装置は、第1および第2の無線装置からパケットを受信する。
【0009】
好ましくは、第1および第2の無線装置の各々は、第1の無線装置と第2の無線装置とに共通する情報である第1の情報と、第3の無線装置を識別する情報である第2の情報とを予め保持しており、第1および第2の情報を用いて第1および第2のバックオフを取得し、その取得した第1および第2のバックオフを用いてパケットを送信する。
【0010】
また、この発明の実施の形態によれば、無線通信システムは、無線通信空間の空きを検知するためのキャリアセンスを行い、無線通信空間が空いているときに無線通信を行なう無線通信システムであって、第1から第3の無線装置を備える。第1および第2の無線装置は、制御フレームの受信に伴って決定された送信タイミングに同期してパケットを送信する。第3の無線装置は、第1および第2の無線装置からパケットを受信する。
【0011】
好ましくは、第1の無線装置は、送信タイミングを含む送信要求フレームまたは送信タイミングを含む送信許可フレームを制御フレームとして送信するとともに、送信タイミングに同期してパケットを送信する。第2の無線装置は、送信許可フレームまたは送信許可フレームを受信し、その受信した送信許可フレームまたは送信許可フレームに含まれる送信タイミングに同期してパケットを送信する。
【0012】
好ましくは、無線通信システムは、第4の無線装置を更に備える。第4の無線装置は、パケットを同時に送信することを要求する無線装置を決定し、その決定した無線装置を指定する端末情報とパケットを同時に送信することを要求する同時送信要求とを制御フレームに含めて送信する。第1および第2の無線装置の各々は、制御フレームを受信し、その受信した制御フレームに含まれる端末情報に基づいてパケットの同時送信を要求されていることを検知すると、制御フレームの受信後、一定時間が経過すると、パケットを送信する。
【0013】
好ましくは、第1から第3の無線装置の各々は、アクセスポイント、またはアクセスポイントの配下の端末装置からなる。
【発明の効果】
【0014】
この発明の実施の形態による無線通信システムにおいては、第1および第2の無線装置は、無線通信空間が空いていることを検知すると、同じバックオフを用いてパケットを送信し、第3の無線装置は、第1および第2の無線装置からパケットを受信する。
【0015】
また、この発明の実施の形態による無線通信システムにおいては、第1および第2の無線装置は、制御フレームの受信に伴って決定された送信タイミングに同期してパケットを送信し、第3の無線装置は、第1および第2の無線装置からパケットを受信する。
【0016】
その結果、第1および第2の無線装置は、同時に、無線通信空間を占有し、第1および第2の無線装置によるパケットの送信が完了すると、無線通信空間が他の無線装置に開放される。
【0017】
従って、周波数の利用効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の実施の形態による無線通信システムの概略図である。
【図2】図1に示すAPの実施の形態1における構成図である。
【図3】図1に示す端末装置の実施の形態1における構成図である。
【図4】共通バックオフを用いた通信方式の概念図である。
【図5】図1に示すAPの実施の形態2における構成図である。
【図6】図1に示す端末装置の実施の形態2における構成図である。
【図7】RTS/CTSを用いた通信方式の概念図である。
【図8】図1に示すAPの実施の形態3における構成図である。
【図9】図1に示す端末装置の実施の形態3における構成図である。
【図10】PCFを用いた通信方式の概念図である。
【図11】アクセスポイントの分布状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0020】
図1は、この発明の実施の形態による無線通信システムの概略図である。図1を参照して、この発明の実施の形態による無線通信システム10は、アクセスポイント(AP:Access Point)1〜3と、端末装置4〜6とを備える。
【0021】
AP1〜3および端末装置4〜6は、無線通信空間に配置される。AP1〜3の各々は、後述する通信方式に従って端末装置4〜6と無線通信を行なう。但し、AP1〜3および端末装置4〜6の全ては、同一の無線チャネルを用いて無線通信を行なうものとする。
【0022】
[実施の形態1]
