説明

無線電話装置

【課題】アンテナを小さくして小型化を図ることができると共に送受信する電波の広帯域化を実現できる無線電話装置を提供する。
【解決手段】多層基板31は、L1層乃至L4層の各導体層の間にガラスエポキシ樹脂からなる各誘電体層R1乃至R3が挟まれて構成されている。そして、表面のL1層には、側面視略コの字形の平面アンテナ3Aの給電部が半田付けされる給電電極33と、RFモジュール3の入出力端子が半田付けされるランド電極34とが形成されている。また、給電電極33とランド電極34とを接続するストリップライン35が形成されている。また、L2層乃至L4層の各グランド電極38、39、40のランド電極34が投影される部分には、導体が除去された各導体除去部42、43、44が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GHz帯の電波を送受信する無線電話装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、GHz帯の電波を送受信する無線電話装置が種々提案されている。
例えば、細長い四角柱状の誘電体にλ/4無給電アンテナ素子とλ/4励振器とを固着してアッセンブリー部品とし、同軸ケーブルの中心導体をλ/4励振器の給電端に、外部導体をλ/4無給電アンテナ素子1の一端に、それぞれ接続導通したアンテナを有するように構成された無線電話装置がある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2005−204244号公報(段落(0037)〜(0052)、図1〜図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した特許文献1に記載される構成では、2つの共振周波数が発生して広帯域化を図ることができるが、λ/4無給電アンテナ素子とλ/4励振器とを形成する必要があるため、アンテナが大きくなり、無線電話装置の小型化が難しいという問題がある。
【0004】
そこで、本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、アンテナを小さくして小型化を図ることができると共に送受信する電波の広帯域化を実現できる無線電話装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため請求項1に係る無線電話装置は、誘電体層を有する基板と、前記基板上に形成されて給電アンテナ素子の給電部に一端が接続されると共に他端にランド電極が形成された第1導体パターンと、前記誘電体層を挟んで前記第1導体パターンに対向する第1グランド電極と、を備え、前記第1グランド電極は、前記ランド電極に対向する部分の導体が除去された第1導体除去部を有し、前記第1導体パターンを前記第1グランド電極に投影した場合に、前記ランド電極と前記第1導体除去部との少なくとも一部が重なることを特徴とする。
【0006】
また、請求項2に係る無線電話装置は、請求項1に記載の無線電話装置において、前記第1導体パターンを前記第1グランド電極に投影した場合に、前記ランド電極が前記第1導体除去部に全体が重なることを特徴とする。
【0007】
また、請求項3に係る無線電話装置は、請求項1又は請求項2に記載の無線電話装置において、前記基板は、多層基板で構成され、前記第1導体パターンは、該多層基板の表面部の第1層目に形成され、前記第1グランド電極は、前記誘電体層を挟んで第2層目に形成されていることを特徴とする。
【0008】
また、請求項4に係る無線電話装置は、請求項3に記載の無線電話装置において、前記多層基板の第3層目以降の各層に前記第1導体パターンに対向するように形成される第2グランド電極を備え、前記第2グランド電極は、前記ランド電極に対向する部分の導体が除去された第2導体除去部を有し、前記第1導体除去部を前記第2導体除去部に投影した場合に、該第2導体除去部は該第1導体除去部よりも大きくなるように形成されていることを特徴とする。
【0009】
また、請求項5に係る無線電話装置は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の無線電話装置において、前記ランド電極には、無線機高周波回路の入出力端子が半田付けされることを特徴とする。
【0010】
また、請求項6に係る無線電話装置は、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の無線電話装置において、前記基板上の前記第1導体パターンの周囲に第3導体除去部を挟んで形成される第3グランド電極を備え、前記第3導体除去部の幅は、前記ランド電極の直径の70%以上であることを特徴とする。
