説明

無線通信機

【課題】使用される周波数帯域や無線通信システムの種類が互いに異なる第1地域及び第2地域の何れで使用される場合でも冗長な構成を抑えて低コスト化する。
【解決手段】5.9[GHz]帯の第1地域(北米や欧州)のWAVEシステムに対応する場合には、WAVEシステムの無線信号を第1の受信系統58及び第2の受信系統59によりダイバーシティ受信すると共に、無線信号を送信系統60から送信する。700[MHz]帯の第2地域(日本)のWAVEシステム及び5.8[GHz]帯の第2地域のDSRCシステムに対応する場合には、WAVEシステムの無線信号を第2の受信系統59により受信し、DSRCシステムの無線信号を第1の受信系統58により受信すると共に、無線信号を送信系統60から時分割で切換えて送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される無線通信機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、日本、北米及び欧州を含む多数の地域で車々間通信や路車間通信をアプリケーションとするWAVEシステムが開発検討されている。WAVEシステムでは、地域毎に(日本と北米や欧州とでは)使用する周波数帯が異なり、日本では700[MHz]帯を使用し、北米や欧州では5.9[GHz]帯を使用する。又、日本では既にETC(Electronic Toll Collection、電子料金収受システム)(登録商標)をアプリケーションとするDSRC(Dedicated Short Range Communications、狭域無線通信)(登録商標)システムが実用化されている。DSRCシステムでは、5.8[GHz]帯を使用する。
【0003】
このような背景から、無線用IC(Integrated Circuit)を製造するメーカでは、各々のシステムに対応したICを開発中であるが、アプリケーションの性質上、数量やインフラ設備に利用有効性が左右されることから、低コストであることが求められている。低コストを実現するための1つの手段として、各々のシステムに対応した統合無線用LSI(Large Scale Integration)が検討されているが、各々のシステムの無線信号を受信するには、各々のシステムに対応して受信系統を搭載する必要がある。しかしながら、各々のシステムに対応して受信系統を搭載する構成では、例えば第1地域(北米及び欧州)で使用される際には第2地域(日本)のWAVEシステムに対応する受信系統及び第2地域のDSRCシステムに対応する受信系統が冗長な構成となり、一方、第2地域で使用される際には第1地域のWAVEシステムに対応する受信系統が冗長な構成となる。
【0004】
一方、複数の無線通信システムを対象とする類似案件として、例えば特許文献1には、GPS(Global Positioning System)、ETC、VICS(Vehicle Information and Communication System)(登録商標)、無線LAN(Local Area Network)を対象とし、それら複数の無線通信システムの各々の無線信号を復調する処理を並行して行う技術が開示されている。又、例えば特許文献2には、車両がETCの路上機に接近すると、無線LANによる通信を行わないようにする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4368675号公報
【特許文献2】特許第4089369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した特許文献1及び2に開示されている技術は、一の地域のみで使用されることを想定しており、複数の地域で使用されることを想定しておらず、よって、第1地域で使用される際には第2地域のWAVEシステムに対応する受信系統及び第2地域のDSRCシステムに対応する受信系統が冗長な構成となり、一方、第2地域で使用される際には第1地域のWAVEシステムに対応する受信系統が冗長な構成となる、という問題を解決するには至らない。
【0007】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、使用される周波数帯域や無線通信システムの種類が互いに異なる第1地域及び第2地域の何れで使用される場合でも、冗長な構成を抑えることができ、低コスト化を実現することができる無線通信機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載した発明によれば、無線処理部において、第1の受信系統及び第2の受信系統の2つの受信系統と、1つの送信系統とを、第1地域で使用される1つの第1地域無線通信システムに対応する第1地域対応時には、第1地域無線通信システムの無線信号を第1の受信系統及び第2の受信系統の2つの受信系統によりダイバーシティ受信し、第1地域無線通信システムの無線信号を1つの送信系統により送信する。一方、第1地域とは異なる第2地域で使用される使用周波数帯域が互いに異なる第1の第2地域無線通信システム及び第2の第2地域無線通信システムの2つの第2地域無線通信システムに対応する第2地域対応時には、第1の第2地域無線通信システムの無線信号を第2の受信系統により受信し、第2の第2地域無線通信システムの無線信号を第1の受信系統により受信し、第1の第2地域無線通信システムの無線信号と第2の第2地域無線通信システムの無線信号とを1つの送信系統により時分割で切換えて送信するようにした。
【0009】
ベースバンド処理部において、第1の無線通信システムの中間周波数信号を処理する第1の無線通信システム用モデムと、第2の無線通信システムの中間周波数信号を処理する第2の無線通信システム用モデムとを、第1地域対応時には、第1の受信系統及び第2の受信系統の2つの受信系統によりダイバーシティ受信された無線信号が周波数変換された中間周波数信号を第1の無線通信システム用モデムにて処理する。一方、第2地域対応時であって第1の第2地域無線通信システムの無線信号の送信時には、第2の受信系統により受信された無線信号が周波数変換された中間周波数信号を第1の無線通信システム用モデムにて処理し、第1の受信系統により受信された無線信号が周波数変換された中間周波数信号を周波数変換手段により周波数変換した後に第2の無線通信システム用モデムにて処理し、第2地域対応時であって第2の第2地域無線通信システムの無線信号の送信時には、第1の受信系統により受信された無線信号が周波数変換された中間周波数信号を第2の無線通信システム用モデムにて処理し、第2の受信系統により受信された無線信号が周波数変換された中間周波数信号を周波数変換手段により周波数変換した後に第1の無線通信システム用モデムにて処理するようにした。
