説明

無線通信可能な電子機器、電子機器システム、及び無線通信方法

【課題】
無線通信によって使用される電子機器であって、ホスト機器と複数の電子機器が設けられる環境において、各機器間の自由な無線通信を自動で行うことを可能にする電子機器、等を提供する。
【解決手段】
ホスト装置と無線通信によって接続される電子機器において、起動時期が、前記ホスト装置と無線通信によって接続される他の電子機器であって動作中である他の電子機器のいずれの起動時期よりも早い場合に、マスター機器として、前記ホスト装置と前記他の電子機器との無線通信を中継し、起動時期が、前記他の電子機器のいずれかの起動時期よりも遅い場合に、サブ機器として、前記他の電子機器を介して前記ホスト機器と無線通信を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信によって使用される電子機器等に関し、特に、ホスト機器と複数の電子機器が設けられる環境において、各機器間の自由な無線通信を自動で行うことを可能にする電子機器等に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピューターから無線通信によってプリンター、ファクシミリなどの電子機器と交信し、それら電子機器の機能を用いる環境が普及しつつある。この時に用いられる無線通信の方式には、中継点となるアクセスポイントを設けるインフラストラクチャモードと、機器同士が1対1で通信を行うアドホックモードがある。
【0003】
自宅や小規模のオフィスなどにおいて、ブロードバンドルーター等のアクセスポイントを設けない場合には、上述のアドホックモードで無線通信を行うことになり、この場合に通信する電子機器を切り替えるためには、ユーザーが無線通信の設定を変更する必要がある。
【0004】
また、関連技術として、下記特許文献1には、アドホックネットワークを両装置間で確立する方法について提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−231971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したアドホックモードで複数の電子機器と無線通信を行う場合、通信相手を変える際には、上述の通り、ユーザーのオペレーションによる設定変更が必要となって煩わしいという課題がある。また、上記設定によりその時点で無線相手とされていない電子機器から通信を行おうとしても上記設定変更がユーザーによってなされるまで交信できないという課題もある。また、ブロードバンドルーター等のアクセスポイントを設けてインフラストラクチャモードとして使用するには、それ相応の費用と手間を要する。
【0007】
従って、これらの課題を解決する一つの手法として、パーソナルコンピューターから使用される電子機器側で解決する手法が望まれている。
【0008】
そこで、本発明の目的は、無線通信によって使用される電子機器であって、ホスト機器と複数の電子機器が設けられる環境において、各機器間の自由な無線通信を自動で行うことを可能にする電子機器、等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の一つの側面は、ホスト装置と無線通信によって接続される電子機器において、起動時期が、前記ホスト装置と無線通信によって接続される他の電子機器であって動作中である他の電子機器のいずれの起動時期よりも早い場合に、マスター機器として、前記ホスト装置と前記他の電子機器との無線通信を中継し、起動時期が、前記他の電子機器のいずれかの起動時期よりも遅い場合に、サブ機器として、前記他の電子機器を介して前記ホスト機器と無線通信を行う、ことである。
【0010】
更に、上記の発明において、その好ましい態様は、前記ホスト装置には、前記マスター機器用の通信情報が通信先として設定され、前記マスター機器の場合には、当該マスター機器用の通信情報を通信元として設定し、前記サブ機器の場合には、当該マスター機器用の通信情報を通信先として設定すると共に、当該電子機器固有の通信情報を通信元として設定する、ことを特徴とする。
【0011】
更に、上記の発明において、好ましい態様は、当該電子機器及び前記他の電子機器の中における前記起動時期の順番に関する情報を保持し、当該情報に基づいて、前記起動時期が早いか遅いかの判断がなされる、ことを特徴とする。
【0012】
更にまた、上記の発明において、一つの態様は、
前記無線通信は、アドホックモードで行われる、ことを特徴とする。
