説明

無線通信システム

【課題】移動局が基地局に対して通信要求する際の通信要求信号の送信回数を最適な回数に設定可能な無線通信システムを提供すること。
【解決手段】移動局は通信要求信号の送信回数をカウントする送信カウンタを備えるとともに通信要求信号に送信カウンタのカウント値を含めて送信し、基地局は通信要求信号を受信して同期がとれたときの通信要求信号に含まれるカウント値を同期確立カウント値として抽出し移動局との通信が完了したのち移動局に対して同期確立カウント値を送信し、移動局は同期確立カウント値を受信し該同期確立カウント値を新たな通信要求信号の送信回数として記憶するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局と移動局とを具備した無線通信システムに関し、詳しくは、移動局から基地局へ通信要求する際の通信要求信号の送信回数の設定に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタル無線通信において、2地点間(例えば、移動局12と基地局11の間)の同期を確立して通信を行うための手法として、同期バースト信号を送信する手法が従来から用いられている。例えば、移動局12から基地局11に対して呼接続を行う際の通信要求信号として同期バースト信号を送信して呼接続を行うことで、その後の音声通信やデータ通信等を確実に行うことが可能となる。
【0003】
このような同期バースト信号を用いた通信の一例として、例えば、特許文献1に記載のデジタル無線電話装置が存在する。この特許文献1は、一度下り同期バーストSB3のスーパーフレーム同期カウンタSSCの値を誤って受信するとなかなか通信チャネルTCHの送受信まで進めなかったり、また、同期バーストSBの送受信から通信チャネルTCHの送受信に移る時、同期バーストSBか通信チャネルTCHかが判然とせず時間を費やしたりすることがあったという従来の問題点を解決して、再同期や、通信チャネルへの切り替えに要する時間を短縮することを目的としたものである。
【特許文献1】特開平08−84109号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、電話装置での複信方式であるが、消防無線などにおいて、トランシーバのように単信方式で行う通信装置も採用されている。単信方式の場合、送信中は相手先の通信が受信できないため、事前に通信方法を取り決めておく必要がある。
【0005】
このような一波または二波単信方式の場合の移動局12と基地局11の間における同期確立から音声通話までの流れを図4のタイミングチャートを用いて説明する。先ず、移動局12から呼接続を行う場合、基地局に対して自局の識別番号IDと同期バースト信号を含む通信要求信号を予め設定されている回数分だけ連続して送信する。図4の例では、既定回数として5回の送信を行っている。この既定回数は、その回数だけ送信すればある程度確実に基地局11が移動局との同期確立をできる回数に設定される。
消防無線において、呼接続するために送信側は、通信要求信号である同期バースト信号を複数回送信した後、音声通信に移行するので、相手局である基地局11との通信を行うための同期が確立できたかを移動局12側で確認することが出来ないため、確実に同期が確立できるであろう回数に設定しておく必要がある。図4の例では、2回目の同期バースト信号の送信によって基地局11において同期が確立されて基地局11から統制台10に着信ONが通知されるが、その後も移動局12から3回目〜5回目までの同期バースト信号の送信が行われる。
【0006】
その後、移動局12では、同期バースト信号の5回の送信によって基地局11との間に同期が確立されているとの前提に立って音声信号の送信を開始する。基地局11との間で同期が確立されているため、音声信号も問題なく基地局11へ送信され、統制台10の音声信号が届けられる。移動局12では、音声信号の送信が終了し次第、アイドル信号を所定回数(図4の例では3回)だけ送信して、基地局11及び統制台10に対して着信OFFを通知する。これにより、今度は統制台10側から音声通話を行うなどの次の処理に移行することが可能となる。
【0007】
ここで、最適な同期バースト信号の送信回数は、基地局11と移動局12との位置関係、電波状況などによって適宜変化するものであるから、事前に最適な回数を設定することが難しく、余裕を持たせた送信回数とすることが多かった。しかし、図4のように、2回目の同期バースト信号の送信によって既に基地局11との間で同期が確立されている場合には、実質的に3回目〜5回目までの同期バースト信号の送信は必要のない動作であるため、これにより通話開始までの時間が遅延してしまうというデメリットがある。