図2は、図1に示すAP1の実施の形態1における構成図である。図2を参照して、AP1は、アンテナ11と、無線モジュール13と、通信手段14と、有線ケーブル15とを含む。
【0023】
アンテナ11は、無線モジュール13に接続される。アンテナ11は、端末装置4〜6からパケットを受信し、その受信したパケットを無線モジュール13へ出力する。また、アンテナ11は、無線モジュール13からパケットを受け、その受けたパケットを端末装置4〜6へ送信する。
【0024】
無線モジュール13は、AP1以外のAP2,3および端末装置4〜6との間で予め決定されている共通バックオフBOF_comを保持している。そして、無線モジュール13は、パケットを同時に送信する必要がある場合、通信手段14からパケットを受けると、アンテナ11を介してキャリアセンスし、無線通信空間が空いていれば、IFS(Inter Frame Space)が経過し、更に、共通バックオフBOF_comが経過すると、パケットの送信先を端末装置(端末装置4〜6のいずれか)に設定するとともに、パケットをアンテナ11を介して送信する。
【0025】
なお、パケットを同時に送信する必要があるか否かは、例えば、次の方法によって決定される。
【0026】
端末装置4,5が端末装置6からAP1へ送信するパケットを中継する場合、端末装置6は、中継器として端末装置4,5のアドレスAdd4,Add5と、送信先であるAP1のアドレスAdd1とを含むパケットを生成して送信する。そして、端末装置4,5は、端末装置6から受信したパケットに中継器としてのアドレスAdd4,Add5が含まれているので、パケットを同時にAP1へ送信する必要があることを決定する。
【0027】
また、AP1,3がインターネットに接続された送信元から端末装置4へ送信するパケットを中継する場合、送信元は、中継器としてAP1,3のアドレスAdd1,Add3と、送信先である端末装置4のアドレスAdd4とを含むパケットを生成して送信する。そして、AP1,3は、送信元から受信したパケットに中継器としてのアドレスAdd1,Add3が含まれているので、パケットを同時に端末装置4へ送信する必要があることを検知する。
【0028】
また、無線モジュール13は、同時にパケットを送信する必要がない場合、ランダムに決定されたバックオフBOFを用いてパケットを送信する。
【0029】
更に、無線モジュール13は、アンテナ11からパケットを受け、その受けたパケットの送信先をインターネットに接続された通信先に設定する。そして、無線モジュール13は、そのパケットを通信手段14へ出力する。
【0030】
通信手段14は、無線モジュール13からパケットを受け、その受けたパケットを有線ケーブル15を介して、インターネットに接続された通信先へ送信する。
【0031】
また、通信手段14は、インターネットに接続された通信先から有線ケーブル15を介してパケットを受信し、その受信したパケットを無線モジュール13へ出力する。
【0032】
有線ケーブル15は、インターネットに接続された通信先と、通信手段14との間でパケットをやり取りする。
【0033】
なお、図1に示すAP2,3の各々も、図2に示すAP1と同じ構成からなる。
【0034】
図3は、図1に示す端末装置4の実施の形態1における構成図である。図3を参照して、端末装置4は、アンテナ41と、無線モジュール43とを備える。
【0035】
アンテナ41は、無線モジュール43に接続される。アンテナ41は、AP1〜3からパケットを受信し、その受信したパケットを無線モジュール43へ出力する。また、アンテナ41は、無線モジュール43からパケットを受け、その受けたパケットをAP1〜3へ送信する。
【0036】
無線モジュール43は、共通バックオフBOF_comを保持している。そして、無線モジュール43は、パケットを同時に送信する必要がある場合、アプリケーション(図示せず)からパケットを受けると、アンテナ41を介してキャリアセンスし、無線通信空間が空いていれば、IFSが経過し、更に、共通バックオフBOF_comが経過すると、パケットの送信先をAP(AP1〜3のいずれか)に設定するとともに、パケットをアンテナ41を介して送信する。
【0037】
また、無線モジュール43は、同時にパケットを送信する必要がない場合、ランダムに決定されたバックオフBOFを用いてパケットを送信する。
【0038】
更に、無線モジュール43は、アンテナ41からパケットを受け、その受けたパケットをアプリケーションへ出力する。
【0039】
