説明

無線通信装置

【課題】 簡素な構成でノイズによる誤キャリアセンスの発生を判定可能とすることにより、内部電池の不要な消耗を抑制して長寿命化を図ることができる無線通信装置を提供する。
【解決手段】 無線通信装置は、キャリアセンスおよび無線通信を行う送受信部11と、当該送受信部11により行われたキャリアセンスの回数を計数するキャリアセンス計数部121と、当該キャリアセンス計数部121で計数された回数が予め設定された判定基準回数を超えていれば、誤キャリアセンスが発生していると判定する誤キャリアセンス判定部122とを備えている。キャリアセンスの回数は、受信信号の復調開始の回数であってもよいし、受信信号の復調を開始し、当該受信信号が自機宛の信号でないことを判定した回数であってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システム等に用いられ、ノイズによる誤キャリアセンスの発生を判定可能とする無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムを構成する無線通信装置としては、典型的には、データ収集を行う無線親機、無線親機にデータを送信する無線子機、必要に応じて、無線親機と無線子機との通信を中継する無線中継機が挙げられる。このうち、無線子機または無線中継機は、特定のチャネルを用いた無線通信とサブチャネルを用いた無線通信が可能となっている。
【0003】
このような無線通信装置においては、メインチャネルの使用中にサブチャネルに自動的に切り替えることができる技術が提案されている。例えば、特許文献1には、メインチャネルに対してキャリアセンスを行い、メインチャネルのチャネル周波数を有する受信信号の強度が閾値以下の場合、メインチャネルが使用可能であると判定し、当該受信信号の強度が閾値を超えている場合には、メインチャネルが使用中であると判定して、サブチャネルに自動的に切り替える構成の無線通信機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−290799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1に開示の技術では、メインチャネルおよびサブチャネルにまたがるノイズが生じている環境下では、適切なキャリアセンスを行うことができない。この場合、例えば、通信状況を確認するために頻繁にキャリアセンスが繰り返されてしまう。前記無線通信装置のうち無線子機等には、電源部として内部電池を備えている構成のものがあり、このような無線通信装置であれば、頻繁なキャリアセンスにより内部電池のが消耗し、通信可能状態が短くなる(低寿命化する)おそれがある。
【0006】
ここで、メインチャネルおよびサブチャネルにまたがるノイズが存在していることを事前に確認できれば、適切なキャリアセンスが可能なように無線通信装置の設置場所を変更することができる。ところが、前記ノイズの存在に気付かなければ、無線通信装置の設置後、内部電池が消耗して通信ができない状態に追い込まれてから、当該ノイズの存在に気付くこともあり得る。この場合、無線通信装置の交換、再設置等が必要となり、メンテナンスの煩雑化、コスト増加等を招くことになる。
【0007】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであって、簡素な構成でノイズによる誤キャリアセンスの発生を判定可能とすることにより、内部電池の不要な消耗を抑制して長寿命化を図ることができる無線通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る無線通信装置は、前記の課題を解決するために、キャリアセンスおよび無線通信を行う送受信部と、当該送受信部により行われたキャリアセンスの回数を計数するキャリアセンス計数部と、当該キャリアセンス計数部で計数された回数が予め設定された判定基準回数を超えていれば、誤キャリアセンスが発生していると判定する誤キャリアセンス判定部と、を備えている構成である。
【0009】
前記構成においては、前記キャリアセンス計数部は、受信信号の復調開始の回数を計数するよう構成されてもよいし、前記キャリアセンス計数部は、受信信号の復調を開始し、当該受信信号が自機宛の信号でないことを判定した回数を計数するよう構成されてもよい。
【0010】
また、前記構成においては、制御部および表示部をさらに備え、前記制御部は、前記誤キャリアセンス判定部により誤キャリアセンスの発生が判定されたときに、前記表示部に警告情報を表示させる構成であってもよい。
【0011】
また、前記構成においては、スイッチ部をさらに備え、前記制御部は、前記スイッチ部が操作されたときに、前記送受信部にキャリアセンスを行わせ、前記誤キャリアセンス判定部に判定を行わせるよう構成されてもよい。
【0012】