かといって、予め設定する同期バースト信号の送信回数を少ない回数に設定してしまうと、同期が確立する前に移動局12が音声通話を開始してしまうことになるため、通話の頭切れや通話の発信者不明という事態が発生してしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、基地局と移動局との間の電波状況に応じて通信要求信号の送信回数を最適なものに設定可能な無線通信システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1は、基地局と、前記基地局と無線通信を行う移動局を備え、前記移動局は前記基地局に対して通信を行う際、前記基地局と同期をとるための通信要求信号を予め記憶された送信回数だけ送信する無線通信システムにおいて、前記移動局は前記通信要求信号の送信回数をカウントする送信カウンタを備えるとともに前記通信要求信号に前記送信カウンタのカウント値を含めて送信し、前記基地局は前記通信要求信号を受信して同期がとれたときの前記通信要求信号に含まれるカウント値を同期確立カウント値として抽出し前記移動局との通信が完了したのち前記移動局に対して前記同期確立カウント値を送信し、前記移動局は前記同期確立カウント値を受信し該同期確立カウント値を新たな前記通信要求信号の送信回数として記憶することを特徴とする無線通信システムである。
【0010】
本発明の請求項2は、請求項1に加えて、前記移動局は、前記同期確立カウント値に所定の値を加算し、加算した値を新たな通信要求信号の送信回数として記憶することを特徴とする無線通信システムである。
【0011】
本発明の請求項3は、請求項1又は請求項2に加えて、前記移動局は、前記通信要求信号の送信回数初期値を予め記憶し、前記基地局から同期確立カウンタ値が得られなかった場合、前記送信回数初期値を新たな通信要求信号の送信回数として記憶することを特徴とする無線通信システムである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、移動局は、前記通信要求信号の送信回数をカウントする送信カウンタを備えるとともに前記通信要求信号に前記送信カウンタのカウント値を含めて送信し、前記基地局は前記通信要求信号を受信して同期がとれたときの前記通信要求信号に含まれるカウント値を同期確立カウント値として抽出し前記移動局との通信が完了したのち前記移動局に対して前記同期確立カウント値を送信し、前記移動局は前記同期確立カウント値を受信し該同期確立カウント値を新たな前記通信要求信号の送信回数として記憶するようにしたことで、無駄な通信要求信号を送信することによって音声通話開始までの時間が遅延してしまうというデメリットを解消することが出来る。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、移動局は、前記同期確立カウント値に所定の値を加算し、加算した値を新たな通信要求信号の送信回数として記憶するようにしたので、同期確立情報で得られた送信カウンタ値にマージンを持たせることでより確実に同期がとれることになる。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、移動局は、前記通信要求信号の送信回数初期値を予め記憶し、前記基地局から同期確立カウンタ値が得られなかった場合、前記送信回数初期値を新たな通信要求信号の送信回数として記憶するようにしたので、確実な同期の確立が行えなかった場合には、通信要求信号の送信回数を同期が確実にとれるであろう送信回数である送信回数初期値に戻す処理を行うことで、次回の呼接続を確実に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による無線通信システムにおける移動局から基地局に対して通信要求した際の流れを表したタイミングチャートである。
【図2】本発明による無線通信システムにおける処理の流れを表したフローチャートである。
【図3】(a)は、通信要求信号のフォーマットを表した模式図であり、(b)は、音声信号の合間に乗せて同期確立情報を送信する場合の基地局が送信する無線信号のフォーマットを表した模式図である。
【図4】従来の無線通信システムにおける通信要求した際の流れを表したタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明による無線通信システムは、基地局と、前記基地局と無線通信を行う移動局を備え、前記移動局は前記基地局に対して通信を行う際、前記基地局と同期をとるための通信要求信号を予め記憶された送信回数だけ送信する無線通信システムにおいて、前記移動局は前記通信要求信号の送信回数をカウントする送信カウンタを備えるとともに前記通信要求信号に前記送信カウンタのカウント値を含めて送信し、前記基地局は前記通信要求信号を受信して同期がとれたときの前記通信要求信号に含まれるカウント値を同期確立カウント値として抽出し前記移動局との通信が完了したのち前記移動局に対して前記同期確立カウント値を送信し、前記移動局は前記同期確立カウント値を受信し該同期確立カウント値を新たな前記通信要求信号の送信回数として記憶することを特徴とするものである。以下、詳細に説明を行う。