【0011】
更に、請求項7に係る無線電話装置は、請求項3乃至請求項6のいずれかに記載の無線電話装置において、前記多層基板の前記第1導体パターンと前記第1グランド電極との間に設けられる誘電体層の厚さは0.2mmであり、前記給電アンテナ素子の共振周波数は5.8GHzであり、前記ランド電極は直径2mmの円形に形成されると共に、前記第1導体除去部は直径2mmの円形に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る無線電話装置では、第1導体パターンの他端に形成されたランド電極と第1グランド電極の導体が除去された第1導体除去部との少なくとも一部が誘電体を挟んで重なるため、ランド電極と第1導体除去部との間に静電容量を有することとなる。このため、給電アンテナ素子の給電部が第1グランド電極に静電容量を介して結合されるため、送受信する電波に2つの共振周波数を発生させ、広帯域化を図ることが可能となると共に、アンテナを給電アンテナ素子だけで構成でき、無線電話装置の小型化を図ることが可能となる。
【0013】
また、請求項2に係る無線電話装置では、第1導体パターンを第1グランド電極に投影した場合に、ランド電極が第1導体除去部に全体が重なるため、ランド電極と第1導体除去部と間に形成される静電容量の安定化を図ることができ、送受信する電波の更なる広帯域化及び安定化を図ることができる。
【0014】
また、請求項3に係る無線電話装置では、多層基板の表面部に第1導体パターンが形成され、誘電体層を挟んで第2層目に第1グランド電極が形成される。このため、ランド電極と第1導体除去部との間に形成される静電容量のバラツキを最小にして、品質の向上を図ることができると共に、低コスト化を図ることができる。
【0015】
また、請求項4に係る無線電話装置では、多層基板の第3層目以降の各層に形成される第2グランド電極のランド電極に対向する部分には、第1導体除去部よりも大きい第2導体除去部が形成されている。このため、ランド電極と多層基板の第3層目以降の各層に形成される第2導体除去部との間の静電容量を無くし、ランド電極と第1導体除去部との間に形成される静電容量のバラツキを更に最小にして、品質の更なる向上を図ることができる。
【0016】
また、請求項5に係る無線電話装置では、ランド電極に、無線機高周波回路の入出力端子を半田付けすることによって、第1導体パターンによるインピーダンスの不連続性を少なくすることが可能となり、送受信する電波の更なる広帯域化及び安定化を図ることができる。
【0017】
また、請求項6に係る無線電話装置では、基板上に形成された第1導体パターンの周囲に、ランド電極の直径の70%以上の幅の第3導体除去部を形成して第3グランド電極を形成する。このため、ランド電極と第1導体除去部との間に形成される静電容量への第3グランド電極の影響を無くすることが可能となる。
【0018】
更に、請求項7に係る無線電話装置では、アンテナの共振特性は、5.20GHzの1次共振点と6.20GHzの2次共振点とが発生し、帯域幅約1.25GHzの広帯域化を実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る無線電話装置をスキャナ機能や、プリンタ機能、ファクシミリ機能、電話機能などを統合した周知の複合機(MFP)に具備されたコードレス電話機(子機)について具体化した一実施例に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例】
【0020】
[無線電話装置の構成]
先ず、本実施例に係る電話機1の概略構成について図1に基づき説明する。図1は本実施例に係る電話機1の構成ブロック図である。
図1に示すように、電話機1は、当該電話機1に搭載された各種デバイスを統括して制御するCPU2と、後述のように平面アンテナ3Aを介して電波の送受信を行うRFモジュール3と、当該電話機1の外部から入力される音声を音声信号に変換するマイク4と、音声信号を音声に変換し、当該電話機1の外部へ出力するレシーバ5と、入力信号のダイナミックレンジの圧縮及び伸張を行うコンパンダ6とを備えている。
【0021】
また、電話機1は、画像を表示する液晶表示部7と、当該電話機1を外部操作するための各種キーからなるキーマトリックス8と、キーマトリックス8における特定のキーを点灯する操作部LED9と、記憶内容を書換え可能な不揮発性メモリであるEEPROM10とを備えている。