【0010】
これにより、無線処理部における2つの受信系統と1つの送信系統及びベースバンド処理部における第1の無線通信システム用モデムとを、第1地域で使用される1つの第1地域無線通信システムに対応する第1地域対応時と、第2地域で使用される使用周波数帯域が互いに異なる第1の第2地域無線通信システム及び第2の第2地域無線通信システムの2つの第2地域無線通信システムに対応する第2地域対応時とで共用することで、第1地域及び第2地域の何れで使用される場合でも冗長な構成を抑えることができ、低コスト化を実現することができる。即ち、例えば第1地域が北米や欧州であり、第2地域が日本であれば、北米や欧州及び日本の何れで使用される場合でも冗長な構成を抑えることができる。
【0011】
請求項2に記載した発明によれば、無線処理部は、第1の第2地域無線通信システムの無線信号を送信可能な状態で第2の第2地域無線通信システムの無線信号を受信し、その無線信号に対応する中間周波数信号を復調した後に、第1の第2地域無線通信システムの無線信号を送信可能な状態から第2の第2地域無線通信システムの無線信号を送信可能な状態に切換える。
【0012】
これにより、RSSI(Received Signal Strength Indication、受信信号強度)を検出して送信可能な状態を切換える方法では、送信可能な状態を切換える期間内でクロック同期を確立する期間を必要とするので、そのクロック同期を確立する期間を必要とする分、送信可能な状態を即座に切換えることができないが、無線信号に対応する中間周波数信号を復調した後に送信可能な状態を切換える方法では、送信可能な状態を切換える期間内でクロック同期を確立する期間を必要としないので、送信可能な状態を即座に切換えることができる。即ち、第1の第2地域無線通信システムが広域なシステムであり、第2の第2地域無線通信システムが狭域な(スポット通信を行う)システムであると、常には広域な第1の第2地域無線通信システムの無線信号を送信可能な状態としておくことができ、狭域な第2の第2地域無線通信システムのエリアに進入した場合に限って、第1の第2地域無線通信システムの無線信号を送信可能な状態から第2の第2地域無線通信システムの無線信号を送信可能な状態に即座に切換えることができる。
【0013】
請求項3に記載した発明によれば、無線処理部は、第2の第2地域無線通信システムの無線信号を送信可能な状態で第2の第2地域無線通信システムの無線信号の送受信を完了した後に、第2の第2地域無線通信システムの無線信号を送信可能な状態から第1の第2地域無線通信システムの無線信号を送信可能な状態に切換える。
【0014】
これにより、第1の第2地域無線通信システムが広域なシステムであり、第2の第2地域無線通信システムが狭域なシステムであると、狭域な第2の第2地域無線通信システムのエリアに進入したことで第2の第2地域無線通信システムの無線信号を送信可能な状態に切換えた後に、狭域な第2の第2地域無線通信システムのエリアから退出すると、第2の第2地域無線通信システムの無線信号を送信可能な状態から第1の第2地域無線通信システムの無線信号を送信可能な状態に即座に切換えることができ、初期の状態(第1の第2地域無線通信システムの無線信号を送信可能な状態)に即座に復帰することができる。
【0015】
請求項4に記載した発明によれば、無線処理部は、第2地域対応時には、第2の第2地域無線通信システムの無線信号を第1の受信系統により受信することに代えて、第1の第2地域無線通信システムの無線信号を第1の受信系統及び第2の受信系統の2つの受信系統によりダイバーシティ受信することが可能である。
【0016】
これにより、第2地域対応時に、第1の無線通信システムのアプリケーションを必要とするが、第2の無線通信システムのアプリケーションを必要としない仕様であれば、本来は第2の第2地域無線通信システムの無線信号を受信するための第1の受信系統を、第1の第2地域無線通信システムの無線信号を受信するように設計することで、第1の第2地域無線通信システムの無線信号を第1の受信系統及び第2の受信系統の2つの受信系統によりダイバーシティ受信することができ、受信品質を高めることができる。
【0017】
請求項5に記載した発明によれば、第1の無線通信システムとして車々間通信や路車間通信をアプリケーションとするシステムに対応し、第2の無線通信システムとして電子料金収受システムをアプリケーションとするシステムに対応する。
【0018】
これにより、第1地域及び第2地域の何れで使用される場合でも冗長な構成を抑え、低コスト化を実現しつつも、第1地域で使用される際には、第1地域の車々間通信や路車間通信をアプリケーションとするシステムに対応することができ、一方、第2地域で使用される際には、第2地域の車々間通信や路車間通信をアプリケーションとするシステム及び第2地域の電子料金収受システムの双方に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態を示す機能ブロック図
【図2】第1地域動作モードで動作する場合に有効となる機能ブロックを示す図
【図3】第2地域動作モード(第2地域のWAVEシステムの700[MHz]帯の無線信号を送信する期間)で動作する場合に有効となる機能ブロックを示す図
【図4】第2地域動作モード(第2地域のDSRCシステムの5.8[GHz]帯の無線信号を送信する期間)で動作する場合に有効となる機能ブロックを示す図
【図5】第2地域のWAVEシステムの700[MHz]帯の無線信号を送信する際の周波数プランを示す図
【図6】第2地域のDSRCシステムの5.8[GHz]帯の無線信号の送信する際の周波数プランを示す図
【図7】CPUが行う処理を示すフローチャート