図4は、共通バックオフを用いた通信方式の概念図である。図4を参照して、AP1は、パケットを送信している期間、端末装置4,5は、ビジー状態である。そして、端末装置4,5は、端末装置4,5間で予め決定された共通バックオフBOF_com4−5を保持している。
【0040】
AP1がパケットの送信を完了した後、IFSが経過し、更に、共通バックオフBOF_com4−5が経過すると、端末装置4,5の無線モジュール43は、パケットをAP1へ送信する。即ち、端末装置4,5は、パケットを同時にAP1へ送信する。そして、AP1は、無線装置4,5からパケットを受信し、その受信したパケットを復調する。
【0041】
端末装置4,5がパケットを送信している期間、AP1は、ビジー状態である。そして、端末装置4,5がパケットの送信を完了した後、IFSが経過し、バックオフBOF(AP1の独自のバックオフ)が経過すると、AP1は、パケットを送信する。AP1がパケットを送信している期間、端末装置4,5は、ビジー状態である。
【0042】
このように、無線通信システム10においては、パケットを同時に送信する必要がある場合、AP1〜3および端末装置4〜6間で予め決定された共通バックオフを用いてパケットを送信する。その結果、端末装置4,5は、同時に、無線通信空間を占有し、端末装置4,5によるパケットの送信が完了すると、無線通信空間が他のAP1〜3および端末装置6に開放される。
【0043】
従って、周波数の利用効率を向上できる。
【0044】
表1は、AP1と端末装置4,5との組合せと共通バックオフBOF_comとの関係を示す。
【0045】
【表1】

【0046】
このように、共通バックオフBOF_comは、パケットを同時に送信する端末間で予め決定されている。そして、AP1および端末装置4,5の各々は、表1に示す端末の組合せと共通バックオフとの関係を保持しており、同時にパケットを送信する端末の組合せが決まれば、表1を参照して、その決まった端末の組合せに対応する共通バックオフを用いてパケットを送信する。
【0047】
なお、無線通信システム10においては、3個のAP1〜3と3個の端末装置4〜6とが存在するので、共通バックオフは、2個の端末の組合せ、3個の端末の組合せ、4個の端末の組合せ、5個の端末の組合せおよび6個の端末の組合せに対して予め決定される。そして、AP1〜3および端末装置4〜6の各々は、端末の組合せと共通バックオフとの関係を保持している。
【0048】
上記においては、AP1〜3および端末装置4〜6の各々は、端末の組合せと共通バックオフとの関係を保持していると説明したが、実施の形態1においては、これに限らず、AP1〜3および端末装置4〜6の各々は、共通バックオフを算出するための任意の情報を保持していてもよい。
【0049】
例えば、端末装置4,5がAP1へ同時にパケットを送信したい場合、端末装置4,5は、端末装置4,5に共通する情報X4−5とAP1を識別する固有の情報Yとを用いてX4−5*Y、またはX4−5+Yを演算して共通バックオフBOF_com4−5を決定する。そして、共通する情報X4−5および固有の情報Yは、例えば、端末装置4,5およびAP1のアドレスを十進法で表した数値からなる。
【0050】
端末の組合せと共通情報との関係を表2に示し、端末と固有情報との関係を表3に示す。
【0051】
【表2】

【0052】
【表3】

【0053】
AP1の無線モジュール13および端末装置4,5の無線モジュール43は、表2および表3を保持している。AP1の無線モジュール13および端末装置4,5の無線モジュール43は、同時にパケットを送信する端末の組合せ、およびパケットの送信先が決定されれば、表2を参照して、その決められた端末の組合せに対応する共通情報を抽出し、その決められた送信先の端末に対応する固有情報を抽出する。そして、AP1の無線モジュール13および端末装置4,5の無線モジュール43は、その抽出した共通情報および固有情報を用いて共通バックオフBOF_comを算出する。
【0054】
実際には、表2に示す端末の組合せと共通情報との関係がAP1〜3および端末装置4〜6に対して予め決定されており、表3に示す端末と固有情報との関係がAP1〜3および端末装置4〜6に対して予め決定されている。
【0055】
[実施の形態2]
図5は、図1に示すAP1の実施の形態2における構成図である。図1に示すAP1は、実施の形態2においては、図5に示すAP1Aからなる。
【0056】
図5を参照して、AP1Aは、図2に示すAP1の無線モジュール13を無線モジュール13Aに代えたものであり、その他は、AP1と同じである。
