説明

無線通信装置

【課題】発振器の周波数制御を通信状態等に応じて最適に行うようにした無線通信装置を提供する。
【解決手段】入力された基準信号の周波数に従い、発振器の制御電圧を調整するAFC制御を行う無線通信装置において、前記基準信号が入力されているときに前記AFC制御を実行すると共に当該AFC制御で調整された前記発振器の制御電圧を記憶する一方、前記基準信号が入力されていないときは前記AFC制御を実行せずに前記発振器の制御電圧を初期値に設定し、送信時には前記発振器の制御電圧を前記記憶した制御電圧に記憶するAFC制御手段を備えるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置に関し、特に、発振周波数の制御を行う無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動周波数制御(Auto Frequency Control。以下、AFC制御と呼ぶ)を行う無線通信装置においては、発振器として例えば電圧制御温度補償水晶発振器(Voltage Controlled Temperature Compensated Crystal Oscillator。以下、VCTCXOと呼ぶ)等の基準発振器と、この基準発振器からの発振周波数を基準として、送信部または受信部に必要とされる所定の周波数の信号を供給する局部発振器が備えられる。AFC制御の例として、特許文献1に記載の技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−219719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載されるデジタル方式の通信システムでは、受信信号に含まれる同期ワードなどの既知の信号を検出し、通信状態が確立された状態で無線通信を行うが、アナログ方式の無線通信装置などの場合は受信した信号が無線通信のための信号であるのそうでないのかを判別することができず、AFC制御による周波数の安定性を低下させるおそれがあった。
【0005】
本発明の目的は、上記課題に鑑み、発振器の周波数制御を通信状態等に応じて最適に行うようにした無線通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本願発明に係る無線通信装置にあっては、入力された基準信号の周波数に従い、発振器の制御電圧を調整するAFC制御を行う無線通信装置において、前記基準信号が入力されているときに前記AFC制御を実行すると共に当該AFC制御で調整された前記発振器の制御電圧を記憶する一方、前記基準信号が入力されていないときは前記AFC制御を実行せずに前記発振器の制御電圧を初期値に設定し、送信時には前記発振器の制御電圧を前記記憶した制御電圧に記憶するAFC制御手段を備えるように構成した。
【0007】
また、入力された前記基準信号のレベルを測定するレベル測定手段を備え、前記AFC制御手段は、入力された前記基準信号のレベルが所定値以下であるとき、前記AFC制御を実行しないように構成した。
【0008】
また、入力された前記基準信号の品質を測定する品質測定手段を備え、前記AFC制御手段は、入力された前記基準信号の品質が所定の品質を満たしていないとき、前記AFC制御を実行しないように構成した。
【発明の効果】
【0009】
本願発明に係る無線通信装置にあっては、無線通信装置の発振器の周波数制御を通信状態等に応じて最適に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る無線通信装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の無線通信装置が使用される通信システムの概要を示す図である。
【図3】図1の無線通信装置で実行されるAFC制御の実行、不実行の処理を示すフローチャートである。
【図4】図1の無線通信装置のAFC制御におけるVCTXO制御例を示すタイムチャートである。
【図5】図1の無線通信装置で実行されるVCTCXOの初期値を補正する処理を示すフローチャートである。
【図6】本発明の他の実施の形態におけるVCTCXOの初期値を補正する処理のフローチャートである。
【図7】VCTCXOの制御電圧値の処理データフローを示す図である。