【図8】第2地域のWAVEシステムの700[MHz]帯の無線信号をダイバーシティ受信する場合に有効となる機能ブロックを示す図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。尚、本実施形態では、第1地域は北米や欧州であり、第2地域は日本である。図1は、車両に搭載される無線通信機に実装されている統合無線用LSI(Large Scale Integration)の構成を機能ブロック図により示している。統合無線用LSI1は、無線(RF(Radio Frequency))処理部2、ベースバンド処理部3、SD(Secure Digital)カード入出力(I/O)部4、CPU(Central Processing Unit)5を備えている。統合無線用LSI1は、5.9[GHz]帯を使用する第1地域のWAVEシステム、700[MHz]帯を使用する第2地域のWAVEシステム、5.8[GHz]帯を使用する第2地域のDSRC(Dedicated Short Range Communications、狭域無線通信)システムに対応可能である。第1地域及び第2地域のWAVEシステムは、例えば車両衝突防止を目的とする車々間通信や路車間通信をアプリケーションとするシステムであり、第2地域のDSRCシステムは、ETC(Electronic Toll Collection、電子料金収受システム)をアプリケーションとするシステムである。又、第1地域及び第2地域のWAVEシステムは広域なシステムであり、第2地域のDSRCシステムは狭域な(スポット通信を行う)システムである。即ち、無線通信機が第2地域で使用される場合には、第2地域のWAVEシステムの方が第2地域のDSRCシステムよりも使用頻度が高い。
【0021】
5.9[GHz]帯を使用する第1地域のWAVEシステム及び700[MHz]帯を使用する第2地域のWAVEシステムは、第1の無線通信システムに相当し、5.8[GHz]帯を使用する第2地域のDSRCシステムは、第2の無線通信システムに相当する。又、5.9[GHz]帯を使用する第1地域のWAVEシステムは、1つの第1地域無線通信システムに相当し、700[MHz]帯を使用する第2地域のWAVEシステムは、第1の第2地域無線通信システムに相当し、5.8[GHz]帯を使用する第2地域のDSRCシステムは、第2の第2地域無線通信システムに相当する。又、統合無線用LSI1は、発振器6から入力するクロック信号を動作クロックとして動作する。
【0022】
無線処理部2は、通信網(第1地域及び第2地域のWAVEシステムのインフラ及び第2地域のDSRCシステムのインフラを含む)から無線信号を受信する受信系統の機能ブロックとして、第1の受信用可変利得増幅器11〜第4の受信用可変利得増幅器14、第1の受信用ミキサ15〜第10の受信用ミキサ24、第1の受信用90度移相器25〜第4の受信用90度移相器28、第1の受信用LPF(Low-Pass Filter、ローパスフィルタ)29〜第4の受信用LPF32、第1の増幅器33〜第4の増幅器36、第1のA/D変換器37〜第4のA/D変換器40を備えている。
【0023】
又、無線処理部2は、無線信号を通信網へ送信する送信系統の機能ブロックとして、第1のD/A変換器41、第2のD/A変換器42、第1の送信用LPF43、第2の送信用LPF44、第1の送信用ミキサ45〜第4の送信用ミキサ48、第1の送信用90度移相器49、第2の送信用90度移相器50、第1の送信用可変利得増幅器51、第2の送信用可変利得増幅器52を備えている。更に、受信系統と送信系統との双方に共通する機能ブロックとして、PLL(Phase-Locked Loop)回路53、発振器54、1/2分周器55、1/8分周器56、1/n(nは自然数)分周器57を備えている。PLL回路53は、PFD(Phase Frequency Detector、位相比較器)、ループフィルタ、VCO(Voltage Controlled Oscillator、電圧制御発振器)を備えている。
【0024】
最初に、受信系統の機能ブロックについて説明する。第1の受信用可変利得増幅器11は、アンテナ(図示せず)から入力した無線信号を増幅して第1の受信用ミキサ15及び第2の受信用ミキサ16へ出力する。第1の受信用ミキサ15は、第1の受信用可変利得増幅器11から入力した無線信号と1/2分周器55から入力したローカル信号(局所信号)とをミキシングして第1の中間周波数信号を生成して第9の受信用ミキサ23へ出力する。第9の受信用ミキサ23は、第1の受信用ミキサ15から入力した第1の中間周波数信号と1/n分周器57から入力したローカル信号とをミキシングして第2の中間周波数信号を生成して第1の受信用LPF29へ出力する。第1の受信用LPF29は、第9の受信用ミキサ23から入力した第2の中間周波数信号から高周波成分を除去し、その高周波成分を除去した第2の中間周波数信号を第1の増幅器33へ出力する。第1の増幅器33は、第1の受信用LPF29から入力した第2の中間周波数信号を増幅して第1のA/D変換器37へ出力する。第1のA/D変換器37は、第1の増幅器33から入力した第2の中間周波数信号をアナログ信号からデジタル信号に変換してベースバンド処理部3へ出力する。
【0025】
第2の受信用ミキサ16は、第1の受信用可変利得増幅器11から入力した無線信号と1/2分周器55から第1の受信用90度移相器25を介して入力したローカル信号とをミキシングして第1の中間周波数信号を生成して第10の受信用ミキサ24へ出力する。第10の受信用ミキサ24は、第2の受信用ミキサ16から入力した第1の中間周波数信号と1/n分周器57から入力したローカル信号とをミキシングして第2の中間周波数信号を生成して第2の受信用LPF30へ出力する。第2の受信用LPF30は、第10の受信用ミキサ24から入力した第2の中間周波数信号から高周波成分を除去し、その高周波成分を除去した第2の中間周波数信号を第2の増幅器34へ出力する。第2の増幅器34は、第2の受信用LPF30から入力した第2の中間周波数信号を増幅して第2のA/D変換器38へ出力する。第2のA/D変換器38は、第2の増幅器34から入力した第2の中間周波数信号をアナログ信号からデジタル信号に変換してベースバンド処理部3へ出力する。
【0026】
第2の受信用可変利得増幅器12は、アンテナから入力した無線信号を増幅して第3の受信用ミキサ17及び第4の受信用ミキサ18へ出力する。第3の受信用ミキサ17は、第2の受信用可変利得増幅器12から入力した無線信号と1/2分周器55から入力したローカル信号とをミキシングして第1の中間周波数信号を生成して第3の受信用LPF31へ出力する。第3の受信用LPF31は、第3の受信用ミキサ17から入力した第1の中間周波数信号から高周波成分を除去し、その高周波成分を除去した第1の中間周波数信号を第3の増幅器35へ出力する。第3の増幅器35は、第3の受信用LPF31から入力した第1の中間周波数信号を増幅して第3のA/D変換器39へ出力する。第3のA/D変換器39は、第3の増幅器35から入力した第1の中間周波数信号をアナログ信号からデジタル信号に変換してベースバンド処理部3へ出力する。