【0022】
更に、電話機1は、当該電話機1に搭載された各種デバイスに電力を供給する二次電池11を充電する電源部12を備えている。また、この電源部12は、各デバイスに所定の定電圧V1(例えば、約3.3Vである。)を供給する。例えば、電源部12は、CPU2やEEPROM10等へ定電圧V1を供給する。
また、電話機1は、電源部12の出力電圧V1に応じて、CPU2をリセットするリセット回路13を備える。
【0023】
ここで、より具体的には、CPU2は、単なるCPUとして構成されているのではなく、当該CPU2にて実行すべき各種処理のプログラムを記憶するROM(図示せず)や、各種処理を実行する際に記憶領域として用いるRAM(図示せず)、当該CPU2と各種デバイスとを接続する入出力ポート(図示せず)、時間の計測を行うタイマ(図示せず)などを内蔵する。
【0024】
また、RFモジュール3は、CPU2から入力される周波数設定データに基づいて、電波の送信周波数や受信周波数を設定し、コンパンダ6からの入力信号を電波に重畳して電話機1の外部へ平面アンテナ3Aを介して送信する一方、電話機1の外部から平面アンテナ3Aを介して受信した電波に重畳された信号(音声信号やデータ信号)を抽出し、これら信号をコンパンダ6へ出力する。更に、受信した電波の強度を示す電波強度信号(RSSI信号)や、親機からの電波を受信した旨を示すキャリアセンス信号をCPU2へ出力する。
【0025】
また、コンパンダ6は、CPU2から入力される制御信号に基づいて、マイク4から入力される音声信号のダイナミックレンジを圧縮して、この音声信号をRFモジュール3へ出力する一方、RFモジュール3から入力される音声信号のダイナミックレンジを伸張して、この音声信号をレシーバ5へ出力したり、RFモジュール3から入力されるデータ信号をそのままのダイナミックレンジにてCPU2へ出力する。
【0026】
また、キーマトリックス8は、各種キーが押下されると、押下されたキーを示す押下信号をCPU2へ出力する。
また、操作部LED9は、CPU2から入力される点灯信号に基づいて、キーマトリックス8における特定のキーを点灯する。例えば、電話機1を外線に接続するために押下する外線キー(図示せず)や、電話機1を内線に接続するために押下する内線キー(図示せず)、電話機1と外線や内線との接続を解除(切断)するために押下する通話終了キー(図示せず)、電話機1の各種設定を行うために押下する機能キー(図示せず)等を点灯する。
【0027】
また、EEPROM10は、電話機1の各種設定値を記憶する一方、CPU2からの要求に応じて、各種設定値をCPU2へ出力したり、各種設定値の書き換えを行う。
また、電源部12の二次電池11は、電話機1に着脱自在に構成されている。そして、電源部12は、電話機1が充電器20に置かれると、電話機1の外部の商用電源に接続されたACアダプタ22のAC/DC変換器23と、充電器20のレギュレータ21とを介して、外部の商用電源(例えば、約AC100Vである。)から所定電圧(例えば、約DC7〜8Vである。)の電力が供給される。
【0028】
また、リセット回路13は、電源部12の出力電圧V1を検出し、出力電圧V1がCPU2の正常な動作が保証された最低電圧Vlow(例えば、約DC3.0Vである。)を下回った場合に、CPU2をリセットするリセット信号をCPU2へ出力する。
【0029】
[多層基板の構成]
次に、給電アンテナ素子の一例としての平面アンテナ3Aと無線機高周波回路の一例としてのRFモジュール3とが取り付けられる多層基板31の構造について図2乃至図4に基づいて説明する。
図2は平面アンテナ3AとRFモジュール3とが取り付けられる多層基板31の要部拡大平面図である。図3は図2のX1−X1矢視断面図である。図4は多層基板31のL1層乃至L4層のランド電極を投影した部分を示す要部平面図である。
【0030】
図2及び図3に示すように、多層基板31は、L1層乃至L4層の各導体層の間にガラスエポキシ樹脂からなる各誘電体層R1乃至R3が挟まれて構成されている。そして、表面のL1層には、側面視略コの字形の平面アンテナ3Aの給電部が半田付けされる給電電極33と、RFモジュール3の入出力端子が半田付けされるランド電極34とが形成されている。また、給電電極33とランド電極34とを接続するストリップライン35が形成されている。
【0031】