【0057】
無線モジュール13Aは、アンテナ11に接続される。無線モジュール13Aは、パケットを他のAP2,3および端末装置4〜6と同時に送信する必要がない場合、通常のRTS(Request To Send)および通常のCTS(Clear To Send)を生成して送信する。
【0058】
また、無線モジュール13Aは、パケットを他のAP2,3および端末装置4〜6と同時に送信する必要がある場合、パケットを同時に送信する送信タイミングを含むRTSおよびパケットを同時に送信する送信タイミングを含むCTSを生成して送信する。
【0059】
更に、無線モジュール13Aは、通信手段14からパケットを受けると、その受けたパケットの送信先を端末装置4〜6のいずれかに設定する。そして、無線モジュール13Aは、パケットを他のAP2,3および端末装置4〜6と同時に送信する必要がない場合、パケットをアンテナ11を介して送信する。また、無線モジュール13Aは、パケットを他のAP2,3および端末装置4〜6と同時に送信する必要がある場合、RTSまたはCTSに含まれる送信タイミングに同期してパケットを送信する。
【0060】
更に、無線モジュール13Aは、アンテナ11からパケットを受け、その受けたパケットの送信先をインターネットに接続された通信先に設定する。そして、無線モジュール13Aは、パケットを通信手段14へ出力する。
【0061】
なお、図1に示すAP2,3の各々も、実施の形態2においては、図5に示すAP1Aと同じ構成からなる。
【0062】
図6は、図1に示す端末装置4の実施の形態2における構成図である。図1に示す端末装置4は、実施の形態2においては、図6に示す端末装置4Aからなる。
【0063】
図6を参照して、端末装置4Aは、図3に示す端末装置4の無線モジュール43を無線モジュール43Aに代えたものであり、その他は、端末装置4と同じである。
【0064】
無線モジュール43Aは、アンテナ41に接続される。無線モジュール43Aは、パケットをAP1〜3(=1A)および他の端末装置5,6と同時に送信する必要がない場合、通常のRTSおよび通常のCTSを生成して送信する。
【0065】
また、無線モジュール43Aは、パケットをAP1〜3(=1A)および他の端末装置5,6と同時に送信する必要がある場合、パケットを同時に送信する送信タイミングを含むRTSおよびパケットを同時に送信する送信タイミングを含むCTSを生成して送信する。
【0066】
更に、無線モジュール43Aは、アプリケーションからパケットを受けると、その受けたパケットの送信先をAP1〜3(=1A)のいずれかに設定する。そして、無線モジュール43Aは、パケットをAP1〜3(=1A)および他の端末装置5,6と同時に送信する必要がない場合、パケットをアンテナ41を介して送信する。また、無線モジュール43Aは、パケットをAP1〜3(=1A)および他の端末装置5,6と同時に送信する必要がある場合、RTSまたはCTSに含まれる送信タイミングに同期してパケットを送信する。
【0067】
更に、無線モジュール43Aは、アンテナ41からパケットを受け、その受けたパケットをアプリケーションへ出力する。
【0068】
なお、図1に示す端末装置5,6の各々も、実施の形態2においては、図6に示す端末装置4Aと同じ構成からなる。
【0069】
図7は、RTS/CTSを用いた通信方式の概念図である。図7を参照して、端末装置4(=4A)の無線モジュール43Aは、DIFS(Distributed Inter Frame Space)が経過し、更に、ランダムに決定されたバックオフが経過すると、パケットを他の端末装置5(=4A)と同時にAP1(=1A)へ送信する必要がある場合、送信タイミングを含むRTSを生成して送信する。
【0070】
そして、AP1(=1A)の無線モジュール13Aおよび端末装置5(=4A)の無線モジュール43Aは、端末装置4(=4A)からのRTSを受信する。
【0071】
その後、SIFS(Short Inter Frame Space)が経過すると、AP1(=1A)の無線モジュール13Aは、CTSを送信し、端末装置4,5(=4A)の無線モジュール43Aは、CTSを受信する。
【0072】
そして、SIFSが経過すると、端末装置4,5(=4A)のモジュール43Aは、RTSに含まれる送信タイミングに同期してパケットをAP1(=1A)へ送信する。AP1(=1A)の無線モジュール13Aは、端末装置4,5(=4A)から送信されたパケットを受信する。