【0027】
第4の受信用ミキサ18は、第2の受信用可変利得増幅器12から入力した無線信号と1/2分周器55から第2の受信用90度移相器26を介して入力したローカル信号とをミキシングして第1の中間周波数信号を生成して第4の受信用LPF32へ出力する。第4の受信用LPF32は、第4の受信用ミキサ18から入力した第1の中間周波数信号から高周波成分を除去し、その高周波成分を除去した第1の中間周波数信号を第4の増幅器36へ出力する。第4の増幅器36は、第4の受信用LPF32から入力した第1の中間周波数信号を増幅して第4のA/D変換器40へ出力する。第4のA/D変換器40は、第4の増幅器36から入力した第1の中間周波数信号をアナログ信号からデジタル信号に変換してベースバンド処理部3へ出力する。
【0028】
第3の受信用可変利得増幅器13は、アンテナから入力した無線信号を増幅して第5の受信用ミキサ19及び第6の受信用ミキサ20へ出力する。第5の受信用ミキサ19は、第3の受信用可変利得増幅器13から入力した無線信号と1/8分周器56から入力したローカル信号とをミキシングして第1の中間周波数信号を生成して上記した第9の受信用ミキサ23へ出力する。第6の受信用ミキサ20は、第3の受信用可変利得増幅器13から入力した無線信号と1/8分周器56から第3の受信用90度移相器27を介して入力したローカル信号とをミキシングして第1の中間周波数信号を生成して上記した第10の受信用ミキサ24へ出力する。
【0029】
第4の受信用可変利得増幅器14は、アンテナから入力した無線信号を増幅して第7の受信用ミキサ21及び第8の受信用ミキサ22へ出力する。第7の受信用ミキサ21は、第4の受信用可変利得増幅器14から入力した無線信号と1/8分周器56から入力したローカル信号とをミキシングして第1の中間周波数信号を生成して上記した第3の受信用LPF31へ出力する。第8の受信用ミキサ22は、第4の受信用可変利得増幅器14から入力した無線信号と1/8分周器56から第4の受信用90度移相器28を介して入力したローカル信号とをミキシングして第1の中間周波数信号を生成して上記した第4の受信用LPF32へ出力する。
【0030】
第1の受信用可変利得増幅器11、第1の受信用ミキサ15、第2の受信用ミキサ16、第1の受信用90度移相器25、第3の受信用可変利得増幅器13、第5の受信用ミキサ19、第6の受信用ミキサ20、第3の受信用90度移相器27、第9の受信用ミキサ23、第10の受信用ミキサ24、第1の受信用LPF29、第2の受信用LPF30、第1の増幅器33、第2の増幅器34、第1のA/D変換器37、第2のA/D変換器38は、第1の受信系統58を構成する。第1の受信系統58は、第9の受信用ミキサ23及び第10の受信用ミキサ24の動作が有効であれば、2段の周波数変換(ダブルコンバージョン)を行うことになり、一方、第9の受信用ミキサ23及び第10の受信用ミキサ24の動作が無効であれば、1段の周波数変換(シングルコンバージョン)を行うことになる。
【0031】
第2の受信用可変利得増幅器12、第3の受信用ミキサ17、第4の受信用ミキサ18、第2の受信用90度移相器26、第4の受信用可変利得増幅器14、第7の受信用ミキサ21、第8の受信用ミキサ22、第4の受信用90度移相器28、第3の受信用LPF31、第4の受信用LPF32、第3の増幅器35、第4の増幅器36、第3のA/D変換器39、第4のA/D変換器40は、第2の受信系統59を構成する。第2の受信系統59は、常に1段の周波数変換を行うことになる。
【0032】
次に、送信系統の機能ブロックについて説明する。第1のD/A変換器41は、ベースバンド処理部3から入力した中間周波数信号をアナログ信号からデジタル信号に変換して第1の送信用LPF43へ出力する。第1の送信用LPF43は、第1のD/A変換器41から入力した中間周波数信号から高周波成分を除去し、その高周波成分を除去した中間周波数信号を第1の送信用ミキサ45及び第3の送信用ミキサ47へ出力する。第2のD/A変換器42は、ベースバンド処理部3から入力した中間周波数信号をアナログ信号からデジタル信号に変換して第2の送信用LPF44へ出力する。第2の送信用LPF44は、第2のD/A変換器42から入力した中間周波数信号から高周波成分を除去し、その高周波成分を除去した中間周波数信号を第2の送信用ミキサ46及び第4の送信用ミキサ48へ出力する。
【0033】
第1の送信用ミキサ45は、第1の送信用LPF43から入力した中間周波数信号と1/2分周器55から入力したローカル信号とをミキシングして無線信号を生成して第1の送信用可変利得増幅器51へ出力する。第2の送信用ミキサ46は、第2の送信用LPF44から入力した中間周波数信号と1/2分周器55から第1の送信用90度移相器49を介して入力したローカル信号とをミキシングして無線信号を生成して第1の送信用可変利得増幅器51へ出力する。第1の送信用可変利得増幅器51は、第1の送信用ミキサ45から入力した無線信号及び第2の送信用ミキサ46から入力した無線信号を増幅してアンテナから送信する。
【0034】
第3の送信用ミキサ47は、第1の送信用LPF43から入力した中間周波数信号と1/8分周器56から入力したローカル信号とをミキシングして無線信号を生成して第2の送信用可変利得増幅器52へ出力する。第4の送信用ミキサ48は、第2の送信用LPF44から入力した中間周波数信号と1/8分周器56から第2の送信用90度移相器50を介して入力したローカル信号とをミキシングして無線信号を生成して第2の送信用可変利得増幅器52へ出力する。第2の送信用可変利得増幅器52は、第3の送信用ミキサ47から入力した無線信号及び第4の送信用ミキサ48から入力した無線信号を増幅してアンテナから送信する。
【0035】
第1のD/A変換器41、第2のD/A変換器42、第1の送信用LPF43、第2の送信用LPF44、第1送信用ミキサ45、第2の送信用ミキサ46、第3の送信用ミキサ47、第4の送信用ミキサ48、第1の送信用90度移相器49、第2の送信用90度移相器50、第1の送信用可変利得増幅器51、第2の送信用可変利得増幅器52は、1つの送信系統60を構成する。