【実施例1】
【0017】
本発明による無線通信システムについて図面に基づいて説明を行う。本発明による無線通信システムは、少なくとも、統制台10、基地局11、移動局12を含んだものとして構成されている。統制台10は、無線通信システム全体を管理する装置である。基地局11は、固定的に設置された無線局であり、統制台10と有線にて接続されている。移動局12は、移動可能な無線局であり、かつ、本発明においては単信方式の通信が行えるものとする。一般的な無線通信システムとしては二波複信、二波単信、一波単信などの通信方式があるが、以下の本実施例においては、単信方式のみを行うものとして説明する。
【0018】
次に、本発明による無線通信システムにおける移動局12と基地局11の間での同期確立から音声通話までの流れを図1のタイミングチャートを用いて説明する。先ず、移動局12から呼接続を行う場合、基地局に対して通信要求信号SBを予め設定されてメモリ(図示せず)に記憶されている送信回数分だけ連続して送信する。図1の例では、通信要求信号SBの送信回数の値は「5」に設定されている。ここで、本発明における通信要求信号SBは、図3(a)に示すようなフォーマットからなり、同期バースト信号フォーマット内のパラメータ情報チャネル(PICH)に通信要求信号が設定され、その中に自局を他の移動局と識別するための「識別情報ID」を表示することに加えて、連続して送信する通信要求信号SBの何番目の送信にあたるかを表すための「SB送信カウンタの値」の情報がある。このSB送信カウンタは、図1に示すように、最初の送信時は「1」に設定されており、順次+1ずつインクリメントして、SB送信カウンタの値が通信要求信号SBの送信回数の値である「5」になるまで通信要求信号SBを送信する。
【0019】
単信方式で通信要求信号からそのまま音声通信モードに移行する場合には、相手側の基地局11が何回目の通信要求信号SBの送信で同期を確立できたかを移動局12側で確認することが出来ないため、図1の例では、2回目の通信要求信号SBの送信によって基地局11において同期が確立されて基地局11から統制台10に移動局からの信号を受信したことを知らせる着信ONが通知されているが、移動局12においては、その後も3回目〜5回目までの通信要求信号SBの送信が行われる。
【0020】
その後、移動局12では、通信要求信号SBの5回の送信によって基地局11との間に同期が確立されているとの前提に立って音声信号の送信を開始する。図1の例では、2回目の通信要求信号SBの送信で基地局11との間で同期が確立されているため、音声信号も問題なく基地局11へ送信され、統制台10に音声信号が届けられる。移動局12では、音声信号の送信が終了し次第、送信の終了をする意味するアイドル信号M(移動局が発するアイドル信号を表す)を所定回数(図1の例では3回)だけ送信し、基地局11は移動局12からのアイドル信号Mを受信すると、統制台10に対して移動局12からの送信が終了することを知らせる着信OFFを通知する。
【0021】
移動局12がアイドル信号Mを送信し終わった段階で受信待ち状態となり、基地局11においては送信が可能となる。ここで、本発明の特徴として、基地局11から移動局12に対して何回目の通信要求信号SBによって同期を確立したかを通知するために、基地局11は同期を確立した際の通信要求信号SBのIDと同期確立カウント値となるSB送信カウンタの値を参照して、これを一時的に基地局内のメモリ(図示せず)に記憶し、移動局12が送信終了後に、基地局から同期確立情報として当該ID及び同期確立カウント値を送信する。図1の例では、2回目の通信要求信号SBで同期を確立しているためSB送信カウンタ=2、即ち同期確立カウント値=2となり、これを通信要求した移動局の識別情報ID=1とともに同期確立情報として、アイドル信号B(基地局が発するアイドル信号を表す)に乗せて3回送信している。なお、同期確立情報を送信するタイミングは、アイドル信号Bに乗せて送信する場合に限られるものではなく、音声通信のデータの合間に乗せて送信することも可能である。同期確立情報を音声データの合間に乗せて送信する場合のフォーマットの一例を図3(b)に示す。
【0022】
同期確立情報を受信した移動局12は、同期確立情報から同期確立カウント値を参照し、これを新たな通信要求信号SBの送信回数の値としてメモリに記憶する。図1の例では、最初の通信要求信号SBの送信回数の値は「5」であったが、同期確立情報として同期確立カウント値=2が送信されてきたので、通信要求信号SBの送信回数の値を「2」として記憶することになる。これにより、以降、当該移動局12においては、通信要求信号SBの送信回数が2回に設定される。
【0023】