【0073】
その後、SIFSが経過すると、AP1(=1A)の無線モジュール13Aは、ACK(Acknowledge)を送信する。そして、端末装置4,5(=4A)の無線モジュール43Aは、ACKを受信する。
【0074】
このように、端末装置4,5(=4A)は、RTSに含まれる送信タイミングに同期してパケットを送信する。その結果、端末装置4,5(=4A)は、同時に、無線通信空間を占有し、端末装置4,5(=4A)によるパケットの送信が完了すると、無線通信空間が他のAP1〜3(=1A)および端末装置6(=4A)に開放される。
【0075】
従って、周波数の利用効率を向上できる。
【0076】
AP1〜3(=1A)および端末装置6(=4A)も、パケットを同時に送信する必要がある場合、上述した方法によってパケットを送信する。
【0077】
なお、上記においては、AP1〜3(=1A)および端末装置4〜6(=4A)は、パケットを同時に送信する必要がある場合、RTSに含まれる送信タイミングに同期してパケットを送信すると説明したが、実施の形態2においては、これに限らず、AP1〜3(=1A)および端末装置4〜6(=4A)は、パケットを同時に送信する必要がある場合、CTSに含まれる送信タイミングに同期してパケットを送信してもよい。
【0078】
つまり、実施の形態2においては、AP1〜3(=1A)および端末装置4〜6(=4A)は、パケットを同時に送信する必要がある場合、RTSおよびCTS等の制御フレームに含まれる送信タイミングに同期してパケットを送信する。
【0079】
従って、周波数の利用効率を向上できる。
【0080】
その他は、実施の形態1と同じである。
【0081】
[実施の形態3]
図8は、図1に示すAP1の実施の形態3における構成図である。図1に示すAP1は、実施の形態3においては、図8に示すAP1Bからなる。
【0082】
図8を参照して、AP1Bは、図2に示すAP1の無線モジュール13を無線モジュール13Bに代えたものであり、その他は、AP1と同じである。
【0083】
無線モジュール13Bは、アンテナ11に接続される。無線モジュール13Bは、パケットを他のAP2,3および端末装置4〜6と同時に送信する必要がない場合、通常の通信方式に従ってパケットを送信する。
【0084】
また、無線モジュール13Bは、PCF(Point Coordination Function)と呼ばれるポーリングに基づく集中制御によるアクセス制御方式において、AP1Bがポイント・コーディネータである場合、パケットを同時に送信することを要求する同時送信要求と、パケットを同時に送信することを要求する端末(APまたは端末装置)を指定する端末情報とを含むポーリング情報CF−Pollを生成する。そして、無線モジュール13Bは、その生成したポーリング情報CF−Pollをアンテナ11を介して送信する。
【0085】
更に、無線モジュール13Bは、AP1Bがポイント・コーディネータでない場合、ポイント・コーディネータである端末からポーリング情報CF−Pollを受信する。そして、無線モジュール13Bは、ポーリング情報CF−Pollに含まれる端末情報に基づいて、AP1Bがパケットを同時に送信することを要求されているか否かを判定する。
【0086】
AP1Bがパケットを同時に送信することを要求されていないとき、無線モジュール13Bは、通信手段14から受けたパケットの送信先を端末装置4〜6のいずれかに設定して送信する。
【0087】
一方、AP1Bがパケットを同時に送信することを要求されているとき、無線モジュール13Bは、通信手段14から受けたパケットの送信先を端末装置4〜6のいずれかに設定するとともに、ポーリング情報CF−Pollの受信後、SIFSが経過すると、パケットを送信する。
【0088】
更に、無線モジュール13Bは、アンテナ11からパケットを受け、その受けたパケットの送信先をインターネットに接続された通信先に設定する。そして、無線モジュール13Bは、パケットを通信手段14へ出力する。
【0089】
なお、図1に示すAP2,3の各々も、実施の形態3においては、図8に示すAP1Bと同じ構成からなる。
【0090】
図9は、図1に示す端末装置4の実施の形態3における構成図である。図1に示す端末装置4は、実施の形態3においては、図9に示す端末装置4Bからなる。
【0091】
図9を参照して、端末装置4Bは、図3に示す端末装置4の無線モジュール43を無線モジュール43Bに代えたものであり、その他は、端末装置4と同じである。