【0036】
ベースバンド処理部3は、WAVEモデム61、DSRCモデム62、DSSS(Driving Safety Support Systems、安全運転支援システム)MAC63、NCO(Numerical Controlled Oscillators、数値制御発振器)64、第1のミキサ65、第2のミキサ66を備えている。
【0037】
WAVEモデム61は、中間周波数信号を0[MHz]で受信する構成であり、無線処理部2から入力した5.9[GHz]帯を使用する第1地域のWAVEシステムの中間周波数信号及び700[MHz]帯を使用する第2地域のWAVEシステムの中間周波数信号を復調処理すると共に、5.9[GHz]帯を使用する第1地域のWAVEシステムの中間周波数信号及び700[MHz]帯を使用する第2地域のWAVEシステムの中間周波数信号を生成し、その生成した中間周波数信号を変調処理して無線処理部2へ出力する。WAVEモデム61は、第1の無線通信システム用モデムに相当する。
【0038】
DSRCモデム62は、中間周波数信号を40[MHz]で受信する構成であり、無線処理部2から入力した5.8[GHz]帯を使用する第2地域のDSRCシステムの中間周波数信号を復調処理すると共に、5.8[GHz]帯を使用する第2地域のDSRCシステムの中間周波数信号を生成し、その生成した中間周波数信号を変調処理して無線処理部2へ出力する。DSRCモデム62は、第2の無線通信システム用モデムに相当する。
【0039】
又、NCO64、第1のミキサ65、第2のミキサ66は、周波数変換手段67を構成する。NCO64は、上記したPLL53のVCOと比較し、精度、安定性、信頼性の点で高い性能を有する。周波数変換手段67(第1のミキサ65及び第2のミキサ66)から出力される信号は、WAVEモデム61及びDSRCモデム62の何れかに選択的に入力される。
【0040】
S/Dカード入出力部4は、S/Dカード(図示せず)との間でデータ通信を行い、S/Dカードに記録されているデータを読出す。
CPU5は、記憶している制御プログラムを実行し、無線処理部2、ベースバンド処理部3、S/Dカード入出力部4の動作を制御する。具体的に説明すると、CPU5は、無線通信機が第1地域で使用されることを想定し、上記した5.9[GHz]帯を使用する第1地域のWAVEシステムに対応する第1地域動作モードと、無線通信機が第2地域で使用されることを想定し、上記した700[MHz]帯を使用する第2地域のWAVEシステム及び5.8[GHz]帯を使用する第2地域のDSRCシステムに対応する第2地域動作モードとを切換え、無線処理部2及びベースバンド処理部3が第1地域動作モード及び第2地域動作モードの何れでも動作するように制御する。以下、
(1)無線処理部2及びベースバンド処理部3が第1地域動作モードで動作する場合
(2)無線処理部2及びベースバンド処理部3が第2地域動作モードで動作する場合
について順次説明する。
【0041】
(1)無線処理部2及びベースバンド処理部3が第1地域動作モードで動作する場合
CPU5は、無線処理部2及びベースバンド処理部3を第1地域動作モードで動作させる場合には、図2に示すように、無線処理部2については、受信系統の機能ブロックのうち、無線信号を第3の受信用可変利得増幅器13により入力する機能ブロック(第3の受信用可変利得増幅器13、第5の受信用ミキサ19、第6の受信用ミキサ20、第3の受信用90度移相器27)、無線信号を第4の受信用可変利得増幅器14により入力する機能ブロック(第4の受信用可変利得増幅器14、第7の受信用ミキサ21、第8の受信用ミキサ22、第4の受信用90度移相器28)、第9の受信用ミキサ23、第10の受信用ミキサ24の動作を一時的に無効とする(動作を一時的に禁止する)。又、CPU5は、送信系統の機能ブロックのうち、無線信号を第2の送信用可変利得増幅器52から出力する機能ブロック(第3の送信用ミキサ47、第4の送信用ミキサ48、第2の送信用90度移相器50、第2の送信用可変利得増幅器52)の動作を一時的に無効とする。又、CPU5は、受信系統と送信系統とに共通する機能ブロックのうち、1/8分周器56、1/n分周器57の動作を一時的に無効とする。
【0042】
更に、CPU5は、ベースバンド処理部3については、DSRCモデム62、DSSSMAC63、周波数変換手段67の動作を一時的に無効とする。そして、CPU5は、無線処理部2及びベースバンド処理部3における他の機能ブロック(上記した動作を一時的に無効とする機能ブロックを除く機能ブロック)を動作させる。図2では、CPU5が動作を一時的に無効とする機能ブロックを破線にて示しており、CPU5が動作させる(有効とする)機能ブロックを実線にて示している。尚、第9の受信用ミキサ23及び第10の受信用ミキサ24の動作を一時的に無効とすることの意味は、第9の受信用ミキサ23及び第10の受信用ミキサ24において、入力した中間周波数信号を周波数変換することなく出力することを意味する。
【0043】
この場合、無線処理部2の第1のA/D変換器37〜第4のA/D変換器40から出力された第1地域のWAVEシステムの中間周波数信号は、ベースバンド処理部3のWAVEモデム61に入力されて復調処理される。CPU5は、第1地域のWAVEシステムでは受信効率が高くないという事情を考慮し、第9の受信用ミキサ23及び第10の受信用ミキサ24の動作を一時的に無効とし、第1の受信系統58を1段の周波数変換とすることで、第1の受信系統58と第2の受信系統59とを同一の構成としており、第1地域のWAVEシステムの5.9[GHz]帯の無線信号を第1の受信系統58及び第2の受信系統59の2つの受信系統によりダイバーシティ受信させる。CPU5は、第1の受信用可変利得増幅器11に入力された無線信号のRSSI(Received Signal Strength Indication、受信信号強度)及び第2の受信用可変利得増幅器12に入力された無線信号のRSSIを比較し、RSSIが高い方の無線信号に対応する中間周波数信号が復調処理されたデータを有効とする。又、ベースバンド処理部3のWAVEモデム61にて生成されて変調処理された中間周波数信号は、無線処理部2の第1のD/A変換器41及び第2のD/A変換器42に入力される。
