説明

無線通信端末およびQoS情報収集方法

【課題】 端末リソースや無線リソースの消費量を低減し、ネットワークへの負荷を低減する。
【解決手段】 他機存在確認部11は、確認メッセージを定期的にブロードキャストして応答メッセージを受信する。トポロジ情報管理部12は、他機から定期的に受信するネットワークのトポロジ情報に基づいて自機が属するネットワーク全体のトポロジを計算する。経路管理部13は、送信先の携帯電話機までの最適な経路を導出する。QoS情報収集部14は、通信開始要請命令が出され、かつQoS情報収集要請命令が出された場合に、QoS要請パケットを経路上にユニキャストして返信用QoS要請パケットを受信する。判定部15は、QoS情報が所定の品質基準を満たしている場合に通信用の経路として採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信端末およびQoS情報収集方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アドホックネットワークは、携帯型情報端末(PDA)、パーソナルコンピュータ、携帯電話機等の無線通信端末と各無線通信端末間のリンクによって構成される。このアドホックネットワークには、無線通信端末を管理する基地局やアクセスポイント等が存在しない。したがって、通信を開始する前に、各無線通信端末ではルーティングが必要となる。このルーティングによって、通信先の無線通信端末がどこにいて、この端末と通信するために、どの無線通信端末を経由すればよいのかが決定される。このようなルーティングを行うためのプロトコルとして、例えば、プロアクティブ型のルーティングプロトコルがある。
【0003】
プロアクティブ型のルーティングプロトコルでは、各無線通信端末が、ネットワーク上の他の無線通信端末までの経路情報を格納するためのルーティングテーブルを持つ。ここで、ルーティングテーブルに格納される経路情報は、例えば、以下のようにして求められる。まず、各無線通信端末間で定期的に交換されるトポロジ情報に基づいて、ネットワークの接続形態であるトポロジが求められる。次に、このトポロジに基づいて、他の無線通信端末までの経路情報が求められる。このような経路情報が格納されたルーティングテーブルを用いることによって、各無線通信端末では、通信の有無にかかわらず、各送信先までの経路を常時把握することができる。
【0004】
このようなアドホックネットワークでは、有線ネットワークと異なり、リンクの状態が随時変化するため、これに伴ってバンド幅(Bandwidth)や遅延(Delay)等の通信品質も随時変化する。したがって、高い通信品質が要求されるアドホックネットワークでは、リンクの存在情報とともに、リンクのQoS(Quality of Service)情報を各無線通信端末間で交換する必要がある。
【0005】
プロアクティブ型のルーティングプロトコルを用いてQoS情報を交換する場合には、トポロジ情報に含まれるリンクの存在情報に、そのリンクのQoS情報をさらに追加した上で、このトポロジ情報を各無線通信端末間で定期的に交換する(下記非特許文献1および2参照)。これにより、各無線通信端末では、送信先までの経路を構築することができるとともに、その経路の品質を判断することができる。したがって、送信先までの経路が複数存在する場合には、最適な品質を有する経路を選択して通信することが可能となる。
【非特許文献1】Hakim Badis, Anelise Munaretto, Khaldoun Al Agha and Guy Pujolle, ”QoS for Ad-hoc Networking Based on Multiple Metrics: Bandwidth andDelay“, In the Proceedings of the 5thIFIP TC6 International Conference on Mobile and WirelessCommunication Networks (MWCN’03), IEEE, Singapore,October 2003.