【0013】
更に、上記の発明において、一つの態様は、2系統の通信手段を有し、前記マスター機器として機能する場合には、1系統の前記通信手段を前記ホスト装置との通信に用い、他の系統の前記通信手段を前記他の電子機器との通信に用いる、ことを特徴とする。
【0014】
また、上記の発明において、一つの態様は、前記無線通信は、インフラストラクチャモードで行われ、前記マスター機器として機能する場合には、アクセスポイントとして機能する、ことを特徴とする。
【0015】
上記の目的を達成するために、本発明の別の側面は、互いに無線通信によって接続されるホスト装置と複数の電子機器を備える電子機器システムにおいて、動作中である前記複数の電子機器の中で、起動時期が最も早い電子機器が、前記ホスト装置と他の前記電子機器との無線通信を中継し、当該他の電子機器は、当該起動時期が最も早い電子機器を介して、前記ホスト装置と無線通信を行う、ことである。
【0016】
上記の目的を達成するために、本発明の更に別の側面は、
互いに無線通信によって接続されるホスト装置と複数の電子機器を備える電子機器システムにおける無線通信方法において、動作中である前記複数の電子機器の中で、起動時期が最も早い電子機器が、前記ホスト装置と他の前記電子機器との無線通信を中継し、当該他の電子機器は、当該起動時期が最も早い電子機器を介して、前記ホスト装置と無線通信を行う、ことである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明を適用した電子機器システムの実施の形態例に係る構成を示した図である。
【図2】本実施の形態例におけるプリンター2の構成図である。
【図3】NVRAM27に記憶される通信設定情報を例示した図である。
【図4】本電子機器システムにおける通信処理の一例を示すタイムチャートである。
【図5】本電子機器システムにおける無線通信の中継を例示した図である。
【図6】プリンター2で行われる処理の手順を例示したフローチャートである。
【図7】プリンター2で行われる処理の手順を例示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面にしたがって本発明の実施の形態について説明する。ただし、本発明の技術的範囲はこれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。
【0019】
図1は、本発明を適用した電子機器システムの実施の形態例に係る構成を示した図である。図1に示す各プリンター(2a、2b、2c)は、動作中のプリンターの中で起動時期が最も早い場合には、マスター機器としてホストコンピューター1と他のプリンターとの無線通信を中継し、他のプリンターがマスター機器である場合には、サブ機器としてマスター機器であるプリンターを介してホストコンピューター1との無線通信を行い、アクセスポイントを設けない環境においても、ホストコンピューター1と複数のプリンター2間の無線通信を自在に行おうとするものである。
【0020】
図1に示すように、本実施の形態例では、ホストコンピューターから複数の電子機器を無線通信で使用する環境の一例として、電子機器システムが、ホストコンピューター1と当該使用される電子機器としての3つのプリンター2から構成される。そして、これら4つの機器が、後述する方法により、互いにアドホックモードの無線通信で接続される。
【0021】
ホストコンピューター1は、上記3つのプリンター2のホスト機器であり、パーソナルコンピューター等で構成される。図示していないが、一般のコンピューターと同様に、CPU、RAM、ROM、ハードディスク、表示装置、指示装置等を備え、さらに、無線通信デバイスを備えている。また、各プリンター2のドライバプログラムが備えられ、当該プログラムに基づいて各プリンター2への印刷要求データが生成されて、上記無線通信デバイスを介して各プリンター2へ送信される。また、無線通信に必要な通信設定情報として、少なくとも、自らの情報と後述するマスター機器(マスタープリンター)の情報を記憶しており、それぞれ、通信元及び通信先の情報として設定されている。
【0022】
図2は、本実施の形態例におけるプリンター2の構成図である。図2に示すプリンター2の構成は、3つのプリンター2a、2b、2cに共通である。また、上述の通り、当該プリンター2は、無線通信を介して使用される電子機器の一例であり、無線通信に関して同様の機能を有するファクシミリ、プロジェクター、スキャナーなどとすることもでき、プリンターを含めこれらが混在する構成としても良い。また、各プリンター2が本発明を適用した電子機器に相当する。