【0092】
無線モジュール43Bは、アンテナ41に接続される。無線モジュール43Bは、パケットをAP1〜3および他の端末装置5,6と同時に送信する必要がない場合、通常の通信方式に従ってパケットを送信する。
【0093】
また、無線モジュール43Bは、端末装置4Bがポイント・コーディネータである場合、ポーリング情報CF−Pollを生成する。そして、無線モジュール43Bは、その生成したポーリング情報CF−Pollをアンテナ41を介して送信する。
【0094】
更に、無線モジュール43Bは、端末装置4Bがポイント・コーディネータでない場合、ポイント・コーディネータである端末からポーリング情報CF−Pollを受信する。そして、無線モジュール43Bは、ポーリング情報CF−Pollに含まれる端末情報に基づいて、端末装置4Bがパケットを同時に送信することを要求されているか否かを判定する。
【0095】
端末装置4Bがパケットを同時に送信することを要求されていないとき、無線モジュール43Bは、アプリケーションから受けたパケットの送信先をAP1〜3のいずれかに設定して送信する。
【0096】
一方、端末装置4Bがパケットを同時に送信することを要求されているとき、無線モジュール43Bは、アプリケーションから受けたパケットの送信先をAP1〜3のいずれかに設定するとともに、ポーリング情報CF−Pollの受信後、SIFSが経過すると、パケットを送信する。
【0097】
更に、無線モジュール43Bは、アンテナ41からパケットを受け、その受けたパケットをアプリケーションへ出力する。
【0098】
なお、図1に示す端末装置5,6の各々も、実施の形態3においては、図9に示す端末装置4Bと同じ構成からなる。
【0099】
図10は、PCFを用いた通信方式の概念図である。なお、図10においては、AP1(=1B)は、ポイント・コーディネータである。
【0100】
図10を参照して、AP1(=1B)の無線モジュール13Bは、PIFS(PCF Inter Frame Space)が経過すると、ビーコンフレームを生成してブロードキャストする。
【0101】
そして、AP1(=1B)の無線モジュール13Bは、SIFSが経過すると、パケットを同時に送信することを要求する端末として端末装置4,5(=4B)を決定し、その決定した端末装置4,5(=4B)のアドレスAdd4,Add5と、同時送信要求とを含むポーリング情報CF−Pollを生成する。その後、AP1(=1B)の無線モジュール13Bは、その生成したポーリング情報CF−Pollを端末装置4,5(=4B)へ送信する。
【0102】
端末装置4,5(=4B)の無線モジュール43Bは、ポーリング情報CF−Pollを受信し、その受信したポーリング情報CF−Pollに含まれるアドレスAdd4,Add5を参照して、端末装置4,5(=4B)に対してパケットの同時送信が要求されていることを検知する。
【0103】
そうすると、端末装置4,5(=4B)の無線モジュール43Bは、アプリケーションから受けたパケットの送信先をAP1(=1B)に設定し、SIFSが経過すると、パケットをAP1(=1B)へ送信する。即ち、端末装置4,5(=4B)は、協調してパケットをAP1(=1B)へ送信する。
【0104】
そして、AP1(=1B)は、端末装置4,5(=4B)からパケットを受信する。その後、AP1(=1B)は、SIFSが経過すると、端末装置6(=4B)にパケットの送信を要求するポーリング情報CF−Pollを生成し、その生成したポーリング情報CF−Pollを端末装置6(=4B)へ送信する。
【0105】
端末装置6(=4B)の無線モジュール43Bは、AP1(=1B)からのポーリング情報CF−Pollを受信する。そして、端末装置6(=4B)の無線モジュール43Bは、SIFSが経過すると、パケットをAP1(=1B)へ送信する。
【0106】
AP1(=1B)の無線モジュール13Bは、端末装置6(=4B)から送信されたパケットを受信する。
【0107】
このように、実施の形態3においては、ポイント・コーディネータである端末(AP1〜3(=1B)または端末装置4〜6(=4B)のいずれか)は、パケットを同時に送信することを要求する同時送信要求と、パケットを同時に送信することを要求する端末(APまたは端末装置)を指定する端末情報とを含むポーリング情報CF−Pollを生成して送信し、ポイント・コーディネータでない端末(AP1〜3(=1B)または端末装置4〜6(=4B)のいずれか)は、ポーリング情報CF−Pollを受信し、その受信したポーリング情報CF−Pollに基づいて、自己にパケットの同時送信を要求していることを検知すると、ポーリング情報CF−Pollの受信後、一定時間(SIFS)が経過するまで待機し、一定時間(SIFS)が経過したタイミングでパケットを送信する。