また、前記構成においては、内蔵電池を含む電源部をさらに備え、前記制御部は、前記誤キャリアセンス判定部により誤キャリアセンスの発生が判定されたときに、少なくとも、前記電源部から前記送受信部への電力供給を遮断するよう構成されてもよい。
【0013】
また、本発明に係る無線通信装置は、データ収集を行う無線親機に対してデータを取得して送信する無線子機、または、前記無線親機および前記無線子機の間の通信を中継する無線中継機であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明に係る無線通信装置は、簡素な構成でノイズによる誤キャリアセンスの発生を判定可能とすることにより、内部電池の不要な消耗を抑制して長寿命化を図ることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)は、本発明の実施の形態に係る無線通信装置を含む無線通信システムの一例を示す模式図であり、(b)は、(a)に示す無線通信システムの無線子機または無線中継機で行われるキャリアセンスの制御の一例を示すフローチャートである。
【図2】図1に示す無線通信システムの無線子機または無線中継機に対応する、無線通信装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図3】図2に示す無線通信装置で行われる誤キャリアセンスを判定する制御の一例を示すフローチャートである。
【図4】図2に示す無線通信装置で行われる誤キャリアセンスを判定する制御の他の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0017】
[無線通信システムおよびキャリアセンス]
本発明の実施の形態に係る無線通信装置が用いられる無線通信システムと、当該システムを構成する無線子機等が行うキャリアセンスについて、図1(a),(b)を参照して具体的に説明する。
【0018】
図1(a)に示すように、本実施の形態に係る無線通信システムは、無線親機101、無線中継機102、および無線子機103から構成されている。無線親機101は、データ収集を行い、図示しないホストコンピュータ等に収集したデータを出力する。無線中継機102は、無線親機101および無線子機103の間の通信を中継する。無線子機103は、データを取得して無線親機101に送信する。本実施の形態では、無線子機103は、図1には図示しないガスメータに接続されており、ガス配管内のガス流量を取得して無線親機101に送信する。なお、無線通信システムの使用条件等に応じて、無線中継機102は当該システムに含まれていなくてもよい。
【0019】
前記構成の無線通信システムにおいては、無線子機103は、無線親機101および無線中継機102との間でキャリアセンスを行う。また、無線中継機102は、無線親機101との間でキャリアセンスを行う。このキャリアセンスの制御について具体的に説明すると、図1(b)に示すように、無線親機101(または無線中継機102)との間で予め設定されている通信チャネルにおいて閾値以上の信号を受信したか否かを判定する(ステップS101)。受信した信号が閾値未満であれば(ステップS101でNO)、信号の受信判定を繰り返す。
【0020】
一方、受信した信号が閾値以上であれば(ステップS101でYES)、受信信号の復調を開始する(ステップS102)。そして、復調された信号が自機宛の信号か否かを判定する(ステップS103)。自機宛でなければ(ステップS103でNO)、復調を中止して(ステップS104)、信号の受信判定を繰り返す。自機宛であれば(ステップS103でYES)、復調データを受信して(ステップS105)キャリアセンス制御を終了する。
【0021】
[無線通信装置の構成]
次に、本実施の形態に係る無線通信装置、すなわち前記キャリアセンスを行う無線子機103または無線中継機102の要部構成について、図2を参照して具体的に説明する。なお、図2の構成例は、ガスメータ20に接続される無線子機103であるが、無線中継機102も同様の構成を有している。
【0022】
図2に示すように、本実施の形態に係る無線通信装置(無線子機103)は、送受信部11、制御部12、キャリアセンス計数部121、誤キャリアセンス判定部122、入出力部123、記憶部124、表示部13、スイッチ部14、および電源部15等を備えている。
【0023】
送受信部11は、無線親機101、無線中継機102等の他の無線通信装置との間で無線通信を行う。この無線通信には前述したキャリアセンスも含まれる。制御部12は、無線通信装置の全体制御をするものであり、送受信部11の無線通信およびキャリアセンスも制御する。したがって、図1(b)のフローチャートに示すキャリアセンス制御は制御部12によって行われる。
【0024】