【0023】
本プリンター2は、図2に示すように、コントローラー部21と印刷実行部22を備える。コントローラー部21は、印刷要求時にホストコンピューター1から送信される上記印刷要求データを受信し、当該データを上記印刷実行部22用の信号に変えて印刷実行部22に印刷を指示する部分である。また、コントローラー部21は、上記印刷処理だけでなく、通信I/F23を含むプリンター2の各部を制御する。また、ホストコンピューター1及び他のプリンター2との無線通信に係る制御を実行するが、本実施の形態例では当該制御処理に特徴を有し、その具体的な内容については後述する。
【0024】
コントローラー部21には、図2に示すように、通信I/F23、CPU24、ROM25、RAM26、NVRAM27、及びエンジンI/F28が備えられる。通信I/F23は、ホストコンピューター1、他のプリンター2との無線通信を行う部分である。そして、プリンター2が動作中(電源がONの状態)である場合には、少なくとも自己の識別情報(SSID)を含むビーコン信号を所定の時間間隔で発信する。CPU24は、コントローラー部21が行う上記各処理の制御部である。ROM25には、CPU24の動作を指示するプログラム等が格納される。RAM26には、印刷処理の過程で生成される画像データ等が一時的に保持される。また、RAM26には、その時点で無線通信の相手としている通信先の通信設定情報及び自己(通信元)の通信設定情報が保持される。なお、通信設定情報については後述する。
【0025】
不揮発性メモリであるNVRAM27には、プリンター2の電源がOFFになっても保持すべき情報が記録され、本プリンター2では、ホストコンピューター1及び各プリンター2の上記通信設定情報が記憶される。
【0026】
図3は、当該記憶される通信設定情報を例示した図である。図3に示すように、通信設置情報は、一例として、その機器を識別するSSID(Service Set Identifier)、パスワード、及び通信方式の情報を有し、上記RAM26に設定される通信元及び通信先の当該情報が通信する情報に含まれ、当該情報が受信側に設定されている同情報と整合すれば通信が確立する。
【0027】
図3に示すように、各プリンター2には、当該電子機器システムに含まれる全ての機器用の通信設定情報と、マスター用の通信設定情報が記憶されている。ここで、マスター機器(マスタープリンター)とは、ホストコンピューター1と他のプリンター2との無線通信を中継する機器であり、マスター機器となったプリンター2では、このマスター用通信設定情報が自己の(通信元の)情報として設定される。また、サブ機器(サブプリンター)とは、マスター機器を介してホストコンピューター1との無線通信を行う機器であり、この場合には、自分用の通信設定情報が自己の(通信元の)情報として設定される。例えば、プリンター2aでは、プリンター2a用設定情報が設定される。
【0028】
また、NVRAM27には、当該電子機器システムに含まれる全ての機器のIPアドレスが記憶される。
【0029】
次に、エンジンI/F28は、画像データを印刷実行部22用の信号に変えるなどの処理を実行する、コントローラー部21と印刷実行部22のインターフェースを成す部分である。
【0030】
印刷実行部22は、印刷媒体に対して印刷処理を実行する部分であり、一例として、感光体、露光装置、現像装置、中間媒体、定着装置、印刷媒体の搬送装置等で構成される。
【0031】
以上のような構成を有する本実施の形態例に係る電子機器システムでは、前述の通り、無線通信に係る処理に特徴があり、以下、その具体的な内容について説明する。
【0032】
図4は、本電子機器システムにおける通信処理の一例を示すタイムチャートである。本電子機器システムでは、プリンター2の起動/停止によって無線通信を中継する機器が変化することを特徴とするが、図4に基づいて、その一例を説明する。
【0033】
まず、プリンター2が全て停止している状態から、プリンター2aの電源がONとされ起動する(T1)。この場合、動作中の(停止していない)プリンター2はプリンター2aのみであるので、プリンター2aが上述したマスター機器となる(T2)。そして、ホストコンピューター1からの無線通信があると、上述の通り、その送信先はマスター機器に設定されているので、プリンター2aはホストコンピューター1と接続を確立して(T3)通信を行う(T4)。
【0034】