上記の処理をより詳しく説明するために、図2のフローチャートを用いて説明する。先ず、移動局12から基地局11に対して呼接続を行う場合の処理の流れをS11〜S17により説明する。先ず、通信要求信号SBのSB送信カウンタの値を「1」に設定(S11)し、通信要求信号SBを送信する(S12)。その後、SB送信カウンタの値と通信要求信号SBの送信回数Nを比較する(S13)。SB送信カウンタの値が通信要求信号SBの送信回数Nよりも小さい場合には、SB送信カウンタの値を+1インクリメントし(S14)、そのインクリメント後のSB送信カウンタの値によって通信要求信号SBを送信する(S12)。以降、SB送信カウンタの値=通信要求信号SBの送信回数Nとなるまで、SB送信カウンタの値を+1ずつ増やして通信要求信号SBを送信し、S13ステップにおいてSB送信カウンタの値=通信要求信号SBの回数Nと判定された段階で、音声信号の送信に移行する(S15)。音声通話(音声信号の送信)が終了するまではS15〜S16のステップを繰り返し、音声通話が終了した場合には、音声通話終了を通知するためのアイドル信号Mを所定回数送信する(S17)。
【0024】
次に、通信要求信号SBを受信した基地局11における処理の流れをS31〜S37により説明する。基地局11は、受信待ち状態で待機している(S31)。ここで、何か信号を受信すると、通信要求信号SBか否かを判断する(S31)。通信要求信号SBであれば、当該通信要求信号SBから識別情報IDとSB送信カウンタの値を抽出し、同期確立時のID及び同期確立カウント値としてのSB送信カウンタの値をメモリに記憶する(S32)。その後、移動局12は設定された通信要求信号SBの送信回数であるN回目の送信が終了した後に、音声信号の送信に移行するため、基地局11では、音声信号受信状態で待機する(S33)。以降、音声通話終了まで音声信号受信状態を維持する(S33〜S34)。音声通話が終了(S33においてN)すると、移動局12からのアイドル信号Mの受信待機状態となる(S35)。アイドル信号を受信しない場合(S35でN)には、音声通話が継続の可能性があると判断(S33〜S34のステップへ移行)するが、アイドル信号Mを受信した場合には、音声通話が終了したと判断する(S36)。音声通話終了後に、S32のステップで抽出してメモリに記憶させたID及び同期確立カウント値を読み出し、これを同期確立情報としてアイドル信号Bに乗せて当該移動局12に対して送信する(S37)。
【0025】
なお、上記ステップS31で、通信要求信号SBを受信していないと判断する場合(S31においてN)がある。これは、通信要求信号SBを受信できなかったり、受信できても同期確立ができなかったりする場合である。しかしこのような場合であっても、その後の音声信号で同期が確立できる場合もあるので、そのために音声信号を受信しているか否かを判断する(S38)。音声信号を受信していると判断(S38でY)すれば、ステップS34へ移行して音声通話を受信する。音声信号を受信していない場合(S38でN)には、受信待ち状態に戻る。
【0026】
基地局11に対してアイドル信号Mを送信(S17)した後の移動局12における処理の流れをS18〜S20により説明する。基地局11に対してアイドル信号Mを送信(S17)した後は、移動局12は、基地局11からのアイドル信号Bの受信待機状態となる(S18)。基地局11からのアイドル信号Bを受信した場合には、アイドル信号に同期確立情報が含まれるかを判別し、同期確立情報が含まれていた場合には、その同期確立情報に自局の識別情報ID及び同期確立カウント値が含まれるか否かを判別する(S19)。自局の識別情報IDが指定されている場合には、当該同期確立情報から同期確立カウント値を抽出し、その値を新たな通信要求信号SBの送信回数Nとしてメモリに記憶させる(S20)。
【0027】
以上のように、本発明の無線通信システムによれば、従来は固定的な値として設定していた通信要求信号SBの送信回数を基地局との呼接続時に何回目の通信要求信号SBによって同期確立したかを基地局から当該移動局に対して送信し、それを以降の呼接続における通信要求信号SBの送信回数とするようにしたことで、無駄な通信要求信号SBを送信することによって通話開始までの時間が遅延してしまうというデメリットを解消することが出来る。
【実施例2】
【0028】
前記実施例においては、基地局11から得た同期確立情報の同期確立カウント値をそのまま次の呼接続における通信要求信号SBの送信回数Nとして記憶させたが、より確実に同期確立できるように、移動局12において、同期確立情報の同期確立カウント値に所定の値を加えるようにしてもよい。例えば、図1の処理を経て同期確立情報の同期確立カウント値=2に、所定の値、例えば「1」を加えて送信回数を「3」とする。
また、所定の値を加える処理を基地局11側で行うようにすることもできる。即ち、図1の処理を経て2つ目の通信要求信号SBによって同期確立ができた場合には、通信要求信号SBから「SB送信カウンタ=2」を抽出するが、移動局11に対して送信する同期確立カウント値としては、所定の値、例えば「1」を加えて「同期確立カウント値=3」として送信するようにすることもできる。