【図8】VCTCXOの制御電圧初期値の更新ログを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明に係る無線通信装置の構成を示すブロック図である。
本発明に係る無線通信装置1は、無線回路部101と制御回路部102を備える。無線回路部101は、アンテナ103と、送受信空中線共用機104と、受信部105と、局発部(局部発振器)106と、送信部107と、信号処理部108と、温度検出部109と、VCTCXO(基準発振器)110を有している。
制御回路部102は、AFC回路部112と、記憶部113と、受信信号レベル検出部114と、信号品質監視部115と、温度監視部117を有している。
【0012】
図2は、無線通信装置1が使用される通信システムの概要を示す図である。
図示の通信システムは、基地局(BS)201と、複数の無線通信装置1から構成される。同通信システムにおいて、無線通信装置1は移動局(移動端末)である。
同通信システムにおいては、基地局201と無線通信装置1の間で無線通信を行う基地局通信203と、無線通信装置1同士が基地局を介すことなく通信を行う直接通信204とを行うことができる。
【0013】
図1の説明に戻ると、無線通信装置1は、アンテナ103で無線信号を受信する。アンテナ103で受信した無線信号は、送受信空中線共用機104を通過し、受信部105に入力される。受信部105に入力された信号は、局発部106から入力された信号とミキシングされ、所定の中間周波数に変換される。受信部105の出力は、信号処理部108に入力され、信号処理部108で復号処理等が施されて音声やデータといった情報が取り出される。
【0014】
無線通信装置1の送信時においては、送信部107より無線信号が出力され、送受信空中線共用機104を介してアンテナ103より無線信号が送出される。
局発部106は、受信時には、受信部105で信号の周波数を変換する際の基準信号を、送信時には、送出される無線信号の基準信号を供給する。
また、VCTCXO110は、局発部106の基準信号となるある一定の周波数の信号を局発部106に供給する。
VCTCXO110が供給する信号は局発部106の基準信号となり、局発部106が供給する信号は受信部105および送信部107の基準信号となる関係にあるので、受信部105および送信部107の周波数の制御はVCTCXO110の周波数制御電圧端子の制御電圧値116で制御されることになる。
【0015】
温度検出部109はVCTCXO110の近傍に実装され、VCTCXO110の温度情報を電圧値として制御回路部102に出力する。
信号処理部108は、無線信号から音声やデータといった情報を取り出す処理の他、受信した無線信号の周波数偏差の算出を行う。信号処理部108ではさらに、無線信号の受信信号レベルの算出や通信品質の判定を行い、それらの算出結果や判定結果を制御回路部102に出力する。
【0016】
AFC回路部112においては、信号処理部108から入力された無線信号の周波数偏差に基づき、VCTCXO110の制御電圧の値を周波数偏差が最小になるように調整を行う。この制御電圧の値(AFC制御による最適なVCTCXO110の制御電圧の値)は、VCTCXO110の制御電圧の初期値として、記憶部113に記憶することができる。
【0017】
受信信号レベル検出部114は、信号処理部108で算出した受信信号レベルに基づいてAFC回路部112の動作(AFC制御)の実行、不実行(有効または無効)を判断し、判断結果を出力する。
通信品質監視部115においても同様に、信号処理部108で判定した通信品質に基づいてAFC回路部112の動作の実行、不実行(有効または無効)を判断し、判断結果を出力する。
温度監視部117は、温度検出部109で取得した温度情報に基づき、VCTCXO110の制御電圧の初期値を更新するのに適切な条件であるか判断し、判断結果を出力する。
制御回路部102は、AFC回路部112と、受信信号レベル検出部114と、通信品質監視部115と、温度監視部117からの出力に基づき、後述する処理を行う。
【0018】
図3は、制御回路部102で実行されるAFC制御の実行、不実行の判断処理を示すフローチャートである。
図3に示す処理フローは、無線通信装置1の電源を立ち上げると自動的に起動し(ステップS101)、待ち受け中または受信中は常に動作している。