次に、プリンター2bの電源がONとされ起動する(T5)。この場合、プリンター2aが先に起動しているので、プリンター2bが上述したサブ機器となる(T6)。そして、ホストコンピューター1からプリンター2b宛ての通信があると、上述と同様に、ホストコンピューター1における無線通信の通信先の設定はマスター機器であるので、一旦、プリンター2aがホストコンピューター1と接続を確立して(T7)通信を行う(T8)。その後、プリンター2aは、通信がプリンター2b宛てであることを通信情報に含まれるIPアドレスから認知し、受信した情報をプリンター2bに送信する(T9)。具体的には、プリンター2aが上記通信先の設定をNVRAM27に記憶されるプリンター2b用の通信設定情報に変更して無線通信を行い、プリンター2bがそれに対する接続を確立して通信がなされる。なお、サブ機器となったプリンター2においては、上記通信先の設定はマスター用通信設定情報になっている。
【0035】
図5は、本電子機器システムにおける無線通信の中継を例示した図である。図5の(A)に示す状態が上記T7〜T9の状態であり、マスター機器となったプリンター2aがホストコンピューター1からプリンター2bへの無線通信を中継する。この例では、プリンター2cは停止しているが、サブ機器として起動すれば、ホストコンピューター1からプリンター2cへの無線通信もプリンター2aによって中継される。
【0036】
その後、プリンター2aの電源がOFFにされて停止すると(T10)、その時点で動作中のプリンター2は、プリンター2bのみであるのでプリンター2bがマスター機器になる(T11)。その際には、上記通信元の設定は、プリンター2aから引き継がれて、マスター用通信設定情報になる。そして、ホストコンピューター1からの無線通信があると、プリンター2bはホストコンピューター1と直接接続を確立して(T12)通信を行うようになる(T13)。
【0037】
その後、再び、プリンター2aが起動すると(T14)、今回は、先にプリンター2bが起動しているのでサブ機器となる(T15)。そして、ホストコンピューター1からプリンター2a宛ての通信があると、上記T7〜T9と同様に、今回は、プリンター2bが当該通信を中継する(T16〜T18)。
【0038】
図5の(B)に示す状態が上記T16〜T18の状態であり、マスター機器となったプリンター2bがホストコンピューター1からプリンター2aへの無線通信を中継する。この例では、プリンター2cは停止しているが、サブ機器として起動すれば、ホストコンピューター1からプリンター2cへの無線通信もプリンター2bによって中継される。
【0039】
以上説明したように、本電子機器システムでは、プリンター2の起動タイミングに基づいて、マスター機器が設定され、そのマスター機器がホストコンピューター1と他のプリンター2との無線通信を中継する。
【0040】
次に、当該無線通信の際にプリンター2で行われる処理の、より具体的な内容について説明する。図6及び図7は、プリンター2で行われる処理の手順を例示したフローチャートである。なお、以下に説明する内容は、各プリンター(2a、2b、2c)において同様である。
【0041】
まず、プリンター2の電源がONにされてプリンター2が起動する(ステップS1)。その後、コントローラー部21は、他の2つのプリンター2が動作中であるかをチェックする(ステップS2)。具体的には、他のプリンター2の電源がONにされていれば、その通信I/F23から発信されているはずの上記ビーコン信号が通信I/F23で受信されるかを確認する。
【0042】
当該チェックの結果、他のプリンター2から発せられるビーコン信号があり、他のプリンター2が動作中であることが確認されれば(ステップS2のYes)、処理がステップS21に移行する。この場合には、当該プリンター2はサブ機器になり、その場合の処理は後述する。
【0043】
一方、上記チェックの結果、他のプリンター2から発せられるビーコン信号がなく、他のいずれのプリンター2も動作中であることが確認できなければ(ステップS2のNo)、上述のとおり、他のプリンター2が全て停止しているので、換言すれば、動作中のプリンター2の中で起動時期が最も早いので、上述したマスター機器となる。
【0044】