【0044】
(2)無線処理部2及びベースバンド処理部3が第2地域動作モードで動作する場合
CPU5は、無線処理部2及びベースバンド処理部3を第2地域動作モードで動作させる場合には、第2地域のWAVEシステムの700[MHz]帯の無線信号とDSRCシステムの5.8[GHz]帯の無線信号とを時分割で切換えて送信する。
【0045】
CPU5は、第2地域のWAVEシステムの700[MHz]帯の無線信号の送信時には、図3に示すように、無線処理部2については、受信系統の機能ブロックのうち、無線信号を第2の受信用可変利得増幅器12により入力する機能ブロック(第2の受信用可変利得増幅器12、第3の受信用ミキサ17、第4の受信用ミキサ18、第2の受信用90度移相器26)、無線信号を第3の受信用可変利得増幅器13により入力する機能ブロック(第3の受信用可変利得増幅器13、第5の受信用ミキサ19、第6の受信用ミキサ20、第3の受信用90度移相器27)の動作を一時的に無効とする。又、CPU5は、送信系統の機能ブロックのうち、無線信号を第1の送信用可変利得増幅器51から出力する機能ブロック(第1の送信用ミキサ45、第2の送信用ミキサ46、第1の送信用90度移相器49、第1の送信用可変利得増幅器51)の動作を一時的に無効とする。そして、CPU5は、無線処理部2及びベースバンド処理部3における他の機能ブロック(上記した動作を一時的に無効とする機能ブロックを除く機能ブロック)を動作させる。図3でも、CPU5が動作を一時的に無効とする機能ブロックを破線にて示しており、CPU5が動作させる機能ブロックを実線にて示している。
【0046】
図4は、第2地域のWAVEシステムの700[MHz]帯の無線信号の送信時の周波数プランを示している。この場合、CPU5は、PLL回路53のVCOからの発振周波数を12160[MHz]に設定することで、第2地域のWAVEシステムの700[MHz]帯の受信系統である第7の受信用ミキサ21及び第8の受信用ミキサ22に760(=12160/2/8)[MHz]のローカル信号が入力され、第2地域のWAVEシステムの700[MHz]帯の送信系統である第3の送信用ミキサ47及び第4の送信用ミキサ48に760[MHz]のローカル信号が入力され、第2地域のDSRCシステムの5.8[GHz]帯の受信系統である第1の受信用ミキサ15及び第2の受信用ミキサ16に6080(=12160/2)[MHz]のローカル信号が入力されるように制御する。又、CPU5は、1/n分周器57の分周比nを「38」に設定することで、第9の受信用ミキサ23及び第10の受信用ミキサ24に320(=12160/38)[MHz]のローカル信号が入力されるように制御する。
【0047】
無線処理部2の第3のA/D変換器39及び第4のA/D変換器40から出力される第2地域のWAVEシステムの中間周波数信号は、0[MHz]であるので、ベースバンド処理部3のWAVEモデム61に直接入力されて復調処理される。又、ベースバンド処理部3のWAVEモデム61にて生成されて変調処理された中間周波数信号は、無線処理部2の第1のD/A変換器41及び第2のD/A変換器42に入力される。
【0048】
一方、無線処理部2の第1のA/D変換器37及び第2のA/D変換器38から出力される第2地域のDSRCの中間周波数信号は、15〜45[MHz]であるので、周波数変換手段67に入力されて40[MHz]に周波数変換された後にDSRCモデム62に入力されて復調処理される。即ち、第2地域のWAVEシステムの700[MHz]帯の無線信号の送信時には、PLL回路53のVCOからの発振周波数を第2地域のWAVEシステムの700[MHz]帯に合わせて選定するので、第2地域のDSRCシステムの中間周波数信号を周波数変換手段67にて40[MHz]に周波数変換する。
【0049】
この場合、CPU5は、第9の受信用ミキサ23及び第10の受信用ミキサ24の動作を一時的に無効とすることなく、第1の受信系統58を2段の周波数変換としている。即ち、上記したように第1地域のWAVEシステムの5.9[GHz]帯の無線信号を1段の周波数変換により周波数変換し、DSRCシステムの5.8[GHz]帯の無線信号を2段の周波数変換により周波数変換することで、PLL回路53(VCO)を共用する構成を実現している。PLL回路53がLSIとして多大な搭載スペースを必要とすることから、PLL回路53を共用することで、LSIの小型化に寄与する。
【0050】
一方、CPU5は、DSRCシステムの5.8[GHz]帯の無線信号の送信時には、図4に示すように、無線処理部2については、受信系統の機能ブロックのうち、無線信号を第2の受信用可変利得増幅器12により入力する機能ブロック、無線信号を第3の受信用可変利得増幅器13により入力する機能ブロックの動作を一時的に無効とすることに加えて、第9の受信用ミキサ23及び第10の受信用ミキサ24の動作を一時的に無効とする。又、CPU5は、送信系統の機能ブロックのうち、無線信号を第2の送信用可変利得増幅器52から出力する機能ブロック(第3の送信用ミキサ47、第4の送信用ミキサ48、第2の送信用90度移相器50、第2の送信用可変利得増幅器52)の動作を一時的に無効とする。又、CPU5は、受信系統と送信系統とに共通する機能ブロックのうち、1/n分周器57の動作を一時的に無効とする。そして、CPU5は、無線処理部2及びベースバンド処理部3における他の機能ブロック(上記した動作を一時的に無効とする機能ブロックを除く機能ブロック)を動作させる。図4でも、CPU5が動作を一時的に無効とする機能ブロックを破線にて示しており、CPU5が動作させる機能ブロックを実線にて示している。
【0051】
図6は、第2地域のDSRCシステムの5.8[GHz]帯の無線信号の送信時の周波数プランを示している。この場合、CPU5は、PLL回路53のVCOからの発振周波数を11630〜11690[MHz]に設定することで、第2地域のWAVEシステムの700[MHz]帯の受信系統である第7の受信用ミキサ21及び第8の受信用ミキサ22に726.875〜730.625(=(11630〜11690)/2/8)[MHz]のローカル信号が入力され、第2地域のDSRCシステムの5.8[GHz]帯の受信系統である第1の受信用ミキサ15及び第2の受信用ミキサ16に5185〜5845(=(11630〜11690)/2)[MHz]のローカル信号が入力され、第2地域のDSRCシステムの5.8[GHz]帯の送信系統である第1の送信用ミキサ45及び第2の送信用ミキサ46に5185〜5845[MHz]のローカル信号が入力されるように制御する。