【非特許文献2】Ying Ge, Thomas Kunz and Louise Lamont, “Quality of Service Routing in Ad-hoc Networks Using OLSR”, In the Proceedings of the 36th Hawaii InternationalConference on System Sciences (HICSS’03), IEEE,2003.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、プロアクティブ型のルーティングプロトコルを用いてQoS情報を交換する場合には、定期的に交換されるトポロジ情報に、リンクのQoS情報がさらに追加されるため、CPU、メモリ等の端末リソースや、通信帯域等の無線リソースの消費量が増大してしまい、ネットワークへの負荷が増大する。
【0007】
そこで、本発明は、上述した課題を解決するために、端末リソースや無線リソースの消費量を低減し、ネットワークへの負荷を低減させることができる無線通信端末およびQoS情報収集方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の無線通信端末は、自端末と相互に直接無線通信することが可能な他の無線通信端末の存在を確認する他端末存在確認手段と、他端末存在確認手段により確認された他の無線通信端末に関する情報および当該他の無線通信端末から受信するネットワークのトポロジ情報を管理するトポロジ情報管理手段と、トポロジ情報管理手段により管理されるトポロジ情報に基づいて、送信先までの最適な経路を導出する経路導出手段と、経路導出手段により導き出された経路上のQoS情報を収集するように要請する収集要請命令を受信した場合に、少なくとも経路上の一部におけるQoS情報を収集するQoS情報収集手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明のQoS情報収集方法は、無線通信端末が、自端末と相互に直接無線通信することが可能な他の無線通信端末の存在を確認する他端末存在確認ステップと、他端末存在確認ステップにおいて確認された他の無線通信端末に関する情報および当該他の無線通信端末から受信するネットワークのトポロジ情報を管理するトポロジ情報管理ステップと、トポロジ情報管理ステップにおいて管理されるトポロジ情報に基づいて、送信先までの最適な経路を導出する経路導出ステップと、経路導出ステップにおいて導き出された経路上のQoS情報を収集するように要請する収集要請命令を受信した場合に、少なくとも経路上の一部におけるQoS情報を収集するQoS情報収集ステップと、を備えることを特徴とする。
【0010】
これらの発明によれば、自端末と相互に直接無線通信することが可能な他の無線通信端末、いわゆる一ホップネイバーの存在を的確に把握させることができ、この一ホップネイバーからネットワークのトポロジ情報を受信させることができる。したがって、ネットワーク全体の接続形態を常時把握させることが可能となる。また、受信したトポロジ情報に基づいて、送信先までの最適な経路を導出させることができる。したがって、送信先までの経路のうち、最適な経路のみを管理させることが可能となる。また、QoS情報の収集要請命令を受信した場合にのみ、経路上の全部または一部におけるQoS情報を収集させることができる。したがって、必要なときにのみ、QoS情報を収集させることが可能となる。すなわち、本発明によれば、必要なときに限り、必要な経路上のみのQoS情報を収集させることが可能となる。それゆえに、ネットワーク上の各通信端末におけるQoS情報の計算量や、各通信端末間におけるQoS情報の交換量、伝搬量を抑制することができ、ひいては、端末リソースや無線リソースの消費量を低減させ、ネットワークへの負荷を低減させることができる。
【0011】
本発明の無線通信端末において、上記QoS情報収集手段は、経路導出手段により導き出された経路上に、少なくとも収集の対象となるQoS項目が格納されたパケットを送信するとともに、少なくともQoS項目に対応するQoS情報が格納されたパケットを当該経路上から受信することにより、QoS情報を収集することが好ましい。このようにすれば、所望のQoS項目に対応するQoS情報を効率良く収集させることができる。
【0012】
本発明の無線通信端末において、上記QoS情報収集手段により収集されたQoS情報が、所定の品質基準を満たしている場合に、当該QoS情報に対応する経路を採用する経路採用手段を、さらに備えることが好ましい。このようにすれば、所定の品質基準を満たした無線通信環境を提供することが可能になる。
【0013】