具体的には、コントローラー部21が無線通信に関してマスター機器としての設定を行なう(ステップS3)。より具体的には、上述したRAM26における通信元の設定を上記マスター用通信設定情報とする。また、通信先の設定は一例としてホストコンピューター1用通信設定情報とする。さらに、RAM26にマスター/サブ情報を記憶する。このマスター/サブ情報は、その時点でマスター機器であるプリンター2とその時点でサブ機器であるプリンター2を示す情報であり、サブ機器については、起動時期の早い順に順位付けられた情報となっている。ここでは、n番目に起動時期が早いサブ機器をサブ(n)として表す。
【0045】
このように、マスター機器となった後は、他のプリンター2において起動/停止に関する変化があったか(ステップS4)及び通信が発生しているか(ステップS5)を監視する。そして、通信が発生していれば(ステップS5のYes)、その通信相手と接続を確立する(ステップS6)。当該通信の通信元がホストコンピューター1又は他のプリンター2である場合には、上述の通り、その通信の通信先はマスター機器となっているので、コントローラー部21は、当該プリンター2の上記通信先の設定を当該通信の通信元の情報と同じにして接続を確立する。また、自分からの通信を行う場合には、コントローラー部21は、同様に、上記通信先の設定を当該通信の通信先の情報にして接続を確立する。
【0046】
その後、通信処理を実行し(ステップS7)、当該通信が自分宛てであるか否かを調べる(ステップS8)。コントローラー部21は、受信の場合には受信した情報を解析し、その宛先として示されているIPアドレスから自分宛てか否かを判断する。その結果、自分宛ての通信である場合には(ステップS8のYes)、コントローラー部21は、当該受信した情報に基づく指示をして処理がステップS4に戻る。
【0047】
一方、自ら通信を発する場合も含め、自分宛ての通信でない場合には(ステップS8のNo)、受信した通信の宛先の機器、又は、通信を発する場合の宛先の機器が動作中であるか否かをチェックする(ステップS9)。当該チェックは、ステップS2の場合と同様に、その機器から発せられるビーコン信号の有無によって行う。
【0048】
その結果、その機器が動作中でなければ(ステップS9のNo)、コントローラー部21は、通信は不可と判断して処理を中断し、処理がステップS4に戻る。一方、その機器が動作中であれば(ステップS9のYes)、コントローラー部21は、その宛先の機器と接続を確立する(ステップS10)。この際には、上記通信先の設定を当該宛先の機器の通信設定情報とする。例えば、マスター機器がプリンター2aで、ホストコンピューター1からプリンター2b宛ての通信を受信した場合には、プリンター2b用の通信設定情報を通信先として設定する。その後、通信処理を行って(ステップS11)、処理がステップS4に戻る。
【0049】
次に、ステップS4に戻り、他のプリンター2において起動/停止に関する変化があった場合には(ステップS4のYes)、コントローラー部21は、その起動/停止に基づいて上記マスター/サブ情報を変更する(ステップS12)。他のプリンター2が起動した場合には、そのプリンター2がサブ機器となるので、起動順位を含めそのことをマスター/サブ情報に加える。また、他のプリンター2が停止した場合には、サブ機器が消滅するので、それをマスター/サブ情報に反映させる。この時、当該消滅したサブ機器よりも起動順位が遅いサブ機器があれば、そのサブ機器の起動順位が一つ上げられるように変更される。
【0050】
このように、マスター/サブ情報を更新すると、マスター機器はその情報をサブ機器、すなわち、他のプリンター2に伝播する(ステップS13及びS14)。サブ機器で当該情報はマスター機器になる際に用いられる。具体的には、コントローラー部21は、その時点でサブ機器となっているプリンター2に対して、それぞれ、接続の確立(S13)及びその後の通信(S14)を行う。接続の確立はS6やS10の場合と同様に行い、通信処理では上記更新後のマスター/サブ情報を送信する。
【0051】
次に、ステップS2に戻って、自分の起動時に他のプリンター2が動作中であれば(ステップS2のYes)、サブ機器となるために、サブ機器としての設定を行う(図7のステップS21)。具体的には、コントローラー部21は、RAM26の通信先をマスター用通信設定情報に設定し、通信元を自己用の通信設定情報に設定する。例えば、当該プリンターがプリンター2bである場合には、プリンター2b用通信設定情報に設定する。
【0052】
その後、その時点でマスター機器であるプリンター2から、上述したマスター/サブ情報が送信されてくるので、コントローラー部21は、マスター機器と接続を確立し(ステップS22)、送信される情報を受信する(ステップS23)。そして、受信したマスター/サブ情報をRAM26に保持(設定)する(ステップS24)。