無線信号が受信されると信号処理部108で受信信号を信号処理して受信信号が所定の通信品質を満たしているか否かの判定が行われる(ステップS102)。この判定は、例えば、図2に示す通信システムがデジタル通信方式の場合は同期ワードを検出することで所定の通信品質が得られたと判断し、同期ワードを検出できなかったときは所定の通信品質を満たしていないと判断することで行う。また、アナログ方式である場合には、無線通信装置1が有する機能であるスケルチが開いたか否かで所定の通信品質を満たしているか否かの判断が可能である。
【0019】
無線通信装置1の発振周波数は、基準とする受信信号がより精度の高い基地局から送信された信号でないと正しく補正することが出来ない。したがってステップS103においては、基地局からの信号であるか否かを判定する。この判断は、例えば受信信号に含まれる同期ワード等の既知の信号が基地局との通信で使用するものであるか否か確認すること等によって行う。
ステップS102とステップS103のいずれかの処理で否定された場合、すなわち、受信信号が所定の通信品質を満たしていない、または、受信信号が所定の通信品質を満たしているものの基地局からの信号で無い場合は、ステップS104に示すように、VCTCXO110の制御電圧を初期値に設定する。このように制御することによって、万が一ステップS102とステップS103の判定が誤判定され、誤ったAFC制御の動作が行われることによって受信動作が不能に陥ってしまった場合でも、次回のステップS102で必ず否定されてステップS104に進む。すなわち、VCTXCOの制御電圧が即座にリセットされるため、自動的に初期の周波数に復帰することができ、発振周波数の誤差が拡大することを防止できる。
【0020】
ステップS102とステップS103の条件を満たす場合は、ステップS105で所定の受信レベルを満たしているか否か判断する。
受信信号が所定の通信品質を満たしていると判断され、かつ、基地局からの信号と判断している場合であっても、正確に周波数の偏差情報を読み取ることが出来る最小の受信信号レベルを満たしていない場合がある。
そこで本発明ではステップS105に示す判断を行い、所定の受信信号レベル以上であることを判定し、受信信号レベルが所定値以上でない場合はAFC制御の処理(ステップS106)を行わないようにする。ここでのAFC制御の処理ステップS106とは基地局から受信した信号を基準とし、VCTCXO110の制御電圧を制御し周波数偏差を最小にする制御である。
【0021】
ここで、ステップS105で否定される場合、すなわち、所定の受信信号レベル以下である場合であっても、ステッップS104に示すVCTCXO110の制御電圧を初期値に戻す処理は行わない。これは、通信システムにおいて、受信信号のレベルは基地局および移動局の受信機入力レベルがマルチパスフェージングと呼ばれる現象により、激しく変動することが考えられる。このため本発明では、所定の受信レベルを瞬間的に満たさない場合には、VCTCXO110の制御電圧を初期値に戻す処理は行わない。これにより、AFC制御の不連続性を軽減し、制御の安定性を向上させることができる。
【0022】
次いで、ステップS107において、書込条件を満たしているか否か判断する。この判断は、安定的な周波数の補正を行う要件を満たしているかの判断であり、例えば、VCTCXO110の周辺回路の温度が周波数の補正を行うのに適正な値であるか、および/または、受信していた信号レベルがVCTCXOの初期値の補正を行うのに適切な値であるかの確認を行う。この要件については上述した特許文献1に詳細が記載されているので、ここでの詳細な説明は省略する。
【0023】
ステップS107の判断によって、安定的な周波数の補正を行うために適切な条件を満たしていると判断された場合は、ステップS108に進み、VCTCXOの初期値の補正を行うことを予約する。このステップS108の処理により書き込みを行うためのフラグを立てることで、AFC制御(ステップS106)による周波数補正の結果を一時的に記憶する。この記憶に関する制御については後述する図5のフローチャートで説明する。
【0024】
図4は、本発明におけるVCTXO110の制御例を示すタイムチャートである。
図4において、符号301は、無線通信装置の動作状態を示している。無線通信装置において、AFC制御を行っている(AFC機能が動作している)状態を「AFCが動作」と示し、無線通信装置が送信している間を「送信」と示し、無線通信装置がそれら以外の動作を行っているときを「その他」と示す。
【0025】