本発明の無線通信端末において、上記QoS情報収集手段は、経路導出手段により複数の経路が導き出された場合に、当該複数の経路上におけるQoS情報をそれぞれ収集することが好ましい。このようにすれば、複数の経路を用いて通信をする場合であっても、通信に要する経路上のQoS情報のみを収集させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る無線通信端末およびQoS情報収集方法によれば、端末リソースや無線リソースの消費量を低減し、ネットワークへの負荷を低減せることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る無線通信端末およびQoS情報収集方法の実施形態を図面に基づき説明する。なお、各図において、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0016】
図1は、実施形態におけるアドホックネットワーク1の構成を例示する図である。図1に示すように、アドホックネットワーク1は、ノードである携帯電話機10と、各携帯電話機10間のリンク20とを有する。リンク20は、双方向リンクである。リンク20の両端にある携帯電話機10は、相互に直接無線通信することができる。一のリンク20を、一ホップ(one hop)といい、直接無線通信することが可能な携帯電話機を、一ホップネイバー(one hop neighbor)という。リンク20が存在しない携帯電話機間では、相互に直接無線通信することができない。
【0017】
なお、本実施形態においては、無線通信端末の具体例として携帯電話機10を用いて説明するが、無線通信端末の具体例はこれに限られない。無線通信端末は、例えば、簡易型携帯電話機(PHS)、無線通信機能を有する携帯型情報端末(PDA)等の移動通信端末や、無線通信機能を有するパーソナルコンピュータ等の固定通信端末、無線通信機能を有するプリンター等の電子機器であってもよい。
【0018】
次に、図2を参照して、本実施形態における携帯電話機10の機能構成について説明する。図2に示すように携帯電話機10は、他機存在確認部11(他端末存在確認手段)と、トポロジ情報管理部12(トポロジ情報管理手段)と、経路管理部13(経路導出手段)と、QoS情報収集部14(QoS情報収集手段)と、判定部15(経路採用手段)とを有する。
【0019】
他機存在確認部11は、自機と相互に直接無線通信することが可能な他の携帯電話機の存在を確認する。具体的に説明すると、他機存在確認部11は、周辺に存在する全ての他機に対して確認メッセージを、定期的(例えば、2秒ごと)にブロードキャストする。確認メッセージとしては、例えば、HELLO Packetが該当する。他機存在確認部11は、ブロードキャストした確認メッセージに対する応答メッセージを受信する。この応答メッセージには、返信元の携帯電話機を一意に特定するためのIDが含まれている。これにより、携帯電話機10では、一ホップネイバーとなる他機の存在を確認することができる。なお、確認メッセージと応答メッセージを交換する方法や頻度は、上述した方法や頻度には限定されない。要するに、一ホップネイバーとなる他機の存在を確認することができれば、どのような方法や頻度であってもよい。ただし、頻度を増やすことによって一ホップネイバーの変化をより的確に把握させることができ、頻度を減らすことによって端末リソースや無線リソースの消費量をより低減させることができる。
【0020】
トポロジ情報管理部12は、他機存在確認部11により確認された他の携帯電話機に関する情報および当該他の携帯電話機から定期的に受信するネットワークのトポロジ情報に基づいて、自機が属するネットワーク全体の接続形態を表すトポロジを計算してメモリに格納する。他の携帯電話機に関する情報としては、例えば、他機のIDが該当する。ネットワークのトポロジ情報としては、例えば、他機における一ホップネイバーに関する情報が該当する。このように、他機との間で定期的にトポロジ情報を交換しながらネットワークのトポロジを計算して管理するプロトコルとしては、例えば、OLSR(Optimized Link State Routing Protocol)やTBRPF(Topology Dissemination Based onReverse-Path Forwarding)がある。
【0021】
なお、OLSRについては、参考文献1(T.Clausen and P.Jacquet, “Optimized Link StateRouting Protocol(OLSR)”, RFC3626, October, 2003, http://ftp.jaist.ac.jp/pub/Internet/RFC.pdf/rfc3626.txt.pdf)を参照し、この内容を本願の開示内容に組み込む。また、TBRPFについては、参考文献2(R.Ogier, F.Templin and M.Lewis ”Topology Dissemination Based on Reverse-Path Forwarding (TBRPF)”, RFC3684, February, 2004, http://ftp.jaist.ac.jp/pub/Internet/RFC.pdf/rfc3684.txt.pdf)を参照し、この内容を本願の開示内容に組み込む。
【0022】