【0053】
その後、サブ機器となったプリンター2は、マスター機器が動作中であるか否か(ステップS25)、及び、自分に対する又は自分からの通信があるか否か(ステップS26)を監視する。そして、通信がある場合には(ステップS26のYes)、上記設定した通信先と通信元の情報は変えずに接続を確立し(ステップS27)、通信処理を行う(ステップS28)。そして、当該通信が、マスター機器からのマスター/サブ情報の送信である場合には(ステップS29のYes)、コントローラー部21は、上記RAM26に保持されたマスター/サブ情報を当該受信した情報で更新し(ステップS30)、そうでない場合には(ステップS29のNo)、受信であれば受信した情報に基づく指示を行う。これらの処理後は、処理がステップS25に戻る。
【0054】
ステップS25において、マスター機器が動作中であることを確認できない場合には(ステップS25のNo)、コントローラー部21は、RAM26に保持するマスター/サブ情報により、自分がサブ(1)であるか否かをチェックする(ステップS31)。なお、マスター機器が動作中であるか否かの判断は、マスター機器であるプリンター2から前述したビーコン信号が発せられているか否かを確認することによって行われ、当該ビーコン信号が発せられていなければマスター機器が停止したと判断し、当該チェック(S31)を行う。なお、マスター機器であるプリンター2からのビーコン信号にはマスター機器用通信設定情報のSSIDが含まれる。
【0055】
上記チェック(S31)の結果、自分がサブ(1)でなければ、すなわち、本実施の形態例ではサブ(2)であれば(ステップS31のNo)、サブ機器のままステップ22に処理が戻る。なお、この場合、上述したマスター/サブ情報の更新(S24)において、当該プリンター2がサブ(1)となる。
【0056】
一方、自分がサブ(1)であれば(ステップS31のYes)、マスター機器になるので、マスター機器としての設定を行う(ステップS32)。当該処理は、前述したステップS3と同様に行う。その後、当該処理で更新されたマスター/サブ情報の伝播を行う(ステップS33及びS34)。当該処理は、前述したステップS13及びS14と同様に行う。その後、マスター機器として、処理が図6のステップS4に移行する。
【0057】
以上説明した処理が、プリンター2の電源がOFFにされるまで継続される。
【0058】
なお、上述したマスター用通信設定情報を用いずに、プリンター2の中で初めに起動した機器の通信設定情報をマスター用の情報として用いて、マスター機器に引き継がれるようにし、全ての機器が停止するまでの間に、初めに起動した機器がサブになった場合には、予め用意した仮の通信設定情報を用いるようにしてもよい。
【0059】
また、上記実施形態例の変形例として、各プリンター2が通信系統を2系統持つようにしてもよい。この変形例では、各通信系統に対応して2つの通信I/F23が設けられると共に、上記通信先及び通信元の設定が2組行われる。また、処理手順と処理内容は上述した実施形態例と同様に行われるが、この場合には、マスター機器になったプリンター2において、上記通信系統の1系列をホストコンピューター1用として、他の1系統を他のプリンター2用として使用できるので、通信が重なった場合の通信ロスを抑えることができる。
【0060】
更にまた、上記実施形態例の別の変形例は、当該機器間の無線通信をインフラストラクチャモードで行う例である。この場合にも、装置構成及び処理内容は上記実施形態例と同様であるが、マスター機器となったプリンター2がアクセスポイントとして機能することになる。
【0061】
以上説明したように、本実施の形態例及び変形例に係る電子機器システムでは、動作中のプリンター2の中で起動タイミングが最も早いプリンター2がマスター機器として機能し、ホストコンピューター1から他のサブ機器であるプリンター2への無線通信を中継する。また、マスター機器が停止されれば、起動順位に従って、次のサブ機器がマスター機器として同様に機能する。
【0062】
そして、ホストコンピューター1は、常にマスター機器を通信先とすれば他のプリンター2とも通信が可能であるので、マスター機器用の通信設定情報を設定しておけば、その後、設定を変える必要がない。また、上述したマスター/サブ情報が常に更新されて動作中の全てのプリンター2に伝えられているので、マスター機器への変更も上述した処理により自動で行うことができる。