また、この給電電極33、ランド電極34及びストリップライン35と絶縁してグランド電極36が形成され、このグランド電極36上には、半田レジストインクが塗布されている。また、ランド電極34の周囲には、グランド電極36と絶縁するための導体除去部46が形成され、ストリップライン35の両側には、グランド電極36と絶縁するための導体除去部47が形成されている。また、平面アンテナ3Aの両短辺側の中央部は、グランド電極36に半田付けされ、多層基板31に固定されている。
【0032】
また、図3及び図4に示すように、L2層乃至L4層の各導体層には、給電電極33、ランド電極34及びストリップライン35とこれらの周辺部のグランド電極36に対向して、各グランド電極38、39、40が形成されている。また、L2層のグランド電極38のランド電極34が投影される部分には、このランド電極34の外径に等しい内径になるように導体が除去された導体除去部42が形成されている。従って、ランド電極34と導体除去部42は、厚さ方向に対向して、平面視重なるように形成される。
【0033】
また、L3層のグランド電極39のランド電極34が投影される部分には、このランド電極34の外径に等しい内径になるように導体が除去された導体除去部43が形成されている。従って、ランド電極34と導体除去部43は、厚さ方向に対向して、平面視重なるように形成される。
【0034】
またL4層のグランド電極40のランド電極34が投影される部分には、このランド電極34の外径よりも大きい内径になるように導体が除去された導体除去部44が形成されている。従って、ランド電極34と導体除去部44は、厚さ方向に対向して、平面視導体除去部44内にランド電極34が位置するように形成される。
【0035】
また、L1層に形成される各導体除去部46、47は、ランド電極34及びストリップライン35の外周部とグランド電極36との間で該ランド電極34の直径の70%以上の距離を形成するように設けられている。これにより、L1層に形成される各導体除去部46、47によって、ランド電極34と導体除去部42との間に形成される静電容量に影響を与えないようにグランド電極36を形成することが可能となる。
【0036】
尚、この導体除去部43の内径をランド電極34の外径よりも大きくするようにしてもよい。これにより、ランド電極34と導体除去部43の周縁部とで形成される静電容量をより少なくすることができ、ランド電極34と導体除去部42の周縁部とで形成される静電容量をより安定させることが可能となる。
【0037】
[等価回路]
次に、平面アンテナ3A、RFモジュール3及び多層基板31によって形成される等価回路を図5に基づいて説明する。図5は平面アンテナ3A、RFモジュール3及び多層基板31によって形成される等価回路を示す図である。
【0038】
図5に示すように、RFモジュール3は、接地されると共に、入出力端子に平面アンテナ3Aが接続されている。また、RFモジュール3の入出力端子は、ランド電極34と誘電体層R1を挟んで設けられた導体除去部42とによって形成される静電容量に相当するコンデンサC1を介して接地されている。
これにより、平面アンテナ3Aを介して送受信する電波に、アンテナ単体の1次共振点だけでなく、コンデンサC1による2次共振点を発生させ、広帯域化を実現することができる。
【0039】
[具体例]
次に、上記のように構成した平面アンテナ3A、RFモジュール3及び多層基板31の具体例を図6乃至図10に基づいて説明する。
図6はランド電極34、ストリップライン35、各導体除去部42乃至44のサイズの一例を示す図である。図7はL2層の導体除去部42のサイズが直径X=3.0mmのときの共振特性を示す図である。図8はL2層の導体除去部42のサイズが直径X=2.0mmのときの共振特性を示す図である。図9はL2層の導体除去部42のサイズが直径X=1.0mmのときの共振特性を示す図である。図10はL2層の導体除去部42のサイズが直径X=0.0mmのとき、即ち、導体除去部42が形成されていないときの共振特性を示す図である。
【0040】
ここで、平面アンテナ3Aの共振周波数は、約5.8GHzである。また、多層基板31の厚さは約1mmである。また、各導体層の厚さは、L1層が約18μm、L2層及びL3層が約35μm、L4層が約18μmである。また、各誘電体層R1、R2、R3の厚さは、誘電体層R1が約0.2mm、誘電体層R2が約0.4mm、誘電体層R3が約0.2mmである。
【0041】