経路管理部13は、トポロジ情報管理部12によって計算されたトポロジに基づいて、送信先の携帯電話機までの最適な経路を導きだし、この導き出された経路に基づいてルーティングテーブル18を管理する。具体的に説明すると、まず、経路管理部13は、上記トポロジに基づいて、送信先別に経路を導出する。次に、経路管理部13は、導出した経路のうち、送信先までのリンク数が最小となる経路を、その送信先までの最適な経路として選定する。次に、経路管理部13は、選定した最適な経路に基づいてルーティングテーブル18を作成または更新する。
【0023】
ここで、図3を参照して、ルーティングテーブル18のデータ構成について説明する。ルーティングテーブル18は、データ項目として、例えば、送信先、Next hopを有する。送信先には、通信相手先となる携帯電話機を一意に特定するためのIDが格納される。Next hopには、一ホップネイバーのうち、送信先との経路上にある携帯電話機を一意に特定するためのIDが格納される。すなわち、Next hopには、送信先までの最適な経路上にある携帯電話機のうち、送信先と通信をするときに最初に経由することになる携帯電話機のIDが格納される。
【0024】
経路管理部13は、他機存在確認部11により確認された他の携帯電話機に関する情報、またはトポロジ情報管理部12によって計算されるトポロジに変更が生じるたびに、ルーティングテーブル18の内容を更新する。これにより、ルーティングテーブル18は、他の携帯電話機までの最新の経路情報を格納することが可能となる。
【0025】
QoS情報収集部14は、通信を開始するように要請する通信開始要請命令を受信し、かつ、経路上のQoS情報を収集するように要請する収集要請命令を受信した場合に、経路管理部13によって導き出された経路上におけるQoS情報を収集する。通信開始要請命令は、データ通信または制御信号通信用に通信相手先までの経路が必要になったときに、アプリケーションの要請により、端末内で出力される命令である。収集要請命令は、上述した通信開始要請命令とともに端末内で出力される命令である。
【0026】
QoS情報の収集方法について、以下に説明する。まず、QoS情報収集部14は、図4に示すQoS要請パケットを、経路管理部13によって導き出された経路上にユニキャストする。
【0027】
図4に示すQoS要請パケットには、送信先の携帯電話機のアドレスと、送信元の携帯電話機のアドレスとが格納されるとともに、収集の対象となる一または複数のQoS項目が格納される。QoS項目としては、例えば、バンド幅、遅延、リンクエラー率がある。収集の対象となるQoS項目は、通信アプリケーション側で任意に設定される。
【0028】
次に、QoS要請パケットを受信した経路上の各携帯電話機は、QoS要請パケットの所定の格納場所に、各携帯電話機において計算されたQoS情報を格納する。
【0029】
次に、QoS要請パケットが、送信先の携帯電話機に到着すると、図5に示す返信用QoS要請パケットが、送信元の携帯電話機宛に返信される。図5に示す返信用QoS要請パケットには、送信先の携帯電話機のアドレスと、送信元の携帯電話機のアドレスとが格納されるとともに、経路上の各リンクにおける上記QoS項目に対応するQoS情報が格納される。なお、返信用QoS要請パケットの送信先と送信元には、それぞれQoS要請パケットの送信元の携帯電話機のアドレスと送信先の携帯電話機のアドレスが格納される。
【0030】
次に、返信用QoS要請パケットを送信元の携帯電話機が受信する。これにより、送信元の携帯電話機は、経路上のQoS情報を収集することができる。このようなQoS要請パケットを用いてQoS情報を収集することによって、所望のQoS項目に対応するQoS情報を効率良く収集することができる。
【0031】
判定部15は、QoS情報収集部14により収集されたQoS情報が、所定の品質基準を満たしているか否かを判定する。判定部15は、QoS情報が、所定の品質基準を満たしていると判定した場合には、経路管理部13によって導き出された経路を、通信時の経路に採用する。一方、判定部15は、QoS情報が、所定の品質基準を満たしていないと判定した場合には、経路管理部13に別の経路を導き出すように要請する経路要請命令を送出する。これにより、所定の品質基準を満たした無線通信環境をユーザに提供することが可能となる。
【0032】
次に、図6を参照して、本実施形態における携帯電話機10において行われるQoS収集処理を含むルーティング処理の流れについて説明する。
【0033】
まず、携帯電話機10の他機存在確認部11は、周辺に存在する全ての他機に対して確認メッセージを、定期的にブロードキャストする(ステップS1)。他機存在確認部11は、ブロードキャストした確認メッセージに対する応答メッセージを受信する(ステップS2)。
【0034】
次に、トポロジ情報管理部12は、他機存在確認部11により確認された他の携帯電話機に関する情報および当該他の携帯電話機から定期的に受信するネットワークのトポロジ情報に基づいて、自機が属するネットワーク全体の接続形態を表すトポロジを計算し、交換する(ステップS3)。
【0035】