【0052】
無線処理部2の第1のA/D変換器37及び第2のA/D変換器38から出力される第2地域のDSRCシステムの中間周波数信号は、0[MHz]であるので、ベースバンド処理部3のDSRCモデム62に直接入力されて復調処理される。又、ベースバンド処理部3のDSRCモデム62にて生成されて変調処理された中間周波数信号は、無線処理部2の第1のD/A変換器41及び第2のD/A変換器42に入力される。
【0053】
一方、無線処理部2の第3のA/D変換器39及び第4のA/D変換器40から出力される第2地域のWAVEの中間周波数信号は、29.375〜33.125[MHz]であるので、周波数変換手段67に入力されて0[MHz]に周波数変換された後にWAVEモデム61に入力されて復調処理される。即ち、第2地域のDSRCシステムの5.8[GHz]帯の無線信号の送信時には、PLL回路53のVCOからの発振周波数を第2地域のDSRCシステムの5.8[GHz]帯に合わせて選定するので、第2地域のWAVEシステムの中間周波数信号を周波数変換手段67にて0[MHz]に周波数変換する。
【0054】
尚、CPU5は、第2地域のWAVEシステムの700[MHz]帯の無線信号を送信する期間(第2地域のWAVEシステム送信モード、図3で説明した機能ブロックの動作状態)と第2地域のDSRCシステムの5.8[GHz]帯の無線信号を送信する期間(第2地域のDSRCシステム送信モード、図4で説明した機能ブロックの動作状態)とを、以下のようにして切換える。図7は、CPU5が送信モードを切換える処理をフローチャートにて示している。
【0055】
CPU5は、起動時(無線通信機の電源投入時)には、第2地域のWAVEシステム送信モードへ移行し、第2地域のWAVEシステム送信モードで動作を行う(ステップS1)。CPU5は、第2地域のWAVEシステム送信モードで動作中では第2地域のDSRCシステムの5.8[GHz]帯の無線信号(パケット)を受信したか否かを監視する(ステップS2)。
【0056】
ここで、CPU5は、第2地域のDSRCシステムの5.8[GHz]帯の無線信号を受信したと判定すると(ステップS2にて「YES」)、その無線信号に対応する中間周波数信号を復調した後に、第2地域のWAVEシステム送信モードから第2地域のDSRCシステム送信モードに切換え、第2地域のDSRCシステム送信モードへ移行し、第2地域のDSRCシステム送信モードで動作を行う(ステップS3)。CPU5は、第2地域のDSRCシステム送信モードで動作中では第2地域のDSRCシステムの5.8[GHz]帯の無線信号の送受信を完了したか否かを監視する(ステップS4)。
【0057】
ここで、CPU5は、第2地域のDSRCシステムの5.8[GHz]帯の無線信号の送受信を完了したと判定すると(ステップS4にて「YES」)、第2地域のDSRCシステム送信モードから第2地域のWAVEシステム送信モードに切換え、第2地域のWAVEシステム送信モードへ移行し、第2地域のWAVEシステム送信モードで動作を行う(ステップS1)。CPU5は、起動状態では上記したステップS1〜S4を繰返して実行する。
【0058】
ところで、以上は、無線通信機が第2地域で使用される場合に、700[MHz]帯を使用する第2地域のWAVEシステム及び5.8[GHz]帯を使用する第2地域のDSRCシステムの双方に対応する場合を説明したが、5.8[GHz]帯を使用する第2地域のDSRCシステムに対応する必要がなく、700[MHz]帯を使用する第2地域のWAVEシステムだけに対応する構成で良ければ、図8に示すように、無線信号を第1の受信用可変利得増幅器11により入力する機能ブロック、無線信号を第2の受信用可変利得増幅器12により入力する機能ブロック、第9の受信用ミキサ23、第10の受信用ミキサ24、無線信号を第1の送信用可変利得増幅器51から出力する機能ブロック、1/n分周器57、DSRCモデム62、周波数変換手段67の動作を一時的に無効とし、無線処理部2及びベースバンド処理部3における他の機能ブロック(上記した動作を一時的に無効とする機能ブロックを除く機能ブロック)を動作させても良い。図8でも、CPU5が動作を一時的に無効とする機能ブロックを破線にて示しており、CPU5が動作させる機能ブロックを実線にて示している。この場合、CPU5は、第9の受信用ミキサ23及び第10の受信用ミキサ24の動作を一時的に無効とし、第1の受信系統58を1段の周波数変換とすることで、第1の受信系統58と第2の受信系統59とを同一の構成としており、第2地域のWAVEシステムの700[MHz]帯の無線信号を第1の受信系統58及び第2の受信系統59の2つの受信系統によりダイバーシティ受信させる。
【0059】
以上に説明したように本実施形態によれば、5.9[GHz]帯の第1地域のWAVEシステムに対応する場合には、第1地域のWAVEシステムの無線信号を第1の受信系統58及び第2の受信系統59によりダイバーシティ受信すると共に、第1地域のWAVEシステムの無線信号を送信系統60から送信し、一方、700[MHz]帯の第2地域のWAVEシステム及び5.8[GHz]帯の第2地域のDSRCシステムに対応する場合には、第2地域のWAVEシステムの無線信号を第2の受信系統59により受信し、第2地域のDSRCシステムの無線信号を第1の受信系統58により受信すると共に、第2地域のWAVEシステムの無線信号と第2地域のDSRCシステムの無線信号を送信系統60から時分割で切換えて送信するようにした。これにより、第1地域及び第2地域の何れで使用される場合でも冗長な構成を抑えることができ、低コスト化を実現することができる。
【0060】
又、無線通信機が第2地域で使用される場合に、第2地域のWAVEシステムの無線信号を送信可能な状態で第2地域のDSRCシステムの無線信号を受信すると、その第2地域のDSRCシステムの無線信号に対応する中間周波数信号を復調した後に、第2地域のWAVEシステムの無線信号を送信可能な状態から第2地域のDSRCシステムの無線信号を送信可能な状態に切換えるようにした。これにより、送信可能な状態を切換える期間内でクロック同期を確立する期間を必要とすることなく、第2地域のWAVEシステムの無線信号を送信可能な状態から第2地域のDSRCシステムの無線信号を送信可能な状態に即座に切換えることができる。即ち、常には広域な第2地域のWAVEシステムの無線信号を送信可能な状態としておくことができ、狭域な第2地域のDSRCシステムのエリアに進入した場合に限って、第2地域のWAVEシステムの無線信号を送信可能な状態から第2地域のDSRCシステムの無線信号を送信可能な状態に即座に切換えることができる。