符号302はVCTCXOの制御電圧を示す。「初期値」は、VCTCXOの制御電圧の初期値を示す状態である。また、「+1」は、初期値より1制御値だけVCTCXOの制御電圧が大きく補正され、「+2」は、初期値より2制御値だけVCTCXOの制御電圧が大きく補正されていることを示す。
符号304は、VCTCXOの制御電圧を初期値に戻すタイミングを示している。前述の符号301に示す動作状態が「AFCが動作」または「送信」以外である場合に、VCTCXOの制御電圧を初期値に戻す処理が複数回実行されていることを示す。「0」はVCTCXOの制御電圧を初期値に戻す処理が行われていない状態であり、「1」はVCTCXOの制御電圧を初期値に戻す処理が行われている状態を示している。
【0026】
符号302において、符号304に示すVCTCXOの制御電圧を初期値に戻す処理が行われている間は「初期値」に示される値となっている。
符号303は、AFC制御により基準となる無線通信装置から送出された無線信号との周波数偏差が最小になるように調整されたVCTCXOの制御電圧の記録保持タイミングを示す。
AFC制御により最適なVCTCXOの制御電圧が更新されると、値が変更されるように制御する。「+1」と左端に記述される線上に示される状態が初期値より1制御値だけVCTCXOの制御電圧が大きく補正され、「+2」と左端に記述される線上に示される状態が初期値より2制御値VCTCXOの制御電圧が大きく補正されることを示す。
【0027】
本発明にあっては、VCTCXO110の制御電圧の最適値(符号303)に対しては、VCTCXO110の制御電圧を初期値に戻す処理(符号304)は適用されない。そのため、送信時にはこのVCTCXO110の制御電圧の最適値を用いて送信処理を行うことで、周波数追従と呼ばれる基準となる周波数に送信周波数を合わせ、周波数偏差が最小となるように送信を行うことができる。さらに、VCTCXO110の初期値を補正するため、記憶部113に書き込む制御電圧の初期値もここに示すVCTCXO110の制御電圧の最適値を適用する。
【0028】
図5は、VCTCXOの初期値を補正する処理を示すフローチャートである。図5を参照し、本発明におけるVCTCXO110の初期値を補正する処理を説明する。
本発明にあっては、図3のフローチャートのステップS108において周波数の補正を行うことが予約された場合に、VCTXCO110の補正初期値を書き込む制御が動作する。
【0029】
図5に示す処理は、AFC制御とは独立して動作し、無線通信装置1の電源を立ち上げると自動的に起動する(ステップS201)。前述の図3のフローチャートのステップS108において周波数補正の予約がなされ、書込予約フラグが検出されると、ステップS202で肯定され、次の判断ステップS203に進む。書込予約フラグが検出されない場合は、書込予約フラグが検出されるまでステップS202の処理を繰り返す。
【0030】
ステップS203では、無線通信装置1が一定時間以上無線通信を行っておらず、かつ、ユーザによる操作が一定時間以上行われていないか否か判断する。一定時間以上無操作無通信である場合には、ステップS204に進む。
ステップS204では、無線通信装置1の記憶部113にVCTCXO110の補正初期値を書き込む処理を行う。この処理の詳細は図7、図8を参照して後述する。
このような処理フローがなされる理由は、記憶部113にVCTCXO110の補正初期値の書き込みが行われている間、送受信動作が中断される、または操作が行えない状態になるため、上記のように制御する事でユーザが使用中に送受信動作が中断される、または操作が行えなくなることを避けるためである。
さらに無線通信装置1が自立的に周波数補正情報の書き込みを行う目的で、無線通信装置1の電源回路についてバックアップ処理や電源断時の無線機の取り扱いについてユーザは特に意識する必要が無いというメリットも生じる。
【0031】
無線通信装置1が無線通信を行っていないか否かの判断は、送信動作及び受信動作が行われていないことを監視することで行う。また、ユーザによる操作が行われていないか否か判断は、図示しないスイッチ等の操作が実行されていないことを監視することで行う。
以上のようにして、本発明による無線通信装置1では、基地局などの基準信号を受信し、AFC制御を動作させることによって、ユーザが特に意識せずに安定的な周波数の補正を行うことが出来る。
また、万が一各制御における判定に誤りが生じても、自動的に復帰回復して無線通信動作を行うことができる。