次に、経路管理部13は、トポロジ情報管理部12によって計算されたトポロジに基づいて、最適な経路を導出し(ステップS4)、この導出された経路に基づいてルーティングテーブル18を作成または更新する(ステップS5)。
【0036】
上述したステップS1〜S5までの処理は、以下で説明する処理が実行されるか否かにかかわらず、繰り返し行われる。
【0037】
次に、経路管理部13は、通信を開始するように要請する通信開始要請命令が出力された場合(ステップS6;YES)に、QoS情報収集部14は、経路上のQoS情報を収集するように要請する収集要請命令が出力されたか否かを判定する(ステップS7)。この判定がNOである場合(ステップS7;NO)には、処理を後述するステップS11に移行する。
【0038】
一方、ステップS7における判定で、収集要請命令が出力されたと判定された場合(ステップS7;YES)に、QoS情報収集部14は、QoS要請パケットを、経路管理部13によって導き出された経路上にユニキャストする(ステップS8)。
【0039】
次に、QoS情報収集部14は、経路上の各携帯電話機によってQoS情報が格納された返信用QoS要請パケットを受信する(ステップS9)。
【0040】
次に、判定部15は、QoS情報収集部14により収集されたQoS情報が、所定の品質基準を満たしているか否かを判定する(ステップS10)。
【0041】
この判定がNOである場合(ステップS10;NO)に、判定部15は、別の経路を導き出すように要請する経路要請命令を経路管理部13に送出して、上述したステップS7に処理を移行する。
【0042】
一方、ステップS10における判定で、QoS情報が、所定の品質基準を満たしていると判定された場合(ステップS10;YES)に、判定部15は、経路管理部13によって導き出された経路を、通信用の経路として採用する(ステップS11)。
【0043】
以上のように、本実施形態における携帯電話機10によれば、自機と相互に直接無線通信することが可能な他機、いわゆる一ホップネイバーの存在を的確に把握させることができ、この一ホップネイバーからネットワークのトポロジ情報を受信することができる。したがって、ネットワーク全体の接続形態を常時把握させることが可能となる。また、受信したトポロジ情報に基づいて、送信先までの最適な経路を導出させることができる。したがって、送信先までの経路のうち、最適な経路のみを管理させることが可能となる。また、QoS情報の収集要請命令が出された場合にのみ、経路上のQoS情報を収集させることができる。したがって、必要なときにのみ、QoS情報を収集させることが可能となる。すなわち、本発明によれば、必要なときに限り、最適な経路上、すなわちルーティングテーブル18に格納されている経路上のみのQoS情報を収集させることが可能となる。それゆえに、ネットワーク上の各携帯電話機10におけるQoS情報の計算量や、各携帯電話機10間におけるQoS情報の交換量、伝搬量を抑制することができ、ひいては、端末リソースや無線リソースの消費量を低減させ、ネットワークへの負荷を低減させることができる。
【0044】
なお、上述した実施形態においては、送信先までの経路が一である場合について説明しているが、本願発明は、送信先までの経路が複数ある場合にも適用できる。図7および図8を参照して、送信先までの経路が複数ある場合について説明する。図7は、本変形例におけるアドホックネットワーク2の構成を例示する図である。図8は、本変形例におけるルーティングテーブルのデータ構成を例示する図であり、図7に示す携帯電話機“A”のルーティングテーブルの内容を例示するものである。本変形例における経路管理部13は、トポロジ情報管理部12によって計算されたトポロジに基づいてルーティングテーブルを以下のようにして作成または更新する。まず、経路管理部13は、トポロジに基づいて、送信先別に経路を導出する。次に、経路管理部13は、導出した経路のうち、送信先までのリンク数が最小となる経路から順に、所定の規定数に収まる複数の経路を、その送信先までの最適な経路として選定する。経路管理部13は、選定した各経路に基づいてルーティングテーブルを作成または更新する。ここで、図8に示すルーティングテーブルの内容について説明する。例えば、送信先の携帯電話機が“F”である場合には、“A”と“C”との間にあるリンクをNext hopとする経路、“A”と“B”との間にあるリンクをNext hopとする経路、および“A”と“D”との間にあるリンクをNext hopとする経路の三経路が、携帯電話機“A”から携帯電話機“F”への最適な経路として導出されたことを表す。この場合に、本変形例におけるQoS情報収集部14は、これら三経路上におけるQoS情報をそれぞれ収集することになる。また、本変形例における判定部15は、QoS情報収集部14により収集されたそれぞれのQoS情報が、所定の品質基準を満たしているか否かをそれぞれ判定することになる。これにより、複数の経路を用いて通信をする場合であっても、通信に要する経路上のQoS情報のみを収集させることが可能となる。
【0045】