【0061】
又、第2地域のDSRCシステムの無線信号を送信可能な状態で第2地域のDSRCシステムの無線信号の送受信を完了した後に、第2地域のDSRCシステムの無線信号を送信可能な状態から第2地域のWAVEシステムの無線信号を送信可能な状態に切換えるようにした。これにより、狭域な第2地域のDSRCシステムのエリアから退出すると、第2地域のDSRCシステムの無線信号を送信可能な状態から第2地域のWAVEシステムの無線信号を送信可能な状態に即座に切換えることができ、初期の状態(第2地域のWAVEシステムの無線信号を送信可能な状態)に即座に復帰することができる。
【0062】
本発明は、上記した実施形態にのみ限定されるものではなく、以下のように変形又は拡張することができる。
安全運転支援を行うためのDSSSMAC63が省略された構成であっても良い。
【符号の説明】
【0063】
図面中、1は統合無線用LSI、2は無線処理部、3はベースバンド処理部、58は第1の受信系統、59は第2の受信系統、60は送信系統、61はWAVEモデム(第1の無線通信システム用モデム)、62はDSRCモデム(第2の無線通信システム用モデム)、67は周波数変換手段である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信網から無線信号を受信する受信系統として第1の受信系統及び第2の受信系統の2つの受信系統と、無線信号を通信網へ送信する送信系統として1つの送信系統と、を有する無線処理部と、
第1の無線通信システムの中間周波数信号を処理する第1の無線通信システム用モデムと、第2の無線通信システムの中間周波数信号を処理する第2の無線通信システム用モデムと、を有するベースバンド処理部と、を備え、
無線処理部は、第1地域で使用される1つの第1地域無線通信システムに対応する第1地域対応時には、前記第1地域無線通信システムの無線信号を第1の受信系統及び第2の受信系統の2つの受信系統によりダイバーシティ受信し、前記第1地域無線通信システムの無線信号を1つの送信系統により送信し、第1地域とは異なる第2地域で使用される使用周波数帯域が互いに異なる第1の第2地域無線通信システム及び第2の第2地域無線通信システムの2つの第2地域無線通信システムに対応する第2地域対応時には、前記第1の第2地域無線通信システムの無線信号を第2の受信系統により受信し、前記第2の第2地域無線通信システムの無線信号を第1の受信系統により受信し、前記第1の第2地域無線通信システムの無線信号と前記第2の第2地域無線通信システムの無線信号とを1つの送信系統により時分割で切換えて送信し、
前記ベースバンド処理部は、中間周波数信号を周波数変換する周波数変換手段を有し、前記第1地域対応時には、第1の受信系統及び第2の受信系統の2つの受信系統によりダイバーシティ受信された無線信号が周波数変換された中間周波数信号を前記第1の無線通信システム用モデムにて処理し、前記第2地域対応時であって前記第1の第2地域無線通信システムの無線信号の送信時には、第2の受信系統により受信された無線信号が周波数変換された中間周波数信号を前記第1の無線通信システム用モデムにて処理し、第1の受信系統により受信された無線信号が周波数変換された中間周波数信号を前記周波数変換手段により周波数変換した後に前記第2の無線通信システム用モデムにて処理し、前記第2地域対応時であって前記第2の第2地域無線通信システムの無線信号の送信時には、第1の受信系統により受信された無線信号が周波数変換された中間周波数信号を前記第2の無線通信システム用モデムにて処理し、第2の受信系統により受信された無線信号が周波数変換された中間周波数信号を前記周波数変換手段により周波数変換した後に前記第1の無線通信システム用モデムにて処理することを特徴とする無線通信機。
【請求項2】
請求項1に記載した無線通信機において、
前記無線処理部は、前記第1の第2地域無線通信システムの無線信号を送信可能な状態で前記第2の第2地域無線通信システムの無線信号を受信し、その無線信号に対応する中間周波数信号を復調した後に、前記第1の第2地域無線通信システムの無線信号を送信可能な状態から前記第2の第2地域無線通信システムの無線信号を送信可能な状態に切換えることを特徴とする無線通信機。
【請求項3】
請求項2に記載した無線通信機において、
前記無線処理部は、前記第2の第2地域無線通信システムの無線信号を送信可能な状態で前記第2の第2地域無線通信システムの無線信号の送受信を完了した後に、前記第2の第2地域無線通信システムの無線信号を送信可能な状態から前記第1の第2地域無線通信システムの無線信号を送信可能な状態に切換えることを特徴とする無線通信機。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載した無線通信機において、
前記無線処理部は、前記第2地域対応時には、前記第2の第2地域無線通信システムの無線信号を第1の受信系統により受信することに代えて、前記第1の第2地域無線通信システムの無線信号を第1の受信系統及び第2の受信系統の2つの受信系統によりダイバーシティ受信することが可能であることを特徴とする無線通信機。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかに記載した無線通信機において、
前記第1無線通信システムとして車々間通信や路車間通信をアプリケーションとするシステムに対応し、前記第2の無線通信システムとして電子料金収受システムをアプリケーションとするシステムに対応することを特徴とする無線通信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−98766(P2013−98766A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240171(P2011−240171)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】