【0108】
その結果、端末装置4,5(=4B)は、同時に、無線通信空間を占有し、端末装置4,5(=4B)によるパケットの送信が完了すると、無線通信空間が他のAP1〜3(=1B)および端末装置6(=4B)に開放される。
【0109】
従って、周波数の利用効率を向上できる。
【0110】
AP1〜3(=1B)および端末装置6(=4B)も、パケットを同時に送信する必要がある場合、上述した方法によってパケットを送信する。
【0111】
その他は、実施の形態1と同じである。
【0112】
上述した実施の形態1においては、各AP1〜3および各端末装置4〜6は、他の端末と同時にパケットを送信する必要がある場合、パケットを同時に送信すべき端末間で予め決定された共通バックオフBOF_comを用いてパケットを他の端末(AP1〜3および端末装置4〜6のいずれか)と同時に送信する。
【0113】
また、上述した実施の形態2においては、各AP1〜3および各端末装置4〜6は、他の端末と同時にパケットを送信する必要がある場合、RTS、またはCTSに含まれる送信タイミングに同期してパケットを送信する。
【0114】
更に、上述した実施の形態3においては、各AP1〜3および各端末装置4〜6は、他の端末と同時にパケットを送信する必要がある場合、ポーリング情報CF−Pollの受信後、一定時間が経過したタイミングに同期してパケットを送信する。
【0115】
従って、この発明の実施の形態による無線通信システムは、無線通信空間が空いているとき、第1のバックオフが経過すると、パケットを送信する第1の無線装置と、無線通信空間が空いているとき、第1のバックオフと同じ第2のバックオフが経過すると、パケットを送信する第2の無線装置と、第1および第2の無線装置からパケットを受信する第3の無線装置とを備えていればよい。
【0116】
また、この発明の実施の形態による無線通信システムは、制御フレームの受信に伴って決定された送信タイミングに同期してパケットを送信する第1および第2の無線装置と、第1および第2の無線装置からパケットを受信する第3の無線装置とを備えていればよい。
【0117】
図11は、アクセスポイントの分布状態を示す図である。図11を参照して、AP21〜27の各々は、上述したAP1,1A,1Bのいずれかからなる。そして、AP21〜27は、それぞれ、チャネルCh1,Ch3,Ch4,Ch2,Ch3,Ch1,Ch2を用いて無線通信を行なう。また、AP21〜27は、密集して配置されている。
【0118】
このように、AP21〜27は、密集して配置されている場合、上述した実施の形態1〜実施の形態3のいずれかによる通信方式に従ってパケットを同時に送信する。
【0119】
例えば、AP24,27は、同じチャネルCh2を用いてパケットを同時に端末装置に送信する。
【0120】
その結果、AP24,27が無線通信空間を占有する時間が短縮され、他のAP21〜23,25,26が無線通信できる割合が増加する。
【0121】
従って、実施の形態1〜実施の形態3による通信方式は、APが密集して配置されている場合に効果が大きい。
【0122】
また、隣接するAP間の距離が1km〜3kmである場合、APの分布は、粗い。このように、AP間の距離が長い場合、双方のAPから遠い場所にある端末装置は、受信電力が低いため、通信特性が悪くなるが、この発明を用いて複数のAPがパケットを同時に送信し、端末装置が受信ダイバーシチを行なえば、通信特性が向上するので、実施の形態1〜実施の形態3による通信方式は、APの分布が粗い場合にも効果が大きい。
【0123】
なお、この発明の実施の形態においては、RTS、CTS、およびポーリング情報CF−Pollの各々は、「制御フレーム」を構成する。
【0124】
また、この発明の実施の形態においては、RTSは、「送信要求フレーム」を構成し、CTSは、「送信許可フレーム」を構成する。
【0125】
更に、この発明の実施の形態においては、AP1〜3および端末装置4〜6の各々は、「無線装置」を構成する。
【0126】
更に、この発明の実施の形態においては、端末装置4,4A,4Bは、「第1の無線装置」を構成し、端末装置5(4A,4B)は、「第2の無線装置」を構成する。