また、図6に示すように、L1層に形成されたランド電極34の直径は、2.0mmで、ストリップライン35の幅寸法は、0.4mmである。また、ランド電極34の周囲には、ほぼ直径5.0mmの導体除去部46が形成されている。また、ストリップライン35の両側には、最小幅1.8mmの導体除去部47が形成されている。また、L2層とL3層に形成される各導体除去部42、43の直径は、直径X=0.0mm、即ち各導体除去部42、43が形成されていないものと、直径X=1.0mmのものと、直径X=2.0mmのものと、直径X=3.0mmのものとを作製した。また、L4層に形成される導体除去部44の直径は、3.8mmである。
【0042】
そして、L2層とL3層に各導体除去部42、43を形成しないもの、即ち、直径Xが0.0mmのものと、L2層とL3層に形成される各導体除去部42、43の直径Xが1.0mmのものと、直径Xが2.0mmのものと、直径Xが3.0mmのものとのそれぞれについて、ネットワークアナライザで共振特性を測定した。
【0043】
図7に示すように、L2層とL3層に形成される各導体除去部42、43の直径Xが3.0mmの場合には、平面アンテナ3Aの共振周波数である5.78GHzに1次共振点だけが発生し、帯域幅は、約290MHzであった。
また、図8に示すように、L2層とL3層に形成される各導体除去部42、43の直径Xが2.0mmの場合には、5.20GHzに1次共振点が発生し、6.20GHzに2次共振点が発生し、帯域幅は約1.25GHzであった。
【0044】
また、図9に示すように、L2層とL3層に形成される各導体除去部42、43の直径Xが1.0mmの場合には、平面アンテナ3Aの共振周波数である5.78GHzに1次共振点だけが発生し、帯域幅はほとんど無かった。
更に、図10に示すように、L2層とL3層に各導体除去部42、43を形成しない場合、即ち、各導体除去部42、43の直径Xが0.0mm場合には、平面アンテナ3Aの共振周波数である5.78GHzに1次共振点だけが発生し、帯域幅はほとんど無かった。
【0045】
従って、L2層に形成される導体除去部42の直径Xが2.0mmの場合には、給電アンテナ素子の一例としての平面アンテナ3Aだけで、5.20GHzの1次共振点と6.20GHzの2次共振点とが発生し、帯域幅約1.25GHzの広帯域化を実現することができた。
【0046】
[上記実施例の効果]
以上詳細に説明した通り、本実施例に係る電話機1では、多層基板31には、RFモジュール3の入出力端子が半田付けされるランド電極34と誘電体層R1を挟んで形成されるグランド電極38に形成された導体除去部42とは、同じ大きさで全体が重なっている。このため、ランド電極34と導体除去部42との間に静電容量を有することとなり、平面アンテナ3Aの給電部がグランド電極38に静電容量を介して結合される。これにより、送受信する電波に2つの共振周波数(例えば、5.20GHzに1次共振点と、6.20GHzに2次共振点である。)を発生させ、広帯域化を図ることができると共に、アンテナを平面アンテナ3Aだけで構成でき、無線電話装置1の小型化を図ることが可能となる。
【0047】
また、ランド電極34をグランド電極38に投影した場合には、このランド電極34が導体除去部42に全体が重なるため、ランド電極34と導体除去部42と間に形成される静電容量の安定化を図ることができ、送受信する電波の更なる広帯域化及び安定化を図ることができる。
【0048】
また、多層基板31の表面部のL1層にランド電極34を形成し、誘電体層R1を挟んでL2層のグランド電極38に導体除去部42を形成するため、ランド電極34と導体除去部42との間に形成される静電容量のバラツキを最小にして、品質の向上を図ることができると共に、低コスト化を図ることができる。
【0049】
また、ランド電極34にRFモジュール3の入出力端子を半田付けすることによって、ストリップライン35によるインピーダンスの不連続性を少なくすることが可能となり、送受信する電波の更なる広帯域化及び安定化を図ることができる。
更に、L3層及びL4層に形成する各導体除去部43、44をL2層に形成される導体除去部42よりも大きく形成してもよい。これにより、ランド電極34と多層基板31のL3層及びL4層に形成される各導体除去部43、44との間の静電容量を無くし、ランド電極34と導体除去部42との間に形成される静電容量のバラツキを更に最小にして、品質の更なる向上を図ることができる。
【0050】
[変形例等]
尚、本発明は前記実施例に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。例えば、以下のようにしてもよい。
【0051】