キャリアセンス計数部121は、送受信部11により行われたキャリアセンスの回数を計数する。キャリアセンスの回数は、受信信号の復調開始の回数(図1(b)のステップS102の回数)であってもよいし、受信信号の復調を開始し、当該受信信号が自機宛の信号でないことを判定した回数(ステップS103でNOと判定された回数)であってもよい。なお、前者を「復調開始回数」と称し、後者を「誤キャリアセンス回数」と称する。誤キャリアセンス判定部122は、キャリアセンス計数部121で計数された回数が予め設定された判定基準回数を超えていれば、誤キャリアセンスが発生していると判定する。
【0025】
入出力部123は、ガスメータ20あるいは他の外部機器と接続され、当該外部機器とデータの入出力を行う。本実施の形態では、ガスメータ20で計測されたガス流量値を入力したり、ガスメータ20に対して種々の指令信号を出力したりする。記憶部124は、種々のデータを記憶可能としており、制御部12を介してデータの読み出しまたは書き込みが可能に構成されている。例えば、無線親機101または無線中継機102のIDデータ、自機のIDデータ、キャリアセンス判定のための受信信号の閾値、判定基準回数、種々のプログラム等が読み出し可能に記憶され、また、ガスメータ20から取得したガス流量値を記憶可能としている。
【0026】
表示部13は、例えばLEDランプ、あるいはセグメント型の小型液晶パネル等の消費電力の小さい表示器であり、制御部12の制御により種々の情報を表示可能となっている。スイッチ部14は、無線通信装置の電源のON/OFFを行うためのスイッチ、無線通信装置の特定の機能のON/OFFを行うためのスイッチ等で構成されており、特に本実施の形態では、電源のON/OFFと誤キャリアセンス判定のON/OFFとを兼用するスイッチとなっている。電源部15は、内蔵電池から構成されている。
【0027】
なお、無線通信装置の具体的構成は、図2および前述した構成例に限定されるものではなく、当該分野で公知の各種構成を好適に用いることができる。また、表示部13以外の報知部が設けられてもよいし、スイッチ部14は無くてもよい。
【0028】
[誤キャリアセンス判定]
次に、前述した無線通信装置で行われる誤キャリアセンス判定について、図3および図4を参照して具体的に説明する。まず、図3に示すキャリアセンス判定の制御について説明する。この制御は、キャリアセンスの回数として復調開始回数を計数する場合の制御である。
【0029】
制御部12は、まず、図1(b)に示すキャリアセンス制御の実行の開始を判定する(ステップS201)。キャリアセンス制御が開始されていなければ(ステップS201でNO)、この判定を繰り返す。キャリアセンス制御が開始されれば(ステップS201でYES)、復調開始回数(受信信号の復調開始の回数)をキャリアセンス計数部121に計数(カウント)させる(ステップS202)。
【0030】
次に、制御部12は、誤キャリアセンス判定部122に、復調開始回数が所定回数、すなわち判定基準回数以上であるか否かを判定する(ステップS203)。所定回数未満であれば(ステップS203でNO)、キャリアセンス制御の開始の判定に戻る(ステップS201)。一方、所定回数以上であれば(ステップS203でYES)、誤キャリアセンスが発生していると判定する。
【0031】
誤キャリアセンスが発生していれば、制御部12は、例えば、表示部13に対して警告情報としての設置不可表示を報知させる(ステップS204)。この設置不可表示とは、無線子機103を仮設置した場所が設置に不適当であるということを示すエラー表示であり、言い換えれば、仮設置場所には受信可能レベル以上のノイズが存在していることを示す表示である。例えば表示部13がLEDランプであれば、通常であれば緑色に表示させておき、設置不可表示の場合には赤色に表示させる。なお、表示部13における表示は、警告情報の表示であればよく、設置不可表示に限定されない。
【0032】
誤キャリアセンス判定の制御は、警告情報の表示で終了しても良いが、好ましくは、図3に示すように、所定時間の経過後、制御部12はスリープモードに移行する(ステップS205)制御を行ってから制御を終了してもよい。ここでいうスリープモードとは、電源部15の電力消費を最低限に抑える動作モードであればよく、少なくとも、電源部15から送受信部11への電力供給を遮断すればよい。無線通信装置においては、通常、送受信部11の動作による電力消費が最も大きな比率を占めるため、少なくとも送受信部11の動作を停止すれば、電源部15の電力消費を抑えることができる。もちろん他の構成要素の動作を停止してもよい。
【0033】
次に、図4に示すキャリアセンス判定の制御について説明する。この制御は、キャリアセンス回数として、誤キャリアセンス回数を計数する場合の制御である。
【0034】
まず、制御部12は、図1(b)に示すキャリアセンス制御の実行の開始を判定する(ステップS301)。キャリアセンス制御が開始されていなければ(ステップS301でNO)、この判定を繰り返す。キャリアセンス制御が開始されれば(ステップS301でYES)、誤キャリアセンスであるか否かの判定、すなわち、復調した受信信号が自機宛の信号であるか否かを判定し(ステップS302)、誤キャリアセンスであると判定すれば、その回数をキャリアセンス計数部121に計数(カウント)させる(ステップS303)。