なお、所定の値を加算することで、前記通信要求信号の送信回数の値とは別に、後述の予め設定された通信要求信号の送信回数初期値を越える場合、送信回数初期値を優先する。
【実施例3】
【0029】
前記実施例1、2においては、通信要求信号SBの送信回数を少なくする方向に関する処理について説明したが、例えば、図1の処理を経て通信要求信号SBの信号送信回数=2と記憶した結果、次の呼接続において、2回の通信要求信号SBの送信で同期が確立できない可能性もある。このような場合には、通話の頭切れや通話の発信者不明という事態が発生するおそれがあり、また、同期が確立されていないため基地局11から同期確立情報を含んだアイドル信号Bが送られてこない場合がある。
【0030】
そこで、移動局12においては、通信要求信号SBの送信回数Nの値とは別に、同期が確実にとれるであろう通信要求信号SBの送信回数初期値をメモリに記憶させておき、前記基地局11から同期確立情報が得られなかった場合には、前記送信回数初期値を新たな通信要求信号SBの送信回数Nの値としてメモリに記憶することで、次回の呼接続を確実に行うことが可能となる。
【0031】
また、この点に関しては、基地局11から受信したアイドル信号Bに同期確立カウント値が含まれていない場合(図2のフローチャートにおけるステップS19においてNと判断された場合)についても同様である。即ち、通信要求信号SBを受信していない、或いは、通信要求信号SBによっては同期を確立できなかったが、その後の音声信号によって同期が確立できたような場合には、移動局12のIDを認識することはできたが、通信要求信号SBによって同期を確立できていないので、基地局11は、同期確立カウント値を設定せずにアイドル信号Bを送信するような場合がある。この同期確立カウント値を含まないアイドル信号Bを受信した場合には、前記送信回数初期値を通信要求信号SBの送信回数Nの値に上書きする(S21)ことで、次回の呼接続を確実に行うことが可能となる。
【実施例4】
【0032】
前記実施例3においては、通信要求信号SBの送信回数初期値を移動局12において記憶しておく構成としたが、これに限定されるものではなく、基地局11において通信要求信号SBの送信回数初期値を記憶するようにしてもよい。この場合、同期を確立できなかったことを移動局12に通知する手段として、当該移動局12に対して送信するSB送信カウンタ値を通信要求信号SBの送信回数初期値として当該移動局に対して送信することで、移動局12側において受信したSB送信カウンタ値を新たな通信要求信号SBの送信回数としてメモリに記憶することになる。これにより、次回の呼接続を確実に行うことが可能となる。
【0033】
なお、上記実施例は移動局から基地局に対しての通信要求について記載しているが、基地局から移動局に対しての通信要求であっても同様な処理をしてもよい。
【符号の説明】
【0034】
10…統制台、11…基地局、12…移動局。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局と、前記基地局と無線通信を行う移動局を備え、
前記移動局は前記基地局に対して通信を行う際、前記基地局と同期をとるための通信要求信号を予め記憶された送信回数だけ送信する無線通信システムにおいて、
前記移動局は前記通信要求信号の送信回数をカウントする送信カウンタを備えるとともに前記通信要求信号に前記送信カウンタのカウント値を含めて送信し、
前記基地局は前記通信要求信号を受信して同期がとれたときの前記通信要求信号に含まれるカウント値を同期確立カウント値として抽出し前記移動局との通信が完了したのち前記移動局に対して前記同期確立カウント値を送信し、
前記移動局は前記同期確立カウント値を受信し該同期確立カウント値を新たな前記通信要求信号の送信回数として記憶することを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
請求項1記載の無線通信システムにおいて、
前記移動局は、前記同期確立カウント値に所定の値を加算し、加算した値を新たな通信要求信号の送信回数として記憶することを特徴とする無線通信システム。
【請求項3】
請求項1または2記載の無線通信システムにおいて、
前記移動局は、前記通信要求信号の送信回数初期値を予め記憶し、前記基地局から同期確立カウンタ値が得られなかった場合、前記送信回数初期値を新たな通信要求信号の送信回数として記憶することを特徴とする無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−212973(P2012−212973A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76358(P2011−76358)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000006611)株式会社富士通ゼネラル (1,266)
【Fターム(参考)】