【0032】
ところで、上記においては、基地局の電波の届く範囲に無線通信装置1が存在し、基地局と無線通信装置1で通信が行われることを想定している。
しかし、無線通信装置1は必ずしも基地局の通信範囲で運用されるばかりでなく、前述したように、無線通信装置1間の直接通信により通信を行うこともある。
この場合は図3の示すAFC制御の処理フローによる補正には期待できず、別途基準となる信号を無線通信装置1に直接入力し、ユーザによる操作で周波数の補正を行うことが利便性の観点から必要になる。
【0033】
図6は本発明の他の実施の形態におけるVCTCXO110の初期値を補正する処理のフローチャートである。
図6の処理においては、ユーザの操作によりVCTCXO110の初期値を補正するため、ユーザが所定の操作をすることによりVCTCXO110の初期値の補正を実行する処理が開始される(ステップS301)。
【0034】
無線通信装置1に直接接続された機器から基準信号が入力されると、信号処理部108は入力信号を信号処理し受信信号が所定の通信品質を満たしているか判断を行う(ステップS302)。判断の方法は前述した通りである。次に入力信号が基地局を模した精度の高い信号であるか否か判断する(ステップS303)。基地局のような精度の高い装置からの信号でない場合には、周波数補正機能を動作させるべきではないことはここでも同様である。
【0035】
ステップS304からステップS307までの処理は図3と同様であるので説明を省略する。尚、ステップS302、S303、S305の条件判定設定は、基準信号を発する装置方の基準信号レベルの入力ミスや基準信号の出力信号レベルが不正に低いなどの場合に、誤ってVCTCXO110の初期値が変更されることを防ぐためのものである。
【0036】
ステップS307でAFC処理を実行すると、ステップS308に進んで補正初期値の記憶部113への書き込みを行う。
ここで、本実施の形態にあっては基準となる信号を無線通信装置1に直接入力することから、前述のように自由空間を伝播する無線信号のようにレベルが小さく、そのレベルの変動も大きいといった要件は排除され、安定した受信信号レベルが入力されていると考えられるため、上記のステップS302、ステップS303、ステップS305、ステップS306の条件を満たす場合には即座に書き込みを実行することができる。VCTCXOの初期値書込が完了すると、処理フローを終了する(ステップS309)。
【0037】
図7にVCTCXOの制御値の処理データフローを示す。
本発明によると無線通信装置1は少なくとも制御部401と、記憶部402と、VCTCXO403を備えている。制御部401は少なくともAFC機能404と、切り替え部406と、AFCによる最適値407と、補正値予約値408と、VCTCXOの初期設定値411を備えており、上記に説明したようにAFC機能404は基準信号との周波数偏差が最小となるようにVCTCXO403の制御電圧を変えるものである。AFC動作時は切り替え部406が405に示すデータを伝達しているため、405に示すデータフローが常に有効になっており、リアルタイムでVCTCXO403の制御電圧の制御電圧を変更することが出来る。
【0038】
AFC機能404は同時に、VCTCXO403の制御電圧の最適値が変化したときにAFCによる最適値407にデータをコピーする。さらに、VCTCXO403の初期値の補正の条件が揃い、VCTCXO403初期値の補正予約がなされると補正値予約値408にAFCによる最適値407のデータがコピーされる。送信時には、切り替え部406が407からのデータを伝達しているため、AFCによる最適値407がVCTCXO403の制御電圧に設定され、送信時でも周波数の偏差がない安定した周波数で送信することが出来る。
【0039】
記憶部402は少なくともVCTCXOの初期設定値409と更新ログ410データを備えており、補正値予約値408は前述したように無線通信装置が無通信および無操作状態であった場合に、VCTCXOの初期設定値409にデータが書き込みされる。さらに書き込みされたデータはVCTCXOの初期値更新ログ410としてデータがコピーされる。VCTCXOの初期設定値409は移動局無線通信装置の電源立ち上げ時には自動的に制御部のVCTCXOの初期設定値411に設定されるため、VCTCXOの経年による周波数偏差の劣化があっても、AFC機能により最良に制御された周波数偏差のない安定した周波数となるように自動的かつ継続的に補正するように動作することができ、VCTCXOの発振周波数の経年劣化による受信不能または、違法電波の発射を防止することが出来る。