【0035】
次に、制御部12は、誤キャリアセンス判定部122に、誤キャリアセンス回数が所定回数、すなわち判定基準回数以上であるか否かを判定する(ステップS304)。所定回数未満であれば(ステップS304でNO)、キャリアセンス制御の開始の判定に戻る(ステップS301)。一方、所定回数以上であれば(ステップS304でYES)、誤キャリアセンスが発生していると判定し、前述したように、表示部13に対して警告情報としての設置不可表示を報知させ(ステップS305)、所定時間の経過後、スリープモードに移行(ステップS306)してから制御を終了する。
【0036】
なお、前述した図3または図4の誤キャリアセンス判定の制御は、どのようなタイミングで行われてもよいが、例えば、スイッチ部14が操作されて無線通信装置がOFFからONに移行したときに行うように構成されると好ましい。すなわち、制御部12は、スイッチ部14が操作されたときに、送受信部11にキャリアセンスを行わせ、キャリアセンス計数部121の計数結果から誤キャリアセンス判定部122に誤キャリアセンス判定を行わせてもよい。
【0037】
これにより、無線通信装置の設置をトリガーとして無線通信の環境(ノイズの有無)を調査することができ、通信環境の良し悪しを設置時点で報知することができる。これによりノイズの多い環境に無線通信装置を設置するような無駄を回避することができ、当該無線通信装置の製品寿命が不用意に短くなったり、一度設置した無線通信装置を別の箇所に移設したりする必要がなくなる。
【0038】
なお、本発明は前記実施の形態の記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施の形態や複数の変形例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、キャリアセンスを行う必要のある無線通信装置の分野に広く好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0040】
11 送受信部
12 制御部
13 表示部
14 スイッチ部
15 電源部
101 無線親機
102 無線中継機(無線通信装置)
103 無線子機(無線通信装置)
121 キャリアセンス計数部
122 誤キャリアセンス判定部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアセンスおよび無線通信を行う送受信部と、
当該送受信部により行われたキャリアセンスの回数を計数するキャリアセンス計数部と、
当該キャリアセンス計数部で計数された回数が予め設定された判定基準回数を超えていれば、誤キャリアセンスが発生していると判定する誤キャリアセンス判定部と、を備えていることを特徴とする、無線通信装置。
【請求項2】
前記キャリアセンス計数部は、受信信号の復調開始の回数を計数するよう構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記キャリアセンス計数部は、受信信号の復調を開始し、当該受信信号が自機宛の信号でないことを判定した回数を計数するよう構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項4】
制御部および表示部をさらに備え、
前記制御部は、前記誤キャリアセンス判定部により誤キャリアセンスの発生が判定されたときに、前記表示部に警告情報を表示させることを特徴とする、請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項5】
スイッチ部をさらに備え、
前記制御部は、前記スイッチ部が操作されたときに、前記送受信部にキャリアセンスを行わせ、前記誤キャリアセンス判定部に判定を行わせるよう構成されていることを特徴とする、請求項4に記載の無線通信装置。
【請求項6】
内蔵電池を含む電源部をさらに備え、
前記制御部は、前記誤キャリアセンス判定部により誤キャリアセンスの発生が判定されたときに、少なくとも、前記電源部から前記送受信部への電力供給を遮断するよう構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項7】
データ収集を行う無線親機に対してデータを取得して送信する無線子機、または、前記無線親機および前記無線子機の間の通信を中継する無線中継機であることを特徴とする、請求項1に記載の無線通信装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−129585(P2012−129585A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276588(P2010−276588)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】