【0127】
更に、この発明の実施の形態においては、同時に送信されたパケットを受信する端末(AP1〜3および端末装置4〜6のいずれか)は、「第3の無線装置」を構成する。
【0128】
更に、この発明の実施の形態においては、ポイント・コーディネータである端末(AP1〜3および端末装置4〜6のいずれか)は、「第4の無線装置」を構成する。
【0129】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0130】
この発明は、無線通信システムに適用される。
【符号の説明】
【0131】
1〜3,1A,1B AP、4〜6,4A,4B 端末装置、10 無線通信システム、11,41 アンテナ、13,13A,13B,43,43A,43B 無線モジュール、14 通信手段、15 有線ケーブル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信空間の空きを検知するためのキャリアセンスを行い、前記無線通信空間が空いているときに無線通信を行なう無線通信システムであって、
前記無線通信空間が空いているとき、第1のバックオフが経過すると、パケットを送信する第1の無線装置と、
前記無線通信空間が空いているとき、前記第1のバックオフと同じ第2のバックオフが経過すると、パケットを送信する第2の無線装置と、
前記第1および第2の無線装置から前記パケットを受信する第3の無線装置とを備える無線通信システム。
【請求項2】
前記第1および第2の無線装置の各々は、前記第1の無線装置と前記第2の無線装置とに共通する情報である第1の情報と、前記第3の無線装置を識別する情報である第2の情報とを予め保持しており、前記第1および第2の情報を用いて前記第1および第2のバックオフを取得し、その取得した第1および第2のバックオフを用いて前記パケットを送信する、請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
無線通信空間の空きを検知するためのキャリアセンスを行い、前記無線通信空間が空いているときに無線通信を行なう無線通信システムであって、
制御フレームの受信に伴って決定された送信タイミングに同期してパケットを送信する第1および第2の無線装置と、
前記第1および第2の無線装置から前記パケットを受信する第3の無線装置とを備える無線通信システム。
【請求項4】
前記第1の無線装置は、前記送信タイミングを含む送信要求フレームまたは前記送信タイミングを含む送信許可フレームを前記制御フレームとして送信するとともに、前記送信タイミングに同期して前記パケットを送信し、
前記第2の無線装置は、前記送信許可フレームまたは前記送信許可フレームを受信し、その受信した送信許可フレームまたは送信許可フレームに含まれる前記送信タイミングに同期して前記パケットを送信する、請求項3に記載の無線通信システム。
【請求項5】
パケットを同時に送信することを要求する無線装置を決定し、その決定した無線装置を指定する端末情報と前記パケットを同時に送信することを要求する同時送信要求とを前記制御フレームに含めて送信する第4の無線装置を更に備え、
前記第1および第2の無線装置の各々は、前記制御フレームを受信し、その受信した制御フレームに含まれる前記端末情報に基づいてパケットの同時送信を要求されていることを検知すると、前記制御フレームの受信後、一定時間が経過すると、前記パケットを送信する、請求項3に記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記第1から第3の無線装置の各々は、アクセスポイント、または前記アクセスポイントの配下の端末装置からなる、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−217234(P2011−217234A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84974(P2010−84974)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、支出負担行為担当官、総務省大臣官房会計課企画官、研究テーマ「異種無線システム動的利用による信頼性向上技術の研究開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(393031586)株式会社国際電気通信基礎技術研究所 (905)
【Fターム(参考)】