また、上述した実施形態におけるQoS情報収集部14は、経路管理部13により導き出された経路上の全てのリンクにおけるQoS情報を収集しているが、これに限定されない。例えば、経路管理部13により導き出された経路上の一部のリンクにおけるQoS情報のみを収集することとしてもよい。具体的には、例えば、収集されたQoS情報をメモリに格納しておき、メモリにQoS情報が格納されていないリンクについてのみQoS情報を収集することとしてもよい。これにより、端末リソースや無線リソースの消費量、およびネットワークへの負荷をさらに低減させることができる
【0046】
また、上述した実施形態における判定部15は、QoS情報が所定の品質基準を満たしていないと判定した場合に、別の経路を導き出すように要請する経路要請命令を、経路管理部13宛に送出しているが、これに限定されない。例えば、QoS情報が所定の品質基準を満たしていないと判定した場合に、品質基準のレベルを下げて、再度、QoS情報が所定の品質基準を満たしているか否かを判定することとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】実施形態におけるアドホックネットワークのネットワーク構成を例示する図である。
【図2】図1に示す携帯電話機の機能構成を例示するブロック図である。
【図3】ルーティングテーブルのデータ構成を例示する図である。
【図4】QoS要請パケットの構成を例示する図である。
【図5】返信用QoS要請パケットの構成を例示する図である。
【図6】ルーティング処理の流れを例示するフローチャートである。
【図7】変形例におけるアドホックネットワークのネットワーク構成を例示する図である。
【図8】変形例におけるルーティングテーブルのデータ構成を例示する図である。
【符号の説明】
【0048】
1・・・アドホックネットワーク、10・・・携帯電話機、11・・・他機存在確認部、12・・・トポロジ情報管理部、13・・・経路管理部、14・・・情報収集部、15・・・判定部、18・・・ルーティングテーブル、20・・・リンク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自端末と相互に直接無線通信することが可能な他の無線通信端末の存在を確認する他端末存在確認手段と、
前記他端末存在確認手段により確認された前記他の無線通信端末に関する情報および当該他の無線通信端末から受信するネットワークのトポロジ情報を管理するトポロジ情報管理手段と、
前記トポロジ情報管理手段により管理される前記トポロジ情報に基づいて、送信先までの最適な経路を導出する経路導出手段と、
前記経路導出手段により導き出された前記経路上のQoS(Quality of Service)情報を収集するように要請する収集要請命令を受信した場合に、少なくとも前記経路上の一部におけるQoS情報を収集するQoS情報収集手段と、
を備えることを特徴とする無線通信端末。
【請求項2】
前記QoS情報収集手段は、前記経路導出手段により導き出された前記経路上に、少なくとも収集の対象となるQoS項目が格納されたパケットを送信するとともに、少なくとも前記QoS項目に対応するQoS情報が格納されたパケットを当該経路上から受信することにより、前記QoS情報を収集することを特徴とする請求項1記載の無線通信端末。
【請求項3】
前記QoS情報収集手段により収集された前記QoS情報が、所定の品質基準を満たしている場合に、当該QoS情報に対応する前記経路を採用する経路採用手段を、さらに備えることを特徴とする請求項1または2記載の無線通信端末。
【請求項4】
前記QoS情報収集手段は、前記経路導出手段により複数の前記経路が導き出された場合に、当該複数の前記経路上におけるQoS情報をそれぞれ収集することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の無線通信端末。
【請求項5】
無線通信端末が、
自端末と相互に直接無線通信することが可能な他の無線通信端末の存在を確認する他端末存在確認ステップと、
前記他端末存在確認ステップにおいて確認された前記他の無線通信端末に関する情報および当該他の無線通信端末から受信するネットワークのトポロジ情報を管理するトポロジ情報管理ステップと、
前記トポロジ情報管理ステップにおいて管理される前記トポロジ情報に基づいて、送信先までの最適な経路を導出する経路導出ステップと、
前記経路導出ステップにおいて導き出された前記経路上のQoS情報を収集するように要請する収集要請命令を受信した場合に、少なくとも前記経路上の一部におけるQoS情報を収集するQoS情報収集ステップと、
を備えることを特徴とするQoS情報収集方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−74011(P2007−74011A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−255329(P2005−255329)
【出願日】平成17年9月2日(2005.9.2)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】