(A)多層基板31のL2層に形成される導体除去部42のランド電極34に対する大きさの他の例を図11及び図12に基づいて説明する。
図11は多層基板31のL2層に形成される導体除去部42をランド電極34よりも小さく形成した一例を示す図である。図12は多層基板31のL2層に形成される導体除去部42をランド電極34よりも大きく形成した一例を示す図である。
【0052】
図11に示すように、多層基板31のL2層に形成される導体除去部42をランド電極34よりも小さく形成してもよい。また、L3層及びL4層に形成される各導体除去部43、44をランド電極34よりも大きく形成するのが望ましい。
また、図12に示すように、多層基板31のL2層に形成される導体除去部42をランド電極34よりも大きく形成してもよい。また、L3層及びL4層に形成される各導体除去部43、44をランド電極34よりも大きく形成するのが望ましい。
【0053】
これにより、L2層に形成される導体除去部42をランド電極34よりも小さく形成することによって、ランド電極34と導体除去部43とによって形成される静電容量を、導体除去部42がランド電極34と同じ大きさの場合よりも増大させることができる。また、L2層に形成される導体除去部42をランド電極34よりも大きく形成することによって、ランド電極34と導体除去部43とによって形成される静電容量を、導体除去部42がランド電極34と同じ大きさの場合よりも減少させることができる。従って、導体除去部42の大きさを基板パターンで調節することによって、送受信する電波に2つの共振周波数を高精度に発生させ、安定した広帯域化を図ることが可能となる。
また、ランド電極34と多層基板31のL3層及びL4層に形成される各導体除去部43、44との間の静電容量を無くし、ランド電極34と導体除去部42との間に形成される静電容量のバラツキを更に最小にして、品質の更なる向上を図ることができる。
【0054】
(B)また、図13乃至図16に示すように、両面基板51の一面側の導体層に給電電極33、ランド電極34及びストリップライン35を形成し、ガラスエポキシ樹脂からなる誘電体層R5を挟んで、他面側の導体層にグランド電極38及び導体除去部42を形成してもよい。また、図16に示すように、両面基板51の一面側の導体層に形成されるランド電極34の周囲に、該ランド電極34の直径の70%以上の幅を有する導体除去部46形成するようにグランド電極36を設けてもよい。これにより、両面基板51の一面側に形成される導体除去部46によって、グランド電極36がランド電極34と導体除去部42との間に形成される静電容量に影響を与えないようにすることが可能となる。
尚、上記実施例に係る電話機1と同一符号は、上記実施例1に係る電話機1と同一あるいは相当部分を示すものである。
【0055】
ここで、図13は両面基板51の他面側に形成される導体除去部42を一面側に形成されるランド電極34よりも小さく形成した一例を示す図である。図14は両面基板51の他面側に形成される導体除去部42を一面側に形成されるランド電極34よりも大きく形成した一例を示す図である。図15は両面基板51の他面側に形成される導体除去部42を一面側に形成されるランド電極34と同じ大きさに形成した一例を示す図である。図16は図15の一面側に形成されるランド電極34の周囲に導体除去部46を形成するようにグランド電極36を設けた一例を示す図である。
【0056】
(C)また、ランド電極34及び導体除去部42は、円形に限らず、四角形、楕円形等に形成してもよい。これにより、RFモジュール3の入出力端子をランド電極34に容易に半田付けすることが可能となる。また、各導体除去部43、44も、円形に限らず、四角形、楕円形等に形成してもよい。
【0057】
(D)上記各グランド電極38、39、40は、各導体除去部42、43、44の回りにグランド電位として作用する面積を有するように形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本実施例に係る電話機の構成ブロック図である。
【図2】平面アンテナとRFモジュールとが取り付けられる多層基板の要部拡大平面図である。
【図3】図2のX1−X1矢視断面図である。
【図4】多層基板のL1層乃至L4層のランド電極を投影した部分を示す要部平面図である。
【図5】平面アンテナ、RFモジュール及び多層基板によって形成される等価回路を示す図である。
【図6】ランド電極、ストリップライン、各導体除去部のサイズの一例を示す図である。
【図7】L2層の導体除去部のサイズが直径X=3.0mmのときの共振特性を示す図である。