【0040】
本発明によるとVCTCXO初期値の更新ログ410をユーザの操作で任意のVCTCXOの初期値来歴をVCTCXOの初期値に設定することが出来る。VCTCXO403の更新ログ410の詳細については次に説明する。
本発明でのVCTCXOの初期値更新ログの取得方法について説明する。図8はVCTCXOの初期値更新ログを示す図である。VCTCXOの初期値更新ログはログ番号501とVCTCXOの初期設定値502で構成される。ログ番号501はログ情報の順番を示し、数字が小さいほど最新の情報である事を示す。ただし、ログ番号501が0のデータは、例えば無線通信装置の工場出荷時の初期調整値として保持し、一切更新しないものとする。したがってログ番号501が1であるデータが現在のVCTCXOの初期値を示す。VCTCXOの初期設定値502はVCTCXOの制御電圧設定値を記録しておくデータである。VCTCXOの初期値が更新されると、更新された情報はログ番号501が1の場所に格納され。VCTCXOの初期値が更新される前のログ番号501が1のデータはログ番号501が2に、ログ番号501が2のデータはログ番号501が3に・・・と続き、ログ番号501がNより一つ小さいログ番号にあるデータがログ番号501Nとなり、VCTCXOの初期値が更新される前のログ番号501がNのデータは破棄されるように制御する。ここでNはVCTCXOの初期値更新ログ情報として保持しておく最大の個数を示している。
このようにして、VCTCXOの初期値更新のログは規定の数量のVCTCXOの初期設定値を保持することを特徴としている。
【0041】
本発明の無線通信装置1によれば、安定した受信信号が入力されているときにAFC制御を動作させることで、VCTCXOの発振周波数を安定化することができる。
また、万が一VCTCXOの発振周波数の安定化動作に失敗した場合でも、即座に自己回復または無線機の操作により無線機の送受信機能が回復できる。
さらに、VCTCXOの初期設定電圧値の記憶部への書き込みは無線通信装置が使用されていない状態のときに適宜書き込まれるため、ユーザに意識されること無く常にVCTCXOの初期設定電圧値が最適の状態に保たれるという特徴がある。
【符号の説明】
【0042】
1・・・無線通信装置、101・・・無線回路部、102・・・制御回路部、103・・・アンテナ、104・・・送受信空中線共用機、105・・・受信部、106・・・局発部、107・・・送信部、108・・・信号処理部、109・・・温度検出部、110・・・VCTCXO、112・・・AFC回路部、113・・・記憶部、114・・・受信信号レベル検出部、115・・・信号品質監視部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された基準信号の周波数に従い、発振器の制御電圧を調整するAFC制御を行う無線通信装置において、
前記基準信号が入力されているときに前記AFC制御を実行すると共に当該AFC制御で調整された前記発振器の制御電圧を記憶する一方、前記基準信号が入力されていないときは前記AFC制御を実行せずに前記発振器の制御電圧を初期値に設定し、送信時には前記発振器の制御電圧を前記記憶した制御電圧に記憶するAFC制御手段を備えることを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
さらに、入力された前記基準信号のレベルを測定するレベル測定手段を備え、
前記AFC制御手段は、入力された前記基準信号のレベルが所定値以下であるとき、前記AFC制御を実行しないことを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
さらに、入力された前記基準信号の品質を測定する品質測定手段を備え、
前記AFC制御手段は、入力された前記基準信号の品質が所定の品質を満たしていないとき、前記AFC制御を実行しないことを特徴とする請求項1または2に記載の無線通信装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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