【0063】
従って、ホスト機器と複数の電子機器が備えられる、アクセスポイントとなる専用の装置がない無線通信の環境においても、各機器間の通信を、ユーザーによる設定変更操作なしに、自動で行うことができるようになる。
【0064】
また、上述した機能がプリンター等の電子機器側に備えられていればよく、ホスト装置に新たな仕掛けを設ける必要がない。
【0065】
このように、本実施の形態例及び変形例によるシステム及び機器を用いることにより、ホスト機器と複数の電子機器を備える環境において、ユーザーの手を煩わせない自在な無線通信の機能を電子機器側の機能として容易に実現することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 ホストコンピューター、 2 プリンター(2a、2b、2c)、 21 コントローラー部(通信手段)、 22 印刷実行部、 23 通信I/F、 24 CPU、 25 ROM、 26 RAM、 27 NVRAM、 28 エンジンI/F

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスト装置と無線通信によって接続される電子機器であって、
起動時期が、前記ホスト装置と無線通信によって接続される他の電子機器であって動作中である他の電子機器のいずれの起動時期よりも早い場合に、マスター機器として、前記ホスト装置と前記他の電子機器との無線通信を中継し、
起動時期が、前記他の電子機器のいずれかの起動時期よりも遅い場合に、サブ機器として、前記他の電子機器を介して前記ホスト機器と無線通信を行う
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1において、
前記ホスト装置には、前記マスター機器用の通信情報が通信先として設定され、
前記マスター機器の場合には、当該マスター機器用の通信情報を通信元として設定し、
前記サブ機器の場合には、当該マスター機器用の通信情報を通信先として設定すると共に、当該電子機器固有の通信情報を通信元として設定する
ことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項1あるいは請求項2において、
当該電子機器及び前記他の電子機器の中における前記起動時期の順番に関する情報を保持し、当該情報に基づいて、前記起動時期が早いか遅いかの判断がなされる
ことを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかにおいて、
前記無線通信は、アドホックモードで行われる
ことを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかにおいて、
2系統の通信手段を有し、
前記マスター機器として機能する場合には、1系統の前記通信手段を前記ホスト装置との通信に用い、他の系統の前記通信手段を前記他の電子機器との通信に用いる
ことを特徴とする電子機器。
【請求項6】
請求項1乃至請求項3のいずれかにおいて、
前記無線通信は、インフラストラクチャモードで行われ、
前記マスター機器として機能する場合には、アクセスポイントとして機能する
ことを特徴とする電子機器。
【請求項7】
互いに無線通信によって接続されるホスト装置と複数の電子機器を備える電子機器システムであって、
動作中である前記複数の電子機器の中で、起動時期が最も早い電子機器が、前記ホスト装置と他の前記電子機器との無線通信を中継し、
当該他の電子機器は、当該起動時期が最も早い電子機器を介して、前記ホスト装置と無線通信を行う
ことを特徴とする電子機器システム。
【請求項8】
互いに無線通信によって接続されるホスト装置と複数の電子機器を備える電子機器システムにおける無線通信方法であって、
動作中である前記複数の電子機器の中で、起動時期が最も早い電子機器が、前記ホスト装置と他の前記電子機器との無線通信を中継し、
当該他の電子機器は、当該起動時期が最も早い電子機器を介して、前記ホスト装置と無線通信を行う
ことを特徴とする無線通信方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−199704(P2011−199704A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65588(P2010−65588)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】