【図8】L2層の導体除去部のサイズが直径X=2.0mmのときの共振特性を示す図である。
【図9】L2層の導体除去部42のサイズが直径X=1.0mmのときの共振特性を示す図である。
【図10】L2層の導体除去部42のサイズが直径X=0.0mmのとき、即ち、導体除去部が形成されていないときの共振特性を示す図である。
【図11】他の実施例に係る多層基板のL2層に形成される導体除去部をランド電極よりも小さく形成した一例を示す図である。
【図12】他の実施例に係る多層基板のL2層に形成される導体除去部をランド電極よりも大きく形成した一例を示す図である。
【図13】他の実施例に係る両面基板の他面側に形成される導体除去部を一面側に形成されるランド電極よりも小さく形成した一例を示す図である。
【図14】他の実施例に係る両面基板の他面側に形成される導体除去部を一面側に形成されるランド電極よりも大きく形成した一例を示す図である。
【図15】他の実施例に係る両面基板の他面側に形成される導体除去部を一面側に形成されるランド電極と同じ大きさに形成した一例を示す図である。
【図16】図15の一面側に形成されるランド電極の周囲に導体除去部を形成するようにグランド電極を設けた一例を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
1・・・電話機
3・・・RFモジュール
3A・・・平面アンテナ
31・・・多層基板
33・・・給電電極
34・・・ランド電極
35・・・ストリップライン
36、38、39、40・・・グランド電極
42、43、44、46、47・・・導体除去部
51・・・両面基板
R1、R2、R3、R5・・・誘電体層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層を有する基板と、
前記基板上に形成されて給電アンテナ素子の給電部に一端が接続されると共に他端にランド電極が形成された第1導体パターンと、
前記誘電体層を挟んで前記第1導体パターンに対向する第1グランド電極と、
を備え、
前記第1グランド電極は、前記ランド電極に対向する部分の導体が除去された第1導体除去部を有し、
前記第1導体パターンを前記第1グランド電極に投影した場合に、前記ランド電極と前記第1導体除去部との少なくとも一部が重なることを特徴とする無線電話装置。
【請求項2】
前記第1導体パターンを前記第1グランド電極に投影した場合に、前記ランド電極が前記第1導体除去部に全体が重なることを特徴とする請求項1に記載の無線電話装置。
【請求項3】
前記基板は、多層基板で構成され、前記第1導体パターンは、該多層基板の表面部の第1層目に形成され、前記第1グランド電極は、前記誘電体層を挟んで第2層目に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の無線電話装置。
【請求項4】
前記多層基板の第3層目以降の各層に前記第1導体パターンに対向するように形成される第2グランド電極を備え、
前記第2グランド電極は、前記ランド電極に対向する部分の導体が除去された第2導体除去部を有し、
前記第1導体除去部を前記第2導体除去部に投影した場合に、該第2導体除去部は該第1導体除去部よりも大きくなるように形成されていることを特徴とする請求項3に記載の無線電話装置。
【請求項5】
前記ランド電極には、無線機高周波回路の入出力端子が半田付けされることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の無線電話装置。
【請求項6】
前記基板上の前記第1導体パターンの周囲に第3導体除去部を挟んで形成される第3グランド電極を備え、
前記第3導体除去部の幅は、前記ランド電極の直径の70%以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の無線電話装置。
【請求項7】
前記多層基板の前記第1導体パターンと前記第1グランド電極との間に設けられる誘電体層の厚さは0.2mmであり、
前記給電アンテナ素子の共振周波数は5.8GHzであり、
前記ランド電極は直径2mmの円形に形成されると共に、前記第1導体除去部は直径2mmの円形に形成されていることを特徴とする請求項3乃至請求項6のいずれかに記載の無線電話装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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